(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094841
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】ショベル
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
E02F9/20 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211676
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】重野 将弥
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 亮太
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003AB02
2D003AB03
2D003AB04
2D003BA04
2D003BA07
2D003CA02
2D003CA10
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB03
2D003DB04
2D003DB05
(57)【要約】
【課題】異常に関係するアクチュエータの動きを許容しない場合であっても、異常に関係しないアクチュエータの動きを許容する状態を実現すること。
【解決手段】ショベル100は、下部走行体1と、下部走行体1に旋回可能に搭載される上部旋回体3と、複数のアクチュエータと、複数のアクチュエータの操作に用いられる複数の電気式操作装置と、複数の電気式操作装置のうちの一つに異常があるか否かを判定するコントローラ30と、を備える。コントローラ30は、異常があると判定した一つの電気式操作装置の操作に応じた一つのアクチュエータの動きを禁止する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、
複数のアクチュエータと、
複数の前記アクチュエータの操作に用いられる複数の電気式操作装置と、
複数の前記電気式操作装置のうちの一つに異常があるか否かを判定する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、異常があると判定した一つの前記電気式操作装置の操作に応じた一つの前記アクチュエータの動きを禁止する、
ショベル。
【請求項2】
前記制御装置は、異常がないと判定した他の前記電気式操作装置の操作に応じた他の前記アクチュエータの動きを許容する、
請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記制御装置は、前記電気式操作装置の操作内容を検出する第1センサの出力と、前記アクチュエータの動きを検出する第2センサの出力と、前記アクチュエータの動きをもたらす電流の値を検出する第3センサの出力と、に基づき、複数の前記電気式操作装置のうちの一つに異常があるか否かを判定する、
請求項1に記載のショベル。
【請求項4】
前記制御装置は、PWM信号を生成することにより、前記アクチュエータの動きをもたらす電流を制御し、複数の前記電気式操作装置のうちの一つに異常があると判定した場合、生成した前記PWM信号の波形を変えることにより、異常があると判定した一つの前記電気式操作装置の操作に応じた一つの前記アクチュエータの動きを禁止する、
請求項1に記載のショベル。
【請求項5】
前記制御装置は、複数の前記電気式操作装置のうちの一つに異常があると判定した場合、複数の前記アクチュエータの全ての動きを禁止した後で、異常があると判定していない他の前記電気式操作装置の操作に応じた他の前記アクチュエータの動きの禁止を解除する、
請求項1に記載のショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧アクチュエータに流出入する作動油の流れを切り換える制御弁のスプールの端部とパイロット油圧ポンプとの間の管路に配置されるとともに、制御弁のスプールの端部に作用するパイロット圧を調節する電磁比例弁を備えたショベルが知られている(特許文献1参照)。このショベルは、ショベルの異常を検知した場合に油圧を遮断するための緊急停止弁をパイロット油圧ポンプと電磁比例弁との間の管路に配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の緊急停止弁は、異常に関係するアクチュエータの動きを許容しない場合であっても、異常に関係しないアクチュエータの動きを許容する状態を実現できない。
【0005】
そこで、異常に関係するアクチュエータの動きを許容しない場合であっても、異常に関係しないアクチュエータの動きを許容する状態を実現できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態に係るショベルは、下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、複数のアクチュエータと、複数の前記アクチュエータの操作に用いられる複数の電気式操作装置と、複数の前記電気式操作装置のうちの一つに異常があるか否かを判定する制御装置と、を備え、前記制御装置は、異常があると判定した一つの前記電気式操作装置の操作に応じた一つの前記アクチュエータの動きを禁止する。
【発明の効果】
【0007】
上述のショベルは、異常に関係するアクチュエータの動きを許容しない場合であっても、異常に関係しないアクチュエータの動きを許容する状態を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態に係るショベルの側面図である。
【
図3】
図1のショベルに搭載される油圧システムの構成例を示す図である。
【
図4A】アームシリンダの操作に関する油圧システムの一部の図である。
【
図4B】ブームシリンダの操作に関する油圧システムの一部の図である。
【
図4C】バケットシリンダの操作に関する油圧システムの一部の図である。
【
図4D】旋回油圧モータの操作に関する油圧システムの一部の図である。
【
図4E】左走行油圧モータの操作に関する油圧システムの一部の図である。
【
図4F】右走行油圧モータの操作に関する油圧システムの一部の図である。
【
図5】コントローラの構成例を示すブロック図である。
【
図6】イネーブル部の構成例の詳細を示すブロック図である。
【
図7】PWM信号とイネーブル指令信号との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に、
図1及び
図2を参照して、本開示の実施形態に係る掘削機としてのショベル100について説明する。
図1はショベル100の側面図であり、
図2はショベル100の上面図である。
【0010】
本実施形態では、ショベル100の下部走行体1はクローラ1Cを含む。クローラ1Cは、下部走行体1に搭載されている走行アクチュエータとしての走行油圧モータ2Mによって駆動される。具体的には、クローラ1Cは左クローラ1CL及び右クローラ1CRを含む。左クローラ1CLは左走行油圧モータ2MLによって駆動され、右クローラ1CRは右走行油圧モータ2MRによって駆動される。
【0011】
下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が旋回可能に搭載されている。旋回機構2は、上部旋回体3に搭載されている旋回アクチュエータとしての旋回油圧モータ2Aによって駆動される。但し、旋回アクチュエータは、電動アクチュエータとしての旋回電動発電機であってもよい。
【0012】
上部旋回体3にはブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはエンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、アタッチメントATの一例である掘削アタッチメントを構成する。ブーム4はブームシリンダ7で駆動され、アーム5はアームシリンダ8で駆動され、バケット6はバケットシリンダ9で駆動される。ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9は、アタッチメントアクチュエータを構成している。掘削アタッチメントには、ブーム角度センサ、アーム角度センサ、及びバケット角度センサ等の姿勢センサが取り付けられていてもよい。
図1及び
図2に示す例では、バケット6は、掘削バケットであるが、法面バケット、スケルトンバケット、又は(除礫バケット)等であってもよい。また、バケット6は、バケットチルト機構を備えていてもよい。
【0013】
ブーム角度センサは、ブーム4に取り付けられ、ブーム4の上部旋回体3に対する回動角度(以下、「ブーム角度」)を検出する。ブーム角度は、例えば、側面視において、上部旋回体3の旋回平面(旋回軸に垂直な平面)に対してブーム4の両端の点(連結ピンの中心点)を結ぶ直線が成す角度である。ブーム角度センサは、例えば、ロータリエンコーダ、加速度センサ、6軸センサ、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)、又は、それらの組み合わせ等である。また、ブーム角度センサは、可変抵抗器を利用したポテンショメータ、ブーム角度に対応する油圧シリンダ(ブームシリンダ7)のストローク量を検出するシリンダセンサ等で構成されていてもよい。アーム角度センサ及びバケット角度センサについても同様である。ブーム角度センサによるブーム角度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0014】
アーム角度センサは、アーム5に取り付けられ、アーム5のブーム4に対する回動角度(以下、「アーム角度」)を検出する。アーム角度は、例えば、側面視において、ブーム4の両端の点(連結ピンの中心点)を結ぶ直線に対してアーム5の両端の点(連結ピンの中心点)を結ぶ直線が成す角度である。アーム角度センサによるアーム角度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0015】
バケット角度センサは、バケット6に取り付けられ、バケット6のアーム5に対する回動角度(以下、「バケット角度」)を検出する。バケット角度は、例えば、側面視において、アーム5の両端の点(連結ピンの中心点)を結ぶ直線に対してバケット6の支点(連結ピンの中心点)と先端(刃先)とを結ぶ直線が成す角度である。バケット角度センサによるバケット角度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。なお、バケット角度センサは省略されてもよい。この場合、コントローラ30は、操作センサ29RB(
図3参照)の出力に基づいてバケット角度を推定してもよい。
【0016】
上部旋回体3には、運転室としてのキャビン10が設けられ、且つ、エンジン11等の動力源が搭載されている。動力源は、水素エンジン又は電動モータ等であってもよい。キャビン10の内部には、操作装置26、コントローラ30、ゲートロックレバー50、及び操作方式切換装置SD等が設けられている。また、上部旋回体3には、空間認識装置70及び旋回角速度センサS5等が取り付けられている。また、上部旋回体3には機体傾斜センサが取り付けられていてもよい。なお、本書では、便宜上、上部旋回体3における、掘削アタッチメントが取り付けられている側を前側とし、カウンタウェイトが取り付けられている側を後側とする。
【0017】
空間認識装置70は、ショベル100の周囲の三次元空間に存在する物体を認識できるように構成されている。空間認識装置70は、例えば、撮像装置、LIDAR、又はそれらの任意の組み合わせを含む。本実施形態では、空間認識装置70は、キャビン10の上面前端に取り付けられた前方センサ70F、上部旋回体3の上面後端に取り付けられた後方センサ70B、上部旋回体3の上面左端に取り付けられた左方センサ70L、及び、上部旋回体3の上面右端に取り付けられた右方センサ70Rを含む。
【0018】
機体傾斜センサは、水平面に対する機体(上部旋回体3又は下部走行体1)の傾斜状態を検出する。機体傾斜センサは、例えば、ショベル100(すなわち、上部旋回体3)の前後方向及び左右方向の2軸回りの傾斜角度(以下、「前後傾斜角」及び「左右傾斜角」)を検出する。機体傾斜センサは、例えば、ロータリエンコーダ、加速度センサ、6軸センサ、慣性計測装置(IMU)、又は、それらの組み合わせ等である。機体傾斜センサによる傾斜角度(前後傾斜角及び左右傾斜角)に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0019】
