(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094817
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】水素プラント
(51)【国際特許分類】
F25J 1/00 20060101AFI20240703BHJP
C01B 3/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
F25J1/00 C
C01B3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211632
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100127797
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】木村 雄大
【テーマコード(参考)】
4D047
4G140
【Fターム(参考)】
4D047AA02
4D047BA07
4D047BA09
4D047CA17
4G140AB01
(57)【要約】
【課題】複数の水素液化装置から各々液化水素を取り出す個別配管を一つの集合管に集約する構成を備える水素プラントにおいて、前記集合管において液化水素と気体水素との混合を抑制する。
【解決手段】水素プラントHP1は、水素ガスを液化水素に変換する第1液化機13Aおよび第2液化機13Bと、水素流路として第1液化機13Aおよび第2液化機13Bがそれぞれ具備する第1個別配管21Aおよび第2個別配管21Bと、第1個別配管21Aおよび第2個別配管21Bの下流端を一つに合流させる合流部Cと、合流部Cより下流の集合管22と、を含む合流配管20と、第1個別配管21Aおよび第2個別配管21Bのそれぞれから分岐され、気相または気液二相の水素流を取り出す第1分岐配管23Aおよび第2分岐配管23Bと、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスを液化水素に変換する複数の水素液化装置と、
水素流路として前記複数の水素液化装置のそれぞれが具備する個別配管と、
各水素液化装置の前記個別配管の下流端を一つに合流させる合流部と、前記合流部より下流の集合管と、を含む合流配管と、
前記複数の個別配管のそれぞれから分岐され、気相または気液二相の水素流を取り出す複数の分岐配管と、
を備える水素プラント。
【請求項2】
請求項1に記載の水素プラントにおいて、
前記複数の分岐配管の下流端に配置され、前記水素流を受け入れる回収タンクをさらに備える、水素プラント。
【請求項3】
請求項2に記載の水素プラントにおいて、
前記回収タンクは、受け入れた水素流の液体分を気化させる熱交換並びに減圧機能を備える、水素プラント。
【請求項4】
請求項2または3に記載の水素プラントにおいて、
前記回収タンクから水素ガスを前記水素液化装置の上流端に戻す還流配管をさらに備える、水素プラント。
【請求項5】
請求項2または3に記載の水素プラントにおいて、
前記回収タンクから水素ガスを、他の水素ガス利用設備へ導く再利用配管をさらに備える、水素プラント。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の水素プラントにおいて、
前記水素液化装置内の前記個別配管における水素流の温度に基づいて、前記水素液化装置の下流側の水素流の流動先を、前記集合管または前記分岐配管のいずれかに切り替える切り替え装置をさらに備える、水素プラント。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載の水素プラントにおいて、
前記水素液化装置は、原料水素ガスを冷却する冷却器と、当該冷却器で冷却された水素ガスを膨張させて液化する膨張弁と、を含み、
前記分岐配管は、前記膨張弁の出口と前記合流部との間において前記個別配管から分岐されている、水素プラント。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか1項に記載の水素プラントにおいて、
前記水素液化装置は、原料水素ガスを冷却する冷却器と、当該冷却器で冷却された水素ガスを膨張させて液化する膨張弁と、を含み、
