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特開2024-94887網膜投影装置及びニアアイウェアラブル装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094887
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】網膜投影装置及びニアアイウェアラブル装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20240703BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20240703BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B5/18
H04N5/64 511A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211779
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】水野 友人
(72)【発明者】
【氏名】福澤 英明
(72)【発明者】
【氏名】林 杰曙
【テーマコード(参考)】
2H199
2H249
【Fターム(参考)】
2H199CA04
2H199CA05
2H199CA06
2H199CA29
2H199CA32
2H199CA42
2H199CA45
2H199CA68
2H199CA81
2H199CA96
2H249AA07
2H249AA13
2H249AA50
2H249AA60
2H249AA64
2H249AA69
(57)【要約】
【課題】アイボックスを拡張すること。
【解決手段】網膜投影装置は、レーザ光を出射する光源ユニット21及びレーザ光Lsによる走査を行うための可動ミラー23を含むプロジェクタモジュール27と、可動ミラー23を経由したレーザ光Lsを反射して、ニアアイウェアラブル装置を装着するユーザの網膜REに反射光Lrを照射することで、網膜REに映像を投影する反射体と、ユーザの瞳孔PPの位置に応じて、反射体のうちのレーザ光Lsを照射する照射範囲を決定し、レーザ光Lsが照射範囲に照射されるようにプロジェクタモジュール27を制御するコントローラと、を備え、反射体は、レンズ3の内面3aに沿って設けられた複数の単位領域を含み、各単位領域は、当該単位領域の位置に応じた反射角でレーザ光Lsを反射するように構成されたナノ構造体であり、照射範囲は、複数の単位領域のうちの一部である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニアアイウェアラブル装置に搭載される網膜投影装置であって、
レーザ光を出射する光源及び前記レーザ光による走査を行うための可動ミラーを含むプロジェクタモジュールと、
前記可動ミラーを経由した前記レーザ光を反射して、前記ニアアイウェアラブル装置を装着するユーザの網膜に反射光を照射することで、前記網膜に映像を投影する反射体と、
前記ユーザの瞳孔の位置に応じて、前記反射体のうちの前記レーザ光を照射する照射範囲を決定し、前記レーザ光が前記照射範囲に照射されるように前記プロジェクタモジュールを制御するコントローラと、
を備え、
前記反射体は、前記ニアアイウェアラブル装置のレンズのうち、前記ユーザの眼球と向かい合う面に沿って設けられた複数の単位領域を含み、
前記複数の単位領域のそれぞれは、当該単位領域に前記可動ミラーを経由した前記レーザ光が入射した時に前記単位領域が設けられている位置に応じた反射角で前記レーザ光を反射するように構成されたナノ構造体であり、
前記照射範囲は、前記複数の単位領域のうちの一部である、網膜投影装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記瞳孔が第1位置に位置する場合に、第1照射範囲を前記照射範囲として決定し、前記瞳孔が前記第1位置とは異なる第2位置に位置する場合に、第2照射範囲を前記照射範囲として決定し、
前記第1照射範囲と前記第2照射範囲とは、部分的に重なっている、請求項1に記載の網膜投影装置。
【請求項3】
前記反射体は、複数の区画に分割されており、
前記コントローラは、前記複数の区画のうちのいずれかを前記照射範囲として決定する、請求項1に記載の網膜投影装置。
【請求項4】
前記プロジェクタモジュールを移動させるための移動機構を更に備え、
前記コントローラは、前記瞳孔の位置に応じて、前記移動機構に前記プロジェクタモジュールを移動させる、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の網膜投影装置。
【請求項5】
前記レーザ光は、前記網膜に映像を投影するための第1成分と、前記瞳孔の位置を検出するための第2成分と、を含み、
前記複数の単位領域は、前記第1成分用の単位領域と前記第2成分用の単位領域とを含む、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の網膜投影装置。
【請求項6】
前記複数の単位領域のそれぞれは、前記面と交差する第1方向において、第1金属層、誘電体層、及び第2金属層を順に含む積層体であり、
前記第2金属層は、前記第1方向と交差する第2方向に配列された複数の金属体を含む、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の網膜投影装置。
