(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009484
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】エンジン始動制御装置
(51)【国際特許分類】
F02N 11/08 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
F02N11/08 X
F02N11/08 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111039
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】小泉 槙吾
(57)【要約】
【課題】スタータリレーの通電ラインに異常が生じた場合に、スタータモータが駆動し続けてしまうことを防止することができるエンジン始動制御装置を提供すること。
【解決手段】プッシュスタートスイッチへの始動操作を検出すると、エンジンが完爆するまで始動信号を生成するスタータ入力検出部としての第1制御部と、始動信号に基づいて第1接続部および第2接続部を制御してスタータリレーをオン状態またはオフ状態に制御する制御部と、を備える。制御部は、エンジンの完爆後も始動信号の状態がエンジンの完爆前と同一状態である場合は、スタータリレー22をオフ状態とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者による始動操作を受け付けるスタートスイッチと、
エンジンを始動させるスタータモータと、
前記スタータモータへ電力を供給するオン状態と、前記スタータモータへの電力を遮断するオフ状態と、に制御されるスタータリレーと、
前記スタータリレーの駆動電流が流れる通電ラインにおける前記スタータリレーの上流側を通電状態または非通電状態にする第1接続部と、
前記通電ラインにおける前記スタータリレーの下流側を通電状態または非通電状態にする第2接続部と、を備えるエンジン始動制御装置であって、
前記スタートスイッチへの前記始動操作を検出すると、前記エンジンが完爆するまで始動信号を生成するスタータ入力検出部と、
前記始動信号に基づいて前記第1接続部および第2接続部を制御して前記スタータリレーをオン状態またはオフ状態に制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記エンジンの完爆後も前記始動信号の状態が前記エンジンの完爆前と同一状態である場合は、前記スタータリレーをオフ状態とすることを特徴とするエンジン始動制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2接続部を非通電状態にすることによって前記スタータリレーをオフ状態にすることを特徴とする請求項1に記載のエンジン始動制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1接続部を非通電状態にすることによって前記スタータリレーをオフ状態にすることを特徴とする請求項1に記載のエンジン始動制御装置。
【請求項4】
前記スタータ入力検出部は、前記始動操作を検出すると前記始動信号として所定の高電圧からなる信号を生成することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載のエンジン始動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン始動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プッシュ式のスイッチ操作でエンジンを始動させる制御装置において、プッシュ式スイッチ系統が故障した場合に、誤ってエンジンが始動されることを抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、エンジンの始動完了を確認するまでドライバがイグニッションキーの操作を続ける方式と異なり、プッシュ式のスイッチ操作に基づきエンジンを始動させる方式では、スイッチ操作が行われるとエンジンの始動が完了したと判定するまでシステムがスタータリレーに通電する必要が生じるため、スタータリレーの通電ラインの異常についても考慮する必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、スタータリレーの通電ラインに異常が生じた場合に、スタータモータが駆動し続けてしまうことを防止することができるエンジン始動制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明は、運転者による始動操作を受け付けるプッシュスタートスイッチと、エンジンを始動させるスタータモータと、前記スタータモータへ電力を供給するオン状態と、前記スタータモータへの電力を遮断するオフ状態と、に制御されるスタータリレーと、前記スタータリレーの駆動電流が流れる通電ラインにおける前記スタータリレーの上流側を通電状態または非通電状態にする第1接続部と、前記通電ラインにおける前記スタータリレーの下流側を通電状態または非通電状態にする第2接続部と、を備えるエンジン始動制御装置であって、前記プッシュスタートスイッチへの前記始動操作を検出すると、前記エンジンが完爆するまで始