前記分岐配管は、前記冷却器と前記膨張弁との間において前記個別配管から分岐されている、水素プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素ガスを液体水素に変換する水素液化装置を含む水素プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
大規模な液化水素の生産・出荷基地等においては、化石燃料の改質や水の電気分解で製造した水素ガスを水素液化装置で液化水素に変換し、当該液化水素を液化水素貯蔵タンクで一時的に貯蔵する水素プラントが構築される。前記タンク内の液化水素は、需要地へ向かう水素運搬船やローリーなどのキャリアに払い出される(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大量の液化水素の生産が求められる場合、複数の水素液化装置がパラレルに設置されることになる。この場合、各水素液化装置から生産した液化水素を取り出す個別配管を一つの集合管に集約した上で、一つ又は複数の液化水素貯蔵タンクへ導くことが望ましい。
【0005】
しかし、水素液化装置の前記個別配管に、気相または気液二相の水素流が流れることがある。例えば、水素液化装置の起動時においては、当該水素液化装置の冷却系の立ち上がりが不十分なことに起因して、液化水素になる前の水素ガスを含む水素流が前記個別配管を流れることになる。水素液化装置の停止時においても、同様な水素流が生じる。複数の水素液化装置のうち、いずれかを通常運転しつつ、いずれかを起動または停止する運用を行うと、前記集合管において、過冷却度を持った液化水素と気体水素とが混合することが生じ得る。この場合、ハンマリングが発生し、集合管の振動、騒音ないしは損傷を与えてしまうことがある。
【0006】
本開示の目的は、複数の水素液化装置から各々液化水素を取り出す個別配管を一つの集合管に集約する構成を備える水素プラントにおいて、前記集合管において液化水素と気体水素との混合を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一局面に係る水素プラントは、水素ガスを液化水素に変換する複数の水素液化装置と、水素流路として前記複数の水素液化装置のそれぞれが具備する個別配管と、各水素液化装置の前記個別配管の下流端を一つに合流させる合流部と、前記合流部より下流の集合管と、を含む合流配管と、前記複数の個別配管のそれぞれから分岐され、気相または気液二相の水素流を取り出す複数の分岐配管と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、複数の水素液化装置から各々液化水素を取り出す個別配管を一つの集合管に集約する構成を備える水素プラントにおいて、前記集合管において液化水素と気体水素との混合を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、液化水素を生産する水素プラントの全体構成を簡略的に示すシステム図である。
【
図2】
図2は、本開示の第1実施形態に係る水素プラントを示すシステム図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態に係る水素プラントを示すシステム図である。
【
図4】
図4は、第3実施形態に係る水素プラントを示すシステム図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本開示に係る水素プラントの実施形態を詳細に説明する。本開示の水素プラントは、複数台の水素液化装置を用いて水素ガスを液化し液化水素を生産する各種のプラントに適用できる。例えば、大規模な液化水素の生産・出荷基地において原料水素ガスから液化水素を生産するライン、液化水素の生産時やキャリアへの荷役時に発生するボイル・オブ・ガス(以下、BOG)を再度液化するライン、液化水素の受け入れ施設での荷役の際に生じるBOGを回収して再度液化するラインなどに、本開示の水素プラントを適用できる。
【0011】
[水素プラントの全体構成]
まず、本開示の水素プラントの前提となる、複数台の水素液化装置を備えるプラントの全体構成を説明する。
図1は、液化水素を生産する水素プラントHPの全体構成の一例を簡略的に示すシステム図である。水素プラントHPは、原料水素ガスを液化して貯蔵し、貯蔵した液化水素をキャリア15に荷役するプラントである。水素プラントHPは、水素ガス供給源11、バッファタンク12、液化機13(水素液化装置)および液化水素貯蔵タンク14を含み、これら要素が水素流路となる輸送配管2で接続されてなる。また、水素プラントHPで発生するBOGの回収系として、