【請求項7】
前記複数の単位領域のそれぞれは、前記第2方向において、前記反射角に応じた長さを有し、
前記複数の金属体のそれぞれの大きさは、前記単位領域の前記第2方向における第1端から第2端に向かって前記反射光の位相変化量が直線的に増加又は減少するように設定されている、請求項6に記載の網膜投影装置。
【請求項8】
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の網膜投影装置と、
前記レンズと、
を備える、ニアアイウェアラブル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、網膜投影装置及びニアアイウェアラブル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートグラスなどのニアアイウェアラブル装置が知られている。例えば、特許文献1には、テンプルに設けられた画像源と、画像源からの光を方向転換するミラーと、ユーザの鼻の近傍に設けられた二次ミラーと、ユーザの目の前に設けられたコンバイナと、を備えるニアアイディスプレイアセンブリが開示されている。特許文献2には、画像源と、画像源に光学的に結合されたナノ構造面を含むコンバイナと、を備え、コンバイナのナノ構造面に画像情報が形成されることによって、ユーザの視野内に画像情報を運ぶニアアイディスプレイアセンブリが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0369401号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2018/0113310号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2に記載のニアアイディスプレイアセンブリでは、ユーザが目を動かした場合に、映像を正しく認識できないおそれがある。本技術分野においては、映像全体を正しく認識可能な目の可動範囲(アイボックス)を拡張することが望まれている。
【0005】
本開示は、アイボックスを拡張可能な網膜投影装置及びニアアイウェアラブル装置を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る網膜投影装置は、ニアアイウェアラブル装置に搭載される装置である。この網膜投影装置は、レーザ光を出射する光源及びレーザ光による走査を行うための可動ミラーを含むプロジェクタモジュールと、可動ミラーを経由したレーザ光を反射して、ニアアイウェアラブル装置を装着するユーザの網膜に反射光を照射することで、網膜に映像を投影する反射体と、ユーザの瞳孔の位置に応じて、反射体のうちのレーザ光を照射する照射範囲を決定し、レーザ光が照射範囲に照射されるようにプロジェクタモジュールを制御するコントローラと、を備える。反射体は、ニアアイウェアラブル装置のレンズのユーザの眼球と向かい合う面に沿って設けられた複数の単位領域を含む。複数の単位領域のそれぞれは、当該単位領域に可動ミラーを経由したレーザ光が入射した時に単位領域が設けられている位置に応じた反射角でレーザ光を反射するように構成されたナノ構造体である。照射範囲は、複数の単位領域のうちの一部である。
【0007】
この網膜投影装置では、ニアアイウェアラブル装置のレンズのうち、ユーザの眼球と向かい合う面に沿って複数の単位領域が設けられており、ユーザの瞳孔の位置に応じて、複数の単位領域のうちの一部が照射範囲として決定され、レーザ光が照射範囲に照射されるようにプロジェクタモジュールが制御される。したがって、ユーザが目を動かしたとしても、ユーザの網膜に反射光が照射され得るので、ユーザは映像を正しく認識することが可能となる。以上のように、アイボックスを拡張することが可能となる。
【0008】
いくつかの実施形態において、コントローラは、瞳孔が第1位置に位置する場合に、第1照射範囲を照射範囲として決定してもよく、瞳孔が第1位置とは異なる第2位置に位置する場合に、第2照射範囲を照射範囲として決定してもよい。第1照射範囲と第2照射範囲とは、部分的に重なっていてもよい。この場合、第1照射範囲と第2照射範囲とが重なっている部分に含まれる単位領域を第1照射範囲及び第2照射範囲のいずれにも活用することができる。
【0009】
いくつかの実施形態において、反射体は、複数の区画に分割されていてもよく、コントローラは、複数の区画のうちのいずれかを照射範囲として決定してもよい。この場合、瞳孔の位置に応じて、いずれかの区画を照射範囲として決定すればよいので、コントローラによるプロジェクタモジュールの制御を簡易化することができる。
【0010】
いくつかの実施形態において、網膜投影装置は、プロジェクタモジュールを移動させるための移動機構を更に備えてもよい。コントローラは、瞳孔の位置に応じて、移動機構にプロジェクタモジュールを移動させてもよい。可動ミラーを制御するだけでは、レーザ光を照射できる範囲には限界がある。この問題に対し、プロジェクタモジュールを移動させることによって、レーザ光を照射可能な範囲を広げることが可能となる。
【0011】
いくつかの実施形態において、レーザ光は、網膜に映像を投影するための第1成分と、瞳孔の位置を検出するための第2成分と、を含んでもよい。複数の単位領域は、第1成分用の単位領域と第2成分用の単位領域とを含んでもよい。この場合、瞳孔の位置を検出するための別の光源を設ける必要が無いので、網膜投影装置を小型化することが可能となる。