旋回角速度センサS5は、上部旋回体3の旋回角速度を検出するように構成されている。本実施形態では、旋回角速度センサS5は、例えば、上部旋回体3の姿勢を計測する慣性計測装置(IMU)である。また、旋回角速度センサS5は、レゾルバ又はロータリエンコーダ等であってもよい。旋回角速度センサS5は、旋回速度を検出してもよい。旋回速度は、旋回角速度から算出されてもよい。
【0020】
操作装置26は、操作者がアクチュエータの操作のために用いる装置である。本実施形態では、操作装置26は、電気式操作装置である。操作装置26は、例えば、操作レバー及び操作ペダルを含む。本実施形態では、操作レバーは、電気式操作レバーである。アクチュエータは、油圧アクチュエータ及び電動アクチュエータの少なくとも1つを含む。
【0021】
操作方式切換装置SDは、操作レバーの操作方式を切り換えることができるように構成される。例えば、操作方式切換装置SDは、キャビン10内の右側コンソールに設けられた押しボタンスイッチを含み、押しボタンスイッチが押される度に、第1操作方式と第2操作方式との間で操作レバーの操作方式を切り換えることができるように構成される。例えば、第1操作方式は、左操作レバー26L(
図3参照。)が前方に倒されたときにアーム5が開かれ、左操作レバー26Lが後方に倒されたときにアーム5が閉じられ、左操作レバー26Lが左方に倒されたときに左旋回が実行され、且つ、左操作レバー26Lが右方に倒されたときに右旋回が実行されるように構成されている。また、第1操作方式は、右操作レバー26R(
図3参照。)が前方に倒されたときにブーム4が下げられ、右操作レバー26Rが後方に倒されたときにブーム4が上げられ、右操作レバー26Rが左方に倒されたときにバケット6が閉じられ、且つ、右操作レバー26Rが右方に倒されたときにバケット6が開かれるように構成されている。一方で、第2操作方式は、左操作レバー26L(
図3参照。)が前方に倒されたときに右旋回が実行され、左操作レバー26Lが後方に倒されたときに左旋回が実行され、左操作レバー26Lが左方に倒されたときにアーム5が開かれ、且つ、左操作レバー26Lが右方に倒されたときにアーム5が閉じられるように構成されている。
【0022】
ショベル100の操作者は、例えば、掘削バケットを用いて掘削作業を行う場合に第1操作方式を選択し、スケルトンバケット(除礫バケット)を用いて除礫作業を行う場合に第2操作方式を選択してもよい。
【0023】
コントローラ30は、ショベル100を制御するための制御装置である。本実施形態では、コントローラ30は、CPU、揮発性記憶装置、及び不揮発性記憶装置等を備えたコンピュータで構成されている。そして、コントローラ30は、各機能に対応するプログラムを不揮発性記憶装置から読み出して揮発性記憶装置にロードし、対応する処理をCPUに実行させる。
【0024】
次に、
図3を参照し、ショベル100に搭載される油圧システムの構成例について説明する。
図3は、ショベル100に搭載される油圧システムの構成例を示す図である。
図3は、機械的動力伝達系、作動油ライン、パイロットライン、電気制御系を、それぞれ、二重線、実線、破線、点線で示している。
【0025】
ショベル100の油圧システムは、主に、エンジン11、レギュレータ13、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブユニット17、操作装置26、吐出圧センサ28、操作センサ29、及びコントローラ30等を含む。
【0026】
図3において、油圧システムは、エンジン11によって駆動されるメインポンプ14から、センターバイパス管路40又はパラレル管路42を経て作動油タンクまで作動油を循環させることができるように構成されている。
【0027】
エンジン11は、ショベル100の動力源の一例である。本実施形態では、エンジン11は、例えば、所定の回転数を維持するように動作するディーゼルエンジンである。エンジン11の出力軸は、メインポンプ14及びパイロットポンプ15のそれぞれの入力軸に連結されている。なお、ショベル100の動力源は、バッテリ又は電源ケーブルを介して接続される外部電源の電力で動くモータ等であってもよい。
【0028】
メインポンプ14は、作動油ラインを介して作動油をコントロールバルブユニット17に供給できるように構成されている。本実施形態では、メインポンプ14は、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
【0029】
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御できるように構成されている。本実施形態では、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御指令に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節することによってメインポンプ14の吐出量を制御する。
【0030】
パイロットポンプ15は、制御弁171~176のそれぞれのパイロットポートに作用する制御圧であるパイロット圧を生成するパイロット圧生成装置の一例であり、パイロットラインを介して油圧制御機器に作動油を供給できるように構成されている。本実施形態では、パイロットポンプ15は、固定容量型油圧ポンプである。但し、パイロット圧生成装置は、メインポンプ14によって実現されてもよい。すなわち、メインポンプ14は、作動油ラインを介して作動油をコントロールバルブユニット17に供給する機能に加え、パイロットラインを介して各種油圧制御機器に作動油を供給する機能を備えていてもよい。この場合、パイロットポンプ15は、省略されてもよい。
【0031】
コントロールバルブユニット17は、ショベル100における油圧システムを制御する油圧制御装置である。本実施形態では、コントロールバルブユニット17は、制御弁171~176を含む。制御弁175は制御弁175L及び制御弁175Rを含み、制御弁176は制御弁176L及び制御弁176Rを含む。コントロールバルブユニット17は、制御弁171~176を通じ、メインポンプ14が吐出する作動油を1又は複数の油圧アクチュエータに選択的に供給できるように構成されている。制御弁171~176は、例えば、メインポンプ14から油圧アクチュエータに流れる作動油の流量、及び、油圧アクチュエータから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御する。油圧アクチュエータは、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、左走行油圧モータ2ML、右走行油圧モータ2MR及び旋回油圧モータ2Aを含む。
【0032】
操作装置26は、操作者がアクチュエータを操作できるように構成されている。本実施形態では、操作装置26は、操作者が油圧アクチュエータを操作できるように構成された油圧アクチュエータ操作装置を含む。具体的には、油圧アクチュエータ操作装置は、電磁弁を用いて、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、コントロールバルブユニット17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給できるように構成されている。パイロットポートのそれぞれに供給される作動油の圧力(パイロット圧)は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26の操作方向及び操作量に応じた圧力である。
【0033】
吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧を検出できるように構成されている。本実施形態では、吐出圧センサ28は、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0034】
操作センサ29は、操作者による操作装置26の操作の内容を検出できるように構成されている。本実施形態では、操作センサ29は、アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26の操作方向及び操作量を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。図示例では、操作センサ29は、操作レバーの操作角度を検出する操作角度センサである。
【0035】
メインポンプ14は、左メインポンプ14L及び右メインポンプ14Rを含む。そして、左メインポンプ14Lは、左センターバイパス管路40L又は左パラレル管路42Lを経て作動油タンクまで作動油を循環させ、右メインポンプ14Rは、右センターバイパス管路40R又は右パラレル管路42Rを経て作動油タンクまで作動油を循環させる。
【0036】
左センターバイパス管路40Lは、コントロールバルブユニット17内に配置された制御弁171、173、175L及び176Lを通る作動油ラインである。右センターバイパス管路40Rは、コントロールバルブユニット17内に配置された制御弁172、174、175R及び176Rを通る作動油ラインである。
【0037】
制御弁171は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を左走行油圧モータ2MLへ供給し、且つ、左走行油圧モータ2MLが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0038】
制御弁172は、右メインポンプ14Rが吐出する作動油を右走行油圧モータ2MRへ供給し、且つ、右走行油圧モータ2MRが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0039】
制御弁173は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を旋回油圧モータ2Aへ供給し、且つ、旋回油圧モータ2Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0040】
制御弁174は、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をバケットシリンダ9へ供給し、且つ、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0041】
制御弁175Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。制御弁175Rは、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0042】
制御弁176Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0043】
制御弁176Rは、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0044】
左パラレル管路42Lは、左センターバイパス管路40Lに並行する作動油ラインである。左パラレル管路42Lは、制御弁171、173、及び175Lの何れかによって左センターバイパス管路40Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。右パラレル管路42Rは、右センターバイパス管路40Rに並行する作動油ラインである。右パラレル管路42Rは、制御弁172、174、及び175Rの何れかによって右センターバイパス管路40Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
【0045】
レギュレータ13は、左レギュレータ13L及び右レギュレータ13Rを含む。左レギュレータ13Lは、左メインポンプ14Lの吐出圧に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することによって、左メインポンプ14Lの吐出量を制御する。具体的には、左レギュレータ13Lは、例えば、左メインポンプ14Lの吐出圧の増大に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節して吐出量を減少させる。右レギュレータ13Rについても同様である。吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14の吸収パワー(吸収馬力)がエンジン11の出力パワー(出力馬力)を超えないようにするためである。
