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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094833
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】医療用貼付材
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240703BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20240703BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20240703BHJP
   C09J 7/24 20180101ALI20240703BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240703BHJP
   A61F 13/0246 20240101ALI20240703BHJP
   A61F 13/02 20240101ALI20240703BHJP
   A61L 15/18 20060101ALI20240703BHJP
   A61L 15/24 20060101ALI20240703BHJP
   A61L 15/20 20060101ALI20240703BHJP
   A61L 15/58 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/06
C09J133/14
C09J7/24
C09J11/06
A61F13/02 350
A61F13/02 310D
A61L15/18 100
A61L15/18 110
A61L15/24 100
A61L15/24 110
A61L15/20 100
A61L15/20 110
A61L15/58 110
A61L15/58 100
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211661
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004020
【氏名又は名称】ニチバン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】宮下 つばさ
(72)【発明者】
【氏名】木下 武治
(72)【発明者】
【氏名】相内 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 博充
【テーマコード(参考)】
4C081
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4C081AA03
4C081AA12
4C081BA17
4C081BB04
4C081BB07
4C081CA02
4C081CA021
4C081CA05
4C081CA052
4C081CA08
4C081CA082
4C081CA21
4C081CA211
4C081CC01
4C081CC05
4C081CE10
4C081CF21
4C081DA02
4C081DC02
4J004AA10
4J004AA13
4J004AA14
4J004AB01
4J004BA02
4J004CA04
4J004CA07
4J004CB04
4J004EA06
4J004FA09
4J040DF021
4J040DF031
4J040DF061
4J040EC022
4J040EC122
4J040EF282
4J040GA07
4J040GA08
4J040HB31
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA31
4J040LA01
4J040LA11
4J040NA02
(57)【要約】
【課題】一定時間貼付後の皮膚への影響が小さく、柔軟性に優れる医療用貼付材を提供する。
【解決手段】支持体と粘着剤層の積層体を備える医療用貼付材は、前記粘着剤層が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、且つ、一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールに由来する構成単位を含む共重合体と、室温で液状の前記共重合体と相溶する脂肪酸エステルと、を含有する粘着剤組成物からなる。
[化1]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と粘着剤層の積層体を備える医療用貼付材であって、
前記粘着剤層が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、且つ、下記一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールに由来する構成単位を含む共重合体と、室温で液状の前記共重合体と相溶する脂肪酸エステルと、を含有する粘着剤組成物からなり、
前記支持体が、脂肪酸エステルを含有する、医療用貼付材。
【化1】
(一般式(I)中、R11及びR12はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。R13は、炭素数1以上20以下のアルキル基である。n11は、2以上12以下の整数である。)
【請求項2】
前記共重合体が、炭素数が8以上12以下のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルが65質量%以上90質量%以下と、前記(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールが10質量%以上20質量%以下と、その他のビニル単量体が0質量%以上15質量%以下とが溶液重合法により重合した共重合体を、架橋剤にて架橋させたものである、請求項1に記載の医療用貼付材。
【請求項3】
前記脂肪酸エステルが、分子量250以上950以下である単一種の脂肪酸エステルを含有する、請求項1又は2に記載の医療用貼付材。
【請求項4】
前記粘着剤組成物中の前記脂肪酸エステルの含有量が、前記共重合体100質量部に対して、5質量部以上20質量部以下である、請求項1又は2に記載の医療用貼付材。
【請求項5】
前記脂肪酸エステルが、少なくとも1個のオレイン酸残基を有する、請求項1又は2に記載の医療用貼付材。
【請求項6】
前記脂肪酸エステル中の脂肪酸残基が、全てオレイン酸残基である、請求項5に記載の医療用貼付材。
【請求項7】
前記支持体が、ポリオレフィンと無機微粒子とを含有する微多孔性ポリエチレンフィルムである、請求項1又は2に記載の医療用貼付材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着包帯や絆創膏等の皮膚表面に貼付される医療用貼付材、及びその粘着剤層の形成に好適な粘着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用貼付材は皮膚面から剥離することなく、貼付状態が所定時間保持される必要がある。しかし、皮膚への接着性が強すぎると、使用後に貼付材を皮膚から剥離する場合において物理的刺激により痛みを感じる虞がある。また、医療用貼付材の柔軟性が不十分であると、貼付した際に皮膚の動きに追従することができず、剥離したり、しわが発生したり、使用感が悪くなったりする。そのため、医療用貼付材は本来の貼付機能に加えて、一定時間貼付後の皮膚刺激性が少なく、伸縮性、低モジュラス、透湿性等、様々な機能及び性能が求められる。
【0003】