【0012】
いくつかの実施形態において、複数の単位領域のそれぞれは、上記面と交差する第1方向において、第1金属層、誘電体層、及び第2金属層を順に含む積層体であってもよい。第2金属層は、第1方向と交差する第2方向に配列された複数の金属体を含んでもよい。この構成によれば、各単位領域では、第1方向において第1金属層の上に誘電体層を介して第2金属層が設けられ、第2金属層では第2方向において複数の金属体が配列されているので、各単位領域は、反射ミラーとして機能し得る。したがって、各金属体の大きさを調整することにより、反射角を制御することができる。
【0013】
いくつかの実施形態において、複数の単位領域のそれぞれは、第2方向において、反射角に応じた長さを有してもよい。複数の金属体のそれぞれの大きさは、単位領域の第2方向における第1端から第2端に向かって反射光の位相変化量が直線的に増加又は減少するように設定されてもよい。この場合、第2方向における位置と反射光の位相変化量との関係を示す関数の傾きを波数ベクトルとして有する平面波が生じる。これにより、単位領域の第2方向における長さによって反射角を調整することが可能となる。
【0014】
本開示の別の側面に係るニアアイウェアラブル装置は、上記網膜投影装置と、レンズと、を備える。このニアアイウェアラブル装置においても、アイボックスを拡張することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本開示の各側面及び各実施形態によれば、アイボックスを拡張することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、一実施形態に係る網膜投影装置を含むニアアイウェアラブル装置の外観を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示される網膜投影装置を概略的に示す構成図である。
図3図3は、図1に示される網膜投影装置の動作原理を説明するための図である。
図4図4は、図2に示される反射体を拡大して示す図である。
図5図5は、図4に示される単位領域の一例を概略的に示す平面図である。
図6図6は、図5のVI-VI線に沿った断面図である。
図7図7は、単位領域のX軸方向における位置での反射光の位相変化量を示す図である。
図8図8は、青色の波長に対する、単位領域のX軸方向における長さごとの入射角と反射角との関係を示す図である。
図9図9は、緑色の波長に対する、単位領域のX軸方向における長さごとの入射角と反射角との関係を示す図である。
図10図10は、赤色の波長に対する、単位領域のX軸方向における長さごとの入射角と反射角との関係を示す図である。
図11図11は、近赤外線の波長に対する、単位領域のX軸方向における長さごとの入射角と反射角との関係を示す図である。
図12図12は、金属体の長さと反射波の位相変化量との関係を示す図である。
図13図13は、図4に示される単位領域の別の例を概略的に示す平面図である。
図14図14は、図4に示される単位領域の更に別の例を概略的に示す平面図である。
図15図15は、図4に示される単位領域の更に別の例を概略的に示す平面図である。
図16図16は、図4に示される単位領域の更に別の例を概略的に示す平面図である。
図17図17は、図4に示される単位領域の更に別の例を概略的に示す平面図である。
図18図18は、瞳孔の位置に応じた照射範囲の決定方法の一例を説明するための図である。
図19図19は、瞳孔の位置に応じた照射範囲の決定方法の別の例を説明するための図である。
図20図20は、図1に示される網膜投影装置の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態が詳細に説明される。なお、図面の説明において同一要素には同一符号が付され、重複する説明は省略される。各図には、XYZ座標系が示される場合がある。Y軸方向は、X軸方向(第2方向)及びZ軸方向(第1方向)と交差(例えば、直交)する方向である。Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向と交差(例えば、直交)する方向である。
【0018】
図1を参照しながら、一実施形態に係る網膜投影装置を含むニアアイウェアラブル装置を説明する。図1は、一実施形態に係る網膜投影装置を含むニアアイウェアラブル装置の外観を示す斜視図である。図1に示されるニアアイウェアラブル装置1は、現実世界の視界に映像を重ね合わせる装置である。ニアアイウェアラブル装置1は、例えば、頭部装着型の装置(ヘッドマウント装置)であり、眼鏡型、ゴーグル型、帽子型、及びヘルメット型などの形態をとり得る。ニアアイウェアラブル装置1の例としては、AR(Augmented Reality)グラス及びMR(Mixed Reality)グラスなどのスマートグラスが挙げられる。ニアアイウェアラブル装置1は、フレーム2と、レンズ3と、網膜投影装置10と、を含む。
【0019】
フレーム2は、一対のリム2aと、ブリッジ2bと、一対のテンプル2cと、を含む。リム2aは、レンズ3を保持する部分である。ブリッジ2bは、一対のリム2aを連結する部分である。テンプル2cは、リム2aから延び、ユーザの耳に掛けられる部分である。フレーム2は、リムレスのフレームであってもよい。レンズ3は、ニアアイウェアラブル装置1を装着しているユーザの眼球E(図3参照)と向かい合う内面3a(図2参照)を有する。
【0020】
