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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094852
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】流路切替装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/074 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
F16K11/074 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211707
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 衛
(72)【発明者】
【氏名】中島 一真
(72)【発明者】
【氏名】長尾 将輝
(72)【発明者】
【氏名】平田 昂暉
【テーマコード(参考)】
3H067
【Fターム(参考)】
3H067AA13
3H067CC33
3H067DD03
3H067DD12
3H067EA02
3H067EA24
3H067EA34
3H067FF11
(57)【要約】
【課題】複数の板状部材を積層して形成される駆動部材における各板状部材の溶着強度を向上させることができる流路切替装置を提供すること。
【解決手段】本開示の一態様は、流路切替装置1において、弁体12は、第1円板部材41と第2円板部材42とが積層して形成されており、第1円板部材41と第2円板部材42は、それぞれ、弁体連通路31の一部が形成される樹脂部材であって、第1円板部材41は、その上面41aに、弁体連通路31の開口部32と、開口部32の周囲に形成される周状のシール溝33と、を備え、弁体12を第1円板部材41の上面41a側から見たときに、第1円板部材41と第2円板部材42とを溶着させるレーザ溶着部51が、シール溝33の位置に設けられている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材と、
駆動部材と、を有し、
前記駆動部材が駆動して、前記固定部材のポートと前記駆動部材の連通路とを連通させる組み合わせを切り替えることにより、流路を切り替える流路切替装置において、
前記駆動部材は、第1板状部材と第2板状部材とが積層して形成されており、
前記第1板状部材と前記第2板状部材は、それぞれ、前記連通路の一部が形成される樹脂部材であって、
前記第1板状部材は、その前記第2板状部材側とは反対側の端面に、前記連通路の開口部と、前記開口部の周囲に形成される周状の溝と、を備え、
前記駆動部材を前記第1板状部材の前記端面側から見たときに、
前記第1板状部材と前記第2板状部材とを溶着させるレーザ溶着部が、前記溝の位置に設けられていること、
を特徴とする流路切替装置。
【請求項2】
請求項1の流路切替装置において、
前記第1板状部材は、前記端面にて、前記溝とは別の予備溝を備え、
前記駆動部材を前記第1板状部材の前記端面側から見たときに、
前記連通路は、前記駆動部材の内部に延びる延在部を備え、
前記予備溝は、前記延在部の脇に沿って形成され、
前記レーザ溶着部が、前記予備溝の位置に設けられていること、
を特徴とする流路切替装置。
【請求項3】
請求項1または2の流路切替装置において、
前記溝は、前記固定部材と前記駆動部材との間を封止するシール部材が配置されるシール溝であって、
前記駆動部材を前記第1板状部材の前記端面側から見たときに、
前記レーザ溶着部が、前記シール溝の底面の中心部からオフセットされた位置に設けられていること、
を特徴とする流路切替装置。
【請求項4】
請求項3の流路切替装置において、
前記シール溝の底面にて、前記レーザ溶着部に対応する位置の面を、前記シール部材が接するシール面よりも凹ませていること、
を特徴とする流路切替装置。
【請求項5】
請求項3の流路切替装置において、
前記オフセットされた位置は、前記シール溝の底面の中心部から前記シール溝の外周側にオフセットされた位置であること、
を特徴とする流路切替装置。
【請求項6】
請求項3の流路切替装置において、
前記オフセットされた位置は、前記シール溝の底面の中心部から前記シール溝の内周側にオフセットされた位置であること、
を特徴とする流路切替装置。
【請求項7】
請求項3の流路切替装置において、
前記駆動部材を前記第1板状部材の前記端面側から見たときに、
隣接する前記開口部の周囲に形成される前記シール溝同士が一部で繋がっており、