例えば、特許文献1には、炭素数4~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル50~97重量%、特定の構造からなる(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステル2~49重量%等を共重合してなるアクリル系共重合体と、架橋剤とを含有する皮膚貼付用粘着剤組成物が開示されている。該皮膚貼付用粘着剤組成物は、皮膚に対する粘着性が良好であるとともに、剥離時の痛みや皮膚刺激性が小さく、かつ、高い透湿性を有することが示されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、粘着剤層及び担持フィルムの両方に、常温で液状乃至はペースト状の成分が存在する皮膚貼付用粘着シートが開示されている。該皮膚貼付用粘着シートは、製造過程での加工性と貼付時の操作性の両方に優れ、さらに貼付後に屈曲した被着体にも充分に追従できる柔軟性を有することが示されている。
【0005】
また、例えば、特許文献3には、ポリオレフィンと無機微粒子とを含有する樹脂組成物から形成された厚み40~200μmの一軸または二軸延伸微多孔性ポリオレフィンフィルムであり、特定の構造及びサイズである支持体と、粘着剤層とを備える医療用粘着テープが開示されている。該医療用粘着テープは、柔軟で高透湿性の多孔性プラスチックフィルムを支持体とし、ヒトの皮膚面への適用時に手切れ性がよく、貼付中に突っ張り感やごわごわ感などの違和感がなく、かつ、実用上十分な引張り強度を有することが示されている。
【0006】
また、例えば、特許文献4には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とした共重合体と、特定の物性を有する脂肪酸エステルと、とを含有する粘着剤組成物からなる粘着剤層と、特定の物性を有する支持体との積層体を備える医療用貼付材が開示されている。該医療用貼付材は、充分な粘着力を有しつつ、皮膚の同じ部位に繰り返し貼付された場合に皮膚への影響が小さいことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3474381号公報
【特許文献2】特許第3808771号公報
【特許文献3】特許第4153751号公報
【特許文献4】特開2020-006166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、一定時間貼付後の皮膚への影響が小さく、柔軟性に優れる医療用貼付材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、医療用貼付材の粘着剤層を構成する粘着剤組成物に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、特定の構造からなる(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステル等を共重合してなるアクリル系共重合体と、室温で液状の脂肪酸エステルを含有させることで、ヒト皮膚への高い粘着力を維持しつつ、角質剥離面積率が低減され、且つ、支持体に脂肪酸エステルが移行することで、支持体が柔らかくしなやかになることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1) 支持体と粘着剤層の積層体を備える医療用貼付材であって、
前記粘着剤層が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、且つ、下記一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールに由来する構成単位を含む共重合体と、室温で液状の前記共重合体と相溶する脂肪酸エステルと、を含有する粘着剤組成物からなり、
前記支持体が、脂肪酸エステルを含有する、医療用貼付材。
【0011】
【化1】
【0012】
(一般式(I)中、R11及びR12はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。R13は、炭素数1以上20以下のアルキル基である。n11は、2以上12以下の整数である。)
【0013】
(2) 前記共重合体が、炭素数が8以上12以下のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルが65質量%以上90質量%以下と、前記(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールが10質量%以上20質量%以下と、その他のビニル単量体が0質量%以上15質量%以下とが溶液重合法により重合した共重合体を、架橋剤にて架橋させたものである、(1)に記載の医療用貼付材。
(3) 前記脂肪酸エステルが、分子量250以上950以下である単一種の脂肪酸エステルを含有する、(1)又は(2)に記載の医療用貼付材。
(4) 前記粘着剤組成物中の前記脂肪酸エステルの含有量が、前記共重合体100質量部に対して、5質量部以上20質量部以下である、(1)~(3)のいずれか一つに記載の医療用貼付材。
(5) 前記脂肪酸エステルが、少なくとも1個のオレイン酸残基を有する、(1)~(4)のいずれか一つに記載の医療用貼付材。
(6) 前記脂肪酸エステル中の脂肪酸残基が、全てオレイン酸残基である、(5)に記載の医療用貼付材。
(7) 前記支持体が、ポリオレフィンと無機微粒子とを含有する微多孔性ポリエチレンフィルムである、(1)~(6)のいずれか一つに記載の医療用貼付材。
【発明の効果】
【0014】
上記態様の医療用貼付材によれば、一定時間貼付後の皮膚への影響が小さく、柔軟性に優れる医療用貼付材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<粘着剤組成物>
本実施形態に係る医療用貼付材の粘着剤層を構成する粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、且つ、下記一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコール(以下、「(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコール(I)」と称する場合がある)に由来する構成単位を含む共重合体と、室温(1℃以上30℃以下)で液状の前記共重合体と相溶する脂肪酸エステルと、を含有する。
【0016】
【化2】
【0017】
(一般式(I)中、R11及びR12はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。R13は、炭素数1以上20以下のアルキル基である。n11は、2以上12以下の整数である。)
【0018】
[(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とした共重合体]
(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とした共重合体(以下、「アクリル系共重合体」ということがある。)とは、共重合体を構成する全構成単位に対する50モル%以上が(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位である共重合体を意味する。なお、本発明及び本願明細書において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、「アクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステル」を表す。
【0019】
((メタ)アクリル酸アルキルエステル)
アクリル系共重合体の構成単位が由来する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基部分の炭素数が1以上18以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
