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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094818
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】ダイシングテープ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240703BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240703BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20240703BHJP
【FI】
H01L21/78 M
C09J7/38
C09J7/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211633
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】木村 雄大
(72)【発明者】
【氏名】畠山 義治
(72)【発明者】
【氏名】入江 瞳
【テーマコード(参考)】
4J004
5F063
【Fターム(参考)】
4J004AA07
4J004AB01
4J004AB06
4J004CB03
4J004CC02
4J004CC03
5F063AA31
5F063CB02
5F063CB14
5F063CB29
5F063CC32
5F063DD59
5F063DD68
5F063DD71
5F063DG03
5F063DG04
5F063EE05
5F063EE07
5F063EE08
5F063EE13
5F063EE14
5F063EE18
5F063EE27
5F063EE43
5F063EE44
(57)【要約】
【課題】本発明は、ダイボンド装置にて、ダイボンド工程とエキスパンド工程との両方を実施するプロセスにおいて、くっ付いてしまった隣り合うダイボンド層どうしにおいて、くっ付きを十分に解除させることができるダイシングテープを提供する。
【解決手段】本発明に係るダイシングテープは、基材と、該基材上に積層された粘着剤層と、を備えるダイシングテープであって、500mm/minの速度で元の長さの180%となる長さまで前記ダイシングテープを面方向に引き伸ばすことと、引き伸ばした前記ダイシングテープを復元すること、とを交互に3回繰り返しているときに、3回目の引き伸ばし時に測定される引張応力の値が7N/10mm以上である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材上に積層された粘着剤層と、を備えるダイシングテープであって、
500mm/minの速度で元の長さの180%となる長さまで前記ダイシングテープを面方向に引き伸ばすことと、引き伸ばした前記ダイシングテープを復元すること、とを交互に3回繰り返しているときに、3回目の引き伸ばし時に測定される引張応力の値が7N/10mm以上である
ダイシングテープ。
【請求項2】
前記引き伸ばすことと前記復元することとを交互に3回繰り返しているときに、3回目の引き伸ばし時に測定される引張貯蔵弾性率の値が18N/mm以上である
請求項1に記載のダイシングテープ。
【請求項3】
前記引き伸ばすことと前記復元することとを交互に3回繰り返しているときに、
1回目の引き伸ばし時に測定される引張応力の値に対する3回目の引き伸ばし時に測定される引張応力の値の維持率が95%以上である
請求項1または2に記載のダイシングテープ。
【請求項4】
前記引き伸ばすことと前記復元することとを交互に3回繰り返しているときに、
1回目の引き伸ばし時に測定される引張貯蔵弾性率の値に対する3回目の引き伸ばし時に測定される引張貯蔵弾性率の値の維持率が35%以上である
請求項2に記載のダイシングテープ。
【請求項5】
前記粘着剤層は活性エネルギー線の照射によって硬化する硬化成分を含んでおり、
前記活性エネルギー線の照射前及び照射後において、
前記引き伸ばすことと前記復元することとを交互に3回繰り返しているときに、3回目の引き伸ばし時に測定される引張応力の値が7N/10mm以上である
請求項1に記載のダイシングテープ。
【請求項6】
前記活性エネルギー線の照射前及び照射後において、
前記引き伸ばすことと前記復元することとを交互に3回繰り返しているときに、3回目の引き伸ばし時に測定される引張貯蔵弾性率の値が18N/mm以上である
請求項5に記載のダイシングテープ。
【請求項7】
前記活性エネルギー線の照射前及び照射後において、
前記引き伸ばすことと前記復元することとを交互に3回繰り返しているときに、
1回目の引き伸ばし時に測定される引張応力の値に対する3回目の引き伸ばし時に測定される引張応力の値の維持率が95%以上である
請求項5または6に記載のダイシングテープ。
【請求項8】
前記活性エネルギー線の照射前及び照射後において、
前記引き伸ばすことと前記復元することとを交互に3回繰り返しているときに、
1回目の引き伸ばし時に測定される引張貯蔵弾性率の値に対する3回目の引き伸ばし時に測定される引張貯蔵弾性率の値の維持率が35%以上である
請求項6に記載のダイシングテープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイシングテープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の製造において、ダイボンディング用の半導体チップを得るために、ダイシングダイボンドフィルムを用いることが知られている。
前記ダイシングダイボンドフィルムは、基材上に粘着剤層が積層されたダイシングテープと、該ダイシングテープの粘着剤層上に剥離可能に積層されたダイボンド層とを備えている。
【0003】
そして、前記ダイシングダイボンドフィルムを用いてダイボンディング用の半導体チップ(ダイ)を得る方法として、半導体ウェハを割断処理によってチップ(ダイ)へ加工すべく半導体ウェハに溝を形成するハーフカット工程と、ハーフカット工程後の半導体ウェハを研削して厚さを薄くするバックグラインド工程と、バックグラインド工程後の半導体ウェハの一面(例えば、回路面とは反対側の面)をダイボンド層に貼付して、ダイシングテープに半導体ウェハを固定するマウント工程と、ハーフカット加工された半導体チップ同士の間隔を広げるエキスパンド工程と、半導体チップ同士の間隔を維持するカーフ維持工程と、ダイボンド層と粘着剤層との間を剥離してダイボンド層が貼付された状態で半導体チップを取り出すピックアップ工程と、ダイボンド層が貼付された状態の半導体チップを被着体(例えば、実装基板等)に接着させるダイボンド工程と、を有する方法を採用することが知られている(例えば、下記特許文献1)。
【0004】
そして、下記特許文献1には、前記エキスパンド工程として、まず、前記半導体ウェハの一面に貼付された前記ダイボンド層を前記半導体チップのサイズに相当する大きさに割断して複数のダイボンド層付の半導体チップを得るとともに、隣り合うダイボンド層付の半導体チップどうしの間隔を空けるべく、-20℃~5℃といった低温にて第1のエキスパンド工程を実施し、次に、隣り合うダイボンド層付の半導体チップどうしの間隔をより広げるべく、より高い温度条件下(例えば、室温(23℃))にて第2のエキスパンド工程を実施することが記載されている。
また、下記特許文献1には、前記カーフ維持工程において、前記ダイシングテープに熱風(例えば、100~130℃)を当てて前記ダイシングテープを熱収縮させた後(ヒートシュリンクさせた後)冷却固化させて、隣り合うダイボンド層付の半導体チップ間の距離(カーフ)を維持することも記載されている。
【0005】
上記のような半導体チップ(ダイ)を得る方法においては、前記エキスパンド工程及び前記ヒートシュリンク工程は、通常、エキスパンド装置(エキスパンダー)にて実施され、前記ピックアップ工程及び前記ダイボンド工程は、通常、ダイボンド装置(ダイボンダー)にて実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-77753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、半導体チップ(ダイ)を得る方法において、前記エキスパンド工程として、前記第1のエキスパンド工程を実施せずに、前記第2のエキスパンド工程のみを実施した上で、前記エキスパンド工程後の前記ヒートシュリンク工程を省略することがある。
そして、このような場合、前記エキパンド装置にて前記第2のエキスパンド工程を実施せずに(前記エキスパンド装置を使用せずに)、前記ダイボンド装置において、前記ピックアップ工程及び前記ダイボンド工程の前に、前記第2エキスパンド工程を実施することがある。
【0008】
上のように、前記ダイボンド装置にて、前記第2エキスパンド工程と前記ダイボンド工程との両方を実施するときに、前記ダイボンド工程において、前記第2エキスパンド工程によって得られた複数のダイボンド層付の半導体チップの全てを一度にダイボンドせずに、ダイボンド層付の半導体チップの一部をダイボンドすることがある。
このような場合、残りのダイボンド層付の半導体チップを有する前記ダイシングダイボンドフィルムは、前記ダイボンド装置から一旦取り外されることとなる。
【0009】
残りのダイボンド層付の半導体チップを備えた状態で前記ダイボンド装置から取り外された前記ダイシングダイボンドフィルムは一旦保管される。
しかしながら、この保管時に、前記ダイシングダイボンドフィルムにおいて、隣り合うダイボンド層付の半導体チップどうしの間隔が狭まることにより、ダイボンド層どうしがくっ付いてしまうことがある。
【0010】
上記のようなダイシングダイボンドフィルムは、残りのダイボンド層付の半導体チップをダイボンドする際に、再度、面方向に引き伸ばした状態で前記ダイボンド装置に取り付けられるものの、上記のように、隣り合うダイボンド層どうしがくっ付いていると、面方向に引き伸ばした後に、隣り合うダイボンド層どうしのくっ付きを十分に解除できないことがある。
このように、隣り合うダイボンド層どうしのくっ付きを十分に解除できないと、前記ピックアップ工程において、個々のダイボンド層付の半導体チップをピックアップし難くなることから好ましくない。
【0011】