図1では簡略的にBOG供給源18を示している。
【0012】
水素ガス供給源11は、液化水素の原料となる水素ガスを生成する。原料水素ガスの生成方法としては、メタン等の炭化水素から水蒸気改質により水素ガスを生成する方法、水の電気分解によって水素ガスを生成する方法を例示できる。バッファタンク12は、液化機13へ投入する水素ガスの圧力変動の吸収のため、水素ガスを一時的に貯留する。バッファタンク12に対して、水素ガス供給源11およびBOG供給源18から水素ガスが供給される。
【0013】
液化機13は、水素ガスを液化水素に変換する水素液化装置であって、バッファタンク12から導入される原料水素ガスを冷却および膨張させて液化し、液化水素を生成する。
図1では、液化水素の生産能力の増強のため、3台の液化機13;第1液化機13A、第2液化機13Bおよび第3液化機13Cが輸送配管2にパラレルに配置されている例を示している。もちろん、2台の液化機または4台以上の液化機をパラレルに輸送配管2へ接続しても良い。
【0014】
第1液化機13A、第2液化機13Bおよび第3液化機13Cはそれぞれ水素流路として、輸送配管2から並列に分岐された第1個別配管21A、第2個別配管21Bおよび第3個別配管21Cを備えている。これら個別配管21A、21B、21Cの下流端は、合流配管20により一つの配管に集約されている。合流配管20は、個別配管21A、21B、21Cの下流端を一つに合流させる合流部Cと、合流部Cよりも下流側の集合管22とを含む。
【0015】
液化水素貯蔵タンク14は、液化機13で生成された液化水素が導入され、導入された液化水素を保冷しつつ貯蔵する。液化水素貯蔵タンク14は、
図1に示すような球形、もしくは平底円筒形のタンクである。液化水素貯蔵タンク14としては、液化水素の貯蔵空間を区画する内槽と、この内槽の外側に配置される外槽と、前記内槽と前記外槽との間に配置される保冷層と、を含む多重殻タンクを例示できる。前記内槽と前記外槽との間に中間槽を有する三重殻タンクを用いてもよい。
【0016】
図1では、集合管22の下流側に、3基の液化水素貯蔵タンク14;第1貯蔵タンク14A、第2貯蔵タンク14Bおよび第3貯蔵タンク14Cがパラレルに配置されている例を示している。これらタンクの各上流側には、第1選択弁16A、第2選択弁16Bおよび第3選択弁16Cがそれぞれ配置されている。3台の液化機13A~13Cで生産された液化水素は、選択弁16A、16B、16Cが適時開閉されることで、3つの貯蔵タンク14A、14B、14Cに分配され、貯蔵される。例えば、選択弁16A、16B、16Cのいずれか一つが「開」とされ、残りが「閉」とされることで、集合管22と貯蔵タンク14A、14B、14Cのいずれか一基とが連通状態とされ、生産された液化水素が送り込まれる。あるいは、選択弁16A、16B、16Cのいずれか二つを「開」とする、もしくは全てを「開」として、3つの貯蔵タンク14A、14B、14Cのうちの二基、もしくは三基全てに同時に液化水素を送り込むようにしても良い。なお、液化水素貯蔵タンク14は、大型の一基のタンクであっても良いし、4基以上のタンクで構成されても良い。
【0017】
これら貯蔵タンク14A、14B、14Cの各下流側の配管には、これらタンク内に貯蔵された液化水素を送り出す第1ポンプ17A、第2ポンプ17Bおよび第3ポンプ17Cがそれぞれ配置されている。ポンプ17A、17B、17Cの稼働により、貯蔵タンク14A、14B、14Cから液化水素がキャリア15へ払い出される。キャリア15は、例えば受け入れ基地へ液化水素を搬送する水素運搬船やローリーである。
【0018】
BOG供給源18は、水素プラントHPで発生したBOGを集約し、その再液化のためBOGをバッファタンク12へ供給する。液化水素貯蔵タンク14で貯蔵中の液化水素の蒸発により発生するBOGや、液化水素貯蔵タンク14からキャリア15への液化水素の荷役時に発生するBOGを集約する機構が、BOG供給源18となる。
【0019】
以上の通り構成された水素プラントHPでは、パラレルに設置された第1液化機13A、第2液化機13Bおよび第3液化機13Cのうち、いずれか1台または2台を通常運転しつつ、2台またはいずれか1台を起動または停止する運用を行うことがある。例えば、液化水素の生産量の調整のため液化機のパラレル運転台数を切り替える場合や、いずれかの液化機の修理もしくはメンテナンスを行う場合などである。
【0020】
