(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094848
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】情報処理装置、加工システム、加工方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B23B 25/06 20060101AFI20240703BHJP
B23B 31/02 20060101ALI20240703BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20240703BHJP
B23Q 17/22 20060101ALI20240703BHJP
G05B 19/18 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B23B25/06
B23B31/02 Z
B23Q17/00 A
B23Q17/22 B
G05B19/18 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211694
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】山口 和晃
【テーマコード(参考)】
3C029
3C045
3C269
【Fターム(参考)】
3C029AA06
3C029EE06
3C045HA05
3C269AB02
3C269BB11
3C269MN16
3C269MN29
3C269MN44
(57)【要約】
【課題】単に異物を噛み込んでいるか否かによって加工を行うか否かを判断する場合に比べて、製品規格への影響有無を判別できるようにする。
【解決手段】プロセッサ161を備え、プロセッサ161は、ワークを把持する把持部31がワークを把持する際の圧力状態を示す情報である圧力情報を取得し、取得された圧力情報を基に、ワークの加工を行う場合の製品規格への影響から得られる結果を出力する、ことを特徴とする情報処理装置である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
被加工材を把持する把持部が当該被加工材を把持する際の圧力状態を示す情報である圧力情報を取得し、
取得された前記圧力情報を基に、前記被加工材の加工を行う場合の製品規格への影響から得られる結果を出力する、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記結果の出力は、前記圧力情報から求めた前記被加工材の形状又は幾何公差を示す情報と、前記製品規格に含まれる情報とから得られる結果を出力するものであることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記圧力情報は、前記把持部の奥行き方向の複数の位置の圧力を示す情報を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記圧力情報は、前記奥行き方向の位置を示す位置情報と共に当該位置の圧力値を検出するシート状の圧力センサによるものであることを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記圧力情報は、前記把持部の周方向の複数の位置の圧力を示す情報を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記圧力情報は、前記周方向の位置を示す位置情報と共に当該位置の圧力値を検出するシート状の圧力センサによるものであることを特徴とする請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記結果が肯定的なものである場合に前記把持部に対する位置ずれ補正の実行を指示することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
被加工材を把持する把持部と、
請求項1に記載の情報処理装置と、
を有することを特徴とする加工システム。
【請求項9】
被加工材を把持部が把持する把持工程と、
前記把持工程により前記被加工材が把持される際の圧力状態を示す情報である圧力情報を取得する取得工程と、
前記取得工程により取得された前記圧力情報を基に、前記被加工材の加工を行う場合の製品規格への影響から得られる結果を出力する出力工程と、