しかしながら、ダイボンド装置にて、ダイボンド工程とエキスパンド工程との両方を実施するプロセスにおいて、くっ付いてしまった隣り合うダイボンド層どうしにおいて、くっ付きを十分に解除させることについて、未だ十分な検討がなされているとは言い難い。
【0012】
そこで、本発明は、ダイボンド装置にて、ダイボンド工程とエキスパンド工程との両方を実施するプロセスにおいて、くっ付いてしまった隣り合うダイボンド層どうしにおいて、くっ付きを十分に解除させることができるダイシングテープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らが鋭意検討したところ、ダイシングダイボンドフィルムが備えるダイシングテープにおいて、500mm/minの速度で元の長さの180%となる長さまで前記ダイシングテープを面方向に引き伸ばすことと、引き伸ばした前記ダイシングテープを復元すること、とを交互に3回繰り返しているときに、3回目の引き伸ばし時に測定される引張応力の値を7N/10mm以上とすることにより、ダイボンド装置にて、ダイボンド工程とエキスパンド工程との両方を実施するプロセスにおいて、くっ付いてしまった隣り合うダイボンド層どうしにおいて、くっ付きを十分に解除させることができることを見出した。
そして、本発明を想到するに至った。
【0014】
すなわち、本発明に係るダイシングテープは、
500mm/minの速度で元の長さの180%となる長さまで前記ダイシングテープを面方向に引き伸ばすことと、引き伸ばした前記ダイシングテープを復元すること、とを交互に3回繰り返しているときに、3回目の引き伸ばし時に測定される引張応力の値が7N/10mm以上である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ダイボンド装置にて、ダイボンド工程とエキスパンド工程との両方を実施するプロセスにおいて、くっ付いてしまった隣り合うダイボンド層どうしにおいて、くっ付きを十分に解除させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るダイシングテープの構成を示す断面図。
図2】本発明の一実施形態に係るダイシングダイボンドフィルムの構成を示す断面図。
図3A】半導体集積回路の製造方法におけるハーフカット加工の様子を模式的に示す断面図。
図3B】半導体集積回路の製造方法におけるハーフカット加工の様子を模式的に示す断面図。
図3C】半導体集積回路の製造方法におけるバックグラインド加工の様子を模式的に示す断面図。
図3D】半導体集積回路の製造方法におけるバックグラインド加工の様子を模式的に示す断面図。
図4A】半導体集積回路の製造方法におけるマウント工程の様子を模式的に示す断面図。
図4B】半導体集積回路の製造方法におけるマウント工程の様子を模式的に示す断面図。
図5A】半導体集積回路の製造方法におけるエキスパンド工程の様子を模式的に示す断面図。
図5B】半導体集積回路の製造方法におけるエキスパンド工程の様子を模式的に示す断面図。
図5C】半導体集積回路の製造方法におけるエキスパンド工程の様子を模式的に示す断面図。
図6】半導体集積回路の製造方法におけるピックアップ工程の様子を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0018】
[ダイシングテープ]
図1に示したように、本実施形態に係るダイシングテープ10は、基材1と、基材1上に積層された粘着剤層2と、を備える。
本実施形態に係るダイシングテープ10は、例えば、シート状の板状体に構成されている。
また、本実施形態に係るダイシングテープ10は、例えば、ロール体とされた状態で保管される。
【0019】
本実施形態に係るダイシングテープ10は、500min/minの速度で元の長さの180%となる長さまでダイシングテープ10を面方向に引き伸ばすことと、引き伸ばしたダイシングテープ10を復元すること、とを交互に3回繰り返しているときに、3回目の引き伸ばし時に測定される引張応力の値TSが7N/10mm以上である。
引張応力の値TSは、8N/10mm以上であることがより好ましく、9N/10mm以上であることがより好ましい。
引張応力の値TSの上限値は、通常、30N/10mmである。
なお、粘着剤層2が、後述するように、活性エネルギー線の照射によって硬化する硬化成分を含んでいる場合には、本実施形態に係るダイシングテープ10は、前記活性エネルギー線の照射前及び照射後において、3回目の引き伸ばし時に測定される引張応力の値TSが上記数値範囲を満たしていることが好ましい。
また、前記活性エネルギー線は、粘着剤層2中に含まれる硬化成分が十分に硬化する程度まで照射されることが好ましい。
さらに、引張応力の値TSは、面方向のうちの少なくとも一方向で、上記数値範囲を満たしていることが好ましく、面方向のうちの一方向と該一方向と直交する方向で、上記数値範囲を満たしていることがより好ましい。
また、基材1が延伸フィルムである場合には、面方向のうちの一方向は、基材1の延伸方向と一致していることが好ましい。
なお、後述する引張応力の値TS及びTSも同様であり、後述する引張貯蔵弾性率の値TSE、TSE、及び、TSEも同様である。
【0020】
本実施形態に係るダイシングテープ10では、引張応力TSの値が上記範囲内となっているので、面方向に引き伸ばした後に、該引き伸ばしを解除したときにおいて、該ダイシングテープ10に過度な収縮が生じることを抑制できる。
そのため、このダイシングテープ10を備えるダイシングダイボンドフィルム20(図2参照)を用いて、該ダイシングダイボンドフィルム20を面方向に引き伸ばしてダイボンド層3に貼付された半導体ウェハをダイボンド層3付の複数の半導体チップへと個片化した後に、前記引き伸ばしを解除したときにおいて、隣り合うダイボンド層3付の半導体チップどうしの間隔が過度に狭まることを抑制できる。
その結果、隣り合うダイボンド層3付の半導体チップどうしにおいて、ダイボンド層3どうしが過度にくっ付いてしまうことを抑制できる。
また、引張応力TSの値が上記範囲内となっていることにより、ダイシングテープ10に十分な引張力を伝えることができる。
そのため、このダイシングテープ10を備えるダイシングダイボンドフィルム20を用いて、ダイボンド層3に貼付された半導体ウェハをダイボンド層3付の複数の半導体チップへと個片化するときに、隣り合うダイボンド層3どうしがくっ付いてしまった場合であっても、そのくっ付きを十分に解除させることができる。
すなわち、ダイボンド層3を十分に割断して個片化することができる。
【0021】
基材1が樹脂フィルムで構成されている場合には、前記樹脂フィルムを延伸成形するときの延伸倍率を適宜調整したり、延伸時の張力を適宜調整したりすることにより、引張張力の値TSを調整することができる。
また、基材1が1種の樹脂フィルムで構成されている場合には、該1種の樹脂フィルムの厚さを適宜調整することにより、引張張力の値TSを調整することができるし、基材1が複数種の樹脂フィルムの積層体として構成されている場合には、各樹脂フィルムの厚さの比を適宜調整することにより、引張張力の値TSを調整することができる。
さらに、基材1を構成する1種または複数種の樹脂フィルムを作製するための樹脂組成物中における樹脂組成を適宜調整することによっても、引張張力の値TSを調整することができるし、前記樹脂組成物に可塑剤などの添加剤を含有させることによっても、引張張力の値TSを調整することができる
また、基材1を後述するエラストマー層と非エラストマー層との積層構造を有する樹脂フィルムとして構成することによっても、引張応力の値TSを調整することができる。
さらに、樹脂フィルムを押出成形機を用いて成形する場合には、ダイスの押出温度を適宜調整したり、ダイスからフィルム状に押し出された樹脂を冷却固化させるときの冷却速度を適宜調整したりすることによっても、引張張力の値TSを調整することができる。
なお、後述する、1回目の引き伸ばし時に測定される引張応力の値TS、及び、2回目の引き伸ばし時に測定される引張応力の値TSについても、上記と同様にして、調整することができる。
【0022】
ダイシングテープ10を面方向に引き伸ばすことと、引き伸ばしたダイシングテープ10を復元すること、とを交互に3回繰り返すことは、以下の手順にしたがって実施することができる。

(1)長さ100mm×幅10mmの平面寸法を有するダイシングテープの試験体を準備する。
(2)一対のチャックを有する引張試験機(例えば、島津製作所社製の商品名「AGS-X」)に前記ダイシングテープの試験体を取り付ける。具体的には、チャック間距離を50mmとした上で、前記一対のチャックのそれぞれに、前記ダイシングテープの試験体の長さ方向の両端側を取り付ける。
(3)引張速度500mm/minにて、前記ダイシングテープの試験体を180%の長さ(元の長さから80%増しの長さ)となるまで長さ方向に引っ張り、その状態で10分間保持する。
(4)前記一対のチャックから前記ダイシングテープの試験体を取り外して、一日放置する。
(5)一日放置後の前記ダイシングテープの試験体の長さを測定する。
(6)上記(1)~(5)を計3回繰り返す。なお、上記(1)~(5)を2回目以降に実施する場合には、前記チャック間距離として、50mmに前記ダイシングテープの試験体が伸びた長さ分を加算した値を採用する。
【0023】
ここで、3回目の引き伸ばし時に測定される引張応力の値TSは、上記手順(1)~(5)の3回目の実施中に、上記手順(3)において、前記引張試験機にて測定される試験力の値を意味する。
【0024】
本実施形態に係るダイシングテープ10においては、前記引き伸ばすことと前記復元することとを交互に3回繰り返しているときに、3回目の引き伸ばし時に測定される引張貯蔵弾性率の値TSEが18N/mm以上であることが好ましい。
引張貯蔵弾性率の値TSEは、19N/mm以上であることがより好ましく、20N/mm以上であることがより好ましい。
引張貯蔵弾性率の値TSEの上限値は、通常、50N/mmである。
なお、粘着剤層2が、後述するように、活性エネルギー線の照射によって硬化する硬化成分を含んでいる場合には、本実施形態に係るダイシングテープ10は、前記活性エネルギー線の照射前及び照射後において、3回目の引き伸ばし時に測定される引張貯蔵弾性率の値TSEが上記数値範囲を満たしていることが好ましい。
【0025】