前記シール溝同士が繋がっている部分では、前記レーザ溶着部が、前記シール溝の底面の中心部から前記シール溝の内周側にオフセットされた位置に設けられていること、
を特徴とする流路切替装置。
【請求項8】
請求項3の流路切替装置において、
前記駆動部材を前記第1板状部材の前記端面側から見たときに、
隣接する前記開口部の周囲に形成される前記シール溝同士が一部で繋がっており、
隣接する前記開口部のうち開口面積の大きい方の前記開口部の周囲に形成される前記シール溝では、前記レーザ溶着部が、前記シール溝の底面の中心部から前記シール溝の外周側にオフセットされた位置に設けられ、
隣接する前記開口部のうち開口面積の小さい方の前記開口部の周囲に形成される前記シール溝では、前記レーザ溶着部が、前記シール溝の底面の中心部から前記シール溝の内周側にオフセットされた位置に設けられていること、
を特徴とする流路切替装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体が流れる流路を切り替える流路切替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の連通路を備える主弁体を回転させて、連通路により連通させるポートの組み合わせを切り換えることにより、流路を切り換える流路切換弁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-49364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される流路切換弁において、駆動部材である主弁体は上半部と下半部により構成され、この上半部と下半部は、それぞれ、2つの部材を積層して形成されており、2つの部材は溶接等により溶着されている。しかしながら、溶接等がなされる位置などによっては2つの部材の溶着強度が十分に得られないおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は上記した課題を解決するためになされたものであり、複数の板状部材を積層して形成される駆動部材における各板状部材の溶着強度を向上させることができる流路切替装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、固定部材と、駆動部材と、を有し、前記駆動部材が駆動して、前記固定部材のポートと前記駆動部材の連通路とを連通させる組み合わせを切り替えることにより、流路を切り替える流路切替装置において、前記駆動部材は、第1板状部材と第2板状部材とが積層して形成されており、前記第1板状部材と前記第2板状部材は、それぞれ、前記連通路の一部が形成される樹脂部材であって、前記第1板状部材は、その前記第2板状部材側とは反対側の端面に、前記連通路の開口部と、前記開口部の周囲に形成される周状の溝と、を備え、前記駆動部材を前記第1板状部材の前記端面側から見たときに、前記第1板状部材と前記第2板状部材とを溶着させるレーザ溶着部が、前記溝の位置に設けられていること、を特徴とする。
【0007】
この態様によれば、第1板状部材と第2板状部材を溶着させるレーザ溶着部を設けるときに、第1板状部材にて板厚が小さい部分である溝にレーザを照射することにより、第1板状部材と第2板状部材の溶着部分にレーザが届き易くなる。そのため、確実にレーザ溶着部を設けて、第1板状部材と第2板状部材を溶着させることができる。したがって、第1板状部材と第2板状部材の溶着強度を向上させることができる。そして、このようにして、複数の板状部材を積層して形成される駆動部材における各板状部材の溶着強度を向上させることができる。
【0008】
また、第1板状部材と第2板状部材の溶着部分にレーザが届き易くなるので、レーザの出力を抑えることができる。そのため、レーザを照射してレーザ溶着部を設けるときに、レーザにより溝の底面が荒れて、溝の底面にレーザの照射跡が残ることを抑制できる。したがって、溝にシール部材を配置するときに、シール部材のシール性を確保できる。
【0009】
上記の態様においては、前記第1板状部材は、前記端面にて、前記溝とは別の予備溝を備え、前記駆動部材を前記第1板状部材の前記端面側から見たときに、前記連通路は、前記駆動部材の内部に延びる延在部を備え、前記予備溝は、前記延在部の脇に沿って形成され、前記レーザ溶着部が、前記予備溝の位置に設けられていること、が好ましい。
【0010】
この態様によれば、予備溝に対応する位置にもレーザ溶着部が設けられる。そのため、第1板状部材と第2板状部材の溶着強度をさらに向上させることができる。
【0011】
上記の態様においては、前記溝は、前記固定部材と前記駆動部材との間を封止するシール部材が配置されるシール溝であって、前記駆動部材を前記第1板状部材の前記端面側から見たときに、前記レーザ溶着部が、前記シール溝の底面の中心部からオフセットされた位置に設けられていること、が好ましい。