【0046】
操作装置26は、左操作レバー26L、右操作レバー26R及び走行操作装置を含む。走行操作装置は、走行レバー26D及び走行ペダルを含む。走行レバー26Dは、左走行レバー26DL及び右走行レバー26DRを含む。
【0047】
左操作レバー26Lは、旋回操作とアーム5の操作に用いられる。左操作レバー26Lは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁176のパイロットポートに導入させる。また、左右方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁173のパイロットポートに導入させる。
【0048】
具体的には、左操作レバー26Lは、アーム閉じ方向に操作された場合に、制御弁176Lの右側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁176Rの左側パイロットポートに作動油を導入させる。また、左操作レバー26Lは、アーム開き方向に操作された場合には、制御弁176Lの左側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁176Rの右側パイロットポートに作動油を導入させる。また、左操作レバー26Lは、左旋回方向に操作された場合に、制御弁173の左側パイロットポートに作動油を導入させ、右旋回方向に操作された場合に、制御弁173の右側パイロットポートに作動油を導入させる。
【0049】
図3に示す例では、左操作レバー26Lは、前後方向に操作されたときにアーム操作レバーとして機能し、左右方向に操作されたときに旋回操作レバーとして機能する。
【0050】
右操作レバー26Rは、ブーム4の操作とバケット6の操作に用いられる。右操作レバー26Rは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁175のパイロットポートに導入させる。また、左右方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁174のパイロットポートに導入させる。
【0051】
具体的には、右操作レバー26Rは、ブーム下げ方向に操作された場合に、制御弁175Rの左側パイロットポートに作動油を導入させる。また、右操作レバー26Rは、ブーム上げ方向に操作された場合には、制御弁175Lの右側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁175Rの左側パイロットポートに作動油を導入させる。また、右操作レバー26Rは、バケット閉じ方向に操作された場合に、制御弁174の右側パイロットポートに作動油を導入させ、バケット開き方向に操作された場合に、制御弁174の左側パイロットポートに作動油を導入させる。
【0052】
図3に示す例では、右操作レバー26Rは、前後方向に操作されたときにブーム操作レバーとして機能し、左右方向に操作されたときにバケット操作レバーとして機能する。
【0053】
走行レバー26Dは、クローラ1Cの操作に用いられる。具体的には、左走行レバー26DLは、左クローラ1CLの操作に用いられる。左走行レバー26DLは、左走行ペダルと連動するように構成されていてもよい。左走行レバー26DLは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁171のパイロットポートに導入させる。右走行レバー26DRは、右クローラ1CRの操作に用いられる。右走行レバー26DRは、右走行ペダルと連動するように構成されていてもよい。右走行レバー26DRは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁172のパイロットポートに導入させる。
【0054】
吐出圧センサ28は、吐出圧センサ28L及び吐出圧センサ28Rを含む。吐出圧センサ28Lは、左メインポンプ14Lの吐出圧を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。吐出圧センサ28Rについても同様である。
【0055】
操作センサ29は、操作センサ29LA、29LB、29RA、29RB、29DL、29DRを含む。操作センサ29LAは、操作者による左操作レバー26Lに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作の内容は、例えば、レバー操作方向、レバー操作量(レバー操作角度)等である。
【0056】
同様に、操作センサ29LBは、操作者による左操作レバー26Lに対する左右方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作センサ29RAは、操作者による右操作レバー26Rに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作センサ29RBは、操作者による右操作レバー26Rに対する左右方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作センサ29DLは、操作者による左走行レバー26DLに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作センサ29DRは、操作者による右走行レバー26DRに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0057】
コントローラ30は、操作センサ29の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。また、コントローラ30は、絞り18の上流に設けられた制御圧センサ19の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。絞り18は左絞り18L及び右絞り18Rを含み、制御圧センサ19は左制御圧センサ19L及び右制御圧センサ19Rを含む。
【0058】
左センターバイパス管路40Lには、最も下流にある制御弁176Lと作動油タンクとの間に左絞り18Lが配置されている。そのため、左メインポンプ14Lが吐出した作動油の流れは、左絞り18Lで制限される。そして、左絞り18Lは、左レギュレータ13Lを制御するための制御圧を発生させる。左制御圧センサ19Lは、この制御圧を検出するためのセンサであり、検出した値をコントローラ30に対して出力する。コントローラ30は、この制御圧に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することによって、左メインポンプ14Lの吐出量を制御する。コントローラ30は、この制御圧が大きいほど左メインポンプ14Lの吐出量を減少させ、この制御圧が小さいほど左メインポンプ14Lの吐出量を増大させる。右メインポンプ14Rの吐出量も同様に制御される。
【0059】
具体的には、
図3で示されるようにショベル100における油圧アクチュエータが何れも操作されていない待機状態の場合、左メインポンプ14Lが吐出する作動油は、左センターバイパス管路40Lを通って左絞り18Lに至る。そして、左メインポンプ14Lが吐出する作動油の流れは、左絞り18Lの上流で発生する制御圧を増大させる。その結果、コントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出量を許容最小吐出量まで減少させ、吐出した作動油が左センターバイパス管路40Lを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)を抑制する。一方、何れかの油圧アクチュエータが操作された場合、左メインポンプ14Lが吐出する作動油は、操作対象の油圧アクチュエータに対応する制御弁を介して、操作対象の油圧アクチュエータに流れ込む。そして、左メインポンプ14Lが吐出する作動油の流れは、左絞り18Lに至る量を減少或いは消失させ、左絞り18Lの上流で発生する制御圧を低下させる。その結果、コントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出量を増大させ、操作対象の油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、操作対象の油圧アクチュエータの駆動を確かなものとする。なお、コントローラ30は、右メインポンプ14Rの吐出量も同様に制御する。
【0060】
上述のような構成により、
図3の油圧システムは、待機状態においては、メインポンプ14における無駄なエネルギ消費を抑制できる。無駄なエネルギ消費は、メインポンプ14が吐出する作動油がセンターバイパス管路40で発生させるポンピングロスを含む。また、
図3の油圧システムは、油圧アクチュエータを作動させる場合には、メインポンプ14から必要十分な作動油を作動対象の油圧アクチュエータに確実に供給できる。
【0061】
また、ブームシリンダ7にはブームロッド圧センサS7R及びブームボトム圧センサS7Bが取り付けられていてもよい。アームシリンダ8にはアームロッド圧センサS8R及びアームボトム圧センサS8Bが取り付けられていてもよい。バケットシリンダ9にはバケットロッド圧センサS9R及びバケットボトム圧センサS9Bが取り付けられていてもよい。ブームロッド圧センサS7R、ブームボトム圧センサS7B、アームロッド圧センサS8R、アームボトム圧センサS8B、バケットロッド圧センサS9R及びバケットボトム圧センサS9Bは、「シリンダ圧センサ」とも称される。また、旋回油圧モータ2Aには左旋回圧センサS10L及び右旋回圧センサS10Rが取り付けられていてもよい。また、左走行油圧モータ2MLには後進圧センサS11B及び前進圧センサS11Fが取り付けられ、右走行油圧モータ2MRには後進圧センサS12B及び前進圧センサS12Fが取り付けられていてもよい。左旋回圧センサS10L、右旋回圧センサS10R、後進圧センサS11B、前進圧センサS11F、後進圧センサS12B、及び前進圧センサS12Fは、「モータ圧センサ」とも称される。
【0062】
ブームロッド圧センサS7Rはブームシリンダ7のロッド側油室の圧力(以下、「ブームロッド圧」とする。)を検出し、ブームボトム圧センサS7Bはブームシリンダ7のボトム側油室の圧力(以下、「ブームボトム圧」とする。)を検出する。アームロッド圧センサS8Rはアームシリンダ8のロッド側油室の圧力(以下、「アームロッド圧」とする。)を検出し、アームボトム圧センサS8Bはアームシリンダ8のボトム側油室の圧力(以下、「アームボトム圧」とする。)を検出する。バケットロッド圧センサS9Rはバケットシリンダ9のロッド側油室の圧力(以下、「バケットロッド圧」とする。)を検出し、バケットボトム圧センサS9Bはバケットシリンダ9のボトム側油室の圧力(以下、「バケットボトム圧」とする。)を検出する。左旋回圧センサS10Lは、旋回油圧モータ2Aの左側ポートにおける作動油の圧力を検出する。右旋回圧センサS10Rは、旋回油圧モータ2Aの右側ポートにおける作動油の圧力を検出する。各センサで検出された値は、コントローラ30に送信される。なお、油圧シリンダの動きは、シリンダストローク量を検出するストロークセンサによって検出されてもよい。
【0063】
パイロットポンプ15とコントロールバルブユニット17とを繋ぐパイロットラインには元栓として機能する弁が設けられていてもよい。この弁は、閉状態と開状態とが切り換わるように構成され、閉状態において、パイロットポンプ15とコントロールバルブユニット17との間の作動油の流れを遮断でき、開状態において、パイロットポンプ15とコントロールバルブユニット17との間の作動油の流れを許容できる。図示例では、元栓として機能する弁は、ゲートロック弁35と称され、コントローラ30からの制御指令に応じて閉状態と開状態とが切り換わるように構成されている。なお、ゲートロック弁35は、制御弁171~176のそれぞれのストロークを個別に停止させることができるように、パイロットポンプ15と制御弁171~176のそれぞれのパイロットポートとを繋ぐパイロットラインに配置されていてもよい。また、ゲートロック弁35を開状態から閉状態に切り換えるか否かの判定は、ショベル100の動作中に行われてもよく、ショベル100の停止中に行われてもよく、起動フラグが立てられたときに行われてもよい。起動フラグは、例えば、操作装置26が操作されたとき、又は、エンジン11が始動したとき等に立てられる。