本実施形態において用いられるアクリル系共重合体の構成単位が由来する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、炭素数が4以上18以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、炭素数が4以上12以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましく、炭素数が6以上12以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルがさらに好ましく、炭素数が8以上12以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルがよりさらに好ましく、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、又は(メタ)アクリル酸イソノニルが特に好ましい。
【0021】
本実施形態において用いられるアクリル系共重合体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位として、アルキル基部分の炭素数が4以上18以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を少なくとも1種類含むものが好ましい。例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位として、アルキル基部分の炭素数が4以上18以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位のみを有している共重合体であってもよく、アルキル基部分の炭素数が4以上18以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位と、これ以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位との両方を含む共重合体であってもよい。
【0022】
((メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコール(I))
(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコール(I)は、アルコキシ末端を有する(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステルである。
【0023】
上記一般式(I)中、R13は、炭素数1以上4以下のアルキル基であることが好ましい。n11は、2以上10以下の整数であることが好ましい。
【0024】
(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコール(I)の具体例としては、例えば、アクリル酸メトキシジエチレングリコール(R11=H、R12=H、R13=CH、n11=2)、メタクリル酸メトキシジエチレングリコール(R11=CH、R12=H、R13=CH、n11=2)、アクリル酸メトキシジプロピレングリコール(R11=H、R12=CH、R13=CH、n11=2)、メタクリル酸メトキシジプロピレングリコール(R11=CH、R12=CH、R13=CH、n11=2)、アクリル酸エトキシジエチレングリコール(R11=H、R12=H、R13=C、n11=2)、メタクリル酸エトキシジエチレングリコール(R11=CH、R12=H、R13=C、n11=2)、アクリル酸エトキシジプロピレングリコール(R11=H、R12=CH、R13=C、n11=2)、メタクリル酸エトキシジプロピレングリコール(R11=CH、R12=CH、R13=C、n11=2)、アクリル酸メトキシトリエチレングリコール(R11=H、R12=H、R13=CH、n11=3)、メタクリル酸メトキシトリエチレングリコール(R11=CH、R12=H、R13=CH、n11=3)、アクリル酸メトキシトリプロピレングリコール(R11=H、R12=CH、R13=CH、n11=3)、メタクリル酸メトキシトリプロピレングリコール(R11=CH、R12=CH、R13=CH、n11=3)、アクリル酸メトキシポリエチレングリコール(R11=H、R12=H、R13=CH、n11=4~10)、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール(R11=CH、R12=H、R13=CH、n11=4~10)、アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール(R11=H、R12=CH、R13=CH、n11=4~10)、メタクリル酸メトキシポリプロピレングリコール(R11=CH、R12=CH、R13=CH、n11=4~10)などが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコール(I)は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
(その他の重合性化合物)
本発明において用いられるアクリル系共重合体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコール(I)に由来する構成単位のみからなる共重合体であってもよく、その他の重合性化合物に由来する構成単位を含む共重合体であってもよい。その他の重合性化合物としては、ビニル基を有する化合物(ビニル単量体)が挙げられる。
【0026】
当該ビニル単量体としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、アミド基、アミノ基、エポキシ基、アルコキシ基、アシル基、シアノ基、アリール基、複素環基等の官能基を有するビニル単量体が挙げられる。水酸基を有するビニル単量体としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル((メタ)アクリル酸エチレングリコール)、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸ジエチレングリコール、メタクリル酸ジエチレングリコール、アクリル酸ジプロピレングリコール、メタクリル酸ジプロピレングリコール、アクリル酸トリエチレングリコール、メタクリル酸トリエチレングリコール、アクリル酸トリプロピレングリコール、メタクリル酸トリプロピレングリコール、アクリル酸ポリエチレングリコール、メタクリル酸ポリエチレングリコール、アクリル酸ポリプロピレングリコール、メタクリル酸ポリプロピレングリコール等のOH末端を有する(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールエステル等が挙げられる。カルボキシル基又は酸無水物基を有するビニル単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノブチル等が挙げられる。アミド基を有するビニル単量体としては、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド等が挙げられる。アミノ基を有するビニル単量体としては、ジメチルアミノエチルアクリレート等が挙げられる。エポキシ基を有するビニル単量体としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等が挙げられる。アルコキシ基を有するビニル単量体としては、アクリル酸2-メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル等のアクリル酸アルコキシアルキルエステル等が挙げられる。アシル基を有するビニル単量体としては、酢酸ビニル等のビニルエステル等が挙げられる。シアノ基を有するビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル等が挙げられる。アリール基を有するビニル単量体としては、スチレン等のビニル芳香族化合物等が挙げられる。複素環基を有するビニル単量体としては、N-ビニルピロリドン等のピロリドン環を有するビニル単量体等が挙げられる。これらのビニル単量体は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