前記出力工程により出力される前記結果により、前記把持工程により把持された前記被加工材の加工を行う加工工程と、
を備えることを特徴とする加工方法。
【請求項10】
情報処理装置に、
被加工材を把持する把持部が当該被加工材を把持する際の圧力状態を示す情報である圧力情報を取得する取得機能と、
前記取得機能により取得された前記圧力情報を基に、前記被加工材の加工を行う場合の製品規格への影響から得られる結果を出力する出力機能と、
を実現させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、加工システム、加工方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば旋盤等において被加工材であるワークを把持して加工する際、直前の加工や使用環境によってはワークを把持する際に異物を噛み込んでしまう場合があることから、異物を検出する方法が知られている。
例えば、特許文献1には、旋盤が、第一主軸台、第二主軸台、第二主軸台を第二主軸の中心線方向へ移動させるサーボ装置、並びに、把持部の開閉動作及びサーボ装置を介した第二主軸台の移動を制御する制御部を備え、制御部は、第二把持部を開いてサーボ装置を最大トルクよりも低いトルクに制限した状態で第二主軸台を第一主軸台の方へ移動させ、サーボ装置に所定のトルク変動を与えて第二主軸の中心線方向における第二主軸台の位置の変化を検出し、第二把持部がワークを把持する範囲において検出した位置の変化に基づいて第二把持部とワークとの間の異物の有無を判別する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、異物を噛み込んでいる場合であっても、製品規格を満たす被加工材の加工を行うことが可能な場合が想定される。
本発明は、単に異物を噛み込んでいるか否かによって加工を行うか否かを判断する場合に比べて、製品規格への影響有無を判別できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、プロセッサを備え、前記プロセッサは、被加工材を把持する把持部が当該被加工材を把持する際の圧力状態を示す情報である圧力情報を取得し、取得された前記圧力情報を基に、前記被加工材の加工を行う場合の製品規格への影響から得られる結果を出力する、ことを特徴とする情報処理装置である。
請求項2に記載の発明は、前記結果の出力は、前記圧力情報から求めた前記被加工材の形状又は幾何公差を示す情報と、前記製品規格に含まれる情報とから得られる結果を出力するものであることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置である。
請求項3に記載の発明は、前記圧力情報は、前記把持部の奥行き方向の複数の位置の圧力を示す情報を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置である。
請求項4に記載の発明は、前記圧力情報は、前記奥行き方向の位置を示す位置情報と共に当該位置の圧力値を検出するシート状の圧力センサによるものであることを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置である。
請求項5に記載の発明は、前記圧力情報は、前記把持部の周方向の複数の位置の圧力を示す情報を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置である。
請求項6に記載の発明は、前記圧力情報は、前記周方向の位置を示す位置情報と共に当該位置の圧力値を検出するシート状の圧力センサによるものであることを特徴とする請求項5に記載の情報処理装置である。
請求項7に記載の発明は、前記プロセッサは、前記結果が肯定的なものである場合に前記把持部に対する位置ずれ補正の実行を指示することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置である。
請求項8に記載の発明は、被加工材を把持する把持部と、請求項1に記載の情報処理装置と、を有することを特徴とする加工システムである。
請求項9に記載の発明は、被加工材を把持部が把持する把持工程と、前記把持工程により前記被加工材が把持される際の圧力状態を示す情報である圧力情報を取得する取得工程と、前記取得工程により取得された前記圧力情報を基に、前記被加工材の加工を行う場合の製品規格への影響から得られる結果を出力する出力工程と、前記出力工程により出力される前記結果により、前記把持工程により把持された前記被加工材の加工を行う加工工程と、を備えることを特徴とする加工方法である。