引張貯蔵弾性率TSEの値が上記範囲内となっていることにより、このダイシングテープ10を備えるダイシングダイボンドフィルム20を用いて、該ダイシングダイボンドフィルム20を面方向に引き伸ばしてダイボンド層3に貼付された半導体ウェハをダイボンド層3付の複数の半導体チップへと個片化した後に、前記引き伸ばしを解除したときにおいて、隣り合うダイボンド層3付の半導体チップどうしの間隔が過度に狭まることをより一層抑制できる。
その結果、隣り合うダイボンド層3付の半導体チップどうしにおいて、ダイボンド層3どうしが過度にくっ付いてしまうことをより一層抑制できる。
また、引張貯蔵弾性率TSEの値が上記範囲内となっていることにより、ダイシングテープ10に十分な引張力を伝えることができる。
そのため、このダイシングテープ10を備えるダイシングダイボンドフィルム20を用いて、ダイボンド層3に貼付された半導体ウェハをダイボンド層3付の複数の半導体チップへと個片化するときに、ダイボンド層3をより十分に割断して個片化することができる。
【0026】
3回目の引き伸ばし時に測定される引張貯蔵弾性率の値TSEは、上記手順(1)~(5)の3回目の実施中に、上記手順(3)において、前記引張試験機にて測定される引張弾性率の値を意味する。
より具体的には、応力-ひずみ曲線(S-Sカーブ)において、前記ダイシングテープの試験体を180%の長さ(元の長さから80%増しの長さ)となるまで長さ方向に引っ張ったときの応力に対するひずみの傾きを算出することにより求めることができる。
【0027】
基材1が樹脂フィルムで構成されている場合には、引張張力の値TSと同様に、前記樹脂フィルムを延伸成形するときの延伸倍率を適宜調整したり、延伸時の張力を適宜調整したりすることにより、引張貯蔵弾性率の値TSEを調整することができる。
また、基材1が1種の樹脂フィルムで構成されている場合には、該1種の樹脂フィルムの厚さを適宜調整することにより、引張貯蔵弾性率の値TSEを調整することができるし、基材1が複数種の樹脂フィルムの積層体として構成されている場合には、各樹脂フィルムの厚さの比を適宜調整することにより、引張貯蔵弾性率の値TSEを調整することができる。
さらに、基材1を構成する1種または複数種の樹脂フィルムを作製するための樹脂組成物中における樹脂組成を適宜調整することによっても、引張貯蔵弾性率の値TSEを調整することができるし、前記樹脂組成物に可塑剤などの添加剤を含有させることによっても、引張貯蔵弾性率の値TSEを調整することができる。
また、引張張力の値TSと同様に、基材1を後述するエラストマー層と非エラストマー層との積層構造を有する樹脂フィルムとして構成することによっても、引張貯蔵弾性率の値TSEを調整することができる。
さらに、樹脂フィルムを押出成形機を用いて成形する場合には、ダイスの押出温度を適宜調整したり、ダイスからフィルム状に押し出された樹脂を冷却固化させるときの冷却速度を適宜調整したりすることによっても、引張貯蔵弾性率の値TSEを調整することができる。
なお、後述する、1回目の引き伸ばし時に測定される引張貯蔵弾性率の値TSE、及び、2回目の引き伸ばし時に測定される引張貯蔵弾性率の値TSEについても、上記と同様にして、調整することができる。
【0028】
本実施形態に係るダイシングテープ10においては、前記引き伸ばすことと前記復元することとを交互に3回繰り返しているときに、1回目の引き伸ばし時に測定される引張応力の値TSに対する3回目の引き伸ばし時に測定される引張応力の値TSの維持率が95%以上であることが好ましい。
引張応力の値TSに対する引張応力の値TSの維持率は96%以上であることが好ましく、97%以上であることがより好ましく、98%以上であることがより好ましく、99%以上であることがより好ましい。
引張応力の値TSに対する引張応力の値TSの維持率の上限値は、120%であってもよい。
なお、粘着剤層2が、後述するように、活性エネルギー線の照射によって硬化する硬化成分を含んでいる場合には、本実施形態に係るダイシングテープ10は、前記活性エネルギー線の照射前及び照射後において、1回目の引き伸ばし時に測定される引張応力の値TSに対する3回目の引き伸ばし時に測定される引張応力の値TSの維持率が上記数値範囲を満たしていることが好ましい。
【0029】
引張応力の値TSに対する引張応力の値TSの維持率が上記範囲内であることにより、すなわち、引張応力の値の変動が小さくほぼ一定であることにより、このダイシングテープ10を備えるダイシングダイボンドフィルム20を用いて、該ダイシングダイボンドフィルム20を面方向に引き伸ばしてダイボンド層3に貼付された半導体ウェハをダイボンド層3付の複数の半導体チップへと個片化した後に、前記引き伸ばしを解除したときにおいて、隣り合うダイボンド層3付の半導体チップどうしの間隔が過度に狭まることをより一層抑制できる。
【0030】
ここで、1回目の引き伸ばし時に測定される引張応力の値TSは、上記手順(1)~(5)の1回目の実施中に、上記手順(3)において、前記引張試験機にて測定される試験力の値を意味する。
また、後述する実施例の項における、2回目の引き伸ばし時に測定される引張応力の値TSは、上記手順(1)~(5)の2回目の実施中に、上記手順(3)において、前記引張試験機において測定される試験力の値を意味する。
【0031】
本実施形態に係るダイシングテープ10においては、前記引き伸ばすことと前記復元することとを3回繰り返しているときに、1回目の引き伸ばし時に測定される引張貯蔵弾性率の値TSEに対する3回目の引き伸ばし時に測定される引張貯蔵弾性率の値TSEの維持率が35%以上であることが好ましい。
引張貯蔵弾性率の値TSEに対する引張貯蔵弾性率の値TSEの維持率は、38%以上であることがより好ましく、40%以上であることがより好ましい。
引張貯蔵弾性率の値TSEに対する引張貯蔵弾性率の値TSEの維持率の上限値は、100%であってもよい。
なお、粘着剤層2が、後述するように、活性エネルギー線の照射によって硬化する硬化成分を含んでいる場合には、本実施形態に係るダイシングテープ10は、前記活性エネルギー線の照射前及び照射後において、1回目の引き伸ばし時に測定される引張貯蔵弾性率の値TSEに対する3回目の引き伸ばし時に測定される引張貯蔵弾性率の値TSEの維持率が上記数値範囲を満たしていることが好ましい。
【0032】
引張貯蔵弾性率の値TSEに対する引張貯蔵弾性率の値TSEの維持率が上記範囲内であることにより、すなわち、引張貯蔵弾性率の値の変動が所定値以上であることにより、このダイシングテープ10を備えるダイシングダイボンドフィルム20を用いて、該ダイシングダイボンドフィルム20を面方向に引き伸ばしてダイボンド層3に貼付された半導体ウェハをダイボンド層3付の複数の半導体チップへと個片化した後に、前記引き伸ばしを解除したときにおいて、隣り合うダイボンド層3付の半導体チップどうしの間隔が過度に狭まることをより一層抑制できる。
【0033】
ここで、1回目の引き伸ばし時に測定される引張貯蔵弾性率TSEは、上記手順(1)~(5)の1回目の実施中に、上記手順(3)において、前記引張試験機にて測定される引張貯蔵弾性率の値を意味する。
また、後述する実施例の項における、2回目の引き伸ばし時に測定される引張貯蔵弾性率TSEは、上記手順(1)~(5)の2回目の実施中に、上記手順(3)において、前記引張試験機にて測定される引張貯蔵弾性率の値を意味する。
【0034】
本実施形態に係るダイシングテープ10においては、前記引き伸ばすことと前記復元することとを3回繰り返しているときに、1回目の引き伸ばし時に測定される降伏応力の値は、8N以上であってもよく、9N以上であってもよい。
また、1回目の引き伸ばし時に測定される降伏応力の値は、20N以下であってもよく、15N以下であってもよく、12N以下であってもよい。
1回目の引き伸ばし時に測定される降伏応力の値とは、1回目の引き伸ばし時において、ダイシングテープ10に降伏点のひずみが生じたとき応力を意味する。
降伏点のひずみとは、上記手順(3)を実施しているとき、すなわち、元の長さから80%増しの長さとなるまで前記ダイシングテープの試験体を長さ方向に引っ張っているときにその間に測定される引張応力に3%以上の減少が認められる場合、その減少が認められるより前に最大応力を示したときのひずみ量を意味する。
【0035】
本実施形態に係るダイシングテープ10においては、前記引き伸ばすことと前記復元することとを3回繰り返しているときに、1回目の引き伸ばし時に測定される降伏応力の値をYSとした場合、YS、TS、及び、TSは、YS:TS:TS=1:0.7~1.3:0.7~1.3の関係を満たしていることが好ましく、YS:TS:TS=1:0.8~1.2:0.8~1.2の関係を満たしていることがより好ましく、YS:TS:TS=1:0.9~1.1:0.9~1.1の関係を満たしていることがより好ましい。
なお、上で説明したように、TSは、2回目の引き伸ばし時に測定される引張応力の値であり、TSは、3回目の引き伸ばし時に測定される引張応力の値である。
上記関係が満たされていることにより、このダイシングテープ10を備えるダイシングダイボンドフィルム20を繰り返し面方向に引き伸ばす場合においても、各回の引き伸ばしにおいて、ダイシングダイボンドフィルム20に十分な力を加えることができる。
【0036】
実施形態に係るダイシングテープ10においては、前記引き伸ばすことと前記復元することとを3回繰り返しているときに、1回目の引き伸ばし時に測定される降伏伸びの値は、10mm以上であってもよいし、15mm以上であってもよいし、17mm以上であってもよい。
また、1回目の引き伸ばし時に測定される降伏点伸びの値は、50mm以下であってもよいし、40mm以下であってもよいし、35mm以下であってもよい。
なお、前記降伏点伸びの値は、応力-ひずみ曲線(S-Sカーブ)から求めることができる。具体的には、応力-ひずみ曲線において、降伏点が出現するまでの伸びの値を得ることにより求めることができる。
【0037】
基材1は、粘着剤層2を支持する。
基材1は、樹脂フィルムを用いて作製される。
前記樹脂フィルムに含まれる樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフェニルスルフィド、フッ素樹脂、セルロース系樹脂、及び、シリコーン樹脂等が挙げられる。
上記各種の樹脂の中でも、前記樹脂フィルムは、ポリオレフィンを含んでいることが好ましい。
【0038】
ポリオレフィンとしては、例えば、α-オレフィンのホモポリマー、2種以上のα-オレフィンの共重合体、1種または2種以上のα-オレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体等が挙げられる。
