(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094843
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】電子写真用導電性ローラ
(51)【国際特許分類】
F16C 13/00 20060101AFI20240703BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240703BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20240703BHJP
G03G 15/02 20060101ALN20240703BHJP
【FI】
F16C13/00 A
F16C13/00 B
G03G15/00 551
G03G15/16 103
G03G15/02 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211678
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】寺田 傑
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼窪 眞司
(72)【発明者】
【氏名】市毛 秀俊
【テーマコード(参考)】
2H171
2H200
3J103
【Fターム(参考)】
2H171FA26
2H171FA27
2H171GA01
2H171GA24
2H171QB03
2H171QB07
2H171QC03
2H171QC14
2H171UA03
2H171UA07
2H171UA08
2H171UA10
2H171UA23
2H171VA06
2H171XA02
2H200FA01
2H200FA02
2H200HA02
2H200HB12
2H200HB45
2H200HB46
2H200JA02
2H200JA25
2H200JA26
2H200JB10
2H200JB45
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2H200MA03
2H200MA08
2H200MA14
2H200MA17
2H200MA20
2H200MB02
2H200MB06
2H200MB08
2H200MB09
3J103AA02
3J103AA13
3J103AA23
3J103AA32
3J103AA85
3J103BA41
3J103FA30
3J103GA54
3J103GA57
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3J103GA74
3J103HA03
3J103HA12
3J103HA20
3J103HA53
(57)【要約】
【課題】連続通電時の電気抵抗値の上昇が抑制され、かつ、使用環境による電気抵抗値の変化量が小さい導電性ローラを提供することを目的とする。
【解決手段】電子写真用導電性ローラは、導電性軸芯体と前記導電性軸芯体を被覆する少なくとも1層の導電性弾性層を有し、前記導電性弾性層が、ゴム成分、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含有するゴム組成物から形成されており、前記ゴム成分が、アクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロルヒドリンゴムを含有し、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有率が10質量%~50質量%であり、前記ゴム組成物中のエチレン-酢酸ビニル共重合体の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して2質量部~15質量部であるいることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性軸芯体と、前記導電性軸芯体を被覆する少なくとも1層の導電性弾性層を有し、
前記導電性弾性層が、ゴム成分、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含有するゴム組成物から形成されており、
前記ゴム成分が、アクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロルヒドリンゴムを含有し、
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有率が、10質量%~50質量%であり、
前記ゴム組成物中のエチレン-酢酸ビニル共重合体の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、2質量部~15質量部であることを特徴とする電子写真用導電性ローラ。
【請求項2】
前記導電性弾性層が多孔質構造であり、