【0012】
この態様によれば、レーザを照射してレーザ溶着部を設けるときに、シール溝の底面の中心部にレーザの照射跡が残ることを回避できる。ここで、シール溝の底面の中心部はシール部材が接するシール面の一部となる。そのため、レーザの照射跡が残ることを回避することにより、シール部材のシール性が向上する。
【0013】
上記の態様においては、前記シール溝の底面にて、前記レーザ溶着部に対応する位置の面を、前記シール部材が接するシール面よりも凹ませていること、が好ましい。
【0014】
この態様によれば、レーザを照射してレーザ溶着部を設けるときに、シール面を避けてレーザを照射させることができる。そのため、シール面にレーザの照射跡が残ることを防止できる。したがって、シール面をフラットな状態に維持できるので、シール部材のシール性を確保できる。
【0015】
また、レーザを照射させる部分の第1板状部材の厚みを最適な厚みに調整することにより、第1板状部材と第2板状部材の溶着部分にレーザをさらに届き易くすることができる。そのため、第1板状部材と第2板状部材の溶着強度をさらに向上させることができる。
【0016】
上記の態様においては、前記オフセットされた位置は、前記シール溝の底面の中心部から前記シール溝の外周側にオフセットされた位置であること、が好ましい。
【0017】
この態様によれば、シール溝の外周側はシール溝の内周側よりも周長が大きいので、レーザ溶着部を長くすることができる。そのため、第1板状部材と第2板状部材の溶着強度をさらに向上させることができる。
【0018】
上記の態様においては、前記オフセットされた位置は、前記シール溝の底面の中心部から前記シール溝の内周側にオフセットされた位置であること、が好ましい。
【0019】
この態様によれば、シール溝の底面にて、レーザの照射跡は、シール溝の内周側に残ることになる。そのため、シール部材に対して連通路から流体圧が作用してシール部材がシール溝の外周側に押圧されたときに、シール部材は、レーザの照射跡に接し難くなる。そのため、シール部材のシール性を維持できる。
【0020】
上記の態様においては、前記駆動部材を前記第1板状部材の前記端面側から見たときに、隣接する前記開口部の周囲に形成される前記シール溝同士が一部で繋がっており、前記シール溝同士が繋がっている部分では、前記レーザ溶着部が、前記シール溝の底面の中心部から前記シール溝の内周側にオフセットされた位置に設けられていること、が好ましい。
【0021】
この態様によれば、シール溝同士が繋がっている部分のシール面にて、レーザの照射跡が残ることを防止してフラットな状態に維持できるので、シール部材のシール性を確保できる。
【0022】
また、シール溝同士が繋がっている部分に対応する位置にレーザ溶着部が設けられていることにより、隣接する弁体連通路同士の間にて、通路が連通し難くなるので、流体の漏れを低減できる。
【0023】
上記の態様においては、前記駆動部材を前記第1板状部材の前記端面側から見たときに、隣接する前記開口部の周囲に形成される前記シール溝同士が一部で繋がっており、隣接する前記開口部のうち開口面積の大きい方の前記開口部の周囲に形成される前記シール溝では、前記レーザ溶着部が、前記シール溝の底面の中心部から前記シール溝の外周側にオフセットされた位置に設けられ、隣接する前記開口部のうち開口面積の小さい方の前記開口部の周囲に形成される前記シール溝では、前記レーザ溶着部が、前記シール溝の底面の中心部から前記シール溝の内周側にオフセットされた位置に設けられていること、が好ましい。
【0024】
この態様によれば、開口面積の大きい方の開口部におけるシール溝では、レーザ溶着部が、シール溝の底面の中心部からシール溝の外周側にオフセットされた位置に設けられている。ここで、シール溝の外周側はシール溝の内周側よりも周の長さが大きい。そのため、レーザ溶着部を長くすることができる。したがって、第1板状部材と第2板状部材の溶着強度をさらに向上させることができる。
【0025】
また、開口面積の小さい方の開口部におけるシール溝では、レーザ溶着部が、シール溝の底面の中心部からシール溝の内周側にオフセットされた位置に設けられている。そのため、シール溝同士が繋がっている部分において、レーザを照射してレーザ溶着部を設けるときに、シール面にレーザの照射跡が残ることを抑制できるので、シール部材のシール性を確保できる。また、隣接する連通路の間で流体が漏れることを抑制できる。
【発明の効果】
【0026】