また、α-オレフィンの共重合体としては、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレンなどが挙げられる。
【0039】
α-オレフィンのホモポリマーとしては、炭素数2以上12以下のα-オレフィンのホモポリマーであることが好ましい。このようなホモポリマーとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。
【0040】
2種以上のα-オレフィンの共重合体としては、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1-ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/1-ブテン共重合体、エチレン/炭素数5以上12以下のα-オレフィン共重合体、プロピレン/エチレン共重合体、プロピレン/1-ブテン共重合体、プロピレン/炭素数5以上12以下のα-オレフィン共重合体等が挙げられる。
【0041】
1種または2種以上のα-オレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられる。
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)は、酢酸ビニル含有量が5%以上であってもよいし、6%以上であってもよいし、7%以上であってもよい。
前記酢酸ビニル含有量は、30%以下であってもよいし、25%以下であってもよいし、20%以下であってもよいし、15%以下であってもよいし、10%以下であってもよい。
前記酢酸ビニル含有量は、7%以上10%以下であることが好ましい。
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)の市販品としては、例えば、東ソー社製のウルトラセン(登録商標)シリーズ、三井・ダウポリケミカル社製のエバフレックス(登録商標)シリーズなどが挙げられる。
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体の市販品としては、前記ウルトラセン(登録商標)シリーズを用いることが好ましく、前記ウルトラセン(登録商標)シリーズの中でも、ウルトラセン(登録商標)520Fが特に好ましい。
【0042】
ポリオレフィンは、α-オレフィン系熱可塑性エラストマーと呼ばれるものであってもよい。α-オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、プロピレン・エチレン共重合体とプロピレンホモポリマーとを組み合わせたもの、または、プロピレン・エチレン・炭素数4以上のα-オレフィン三元共重合体が挙げられる。
前記α-オレフィン系熱可塑性エラストマー樹脂は、エチレン含有量が7%以上であってもよいし、8%以上であってもよい。
前記エチレン含有量は、20%以下であってもよいし、15%以下であってもよいし、10%以下であってもよい。
前記エチレン含有量は、8%以上10%以下であることが特に好ましい。
前記α-オレフィン系熱可塑性エラストマーの市販品としては、例えば、オレフィン系エラストマー樹脂であるエクソンモービル社製のビスタマックスシリーズが挙げられる。
前記ビスタマックスシリーズの中でも、プロピレン系エラストマー樹脂であるビスタマックス(Vistamax)3980が特に好ましい。
【0043】
樹脂フィルムは、前記した樹脂を1種含むものであってもよいし、前記した樹脂を2種以上含むものであってもよい。
なお、粘着剤層2が後述する紫外線硬化粘着剤を含む場合、基材1を作製する樹脂フィルムは、紫外線透過性を有するように構成されることが好ましい。
【0044】
基材1は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
基材1は、無延伸成形により得られてもよいし、延伸成形により得られてもよいが、延伸成形により得られることが好ましい。
【0045】
基材1が単層構造である場合、基材1は、ポリオレフィン樹脂を含む樹脂フィルムで構成されていることが好ましく、前記ポリオレフィン樹脂として、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)及び前記α-オレフィン系熱可塑性エラストマー樹脂の少なくとも一方を含む樹脂フィルムで構成されていることが好ましい。
すなわち、エラストマーを含む層(以下、エラストマー層という)として構成されていることが好ましい。
エラストマー層が、前記ポリオレフィン樹脂として、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)及び前記α-オレフィン系熱可塑性エラストマー樹脂の両方を含む場合、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)及び前記α-オレフィン系熱可塑性エラストマー樹脂の質量比率は、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA):α-オレフィン系熱可塑性エラストマー=20:80~80:20の範囲であることが好ましい。
【0046】
また、基材1が単層構造である場合、基材1として、大倉工業社製の製品名「ODZ5」も用いることができる。
なお、ODZ5は、ポリオレフィン系樹脂フィルムである。
【0047】
基材1が積層構造である場合、基材1は、エラストマー層と非エラストマーを含む層(以下、非エラストマー層という)とを有することが好ましい。
基材1をエラストマー層と非エラストマー層とを有するものとすることにより、エラストマー層を、引張応力を緩和する応力緩和層として機能させることができる。すなわち、基材1に生じる引張応力を比較的小さくすることができるので、基材1を適度な硬さを有しつつ、比較的伸び易いものとすることができる。
これにより、半導体ウェハから複数の半導体チップへの割断性を向上させることができる。
また、エキスパンド工程における割断時に、基材1が破れて破損することを抑制することができる。
本明細書においては、エラストマー層とは、非エラストマー層に比べて室温での引張貯蔵弾性率が低い低弾性率層を意味する。エラストマー層としては、室温での引張貯蔵弾性率が10MPa以上200MPa未満のものが挙げられ、非エラストマー層としては、室温での引張貯蔵弾性率が200MPa以上500MPa以下のものが挙げられる。
また、本明細書においては、室温とは、23±2℃の温度を意味する。
【0048】
本明細書において、室温での引張貯蔵弾性率は、固体粘弾性測定装置(例えば、型式RSAIII、レオメトリックサイエンティフィック株式会社製)を用いて測定した値を意味する。
室温での引張貯蔵弾性率は、以下の手順にしたがって求めることができる。

(1)長さ40mm(測定長さ)、幅10mmの試験片を準備する。
(2)固体粘弾性測定装置(例えば、型式RSAIII、レオメトリックサイエンティフィック株式会社製)を用いて、周波数1Hz、昇温速度10℃/min、チャック間距離22.5mmの条件において、-30~280℃の温度範囲で前記試験片の引張貯蔵弾性率を測定する。そして、室温(23±2℃)での値を読み取る。
【0049】
エラストマー層は、上で説明したように構成されることが好ましい。
非エラストマー層は、1種の非エラストマーを含むものであってもよいし、2種以上の非エラストマーを含むものであってもよいが、後述するメタロセンPPを含むことが好ましい。
基材1がエラストマー層と非エラストマー層とを有する場合、基材1は、エラストマー層を中心層とし、該中心層の互いに対向する両面に非エラストマー層を有する三層構造(非エラストマー層/エラストマー層/非エラストマー層)に形成されることが好ましい。
【0050】
基材1がエラストマー層と非エラストマー層との積層構造であり、エラストマー層がα-オレフィン系熱可塑性エラストマーを含み、かつ、非エラストマー層が後述するメタロセンPPなどのポリオレフィンを含む場合、エラストマー層は、該エラストマー層を形成するエラストマーの総質量に対して、α-オレフィン系熱可塑性エラストマーを50質量%以上100質量%以下含んでいることが好ましく、70質量%以上100質量%以下含んでいることがより好ましく、80質量%以上100質量%以下含んでいることがより好ましく、90質量%以上100質量%以下含んでいることがより、95質量%以上100質量%以下含んでいることより好ましい。
α-オレフィン系熱可塑性エラストマーが前記範囲で含まれていることにより、エラストマー層と非エラストマー層との親和性が高くなるため、基材1を比較的容易に押出成形することができる。また、エラストマー層を応力緩和層として作用させることができるので、後述するダイシングダイボンドフィルムを用いて半導体ウェハを割断して複数の半導体チップへと個片化するときに、前記半導体ウェハの割断を効率良く実施することができる。
【0051】
基材1がエラストマー層と非エラストマー層との積層構造である場合、基材1は、エラストマーと非エラストマーとを共押出して、エラストマー層と非エラストマー層との積層構造とする共押出成形により得られることが好ましい。共押出成形としては、フィルムやシート等の製造において一般に行われる任意の適切な共押出成形を採用することができる。共押出成形の中でも、基材1を効率良く安価に得ることができる点から、インフレーション法や共押出Tダイ法を採用することが好ましい。
【0052】
積層構造をなす基材1を共押出成形にて得る場合、前記エラストマー層及び前記非エラストマー層は加熱されて溶融された状態で接するため、前記エラストマー及び前記非エラストマーの融点差は小さい方が好ましい。
融点差が小さいことにより、低融点となる前記エラストマーまたは前記非エラストマーのいずれかに過度の熱がかかることが抑制されることから、低融点となる前記エラストマーまたは前記非エラストマーのいずれかが熱劣化することによって副生成物が生成されることを抑制できる。
また、低融点となる前記エラストマーまたは前記非エラストマーのいずれかの粘度が過度に低下することにより前記エラストマー層と前記非エラストマー層との間に積層不良が生じることも抑制できる。
前記エラストマー及び前記非エラストマーの融点差は、0℃以上70℃以下であることが好ましく、0℃以上55℃以下であることがより好ましい。