網膜投影装置10は、ニアアイウェアラブル装置1を装着しているユーザの網膜RE(図3参照)に映像を直接投影(描画)する装置である。網膜投影装置10は、ニアアイウェアラブル装置1に搭載されている。本実施形態では、左右両方の網膜に映像を投影するために、ニアアイウェアラブル装置1は、2つの網膜投影装置10を含むが、いずれか一方の網膜投影装置10のみを含んでもよい。
【0021】
次に、図2図4を参照しながら、網膜投影装置10を詳細に説明する。図2は、図1に示される網膜投影装置を概略的に示す構成図である。図3は、図1に示される網膜投影装置の動作原理を説明するための図である。図4は、図2に示される反射体を拡大して示す図である。図2に示されるように、網膜投影装置10は、光学エンジン20と、反射体30と、を含む。
【0022】
光学エンジン20は、網膜REに投影する映像の画素に対応した色及び強度のレーザ光Lsを生成し、レーザ光Lsを反射体30に出射する装置である。光学エンジン20は、各テンプル2cに搭載されている。光学エンジン20は、光源ユニット21(光源)と、光学部品22と、可動ミラー23と、レーザドライバ24と、ミラードライバ25と、コントローラ26と、を含む。
【0023】
光源ユニット21は、レーザ光を出射する。光源ユニット21としては、例えば、フルカラーレーザモジュールが用いられる。光源ユニット21は、赤色レーザダイオードと、緑色レーザダイオードと、青色レーザダイオードと、近赤外線レーザダイオードと、各レーザダイオードから出射されるレーザ光を1つのレーザ光に合波する合波部とを含む。光源ユニット21は、合波されたレーザ光を出射する。
【0024】
合波されたレーザ光は、赤色の波長を有する成分(赤色成分)、緑色の波長を有する成分(緑色成分)、青色の波長を有する成分(青色成分)、及び近赤外線の波長を有する成分(近赤外線成分)を含む。赤色成分、緑色成分、及び青色成分は、網膜に映像を投影するための成分(第1成分)である。近赤外線成分は、瞳孔の位置を検出するための成分(第2成分)である。なお、瞳孔の位置は、眼球における瞳孔の位置であり、瞳孔の向き又は視線の向きとも表現され得る。光源ユニット21は、網膜REに投影する映像の画素に対応した色及び強度のレーザ光を出射する。
【0025】
光学部品22は、光源ユニット21から出射されたレーザ光を光学的に処理する部品である。本実施形態では、光学部品22は、コリメータレンズ22aと、スリット22bと、減光フィルタ22cと、を含む。コリメータレンズ22a、スリット22b、及び減光フィルタ22cは、レーザ光の光路に沿ってその順に配列されている。光学部品22は、他の構成を有してもよい。
【0026】
可動ミラー23は、レーザ光Lsによる走査を行うための部材である。可動ミラー23は、光学部品22によって処理されたレーザ光の出射方向に設けられる。可動ミラー23は、例えば、レンズ3の横方向(X軸方向)に延びる軸回り及びレンズ3の縦方向(Y軸方向)に延びる軸回りに揺動可能に構成され、X軸方向及びY軸方向に角度を変えてレーザ光を反射する。可動ミラー23としては、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーが用いられる。
【0027】
レーザドライバ24は、光源ユニット21を駆動する駆動回路である。レーザドライバ24は、例えば、レーザ光の光パワー及び光源ユニット21の温度に基づき、光源ユニット21を駆動する。ミラードライバ25は、可動ミラー23を駆動する駆動回路である。ミラードライバ25は、可動ミラー23を所定の角度範囲及びタイミングで揺動させる。
【0028】
コントローラ26は、光学エンジン20を統括制御する装置である。コントローラ26は、レーザドライバ24及びミラードライバ25を制御する。コントローラ26は、ユーザの瞳孔PPの位置に応じて照射範囲を決定し、レーザ光Lsが照射範囲に照射されるようにプロジェクタモジュール27を制御する。照射範囲は、反射体30のうちのレーザ光Lsを照射する範囲である。プロジェクタモジュール27は、光源ユニット21、光学部品22、及び可動ミラー23を含むモジュールである。瞳孔PPの位置に応じた制御方法については後述する。
【0029】
反射体30は、可動ミラー23を経由したレーザ光Lsを反射して、ニアアイウェアラブル装置1を装着するユーザの網膜REに反射光Lrを照射することで、網膜REに映像を投影する部材である。反射体30には映像は表示されない。図4に示されるように、反射体30は、複数の単位領域31を含む。複数の単位領域31は、レンズ3の内面3aに沿って設けられている。複数の単位領域31は、レンズ3の横方向(X軸方向)と縦方向(Y軸方向)とに2次元アレイ状に配列されている。
【0030】
複数の単位領域31は、赤色成分用の単位領域31(第1成分用の単位領域)と、緑色成分用の単位領域31(第1成分用の単位領域)と、青色成分用の単位領域31(第1成分用の単位領域)と、近赤外線成分用の単位領域31(第2成分用の単位領域)と、を含む。X軸方向において、1つの赤色成分用の単位領域31、1つの緑色成分用の単位領域31、及び1つの青色成分用の単位領域31を含む組と、1つの近赤外線成分用の単位領域31とが交互に配列されている。
【0031】
Y軸方向において同じ位置に配置されており、かつ、X軸方向に配列されている複数の組においては、赤色成分用の単位領域31、緑色成分用の単位領域31、及び青色成分用の単位領域31の配列順は同じである。Y軸方向において互いに隣り合う2つの組においては、上記配列順は異なっている。X軸方向において同じ位置に配置されている複数の近赤外線成分用の単位領域31は、Y軸方向に直線状に配列されている。