前記ゴム組成物が、前記ゴム成分100質量部に対して0.5質量部~15質量部の化学発泡剤を含有する請求項1に記載の電子写真用導電性ローラ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子写真用導電性ローラを備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性弾性層を有する電子写真用導電性ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置に使用される導電性ローラは、用途に応じて、電気抵抗等の導電性、低硬度、低圧縮永久ひずみ、通電耐久性(連続通電時の抵抗上昇値の低さ)、環境依存性、非汚染性等の種々の性能が要求される。例えば、導電性ローラを転写ローラとして用いる場合、通電耐久性が重要となる。通電耐久性が悪いと転写電圧のコントロールが困難となり、抵抗上昇を抑えるために装置には複雑な機構が必要となり、電子写真装置の製造コストが上昇してしまう。
【0003】
そのため、通電耐久性の良好な導電性ローラの開発が要求されている。例えば、特許文献1には、シャフトと、前記シャフトの外周に設けられた樹脂発泡体とを備えた導電性ローラであって、前記樹脂発泡体が、所定量のアクリロニトリルブタジエンゴムと、エピクロルヒドリンゴムと、イオン導電剤として過塩素酸第四級アンモニウムを含む発泡体である導電性ローラが記載されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
イオン導電剤を配合した導電性ローラでは、電圧をかけることによってイオン導電剤がゴム成分中で偏在化し、それ自体が通電劣化の原因となる。さらに、イオン導電剤は吸湿性などにおいて保管安定性に劣る化合物が多く、使用環境による電気抵抗値の変化量が大きかった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、連続通電時の電気抵抗値の上昇が抑制され、かつ、使用環境による電気抵抗値の変化量が小さい電子写真用導電性ローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することができた本発明の電子写真用導電性ローラは、導電性軸芯体と、前記導電性軸芯体を被覆する少なくとも1層の導電性弾性層を有し、前記導電性弾性層が、ゴム成分、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含有するゴム組成物から形成されており、前記ゴム成分が、アクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロルヒドリンゴムを含有し、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有率が10質量%~50質量%であり、前記ゴム組成物中のエチレン-酢酸ビニル共重合体の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して2質量部~15質量部であるゴム組成物から形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、連続通電時の電気抵抗値の上昇が抑制され、かつ、使用環境による電気抵抗値の変化量が小さい電子写真用導電性ローラが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の導電性ローラの一例を示す斜視図である。
【
図2】導電性ローラのローラ抵抗値を測定する方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の電子写真用導電性ローラは、導電性軸芯体と、前記導電性軸芯体を被覆する少なくとも1層の導電性弾性層を有し、前記導電性弾性層が、ゴム成分、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含有するゴム組成物から形成されている。そして、前記ゴム成分が、アクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロルヒドリンゴムを含有し、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有率が10質量%~50質量%であり、前記ゴム組成物中のエチレン-酢酸ビニル共重合体の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して2質量部~15質量部であるゴム組成物から形成されていることを特徴とする。
【0010】
[ゴム組成物]
前記導電性弾性層は、ゴム成分、エチレン-酢酸ビニルを含有するゴム組成物から形成されている。
【0011】
<ゴム成分>
前記ゴム組成物は、ゴム成分として、少なくともアクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロルヒドリンゴムを含有する。ゴム成分として、アクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロルヒドリンゴムを含有することで、電子写真用の導電性ローラとして適度な導電性が得られる。
【0012】
(アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR))
前記NBRは、アクリロニトリルとブタジエンとの共重合であり、架橋性を有する。前記NBRは、構成成分として、アクリル酸、メタクリル酸、ジビニルベンゼン、ビニルピリジン等を含有してもよい。前記NBRは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0013】