動信号を生成するスタータ入力検出部と、前記始動信号に基づいて前記第1接続部および第2接続部を制御して前記スタータリレーをオン状態またはオフ状態に制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記エンジンの完爆後も前記始動信号の状態が前記エンジンの完爆前と同一状態である場合は、前記スタータリレーをオフ状態とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このように、本発明によれば、スタータリレーの通電ラインに異常が生じた場合に、スタータモータが駆動し続けてしまうことを防止することができるエンジン始動制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係るエンジン始動制御装置のブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係るエンジン始動制御装置のエンジン始動制御処理の実行時の車両状態の推移を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施の形態に係るエンジン始動制御装置は、運転者による始動操作を受け付けるプッシュスタートスイッチと、エンジンを始動させるスタータモータと、スタータモータへ電力を供給するオン状態と、スタータモータへの電力を遮断するオフ状態と、に制御されるスタータリレーと、スタータリレーの駆動電流が流れる通電ラインにおけるスタータリレーの上流側を通電状態または非通電状態にする第1接続部と、通電ラインにおけるスタータリレーの下流側を通電状態または非通電状態にする第2接続部と、を備えるエンジン始動制御装置であって、プッシュスタートスイッチへの始動操作を検出すると、エンジンが完爆するまで始動信号を生成するスタータ入力検出部と、始動信号に基づいて第1接続部および第2接続部を制御してスタータリレーをオン状態またはオフ状態に制御する制御部と、を備え、制御部は、エンジンの完爆後も始動信号の状態がエンジンの完爆前と同一状態である場合は、スタータリレーをオフ状態とすることを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係るエンジン始動制御装置は、スタータリレーの通電ラインに異常が生じた場合に、スタータモータが駆動し続けてしまうことを防止することができる。
【実施例0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係るエンジン始動制御装置について詳細に説明する。
【0011】
図1において、本発明の一実施例に係るエンジン始動制御装置を搭載した車両1は、エンジン2と、トランスミッション3と、バッテリ4と、制御部30と、を含んで構成される。
【0012】
エンジン2には、複数の気筒が形成されている。本実施例において、エンジン2は、各気筒に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行なうように構成されている。
【0013】
エンジン2には、スタータモータ21が連結されている。スタータモータ21は、図示しないギヤなどを介してエンジン2のクランクシャフトに連結されている。スタータモータ21は、バッテリ4からの電力が供給されることにより回転することでクランクシャフトを回転させて、エンジン2に始動時の回転力を与える。スタータモータ21の上流側は、スタータリレー22を介してバッテリ4に接続されている。スタータモータ21の下流側は、グランド33に接続されている。
【0014】
トランスミッション3は、エンジン2から入力された回転を複数の変速段のいずれかに応じた変速比で変速して主力軸に出力する。
【0015】
エンジン2とトランスミッション3の間には、図示しないクラッチが設けられており、クラッチは、エンジン2とトランスミッション3との間の動力伝達を接続または切断する。
【0016】
トランスミッション3は、例えば、アクチュエータにより変速段の切換えとクラッチの接続及び切断が行なわれるAMT(Automated Manual Transmission)として構成される。
【0017】
バッテリ4は、例えば鉛電池で構成されている。バッテリ4は、スタータモータ21などの車両1の電気負荷に電力を供給する。
【0018】
バッテリ4とスタータモータ21との間にはスタータリレー22が設けられている。スタータリレー22は、バッテリ4とスタータモータ21とを電気的に接続するオン状態と、バッテリ4とスタータモータ21とを電気的に遮断するオフ状態とのいずれか一方の状態をとるようになっている。
【0019】
スタータリレー22は、駆動電流が供給されることによりオン状態となる。詳しくは、スタータリレー22は、可動接点22Aと、駆動コイル22Bと、通電ライン22Cとを備えている。スタータリレー22は、通電ライン22Cに駆動電流が供給されることにより、駆動コイル22Bが発生する磁力により可動接点22Aが閉じてオン状態となり、スタータモータ21へ電力を供給する。一方、スタータリレー22は、通電ライン22Cへの駆動電流が遮断されることにより、可動接点22Aが開いてオフ状態となり、スタータモータ21への電力を遮断する。
【0020】