請求項10に記載の発明は、情報処理装置に、被加工材を把持する把持部が当該被加工材を把持する際の圧力状態を示す情報である圧力情報を取得する取得機能と、前記取得機能により取得された前記圧力情報を基に、前記被加工材の加工を行う場合の製品規格への影響から得られる結果を出力する出力機能と、を実現させるプログラムである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、単に異物を噛み込んでいるか否かによって加工を行うか否かを判断する場合に比べて、製品規格への影響有無を判別できるようにすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施の形態に係る旋盤の構成を説明する概略図である。
【
図2】本実施の形態に係る旋盤の構成を説明するブロック図である。
【
図3】コレットチャックの構成例を説明する図であり、(a)は、コレットチャックをワークと共に示す斜視図、(b)は、爪及び圧力センサを示す図である。
【
図4】圧力センサを説明する図であり、(a)は異物が存在する場合、(b)は異物が存在しない場合を示す。
【
図6】ワークを加工する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[旋盤1の構成説明]
図1は、本実施の形態に係る旋盤1の構成を説明する概略図である。
同図に示す旋盤1は、2つの主軸ヘッドを有するNC(数値制御)装置例を示したものであり、より具体的には、2つの主軸ヘッドとして、互いに向かい合うように配置された第1主軸ヘッド11及び第2主軸ヘッド12を有する。これにより、ワーク10の連続加工を行うことができる。
【0009】
第1主軸ヘッド11は駆動モータ111により回転し、第2主軸ヘッド12は駆動モータ121により回転する。第1主軸ヘッド11は、被加工材の一例としてのワーク10を把持する把持部13を有し、第2主軸ヘッド12は、ワーク10を把持する把持部14を有する。
図1に示す例では、ワーク10の両端部の一方を第1主軸ヘッド11の把持部13が把持し、他方を第2主軸ヘッド12の把持部14が把持する状態を示すが、これに限られず、把持部13又は把持部14のいずれか一方のみがワーク10の端部を把持してもよい。より詳細には、
図1に示す例では、長いワーク10を例えば把持部13で保持し、加工をした後に把持部14でも保持し、突っ切り加工を行う場合に多い保持状態である。また、上述した把持部13と把持部14のいずれか一方のみがワーク10の端部を把持する場合は、一般的な加工時の状態であり、向きに応じて正面加工又は背面加工のどちらかを行う。
さらに説明すると、把持部13と把持部14がそれぞれ別のワーク10を把持してもよい。すなわち、
図1に示す例において突っ切り加工してワーク10が分断された状態でもよい。その後に、正面加工または背面加工に分かれて加工されるか、背面側が回収される。背面側が回収された状態が、いずれか一方のみがワーク10の端部を把持する状態である。
【0010】
また、旋盤1は、第1主軸ヘッド11及び第2主軸ヘッド12に対して移動可能な刃物台15を有する。刃物台15は、把持されたワーク10を加工するための複数の工具が取り付けられていて、回転状態のワーク10をいずれかの工具で加工する。
【0011】
また、旋盤1は、第1主軸ヘッド11や第2主軸ヘッド12、刃物台15等を制御する制御部16を有する。例えば、制御部16は、第1主軸ヘッド11や第2主軸ヘッド12、刃物台15の各位置を変更するための駆動源(不図示)を制御し、上述した駆動モータ111、121を制御する。また、制御部16は、後述のサーボモータ群22(
図2参照)を制御する。制御部16は、情報処理装置の一例である。
なお、旋盤1は、ワーク10の交換等を含む動作を制御部16により自動制御する態様の他、ワーク10の交換等は作業員が手動で行う態様であってもよい。
【0012】
図2は、本実施の形態に係る旋盤1の構成を説明するブロック図である。
図2に示すように、旋盤1の把持部13、14はそれぞれ、コレットチャック21を含むチャック機構20を有する。なお、本実施の形態に係る把持部13、14は、共通の構成を持つチャック機構20を採用しているが、異なる構成を採用してもよい。また、本実施の形態では、チャック機構20がコレットチャック21を有する構成を採用するが、これに限られず、スクロールチャックや様々な形状に対応する専用チャック、さらには自動交換機能が付いた工具チャックであってもよい。