【0064】
また、キャビン10内にゲートロックレバー50が設けられていてもよい。ゲートロックレバー50は、ショベル100の状態を切り換える装置である。図示例では、ゲートロックレバー50は、ショベル100を作業不可状態とするロック状態と、ショベル100を作業可能状態とするロック解除状態とを有する。なお、「作業可能状態」は、操作者がショベル100を操作できる状態を意味し、「作業不可状態」は、操作者がショベル100を操作できない状態を意味する。ゲートロックレバー50は、自身の現在の状態を表す信号をコントローラ30に対して出力する。コントローラ30は、所定周期で繰り返しゲートロックレバー50の状態を監視(確認)する。
【0065】
具体的には、操作者は、運転席の左側前端部に設けられたゲートロックレバー50を引き上げることによりゲートロックレバー50をロック解除状態とし、ゲートロックレバー50を押し下げることによりゲートロックレバー50をロック状態とする。ロック解除状態において、ゲートロックレバー50は、キャビン10の乗降口を遮って操作者がキャビン10から退出するのを規制しながら、操作装置26による操作を有効にして操作者がショベル100を操作できるようにする。一方、ロック状態において、ゲートロックレバー50は、キャビン10の乗降口を開放して操作者がキャビン10から退出するのを許容しながら、操作装置26による操作を無効にして操作者がショベル100を操作できないようにする。
【0066】
なお、ゲートロックレバー50は、ロック状態においてゲートロック弁35を閉状態とし、ロック解除状態においてゲートロック弁35を開状態とすることができるように構成されていてもよい。この場合、操作者は、手動でゲートロックレバー50のロック状態とロック解除状態とを切り換えることにより、ゲートロック弁35の開状態と閉状態とを切り換えることができる。具体的には、ゲートロック弁35は、パイロットポンプ15とコントロールバルブユニット17との間の管路に設けられる切換弁である。
図3に示す例では、ゲートロック弁35は、コントローラ30からの制御指令に応じて動作する電磁弁である。また、
図3に示す例では、ゲートロック弁35は、ゲートロックレバー50に機械的に連結されてゲートロックレバー50の手動操作に連動するように構成されている。また、コントロールバルブユニット17は、メインポンプ14と各種油圧アクチュエータとの間の作動油の流れを制御する制御弁171~176を含む。ゲートロック弁35は、閉状態において、パイロットポンプ15と制御弁171~176のそれぞれのパイロットポートとの間の作動油の流れを遮断して(油圧を遮断して)操作装置26による操作を無効にすることができる。また、ゲートロック弁35は、開状態において、パイロットポンプ15と制御弁171~176のそれぞれのパイロットポートとの間の作動油の流れを許容して操作装置26による操作を有効にすることができる。
【0067】
次に、
図4A~
図4Fを参照し、コントローラ30がアクチュエータを動作させるための構成について説明する。
図4A~
図4Fは、油圧システムの一部を抜き出した図である。具体的には、
図4Aは、アームシリンダ8の操作に関する油圧システム部分を抜き出した図であり、
図4Bは、ブームシリンダ7の操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。
図4Cは、バケットシリンダ9の操作に関する油圧システム部分を抜き出した図であり、
図4Dは、旋回油圧モータ2Aの操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。
図4Eは、左走行油圧モータ2MLの操作に関する油圧システム部分を抜き出した図であり、
図4Fは、右走行油圧モータ2MRの操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。
【0068】
図4A~
図4Fに示すように、油圧システムは、電磁弁31及び圧力センサ32を含む。電磁弁31は、電磁弁31AL~電磁弁31FL及び電磁弁31AR~電磁弁31FRを含む。圧力センサ32は、圧力センサ32AL~圧力センサ32FL及び圧力センサ32AR~圧力センサ32FRを含む。
【0069】
電磁弁31は、パイロットポンプ15とコントロールバルブユニット17内の対応する制御弁のパイロットポートとを接続する管路に配置され、開口面積を変更することにより、その管路の流路面積を変更できるように構成されている。本実施形態では、電磁弁31は、電磁比例弁であり、コントローラ30が出力する制御指令に応じて動作する。具体的には、電磁弁31は、コントローラ30が出力する制御指令(制御信号)に応じて動作する電流出力部30F(
図5参照)を通じて供給される電流によって駆動される。そして、電磁弁31は、供給された電流の値(電流値)を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力するように構成されていてもよい。すなわち、電磁弁31は、電流センサとしても機能するように構成されていてもよい。コントローラ30は、この検出値に基づいて電磁弁31をフィードバック制御するように構成されていてもよい。そのため、コントローラ30は、操作者による操作装置26の操作に応じ、又は、操作者による操作装置26の操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31を介し、コントロールバルブユニット17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給できる。そして、コントローラ30は、電磁弁31が生成するパイロット圧を、対応する制御弁のパイロットポートに作用させることができる。
【0070】
圧力センサ32は、電磁弁31が生成するパイロット圧の大きさを検出できるように構成されている。そして、圧力センサ32は、検出した値をコントローラ30に対して出力するように構成されている。
【0071】
この構成により、コントローラ30は、特定の操作装置26に対する操作が行われている場合に加え、特定の操作装置26に対する操作が行われていない場合であっても、その特定の操作装置26に対応する油圧アクチュエータを動作させることができる。また、コントローラ30は、特定の操作装置26に対する操作が行われている場合であっても、その特定の操作装置26に対応する油圧アクチュエータの動作を強制的に停止させることができる。また、コントローラ30は、圧力センサ32の出力に基づき、電磁弁31が生成するパイロット圧をフィードバック制御することができる。
【0072】
例えば、
図4Aに示すように、左操作レバー26Lは、アーム5を操作するために用いられる。具体的には、左操作レバー26Lは、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を利用し、前後方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁176のパイロットポートに作用させる。より具体的には、左操作レバー26Lは、アーム閉じ方向(後方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁176Lの右側パイロットポートと制御弁176Rの左側パイロットポートに作用させる。このパイロット圧は、圧力センサ32ALによって検出される。また、左操作レバー26Lは、アーム開き方向(前方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁176Lの左側パイロットポートと制御弁176Rの右側パイロットポートに作用させる。このパイロット圧は、圧力センサ32ARによって検出される。
【0073】
操作装置26にはスイッチSWが設けられている。本実施形態では、スイッチSWは、スイッチSW1及びスイッチSW2を含む。スイッチSW1は、左操作レバー26Lの先端に設けられたMCスイッチ(押しボタンスイッチ)である。操作者は、スイッチSW1を押しながら左操作レバー26Lを操作できる。スイッチSW1は、右操作レバー26Rに設けられていてもよく、キャビン10内の他の位置に設けられていてもよい。スイッチSW2は、左走行レバー26DLの先端に設けられたMCスイッチ(押しボタンスイッチ)である。操作者は、スイッチSW2を押しながら左走行レバー26DLを操作できる。スイッチSW2は、右走行レバー26DRに設けられていてもよく、キャビン10内の他の位置に設けられていてもよい。
【0074】
操作センサ29LAは、操作者による左操作レバー26Lに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0075】
電磁弁31ALは、コントローラ30が出力する制御指令に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から電磁弁31ALを介して制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調節する。電磁弁31ARは、コントローラ30が出力する制御指令に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から電磁弁31ARを介して制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調節する。電磁弁31ALは、制御弁176L及び制御弁176Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調節可能である。同様に、電磁弁31ARは、制御弁176L及び制御弁176Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調節可能である。
【0076】
この構成により、コントローラ30は、操作者によるアーム閉じ操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31ALを介し、制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、操作者によるアーム閉じ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31ALを介し、制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、操作者によるアーム閉じ操作に応じ、或いは、操作者によるアーム閉じ操作とは無関係に、アーム5を閉じることができる。このように、電磁弁31ALは、「アーム用電磁弁」又は「アーム閉じ用電磁弁」として機能する。
【0077】
また、コントローラ30は、操作者によるアーム開き操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31ARを介し、制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、操作者によるアーム開き操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31ARを介し、制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、操作者によるアーム開き操作に応じ、或いは、操作者によるアーム開き操作とは無関係に、アーム5を開くことができる。このように、電磁弁31ARは、「アーム用電磁弁」又は「アーム開き用電磁弁」として機能する。
【0078】
また、この構成により、コントローラ30は、操作者によるアーム閉じ操作が行われている場合であっても、必要に応じて、制御弁176の閉じ側のパイロットポート(制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポート)に作用するパイロット圧を減圧し、アーム5の閉じ動作を強制的に停止させることができる。操作者によるアーム開き操作が行われているときにアーム5の開き動作を強制的に停止させる場合についても同様である。