制御部30は、第1制御部5および第2制御部6を備えており、第1制御部5および第2制御部6の協調制御によって車両1の各部の状態検出および制御を行う。第1制御部5は、主に車体(ボディー)を対象として状態検出および制御を行う。第2制御部6は、主にトランスミッション3を対象として状態検出および制御を行う。
【0021】
駆動電流が流れる通電ライン22Cの、駆動電流が流れる方向の上流側には、第1接続部23が設けられている。駆動電流が流れる通電ライン22Cの、駆動電流が流れる方向の下流側には、第2接続部24が設けられている。第1接続部23および第2接続部24は、トランジスタ等の半導体スイッチからなる。
【0022】
第1接続部23の上流側は、バッテリ4に接続されている。したがって、第1接続部23は、バッテリ4とスタータリレー22とを接続または切断する。第2接続部24の下流側は、グランド33に接続されている。したがって、第2接続部24は、スタータリレー22とグランド33とを接続または切断する。
【0023】
第1接続部23は、第1制御部5に設けられており、第1制御部5の制御に応じて、駆動電流を通電させるオン状態(通電状態)と、駆動電流を通電させないオフ状態(非通電状態)とのいずれか一方の状態をとるようになっている。
【0024】
第2接続部24は、第2制御部6に設けられており、第2制御部6の制御に応じて、駆動電流を通電させるオン状態(通電状態)と、駆動電流を通電させないオフ状態(非通電状態)とのいずれか一方の状態をとるようになっている。
【0025】
第1接続部23と第2接続部24の両方がオン状態となることで通電ライン22Cに駆動電流が流れ、スタータリレー22はオン状態となる。
【0026】
第1制御部5及び第2制御部6は、それぞれCPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0027】
これらのコンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットを第1制御部5及び第2制御部6としてそれぞれ機能させるためのプログラムが格納されている。
【0028】
すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、これらのコンピュータユニットは、本実施例における第1制御部5及び第2制御部6としてそれぞれ機能する。
【0029】
第1制御部5と第2制御部6は、CAN(Controller Area Network)等の規格に準拠した車内LAN(Local Area Network)用の通信線31により接続されており、制御信号等の信号の送受信を相互に行なうことができる。
【0030】
また、第1制御部5と第2制御部6は、所定の高電圧のHighレベル信号と所定の低電圧のLowレベル信号とを伝達可能なハードワイヤ32により接続されている。このハードワイヤ32は、第1制御部5が生成した始動信号を第2制御部6に送信する。始動信号の生成時は、ハードワイヤ32を介して始動信号としてのHighレベル信号が送信され、始動信号の非生成時はハードワイヤ32を介してLowレベル信号が送信される。
【0031】
第1制御部5の入力ポートには、スタートスイッチとしてのプッシュスタートスイッチ7が接続されている。プッシュスタートスイッチ7は、モーメンタリのプッシュ式スイッチであり、運転者からの車両1の電源状態の遷移や、エンジン2の始動及び停止などの指示を受け付けるスイッチである。
【0032】
プッシュスタートスイッチ7は、押下操作されている間オン状態になり、オン信号を第1制御部5に出力する。一方、プッシュスタートスイッチ7は、押下操作されていない間オフ状態になり、オフ信号を第1制御部5に出力する。
【0033】
第1制御部5は、例えば、プッシュスタートスイッチ7からの出力信号に基づいて、車両1の電源状態、エンジン2の始動及び停止などを制御する。
【0034】
第2制御部6は、例えば、トランスミッション3を制御する。第2制御部6は、例えば、トランスミッション3のアクチュエータを制御して、変速段の切換えとクラッチの接続及び切断を行なわせる。
【0035】
第2制御部6は、例えば、トランスミッション3の状態や、運転者により操作される図示しないブレーキペダルの状態などに基づいて、エンジン2の始動が可能かどうかを判定する。
【0036】
第2制御部6は、運転者により操作される図示しないシフトレバーの操作位置に応じてトランスミッション3の変速段を切り替える。
【0037】
第2制御部6には、シフトレバーの操作位置の情報であるセレクタ位置情報と、トランスミッション3において実際に形成されている変速段(いわゆる実ギヤ段)の情報であるギヤ位置情報と、ブレーキペダルが踏み込まれているか否かの情報であるブレーキスイッチ情報とが入力される。
【0038】
ここで、本実施例では、トランスミッション3は、シフトレバーに機械的に連結されておらず、アクチュエータにより変速段の切換えを行うシフトバイワイヤシステムを採用している。このため、セレクタ位置情報に基づくギヤ段と、ギヤ位置情報に基づく実際のギヤ段とが一致しない場合がある。例えば、シフトレバーの操作位置がニュートラル位置(N位置)であっても、何らかの異常により実際のギヤ段がニュートラルではない場合がある。
【0039】