【0013】
コレットチャック21は、ワーク10(
図1参照)を把持するための複数の爪を備え、本実施の形態では、3つの爪211、212、213を備える。コレットチャック21にワーク10が入った状態で爪211~213が閉まるように動くことで、ワーク10が把持される。爪211~213は、個別に動かすことができるように構成されている。
【0014】
また、チャック機構20は、サーボモータ群22を含む。
サーボモータ群22は、爪211~213に対応するサーボモータ221、222、223を備える。すなわち、サーボモータ221~223は、爪211~213の駆動源であり、これにより、爪211~213の各々は、サーボモータ221~223により独立して移動可能である。より具体的には、爪211は、サーボモータ221により移動可能である。また、爪212はサーボモータ222により移動可能であり、爪213はサーボモータ223により移動可能である。
サーボモータ221~223は、制御部16により制御される。なお、本実施の形態ではサーボモータ221~223を用いたが、サーボモータ221~223に代えて、各爪の外周または、コレットチャック21が収まるホルダやスリーブの内周面等、各爪の圧力値に影響を与える位置に圧電素子等を入れた構成を採用し、制御部16により制御するようにしてもよい。
【0015】
さらに、コレットチャック21の爪211~213には、圧力センサシート等のシート状の圧力センサ231、232、233が配置されている。具体的には、爪211に圧力センサ231が対応配置されている。また、爪212に圧力センサ232が対応配置され、爪213に圧力センサ233が対応配置されている。
付言すると、上述した専用チャックに適用する場合、シート状であることから、チャック形状に合わせて圧力センサを曲げて貼り付けすることができる。
【0016】
圧力センサ231~233は、コレットチャック21がワーク10を把持する際の圧力状態を示す情報である圧力情報を制御部16に出力する。これにより、制御部16は、圧力情報を取得する。
【0017】
ここにいう圧力情報には、圧力値が含まれるほか、圧力を検出した位置を示す情報である位置情報も含まれる。すなわち、圧力情報を取得する際、コレットチャック21の奥行き方向(
図3参照)の位置情報や周方向(同図参照)の位置情報を取得する。
かかる奥行き方向の位置情報と周方向の位置情報の両方を取得する場合の他、いずれか一方を取得する場合であってもよい。また、奥行き方向の位置情報は、単数であっても複数であってもよく、周方向の位置情報も単数であっても複数であってもよい。
【0018】
なお、周方向の位置情報は、圧力センサ231~233の各々が自身の周方向における複数の位置を検出可能な場合と、圧力センサ231~233のうちいずれの圧力センサが圧力を検出したかによってコレットチャック21の周方向における位置を検出可能な場合とがあるが、いずれか一方又は両方であってもよい。
【0019】
なお、本実施の形態では、圧力センサ231~233が圧力情報を出力する構成を採用するが、これに限られず、制御部16が圧力センサ231~233からのデータを基に圧力情報を生成し、出力する構成を採用してもよい。
【0020】
図2に示すように、旋盤1の制御部16は、プロセッサ161と、ROM162と、RAM163と、入出力デバイス164とを有する。
プロセッサ161は、ROM162等に記憶されたシステムプログラムをRAM163にロードして実行することにより全体の制御を実行する。
ROM162は、プロセッサ161が実行するシステムプログラム等を記憶するメモリである。RAM163は、プロセッサ161の作業用メモリ等として用いられるメモリである。
入出力デバイス164は、各種情報の表示やユーザからの操作入力の受付を行うデバイスであり、例えばタッチパネルである。
【0021】
[コレットチャック21の説明]
図3は、コレットチャック21の構成例を説明する図であり、(a)は、コレットチャック21をワーク10と共に示す斜視図、(b)は、爪211~213及び圧力センサ231~233を示す図である。
図3(a)に示すコレットチャック21の爪211~213は、周方向に分割して配置されていて、ワーク10を収容するための空間Aを形成する。爪211~213を移動することで空間Aの大きさが変更され、これにより、奥行き方向に差し込まれるワーク10の挿入や把持を行うことができ、また、取り出しを行うことができる。