【0032】
反射体30に含まれている複数の単位領域31のうちの一部が、照射範囲として用いられる。例えば、図3に示されるように、ユーザの瞳孔PPが正面を向いている場合には、X軸方向において位置Pfaから位置Pfcに設けられている単位領域31が、照射範囲として用いられる。位置Pfaに設けられている単位領域31によって反射されるレーザ光Lsは、映像の右端の画素に対応する。位置Pfbは、位置Pfaと位置Pfcとの中間に位置し、位置Pfbに設けられている単位領域31によって反射されるレーザ光Lsは、映像の中央の画素に対応する。位置Pfcに設けられている単位領域31によって反射されるレーザ光Lsは、映像の左端の画素に対応する。
【0033】
ユーザの瞳孔PPが右を向いている場合には、X軸方向において位置Praから位置Prcに設けられている単位領域31が、照射範囲として用いられる。位置Praに設けられている単位領域31によって反射されるレーザ光Lsは、映像の右端の画素に対応する。位置Prbは、位置Praと位置Prcとの中間に位置し、位置Prbに設けられている単位領域31によって反射されるレーザ光Lsは、映像の中央の画素に対応する。位置Prcに設けられている単位領域31によって反射されるレーザ光Lsは、映像の左端の画素に対応する。
【0034】
ユーザの瞳孔PPが左を向いている場合には、X軸方向において位置Plaから位置Plcに設けられている単位領域31が、照射範囲として用いられる。位置Plaに設けられている単位領域31によって反射されるレーザ光Lsは、映像の右端の画素に対応する。位置Plbは、位置Plaと位置Plcとの中間に位置し、位置Plbに設けられている単位領域31によって反射されるレーザ光Lsは、映像の中央の画素に対応する。位置Plcに設けられている単位領域31によって反射されるレーザ光Lsは、映像の左端の画素に対応する。
【0035】
各単位領域31は、当該単位領域31にレーザ光Lsが入射した時に、単位領域31が設けられている位置に応じた反射角θ図6参照)でレーザ光Lsを反射するように構成されたナノ構造体である。各単位領域31によって反射されるレーザ光Ls(反射光Lr)が瞳孔PPの中心を通過するように、各単位領域31の反射角θは設定される。したがって、入射角θ及び反射角θは、単位領域31が設けられている位置によって定まる。単位領域31が設けられている位置に応じた入射角θ及び反射角θが得られるように、単位領域31は構成されている。
【0036】
例えば、位置Pfaに設けられている単位領域31では、30°の入射角θでレーザ光Lsが入射し、5°の反射角θでレーザ光Lsが反射されて反射光Lrとして出射される。位置Pfbに設けられている単位領域31では、40°の入射角θでレーザ光Lsが入射し、-5°の反射角θでレーザ光Lsが反射されて反射光Lrとして出射される。位置Pfcに設けられている単位領域31では、50°の入射角θでレーザ光Lsが入射し、-10°の反射角θでレーザ光Lsが反射されて反射光Lrとして出射される。
【0037】
ここで、入射角θは、レーザ光Lsが照射される面の法線とレーザ光Lsの入射方向とが成す角度である。反射角θは、レーザ光Lsが照射される面の法線と反射光Lrの出射方向とが成す角度である。レーザ光Lsと反射光Lrとを含む平面において、法線を境界として入射光(レーザ光Ls)とは反対側に反射光Lrが出射される場合に、反射角θは正の値で表され、法線を境界として入射光(レーザ光Ls)と同じ側に反射光Lrが出射される場合に、反射角θは負の値で表される。
【0038】
次に、図5及び図6を参照しながら、単位領域31の構成を説明する。図5は、図4に示される単位領域の一例を概略的に示す平面図である。図6は、図5のVI-VI線に沿った断面図である。図5及び図6に示されるように、各単位領域31は、Z軸方向において、金属層41(第1金属層)、誘電体層42、及び金属層43(第2金属層)を順に含む積層体40である。単位領域31のY軸方向における長さLyは、例えば、300nm程度である。単位領域31のX軸方向における長さLxは、反射角θに応じて決定される。長さLxの決定方法については後述する。
【0039】
金属層41は、ベースとなる層である。金属層41は、レンズ3の内面3a上に設けられる。金属層41は、例えば、金(Au)、銅(Cu)、銀(Ag)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、及びニッケル(Ni)からなる組から選択された少なくとも1つの元素を含む金属で構成される。金属層41のZ軸方向における長さ(厚さd1)は、金属層41が共鳴電流を流すことができ、かつ、光を反射可能となる長さであればよく、例えば、1nm~1000nmである。
【0040】
誘電体層42は、スペーサとして機能する層である。誘電体層42は、金属層41上に設けられる。誘電体層42は、金属層41と金属層43とによる電磁気作用を阻害しない程度の誘電率を有する。誘電体層42は、高い反射特性を実現するために、誘電率の高い材料で構成されてもよい。誘電体層42は、例えば、シリコン酸化物(例えば、SiO)、チタン酸化物(例えば、TiO)、マグネシウム酸化物(例えば、MgO)、及びアルミニウム酸化物(例えば、Al)からなる組から選択された1つの化合物で構成される。誘電体層42のZ軸方向における長さ(厚さd2)は、例えば、1nm~1000nmである。