本実施例において、第1制御部5は、プッシュスタートスイッチ7に始動操作が入力されたことを検出すると、エンジン2の始動条件の成否を判定する。第1制御部5により成否が判定されるエンジン2の始動条件を第1始動条件という。第1始動条件は、プッシュスタートスイッチ7が押されたこと、ブレーキペダルが踏まれていること、等の複数の条件の全てを満たす場合に成立する。第1制御部5はスタータ入力検出部を構成する。第1制御部5は、第1始動条件が成立している場合、第1接続部23をオン状態に制御する。
【0040】
また、第1制御部5は、プッシュスタートスイッチ7に始動操作が入力されたことを検出すると、第2制御部6に始動要求信号を送信する。この始動要求信号には、第2制御部6におけるエンジン2の始動条件の成否の判定の要求が含まれる。この要求は、車内LAN(Local Area Network)用の通信線31によって第1制御部5から第2制御部6に送信される。
【0041】
さらに、第1制御部5は、プッシュスタートスイッチ7に始動操作が入力されたことを検出すると始動信号を生成する。始動信号とは、運転者がプッシュスタートスイッチ7の押下操作をすると、押下操作がされなくなった後もエンジン2が完爆するまでスタータモータ21の駆動が維持されるようにするためのラッチ作動用信号である。第1制御部5は、始動操作を検出すると始動信号として所定の高電圧からなる信号を生成する。スタータモータ21の駆動は、第1制御部5および第2制御部6のそれぞれにおける所定の始動条件の成立を条件として開始される。
【0042】
第1制御部5は、エンジン2が完爆したことを検出するまで始動信号を生成する。この始動信号は、ハードワイヤ32によって第1制御部5から第2制御部6に送信される。
【0043】
第2制御部6は、エンジン2の始動条件の成否の判定要求を第1制御部5から受けとると、エンジン2の始動条件の成否を判定する。第2制御部6により成否が判定されるエンジン2の始動条件を第2始動条件という。第2始動条件は、セレクタ位置がパーキングまたはニュートラルであること、ブレーキペダルが踏み込まれていること、実際の変速段がニュートラルであることの全てを満たす場合に成立する。第2制御部6は、セレクタ位置情報、ブレーキスイッチ情報、ギヤ位置情報等に基づいて、第2始動条件の成否を判定する。第2制御部6は、第2始動条件が成立している場合、第2接続部24をオン状態に制御する。
【0044】
このように、第1制御部5および第2制御部6を有する制御部30は、始動信号に基づいて第1接続部23および第2接続部24を制御してスタータリレー22をオン状態またはオフ状態に制御する。詳しくは、第1始動条件の成立により第1制御部5が第1接続部23をオン状態にし、かつ、第2始動条件の成立により第2制御部6が第2接続部24をオン状態にすることで、スタータリレー22がオン状態となり、スタータモータ21が駆動する。
【0045】
第1制御部5は、エンジン2のエンジン回転数が所定のエンジン回転数閾値に到達すると、エンジン2が完爆したと判定し、第1始動条件を非成立に変更し、第1接続部23をオフ状態に切替える。第1接続部23がオフ状態に切替えられたことで、スタータリレー22がオフ状態となり、スタータモータ21が停止する。
また、第1制御部5は、エンジン2が完爆したと判定すると、始動信号の生成を終了する。
【0046】
第2制御部6は、第1制御部5による始動信号の生成が終了すると、第2始動条件を非成立に変更し、第2接続部24をオフ状態に切替える。
【0047】
本実施例では、スタータリレー22の通電ライン22Cに第1接続部23と第2接続部24とが設けられており、第1接続部23、第2接続部24は、第1制御部5、第2制御部6によってそれぞれ制御される。
【0048】
したがって、スタータリレー22の通電ライン22Cの異常には、第1接続部23、第2接続部24、第1制御部5および第2制御部6の異常が含まれる。そして、スタータリレー22の通電ライン22Cの異常としては、第1始動条件が非成立に変更された後も第1接続部23がオン状態を維持してしまう異常(第1接続部23自体の作動異常)や、エンジン2の完爆後も第1制御部5が始動信号の生成を継続してしまう異常(始動信号の生成に関する異常)があり得る。
【0049】
本実施例では、第1始動条件が非成立に変更された後も第1接続部23が異常によりオン状態を維持した場合でも、始動信号の終了に応じて第2制御部6が第2接続部24をオフ状態に切替えるので、スタータリレー22がオフ状態となり、スタータモータ21が停止する。
【0050】
一方、第1接続部23の動作が正常であっても、エンジン2の完爆後も第1制御部5が異常により始動信号の生成を継続した場合、スタータモータ21が駆動し続けてしまう。
【0051】
そこで、本実施例では、第1制御部5および第2制御部6を有する制御部30は、エンジン2の完爆後も始動信号の状態がエンジン2の完爆前と同一状態である場合は、スタータリレー22をオフ状態とする。つまり、エンジン2の始動中は始動信号が生成状態で、かつ、エンジン2の完爆後は始動信号が非生成状態となるのが正常であるため、これに反してエンジン2の完爆後も始動信号が生成状態の場合、制御部30は、異常の発生と判断し、スタータリレー22をオフ状態にしてスタータモータ21を停止する。
【0052】
制御部30は、第2接続部24を非通電状態にすることによってスタータリレー22をオフ状態にする。詳しくは、制御部30の第2制御部6が、エンジン2の完爆後も始動信号が生成状態であることを異常と判断し、第2制御部6が第2接続部24を非通電状態にする。