【0022】
本実施の形態における爪211~213の内面は、ワーク10の外形に沿うように形成された円弧形状の曲面であるが、これに限られず、平面形状であってもよい。
なお、コレットチャック21は消耗品であり、使用環境や加工精度等の必要に応じてコレットチャック21の交換作業が行われる。
【0023】
図3(b)に示すように、爪211~213の内面に、シート状の圧力センサ231~233が貼付されている。すなわち、圧力センサ231~233は、チャック内でワーク10が直接接する箇所に貼り付けられている。圧力センサ231~233は、コレットチャック21の奥行き方向に長い形状である。
なお、複数箇所の位置における圧力値を検出するシート状の圧力センサ231~233の各々の代わりに、1つの位置における圧力値のみを検出する例えば圧電素子の圧力センサを奥行き方向や周方向に複数個配置するようにしてもよい。
【0024】
なお、ワーク10をコレットチャック21に把持する際に異物を噛み込んでしまう場合には、その異物は、ワーク10と圧力センサ231~233との間に位置する。
【0025】
[圧力センサ231~233の説明]
図4は、圧力センサ231~233を説明する図であり、(a)は、異物100が存在する場合、(b)は、異物100が存在しない場合を示す。なお、ここにいう異物100は、例えば切り屑等である。
図4に示す圧力センサ231~233は、予め定められている検出範囲を持ち検出範囲内の複数の位置の圧力を示す情報を検出可能なシート状の圧力検出器を用いている。そして、圧力センサ231~233は、圧力を示す情報である圧力値として、検出範囲内における最大の値を検出する場合の他、最大値からn番目(nは2以上の自然数)の値までを検出する場合、検出範囲内の圧力分布を検出する場合でもよい。
【0026】
図4(b)に示す場合は、圧力値は均一である。なお、チャックの種類やワーク10の形状によっては、圧力が均一でないこともある。異物が挟み込まれていなくとも、爪211~213の圧力値が均一でない状態から、加工済みのワーク10の径が予定されているものよりも大きいことまたは小さいことも判断することができる。
これに対し、同図(a)に示すように、異物100を噛み込んでいる場合等は、圧力状態が変わる。かかる圧力状態を圧力センサ231~233により検知する。
【0027】
より詳細には、圧力センサ231~233は、圧力値が検出範囲内のどの位置のものかを示す位置情報を、圧力値と共に検出可能である。圧力センサ231~233の検出結果は、制御部16に送信される。
圧力センサ231~233により検出される圧力値及び位置情報は、圧力情報の一例である。
【0028】
さらに説明すると、圧力センサ231~233の位置情報は、コレットチャック21の奥行き方向における位置および周方向における位置を示すものである。すなわち、圧力センサ231~233は、コレットチャック21の奥行き方向の位置を示す位置情報と共に位置の圧力値を検出し、コレットチャック21の周方向の位置を示す位置情報と共に位置の圧力値を検出する。
このように、圧力センサ231~233は、奥行き方向の複数の位置の圧力を示す情報を検出可能であり、周方向の複数の位置の圧力を示す情報を検出可能である。なお、かかる奥行き方向の複数の位置や周方向の複数の位置は、一つの異物100についてのものである場合の他、異物が複数の場合も考えられるが、その区別を行わない。
なお、圧力センサ231~233の位置情報は、奥行き方向における位置と周方向における位置のいずれか一方のみである場合も考えられる。
【0029】
図4(a)に示す例は、圧力センサ231に異物100が存在し、他の圧力センサ232、233には異物100が存在しない場合である。また、(b)に示す例は、圧力センサ231~233のいずれにも異物100が存在しない場合である。
図4(a)の場合の圧力センサ231の圧力値は、異物100により同図(b)の場合とは異なる。また、異物100の大きさや検出範囲における位置によっては、同図(a)の場合の他の圧力センサ232、233のいずれか一方又は両方の圧力値は、同図(b)の場合である通常の圧力情報とは異なるものになる。
【0030】
さらに説明すると、異物100の大きさや形状、位置、数等によっては、圧力センサ231~233の圧力値ないし圧力分布が