【0079】
或いは、コントローラ30は、操作者によるアーム閉じ操作が行われている場合であっても、必要に応じて、電磁弁31ARを制御し、制御弁176の閉じ側のパイロットポートの反対側にある、制御弁176の開き側のパイロットポート(制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポート)に作用するパイロット圧を増大させ、制御弁176を強制的に中立位置に戻すことで、アーム5の閉じ動作を強制的に停止させてもよい。操作者によるアーム開き操作が行われている場合にアーム5の開き動作を強制的に停止させる場合についても同様である。
【0080】
また、以下の
図4B~
図4Fを参照しながらの説明を省略するが、操作者によるブーム上げ操作又はブーム下げ操作が行われている場合にブーム4の動作を強制的に停止させる場合、操作者によるバケット閉じ操作又はバケット開き操作が行われている場合にバケット6の動作を強制的に停止させる場合、及び、操作者による旋回操作が行われている場合に上部旋回体3の旋回動作を強制的に停止させる場合、についても同様である。また、操作者による走行操作が行われている場合に下部走行体1の走行動作を強制的に停止させる場合についても同様である。
【0081】
また、コントローラ30は、アーム操作(アーム閉じ操作及びアーム開き操作)の応答性を良くするため、アーム操作が行われる前から微小なパイロット圧を制御弁176の両側のパイロットポートに作用させるように構成されていてもよい。ブーム操作(ブーム上げ操作及びブーム下げ操作)等の他の操作についても同様である。すなわち、コントローラ30は、より多くのパイロット油を使用することにより、油圧アクチュエータの応答性を高めることができる。
【0082】
また、
図4Bに示すように、右操作レバー26Rは、ブーム4を操作するために用いられる。具体的には、右操作レバー26Rは、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を利用し、前後方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁175のパイロットポートに作用させる。より具体的には、右操作レバー26Rは、ブーム上げ方向(後方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁175Lの右側パイロットポートと制御弁175Rの左側パイロットポートに作用させる。このパイロット圧は、圧力センサ32BLによって検出される。また、右操作レバー26Rは、ブーム下げ方向(前方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁175Rの右側パイロットポートに作用させる。このパイロット圧は、圧力センサ32BRによって検出される。
【0083】
操作センサ29RAは、操作者による右操作レバー26Rに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0084】
電磁弁31BLは、コントローラ30が出力する制御指令に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から電磁弁31BLを介して制御弁175Lの右側パイロットポート及び制御弁175Rの左側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調節する。電磁弁31BRは、コントローラ30が出力する制御指令に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から電磁弁31BRを介して制御弁175Rの右側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調節する。電磁弁31BLは、制御弁175L及び制御弁175Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調節可能である。また、電磁弁31BRは、制御弁175Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調節可能である。
【0085】
この構成により、コントローラ30は、操作者によるブーム上げ操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31BLを介し、制御弁175Lの右側パイロットポート及び制御弁175Rの左側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、操作者によるブーム上げ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31BLを介し、制御弁175Lの右側パイロットポート及び制御弁175Rの左側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、操作者によるブーム上げ操作に応じ、或いは、操作者によるブーム上げ操作とは無関係に、ブーム4を上げることができる。このように、電磁弁31BLは、「ブーム用電磁弁」又は「ブーム上げ用電磁弁」として機能する。
【0086】
また、コントローラ30は、操作者によるブーム下げ操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31BRを介し、制御弁175Rの右側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、操作者によるブーム下げ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31BRを介し、制御弁175Rの右側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、操作者によるブーム下げ操作に応じ、或いは、操作者によるブーム下げ操作とは無関係に、ブーム4を下げることができる。このように、電磁弁31BRは、「ブーム用電磁弁」又は「ブーム下げ用電磁弁」として機能する。
【0087】
また、
図4Cに示すように、右操作レバー26Rは、バケット6を操作するためにも用いられる。具体的には、右操作レバー26Rは、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を利用し、左右方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁174のパイロットポートに作用させる。より具体的には、右操作レバー26Rは、バケット閉じ方向(左方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁174の左側パイロットポートに作用させる。このパイロット圧は、圧力センサ32CLによって検出される。また、右操作レバー26Rは、バケット開き方向(右方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁174の右側パイロットポートに作用させる。このパイロット圧は、圧力センサ32CRによって検出される。
【0088】
操作センサ29RBは、操作者による右操作レバー26Rに対する左右方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。なお、コントローラ30は、バケット角度センサが省略されている場合、操作センサ29RBの出力に基づいてバケット角度を推定してもよい。
【0089】
電磁弁31CLは、コントローラ30が出力する制御指令に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から電磁弁31CLを介して制御弁174の左側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調節する。電磁弁31CRは、コントローラ30が出力する制御指令に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から電磁弁31CRを介して制御弁174の右側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調節する。電磁弁31CLは、制御弁174を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調節可能である。同様に、電磁弁31CRは、制御弁174を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調節可能である。
【0090】
この構成により、コントローラ30は、操作者によるバケット閉じ操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31CLを介し、制御弁174の左側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、操作者によるバケット閉じ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31CLを介し、制御弁174の左側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、操作者によるバケット閉じ操作に応じ、或いは、操作者によるバケット閉じ操作とは無関係に、バケット6を閉じることができる。このように、電磁弁31CLは、「バケット用電磁弁」又は「バケット閉じ用電磁弁」として機能する。
【0091】
また、コントローラ30は、操作者によるバケット開き操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31CRを介し、制御弁174の右側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、操作者によるバケット開き操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31CRを介し、制御弁174の右側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、操作者によるバケット開き操作に応じ、或いは、操作者によるバケット開き操作とは無関係に、バケット6を開くことができる。このように、電磁弁31CRは、「バケット用電磁弁」又は「バケット開き用電磁弁」として機能する。
【0092】
また、
図4Dに示すように、左操作レバー26Lは、旋回機構2を操作するためにも用いられる。具体的には、左操作レバー26Lは、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を利用し、左右方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁173のパイロットポートに作用させる。より具体的には、左操作レバー26Lは、左旋回方向(左方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁173の左側パイロットポートに作用させる。このパイロット圧は、圧力センサ32DLによって検出される。また、左操作レバー26Lは、右旋回方向(右方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁173の右側パイロットポートに作用させる。このパイロット圧は、圧力センサ32DRによって検出される。
【0093】
操作センサ29LBは、操作者による左操作レバー26Lに対する左右方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0094】
電磁弁31DLは、コントローラ30が出力する制御指令に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から電磁弁31DLを介して制御弁173の左側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調節する。電磁弁31DRは、コントローラ30が出力する制御指令に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から電磁弁31DRを介して制御弁173の右側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調節する。電磁弁31DLは、制御弁173を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調節可能である。同様に、電磁弁31DRは、制御弁173を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調節可能である。