前記NBRとしては、アクリロニトリル含量が25質量%未満である低ニトリルNBR、25質量%以上、30質量%未満である中ニトリルNBR、31質量%以上、36質量%未満である中高ニトリルNBR、36質量%以上、43質量%未満である高ニトリルNBR、43質量%以上である極高ニトリルNBRが挙げられる。これらの中でも、低ニトリルNBRおよび/または中ニトリルNBRが好ましく、低ニトリルNBRがより好ましい。
【0014】
またNBRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、加えない非油展タイプのものとがあり、いずれも使用できるが、非油展タイプのものが好ましい。
【0015】
前記ゴム成分中のNBRの含有率は、55質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上であり、80質量%以下が好ましく、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。NBRの含有率が上記範囲内であれば、ゴムローラのローラ抵抗値が、導電ローラ等としてより適した範囲となる。
【0016】
(エピクロルヒドリンゴム)
前記エピクロルヒドリンゴムとしては、繰り返し単位としてエピクロルヒドリンを含み、イオン導電性を有する種々の重合体が使用可能である。前記エピクロルヒドリンゴムは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
前記エピクロルヒドリンゴムとしては、例えば、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)、エピクロルヒドリン-プロピレンオキサイド二元共重合体、エピクロルヒドリン-アリルグリシジルエーテル二元共重合体(GCO)、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)、エピクロルヒドリン-プロピレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド-プロピレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル四元共重合体等が挙げられる。これらの中でも、電子写真用導電性ローラに必要な電気抵抗値とジエン系ゴムとの共架橋性の観点から、GECOが好ましい。
【0018】
前記GECOのエチレンオキサイド含有量は、30モル%以上が好ましく、より好ましくは50モル%以上であり、80モル%以下が好ましい。エチレンオキサイド含有量が上記範囲内であれば、導電性弾性層の電気抵抗値を低くすることができる。
【0019】
前記GECOのアリルグリシジルエーテル含有量は、0.5モル%以上が好ましく、より好ましくは2モル%以上であり、10モル%以下が好ましく、より好ましくは5モル%以下である。アリルグリシジルエーテル含有量が0.5モル%以上であればエチレンオキサイドの結晶化が抑制され、導電性弾性層の電気抵抗値がより低下し、10モル%以下であれば導電性弾性層中の分子鎖のセグメント運動が妨げられず、導電性弾性層の電気抵抗値がより低下する。
【0020】
前記GECOのエピクロルヒドリン含量は、エチレンオキサイド含量、およびアリルグリシジルエーテル含量の残量であり、エピクロルヒドリン含量は10モル%以上が好ましく、より好ましくは19.5モル%以上であり、69.5モル%以下が好ましく、より好ましくは60モル%以下である。
【0021】
前記ゴム成分中のエピクロルヒドリンゴムの含有率は、20質量%以上が好ましく、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、45質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下である。エピクロルヒドリンゴムの含有率が上記範囲以内であれば、ゴムローラのローラ抵抗値が、導電ローラ等としてより適した範囲となる。
【0022】
前記ゴム成分中のアクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロルヒドリンゴムとの質量比(アクリロニトリルブタジエンゴム/エピクロルヒドリンゴム)は、1.2以上が好ましく、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2.0以上であり、4.0以下が好ましく、より好ましくは3.5以下、さらに好ましくは3.0以下である。
【0023】
(他のゴム成分)
前記ゴム成分は、アクリロニトリルブタジエンゴムおよびエピクロルヒドリンゴムのみを含有してもよいし、これら以外の他のゴム成分を含有してもよい。他のゴム成分を含有する場合、ゴム成分100質量%中のアクリロニトリルブタジエンゴムおよびエピクロルヒドリンゴムの合計含有率は、70質量%以上が好ましく、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
【0024】
前記他のゴム成分としては、従来導電性ローラに使用されるものが好適に使用できる。前記他のゴム成分としては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)、エチレン-ブテン-ジエン共重合体(EBDM)、エチレン-プロピレン-ブテン-ジエン共重合体(EPBDM)、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、シリコンゴム等が挙げられる。これらの他のゴム成分は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
<エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)>
前記ゴム組成物は、酢酸ビニル含有率が10質量%~50質量%であるエチレン-酢酸ビニル共重合体を含有する。エチレン-酢酸ビニル共重合体は、導電性弾性層に通電した際に、ゴム成分よりも優先的に劣化すると考えられる。これによって、導電性に寄与するエピクロルヒドリンゴムの劣化が抑制され、連続通電時の電気抵抗値の上昇が抑制されると考えられる。
【0026】
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体は、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体である。前記エチレン-酢酸ビニル共重合体は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有率は、10質量%以上、好ましくは14質量%以上であり、50質量%以下、好ましくは46質量%以下である。酢酸ビニル含有率が上記範囲内であれば、通電耐久性に優れ、環境依存性が小さい導電ローラが得られる。前記エチレン-酢酸ビニル共重合体を2種以上併用する場合、各エチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有率が上記範囲内であることが好ましい。
【0028】
前記ゴム組成物中のエチレン-酢酸ビニル共重合体の含有率は、前記ゴム成分100質量部に対して2質量部以上が好ましく、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上であり、15質量部以下が好ましく、より好ましくは13質量部以下、さらに好ましくは10質量部である。エチレン-酢酸ビニル共重合体の含有率が上記範囲内であれば、通電耐久性に優れ、環境依存性が小さい導電ローラが得られる。
【0029】
<化学発泡剤>
前記ゴム組成物は、化学発泡剤を含有してもよい。ゴム組成物に化学発泡剤を配合することで、多孔質構造を有する導電性弾性層を形成できる。
【0030】
前記化学発泡法としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、p-オキシビス(ベンゼンスルホヒドラジド)(OBSH)、N,N-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等が挙げられる。
【0031】
前記ゴム組成物に化学発泡剤を配合する場合、前記ゴム組成物中の化学発泡剤の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上であり、15質量部以下が好ましく、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは8質量部以下である。化学発泡剤の含有量が上記範囲内であれば発泡セルの大きさが最適となり、導電性弾性層の表面平滑性を維持しつつ、導電性弾性層の柔軟性が向上する。
【0032】
<発泡助剤>
前記ゴム組成物に化学発泡剤を配合する場合、発泡助剤を併用することが好ましい。前記発泡助剤としては、組み合わせる発泡剤の分解温度を引き下げて、当該発泡剤の分解を促進する働きをする種々の化合物が使用可能である。前記発泡剤としてアゾジカルボンアミド、または、p-オキシビス(ベンゼンスルホヒドラジド)を使用する場合、前記発泡助剤としては、例えば、尿素(H2NCONH2)が挙げられる。
【0033】
前記ゴム組成物に発泡助剤を配合する場合、前記ゴム組成物中の発泡助剤の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.5質量部以上であり、10質量部以下が好ましく、より好ましくは5質量部以下である。
【0034】
<加硫剤>
前記ゴム組成物は、加硫剤を含有することが好ましい。前記加硫剤としては、例えば、硫黄系加硫剤、チオウレア系加硫剤、トリアジン誘導体系加硫剤、過酸化物系加硫剤が挙げられ、硫黄系加硫剤が好ましい。前記加硫剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記硫黄系加硫剤としては単体硫黄、硫黄ドナー型化合物が挙げられる。前記単体硫黄としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド状硫黄、不溶性硫黄が挙げられる。前記硫黄ドナー型化合物としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、4,4’-ジチオジモルホリンなどが挙げられる。
【0036】
前記加硫剤の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であり、6質量部以下が好ましく、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは4質量部以下である。加硫剤の含有量が上記範囲内であれば、導電性弾性層の弾性が、導電性ローラとしてより適した弾性となる。
【0037】
<加硫促進剤>