図4(a)、(b)の場合とは異なるものになる。例えば、同図(a)に示す異物100は、奥行き方向に長い形状であり、周方向にはあまり延びていないが、周方向に大きく延びる場合の圧力値等は、同図(a)の場合とは異なるものになる。このように、圧力値は、異物100の影響を受ける。
【0031】
[旋盤1の機能説明]
図5は、旋盤1の機能ブロック図である。
図5に示す例では、旋盤1は、旋盤1の諸機能を果たすための把持部31、取得部32、出力部33、数値制御部34、補正指示部35及び加工部36を備える。
【0032】
把持部31は、上述した第1主軸ヘッド11の把持部13及び第2主軸ヘッド12の把持部14(
図1参照)を含んで構成される。より詳細には、把持部31は、把持部13、14のコレットチャック21及びサーボモータ群22を含んで構成される。
加工部36は、上述した第1主軸ヘッド11の駆動モータ111及び第2主軸ヘッド12の駆動モータ121を含み、さらに、刃物台15(
図1参照)を含んで構成される。
【0033】
取得部32、出力部33、数値制御部34及び補正指示部35は、上述のプロセッサ161により構成される。
取得部32は、圧力センサ231~233から圧力情報を取得する。
【0034】
出力部33は、取得部32により取得された圧力情報を基に、ワーク10の加工を行う場合の製品規格への影響から得られる結果を数値制御部34に出力する。
数値制御部34は、出力部33からの結果等を用いて、予め定められているシーケンスプログラムに従って機械側すなわち把持部31及び加工部36を制御する。
【0035】
数値制御部34に出力される上述の結果は、圧力情報から求めたワーク10の形状及び/又は幾何公差乃至幾何偏差(以下、幾何公差という)を示す情報と、製品規格に含まれる情報とから得られる情報である。なお、ここにいう幾何偏差には、形状偏差、姿勢偏差、位置偏差、振れ偏差の4種類がある。
【0036】
ワーク10の形状又は幾何公差を示す情報は、圧力センサ231~233からの圧力情報から算出されるものであり、圧力値や圧力センサ231~233の圧力分布のバランス等から求められる。
さらに説明すると、ワーク10の形状を示す情報としては、ワーク10の凹みの深さや大きさ、長さである打痕の形状(凹み量)のほか、傷の大きさや深さ、バリの高さや大きさ等を挙げることができる。
【0037】
また、ワーク10の幾何公差を示す情報としては、真円度等の形状公差や、平行度等の姿勢公差、円周振れ等の振れ公差、輪郭度等の形状公差ないし位置公差、同軸度等の位置公差等がある。より具体的には、幾何公差を示す情報としては、真円度や、同軸度、同心度、円筒度、輪郭度、平行度、直角度、傾斜度、平面度、真直度、位置度、対称度、円周振れ、全振れ等を挙げることができる。さらに説明すると、これらのうち少なくとも1つを含んでいるようにしてもよく、また、任意の組合せを採用することができる。
【0038】
また、製品規格に含まれる情報は、製品に応じワーク10の形状又は幾何公差を示す情報に対して設定される規格値をいう。
そして、ワーク10の形状を示す情報と幾何公差を示す情報の少なくともいずれか一方が、規格値からどれだけ外れているかを、例えば閾値を用いて評価する。これにより、ワーク10の加工を行う場合の製品規格への影響から得られる結果を導く。かかる結果は、ワーク10の加工を行うか否かどうかを示す情報であり、加工を行わないとされる場合は、不適合品とされる。
【0039】
ここで、ワーク10の幾何公差を示す情報について説明する。
上述した真円度とは、円形形体の幾何学的に正しい円(幾何学的円)からの狂いの大きさをいう。円形形体とは、機能上円であるように指定した形体をいい、例えば、平面図形としての円や回転面の円形断面である。形体とは、幾何偏差の対象となる点、線、軸線、面又は中心面をいう。
また、同軸度とは、データム軸直線と同一直線上にあるべき軸線のデータム軸直線からの狂いの大きさをいい、平面図形の場合には、データム円の中心に対する他の円形形体の中心の位置の狂いの大きさを同心度という。
データムとは、形体の姿勢偏差、位置偏差、振れなどを決めるために設定した理論的に正確な幾何学的基準をいい、この幾何学的基準が軸直線の場合をデータム軸直線という。軸直線とは、形状偏差がない軸線、すなわち、幾何学的に正しい直線である軸線をいう。
円筒度とは、円筒形体の幾何学的に正しい円筒(幾何学的円筒)からの狂いの大きさをいう。円筒形体とは、機能上円筒面であるように指定した形体をいう。
【0040】