【0095】
この構成により、コントローラ30は、操作者による左旋回操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31DLを介し、制御弁173の左側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、操作者による左旋回操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31DLを介し、制御弁173の左側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、操作者による左旋回操作に応じ、或いは、操作者による左旋回操作とは無関係に、旋回機構2を左旋回させることができる。このように、電磁弁31DLは、「旋回用電磁弁」又は「左旋回用電磁弁」として機能する。
【0096】
また、コントローラ30は、操作者による右旋回操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31DRを介し、制御弁173の右側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、操作者による右旋回操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31DRを介し、制御弁173の右側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、操作者による右旋回操作に応じ、或いは、操作者による右旋回操作とは無関係に、旋回機構2を右旋回させることができる。このように、電磁弁31DRは、「旋回用電磁弁」又は「右旋回用電磁弁」として機能する。
【0097】
また、
図4Eに示すように、左走行レバー26DLは、左クローラ1CLを操作するために用いられる。具体的には、左走行レバー26DLは、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を利用し、前後方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁171のパイロットポートに作用させる。より具体的には、左走行レバー26DLは、前進方向(前方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁171の左側パイロットポートに作用させる。このパイロット圧は、圧力センサ32ELによって検出される。また、左走行レバー26DLは、後進方向(後方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁171の右側パイロットポートに作用させる。このパイロット圧は、圧力センサ32ERによって検出される。
【0098】
操作センサ29DLは、操作者による左走行レバー26DLに対する前後方向への操作の内容を電気的に検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0099】
電磁弁31ELは、コントローラ30が出力する制御指令に応じて動作する。そして、電磁弁31ELは、パイロットポンプ15から電磁弁31ELを介して制御弁171の左側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調節する。電磁弁31ERは、コントローラ30が出力する制御指令に応じて動作する。そして、電磁弁31ERは、パイロットポンプ15から電磁弁31ERを介して制御弁171の右側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調節する。電磁弁31EL、31ERは、制御弁171を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調節可能である。
【0100】
この構成により、コントローラ30は、操作者による左前進操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31ELを介し、制御弁171の左側パイロットポートに供給できる。すなわち、左クローラ1CLを前進させることができる。また、コントローラ30は、操作者による左後進操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31ERを介し、制御弁171の右側パイロットポートに供給できる。すなわち、左クローラ1CLを後進させることができる。このように、電磁弁31ELは、「左走行用電磁弁」又は「左前進用電磁弁」として機能し、電磁弁31ERは、「左走行用電磁弁」又は「左後進用電磁弁」として機能する。
【0101】
また、
図4Fに示すように、右走行レバー26DRは、右クローラ1CRを操作するために用いられる。具体的には、右走行レバー26DRは、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を利用し、前後方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁172のパイロットポートに作用させる。より具体的には、右走行レバー26DRは、前進方向(前方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁172の右側パイロットポートに作用させる。このパイロット圧は、圧力センサ32FLによって検出される。また、右走行レバー26DRは、後進方向(後方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁172の左側パイロットポートに作用させる。このパイロット圧は、圧力センサ32FRによって検出される。
【0102】
操作センサ29DRは、操作者による右走行レバー26DRに対する前後方向への操作の内容を電気的に検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0103】
電磁弁31FLは、コントローラ30が出力する制御指令に応じて動作する。そして、電磁弁31FLは、パイロットポンプ15から電磁弁31FLを介して制御弁172の左側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調節する。電磁弁31FRは、コントローラ30が出力する制御指令に応じて動作する。そして、電磁弁31FRは、パイロットポンプ15から電磁弁31FRを介して制御弁172の右側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調節する。電磁弁31FL、31FRは、制御弁172を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調節可能である。
【0104】
この構成により、コントローラ30は、操作者による右前進操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31FLを介し、制御弁172の右側パイロットポートに供給できる。すなわち、右クローラ1CRを前進させることができる。また、コントローラ30は、操作者による右後進操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31FRを介し、制御弁172の左側パイロットポートに供給できる。すなわち、右クローラ1CRを後進させることができる。このように、電磁弁31FLは、「右走行用電磁弁」又は「右前進用電磁弁」として機能し、電磁弁31FRは、「右走行用電磁弁」又は「右後進用電磁弁」として機能する。
【0105】
また、ショベル100は、バケットチルト機構を自動的に動作させる構成を備えていてもよい。この場合、バケットチルト機構を構成するバケットチルトシリンダに関する油圧システム部分は、ブームシリンダ7の操作に関する油圧システム部分等と同じように構成されてもよい。
【0106】
また、各制御弁は電磁スプール弁で構成されていてもよい。この場合、電磁スプール弁は、電気式操作レバーの操作量に対応するコントローラ30からの電気信号に応じて動作する。
【0107】
次に、
図5を参照し、コントローラ30の構成例について説明する。
図5は、コントローラ30の構成例を示すブロック図である。
【0108】
ショベル100では、操作者は、ゲートロックレバー50を手動操作することによって全てのアクチュエータの動きを停止させることができる。また、コントローラ30は、操作装置26の異常を検知した場合、ゲートロック弁35を閉状態にすることにより、全てのアクチュエータの動きを停止させることができる。しかしながら、操作者は、全てのアクチュエータを停止させるのではなく、異常に関係のあるアクチュエータを動作させないようにしながら異常に関係のない他のアクチュエータを動作させたい場合がある。例えば、旋回操作レバーに関する異常が検知されたときに、旋回油圧モータ2Aの動きを停止させた後で、ショベル100を修理に適した場所に移動させるために、走行油圧モータ2Mを動作させたい場合等である。
【0109】
このような場合に対応できるように、ショベル100は、パイロットポンプ15と制御弁171~176のそれぞれのパイロットポートとの間の管路(パイロットライン)に個別に配置される複数のゲートロック弁35を備えていてもよい。しかしながら、このような構成は、部品点数の増加をもたらし、ショベル100の製造コストを増大させてしまうおそれがある。
【0110】
そこで、本実施形態では、各アクチュエータを動作させるために出力される電流をコントローラ30が個別に遮断できるようにすることにより、複数のゲートロック弁35を備える構成によって実現される機能と同様の機能を実現できるようにしている。
【0111】
図5に示す例では、コントローラ30は、故障判定部30A、制御部30B、入力部30C、変換部30D、イネーブル部30E、及び電流出力部30Fを含む。
【0112】
故障判定部30A及び制御部30BはROM又はNVRAM等の不揮発性記憶装置に記憶されるソフトウェア(プログラム)で構成されている。コントローラ30は、故障判定部30A及び制御部30Bのそれぞれに対応するソフトウェアを不揮発性記憶装置から読み出してRAMに読み込み、対応する処理をCPUに実行させる。また、入力部30C、変換部30D、及び電流出力部30Fは、電子回路によって構成され、イネーブル部30Eは、FPGA(Field-Programmable Gate Array)によって構成されている。但し、故障判定部30A及び制御部30Bは電子回路で構成されていてもよく、FPGA等のファームウェアで構成されていてもよい。また、入力部30C、変換部30D、及び電流出力部30Fは、ソフトウェアで構成されていてもよく、FPGAで構成されていてもよい。また、イネーブル部30Eは、ソフトウェアで構成されていてもよく、電子回路で構成されていてもよい。また、故障判定部30A、制御部30B、入力部30C、変換部30D、イネーブル部30E、及び電流出力部30Fのそれぞれは、ソフトウェア、電子回路、及びファームウェア等のうちの少なくとも二つの組み合わせで構成されていてもよい。
【0113】
また、
図5に示す例では、明瞭化のため、イネーブル部30E及び電流出力部30Fのそれぞれは一つのブロックで示されているが、実際には、コントローラ30は、電磁弁31の数に対応する数のイネーブル部30Eと、電磁弁31の数に対応する数の電流出力部30Fとを備えている。例えば、イネーブル部30Eは、アーム閉じ操作に関する電磁弁31AL(
図4A参照)に対応するアーム閉じ用イネーブル部、アーム開き操作に関する電磁弁31AR(
図4A参照)に対応するアーム開き用イネーブル部、ブーム上げ操作に関する電磁弁31BL(
図4B参照)に対応するブーム上げ用イネーブル部、及び、ブーム下げ操作に関する電磁弁31BR(