【0041】
金属層43は、金属層41とともに電磁気的な共鳴を励起する層である。金属層43は、誘電体層42上に設けられる。金属層43は、金属層41と同様に、例えば、金(Au)、銅(Cu)、銀(Ag)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、及びニッケル(Ni)からなる組から選択された少なくとも1つの元素を含む金属で構成される。
【0042】
金属層43は、X軸方向に配列された複数の金属体44を含む。各金属体44のZ軸方向における長さ(厚さd3)は、例えば、1nm~1000nmである。各金属体44のX軸方向における長さ(幅Wm)は、100nm程度である。各金属体44のY軸方向における長さLmは、反射角θに応じて決定される。長さLmの決定方法については後述する。X軸方向に互いに隣り合う2つの金属体44の間隔Dsは、反射光の波面が連続的となるように設定される。間隔Dsは、2つの金属体44が接触しない大きさであればよく、例えば、入射光(レーザ光Ls)の波長の半分以下に設定される。間隔Dsは、例えば、20nm程度である。複数の金属体44は、例えば、フォトリソグラフィによって形成される。
【0043】
次に、図7図17を更に参照しながら、長さLx及び長さLmの決定方法を説明する。図7は、単位領域のX軸方向における位置での反射光の位相変化量を示す図である。図8は、青色の波長に対する、単位領域のX軸方向における長さごとの入射角と反射角との関係を示す図である。図9は、緑色の波長に対する、単位領域のX軸方向における長さごとの入射角と反射角との関係を示す図である。図10は、赤色の波長に対する、単位領域のX軸方向における長さごとの入射角と反射角との関係を示す図である。図11は、近赤外線の波長に対する、単位領域のX軸方向における長さごとの入射角と反射角との関係を示す図である。図12は、金属体の長さと反射波の位相変化量との関係を示す図である。図13図17は、図4に示される単位領域の例を概略的に示す平面図である。
【0044】
上述のように、複数の金属体44によって反射ミラーが形成されている。図5及び図7に示されるように、複数の金属体44の長さLmは、単位領域31のX軸方向における一端31a(第1端)から他端31b(第2端)に向かって、金属体44による反射光Lrの位相変化量φが直線的に増加又は減少するように設定されている。反射光Lrの位相変化量φとは、金属体44の大きさを変化させた際の反射光Lrの位相変化量である。なお、本実施形態では、X軸方向に互いに隣り合う2つの金属体44が1つの組を構成しており、同一の組に含まれる2つの金属体44の長さLmは等しい。各組の金属体44は異なる位相変化量φでレーザ光を反射するので、反射光間の干渉により、波面が形成される。すなわち、X軸方向における位置xと位相変化量φとの関係を示す関数φ(x)の傾きを波数ベクトルΦとして有する平面波が生じる。
【0045】
ここで、スネルの法則は、一般化すると、レーザ光Lsの波数ベクトルk、入射角θ、反射角θ、及び波数ベクトルΦを用いて式(1)で表される。
【数1】
【0046】
波数ベクトルkは、レーザ光Lsの波長λを用いて、2π/λで表される。波数ベクトルΦは、長さLxを用いて、2π/Lxで表される。これらの関係を用いて式(1)を変形することによって、式(2)が得られる。
【数2】
【0047】
式(2)に、単位領域31に対応するレーザ光Lsの色成分の波長と、単位領域31が設けられている位置に応じたレーザ光Lsの入射角θ及び反射角θと、を代入することによって、単位領域31の長さLxが求められる。
【0048】
例えば、レーザ光Lsに含まれる青色成分の波長λが430nmであるとすると、式(2)から、図8に示される各長さLxにおける入射角θと反射角θとの関係が得られる。位置Pfaに設けられている単位領域31では、30°の入射角θでレーザ光Lsが入射し、5°の反射角θでレーザ光Lsが反射されて反射光Lrとして出射される。したがって、位置Pfaに設けられている青色成分用の単位領域31の長さLxは-0.0010mm(=-1.0μm)に決定される。ここで、長さLxは、一端31aから他端31bに向かって金属体44の長さLmが増加している場合に正の値で表され、一端31aから他端31bに向かって金属体44の長さLmが減少している場合に負の値で表される。
【0049】
同様に、位置Pfbに設けられている単位領域31では、40°の入射角θでレーザ光Lsが入射し、-5°の反射角θでレーザ光Lsが反射されて反射光Lrとして出射される。したがって、位置Pfbに設けられている青色成分用の単位領域31の長さLxは-0.0006mm(=-0.6μm)に決定される。位置Pfcに設けられている単位領域31では、50°の入射角θでレーザ光Lsが入射し、-10°の反射角θでレーザ光Lsが反射されて反射光Lrとして出射される。したがって、位置Pfcに設けられている青色成分用の単位領域31の長さLxは-0.0004mm(=-0.4μm)に決定される。
【0050】
レーザ光Lsに含まれる緑色成分の波長λが530nmであるとすると、式(2)から、図9に示される各長さLxにおける入射角θと反射角θとの関係が得られる。位置Pfaに設けられている単位領域31では、30°の入射角θでレーザ光Lsが入射し、5°の反射角θでレーザ光Lsが反射されて反射光Lrとして出射される。したがって、位置Pfaに設けられている緑色成分用の単位領域31の長さLxは-0.0012mm(=-1.2μm)に決定される。同様にして、位置Pfbに設けられている緑色成分用の単位領域31の長さLxは-0.0007mm(=-0.7μm)に決定される。位置Pfcに設けられている緑色成分用の単位領域31の長さLxは-0.0006mm(=-0.6μm)に決定される。