前記エラストマー及び前記非エラストマーの融点は、示差走査熱量(DSC)分析により測定することができる。例えば、示差走査熱量計装置(TAインスツルメンツ社製、型式DSC Q2000)を用い、窒素ガス気流下、昇温速度5℃/minにて200℃まで昇温し、吸熱ピークのピーク温度を求めることにより測定することができる。
【0053】
基材1の厚さは、55μm以上195μm以下であることが好ましく、55μm以上190μm以下であることがより好ましく、55μm以上170μm以下であることがさらに好ましく、60μm以上160μm以下であることが最適である。
基材1の厚さを前記の範囲とすることにより、ダイシングテープを効率良く製造することができ、かつ、ダイシングテープに貼付した半導体ウェハを効率良く割断することができる。
基材1の厚さは、例えば、ダイアルゲージ(PEACOCK社製、型式R-205)を用いて、ランダムに選んだ任意の5点の厚さを測定し、これらの厚さを算術平均することにより求めることができる。
【0054】
エラストマー層と非エラストマー層とを積層させた基材1において、エラストマー層の厚さに対する非エラストマー層の厚さの比は、1/25以上1/3以下であることが好ましく、1/25以上1/3.5以下であることがより好ましく、1/25以上1/4であることがさらに好ましく、1/22以上1/4以下であることが特に好ましく、1/20以上1/4以下であることが最適である。
エラストマー層の厚さに対する非エラストマー層の厚さの比を前記範囲とすることにより、後述するダイシングダイボンドフィルムを用いて半導体ウェハを割断して複数の半導体チップへと個片化するときに、前記半導体ウェハの割断を効率良く実施することができる。
【0055】
エラストマー層は、単層(1層)構造であってもよいし、積層構造であってもよい。エラストマー層は、1層~5層構造であることが好ましく、1層~3層構造であることがより好ましく、1層~2層構造であることがさらに好ましく、1層構造であることが最適である。エラストマー層が積層構造である場合、全ての層が同じエラストマーを含んでいてもよいし、少なくも2層が異なるエラストマーを含んでいてもよい。
【0056】
非エラストマー層は、単層(1層)構造であってもよいし、積層構造であってもよい。非エラストマー層は、1層~5層構造であることが好ましく、1層~3層構造であることがより好ましく、1層~2層構造であることがさらに好ましく、1層構造であることが最適である。非エラストマー層が積層構造である場合、全ての層が同じ非エラストマーを含んでいてもよいし、少なくとも2層が異なる非エラストマーを含んでいてもよい。
【0057】
非エラストマー層は、非エラストマーとして、メタロセン触媒による重合品であるポリプロピレン樹脂(以下、メタロセンPPという)を含むことが好ましい。
メタロセンPPとしては、メタロセン触媒の重合品であるプロピレン/α-オレフィン共重合体が挙げられる。
非エラストマー層がメタロセンPPを含むことにより、ダイシングテープを効率良く製造することができる。
また、後述するダイシングダイボンドフィルムを用いて半導体ウェハを割断して複数の半導体チップへと個片化するときに、前記半導体ウェハの割断を効率良く実施することができる。
【0058】
前記メタロセンPPの市販品としては、例えば、日本ポリプロ社のウィンテック(登録商標)シリーズが挙げられる。
前記メタロセンPPは、メルトフローレート(MFR)が、2.0g/10min以上であってもよいし、5.0g/10min以上であってもよい。
また、前記メルトフローレート(MFR)は、30g/10min以下であってもよいし、25g/10min以下であってもよいし、20g/10min以下であってもよいし、10g/10min以下であってもよい。
前記ウィンテック(登録商標)シリーズの中でも、ウィンテック(登録商標)WXK1233が特に好ましい。
【0059】
ここで、メタロセン触媒とは、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物(いわゆる、メタロセン化合物)と、メタロセン化合物と反応して該メタロセン化合物を安定なイオン状態に活性化し得る助触媒とからなる触媒であり、必要により、有機アルミニウム化合物を含む。メタロセン化合物は、プロピレンの立体規則性重合を可能とする架橋型のメタロセン化合物である。
【0060】
前記メタロセン触媒の重合品であるプロピレン/α-オレフィン共重合体の中でも、メタロセン触媒の重合品であるプロピレン/α-オレフィンランダム共重合体が好ましく、前記メタロセン触媒の重合品であるプロピレン/α-オレフィンランダム共重合体の中でも、メタロセン触媒の重合品であるプロピレン/炭素数2のα-オレフィンランダム共重合体、メタロセン触媒の重合品であるプロピレン/炭素数4のα-オレフィンランダム共重合体、及び、メタロセン触媒の重合品であるプロピレン/炭素数5のα-オレフィンランダム共重合体の中から選ばれるものが好ましく、これらの中でも、メタロセン触媒の重合品であるプロピレン/エチレンランダム共重合体が最適である。
【0061】
ここで、前記エラストマー層が基材1の最外層に配されていると、基材1をロール体とした場合に、最外層に配された前記エラストマー層同士がブロッキングし易くなる(くっつき易くなる)。そのため、基材1をロール体から巻き戻し難くなる。
これに対し、前記した積層構造の基材1の好ましい態様では、非エラストマー層/エラストマー層/非エラストマー層、すなわち、最外層に非エラストマー層が配されているので、このような態様の基材1は、耐ブロッキング性に優れたものとなる。
これにより、ブロッキングすることが原因となって、後述するダイシングダイボンドフィルムを用いた半導体装置の製造が遅延することを抑制できる。
【0062】
粘着剤層2は、粘着剤を含有する。
粘着剤層2は、半導体チップに個片化するための半導体ウェハを粘着することにより保持する。
【0063】
前記粘着剤としては、ダイシングテープ10の使用過程において外部からの作用により粘着力を低減可能なもの(以下、粘着低減型粘着剤という)が挙げられる。
【0064】
粘着剤として粘着低減型粘着剤を用いる場合、ダイシングテープ10の使用過程において、粘着剤層2が比較的高い粘着力を示す状態(以下、高粘着状態という)と、比較的低い粘着力を示す状態(以下、低粘着状態という)とを使い分けることができる。例えば、ダイシングテープ10に貼付された半導体ウェハが割断に供されるときには、半導体ウェハの割断により個片化された複数の半導体チップが、粘着剤層2から浮き上がったり剥離したりすることを抑制するために、高粘着状態を利用する。
これに対し、半導体ウェハの割断後に、個片化された複数の半導体チップをピックアップするためには、粘着剤層2から複数の半導体チップをピックアップし易くするために、低粘着状態を利用する。
【0065】
前記粘着低減型粘着剤としては、例えば、ダイシングテープ10の使用過程において活性エネルギー線の照射によって硬化させることが可能な粘着剤(以下、活性エネルギー線硬化粘着剤という)が挙げられる。
すなわち、前記粘着低減型粘着剤は、活性エネルギー線の照射によって硬化する硬化成分を含んでいる。
【0066】
前記活性エネルギー線硬化粘着剤としては、例えば、電子線、紫外線、α線、β線、γ線、またはX線の照射によって硬化するタイプの粘着剤が挙げられる。これらの中でも、紫外線照射により硬化する粘着剤(紫外線硬化粘着剤)を用いることが好ましい。
【0067】
前記活性エネルギー線硬化粘着剤としては、例えば、主成分としてのベースポリマーと、活性エネルギー線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基を有する活性エネルギー線重合性モノマー成分や活性エネルギー線重合性オリゴマー成分とを含む、添加型の活性エネルギー線硬化粘着剤が挙げられる。
前記ベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーを用いることが好ましい。
なお、前記ベースポリマーは、活性エネルギー線照射によって重合して硬化することにより、粘着剤層2の粘着力を低下させるものであってもよい。
【0068】
前記アクリル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマー単位を含むものが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、及び、(メタ)アクリル酸アリールエステル等が挙げられる。
前記(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマー単位としては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、エチルアクリレート(EA)、ブチルアクリレート(BA)、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、イソノニルアクリレート(iNA)、ラウリルアクリレート(LA)、4-アクリロイルモルホリン(AMCO)、2-イソシアナトエチル=メタアクリレート(MOI)等を用いることが好ましい。
前記(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマー単位は、1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記アクリル系ポリマーは、前記(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマー単位として、前記2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)と、前記2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)と、前記2-イソシアナトエチル=メタアクリレート(MOI)とを含むことが好ましい。
また、前記アクリル系ポリマーは、前記(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマー単位として、前記2EHA、前記HEA、及び、前記MOIに加えて、前記ラウリルアクリレート(LA)と、イソノニルアクリレート(iNA)とを含んでいてもよい。
【0069】
粘着剤層2は、外部架橋剤を含んでいてもよい。