輪郭度には、線の輪郭度及び面の輪郭度があり、線の輪郭度とは、理論的に正確な寸法によって定められた幾何学的に正しい輪郭(幾何学的輪郭)からの線の輪郭の狂いの大きさをいい、面の輪郭度とは、理論的に正確な寸法によって定められた幾何学的輪郭からの面の輪郭の狂いの大きさをいう。
平行度とは、データム直線又はデータム平面に対して平行な幾何学的直線又は幾何学的平面からの平行であるべき直線形体又は平面形体の狂いの大きさをいう。
データムにおける幾何学的基準が直線の場合にデータム直線といい、平面の場合にデータム平面という。また、直線形体とは、機能上直線であるように指定した形体をいい、例えば、平面形体をそれに垂直な平面で切断したときに切り口に現れる断面輪郭線、軸線、円筒の母線、ナイフエッジの先端などをいう。平面形体とは、機能上平面であるように指定した形体をいう。
直角度とは、データム直線又はデータム平面に対して直角な幾可学的直線又は幾何学的平面からの直角であるべき直線形体又は平面形体の狂いの大きさをいう。
傾斜度とは、データム直線又はデータム平面に対して理論的に正確な角度をもつ幾何学的直線又は幾何学的平面からの理論的に正確な角度をもつべき直線形体又は平面形体の狂いの大きさをいう。
平面度とは、平面形体の幾何学的に正しい平面(幾何学的平面)からの狂いの大きさをいう。真直度とは、直線形体の幾何学的に正しい直線(幾何学的直線)からの狂いの大きさをいう。位置度とは、データム又は他の形体に関連して定められた理論的に正確な位置からの点、直線形体又は平面形体の狂いの大きさをいう。
【0041】
対称度とは、データム軸直線又はデータム中心平面に関して互いに対称であるべき形体の対称位置からの狂いの大きさをいう。データム中心平面とは、データムにおける幾何学的基準が中心平面の場合をいう。
円周振れとは、データム軸直線を軸とする回転面をもつべき対象物又はデータム軸直線に対して垂直な円形平面であるべき対象物をデータム軸直線の周りに回転したとき、その表面が指定した位置又は任意の位置で指定した方向に変位する大きさをいう。
指定した方向とは、データム軸直線と交わりデータム軸直線に対して垂直な方向(半径方向)、データム軸直線に平行な方向(軸方向)又はデータム軸直線と交わりデータム軸直線に対して斜めの方向(斜め法線方向及び斜め指定方向)をいう。
全振れとは、データム軸直線を軸とする円筒面をもつべき対象物又はデータム軸直線に対して垂直な円形平面であるべき対象物をデータム軸直線の周りに回転したとき、その表面が指定した方向に変位する大きさをいう。指定した方向とは、データム軸直線と交わりデータム軸直線に対して垂直な方向(半径方向)又はデータム軸直線に平行な方向(軸方向)をいう。
【0042】
図5に戻って説明を続ける。同図に示す補正指示部35は、ワーク10の加工を行う場合の製品規格への影響から得られる結果が加工を行うとされる場合には、規格値からのずれを少なくするための芯ズレ補正を行う場合の補正量を指示する。
かかる芯ズレ補正は、位置ずれ補正の一例であり、制御部16がサーボモータ221~223(
図2参照)の制御を行い、爪211~213の位置を補正する。これにより、より高精度なワーク10の加工が可能になる。
旋盤1は加工システムの一例である。
【0043】
なお、
図5では、取得部32及び出力部33を旋盤1のプロセッサ161により構成する例を説明するが、これに限られず、旋盤1とは別の装置である情報処理装置に取得部32及び出力部33を備える例を採用してもよい。
【0044】
[ワーク10の加工処理の説明]
図6は、ワーク10を加工する場合の処理手順を示すフローチャートである。
同図に示す処理例では、把持部31(
図5参照)がワーク10を把持すると(ステップ401)、圧力センサ231~233(
図4参照)が圧力情報を検知し、制御部16(同図参照)に送信する。これにより、取得部32(
図5参照)が圧力情報を取得する(ステップ402)。
【0045】
制御部16において、異物100の位置や大きさが反映される圧力情報によって製品規格にどの程度影響するかを判断する。より詳細には、制御部16のプロセッサ161が圧力情報からワーク10の形状及び/又は幾何公差を示す情報を求める計算を実施する(ステップ403)。かかる計算の実施は、予め定められている種類の製品規格や幾何公差等のうち指定されたものについてそれぞれ検証することで行われる。そのため、指定されたものについて計算の実施を行い(ステップ403)、指定されたものすべてについて計算を実施したかどうかを判定し(ステップ404)、実施済みでなければ(ステップ404でNo)、ステップ403に戻り、残りの計算を実施する。なお、予め定められている種類の製品規格や幾何公差等について指定されていないときには、予め定められているすべてのものについて計算を実施する。