本開示の流路切替装置によれば、複数の板状部材を積層して形成される駆動部材における各板状部材の溶着強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本実施形態の流路切替装置(八方弁である場合)の外観斜視図である。
図2】本実施形態の流路切替装置の分解斜視図である(駆動部は図示を省略している)。
図3】弁体の側面図である。
図4】弁体の上面図(すなわち、第1円板部材の上面図)である。
図5】弁体の上面図であって、シール部材を省略しつつ、レーザ溶着部の位置を示した図である。
図6】シール溝およびその周辺における第1円板部材と第2円板部材の断面図であって、レーザを照射してレーザ溶着部を設けることを示した図である。
図7】第2円板部材の上面図である。
図8】シール溝の一部の上面図(すなわち、弁体を第1円板部材の上面側から見たときのシール溝の一部の図)である。
図9】シール溝およびその周辺における第1円板部材と第2円板部材とシール部材とハウジングの断面図であって、レーザ溶着部がシール溝の外周側に対応する位置に設けられることを示す図である。
図10】シール溝およびその周辺における第1円板部材と第2円板部材の断面図であって、レーザを照射してレーザ溶着部をシール溝の外周側に対応する位置に設けることを示す図である。
図11】シール溝およびその周辺における第1円板部材と第2円板部材とシール部材とハウジングの断面図であって、シール溝の底面にて、レーザ溶着部に対応する位置の面がシール面よりも凹んでいることを示す図である。
図12】シール溝およびその周辺における第1円板部材と第2円板部材の断面図であって、シール溝の底面にてシール面よりも凹んでいる面にレーザを照射して、レーザ溶着部を設けることを示す図である。
図13】シール溝の一部の上面図であって、レーザ溶着部がシール溝の外周側と内周側の2箇所の位置に設けられていることを示す図である。
図14】シール溝およびその周辺における第1円板部材と第2円板部材とシール部材とハウジングの断面図であって、シール溝の外周側と内周側の2箇所に対応する位置にレーザ溶着部が設けられることを示す図である。
図15】シール溝およびその周辺における第1円板部材と第2円板部材の断面図であって、出力を低くしながらレーザを照射してレーザ溶着部を2箇所に設けることを示す図である。
図16図14に対応する図であって、出力を低くしながらレーザを照射して2箇所に設けたレーザ溶着部を示す図である。
図17】シール溝同士が繋がっている部分にてレーザ溶着部がシール溝の内周側に設けられることを示す図である。
図18】開口面積の大きい方の開口部の周囲のシール溝ではレーザ溶着部がシール溝の外周側に設けられ、開口面積の小さい方の開口部の周囲のシール溝ではレーザ溶着部がシール溝の内周側に設けられることを示す図である。
図19】シール溝およびその周辺における第1円板部材と第2円板部材とシール部材とハウジングの断面図であって、レーザ溶着部がシール溝の内周側に対応する位置に設けられることを示す図である。
図20】隣接する開口の周囲に設けられるシール溝にて、レーザ溶着部がシール溝の内周側に設けられることを示す図である。
図21】第3円板部材の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示の実施形態である流路切替装置1について説明する。
【0029】
<流路切替装置の全体の概要説明>
まず、本実施形態の流路切替装置1の全体の概要について説明する。
【0030】
図1図2に示すように、流路切替装置1は、ハウジング11と、弁体12と、駆動部13を有する。
【0031】
ハウジング11は、弁体12を収容する筐体であり、流体が流入する流路口である入口ポート21と、流体が流出する流路口である出口ポート22と、を備えている。ここでは、流路切替装置1は、一例として八方弁であり、ハウジング11は、4つの入口ポート21と4つの出口ポート22とを備えている。
【0032】
なお、ハウジング11は、例えば樹脂により形成されている。また、ハウジング11は、本開示の「固定部材」の一例である。さらに、入口ポート21と出口ポート22は、本開示の「ポート」の一例である。
【0033】
弁体12は、ハウジング11の内部に設けられている。弁体12は、円板状に形成されており、弁体連通路31を備えている。この弁体連通路31は、ハウジング11の入口ポート21と出口ポート22とを連通させる連通路である。弁体12は、駆動部13に接続し、駆動部13から回転する動力を得ることにより、弁体12の中心軸Lを中心に回転するように駆動する。
【0034】
なお、弁体12は、例えば樹脂により形成されている。また、弁体12は、本開示の「駆動部材」の一例である。さらに、弁体連通路31は、本開示の「連通路」の一例である。
【0035】