本実施形態において用いられるアクリル系共重合体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコール(I)と、その他のビニル単量体との共重合体であることが好ましく、当該その他のビニル単量体に、水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、アミド基、アミノ基、エポキシ基、及びアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有するビニル単量体(以下、「ビニル単量体(A)」ということがある。)が少なくとも1種含まれている共重合体であることがより好ましい。
【0028】
本実施形態において用いられるアクリル系共重合体としては、共重合反応に用いられる単量体の総質量に対して、炭素数が4以上18以下、好ましくは8以上12以下のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルが65質量%以上90質量%以下、好ましくは70質量%以上90質量%以下、より好ましくは75質量%以上90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以上90質量%以下、特に好ましくは81質量%以上85質量%以下、最も好ましくは83質量%;(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコール(I)が10質量%以上20質量%以下、好ましくは11質量%以上20質量%以下、より好ましくは12質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは12質量%以上19質量%以下、特に好ましくは14質量%以上18質量%以下、最も好ましくは16質量%;ビニル単量体(A)が0質量%以上15質量%以下、好ましくは0質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上5質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以上3量%以下、特に好ましくは0.5質量%以上1.5質量%以下、最も好ましくは1質量%;及び、ビニル単量体(A)以外のビニル単量体が0質量%以上15質量%以下;の共重合体であることが好ましい。
【0029】
中でも、ビニル単量体(A)が(メタ)アクリル酸エチレングリコールであることが特に好ましく、共重合反応に用いられる単量体の総質量に対して、炭素数が4以上18以下、好ましくは8以上12以下のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルが65質量%以上90質量%以下、好ましくは70質量%以上90質量%以下、より好ましくは75質量%以上90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以上90質量%以下、特に好ましくは81質量%以上85質量%以下、最も好ましくは83質量%;(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコール(I)が10質量%以上20質量%以下、好ましくは11質量%以上20質量%以下、より好ましくは12質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは12質量%以上19質量%以下、特に好ましくは14質量%以上18質量%以下、最も好ましくは16質量%;ビニル単量体(A)が0質量%以上15質量%以下、好ましくは0質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上5質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以上3量%以下、特に好ましくは0.5質量%以上1.5質量%以下、最も好ましくは1質量%;及び、ビニル単量体(A)以外のビニル単量体が0質量%以上15質量%以下;の共重合体であることがより好ましい。
【0030】
このような共重合組成を有するアクリル系共重合体を粘着剤として用いることにより、粘着剤層が薄くても適度の粘着性を示し、その他の特性にも優れた粘着剤層を形成することが容易となる。
【0031】
本実施形態において用いられるアクリル系共重合体の重量平均分子量は、好ましくは300,000以上1,000,000以下、より好ましくは450,000以上650,000以下である。アクリル系共重合体の重量平均分子量を上記範囲内とすることによって、凝集性、粘着力、他成分との混合作業性、他成分との親和性等をバランスさせることができる。分子量が300,000を下回ると凝集性が低下するため、剥離時に皮膚への糊残りを生ずる恐れがある。重量平均分子量が1,000,000を上回ると、製造時の取り扱い性に劣る。アクリル系共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により、標準ポリスチレン換算値として求めた値である。
【0032】
本発明において用いられるアクリル系共重合体は、一般に、ラジカル重合させることにより合成することができる。当該アクリル系共重合体は、溶液重合法、懸濁重合法、又は乳化重合法により製造することができるが、良好な粘着特性が得られ易い点で、溶液重合法が好ましい。重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤;等が挙げられる。全単量体に対して、0.1質量%以上3質量%以下程度の割合でラジカル重合開始剤を加え、窒素気流下、40℃以上90℃以下程度の温度で、数時間から数十時間撹拌して共重合させる。溶液重合法では、溶媒として、酢酸エチル、アセトン、トルエン、これらの混合物等が汎用されている。
【0033】
[架橋及び架橋剤]
本実施形態において用いられる粘着剤組成物は、架橋剤を含有していてもよい。当該粘着剤組成物が架橋剤を含有する場合には、当該粘着剤組成物中のアクリル系共重合体を架橋処理して粘着剤層を形成することによって、粘着剤層の凝集力を向上させることができる。
【0034】
架橋剤としては、多官能イソシアネート化合物〔トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等〕や多官能エポキシ化合物、アセチルアセトン金属塩等が挙げられる。また、例えば、日本ポリウレタン工業株式会社製のコロネート(登録商標)HL、コロネートL、コロネートEH、三菱ガス化学株式会社製のTETRAD-X、(登録商標)、TETRAD-C(登録商標)、ナーセム(登録商標)アルミニウム等の市販品を架橋剤とすることができる。架橋剤は、単独で、又は2種類以上を用いてもよい。
【0035】
本実施形態において用いられる粘着剤組成物が架橋剤を含有する場合、架橋剤の含有量は、アクリル系共重合体100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上1質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上0.9質量部以下、さらに好ましくは0.4質量部以上0.8質量部以下、特に好ましくは0.5質量部以上0.7質量部以下、最も好ましくは0.6質量部である。
【0036】
本実施形態において用いられる粘着剤組成物に架橋剤を含有させる場合、架橋剤は、当該粘着剤組成物に予め含有させていてもよく、当該粘着剤組成物を支持体に塗工する直前又は塗工中の粘着剤組成物に添加してもよい。
【0037】
(液状可塑剤)
本実施形態に係る医療用貼付材の粘着剤層に含有される液状可塑剤は、粘着剤層を可塑化してソフト感を付与するものであり、これにより皮膚刺激性が低減される。本発明において用いられる粘着剤組成物が含有する液状可塑剤は、室温で液状であり、当該粘着剤組成物が含有するアクリル系共重合体と相溶である脂肪酸エステルである。