外部架橋剤としては、ベースポリマー(例えば、アクリル系ポリマー)と反応して架橋構造を形成できるものであれば、どのようなものでも用いることができる。
このような外部架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、ポリオール化合物、アジリジン化合物、及び、メラミン系架橋剤等が挙げられる。
【0070】
前記活性エネルギー線重合性モノマー成分としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、および、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記活性エネルギー線重合性オリゴマー成分としては、例えば、ウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系などの種々のオリゴマーが挙げられる。前記活性エネルギー線硬化粘着剤中の活性エネルギー線重合性モノマー成分や活性エネルギー線重合性オリゴマー成分の含有割合は、粘着剤層2の粘着性を適切に低下させる範囲で選ばれる。
【0071】
前記活性エネルギー線硬化粘着剤は、光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、α-ケトール系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール系化合物、芳香族スルホニルクロリド系化合物、光活性オキシム系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、カンファーキノン、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、及び、アシルホスフォナート等が挙げられる。
前記アゾ化合物としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)が挙げられる。
【0072】
粘着剤層2が外部架橋剤を含む場合、粘着剤層2は外部架橋剤を0.1質量部以上3質量部以下含むことが好ましい。
また、粘着剤層2が光重合開始剤を含む場合、粘着剤層2は光重合開始剤を0.1質量部以上10質量部以下含むことが好ましい。
【0073】
粘着剤層2は、前記各成分に加えて、架橋促進剤、粘着付与剤、老化防止剤、顔料、又は、染料などの着色剤等を含んでいてもよい。
【0074】
粘着剤層2の厚さは、1μm以上50μm以下であることが好ましく、2μm以上30μm以下であることがより好ましく、5μm以上25μm以下であることがさらに好ましい。
【0075】
[ダイシングダイボンドフィルム]
図2に示したように、本実施形態に係るダイシングダイボンドフィルム20は、ダイシングテープ10と、ダイシングテープ10上に積層されたダイボンド層3と、を備える。
上記したように、ダイシングテープ10は、基材1と、基材1上に積層された粘着剤層2と、を備える。
そのため、本実施形態に係るダイシングダイボンドフィルム20は、ダイシングテープ10の粘着剤層2上にダイボンド層3が積層されている。
ダイシングダイボンドフィルム20では、ダイボンド層3上に半導体ウェハが貼付される。
ダイシングダイボンドフィルム20を用いた半導体ウェハの割断においては、半導体ウェハと共にダイボンド層3も割断される。
ダイボンド層3は、個片化された複数の半導体チップのサイズに相当する大きさに割断される。これにより、ダイボンド層3付の半導体チップを得ることができる。
【0076】
本実施形態に係るダイシングダイボンドフィルム20では、基材1及び粘着剤層2は、上で説明したのと同様に構成されている。
したがって、以下では、ダイボンド層3について説明する。
【0077】
ダイボンド層3は、熱硬化性を有することが好ましい。
ダイボンド層3に熱硬化性樹脂及び熱硬化性官能基を有する熱可塑性樹脂の少なくとも一方を含ませることにより、ダイボンド層3に熱硬化性を付与することができる。
【0078】
ダイボンド層3が熱硬化性樹脂を含む場合、このような熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、及び、熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの中でもエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0079】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型、ヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型、及び、グリシジルアミン型のエポキシ樹脂が挙げられる。
【0080】
エポキシ樹脂の硬化剤としてのフェノール樹脂としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、及び、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレンが挙げられる。
【0081】
ダイボンド層3が、熱硬化性官能基を有する熱可塑性樹脂を含む場合、このような熱可塑性樹脂としては、例えば、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂が挙げられる。熱硬化性官能基含有アクリル樹脂におけるアクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマー単位を含むものが挙げられる。
熱硬化性官能基を有する熱硬化性樹脂においては、熱硬化性官能基の種類に応じて、硬化剤が選ばれる。
【0082】
ダイボンド層3は、樹脂成分の硬化反応を充分に進行させたり、硬化反応速度を高めたりする観点から、熱硬化触媒(硬化促進剤)を含有していてもよい。熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール系化合物、トリフェニルフォスフィン系化合物、アミン系化合物、およびトリハロゲンボラン系化合物が挙げられる。
【0083】
ダイボンド層3は、熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂はバインダとして機能する。
熱可塑性樹脂としては、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミド6やポリアミド6,6等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、PETやPBT等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
上記熱可塑性樹脂は、一種のみが用いられてもよいし、二種以上が組み合わされて用いられてもよい。
上記熱可塑性樹脂としては、イオン性不純物が少なく、かつ、耐熱性が高いために、ダイボンド層による接続信頼性が確保し易くなるという観点から、アクリル樹脂が好ましい。
【0084】
上記アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマー単位を質量割合で最も多いモノマー単位として含むポリマーであることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、及び、(メタ)アクリル酸アリールエステル等が挙げられる。上記アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他の成分に由来するモノマー単位を含んでいてもよい。上記他の成分としては、例えば、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、アクリルアミド、アクリルニトリル等の官能基含有モノマーや、各種の多官能性モノマー等が挙げられる。ダイボンド層において高い凝集力を実現するという観点から、上記アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル(特に、アルキル基の炭素数が4以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステル)と、カルボキシ基含有モノマーと、窒素原子含有モノマーと、多官能性モノマー(特に、ポリグリシジル系多官能モノマー)との共重合体であることが好ましく、アクリル酸エチルと、アクリル酸ブチルと、アクリル酸と、アクリロニトリルと、ポリグリシジル(メタ)アクリレートとの共重合体であることがより好ましい。
【0085】
ダイボンド層3は、必要に応じて、1種又は2種以上の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、難燃剤、シランカップリング剤、およびイオントラップ剤が挙げられる。
【0086】
ダイボンド層3の厚さは、特に限定されないが、例えば、1μm以上200μm以下である。斯かる厚さは、3μm以上150μm以下であってもよく、5μm以上100μm以下であってもよい。
【0087】
本実施形態に係るダイシングダイボンドフィルム20は、例えば、半導体集積回路を製造するための補助用具として使用される。
以下、ダイシングダイボンドフィルム20の使用の具体例について説明する。
【0088】
半導体集積回路を製造する方法は、半導体ウェハを割断処理によってチップ(ダイ)へ加工すべく半導体ウェハに溝を形成するハーフカット工程と、ハーフカット工程後の半導体ウェハを研削して厚さを薄くするバックグラインド工程と、バックグラインド工程後の半導体ウェハの一面(例えば、回路面とは反対側の面)をダイボンド層3に貼付して、ダイシングテープ10に半導体ウェハを固定するマウント工程と、ハーフカット加工された半導体チップ同士の間隔を広げるエキスパンド工程と、ダイボンド層3と粘着剤層2との間を剥離してダイボンド層3が貼付された状態で半導体チップ(ダイ)を取り出すピックアップ工程と、ダイボンド層3が貼付された状態の半導体チップ(ダイ)を被着体に接着させるダイボンド工程と、を有する。
これらの工程を実施するときに、本実施形態に係るダイシングダイボンドフィルム20が製造補助用具として使用される。
【0089】