前記ゴム組成物は、加硫促進剤を含有することが好ましい。硫黄系加硫剤と併用する加硫促進剤としては、例えば、チアゾール系促進剤、チウラム系促進剤、スルフェンアミド系促進剤、ジチオカルバミン酸塩系促進剤が挙げられる。加硫促進剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。加硫促進剤としては、チアゾール系促進剤とチウラム系促進剤とを併用することが好ましい。
【0038】
前記チウラム系促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドが挙げられる。
【0039】
前記チアゾール系促進剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2-(4'-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等が挙げられる。
【0040】
前記加硫促進剤の合計含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であり、10質量部以下が好ましく、より好ましくは7質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。加硫促進剤の合計含有量が上記範囲内であれば、多孔質構造を有する導電性弾性層を形成することができる。
【0041】
<他の配合剤>
導電性弾性層には、必要に応じて、充填剤、受酸剤、加硫助剤、老化防止剤、滑剤、分散剤等の配合剤が添加されていてもよい。
【0042】
(充填剤)
前記充填剤としては、例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム、シリカ、タルク、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。前記充填剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。充填剤を配合することにより、導電性弾性層の機械的強度等を向上できる。
【0043】
前記充填剤として、導電性カーボンブラックを用いることで、導電性弾性層の電子導電性を制御することもできる。導電性カーボンブラックとしてはHAFが好ましい。HAFは、ゴム組成物中に均一に分散できるため、導電性弾性層の電子導電性を均一にできる。
【0044】
前記導電性カーボンブラックを配合する場合、導電性カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、より好ましくは8質量部以上であり、20質量部以下が好ましく、より好ましくは15質量部以下である。
【0045】
(受酸剤)
前記受酸剤は、加硫時にエピクロルヒドリンゴム等から発生した塩素系ガスが導電性弾性層内に残留したり、加硫阻害や導電性ローラと接触する部材の汚染等を生じたりするのを防止する。受酸剤としては、酸受容体として作用する種々の物質を用いることができるが、分散性に優れたハイドロタルサイト類が好ましい。
【0046】
前記受酸剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、より好ましくは0.5質量部以上であり、5質量部以下が好ましく、より好ましくは2質量部以下である。
【0047】
(加硫助剤)
前記加硫助剤としては、例えば、酸化亜鉛(亜鉛華)等の金属化合物;ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸等が挙げられる。前記加硫助剤の含有量は、前記ゴム組成物100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、7質量部以下が好ましい。
【0048】
(老化防止剤)
前記老化防止剤としては、ジエチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等が挙げられる。
【0049】
前記ゴム組成物は、ゴム成分、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ならびに必要に応じて他の原料を配合し、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、オープンロール等で混練することで調製できる。混練の方法および条件は生産スケールによって適宜選択される。
【0050】
[導電性ローラ]
本発明の導電性ローラは、電子写真法を利用した画像形成装置の転写ローラ、帯電ローラ等に使用することができ、特に転写ローラに好適に使用できる。
図1は、本発明の導電性ローラの一例を示す斜視図である。導電性ローラ1は、導電性軸芯体2と、前記導電性軸芯体2を被覆する導電性弾性層3とを有する。前記導電性弾性層3は、前記ゴム組成物の架橋物からなり、円筒状に形成されている。前記導電性弾性層3の中心の通孔には導電性軸芯体が挿通されて固定されている。
【0051】
導電性軸芯体2は、少なくとも表面が導電性を有し、導電性ローラの支持体として機能するものであれば特に限定されない。前記導電性軸芯体2の直径は特に限定されないが、通常4mm~20mmである。前記導電性軸芯体2としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属によって形成される。
【0052】
前記導電性軸芯体2は、例えば、導電性を有する接着剤を介して、導電性弾性層3と電気的に接合されるとともに機械的に固定されるか、または導電性弾性層の通孔の内径よりも外径の大きいものを通孔に圧入することで、導電性弾性層3と電気的に接合されるとともに機械的に固定される。あるいは、この両方を併用して、導電性軸芯体2を導電性弾性層3に電気的に接合し、機械的に固定してもよい。