【0038】
脂肪酸エステルの重量平均分子量は250以上950以下が好ましく、350以上550以下がより好ましく、400以上550以下であることがさらに好ましい。なお、以下、単に「分子量」と称する場合には、重量平均分子量を意味する。また、脂肪酸エステルの(重量平均)分子量には、単一種の脂肪酸エステルの重量平均分子量(この場合、分子量分布はほとんどなく、実質的には単一種固有の分子量となる)や、複数種類の脂肪酸エステルの重量平均分子量が包含される。当該粘着剤組成物に含有されている室温で液状の脂肪酸エステルが、当該粘着剤組成物が含有するアクリル系共重合体と相溶であり、かつ分子量250以上950以下、好ましくは350以上550以下、より好ましくは400以上550以下である単一種の脂肪酸エステルのみであってもよく、2種類以上の脂肪酸エステルを含有していてもよい。室温で液状であり、当該粘着剤組成物が含有するアクリル系共重合体と相溶である脂肪酸エステルが2種類以上含有されている場合、これらの脂肪酸エステルの重量平均分子量が上記範囲内にあればよい。室温で液状であり、大きさが特定の範囲であって、アクリル系共重合体と相溶である脂肪酸エステルを用いることにより、アクリル系共重合体と脂肪酸エステルが均一に混じりあっており、ヒト皮膚への高い粘着力を維持しつつ、皮膚から剥離した際に皮膚への残留が充分に抑えられた粘着剤層が形成される。
【0039】
分子量が上記範囲内である脂肪酸エステルであって、アクリル系共重合体との相溶性が高いものは、充分な可塑性を付与でき、さらに、粘着剤組成物塗工後の乾燥工程等の加熱工程での揮散が無い。このため、分子量が上記範囲内の脂肪酸エステルを液状可塑剤として用いることにより、粘着剤層を形成した場合に適度な皮膚接着性を付与可能であり、かつ剥離時に剥離される角質の面積を抑えることが可能な粘着剤組成物が得られる。
【0040】
本実施形態において用いられる粘着剤組成物は、分子量が上記範囲内の脂肪酸エステルの中でも、少なくとも1個の脂肪酸残基(脂肪酸に由来する残基。具体的には、脂肪酸から水酸基を除いた基)がオレイン酸残基(オレイン酸から水酸基を除いた基)であるオレイン酸エステルを含有することが好ましい。液状可塑剤としてオレイン酸エステル(少なくとも1個のオレイン酸残基を有する脂肪酸エステル)を用いると、本実施形態において用いられる粘着剤組成物から形成された粘着剤層は、連続貼付時(長期間貼付時)や繰り返し貼付時に皮膚への影響がより低減される。
【0041】
オレイン酸エステルとしては、1価アルコールとオレイン酸のエステルであってもよく、多価アルコールとオレイン酸のエステルであってもよい。1価アルコールとしては、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール等のアルキルアルコールが挙げられる。多価アルコールとしては、グルセリン、ソルビトール、グリコール等が挙げられる。
【0042】
多価アルコールとオレイン酸のエステルの場合、多価アルコール中の1個の水酸基のみが脂肪酸とエステル結合していてもよく、2個以上の水酸基が脂肪酸とエステル結合していてもよい。2個以上の水酸基が脂肪酸とエステル結合したオレイン酸エステルの場合、エステル中の脂肪酸残基の一部のみがオレイン酸残基であってもよく、エステル中の全ての脂肪酸残基がオレイン酸残基であってもよい。
【0043】
本実施形態において用いられる粘着剤組成物が含有する分子量が上記範囲内のオレイン酸エステルとしては、具体的には、オレイン酸オクチル、オレイン酸ラウリル、オレイン酸ミリスチル、オレイン酸セチル、オレイン酸ステアリル、オレイン酸イソステアリル、オレイン酸オレイル、モノオレイン酸グリセリル、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、ヒマシ油脂肪酸エステル等が挙げられる。これらのオレイン酸エステルは、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。本実施形態において用いられる粘着剤組成物が含有するオレイン酸エステルとしては、モノオレイン酸グリセリル(分子量:356.5)、モノオレイン酸ソルビタン(分子量:428.6)、オレイン酸オレイル(分子量:531)が好ましく、特に、オレイン酸オレイルが特に好ましい。
【0044】
本実施形態において用いられる粘着剤組成物における分子量が上記範囲内のオレイン酸エステルの含有量は、アクリル系共重合体100質量部に対して、好ましくは1質量部以上35質量部以下、より好ましくは3質量部以上25質量部以下、さらに好ましくは5質量部以上20質量部以下である。この含有量が1質量部未満の場合、粘着剤層の可塑化が不充分となって皮膚刺激性を低減することができない場合があり、逆に35質量部を超える場合、粘着剤が有する凝集力が低下し、剥離時に皮膚への糊残りを生ずる恐れがある。
【0045】
本実施形態において用いられる粘着剤組成物におけるオレイン酸エステル以外の脂肪酸エステルであって、分子量が上記範囲内のものとしては、ミリスチン酸イソプロピル(分子量:約268)、イソステアリン酸イソステアリル(分子量:約537)等が挙げられる。
【0046】
本実施形態において用いられる粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない限度において、分子量が上記範囲内の脂肪酸エステル以外のその他の液状可塑剤を含有していてもよい。その他の液状可塑剤としては、室温で液状であり、かつアクリル系共重合体と相溶性のある可塑剤であれば特に限定されるものではない。例えば、分子量が250未満のオレイン酸エステル、分子量が950超のオレイン酸エステル、オレイン酸エステル以外の脂肪酸エステル、脂肪酸エステル以外の液状可塑剤等が挙げられる。脂肪酸エステル以外の液状可塑剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール;オリーブ油、ヒマシ油、スクアレン、ラノリン等の油脂;流動パラフィン等の炭化水素類;等が挙げられる。その他、室温で液状の有機溶剤や界面活性剤を用いることもできる。また、粘着剤組成物に含有されている脂肪酸エステル全体として当該粘着剤組成物を構成するアクリル系共重合体と相溶であればよく、当該アクリル系共重合体と不相溶の脂肪酸エステルを含有していてもよい。
【0047】
本実施形態において用いられる粘着剤組成物が含有する液状可塑剤が、分子量が上記範囲内であり、かつアクリル系共重合体と相溶である脂肪酸エステルのみである場合、本実施形態において用いられる粘着剤組成物における分子量が上記範囲内の脂肪酸エステルの含有量は、アクリル系共重合体100質量部に対して、好ましくは1質量部以上35質量部以下、より好ましくは3質量部以上25質量部以下、さらに好ましくは5質量部以上20質量部以下である。この含有量が1質量部未満の場合、粘着剤層の可塑化が不充分となって皮膚刺激性を低減することができない場合があり、逆に35質量部を超える場合、粘着剤が有する凝集力が低下し、剥離時に皮膚への糊残りを生ずる恐れがある。なお、アクリル系共重合体が含有する分子量が上記範囲内であり、かつアクリル系共重合体と相溶である脂肪酸エステルが2種類以上である場合、「粘着剤組成物における分子量が上記範囲内の脂肪酸エステルの含有量」は、分子量が上記範囲内であり、かつアクリル系共重合体と相溶である脂肪酸エステルに該当する脂肪酸エステルの総量を意味する。
【0048】
本実施形態において用いられる粘着剤組成物に、分子量が上記範囲内であり、かつアクリル系共重合体と相溶である脂肪酸エステルと、その他の液状可塑剤とを含有する場合、本実施形態において用いられる粘着剤組成物に含まれている液状可塑剤全量に対する、分子量が上記範囲内の脂肪酸エステルの含有量は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。また、粘着剤組成物に含まれている液状可塑剤全体の重量平均分子量、特に、室温で液状の脂肪酸エステル全体の重量平均分子量が、250以上950以下の範囲であることが好ましく、350以上550以下の範囲であることがより好ましく、400以上550以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0049】