駆動部13は、弁体12に回転する動力を与えるためのモータ(不図示)を備えている。
【0036】
以上のような構成の流路切替装置1は、入口ポート21と弁体連通路31と出口ポート22とを組み合わせることで、流体(例えば、水など)が流れる流路を形成する。そして、流路切替装置1は、駆動部13により弁体12が回転して、ハウジング11の入口ポート21や出口ポート22と、弁体連通路31とを連通させる組み合わせを切り替えることにより、流路を切り替える。
【0037】
なお、流路切替装置1は、八方弁に限らず、三方弁や四方弁や五方弁や六方弁などのその他の多方弁にすることもできる。
【0038】
<弁体の説明>
次に、本実施形態の弁体12について説明する。
【0039】
(第1実施例)
まず、第1実施例について説明する。
【0040】
図3に示すように、弁体12は、第1円板部材41と第2円板部材42と第3円板部材43が積層して形成されている。すなわち、第1円板部材41の下面41bと第2円板部材42の上面42aとが接し、第2円板部材42の下面42bと第3円板部材43の上面43aとが接するようにして、第1円板部材41と第2円板部材42と第3円板部材43が積層している。また、第1円板部材41と第2円板部材42と第3円板部材43は、それぞれ、弁体連通路31の一部が形成される円板状の樹脂部材である。
【0041】
なお、第1円板部材41と第3円板部材43は、それぞれ、本開示の「第1板状部材」の一例である。また、第2円板部材42は、本開示の「第2板状部材」の一例である。
【0042】
第1円板部材41と第2円板部材42、および、第2円板部材42と第3円板部材43は、それぞれ、同様に溶着しているが、以下の説明では、主に、第1円板部材41と第2円板部材42の溶着に関して説明する。
【0043】
図4に示すように、第1円板部材41は、その第2円板部材42側とは反対側の端面である上面41aに、弁体連通路31の開口部32と、開口部32の周囲に形成される周状のシール溝33と、シール溝33に配置されるシール部材34と、を備えている。なお、シール溝33は、本開示の「溝」の一例である。
【0044】
シール部材34は、ハウジング11と弁体12に接することにより、ハウジング11と弁体12の間を封止して、弁体連通路31からの流体の漏れを防止する。このシール部材34は、例えばフッ素樹脂(例えば、テフロン(登録商標))により、または、フッ素樹脂を貼付したゴムにより、あるいは、フッ素樹脂やゴム以外の材料により形成されている。
【0045】
本実施例では、図5に示すように、弁体12を第1円板部材41の上面41a側から見たときに、第1円板部材41と第2円板部材42を溶着させるレーザ溶着部51(図6参照)が、シール溝33の位置(すなわち、図5にて破線で示す位置)に設けられている。
【0046】
レーザ溶着部51は、レーザを照射することにより第1円板部材41と第2円板部材42を溶着(すなわち、結合)させた部分である。詳しくは、図6に示すように、レーザ溶着部51は、シール溝33の底面61ではなく、この底面61よりも第1円板部材41の奥側(すなわち、図6の下側)にある第1円板部材41の下面41bと第2円板部材42の上面42aとが接する境界部71に設けられている。
【0047】
本実施例では、このようにして図5に示すようにレーザ溶着部51がシール溝33に対応する位置に設けられている。そして、図6に示すように、第1円板部材41と第2円板部材42を積層させた状態で、第1円板部材41にて板厚が小さい部分であるシール溝33の底面61に(図6にて矢印で示すように)レーザを照射して、レーザ溶着部51を設ける。
【0048】
これにより、レーザが第1円板部材41を透過する距離を小さくすることができるので、第1円板部材41と第2円板部材42の境界部71にレーザが届き易くなる。そのため、確実にレーザ溶着部51を形成して、第1円板部材41と第2円板部材42を溶着させることができる。したがって、第1円板部材41と第2円板部材42の溶着強度を向上させることができる。
【0049】
また、第1円板部材41と第2円板部材42の境界部71にレーザが届き易くなるので、レーザの出力を抑えることができる。そのため、シール溝33の底面61にレーザの照射跡(すなわち、凹凸)が残ることを抑制できる。したがって、シール溝33の底面61において、シール部材34が接するシール面62(後述する図9など参照)に、レーザの照射跡が残ることを抑制できる。ゆえに、シール部材34のシール性を確保できる。
【0050】
また、レーザの出力を抑えることにより、弁体12の他の部位へのレーザの影響が小さくなるので、レーザをシール溝33の周方向について連続して照射することにより、レーザ溶着部51を設けることができる。そのため、第1円板部材41と第2円板部材42を溶着させる作業時間を減らすことができる。