【0053】
また、制御部30は、第1接続部23を非通電状態にすることによってスタータリレー22をオフ状態にしてもよい。詳しくは、制御部30の第1制御部5が、エンジン2の完爆後も始動信号が生成状態であることを異常と判断し、第1制御部5が第1接続部23を非通電状態にする。
【0054】
以上のように構成された本実施例に係るエンジン始動制御装置によるエンジン始動制御処理について、
図2を参照して説明する。
図2において、縦軸は第1始動条件の正否、第2始動条件の正否、第1接続部23の状態、第2接続部24の状態、始動信号の状態、エンジン回転数を表し、横軸は時間を表している。また、スタータリレー22の通電ライン22Cに異常が生じていないとき(以下、正常時という)のエンジン始動制御処理を実線で表し、スタータリレー22の通電ライン22Cに異常が生じているとき(以下、異常時という)のエンジン始動制御処理を一点鎖線で表している。
【0055】
まず、正常時のエンジン始動制御処理について説明する。時刻t0において、エンジン2は停止しており、第1始動条件および第2始動条件は非成立になっており、第1接続部23および第2接続部24はオフ状態(図中、OFFと記す)になっている。
【0056】
この時刻t0では、始動操作としてプッシュスタートスイッチ7が押下されたことで、第1制御部5によって始動信号がHighレベルにされる。つまり、始動信号が生成される。
【0057】
その後、時刻t1において、第1始動条件が成立し、時刻t2において第2始動条件が成立する。その後、時刻t3において、第1接続部23がオンにされ、時刻t4において第2接続部24がオンにされる。
【0058】
第1接続部23と第2接続部24との両方がオンにされたことで、スタータリレー22がオン状態となり、スタータモータ21がエンジン2のクランキングを開始し、エンジン回転数が上昇する。
【0059】
その後、時刻t5において、エンジン回転数がエンジン回転数閾値に到達して更に上昇を続ける。エンジン回転数閾値は、エンジン2が完爆して自立回転可能な状態になるエンジン回転数の閾値である。
【0060】
エンジン回転数がエンジン回転数閾値に到達したことにより、始動信号がLowレベルにされる。つまり、始動信号が非生成となる。これにより、第1始動条件が非成立となり、第1接続部23がオフ状態にされる。このため、スタータリレー22がオフ状態となり、スタータモータ21が停止する。
【0061】
その後、時刻t6において、第2始動条件が非成立となり、第2接続部24がオフ状態にされ、始動信号がHighレベルにされる。
【0062】
このように、正常時は、エンジン2が完爆すると始動信号がLowレベルにされることで、スタータリレー22がオフ状態となり、スタータモータ21が停止する。
【0063】
次に、異常時のエンジン始動制御処理について説明する。異常時は、時刻t5においてエンジン2が完爆した後も始動信号がHighレベルを維持し、スタータモータ21がエンジン2のクランキングを継続してしまっている。
【0064】
このような場合、時刻t7で始動信号がLowレベルにされる。これにより、第1接続部23および第2接続部24がオフ状態にされる。このため、スタータリレー22がオフ状態となり、スタータモータ21が停止する。
【0065】
このように、エンジン2が完爆した後も始動信号がHighレベルを維持している場合、始動信号がLowレベルにされる。これにより、スタータリレー22がオフ状態となり、スタータモータ21が停止する。
【0066】
なお、第1制御部5から第2制御部6への始動要求信号が送信された際に、始動信号が非生成状態(Lowレベル)である場合、第1制御部5または第2制御部6は、異常の発生と判断することができる。
【0067】
以上説明したように、本実施例では、プッシュスタートスイッチ7への始動操作を検出すると、エンジン2が完爆するまで始動信号を生成するスタータ入力検出部としての第1制御部5と、始動信号に基づいて第1接続部23および第2接続部24を制御してスタータリレー22をオン状態またはオフ状態に制御する制御部30と、を備える。そして、制御部30は、エンジン2の完爆後も始動信号の状態がエンジン2の完爆前と同一状態である場合は、スタータリレー22をオフ状態とする。
【0068】
これにより、エンジン2の完爆後にLowレベルになるはずの始動信号が、異常が生じたことでエンジン2の完爆前と同一状態のHighレベルである場合は、スタータリレー22がオフ状態にされ、スタータモータ21が停止する。この結果、スタータリレー22の通電ライン22Cに異常が生じた場合に、スタータモータ21が駆動し続けてしまうことを防止することができる。
【0069】
また、本実施例では、制御部30は、第2接続部24を非通電状態にすることによってスタータリレー22をオフ状態にする。
【0070】
また、本実施例では、制御部30は、第1接続部23を非通電状態にすることによってスタータリレー22をオフ状態にする。
【0071】
また、本実施例では、第1制御部5は、始動操作を検出すると所定の高電圧(Highレベル)からなる始動信号を生成する。
【0072】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。