(添加剤)
本実施形態において用いられる粘着剤組成物は、前記架橋剤の他に、必要に応じて、各種添加剤を含有することができる。当該添加剤としては、薬物、充填剤、酸化防止剤(抗酸化剤、防腐剤)、着色剤、香料、粘着付与剤等、貼付材が備える粘着剤層を形成する粘着剤において慣用されている添加剤を含有することができる。例えば、粘着剤の粘着特性を調整するために、粘着付与剤を配合することができる。粘着付与剤としては、例えば、テルペン系、テルペンフェノール系、クマロンインデン系、スチレン系、ロジン系、キシレン系、フェノール系、石油系等の粘着付与樹脂を挙げることができる。
【0050】
<医療用貼付材>
本実施形態に係る医療用貼付材は、支持体と粘着剤層の積層体を備える。本実施形態に係る医療用貼付材は、支持体の少なくとも片面に、本実施形態において用いられる粘着剤組成物からなる粘着剤層を備えることが好ましい。粘着剤層が前記粘着剤組成物により形成されるため、ヒト皮膚への充分な粘着力を維持しつつ、剥離時の角質の剥離面積を抑えられた医療用貼付材が得られる。
【0051】
また、本実施形態に係る医療用貼付材は、支持体が脂肪酸エステルを含有することで、支持体が柔らかくしなやかになり、皮膚追従性が向上し、はがれにくい。
【0052】
さらに、本実施形態に係る医療用貼付材は、粘着剤層が前記粘着剤組成物により形成されるため、皮膚表面の同じ部位に連続貼付又は繰り返し貼付した際にも皮膚刺激への影響が少ない。このため、本実施形態に係る医療用貼付材は、カテーテル等のチューブ固定用のように皮膚の同じ部位に繰り返し貼付される貼付材や、磁気治療器絆創膏、テーピングテープ等のような皮膚の特定の部位に連続貼付や繰り返し貼付される貼付材に好適である。
【0053】
(支持体)
本実施形態に係る医療用貼付材を構成する支持体は、脂肪酸エステルを含有するものである。脂肪酸エステルとしては、上記粘着剤組成物において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0054】
支持体としては、例えば、含浸紙、コート紙、上質紙、クラフト紙、和紙、グラシン紙等の紙類;ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリウレタンフィルム、セロハンフィルム等のプラスチックフィルム;発泡体;不織布、織布、編布等の布帛類;これら2種以上の積層体;等が挙げられる。前記布帛類の材質としては、木綿等の天然素材、合成樹脂素材、再生樹脂材料及びこれら適宜を組み合わせた各種の材料を用いることができ、中でも、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリアミド、アクリル樹脂、木綿等を原料とする不織布、織布、編布等を用いることができ、好ましくは、ポリオレフィンと無機微粒子とを含有する微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることができる。
【0055】
上記微多孔性ポリエチレンフィルムは、例えば、ポリオレフィンと無機微粒子とを含有する樹脂組成物を用いて未延伸フィルムを作製し、次いで、該フィルムを一軸または二軸方向に延伸して延伸フィルムとすることで得られる。この延伸フィルムは、無機微粒子の存在下に延伸されているため、微多孔性を有しており、通気性や透湿性に優れている。
【0056】
ポリオレフィンとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー樹脂(IO)などを挙げることができる。
【0057】
ポリオレフィンには、LLDPEのような、エチレン-α-オレフィン共重合体が含まれる。α-オレフィンとしては、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-へキセン、1-オクテン、1-デセンなどが挙げられる。これらのポリオレフィンは、通常のチーグラー・ナッタ触媒を用いて得られたものであっても、あるいはメタロセン触媒や拘束幾何触媒などのシングルサイト触媒を用いて得られたものであってもよい。
【0058】
ポリオレフィンの密度は、通常0.89~0.97g/cmの範囲内であり、メルトインデックス(MI)は、通常0.1~50g/10minの範囲内である。これらのポリオレフィンは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0059】
無機充填剤(無機微粒子)としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン、シリカ、クレー、タルク、硫酸アルミニウムなどを挙げることができる。これらの無機充填剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み含わせて使用することができる。
【0060】
無機充填剤の形状は、任意であるが、球状、粒状、不定形などの形状であることが好ましい。
【0061】
無機充填剤の平均粒径は、通常0.07~15μm、好ましくは0.1~9μm程度である。平均粒径がこの範囲内にあることによって、延伸性が良好で、平均孔径、透気度、透湿度などを所望の範囲に調整しやすくなる。
【0062】
無機充填剤の配合割合は、ポリオレフィン100質量部に対して、通常50~250質量部、好ましくは80~200質量部程度である。無機充填剤の配合割合がこの範囲内にあることによって、得られる微多孔性フィルムの諸特性を所望の範囲に調整することができる。ポリオレフィンと無機充填剤とを含有する樹脂組成物には、必要に応じて、分散剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、帯電防止剤などの添加剤を含有させることができる。
【0063】
微多孔性ポリオレフィンフィルムの平均孔径は、通常0.02~10μm、好ましくは0.05~6μm、より好ましくは0.1~5μmの範囲内である。
【0064】
支持体の厚みは、伸び、引張り強さ、作業性等の物理的性質や、貼付時の感触や患部の密閉性等を考慮して適宜選択可能であるが、通常5μmから1mm程度である。なお、支持体の厚みが5μm以上30μm以下程度とごく薄い場合は、粘着剤層が設けられた支持体の一方側の面とは反対の面(以下、他方側の面という)上に、キャリア層を設けてもよい。
【0065】
支持体が布帛類である場合、その厚みは、好ましくは50μm以上1mm以下、より好ましくは100μm以上800μm以下、更に好ましくは200μm以上700μm以下である。また、目付けは、皮膚への追従性の点から、好ましくは400g/m以下、より好ましくは300g/m以下、さらに好ましくは250g/m以下である。
【0066】
また、支持体がプラスチックフィルムである場合、その厚みは、好ましくは10μm以上300μm以下、より好ましくは12μm以上200μm以下、さらに好ましくは15μm以上150μm以下である。なお、支持体がフィルムである場合は、粘着剤層と支持体の投錨性を向上することを目的に、支持体の一方側の面又は他方側の面、あるいはそれら両面にサンドブラスト処理、コロナ処理等の処理を行なってもよい。
【0067】
前記支持体の厚みが5μmよりも小さいと、粘着テープの強度や取り扱い性が低下して、皮膚への貼付が困難になり、他の部材等との接触によって破れたり、入浴等の水との接触によって短時間で皮膚から剥離したりすることがある。また、支持体の厚みが大きすぎる(1mmより超える)と、粘着テープが皮膚の動きに追随しにくくなり、粘着テープの辺縁部に剥がれるきっかけを形成しやすくなるため、短時間で皮膚から剥離したり、貼付中の違和感が増えたりするおそれがある。
【0068】
(粘着剤層)