【0051】
また、レーザ溶着部51がシール溝33から外れた位置(例えば、弁体12の最外周の位置)に設けられていると、レーザ溶着部51を設けるためのスペースが別途必要になるので、弁体12の外径が大きくなり、流路切替装置1の体格が増加するおそれがある。しかしながら、本実施例では、レーザ溶着部51がシール溝33に対応する位置に設けられているので、レーザ溶着部51を設けるためのスペースが別途必要にならないので、弁体12の外径が大きくなることを防ぎ、流路切替装置1の体格が増加することを防止できる。
【0052】
また、図5に示すように、第1円板部材41は、その上面41aにて、シール溝33とは別の溝である予備溝35を備えていてもよい。そして、このとき、弁体12を第1円板部材41の上面41a側から見たときに、予備溝35は弁体連通路31の延在部36の脇に沿って形成されており、レーザ溶着部51は予備溝35の位置にも設けられている。ここで、延在部36は、図7に示すように、弁体連通路31の一部であって、弁体12の内部にて弁体12の径方向(図7の紙面方向)に延びる通路である。
【0053】
このようにして、第1円板部材41と第2円板部材42の境界部71にて、シール溝33に対応する位置に加えて、予備溝35に対応する位置にもレーザ溶着部51を設けることができる。そのため、レーザ溶着部51が設けられる領域が増えるので、第1円板部材41と第2円板部材42の溶着強度をさらに向上させることができる。
【0054】
また、予備溝35の形状や寸法をシール溝33の形状や寸法と同じにすることより、シール溝33に対応する位置にレーザ溶着部51を設けるときのレーザ照射の条件と同じ条件で、予備溝35に対応する位置にレーザ溶着部51を設けることができる。そのため、レーザ溶着部51を設ける際に、作業の手間を省くことができるので、作業時間を短縮できる。さらに、レーザを連続して照射して、シール溝33に対応する位置に設けるレーザ溶着部51と、予備溝35に対応する位置に設けるレーザ溶着部51とを設けることにより、作業時間を短縮できる。
【0055】
また、図5に示すように、第1円板部材41の上面41aにて、シール溝33や予備溝35の他に、弁体連通路31に重ならない位置に、凹部37を設けてもよい。そして、弁体12を第1円板部材41の上面41a側から見たときに、凹部37の位置にも、レーザ溶着部51を設けておく。
【0056】
このようにして、凹部37に対応する位置にもレーザ溶着部51を設けるので、第1円板部材41と第2円板部材42の溶着強度をさらに向上させることができる。そのため、シール溝33に対応する位置に設けられるレーザ溶着部51にて、要求される第1円板部材41と第2円板部材42の溶着強度を抑えることができる。したがって、シール溝33に対応する位置にレーザ溶着部51を設けるときに、出力を抑えてレーザを照射することができる。ゆえに、シール溝33の底面61にレーザの照射跡が残ることを抑制できるので、シール溝33に配置されるシール部材34のシール性を確保できる。
【0057】
また、凹部37にはシール部材34が配置されないので、凹部37の底面にはレーザの照射跡が残っていても構わない。そのため、レーザの出力を高くして凹部37の底面にレーザを照射して、凹部37に対応する位置にレーザ溶着部51を設けることができる。したがって、凹部37に対応する位置に設けられるレーザ溶着部51により、第1円板部材41と第2円板部材42の溶着強度をさらに向上させることができる。
【0058】
なお、レーザ溶着部51を設ける順序としては、出力を低くしてレーザを照射してシール溝33や予備溝35に対応する位置にレーザ溶着部51を設けた後に、出力を高くしてレーザを照射して凹部37に対応する位置にレーザ溶着部51を設けることが考えられる。
【0059】
(第2実施例)
次に、第2実施例について説明するが、第1実施例と異なる点について説明し、第1実施例と共通する点の説明は省略する。
【0060】
本実施例では、弁体12を第1円板部材41の上面41a側から見たときに、レーザ溶着部51が、第1実施例と同様にシール溝33の位置に設けられているが、図8に示すように、シール溝33の底面61の中心部63からオフセットされた位置に設けられている。なお、中心部63は、シール溝33の底面61におけるシール溝33の幅方向の中心の位置にある部分であり、図8にて一点鎖線で示す。
【0061】