図4B参照)に対応するブーム下げ用イネーブル部等を含む。但し、アーム閉じ用イネーブル部とアーム開き用イネーブル部とは、一つのアーム操作用イネーブル部に統合されていてもよい。ブーム操作用イネーブル部、バケット操作用イネーブル部、旋回操作用イネーブル部、及び走行操作用イネーブル部等についても同様である。また、アーム操作用イネーブル部及び旋回操作用イネーブル部は一つの右操作レバー用イネーブル部に統合されていてもよく、ブーム操作用イネーブル部及びバケット操作用イネーブル部は一つの左操作レバー用イネーブル部に統合されていてもよい。電流出力部30Fについても同様である。
【0114】
故障判定部30Aは、操作装置26に異常があるか否かを判定するように構成されている。なお、本開示では、操作装置26の異常は、操作装置26自体の異常ばかりでなく、操作装置26の操作に応じたアクチュエータの動きを実現するための複数の構成要素(電磁弁、制御弁、及び圧力センサ等)のそれぞれの異常を含む。例えば、ブーム操作レバー自体には異常がなくても、電磁弁31BLに異常があるため、ブーム操作レバーの操作に応じてブームシリンダ7を適切に動作させることができない場合には、故障判定部30Aは、ブーム操作レバーに異常があると判定するように構成されている。すなわち、コントローラ30は、ブーム操作システムの一部に異常がある場合には、ブーム操作レバー自体に異常がなかったとしても、便宜上、ブーム操作レバーに異常があると判定するように構成されている。図示例では、故障判定部30Aは、コントローラ30に電力が供給されている間、継続的に異常があるか否かを判定するように構成されている。但し、故障判定部30Aは、エンジン11が駆動している間、又は、ゲートロック弁35が開状態にある間等、所定の期間に限って判定を行うように構成されていてもよい。
【0115】
制御部30Bは、操作装置26の操作に応じてアクチュエータを動作させるための制御信号を生成するように構成されている。
【0116】
入力部30Cは、操作装置26の操作内容を検出するセンサが出力する情報を、コントローラ30が処理可能な情報に変換できるように構成されている。図示例では、入力部30Cは、操作センサ29が出力するアナログデータを、故障判定部30A及び制御部30Bのそれぞれが処理可能なデジタルデータに変換する電子回路である。
【0117】
変換部30Dは、各種センサが出力する情報を、コントローラ30が処理可能な情報に変換できるように構成されている。図示例では、変換部30Dは、電流センサとして機能する電磁弁31が出力するアナログデータ(電流値)、及び、圧力センサ32が出力するアナログデータ(圧力値)等を、故障判定部30Aが処理可能なデジタルデータに変換するアナログ・デジタル変換回路(電子回路)である。なお、電磁弁31に供給される電流の値(電流値)は、電磁弁31から独立した電流センサによって検出されてもよい。
【0118】
故障判定部30Aは、入力部30Cが出力するデジタルデータと変換部30Dが出力するデジタルデータとに基づき、操作装置26に異常があるか否かを判定する。また、故障判定部30Aは、その判定結果に基づいてイネーブル指令信号を生成し、そのイネーブル指令信号をイネーブル部30Eに対して出力する。図示例では、イネーブル指令信号は、「ON」を表す電圧レベル(ONレベル)と「OFF」を表す電圧レベル(OFFレベル)とを択一的にとる二値信号である。故障判定部30Aは、操作装置26に異常があると判定するまではONレベルのイネーブル指令信号を継続的に出力し、異常があると判定した時点でONレベルのイネーブル指令信号をOFFレベルのイネーブル指令信号に切り換える。また、制御部30Bは、変換部30Dが出力するデジタルデータに基づいて電流出力部30F(イネーブル部30E)に対する制御信号を生成する。
【0119】
イネーブル部30Eは、制御部30Bが生成した適切な制御信号を電流出力部30Fに伝達する一方で、制御部30Bが生成した不適切な制御信号が電流出力部30Fに伝達されてしまうのを抑制或いは防止する安全回路である。換言すれば、イネーブル部30Eは、制御部30Bが生成する制御信号の適否を監視する監視回路である。図示例では、イネーブル部30Eは、制御部30Bが生成した制御信号の電流出力部30Fへの出力(伝達)を制御できるように構成されている。
【0120】
図6は、イネーブル部30Eの構成例の詳細を示すブロック図である。
図6に示す例では、イネーブル部30Eは、制御部30Bが生成した制御信号と、故障判定部30Aが生成したイネーブル指令信号とを入力として受け、電流出力部30Fに対してPWM信号を出力するように構成されている。具体的には、イネーブル部30Eは、PWM出力回路30E1、インターロック回路30E2、及び論理積回路(AND回路30E3)を含む。
【0121】
PWM出力回路30E1は、制御部30Bが生成した制御信号を、電流出力部30Fが処理可能な信号に変換するための回路の一例である。図示例では、PWM出力回路30E1は、制御部30Bからの制御信号に基づいてPWM信号を生成し、生成したPWM信号をAND回路30E3に対して出力する。なお、制御部30Bは、制御信号としてPWM信号を出力するように構成されていてもよい。この場合、PWM出力回路30E1は省略される。
【0122】
インターロック回路30E2は、PWM出力回路30E1が生成した不適切なPWM信号が電流出力部30Fに伝達されてしまうのを抑制或いは防止するように構成されている。図示例では、インターロック回路30E2は、故障判定部30Aからのイネーブル指令信号に基づいてイネーブル信号を生成し、生成したイネーブル信号をAND回路30E3に対して出力する。具体的には、イネーブル信号は、H(High)レベルとL(Low)レベルとを択一的にとる二値信号である。インターロック回路30E2は、ONレベルのイネーブル指令信号が入力されている間はHレベルのイネーブル信号をAND回路30E3に対して出力し、OFFレベルのイネーブル指令信号が入力されている間はLレベルのイネーブル信号をAND回路30E3に対して出力する。なお、AND回路30E3には、故障判定部30Aが生成したイネーブル指令信号が直接入力されてもよい。この場合、インターロック回路30E2は省略される。
【0123】
AND回路30E3は、所定の条件が満たされる場合に、入力された信号を電流出力部30Fに伝えることができるように構成されている。図示例では、AND回路30E3は、Hレベルのイネーブル信号が入力されている間は、PWM出力回路30E1から入力されたPWM信号をそのまま電流出力部30Fに向けて出力し、Lレベルのイネーブル信号が入力されている間は、PWM出力回路30E1から入力されたPWM信号とは無関係に、デューティ比(パルス幅/周期)が0%(出力パルスが全てOFFの状態)のPWM信号を出力する。
【0124】
図7は、AND回路30E3に入力されるPWM信号(入力)と、イネーブル指令信号と、AND回路30E3から出力されるPWM信号(出力)との関係の一例を示す図である。
【0125】
図7は、時刻t1においてイネーブル指令信号がOFFレベルに切り換えられるまでは、PWM信号(入力)とPWM信号(出力)とが同じ波形であるのに対し、時刻t1においてイネーブル指令信号がOFFレベルに切り換えられた後は、PWM信号(出力)のデューティ比が0%になっていることを示している。
【0126】
電流出力部30Fは、制御部30Bが生成した制御信号に対応する電流を電磁弁31に供給できるように構成された電子回路である。図示例では、電流出力部30Fは、イネーブル部30Eが出力するPWM信号に応じ、電磁弁31に対して電流を供給する。具体的には、PWM信号のデューティ比に対応する大きさの電流を電磁弁31に供給する。電磁弁31に供給される電流の大きさは、PWM信号のデューティ比が高いほど大きい。
【0127】
上述の構成により、コントローラ30は、特定の操作装置26の異常を検知した場合には、その特定の操作装置26に対応する特定のアクチュエータの動きを禁止できる。また、コントローラ30は、その特定のアクチュエータ以外のアクチュエータについては、すなわち、異常を検知していない操作装置26に対応するアクチュエータについては、その動きを禁止してもよく、禁止しなくてもよい。
【0128】
なお、アクチュエータの動きを禁止することは、現在動作しているアクチュエータの動きを停止させること、及び、現在動作していないアクチュエータを動作させないようにすることを含む。
【0129】
例えば、コントローラ30の故障判定部30Aは、旋回操作レバーが左旋回方向に操作されたときに、操作センサ29LB(
図3参照)からの操作信号と、制御弁173の左側パイロットポートに作用するパイロット圧を検出する圧力センサ32DL(
図4D参照)からの圧力値と、電磁弁31DL(
図4D参照)からの電流値とに基づき、旋回操作レバーに異常があるか否かを判定する。なお、本開示では、旋回操作レバーの異常は、旋回操作レバー自体の異常ばかりでなく、旋回操作レバーの操作に応じた旋回油圧モータ2Aの動きを実現するための複数の構成要素(旋回油圧モータ2A、電磁弁31DL、電磁弁31DR、圧力センサ32DL、圧力センサ32DR、及び制御弁173等)のそれぞれの異常を包含する。例えば、旋回操作レバー自体には異常がなくても、圧力センサ32DLに異常があるため、旋回操作レバーの操作に応じて旋回油圧モータ2Aを適切に動作させることができない場合には、故障判定部30Aは、旋回操作レバーに異常があると判定するように構成されている。
【0130】
故障判定部30Aは、圧力センサ32DLからの圧力値の代わりに左旋回圧センサS10Lからの圧力値を用いて異常の有無を判定してもよく、左旋回圧センサS10Lからの圧力値を追加的に用いて異常の有無を判定してもよい。また、故障判定部30Aは、左旋回圧センサS10L以外の他のセンサの検出値を代替的に或いは追加的に用いて異常の有無を判定してもよい。
【0131】
なお、故障判定部30Aは、旋回操作レバー、圧力センサ32DL、及び電磁弁31DL等の何れに異常があるのかを特定する必要はなく、旋回操作レバーの操作に応じた旋回油圧モータ2Aの動きに異常があるか否か、すなわち、旋回操作システム全体として異常があるか否かを判定すればよいが、旋回操作レバー、圧力センサ32DL、及び電磁弁31DL等の何れに異常があるのかを特定してもよい。例えば、故障判定部30Aは、操作装置26とコントローラ30との間における断線の発生を推定できる場合には、その旨を表示装置等に出力して操作者に知らせてもよい。なお、操作装置26自体の異常は、例えば、操作信号の値が予め設定された範囲から逸脱した場合、又は、圧力センサ32等の出力に変動があるにもかかわらず操作信号に変化が見られない場合等に検知される。或いは、圧力センサ32自体の異常は、例えば、圧力値が予め設定された範囲から逸脱した場合、又は、操作信号等に変動があるにもかかわらず圧力値に変化が見られない場合等に検知される。同様に、電磁弁31自体の異常は、例えば、電流値が予め設定された範囲から逸脱した場合、又は、操作信号等に変動があるにもかかわらず電流値に変化が見られない場合等に検知される。なお、操作装置26は、操作装置26が操作されていない場合であっても所定の信号パターンを出力するように構成されていてもよい。異常が検知されやすくなるためである。すなわち、操作装置26が操作されていないときであっても操作装置26自体の異常を検知できるようになるためである。また、故障判定部30Aは、操作信号の瞬間的な異常を無視するように構成されていてもよい。異常の誤検知を抑制するためである。具体的には、故障判定部30Aは、所定時間にわたって異常値が継続的に出力される場合、又は、所定回数以上繰り返して異常値が出力される場合に、その状態を操作装置26の異常として検知してもよい。操作装置26の内部で機械的若しくは電気的な異常が発生している場合、圧力センサ32で異常が発生している場合、又は、電磁弁31で異常が発生している場合等においても同様である。
【0132】