この場合、起動または停止を行った液化機13A、13B、13Cの個別配管21A、21B、21Cに、気相または気液二相の水素流、つまり常温の水素ガスや、液化し切れていない気液二相の水素流体が流れることがある。例えば、第1液化機13Aが休止状態にあって、第2液化機13Bおよび第3液化機13Cが通常運転を行っている状態を想定する。この状態から第1液化機13Aを起動すると、当該第1液化機13Aが内蔵する冷却系による原料水素ガスの冷却が不十分なことに起因して、第1個別配管21Aには、起動当初は常温の水素ガスが流れ、その後は気液二相の水素流体が流れる。これらの水素流は、合流部Cから集合管22へ送られる。
【0021】
他方で、通常運転を行っている第2液化機13Bの第2個別配管21と、第3液化機13Cの第3個別配管21Cには、過冷却度を持った液化水素が流れ、合流部Cから集合管22へ送られる。このため、集合管22では、過冷却度を持った液化水素と水素ガスもしくは気液二相の水素流体とが混合する。この場合、ハンマリングが発生し、集合管22の振動、騒音ないしは損傷を生じさせることがある。
【0022】
3台の液化機13A、13B、13Cが通常運転を行っている状態から、第1液化機13Aだけを停止させる場合にも、同様の事象が生じる。第1液化機13Aを停止させると、当該第1液化機13Aの前記冷却系が冷却能力を徐々に失うことにより、気液二相の水素流体もしくは水素ガスが第1個別配管21Aを流れる。一方、第2個別配管21および第3個別配管21Cには、過冷却度を持った液化水素が流れ続ける。従って、集合管22では、過冷却度を持った液化水素と水素ガスもしくは気液二相の水素流体とが混合してしまう。個別配管21A、21B、21Cに排気弁を取り付け、液化機13A、13B、13Cの起動または停止を行う場合に、気体水素を廃棄することも考えられる。しかし、液化機13の立ち上げもしくは立ち下げには数日を要することもあり、監視負担や廃棄ロスが大きくなる。このような問題を解決する本開示の実施形態を以下に示す。
【0023】
[第1実施形態]
図2は、本開示の第1実施形態に係る水素プラントHP1を示すシステム図である。
図2では、
図1に示した水素プラントHPの一部である、第1液化機13Aおよび第1個別配管21Aと、第2液化機13Bおよび第2個別配管21Bと、合流配管20とが示されている。これらに加えて水素プラントHP1は、第1分岐配管23Aおよび第2分岐配管23Bと、4つのバルブ(切り替え装置);第1バルブ41、第2バルブ42、第3バルブ43および第4バルブ44と、フラッシュタンク5(回収タンク)とを含む。
【0024】
第1液化機13Aおよび第2液化機13Bは、水素ガスを熱交換により冷却する冷却器31と、当該冷却器31による冷却後の水素ガスを膨張させて液化する膨張弁32とを含む。本実施形態では、膨張弁32としてジュールトムソン弁を例示する。冷却器31は、例えば、コンプレッサや膨張タービン等を用いた冷凍サイクルによって、水素等の作動媒体を極低温化する冷凍サイクル部と、当該冷凍サイクル部を冷熱源とした熱交換により原料水素ガスを液化直前の状態まで冷却する熱交換部と、を含む。膨張弁32は、冷却器31から導出された高圧の原料水素ガスを受け入れてジュールトムソン膨張、つまり等エンタルピー膨張させる。これにより、原料水素ガスが液化され、極低温の液化水素が生成される。第1個別配管21Aおよび第2個別配管21Bは、それぞれの冷却器31と膨張弁32を経由し、合流配管20の合流部Cへ至っている。本実施形態では、水素ガスをジュールトムソン膨張させる膨張弁32を備える液化機3を例示しているが、水素ガスを膨張させ原料水素ガスを液化することが可能である限りにおいて、膨張弁32に代替する他の膨張手段を採用できる。例えば、前記膨張手段としてタービン等を用いることができる。
【0025】
第1分岐配管23Aは第1個別配管21Aから、第2分岐配管23Bは第2個別配管21Bから、気相または気液二相の水素流を取り出すための配管である。第1分岐配管23Aは第1個別配管21Aの第1分岐部B1において分岐され、第2分岐配管23Bは第2個別配管21Bの第2分岐部B2において分岐されている。第1分岐部B1および第2分岐部B2は、それぞれの膨張弁32の出口と合流部Cとの間に配置されている。3台以上の液化機が存在する場合は、それらの個別配管に対しても分岐配管が取り付けられる。
【0026】