図8に示す例では、シール溝33の底面61の中心部63からオフセットされた位置は、中心部63からシール溝33の外周側にオフセットされた位置となっている。すなわち、図9に示すように、第1円板部材41と第2円板部材42の境界部71において、シール溝33の底面61の中心線CAの位置からシール溝33の外周側(図9の左側)にオフセットされた位置に、レーザ溶着部51が設けられている。なお、中心線CAは、シール溝33の底面61の通る第1円板部材41と第2円板部材42の積層方向に延びる線である。
【0062】
これにより、図10に示すように、(図10にて矢印で示す)レーザを照射してレーザ溶着部51を設けるときに、シール溝33の底面61にて、中心部63に位置するシール面62を避けてレーザを照射させることができる。そのため、シール面62にレーザの照射跡が残り難くなる。したがって、シール面62をフラットな状態に維持できるので、シール部材34のシール性を確保できる。
【0063】
このようにして、図8図10に示す例では、レーザ溶着部51がシール溝33の底面61の中心部63からシール溝33の外周側にオフセットされた位置に設けられている。そして、シール溝33の外周側はシール溝33の内周側よりも周長が大きい。
【0064】
そのため、レーザ溶着部51を長くすることができるので、第1円板部材41と第2円板部材42の溶着強度をさらに向上させることができる。また、このようにして第1円板部材41と第2円板部材42の溶着強度をさらに向上させることができるので、弁体12の回転トルクが大きくなっても、第1円板部材41と第2円板部材42の溶着状態を維持できる。そのため、弁体12の回転時にて許容される弁体12の回転トルクを大きくすることができる。
【0065】
また、図11に示すように、シール溝33の底面61にて、レーザ溶着部51に対応する位置の面64を、シール面62よりも第2円板部材42側(すなわち、図11の下側)に向かって凹ませてもよい。
【0066】
これにより、図12に示すように、(図12にて矢印で示す)レーザを照射してレーザ溶着部51を設けるときに、より確実に、シール面62を避けてレーザを照射させることができる。そのため、シール面62をレーザの照射跡から完全に切り離すことができるので、シール面62にレーザの照射跡がさらに残り難くなる。したがって、より確実に、シール面62をフラットな状態に維持できるので、シール部材34のシール性を確保できる。
【0067】
また、レーザを照射してレーザ溶着部51を設けるときにシール面62を避けてレーザを照射させることができるので、レーザの出力を高くして、強固なレーザ溶着部51を設けることができる。そのため、第1円板部材41と第2円板部材42の溶着強度を、さらに向上させることができる。
【0068】
また、レーザ溶着部51に対応する位置の面64における底面61からの深さ(すなわち、凹み量)を調整して、面64の位置での第1円板部材41の板厚を最適な厚みに調整できる。これにより、第1円板部材41と第2円板部材42の境界部71にレーザをさらに届き易くしてレーザ溶着部51を設けることができるので、第1円板部材41と第2円板部材42の溶着強度をさらに向上させることができる。
【0069】
また、図13図14に示すように、レーザ溶着部51が、シール溝33の底面61の中心部63から、シール溝33の外周側にオフセットされた箇所と、内周側にオフセットされた箇所の2箇所の位置に設けられていてもよい。これにより、第1円板部材41と第2円板部材42の溶着強度をさらに向上させることができる。
【0070】
そして、このようにしてレーザ溶着部51が2箇所の位置に設けられる場合には、図15に示すように出力を低くして(図15にて矢印で示すように)レーザを照射してもよい。これにより、図16に示すように、シール溝33の底面61にて、レーザの照射跡を小さくすることができる。そのため、より確実に、シール面62にレーザの照射跡が残り難くなる。したがって、より確実に、シール面62をフラットな状態に維持できるので、シール部材34のシール性を確保できる。
【0071】
また、前記の図4に示すように、弁体12を第1円板部材41の上面41a側から見たときに、隣接する開口部32の周囲に形成されるシール溝33同士が一部で繋がっている。そこで、図17に示すように、シール溝33同士が繋がっている部分であるシール溝ラップ部38では、レーザ溶着部51がシール溝33の底面61の中心部63からシール溝33の内周側にオフセットされた位置に設けられる、としてもよい。
【0072】
これにより、シール溝ラップ部38において、シール面62にレーザの照射跡が残り難くして、シール面62をフラットな状態に維持できるので、シール部材34のシール性を確保できる。
【0073】
また、図17に示すように、シール溝ラップ部38に対応する位置にレーザ溶着部51が設けられていることにより、隣接する弁体連通路31同士の間にて、通路同士が連通し難くなるので、流体の漏れを低減できる。