図示例では、故障判定部30Aは、旋回操作レバーに異常があると判定した場合、イネーブル部30Eの一つである旋回操作用イネーブル部に対してOFFレベルのイネーブル指令信号を出力し、電流出力部30Fの一つである旋回用電流出力部を通じた電磁弁31DL及び電磁弁31DRへの電流の供給を停止させることによって旋回油圧モータ2Aの動きを禁止する。一方で、旋回油圧モータ2Aの動きを禁止した場合であっても、故障判定部30Aは、走行油圧モータ2M、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9等の他のアクチュエータについては、それぞれについて異常があると判定するまでは、その動きを禁止しない。この構成により、コントローラ30は、"旋回油圧モータ2Aに関する異常が発生しているが、走行油圧モータ2Mに関する異常は発生していないため、旋回油圧モータ2Aの動きを禁止しながら走行油圧モータ2Mを動かしたい"、といった操作者の縮退運転要求を満たすことができる。なお、コントローラ30は、キャビン10内等に設けられた所定のスイッチが操作者によって操作された場合に限り、このような縮退運転要求を受け入れるように構成されていてもよい。所定のスイッチは、例えば、通常モードと縮退運転モードとの間でショベル100の動作モードを切り換えるための押しボタンスイッチである。なお、通常モードは、例えば、縮退運転モードでない動作モードであり、一つのアクチュエータの動作に関する異常が検知された場合には全てのアクチュエータの動作が禁止される動作モードである。
【0133】
また、故障判定部30Aは、旋回操作レバーの左旋回操作の際に旋回操作レバーに異常があると判定した場合、旋回用電流出力部を通じた電磁弁31DRへの電流の供給を停止させずに、旋回用電流出力部を通じた電磁弁31DLへの電流の供給を停止させることにより、右旋回のための旋回油圧モータ2Aの動きを禁止せずに、左旋回のための旋回油圧モータ2Aの動きのみを禁止してもよい。
【0134】
また、故障判定部30Aは、ブーム操作レバー(右操作レバー26R)に異常があると判定した場合、ブーム用電流出力部を通じた電磁弁31BL及び電磁弁31BRへの電流の供給を停止させることによってブームシリンダ7の動きを禁止するとともに、バケット用電流出力部を通じた電磁弁31CL及び電磁弁31CRへの電流の供給を停止させることによってバケットシリンダ9の動きを禁止してもよい。バケット操作レバーは、ブーム操作レバーとともに、右操作レバー26Rを構成しているためである。この場合、故障判定部30Aは、左操作レバー26Lを構成しているアーム操作レバー及び旋回操作レバーのそれぞれの操作に応じたアームシリンダ8及び旋回油圧モータ2Aのそれぞれの動きを禁止しなくてもよい。また、故障判定部30Aは、走行操作装置の操作に応じた走行油圧モータ2Mの動きを禁止しなくてもよい。
【0135】
但し、故障判定部30Aは、旋回操作レバーに異常があると判定した場合等、特定の一つの操作レバーに異常があると判定した場合には、一旦は全てのアクチュエータの動きを禁止してもよい。すなわち、故障判定部30Aは、各アクチュエータに対応するイネーブル部30EのそれぞれにOFFレベルのイネーブル指令信号を出力することにより、動作中の全てのアクチュエータの動きを停止させてもよい。そして、全てのアクチュエータの動きを一旦停止させた後で、故障判定部30Aは、異常があると判定されたその特定の一つの操作レバーに対応するアクチュエータ以外のアクチュエータの動きの禁止を解除してもよい。
【0136】
上述のように、本開示の実施形態に係るショベル100は、
図1に示すように、下部走行体1と、下部走行体1に旋回可能に搭載される上部旋回体3と、複数のアクチュエータ(旋回油圧モータ2A、走行油圧モータ2M、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9)と、複数のアクチュエータの操作に用いられる複数の電気式操作装置(操作装置26)と、複数の操作装置26のうちの一つに異常があるか否かを判定できる制御装置(コントローラ30)と、を備えている。そして、コントローラ30は、異常があると判定した一つの操作装置26の操作に応じた一つのアクチュエータの動きを禁止するように構成されている。
【0137】
この構成により、ショベル100は、複数の操作装置26に異常があるか否かを個別に判定した上で、複数のアクチュエータの動きを個別に禁止できるため、異常に関係するアクチュエータの動きを許容しない場合であっても、異常に関係しないアクチュエータの動きを許容する状態を実現できるという効果をもたらす。また、ショベル100は、異常に関係するアクチュエータの動きが許容され続けてしまうのを抑制できるという効果をもたらす。そのため、ショベル100は、操作者が特定の操作装置26を微操作しただけにもかかわらず、対応するアクチュエータが大きく動いてしまったり、操作者が特定の操作装置26を操作していないにもかかわらず、対応するアクチュエータが動いてしまったりといった不具合が発生してしまうのを抑制できる。
【0138】
また、コントローラ30は、異常がないと判定した他の操作装置26の操作に応じた他のアクチュエータの動きを許容するように構成されていてもよい。
【0139】
この構成により、ショベル100は、異常に関係しないアクチュエータの動きを積極的に許容するため、異常に関係するアクチュエータの動きを許容しない場合であっても、異常に関係しないアクチュエータの動きを許容する状態をより確実に実現できるという効果をもたらす。
【0140】
また、コントローラ30は、操作装置26の操作内容を検出する第1センサ(操作センサ29)の出力と、アクチュエータの実際の動きを直接的に又は間接的に検出する第2センサ(圧力センサ32、姿勢センサ、シリンダ圧センサ、モータ圧センサ、及びストロークセンサ等のうちの少なくとも一つ)の出力と、そのアクチュエータの動きをもたらす電流の値を検出する第3センサ(電流センサとしての機能する電磁弁31)の出力とに基づき、操作装置26に異常があるか否かを判定してもよい。なお、アクチュエータの動きをもたらす電流は、例えば、ブームシリンダ7の伸縮をもたらす作動油の流量を制御する制御弁175を動かすパイロット圧を生成する電磁弁31に供給される電流である。また、アクチュエータが電磁式アクチュエータである場合には、アクチュエータの動きをもたらす電流は、アクチュエータに直接供給される電流であってもよい。
【0141】
この構成により、ショベル100は、操作装置26、アクチュエータ、第1センサ、第2センサ、又は第3センサ等の何れにおいて異常が発生しているかを特定することなく、操作装置26の操作に応じたアクチュエータの動きに異常があるか否かを判定するだけで、その異常に関係のあるアクチュエータの動きを禁止することができるという効果をもたらす。コントローラ30は、第1センサ、第2センサ、及び第3センサといった複数のセンサの出力を相互に照らし合わせて異常の有無を判定できるためである。
【0142】
また、コントローラ30は、PWM信号を生成することにより、アクチュエータの動きをもたらす電流を制御し、一つの操作装置26に異常があると判定した場合、生成したPWM信号の波形を変えることにより、一つの操作装置26の操作に応じた一つのアクチュエータの動きを禁止するように構成されていてもよい。
図7に示す例では、コントローラ30は、一つの操作装置26に異常があると判定した場合、制御部30Bからの制御信号に応じて生成したPWM信号(入力)のデューティ比を0%にすることにより、その一つの操作装置26の操作に応じたアクチュエータの動きを禁止している。
【0143】
この構成により、ショベル100は、異常が検知された場合にのみ動作する緊急停止弁等のような油圧制御装置を追加的に設けることなく、異常が検知されていない間も継続的に使用される電磁弁31等の油圧制御装置に供給される電流を制御することにより、異常に関係するアクチュエータの動きを禁止できるという効果をもたらす。
【0144】
また、コントローラ30は、一つの操作装置26に異常があると判定した場合、複数のアクチュエータの全ての動きを停止させた後で、異常があるとは判定していない他の電気式操作装置の操作に応じた他の前記アクチュエータの動きの禁止を解除してもよい。
【0145】
この構成により、ショベル100は、操作者の縮退運転要求を満たすことができるという効果をもたらす。
【0146】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に制限されることはなく、後述する実施形態に制限されることもない。上述した或いは後述する実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形又は置換等が適用され得る。また、別々に説明された特徴は、技術的な矛盾が生じない限り、組み合わせが可能である。
【0147】
例えば、上述の実施形態では、コントローラ30は、キャビン10内に設けられており、キャビン10内に設けられた操作装置26に異常があるか否かを判定できるように構成されている。しかしながら、コントローラ30は、ショベル100の外部に設けられていてもよい。この場合、コントローラ30は、ショベル100の外部にある遠隔操作室に設けられるとともに、同じく遠隔操作室に設けられた電気式の操作装置26に異常があるか否かを判定できるように構成されていてもよい。この場合、電気式の操作装置26、コントローラ30、及びショベル100は、ショベル用の制御システムを構成する。
【0148】
また、上述の実施形態では、イネーブル部30Eは、コントローラ30の一部であり、情報の流れにおいて、制御部30Bと電流出力部30Fとの間で制御部30Bの下流に配置されている。そのため、イネーブル部30Eは、制御部30Bによって生成された制御信号を扱うことができ、制御部30Bの上流に配置される場合に比べ、電磁弁31に供給される電流をより確実に遮断できるという効果をもたらす。制御部30Bの上流に配置された場合、制御部30Bの異常に起因して不適切な大きさの電流が電磁弁31に供給されてしまうのを抑制できないおそれがあるためである。また、イネーブル部30Eは、電流出力部30Fが出力するような比較的大きな電流ではなく、低電圧信号を扱うことができるという効果をもたらし、比較的大きな電流を扱う場合に比べて簡易な回路構成を採用できるという効果をもたらす。但し、イネーブル部30Eは、例えば、入力部30Cと制御部30Bとの間で制御部30Bの上流に配置されていてもよい。また、イネーブル部30Eは、コントローラ30の外部にある、コントローラ30とは別の制御装置の一部であってもよい。この場合、イネーブル部30Eは、コントローラ30(電流出力部30F)と電磁弁31との間に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0149】
1・・・下部走行体 2・・・旋回機構 2A・・・旋回油圧モータ 2M・・・走行油圧モータ 2ML・・・左走行油圧モータ 2MR・・・右走行油圧モータ 3・・・上部旋回体 4・・・ブーム 5・・・アーム 6・・・バケット 7・・・ブームシリンダ 8・・・アームシリンダ 9・・・バケットシリンダ 10・・・キャビン 11・・・エンジン 13・・・レギュレータ 14・・・メインポンプ 14L・・・左メインポンプ 14R・・・右メインポンプ 15・・・パイロットポンプ 17・・・コントロールバルブユニット 18L・・・左絞り 18R・・・右絞り 19L・・・左制御圧センサ 19R・・・右制御圧センサ 26・・・操作装置 26D・・・走行レバー 26DL・・・左走行レバー 26DR・・・右走行レバー 26L・・・左操作レバー 26R・・・右操作レバー 28・・・吐出圧センサ 29、29DL、29DR、29LA、29LB、29RA、29RB、・・・操作センサ 30・・・コントローラ 30A・・・故障判定部 30B・・・制御部 30C・・・入力部 30D・・・変換部 30E・・・イネーブル部 30E1・・・PWM出力回路 30E2・・・インターロック回路 30E3・・・AND回路 30F・・・電流出力部 31、31AL~31FL、31AR~31FR・・・電磁弁 32、32AL~32FL、32AR~32FR・・・圧力センサ 35・・・ゲートロック弁 50・・・ゲートロックレバー 70・・・空間認識装置 70B・・・後方センサ 70F・・・前方センサ 70L・・・左方センサ 70R・・・右方センサ 100・・・ショベル 171~176・・・制御弁 AT・・・アタッチメント S5・・・旋回角速度センサ S7B・・・ブームボトム圧センサ S7R・・・ブームロッド圧センサ S8B・・・アームボトム圧センサ S8R・・・アームロッド圧センサ S9B・・・バケットボトム圧センサ S9R・・・バケットロッド圧センサ SW、SW1、SW2・・・スイッチ