フラッシュタンク5は、複数の分岐配管;第1分岐配管23Aおよび第2分岐配管23Bの下流端に配置され、複数の分岐配管から水素流を受け入れる回収タンクである。フラッシュタンク5の配置により、第1分岐配管23Aおよび第2分岐配管23Bによって取り出された水素ガスまたは気液二相の水素流体を一時的に収容できる。従って、分岐配管23A、23Bにて個別配管21A、21Bから回収した水素流体の再利用が図り易くなる。なお、フラッシュタンク5に代えて、回収した水素流体を燃焼させる設備、あるいは回収した水素流体を無害化する設備などを配置しても良い。
【0027】
フラッシュタンク5は、貯蔵タンク4よりもサイズの小さい耐圧性の単殻タンクである。フラッシュタンク5は、その内部に前記水素流に含まれる液体分を気化させる熱交換機能を有する気化装置51を備えている。気化装置51は、例えば液化水素を微粒化しつつ噴射することで周囲の気体と熱交換させると共に、導入される液化水素の圧力を減圧する圧力差を発生させることで、液化水素を水素ガスに変換する。当該気化によって生成された水素ガスは、フラッシュタンク5内に貯留され、必要に応じて水素ガスを再利用する設備へ送ガスされる。
【0028】
第1バルブ41、第2バルブ42、第3バルブ43および第4バルブ44は、配管を開閉可能なバルブであり、個別配管21A、21Bの下流側における水素流の流動先を、集合管22または分岐配管23A、23Bのいずれかに切り替えるために配置されている。第1バルブ41は、第1分岐部B1と合流配管20の合流部Cとの間において、第1個別配管21Aに取り付けられている。第2バルブ42は、第2分岐部B2と合流部Cとの間において、第2個別配管21Bに取り付けられている。第3バルブ43は第1分岐配管23Aに、第4バルブ44は第2分岐配管23Bに、それぞれ取り付けられている。
【0029】
第1液化機13Aおよび第2液化機13Bが液化水素を生産する通常運転を行っているとき、第1バルブ41および第2バルブ42が開弁される一方、分岐配管23A、23Bの第3バルブ43および第4バルブ44が閉弁される。すなわち、通常運転時は、膨張弁32よりも下流側の個別配管21A、21Bのいずれにも過冷却度を持った液化水素が流れる。このため、個別配管21A、21Bを各々流れる水素流同士を下流側で合流させても差し支えないので、第1バルブ41および第2バルブ42を開弁して前記水素流を合流配管20へ流す。合流配管20へ導かれた液化水素は、液化水素貯蔵タンク14で貯蔵される。
【0030】
これに対し、第1液化機13Aおよび第2液化機13Bのいずれか一方が通常運転を行いつつ、他方が起動または停止を行う場合には、第1~第4バルブ41~44の開閉状態が変更される。例えば、第1液化機13Aが通常運転状態で、第2液化機13Bが立ち上げ起動に向かう状態または立ち下げ停止に向かう状態である場合を想定する。この場合、第2個別配管21Bに気体水素が流れることになる。従って、第2バルブ42を閉弁する一方、第4バルブ44が開弁される。なお、第1バルブ41は開弁、第3バルブ43は閉弁の状態が維持される。
【0031】
このようなバルブ操作により、第2個別配管21Bの気体水素は、第2分岐配管23Bを通してフラッシュタンク5に回収される。他方、第1個別配管21Aからは液化水素が、集合管22を通して液化水素貯蔵タンク14へ送られる。従って、第2個別配管21Bを流れる気体水素と、第1個別配管21Aを流れる液化水素とが、集合管22で混合されることを回避できる。
【0032】
第2液化機13Bが通常運転状態で、第1液化機13Aが起動または停止される場合は、第1液化機13A用の第1バルブ41が閉弁、第3バルブ43が開弁とされ、第2液化機13B用の第2バルブ42は開弁、第4バルブ44は閉弁とされる。また、第1液化機13Aおよび第2液化機13Bのいずれもが起動または停止状態とされる場合、第1バルブ41および第2バルブ42が閉弁される一方、分岐配管23A、23Bの第3バルブ43および第4バルブ44が開弁される。これにより、気体水素を液化水素貯蔵タンク14へ向かわせず、また廃棄することなく、フラッシュタンク5で回収することができる。
【0033】
第1バルブ41、第2バルブ42、第3バルブ43および第4バルブ44を自動弁とし、これらバルブを図略のコントローラで開閉制御させることが望ましい。例えば、第1~第4バルブ41~44の開閉切り替えを、液化機13A、13B内の個別配管21A、21B内における水素流の温度、例えば膨張弁32の出口側における水素流の温度に基づいて、前記コントローラに実行させることができる。個別配管21A、21Bの水素流の温度が、いずれも液化水素に対応する温度であれば、前記コントローラは第1バルブ41および第2バルブ42を開弁とし、第3バルブ43および第4バルブ44を閉弁とする。個別配管21A、21Bのいずれかの水素流の温度が、液化水素の温度に至っていない場合は、前記コントローラは第3バルブ43または第4バルブ44を開弁して水素流をフラッシュタンク5へ逃がす。