ハーフカット工程では、図3A及び図3Bに示すように、半導体集積回路を小片(ダイ)に割断するためのハーフカット加工を施す。詳しくは、半導体ウェハWの回路面とは反対側の面に、ウェハ加工用テープTを貼り付ける(図3A参照)。また、ウェハ加工用テープTにダイシングリングRを取り付ける(図3A参照)。ウェハ加工用テープTを貼付した状態で、分割用の溝を形成する(図3B参照)。バックグラインド工程では、図3C及び図3Dに示すように、半導体ウェハを研削して厚さを薄くする。詳しくは、溝を形成した面にバックグラインドテープGを貼付する一方で、始めに貼り付けたウェハ加工用テープTを剥離する(図3C参照)。バックグラインドテープGを貼付した状態で、半導体ウェハWが所定の厚さになるまで研削加工を施す(図3D参照)。
【0090】
マウント工程では、図4A図4Bに示すように、ダイシングテープ10の粘着剤層2にダイシングリングRを取り付けた後、露出したダイボンド層3の面に、ハーフカット加工された半導体ウェハWを貼付する(図4A参照)。その後、半導体ウェハWからバックグラインドテープGを剥離する(図4B参照)。
【0091】
本実施形態のエキスパンド工程では、比較的高い温度条件下(例えば、室温(23±2℃))にてエキスパンドを実施する。
すなわち、本実施形態のエキスパンド工程では、比較的高い温度条件下でのエキスパンドの前に、比較的低い温度条件下(例えば、-20℃~5℃)でのエキスパンドを実施しない。
そのため、本実施形態のエキスパンド工程は、ダイボンド装置にて実施される。
【0092】
エキスパンド工程では、図5A図5Cに示すように、ダイシングリングRをダイボンド装置の保持具Hに固定する。ダイボンド装置が備える突き上げ部材Uを用いて、ダイシングダイボンドフィルム20を下側から突き上げることによって、ダイシングダイボンドフィルム20を面方向に広げるように引き伸ばす(図5B参照)。これにより、較的高い温度条件下(例えば、室温(23±2℃))において、ハーフカット加工された半導体ウェハWを複数の半導体チップへと個片化するとともに、ダイボンド層3を個片化された複数の半導体チップに相当する大きさに割断する。これにより、ダイボンド層3付の複数の半導体チップが得られる。
また、エキスパンド工程では、上記のように、ダイシングダイボンドフィルム20を面方向に広げるように引き伸ばすことによって、隣り合うダイボンド層3付の半導体チップどうしの間隔を広げる。
そして、上のように、隣り合うダイボンド層3付の半導体チップどうしの間隔を広げた後で、突き上げ部材Uを下降させることによって、エキスパンド状態を解除する(図5C参照)。
【0093】
ピックアップ工程では、図6に示すように、ダイボンド層3付の半導体チップをダイシングテープ10の粘着剤層2から剥離する。
詳しくは、ダイボンド装置が備えるピン部材Pを上昇させて、ピックアップ対象となるダイボンド層3付の半導体チップを、ダイシングテープ10を介して突き上げる。突き上げられたダイボンド層3付の半導体チップを、ダイボンド装置が備える吸着治具Jによって保持する。
【0094】
ダイボンド工程では、ダイボンド装置によってダイボンド層3付の半導体チップを実装基板などの被着体に接着させる。
【0095】
ここで、本実施形態では、前記エキスパンド工程、前記ピックアップ工程、及び、前記ダイボンド工程が、共に、ダイボンド装置にて実施されるが、前記エキスパンド工程によって得られたダイボンド層3付の半導体チップの一部のみが前記ピックアップ工程及び前記ダイボンド工程に供されることがある。
このような場合、残りのダイボンド層3付の半導体チップを有するダイシングダイボンドフィルム20は、前記ダイボンド装置から一旦取り外されて保管されることになる。
【0096】
ここで、本実施形態に係るダイシングダイボンドフィルム20が備えるダイシングテープ10は、上で説明したように、500mm/minの速度で元の長さの180%となる長さまでダイシングテープ10を引き伸ばすことと、引き伸ばしたダイシングテープ10を復元すること、とを交互に3回繰り返しているときに、3回目の引き伸ばし時に測定される引張応力TSの値が7N/10mm以上となっている。
そのため、残りのダイボンド層3付の半導体チップを有するダイシングダイボンドフィルム20を前記ダイボンド装置から一旦取り外して保管しているときに、ダイシングテープ10が過度に収縮することが原因となって、ダイボンド層3どうしが過度にくっ付き合う程度まで隣り合うダイボンド層3付の半導体チップどうしの間隔が狭まることを抑制できる。
また、引張応力TSの値が上記範囲内となっていることにより、ダイシングテープ10に十分な引張力を伝えることができる。
これにより、残りのダイボンド層3付の半導体チップを前記ピックアップ工程及び前記ダイボンド工程に供すべく、ダイシングダイボンドフィルム20を前記ダイボンド装置に取り付けたときに、隣り合うダイボンド層3どうしがくっ付いてしまった場合でも、再度エキスパンド工程に供することにより、隣り合うダイボンド層3どうしのくっ付きを十分に解除させることができる。
その結果、個々のダイボンド層3付の半導体チップを好適にピックアップした上で、実装基板などの被着体に接着させることができる。
【0097】
なお、本発明に係るダイシングテープは、前記実施形態に限定されるものではない。
また、本発明に係るダイシングテープは、前記した作用効果によって限定されるものでもない。
さらに、本発明に係るダイシングテープは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0098】
本明細書によって開示される事項は、以下のものを含む。
【0099】
(1)
基材と、該基材上に積層された粘着剤層と、を備えるダイシングテープであって、
500mm/minの速度で元の長さの180%となる長さまで前記ダイシングテープを面方向に引き伸ばすことと、引き伸ばした前記ダイシングテープを復元することと、を交互に3回繰り返しているときに、3回目の引き伸ばし時に測定される引張応力の値が7N/10mm以上である
ダイシングテープ。
【0100】
(2)
前記引き伸ばすことと前記復元することとを交互に3回繰り返しているときに、3回目の引き伸ばし時に測定される引張貯蔵弾性率の値が18N/mm以上である
上記(1)に記載のダイシングテープ。
【0101】
(3)
前記引き伸ばすことと前記復元することとを交互に3回繰り返しているときに、
1回目の引き伸ばし時に測定される引張応力の値に対する3回目の引き伸ばし時に測定される引張応力の値の維持率が95%以上である
上記(1)または(2)に記載のダイシングテープ。
【0102】
(4)
前記引き伸ばすことと前記復元することとを交互に3回繰り返しているときに、
1回目の引き伸ばし時に測定される引張貯蔵弾性率の値に対する3回目の引き伸ばし時に測定される引張貯蔵弾性率の値の維持率が35%以上である
上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のダイシングテープ。
【0103】
(5)
前記粘着剤層は活性エネルギー線の照射によって硬化する硬化成分を含んでおり、
前記活性エネルギー線の照射前及び照射後において、
前記引き伸ばすことと前記復元することとを交互に3回繰り返しているときに、3回目の引き伸ばし時に測定される引張応力の値が7N/10mm以上である
上記(1)に記載のダイシングテープ。
【0104】
(6)
前記活性エネルギー線の照射前及び照射後において、
前記引き伸ばすことと前記復元することとを交互に3回繰り返しているときに、3回目の引き伸ばし時に測定される引張貯蔵弾性率の値が18N/mm以上である
上記(5)に記載のダイシングテープ。
【0105】
(7)
前記活性エネルギー線の照射前及び照射後において、
前記引き伸ばすことと前記復元することとを交互に3回繰り返しているときに、
1回目の引き伸ばし時に測定される引張応力の値に対する3回目の引き伸ばし時に測定される引張応力の値の維持率が95%以上である
上記(5)または(6)に記載のダイシングテープ。
【0106】
(8)
前記活性エネルギー線の照射前及び照射後において、
前記引き伸ばすことと前記復元することとを交互に3回繰り返しているときに、
1回目の引き伸ばし時に測定される引張貯蔵弾性率の値に対する3回目の引き伸ばし時に測定される引張貯蔵弾性率の値の維持率が95%以上である
上記(5)乃至(7)のいずれかに記載のダイシングテープ。
【実施例0107】
次に、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。以下の実施例は本発明をさらに詳しく説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0108】
<粘着剤組成物Aの作製>
主として、下記表1に示した比率(質量部)で、アクリルモノマー、開始剤、及び、触媒を用いて粘着剤組成物Aを作製した。
具体的には、まず、冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた反応容器内に、アクリルモノマーとして、2-エチルヘキシルアクリレート(以下、2EHAという)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(以下、HEAという)を加え、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNという)をさらに加えて、前記アクリルモノマーの濃度が38質量%となるように酢酸エチルを加えた後、窒素気流下で、62℃にて4時間重合、75℃にて2時間重合処理をし、アクリル系ポリマーAを得た。
次に、このアクリル系ポリマーAに、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(以下、MOIという)を加え、触媒としてジラウリル酸ジブチルスズIVをさらに加えた後、空気気流下で、50℃にて12時間付加反応処理をして、アクリル系ポリマーA’を得た。
次に、アクリル系ポリマーA’の100質量部に対し、外部架橋剤としてのポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン社製)0.75質量部、及び、光重合開始剤(商品名「Omnirad127、IGM社製」2質量部を加えた後、酢酸エチルを用いて、固形分濃度が20質量%となるように希釈して粘着剤組成物Aを作製した。
【0109】
<粘着剤組成物Bの作製>
アクリル系ポリマーAを得るステップにおいて、2EHA及びHEAに加えて、ラウリルアクリレート(以下、LAという)及びイソノニルアクリレート(iNA)を下記表1に示した比率(質量部)で用いた以外は、粘着剤組成物Aと同様にして、粘着剤組成物Bを作製した。