全ての計算を実施済みの場合(ステップ404でYes)、製品規格に含まれる規格値の情報との対比により、製品規格への影響確認を行い、適合品かどうかの判定を行う(ステップ405)。かかる判定は、出力部33(
図5参照)から数値制御部34(同図参照)に出力される(ステップ406)。
付言すると、最大圧力値が例えば10MPaのときにそのワーク10の凹み量がどの程度かが予め把握できれば、規格値以下なのかどうかを計算し、その都度判断することができる。
【0046】
数値制御部34では、把持部31(
図5参照)により把持されているワーク10が適合品であるかどうかを判断し(ステップ407)、適合品であるという肯定的なものである場合(ステップ407でYes)、補正指示部35(
図5参照)は、爪211~213ごとにどのような芯ズレ補正を行うかの指示を数値制御部34に対して行い(ステップ408)、チャック力を調整する。これにより、数値制御部34は、把持部31に対して芯ズレ補正を行う。なお、製品規格に影響がないとして判定が肯定的なものである場合に芯ズレ補正を行わない制御を採用することも考えられる。
【0047】
その後、数値制御部34は、ワーク10の加工を行い(ステップ409)、加工が終了すると、把持部31に対してワーク10の取外しを指示し、これにより、ワーク10が把持部31から取り外される(ステップ410)。
【0048】
このように、本実施の形態では、異物100の噛み込みにより通常の圧力情報でない場合、直ちに加工を行わないという制御を行わず、圧力情報を基に製品規格に影響があるかどうかを判定することで、製品歩留まりを向上させている。より詳細には、本実施の形態によれば、製品規格への影響有無を判別できるようになり、結果として、製品歩留まりを向上させることが可能になる。また、本実施の形態によれば、より高精度の製品を加工することができるようになる。
なお、通常の圧力状態でない場合にワーク10の把持をし直す対応策を採用する場合、次の把握でも通常の圧力状態でないことも想定されることから、生産性の向上を図ることが難しくなるが、本実施の形態では、そのような生産性の向上を図ることが可能になる。
【0049】
その一方で、製品規格に影響があるとして判定が適合品ではないという否定的なものである場合(ステップ407でNo)、数値制御部34は、加工を行うことなく、ワーク10を取り外す(ステップ410)。外されたワーク10は廃棄対象とされる。
【0050】
ここで、本実施の形態では、ワーク10についての圧力情報を用いた都度計算により製品規格に影響があるかどうかを判定するが、これに限られず、圧力情報と幾何公差を示す情報との対応関係をデータベースに蓄積することで、計算を介さずに圧力情報から製品規格に影響があるかどうかを直接判定するようにしてもよい。
【0051】
また、製品規格に影響があるかどうかの判定を、機械学習モデルを利用して行っても良い。かかる場合の機械学習モデルは、製品規格に影響があるかどうかを推定するように学習されたものである。
図7は、機械学習モデルを説明する図である。
図7に示す機械学習モデルは、圧力及び位置が入力され、ワークの形状を示す情報や幾何公差を示す情報を求め、それらが入力層51に入力され、中間層52を介して、製品規格に影響があるかどうかの判定が出力される(出力層53)。より詳細には、圧力と位置を基に例えば真円度や同軸度、同心度等のファクターを求めることで把持状況を解析し、評価・判定を行った結果を出力する。なお、評価・判定は、過去行った評価・判定を用いて各ファクターに重要さを付加して行われてもよい。
【0052】
なお、本実施の形態では、旋盤1のコレットチャック21(
図3参照)に適用する場合を説明したが、これに限られず、例えばマシニングセンタなどの工具チャックに適用することが考えられる。また、本実施の形態では、コレットチャック21を例としているが、ロータリー式のスクロールキャップでも適用してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…旋盤、10…ワーク、13、14、31…把持部、16…制御部、32…取得部、33…出力部、35…補正指示部、36…加工部、161…プロセッサ、231~233…圧力センサ