【0074】
また、図18に示すように、弁体12を第1円板部材41の上面41a側から見たときに、隣接する開口面積の大きい開口部32Aと開口面積の小さい開口部32Bのそれぞれの周囲に形成されるシール溝33同士が一部で繋がっている部分が存在する。
【0075】
この部分において、隣接する開口部32のうち開口面積の大きい方の開口部32Aの周囲に形成されるシール溝33では、レーザ溶着部51が、シール溝33の底面61の中心部63からシール溝33の外周側にオフセットされた位置に設けられる、としてもよい。
【0076】
一方、隣接する開口部32のうち開口面積の小さい方の開口部32Bの周囲に形成されるシール溝33では、レーザ溶着部51が、シール溝33の底面61の中心部63からシール溝33の内周側にオフセットされた位置に設けられる、としてもよい。
【0077】
これにより、開口面積の大きい方の開口部32Aにおけるシール溝33では、レーザ溶着部51の周長を長くすることができるので、第1円板部材41と第2円板部材42の溶着強度をさらに向上させることができる。
【0078】
また、開口面積の小さい方の開口部32Bにおけるシール溝33では、シール溝ラップ部38のシール面62にレーザの照射跡が残り難くして、シール面62をフラットな状態に維持できるので、シール部材34のシール性を確保できる。また、隣接する弁体連通路31同士の間で流体が漏れることを抑制できる。
【0079】
また、図19に示すように、レーザ溶着部51の位置を中心部63からシール溝33の内周側にオフセットされた位置にすれば、シール溝33の底面61にてレーザの照射跡はシール溝33の内周側に形成されることになる。そのため、図19にて矢印で示すようにシール部材34に対して弁体連通路31の流体圧が作用してシール部材34がシール溝33の外周側に押圧されたときに、シール部材34がレーザの照射跡に接し難くなる。そのため、シール部材34のシール性を維持できる。また、シール溝33の内周側にて溶着することで、第1円板部材41と第2円板部材42との隙間からレーザ溶着部51に作用する流体圧の受圧面積が小さくなり、流体圧に対する強度を確保することができる。
【0080】
また、図20に示すように、隣接する開口部32の周囲のシール溝33にてレーザ溶着部51が、ともに中心部63からシール溝33の内周側にオフセットされた位置に設けられる、としてもよい。
【0081】
これにより、シール面62にレーザの照射跡が残り難くして、シール面62をフラットな状態に維持できるので、シール部材34のシール性を確保できる。また、隣接する弁体連通路31同士の間で流体が漏れることを抑制できる。
【0082】
なお、上記の説明では、第1円板部材41と第2円板部材42の溶着に関して説明したが、第2円板部材42と第3円板部材43の溶着に関しても同様に本開示の技術を適用する。詳しい説明は省略するが、例えば、図21に示すように、第3円板部材43は、その下面43bにシール溝33を備えている。そして、弁体12を第3円板部材43の下面43b側から見たときに、第2円板部材42と第3円板部材43を溶着させるレーザ溶着部51が、シール溝33の位置に設けられている。なお、第3円板部材43の下面43bは、本開示の「端面」の一例である。
【0083】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
【0084】
例えば、上記の本開示の内容は、駆動軸によりスライドバルブ(すなわち、駆動部材)を駆動軸の軸方向にスライドさせて、ハウジングの流路口とスライドバルブの連通路とを連通させる組み合わせを変えることにより、流路パターンを切り替えるスライドバルブにも適用できる。
【0085】
また、シール溝33の底面61にて中心部63の位置にレーザを照射してレーザ溶着部51が設けられており、シール部材34がレーザの照射跡を跨ぐような形状に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 流路切替装置
11 ハウジング
12 弁体
21 入口ポート
22 出口ポート
31 弁体連通路
32 開口部
32A 開口面積の大きい方の開口部
32B 開口面積の小さい方の開口部
33 シール溝
34 シール部材
35 予備溝
36 延在部
38 シール溝ラップ部
41 第1円板部材
41a 上面
42 第2円板部材
43 第3円板部材
43b 下面
51 レーザ溶着部
61 底面
62 シール面
63 中心部
64 面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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