【0110】
【表1】
【0111】
[実施例1]
<ダイシングテープの作製>
シリコーン離型処理が施された面を有するPETセパレータ(厚さ50μm)のシリコーン離型処理面上にアプリケータを用いて前記粘着剤組成物Aを塗布した後(下記表2参照)、120℃で2分間乾燥して、厚さ10μm(下記表2参照)を有する実施例1に係る粘着剤層を形成した。
その後、該粘着剤層上に表3の実施例1の項に示した基材を貼り合わせた後、50℃で24時間エージングして、実施例1に係るダイシングテープを得た。
【0112】
【表2】
【0113】
【表3】
【0114】
なお、実施例1に係る基材は、材料としてウルトラセン(登録商標)520F(東ソー社製)を用いて、単層の押出Tダイ成形機を用いて成形した。
押出Tダイ成形機を用いた成形は、ダイス温度200℃で実施した。
押出成形により得られた基材の厚さは125μmであった。
成形された基材は室温で十分に固化させた後、固化後の基材をロール状に巻き取ってロール体とした。
そして、実施例1に係る基材は、前記ロール体から引き出した基材を所定サイズの平面寸法に切り出すことにより準備した。
【0115】
[実施例2]
<ダイシングテープの作製>
粘着剤組成物Aに代えて粘着剤組成物Bを用い、厚さ30μmとした以外は、実施例1と同様にして、PETセパレータ上に実施例2に係る粘着剤層を形成した(上記表2参照)。
その後、該粘着剤層上に表3の実施例2の項に示した基材を貼り合わせた後、50℃で24時間エージングして、実施例2に係るダイシングテープを得た。
【0116】
なお、実施例2に係る基材は、材料として、ビスタマックス(Vistamax)3980(エクソンモービル社製)を70質量%、ウルトラセン(登録商標)520F(東ソー社製)を30質量%の質量比率で混合した混合樹脂を用いて、単層の押出Tダイ成形機を用いて成形した。
押出Tダイ成形機を用いた成形は、ダイス温度200℃で実施した。
押出成形により得られた基材の厚さは100μmであった。
成形された基材は室温で十分に固化させた後、固化後の基材をロール状に巻き取ってロール体とした。
そして、実施例2に係る基材は、前記ロール体から引き出した基材を所定サイズの平面寸法に切り出すことにより準備した。
【0117】
[実施例3]
<ダイシングテープの作製>
厚さ30μmとした以外は、実施例1と同様にして、PETセパレータ上に実施例3に係る粘着剤層を形成した(上記表2参照)。
その後、該粘着剤層上に表3の実施例3の項に示した基材を貼り合わせた後、50℃で24時間エージングして、実施例3に係るダイシングテープを得た。
【0118】
なお、実施例3に係る基材は、材料として、ウィンテック(Winkek) WXK1233(日本ポリプロ社製)と、ウルトラセン(登録商標)520F(東ソー社製)とを用いて、2種3層の押出Tダイ成形機を用いて成形した。
前記押出Tダイ成形機を用いた成形は、ダイス温度200℃で実施した。
押出成形により得られた基材の厚さは100μmであった。
なお、成形された基材は、A層/B層/C層の3層構造(B層を中間層とし、B層の両面に外層たるA層及びC層が積層された3層構造)を有しており、B層が、ウルトラセン(登録商標)520Fで構成されており、A層及びC層がウィンテック WXK1233で構成されたものであった。
また、A層、B層、及び、C層の厚さの比(層厚比)は、A層:B層:C層=1:10:1であった。
成形された基材は室温で十分に固化させた後、固化後の基材をロール状に巻き取ってロール体とした。
そして、実施例3に係る基材は、前記ロール体から引き出した基材を所定サイズの平面寸法に切り出すことにより準備した。
【0119】
[実施例4]
<ダイシングテープの作製>
粘着剤組成物Aに代えて粘着剤組成物Bを用い、厚さ30μmとした以外は、実施例1と同様にして、PETセパレータ上に実施例4に係る粘着剤層を形成した(上記表2参照)。
その後、該粘着剤層上に表3の実施例4の項に示した基材を貼り合わせた後、50℃で24時間エージングして、実施例4に係るダイシングテープを得た。
【0120】
なお、実施例4に係る基材は、材料として、ウィンテック(Winkek) WXK1233(日本ポリプロ社製)と、ビスタマックス(Vistamax)3980(エクソンモービル社製)を70質量%、ウルトラセン(登録商標)520F(東ソー社製)を30質量%の質量比率で混合した混合樹脂とを用いて、2種3層の押出Tダイ成形機を用いて成形した。
前記押出Tダイ成形機を用いた成形は、ダイス温度200℃で実施した。
押出成形により得られた基材の厚さは100μmであった。
なお、成形された基材は、A層/B層/C層の3層構造(B層を中間層とし、B層の両面に外層たるA層及びC層が積層された3層構造)を有しており、B層が、前記混合樹脂で構成されており、A層及びC層がウィンテック WXK1233で構成されたものであった。
また、A層、B層、及び、C層の厚さの比(層厚比)は、A層:B層:C層=1:10:1であった。
成形された基材は室温で十分に固化させた後、固化後の基材をロール状に巻き取ってロール体とした。
そして、実施例4に係る基材は、前記ロール体から引き出した基材を所定サイズの平面寸法に切り出すことにより準備した。
【0121】
[実施例5]
<ダイシングテープの作製>
厚さ30μmとした以外は、実施例1と同様にして、PETセパレータ上に実施例5に係る粘着剤層を形成した(上記表2参照)。
その後、該粘着剤層上に表3の実施例5の項に示した基材を貼り合わせた後、50℃で24時間エージングして、実施例5に係るダイシングテープを得た。
なお、実施例5に係る基材である「ODZ5」は、大倉工業社製のポリオレフィン系樹脂フィルムであり、その厚さは80μmであった。
【0122】
[比較例1]
<ダイシングテープの作製>
厚さ30μmとした以外は、実施例1と同様にして、PETセパレータ上に比較例1に係る粘着剤層を形成した(上記表2参照)。
その後、該粘着剤層上に表3の比較例1の項に示した基材を貼り合わせた後、50℃で24時間エージングして、比較例1に係るダイシングテープを得た。
なお、比較例1に係る基材である「ODZ4」は、大倉工業社製のポリオレフィン系樹脂フィルムであり、その厚さは80μmであった。
【0123】
[比較例2]
<ダイシングテープの作製>
実施例1と同様にして、PETセパレータ上に比較例2に係る粘着剤層を形成した(上記表2参照)。
その後、該粘着剤層上に表3の比較例2の項に示した基材を貼り合わせた後、50℃で24時間エージングして、比較例2に係るダイシングテープを得た。
【0124】
なお、比較例2に係る基材は、材料としてアクリフト CM8013(住友化学社製)を用いて、単層の押出Tダイ成形機を用いて成形した。
押出Tダイ成形機を用いた成形は、ダイス温度200℃で実施した。
押出成形により得られた基材の厚さは125μmであった。
成形された基材は室温で十分に固化させた後、固化後の基材をロール状に巻き取ってロール体とした。
そして、比較例2に係る基材は、前記ロール体から引き出した基材を所定サイズの平面寸法に切り出すことにより準備した。
【0125】
(引張応力)
各例に係るダイシングテープについて、上の実施形態の項で説明したようにして、1回目の引き伸ばし時の引張応力、2回目の引き伸ばし時の引張応力、及び、3回目の引き伸ばし時の引張応力を測定した。
なお、各例に係るダイシングテープの粘着剤層は、いずれも、活性エネルギー線の照射により硬化するものであったため、活性エネルギー線の照射前および照射後の両方について、各回の引き伸ばし時の引張応力を測定した。
活性エネルギー線の照射前の測定結果を下記表4に示し、活性エネルギー線の照射後の測定結果を下記表5に示した。
また、下記表4及び5には、1回目の引き伸ばし時の引張応力の値に対する各回目の引き伸ばし時の引張応力の値の比率についても示した。
【0126】
(引張貯蔵弾性率)
各例に係るダイシングテープについて、上の実施形態の項で説明したようにして、1回目の引き伸ばし時の引張貯蔵弾性率、2回目の引き伸ばし時の引張貯蔵弾性率、及び、3回目の引き伸ばし時の引張貯蔵弾性率を測定した。
なお、引張貯蔵弾性率についても、活性エネルギー線の照射前及び照射後の両方について測定した。
活性エネルギー線の照射前の測定結果を下記表4に示し、活性エネルギー線の照射後の測定結果を下記表5に示した。
また、下記表4及び5には、1回目の引き伸ばし時の引張貯蔵弾性率の値に対する各回目の引き伸ばし時の引張貯蔵弾性率の値の比率についても示した。
【0127】
(降伏応力)
各例に係るダイシングテープについて、上の実施形態の項で説明したようにして、1回目の引き伸ばし時の降伏応力を求めた。
なお、1回目の引き伸ばし時の降伏応力についても、活性エネルギー線の照射前及び照射後の両方について求めた。
活性エネルギー線の照射前の測定結果を下記表4に示し、活性エネルギー線の照射後の測定結果を下記表5に示した。
なお、下記表4及び表5には、降伏応力に対する1回目の引き伸ばし時の引張応力の比率を示すと共に、降伏応力に対する3回目の引き伸ばし時の引張応力の比率についても示した。
【0128】
(降伏伸び)
各例に係るダイシングテープについて、上の実施形態の項で説明したようにして、1回目の引き伸ばし時の降伏伸びを求めた。
なお、1回目の引き伸ばし時の降伏伸びについても、活性エネルギー線の照射前及び照射後の両方について求めた。
活性エネルギー線の照射前の測定結果を下記表4に示し、活性エネルギー線の照射後の測定結果を下記表5に示した。
【0129】
【表4】
【0130】
【表5】
【0131】
表4及び5に示したように、3回目の引き伸ばし時の引張応力の値と1回目の引き伸ばし時の引張応力の値とに有意な差はなく、また、3回目の引き伸ばし時においても、引張応力は7N/10mm以上もの高い値を示していることが把握される。
このことから、ダイボンド装置にて、ダイボンド工程とエキスパンド工程との両方を実施するプロセスにおいて、くっ付いてしまった隣り合うダイボンド層どうしにおいて、くっ付きを十分に解除させ得ると考えられる。
【符号の説明】
【0132】
1 基材
2 粘着剤層
3 ダイボンド層
10 ダイシングテープ
20 ダイシングダイボンドフィルム
G バックグラインドテープ
H 保持具
J 吸着治具
T ウェハ加工用テープ
U 突き上げ部材
W 半導体ウェハ
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6