【0053】
導電性弾性層3は、中実構造でもよいし、多孔質構造でもよいが、多孔質構造が好ましい。導電性弾性層3の厚さは特に限定されず、使用目的に応じて適宜調整すればよく、通常2mm~20mmである。
【0054】
導電性弾性層の電気抵抗値R(Ω)は、用途に応じて適宜調節すればよい。転写ローラとして使用する場合、温度23℃、相対湿度55%の常温常湿環境で測定された電気抵抗値R(Ω)は、常用対数値logRで表して6.6以上が好ましく、より好ましくは6.8以上であり、8.5以下が好ましく、より好ましくは7.8以下である。なお、導電性弾性層の電気抵抗値の測定方法は後述する。
【0055】
また、転写ローラとして使用する場合、温度10℃、相対湿度20%の低温低湿環境で測定された電気抵抗値RL(Ω)の対数値logRLと、温度30℃、相対湿度80%の高温高湿環境下で測定された電気抵抗値RH(Ω)の対数値logRHとの差logRL-logRHは、1.80以下が好ましく、より好ましくは1.75以下である。
【0056】
[導電性ローラの製造方法]
本発明の導電性ローラを製造するには、まずゴム組成物を、押出成形機を用いて筒状に押出成形し、所定の長さにカットして、加硫缶内で加圧水蒸気によって加圧、加熱して発泡、および架橋させる。次いで、発泡、架橋させた筒状体を、オーブン等を用いて加熱して二次架橋させたのち冷却し、さらに所定の外径となるように研磨して導電性弾性層を形成する。
【0057】
導電性軸芯体は、筒状体のカット後から研磨後までの任意の時点で通孔に挿通して固定できる。ただし、カット後、まず通孔に導電性軸芯体を挿通した状態で二次架橋および研磨をするのが好ましい。これにより、二次架橋時の膨張収縮による筒状体の反りや変形等を抑制できる。また、導電性軸芯体を中心として回転させながら研磨することで当該研磨の作業性を向上し、なおかつ外周面のフレを抑制できる。
【0058】
導電性軸芯体は、先に説明したように、導電性を有する接着剤、特に導電性の熱硬化性接着剤を介して二次架橋前の筒状体の通孔に挿通したのち二次架橋させるか、あるいは通孔の内径より外径の大きいものを通孔に圧入すればよい。
前者の場合は、オーブン中での加熱によって筒状体が二次架橋されるのと同時に熱硬化性接着剤が硬化して、当該導電性軸芯体が導電性弾性層に電気的に接合されるとともに機械的に固定される。また後者の場合は、圧入と同時に電気的な接合と機械的な固定が完了する。また、この両方を併用してもよい。
【0059】
[画像形成装置]
本発明の画像形成装置は、前記導電性ローラを備えたことを特徴とする。前記画像形成装置としては、例えば、レーザープリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、あるいはこれらの複合機等の電子写真法を利用した種々の画像形成装置が挙げられる。
【実施例0060】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0061】
[評価方法]
1.電気抵抗値
図2に示すように、導電性ローラ1の導電性軸芯体2を軸支し、これを金属製円筒4の上方に、導電性ローラ1と金属製円筒4とが当接するように配置した。前記導電性軸芯体2と金属製円筒4との間に、直流電源5および抵抗6を直列に接続して、電気抵抗値の計測回路を作製した。なお、直流電源5は-側を導電性軸芯体2、+側を抵抗6に接続した。
前記導電性軸芯体2の両端部にそれぞれ500gfの荷重Fをかけて導電性ローラ1を金属製円筒4に押圧し、導電性軸芯体2と金属製円筒4との間に電圧E(1000V)を印加した。電圧をかけたまま、金属製円筒4を回転させることで間接的に導電性ローラ1を回転させて、抵抗6(内部抵抗r:1kΩ)にかかる電圧Vを計測した。測定条件は温度23℃、相対湿度55%とした。測定は32回行い、平均値を算出した。
導電性ローラ1の電気抵抗値Rを、次式(1)より求め、対数値にて標記した。
R
0=r×E/V (1)
[R
0:導電性ローラの電気抵抗値、r:抵抗6の内部抵抗値、E:印加電圧、V:検出電圧]
【0062】
2.通電耐久性
導電性ローラに対して、温度23℃、相対湿度55%の環境下で、2000Vの電圧を連続的に1時間印加した。電圧印加後の導電性ローラについて電気抵抗値を測定した。電圧印加前の導電性ローラの電気抵抗値(R0)と電圧印加後の導電性ローラの電気抵抗値(R1)との比(R1/R0)を求め、これを抵抗上昇値とした。下記の基準で評価した。
◎:抵抗上昇値が、lоgΩにて、0.10以上である。
〇:抵抗上昇値が、lоgΩにて、0.10超、0.14以下である。
×:抵抗上昇値が、lоgΩにて、0.14超である。
【0063】
3.環境依存性
導電性ローラの電気抵抗値の測定を、低温低湿環境(温度10℃、相対湿度20%)および高温高湿環境(温度30℃、相対湿度80%)で実施した。低温低湿環境における電気抵抗値RLと、高温高湿環境における電気抵抗値RHについてそれぞれ対数値LogRL、LogRHを求め、その差を環境依存性を示す数値Δ(LL-HH)とし、下記の基準で評価した。
Δ(LL-HH)=LogRL-LogRH
◎:Δ(LL-HH)が、1.75以下である。
〇:Δ(LL-HH)が、1.75超、1.80以下である。
×:Δ(LL-HH)が、1.80超である。
【0064】