【0034】
以上説明した第1実施形態の水素プラントHP1によれば、第1、第2個別配管21A、21Bのそれぞれから分岐される第1、第2分岐配管23A、23Bにより、完全な液化に至っていない気相または気液二相の水素流を取り出すことができる。つまり、気相または気液二相の水素流を、個別配管21A、21Bの合流部Cに至る前に、それぞれの個別配管21A、21Bから取り出すことが可能となる。従って、パラレルに設置された複数の液化機13のうちの一部の液化機13を起動または停止させる場合に、過冷却度を持った液化水素と気体水素とが合流配管20において混合することを抑制できる。従って、合流配管20におけるハンマリングの発生を回避できる。
【0035】
[第2実施形態]
第2実施形態では、第1実施形態の水素プラントHP1に、フラッシュタンク5に回収した水素ガスの利用態様を追加した水素プラントHP2を例示する。
図3は、第2実施形態に係る水素プラントHP2を示すシステム図である。水素プラントHP2は、上述した第1実施形態の水素プラントHP1に加え、フラッシュタンク5の下流側に配設された還流配管24および再利用配管25を備えている。ここでは、先の水素プラントHP1に相当する部分については、説明を省く。なお、還流配管24は、
図1に示したBOG供給源18の一例でもある。
【0036】
還流配管24は、フラッシュタンク5と第1液化機13Aおよび第2液化機13Bの上流端とを繋ぐ配管である。還流配管24は、フラッシュタンク5に回収された水素ガスを第1液化機13Aおよび第2液化機13Bの上流端へ戻す役目を果たす。還流配管24には、第5バルブ45および圧縮機52が配置されている。再利用配管25は、還流配管24の第3分岐部B3から分岐され、水素ガス利用設備53へ至る配管である。再利用配管25は、フラッシュタンク5に回収された水素ガスを水素ガス利用設備53へ導く。再利用配管25には、第6バルブ46が配置されている。
【0037】
第5バルブ45は、第3分岐部B3と圧縮機52との間において還流配管24に配置され、当該還流配管24を開閉するバルブである。圧縮機52は、フラッシュタンク5に貯留された水素ガスを、還流配管24を通して液化機13A、13Bの上流端に向けて圧送する。圧縮機52よりも下流側において還流配管24には、第1分岐還流配管241および第2分岐還流配管242が分岐する第4分岐部B4が設けられている。
【0038】
第1分岐還流配管241は、第4分岐部B4と第1液化機13A用の第1個別配管21Aに設けられた第1還流部C1とを繋いでいる。第1還流部C1は、第1液化機13Aよりも上流側において第1個別配管21Aに設定された配管合流部である。第2分岐還流配管242は、第4分岐部B4と第2液化機13B用の第2個別配管21Bに設けられた第2還流部C2とを繋いでいる。第2還流部C2は、第2液化機13Bよりも上流側において第2個別配管21Bに設定された配管合流部である。なお、第1還流部C1および第2還流部C2を、
図1に示すバッファタンク12とすることが望ましい。バッファタンク12を介在させることで、還流される水素ガス量の時間変動や圧力変動を緩衝できる。
【0039】
第6バルブ46は、再利用配管25を開閉するバルブである。必要に応じて、再利用配管25にも、水素ガスを水素ガス利用設備53へ向けて圧送する圧縮機が配置される。水素ガス利用設備53は、水素ガスをエネルギー源として利用する各種の設備であり、例えば水素ガスを燃料とする発電タービンを備える発電所、水素ガスを燃料とするボイラー等を有する工場などである。水素ガス利用設備53は、
図1に示した液化水素貯蔵タンク14からキャリア15へ向かう輸送配管を、荷役前に液化水素を流通できる温度まで予備冷却する設備であってもよい。
【0040】
第5バルブ45および第6バルブ46の開閉操作により、フラッシュタンク5に貯留されている水素ガスの供給先を、還流配管24または再利用配管25のいずれかに切り替えることができる。もちろん、第5バルブ45および第6バルブ46の双方を開弁状態とし、還流配管24および再利用配管25へ送ガスすることも可能である。例えば、フラッシュタンク5内の水素ガス温度に応じて、水素ガスの供給先を還流配管24または再利用配管25のいずれかに切り替えるようにしても良い。