粘着剤層は、本実施形態において用いられる粘着剤組成物を、支持体の表面に所望の厚みとなるように塗工し、乾燥させることにより形成される。粘着剤組成物が架橋剤を含む場合、塗工後に紫外線照射処理等の架橋剤の種類に応じた架橋処理を行う。
【0069】
本実施形態に係る医療用貼付材における粘着剤層の厚みは、特に限定されるものではなく、好ましくは1μm以上200μm以下、より好ましくは10μm以上100μm以下、さらに好ましくは20μm以上80μm以下である。粘着力は、粘着剤層の厚みに依存し、粘着剤層の厚みが厚すぎると、粘着力が高くなりすぎ、粘着剤層の厚みが薄すぎると、粘着力が弱くなる。粘着剤層の厚みを前記範囲内とすることで、皮膚に十分な粘着力で粘着できることに加えて、貼付材を皮膚等の微細な凹凸のある被着体表面に沿って密着させることができ、さらに、使用後に剥離した際に皮膚刺激を低く抑えることができる。
【0070】
(キャリア層)
本実施形態に係る医療用貼付材は、支持体に仮着させてキャリア層を形成させてもよい。例えば、「キャリア層/支持体/粘着剤層/セパレーター層」の積層構成を有する貼付材とすることができる。キャリア層により、支持体の厚さが薄い場合に、支持体の製膜性、貼付材の取扱性、被着体への貼付性を向上させることができる。キャリア層は、貼付材の取扱性を向上させるために設けられるものであるから、貼付材の全面を覆っていても、貼付材の縁部のみを覆っていても、あるいは、格子状等のパターン状に覆っていてもよい。
【0071】
キャリア層は、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン等の各種熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いて形成することが好ましい。
【0072】
各種フィルムは、紙にラミネートされた状態のものでもよい。これらのキャリア層は、支持体(例えばポリウレタンエラストマーフィルム)に比べて、厚みが厚いか、腰の強いものとすることが好ましい。キャリア層の厚みは、適宜設定できるが、通常、10μm以上、好ましくは20μm以上であり、その上限値は500μm程度である。
【0073】
(セパレーター層)
本実施形態に係る医療用貼付材は、支持体層、粘着剤層の他に、通常、粘着剤層を皮膚に貼り付けるときまで、粘着剤層を保護するために、粘着剤層に隣接してセパレーター層が備えられる。
【0074】
本実施形態におけるセパレーター層としては、特に限定されず、貼付材の技術分野において、一般に、離型紙、離型フィルム、剥離紙、剥離フィルム、剥離ライナー等と称して使用されるものを用いることができる。具体的には、例えば、表面をシリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、表面をシリコーン処理したポリエチレンと紙との積層体等が挙げられる。また、セパレーター層は、取扱い性(すなわち、粘着剤層からの剥離性)を向上するために、切れ目を設けてもよく、貼付材より大きな面積に形成し、周縁部に掴み部を設けてもよい。また、セパレーター層は、取扱い性の向上や印刷適性の向上等の目的で、セパレーター層の粘着剤層に対向する面又は粘着剤層の反対側の面に、サンドブラスト処理等による凹凸を設けてもよい。
【0075】
セパレーター層の厚みは、適宜設定することができ、特に限定されないが、通常20μm以上、好ましくは40μm以上であり、その上限値は500μm程度である。
【0076】
(医療用貼付材の製造方法)
本実施形態に係る医療用貼付材の製造方法は特に限定されない。例えば、いわゆる剥離ライナーとして一般に使用されるセパレーター層の上に、粘着剤溶液を塗布し、乾燥させて粘着剤層を形成する方法を採用することが好ましい。粘着剤層の連続的な形成方法としては、セパレーター層を一方向に走行させながら、その上に粘着剤溶液を塗布し、乾燥させる方法が好ましい。粘着剤を溶融してセパレーター層上に塗工する方法を採用してもよい。また、特定の形状の繰り返しパターンコーティングとすることもできる。
【0077】
セパレーター層の片面に粘着剤層を形成した積層体と支持体とを、粘着剤層と支持体の表面が密着するように貼り合わせることにより、「支持体/粘着剤層/セパレーター層」の積層構成を有する貼付材を作製することができる。また、支持体の片面に任意層であるキャリア層を形成した積層体の場合、粘着剤層と当該積層体の支持体の表面が密着するように貼り合わせることにより、「キャリア層(任意層)/支持体/粘着剤層/セパレーター層」の積層構成を有する貼付材を作製することができる。
【実施例0078】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0079】
本実施例では、貼付材の一定時間貼付後の皮膚への粘着剤組成物の組成(主剤及び可塑剤の種類)の影響を検討した。また、モジュラスへの支持体の組成の影響を検討した。具体的な貼付材の製造方法及び評価方法について以下に説明する。
【0080】
<貼付材の製造>
[実施例1]
1.粘着剤組成物の調製
イソノニルアクリレート(INA)/アクリル酸メトキシノナエチレングリコール(以下、「130A」と略記する場合がある)/メタクリル酸エチレングリコール(以下、「PE350」と略記する場合がある)=83/16/1(質量比)からなる単量体混合物を共重合反応して得られたアクリル系共重合体の溶液に、アクリル系共重合体100質量部に対して、可塑剤として、ミリスチン酸イソプロピル10質量部となるように混合し、さらに架橋剤としてコロネートL(東ソー株式会社製、TDI系汎用硬化剤)0.06質量部を混合し、均一な粘着剤組成物の溶液を調製した。
【0081】
2.貼付材の製造
調製した粘着剤組成物の溶液を、支持体として、粉末状の脂肪酸エステル含有のポリエチレンフィルム(厚さ:50μm、以下、「フィルムA」と称する場合がある)、乾燥後の厚みが38μmになるよう塗布、乾燥して、支持体上に粘着剤層を形成して、貼付材を作製した。
【0082】
[実施例2~7及び比較例1~4]
表1~表2に記載のとおり、主剤、架橋剤、及び液状可塑剤を組み合わせて粘着剤組成物を調製し、表1~表2に記載の支持体を用いた以外は、実施例1と同様の方法を用いて、貼付材を作製した。
【0083】
[実施例8及び比較例5~13]
表3~表5に記載のとおり、主剤、架橋剤、及び液状可塑剤を組み合わせて粘着剤組成物を調製し、表3~表5に記載の支持体を用いた以外は、実施例1と同様の方法を用いて、貼付材を作製した。
【0084】
<貼付材の評価>
[吸水量の測定]
まず、試験サンプルである貼付材の背面全体に裏打ち用テープを貼り付けた。次いで、試験サンプルを20×11mmの長方形に切り取った。生理食塩水約50mLを容量100mLのディスポカップ等の容器に入れた。切り取った部分の剥離ライナーを剥がして試験片とし、その質量を電子はかり(最小表示0.001g以下)を用いて測定し、その質量を初期質量W0(g)とした。質量を測定した試験片を生理食塩水中に浸した。試験片が浮く場合は、皮膚に接触する面が生理食塩水に完全に接触するようにした。37℃、80%RHの雰囲気で24時間放置した後、生理食塩水中からピンセット等で試験片を取り出した。試験片の表面の水分を吸水紙等で軽くふき取った後、質量W24(g)を測定した。次の計算式から、単位面積(1cm)当たりの吸水量を求めた。
【0085】
計算式: 吸水量(g/cm)=(W24-W0)(g)/2.2(cm
【0086】
[角質剥離面積率の測定]
サイズ15mm×70mmの各貼付材を、ヒト被験者の前腕部に貼付した。貼付から1時間後及び24時間後に剥離した。剥離は、小指側から親指側に行った。剥離された後の各貼付材を、カチオン染色(ゲンチアナバイオレット:1.0質量%、ブリリアントグリーン:0.5質量%、蒸留水:98.5質量%)で染色した後、流水下で洗浄した。染色後の貼付材を顕微鏡(VHX-1000:VH-Z100UR、キーエンス社製)下で撮像し、得られた画像を画像処理装置(Win ROOF、三谷商事社製)で画像解析することによって、各貼付材に付着している角質細胞の面積を測定した。各貼付材について、3視野の角質細胞付着面積率([角質細胞付着面積]/[被験サンプルの表面積]×100(%))を算出し、この平均値を各貼付材の角質剥離面積率とした。