【0051】
レーザ光Lsに含まれる赤色成分の波長λが750nmであるとすると、式(2)から、図10に示される各長さLxにおける入射角θと反射角θとの関係が得られる。したがって、位置Pfaに設けられている赤色成分用の単位領域31の長さLxは-0.0020mm(=-2.0μm)に決定される。位置Pfbに設けられている赤色成分用の単位領域31の長さLxは-0.0010mm(=-1.0μm)に決定される。位置Pfcに設けられている赤色成分用の単位領域31の長さLxは-0.0008mm(=-0.8μm)に決定される。
【0052】
レーザ光Lsに含まれる近赤外線成分の波長λが850nmであるとすると、式(2)から、図11に示される各長さLxにおける入射角θと反射角θとの関係が得られる。位置Pfaに設けられている近赤外線成分用の単位領域31の長さLxは-0.0020mm(=-2.0μm)に決定される。位置Pfbに設けられている近赤外線成分用の単位領域31の長さLxは-0.0012mm(=-1.2μm)に決定される。位置Pfcに設けられている近赤外線成分用の単位領域31の長さLxは-0.0009mm(=-0.9μm)に決定される。
【0053】
続いて、単位領域31に含まれる各金属体44の長さLmが決定される。1つの単位領域31では、一端31aから他端31bにわたって位相変化量φが直線的に(1次関数的に)変化し、かつ、一端31aから他端31bまでで位相変化量φが360°(2πラジアン)変化するという条件が満たされる必要がある。したがって、長さLxが正の値である場合には、上記条件を満たし、かつ、一端31aから他端31bに向かって長さLmが増加するように、各金属体44の長さLmが決定される。長さLxが負の値である場合には、上記条件を満たし、かつ、一端31aから他端31bに向かって長さLmが減少するように、各金属体44の長さLmが決定される。
【0054】
例えば、幅Wmを固定値として、長さLmと位相変化量φとの関係が計算又は実験などによって予め求められる。幅Wmが100nmであるとすると図12に示される関係が得られる。具体的には、金属層41及び金属体44の構成材料として金(Au)が用いられ、誘電体層42の構成材料として二酸化ケイ素(SiO)が用いられ、厚さd1が200nm、厚さd2が50nm、厚さd3が40nm、幅Wmが100nmである場合に、異なる長さLmを有する金属体44単体の位相変化量φを求めることによって、図11に示される関係が得られる。
【0055】
例えば、40nmの長さLmを有する金属体44(以下、「金属体44A」と称する。)では位相変化量φは0°であり、100nmの長さLmを有する金属体44(以下、「金属体44B」と称する。)では位相変化量φは50°であり、130nmの長さLmを有する金属体44(以下、「金属体44C」と称する。)では位相変化量φは140°であり、150nmの長さLmを有する金属体44(以下、「金属体44D」と称する。)では位相変化量φは200°であり、250nmの長さLmを有する金属体44(以下、「金属体44E」と称する。)では位相変化量φは300°である。
【0056】
上記条件を満たすように、長さLxに応じて上記金属体44の中からいくつかの金属体44を選択し、選択された金属体44をX軸方向に配列することによって、単位領域31に含まれる金属体44の数及び長さLmが決定されてもよい。同じ長さLmを有する2つの金属体44を組として、複数の組がX軸方向に配列されてもよい。例えば、図7に示されるように、長さLxが1200nmである場合には、X軸方向において、一端31aから他端31bに向けて、金属体44A、金属体44A、金属体44B、金属体44B、金属体44C、金属体44C、金属体44D、金属体44D、金属体44E、及び金属体44Eが20nmの間隔Dsで順に配列される。
【0057】
図13に示されるように、長さLxが720nmである場合には、X軸方向において、一端31aから他端31bに向けて、金属体44A、金属体44A、金属体44C、金属体44C、金属体44D、及び金属体44Dが20nmの間隔Dsで順に配列される。図14に示されるように、長さLxが480nmである場合には、X軸方向において、一端31aから他端31bに向けて、金属体44A、金属体44A、金属体44D、及び金属体44Dが20nmの間隔Dsで順に配列される。
【0058】
同じ長さLmを有する2つの金属体44の組がX軸方向に配列される構成に代えて、互いに異なる長さLmを有する金属体44が1つずつX軸方向に配列されてもよい。例えば、図15に示されるように、長さLxが1200nmである場合には、X軸方向において、一端31aから他端31bに向けて、40nmの長さLmを有する金属体44、75nmの長さLmを有する金属体44、100nmの長さLmを有する金属体44、112nmの長さLmを有する金属体44、130nmの長さLmを有する金属体44、137nmの長さLmを有する金属体44、150nmの長さLmを有する金属体44、200nmの長さLmを有する金属体44、250nmの長さLmを有する金属体44、及び263nmの長さLmを有する金属体44が20nmの間隔Dsで順に配列される。