【0041】
還流配管24を選択的に使用する場合、第5バルブ45が開弁され、第6バルブ46が閉弁される。この状態で圧縮機52が駆動されると、フラッシュタンク5内の水素ガスを液化機13A、13Bの上流端へ戻す循環経路が形成される。
【0042】
既述の通り、液化機13A、13Bの起動によって原料水素ガスの液化処理が開始されても、前記起動から所定期間の間は、冷却器31の冷却性能が十分に機能しない。このため、膨張弁32から導出される水素流が、水素ガスもしくは気液二相の水素流体となり得る。液化機13A、13Bの停止時にも冷却器31の冷却性能が低下するので同様である。第1実施形態で説明した通り、個別配管21A、21Bを流れる水素ガスもしくは気液二相の水素流体はフラッシュタンク5に回収され、その液体分は気化装置51で気化されて水素ガスに変換される。圧縮機52の駆動により、フラッシュタンク5内の水素ガスは還流配管24および第1、第2分岐還流配管241、242を経て、液化機13A、13Bの上流側の個別配管21A、21Bへ還流される。還流された水素ガスは、液化機13A、13Bによって再液化される。すなわち、液化機13A、13Bの起動時や停止時に生じる液化不十分の水素を再利用して、液化水素を生産することができる。
【0043】
再利用配管25を選択的に使用する場合、第5バルブ45が閉弁され、第6バルブ46が開弁される。このバルブ操作により、フラッシュタンク5内の水素ガスは、再利用配管25を通して水素ガス利用設備53へ送ガス可能な状態となる。これにより、液化機13A、13Bの起動時や停止時に生じる液化不十分の水素流体をフラッシュタンク5で水素ガスに変換した上で、水素ガス利用設備53で再利用するラインを構築できる。
【0044】
[第3実施形態]
図4は、第3実施形態に係る水素プラントHP3を示すシステム図である。第1実施形態の水素プラントHP1と、本実施形態の水素プラントHP3とが相違する点は、第1分岐配管23Aおよび第2分岐配管23Bの分岐位置である。第1分岐配管23Aは、第1液化機13A内の冷却器31と膨張弁32との間に設定された第1分岐部B1において、第1個別配管21Aから分岐している。第2分岐配管23Bは、第2液化機13B内の冷却器31と膨張弁32との間に設定された第2分岐部B2において、第2個別配管21Bから分岐している。
【0045】
液化機13A、13Bにおいては、膨張弁32の通過が原料水素ガスの液化の最終工程となる。換言すると、膨張弁32を通過させなければ、原料水素ガスの液化を抑止できる。第3実施形態の水素プラントHP3によれば、冷却が不十分な原料水素ガスを、膨張弁32を通過する前に個別配管21A、21Bから取り出せる。このため、気液二相の水素流が発生する量を最小化でき、第1分岐配管23Aおよび第2分岐配管23Bに、気液二相の水素流を流さずに済む。一般に、配管に気液二相流体を流すと、当該配管がダメージを受けたり、振動が発生したりするが、これらの問題を水素プラントHP3の構成とすることで回避できる。
【0046】
なお、第1分岐配管23Aおよび第2分岐配管23Bの下流端とフラッシュタンク5との間には、減圧弁33が配置されている。水素プラントHP3では、液化機13A、13Bの起動時または停止時に膨張弁32を経由していない原料水素ガスが個別配管21A、21Bから取り出される。つまり、膨張弁32で減圧されていない水素ガスが取り出される。高圧の水素ガスをフラッシュタンク5へ導入する場合、当該フラッシュタンク5に耐圧構造を付与せねばならず、コストアップを招来する。しかし、減圧弁33を配置することで、低圧の水素ガスをフラッシュタンク5へ導入できるので、当該フラッシュタンク5の耐圧要請は軽減される。
【0047】
[本開示のまとめ]
以上説明した具体的実施形態には、以下の構成を有する開示が含まれている。
【0048】
本開示の第1の態様に係る水素プラントは、水素ガスを液化水素に変換する複数の水素液化装置と、水素流路として前記複数の水素液化装置のそれぞれが具備する個別配管と、各水素液化装置の前記個別配管の下流端を一つに合流させる合流部と、前記合流部より下流の集合管と、を含む合流配管と、前記複数の個別配管のそれぞれから分岐され、気相または気液二相の水素流を取り出す複数の分岐配管と、を備える。
【0049】