[導電性ローラの作製]
表1に示したゴム成分、エチレン-酢酸ビニル共重合体、発泡剤、その他各種配合剤を配合し、ニーダーで混練してゴム組成物を得た。
調製したゴム組成物を単軸押出成形機に供給してチューブ状(外径13mm、内径4.5mm)に押し出して予備成形した後、未加硫のゴムチューブを所定の長さに裁断して予備成形体を得た。
この予備成形体を、加圧水蒸気式加硫缶に投入し、160℃で15分間~70分間加熱をして、多孔質加硫ゴムチューブを得た。
この加硫ゴムチューブに金属製のシャフト(外径8mm)を挿入し、オーブン中で160℃、60分間加熱した後、ゴム表面を研磨し外径を15mm調整して導電性ゴムローラを作製した。
【0065】
【表1】
NBR:JSR製、JSR(登録商標)NBR N250SL(アクリロニトリルブタジエンゴム(アクリロニトリル含有率19.5質量%、非油展))
エピクロルヒドリンゴム:日本ゼオン製、Hydrin(登録商標)T3108
ウルトラセン(登録商標) 685:東ソー製、エチレン-酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有率14質量%)
ウルトラセン680:東ソー製、エチレン-酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有率20質量%)
エバフレックス(登録商標)EV45LX:三井・ダウポリケミカル製、エチレン-酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有率46質量%)
レバプレン(登録商標)800:アランセオ製、エチレン-酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有率80質量%)
アゾジカルボンアミド:永和化成工業製、ビニホール(登録商標)AC♯3
尿素:永和化成工業製、セルペースト(登録商標)
硫黄:鶴見化学工業製、5%オイル入り硫黄
MBTS:Shandong Shanxian Chemical製、SUNSINE MBTS(ジ-2-ベンゾチアジルジスルフィド)
TS:三新化学工業製、サンセラー(登録商標)TS(テトラメチルチウラムモノスルフィド)
カーゴンブラック:東海カーボン製、シースト(登録商標)3(カーボンブラック(HAF))
炭酸カルシウム:備北粉化工業製、BF-300
ハイドロタルサイト:協和化学工業製、DHT-4A(登録商標)-2(合成ハイドロタルサイト)
酸化亜鉛:三井金属鉱山製、酸化亜鉛二種
NiDBC:川口化学工業製、ANTAGE(登録商標) NBC-F(ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル)
【0066】
導電性ローラNo.1~5は、導電性弾性層が、ゴム成分、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含有するゴム組成物から形成されており、前記ゴム成分が、アクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロルヒドリンゴムを含有し、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有率が10質量%~50質量%であり、前記ゴム組成物中のエチレン-酢酸ビニル共重合体の含有量が前記ゴム成分100質量部に対して、2質量部~15質量部である。これらの導電性ローラNo.1~5は、通電耐久性が良好であり、重要特性である環境依存性にも悪影響が認められなかった。
【0067】
導電性ローラNo.6は、導電性弾性層が、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含有しないゴム組成物から形成されている。この導電性ローラNo.6は、通電耐久性が劣っていた。
導電性ローラNo.7、8は、エチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有率が50質量%超の場合である。これらの導電性ローラNo.7、8は、環境依存性が劣っていた。
【0068】
本発明(1)は、導電性軸芯体と、前記導電性軸芯体を被覆する少なくとも1層の導電性弾性層を有し、前記導電性弾性層が、ゴム成分、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含有するゴム組成物から形成されており、前記ゴム成分が、アクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロルヒドリンゴムを含有し、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有率が、10質量%~50質量%であり、前記ゴム組成物中のエチレン-酢酸ビニル共重合体の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、2質量部~15質量部であることを特徴とする電子写真用導電性ローラである。
【0069】
本発明(2)は、前記導電性弾性層が多孔質構造であり、前記ゴム組成物が、前記ゴム成分100質量部に対して0.5質量部~15質量部の化学発泡剤を含有する本発明(1)に記載の電子写真用導電性ローラである。
【0070】
本発明(3)は、本発明(1)または(2)に記載の電子写真用導電性ローラを備えることを特徴とする画像形成装置である。