【0087】
[5%モジュラス]
JIS K-7115に準拠して、引張試験機を用いて、温度23±2℃、相対湿度50±5%雰囲気下にて、幅25mmの試料をつかみ間隔50mmで伸長速度300mm/分で引張試験を行い、測定した。
【0088】
次いで、可塑剤として、脂肪酸エステルを配合していない粘着剤組成物からなる粘着剤層を備える貼付材のモジュラス値に対して、5%以下のモジュラス値の低下が確認できたものを「○」と評価し、それ以外を「×」と評価した。なお、実施例1~7は、比較例6と比較し、実施例8は、比較例7と比較し、比較例9は、比較例8と比較し、比較例11~13は、比較例10と比較して、5%以下のモジュラス値の低下を評価した。
【0089】
上記各種評価の結果を以下の表に示す。なお、以下の表において用いられた化合物の略称は以下のとおりである。
【0090】
(支持体)
フィルムA:粉末状の脂肪酸エステル含有のポリエチレンフィルム、厚さ:90μm
フィルムB:液体状の脂肪酸エステル含有のポリエチレンフィルム、厚さ:85μm
フィルムC:脂肪酸エステル不含のポリエチレンフィルム、厚さ:83μm
フィルムD:脂肪酸エステル不含のウレタンフィルム、厚さ:30μm
【0091】
(主剤に使用した単量体)
2EHA:アクリル酸2エチルヘキシル
VAc:酢酸ビニル
AA:アクリル酸
INA:イソノニルアクリレート
130A:アクリル酸メトキシノナエチレングリコール
PE350:メタクリル酸エチレングリコール
2MTA:メタクリル酸2メトキシエチル
【0092】
(架橋剤)
Tetrad-X:三菱ガス化学社製、多官能エポキシ樹脂
コロネートL:東ソー株式会社製、TDI系汎用硬化剤
【0093】
(可塑剤)
ミリスチン酸イソプロピル(分子量:268.0)
モノオレイン酸グリセリル(分子量:356.0)
オレイン酸オレイル(分子量:531.0)
イソステアリン酸イソステアリル(分子量:537.0)
トリオレイン酸ソルビタン(分子量:935.0)
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
【表4】
【0098】
【表5】
【0099】
表1~表2に示すように、(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールに由来する構成単位を含有していないアクリル系共重合体を含む粘着剤層を備える貼付材(比較例1及び比較例2)、側鎖の短い親水性モノマーであるメタクリル酸2メトキシエチルに由来する構成単位を含有するアクリル系共重合体を含む粘着剤層を備える貼付材(比較例3)、或いは、可塑剤として脂肪酸エステルを含まない粘着剤層を備える貼付材(比較例4)では、貼付1時間後に比べ24時間後の角質剥離量が増加していた。これに対して、特定の構造からなる(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールに由来する構成単位を含有するアクリル系共重合体と、脂肪酸エステルと、を含む粘着剤層を備える貼付材(実施例1~7)では、貼付1時間後に比べ24時間後の角質剥離量が低下することが確認された。
【0100】
次いで、異なる種類の脂肪酸エステルを含む粘着剤組成物を、粉末状の脂肪酸エステル含有のポリエチレンフィルム(フィルムA)に塗布し、5%モジュラスへの影響の有無について確認した。その結果、表3~表5に示すように、粘着剤組成物に脂肪酸エステルを配合した貼付材(実施例1~7)では、粘着剤組成物に脂肪酸エステルを配合していない貼付材(比較例6)と比較して、モジュラス値の低下が顕著であり、基材が明らかに柔らかくなっていることを確認した。
【0101】
また、比較例6及び実施例4の比較、並びに、比較例7及び実施例8の比較から、支持体に含有する脂肪酸エステルを粉末状から液状に変更した際にも基材が柔らかくなる傾向にあることが確認できた。
【0102】
一方、比較例8~比較例13に示すように、脂肪酸エステルを含有しない支持体(ポリエチレンフィルム及びウレタンフィルム)を備える貼付材については、粘着剤組成物に脂肪酸エステルを配合した貼付材も含めて、支持体が明らかに柔らかくなる傾向は見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本実施形態の医療用貼付材によれば、一定時間貼付後の皮膚への影響が小さく、柔軟性に優れる医療用貼付材を提供することができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と粘着剤層の積層体を備える医療用貼付材であって、
前記粘着剤層が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、且つ、下記一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールに由来する構成単位を含む共重合体と、室温で液状の前記共重合体と相溶する脂肪酸エステルと、を含有する粘着剤組成物からなり、
前記粘着剤組成物中の前記脂肪酸エステルが、少なくとも1個のオレイン酸残基を有しており、
前記支持体が、脂肪酸エステルを含有する、医療用貼付材。
【化1】
(一般式(I)中、R11及びR12はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。R13は、炭素数1以上20以下のアルキル基である。n11は、2以上12以下の整数である。)
【請求項2】
前記粘着剤組成物中の前記脂肪酸エステル中の脂肪酸残基が、全てオレイン酸残基である、請求項に記載の医療用貼付材。
【請求項3】
支持体と粘着剤層の積層体を備える医療用貼付材であって、
前記粘着剤層が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、且つ、下記一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールに由来する構成単位を含む共重合体と、室温で液状の前記共重合体と相溶する脂肪酸エステルと、を含有する粘着剤組成物からなり、
前記支持体が、粉末状の脂肪酸エステルを含有する、医療用貼付材。
【化2】
(一般式(I)中、R11及びR12はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。R13は、炭素数1以上20以下のアルキル基である。n11は、2以上12以下の整数である。)
【請求項4】
前記粘着剤組成物中の前記脂肪酸エステルが、少なくとも1個のオレイン酸残基を有する、請求項に記載の医療用貼付材。
【請求項5】
前記共重合体が、炭素数が8以上12以下のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルが65質量%以上90質量%以下と、前記(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールが10質量%以上20質量%以下と、その他のビニル単量体が0質量%以上15質量%以下とが溶液重合法により重合した共重合体を、架橋剤にて架橋させたものである、請求項1~4のいずれか一項に記載の医療用貼付材。
【請求項6】
前記粘着剤組成物中の前記脂肪酸エステルが、分子量250以上950以下である単一種の脂肪酸エステルを含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の医療用貼付材。
【請求項7】
前記粘着剤組成物中の前記脂肪酸エステルの含有量が、前記共重合体100質量部に対して、5質量部以上20質量部以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の医療用貼付材。
【請求項8】
前記支持体が、ポリオレフィンと無機微粒子とを含有する微多孔性ポリエチレンフィルムである、請求項1~4のいずれか一項に記載の医療用貼付材。