第1の態様によれば、個別配管のそれぞれから分岐される分岐配管により、完全な液化に至っていない気相または気液二相の水素流を取り出すことができる。つまり、気相または気液二相の水素流を、合流部に至る前にそれぞれの個別配管から取り出すことが可能となる。従って、例えば複数の水素液化装置がパラレルに設置された水素プラントにおいて一部の水素液化装置を起動または停止させる場合に、過冷却度を持った液化水素と気体水素とが合流配管において混合することを抑制できる。
【0050】
第2の態様に係る水素プラントは、第1の態様の水素プラントにおいて、前記複数の分岐配管の下流端に配置され、前記水素流を受け入れる回収タンクをさらに備える。
【0051】
第2の態様によれば、分岐配管により取り出した気相または気液二相の水素を、回収タンクに収容することができる。従って、分岐配管から取り出した水素の再利用が図り易くなる。
【0052】
第3の態様に係る水素プラントは、第2の態様の水素プラントにおいて、前記回収タンクは、受け入れた水素流の液体分を気化させる熱交換機能並びに減圧機能を備える。
【0053】
第3の態様によれば、回収タンクに気液二相の状態で水素が回収されたとしても、その液体分を熱交換機能並びに減圧機能により気化させることができる。このため、回収した水素を再利用する際に、水素ガスの状態で回収タンクから再利用先に送ガスできる。
【0054】
第4の態様に係る水素プラントは、第2または第3の態様の水素プラントにおいて、前記回収タンクから水素ガスを前記水素液化装置の上流端に戻す還流配管をさらに備える。
【0055】
第4の態様によれば、分岐配管および回収タンクを経て、還流配管にて水素液化装置の上流端に水素ガスを戻す循環経路が形成される。従って、水素液化装置の起動時や停止時に生じる液化不十分の水素を再利用して、液化水素を生産することができる。
【0056】
第5の態様に係る水素プラントは、第2または第3の態様の水素プラントにおいて、前記回収タンクから水素ガスを、他の水素ガス利用設備へ導く再利用配管をさらに備える。
【0057】
第5の態様によれば、回収タンクに収容した水素ガスを、再利用配管を通して水素ガス利用設備へ送ガスし再利用することができる。
【0058】
第6の態様に係る水素プラントは、第1~第5の態様の水素プラントにおいて、前記水素液化装置内の前記個別配管における水素流の温度に基づいて、前記水素液化装置の下流側の水素流の流動先を、前記集合管または前記分岐配管のいずれかに切り替える切り替え装置をさらに備える。
【0059】
第6の態様によれば、水素流の温度を取得すれば、当該水素流が液化水素であるか、気相または気液二相の水素であるかを判別できる。従って、水素流を的確に前記集合管または前記分岐配管のいずれかへ導くことができる。
【0060】
第7の態様に係る水素プラントは、第1~第6の態様の水素プラントにおいて、前記水素液化装置は、原料水素ガスを冷却する冷却器と、当該冷却器で冷却された水素ガスを膨張させて液化する膨張弁と、を含み、前記分岐配管は、前記膨張弁の出口と前記合流部との間において前記個別配管から分岐されている。
【0061】
第7の態様によれば、膨張弁よりも下流側から分岐配管が個別配管から分岐されるので、水素液化装置の機外に分岐配管の分岐部を設けることが可能となる。従って、分岐配管を簡易に設置でき、既存の水素プラントへの分岐配管の後付けも容易に行える。
【0062】
第8の態様に係る水素プラントは、第1~第6の態様の水素プラントにおいて、前記水素液化装置は、原料水素ガスを冷却する冷却器と、当該冷却器で冷却された水素ガスを膨張させて液化する膨張弁と、を含み、前記分岐配管は、前記冷却器と前記膨張弁との間において前記個別配管から分岐されている。
【0063】
第8の態様によれば、水素ガスを液化する膨張弁を通過する前に、原料水素ガスを個別配管から取り出せる。このため、水素液化装置の起動時または停止時において、気液二相の水素流が発生する量を最小化することができる。
【符号の説明】
【0064】
13 液化機(水素液化装置)
13A、13B 第1液化機、第2液化機(水素液化装置)
2 輸送配管
20 合流配管
21A、21B 第1個別配管、第2個別配管(個別配管)
22 集合管
23A、23B 第1分岐配管、第2分岐配管(分岐配管)
24 還流配管
25 再利用配管
31 冷却器
32 膨張弁
41、42、43、44 第1バルブ、第2バルブ、第3バルブ、第4バルブ(切り替え装置)
5 フラッシュタンク(回収タンク)
C 合流部
HP 水素プラント