【0059】
図16に示されるように、長さLxが720nmである場合には、X軸方向において、一端31aから他端31bに向けて、40nmの長さLmを有する金属体44、110nmの長さLmを有する金属体44、130nmの長さLmを有する金属体44、140nmの長さLmを有する金属体44、150nmの長さLmを有する金属体44、及び250nmの長さLmを有する金属体44が20nmの間隔Dsで順に配列される。図17に示されるように、長さLxが480nmである場合には、X軸方向において、一端31aから他端31bに向けて、40nmの長さLmを有する金属体44、118nmの長さLmを有する金属体44、150nmの長さLmを有する金属体44、及び215nmの長さLmを有する金属体44が20nmの間隔Dsで順に配列される。
【0060】
このように、互いに異なる長さLmを有する金属体44を1つずつX軸方向に配列することにより、関数φ(x)が直線に近づくので、反射光の波面が平面に近づく。
【0061】
なお、X軸方向における位置及びY軸方向における位置に応じて、入射角θと反射角θとの組み合わせが決定される。上述の例では、X軸方向において異なる位置に設けられる単位領域31の構造を説明したが、Y軸方向において異なる位置に設けられる単位領域31も同様に、その位置に対応する入射角θと反射角θとの組み合わせを実現可能な構造を有する。
【0062】
次に、図2図3及び図18を参照しながら、網膜投影装置10の動作を説明する。図18は、瞳孔の位置に応じた照射範囲の決定方法の一例を説明するための図である。網膜投影装置10が起動したときには、まず、瞳孔PPの位置が検出される。図2及び図3に示されるように、コントローラ26は、レーザドライバ24を制御して瞳孔PPの位置を検出するためのレーザ光を光源ユニット21に出射させるとともに、ミラードライバ25を制御してレーザ光Lsで反射体30の全体を走査するように可動ミラー23を揺動させる。これにより、レーザ光が光源ユニット21から出射され、光学部品22を通過して可動ミラー23によって反射される。可動ミラー23によって反射されたレーザ光は、レーザ光Lsとして反射体30に出射される。そして、レーザ光Lsが、反射体30によって反射され、反射光Lrとして眼球Eに向けて照射される。
【0063】
レーザ光Ls(反射光Lr)はアイトラッキング用の近赤外線成分を含んでおり、この近赤外線成分が眼球Eによって反射される。眼球Eのうち、瞳孔PP以外に反射光Lrが照射された場合には、眼球Eの表面で反射光Lrは反射され、往路と同じ経路を通って光学エンジン20に戻る。一方、瞳孔PPに反射光Lrが照射された場合には、反射光Lrは瞳孔PPを通って網膜REで反射され、往路と同じ経路を通って光学エンジン20に戻る。コントローラ26は、レーザ光(近赤外線成分)の反射時間(Time of Flight)を計測し、反射時間に基づいて瞳孔PPの位置を検出する。反射時間は、レーザ光(近赤外線成分)が光源ユニット21から出射されてから光学エンジン20(光源ユニット21)に戻るまでの時間である。
【0064】
反射体30における照射位置に応じて、光源ユニット21から眼球Eまでの光路長は異なるが、反射体30を走査している際に反射光Lrが眼球Eの表面に照射されている間は、光路長は連続的に変化する。レーザ光が瞳孔PPに照射されると、眼球Eの表面ではなく網膜REで反射されるので、眼球Eの直径の2倍だけ光路長が長くなる。したがって、コントローラ26は、例えば、ある照射位置での反射時間から1つ前の照射位置での反射時間を減算することによって得られる変化量の絶対値が所定の閾値を超える場合に、上記2つの照射位置の間に瞳孔PPの周縁が存在すると判定する。コントローラ26は、上記変化量が正の値であれば、現在の照射位置は瞳孔PPに含まれており、上記変化量が負の値であれば、現在の照射位置は瞳孔PPの外であると判定する。
【0065】
コントローラ26は、上記変化量の絶対値が閾値以下である場合に、上記2つの照射位置の間に瞳孔PPの周縁は存在しないと判定する。このようにして、コントローラ26は、瞳孔PPの位置(周縁)を検出する。そして、コントローラ26は、瞳孔PPの位置に応じて、反射体30からレーザ光Lsの照射範囲を決定する。
【0066】
続いて、コントローラ26は、網膜REに投影する映像の画素に対応した色及び強度のレーザ光を光源ユニット21に出射させるようにレーザドライバ24を制御するとともに、レーザ光Lsが反射体30の照射範囲に照射されるように可動ミラー23を制御する。例えば、瞳孔PPが正面を向いており、照射範囲R1(第1照射範囲)が用いられるとする。これにより、網膜REに投影する映像の画素に対応した色及び強度のレーザ光が光源ユニット21から出射され、光学部品22を通過して可動ミラー23によって反射される。可動ミラー23によって反射されたレーザ光は、レーザ光Lsとして反射体30に出射される。そして、レーザ光Lsが、反射体30によって反射され、反射光Lrとして網膜REに照射される。
【0067】
レーザ光が出射されている間、コントローラ26は、近赤外線成分の反射時間を計測している。反射光Lrが眼球Eのうち瞳孔PPから外れた位置に照射されると、反射光Lrが瞳孔PPに照射されている場合と比較して、反射時間が短くなる。したがって、コントローラ26は、例えば、ある照射位置の1つ前の照射位置での反射時間から当該照射位置での反射時間を減算することによって得られる変化量が所定の閾値を超える場合に、反射光Lrが瞳孔PPから外れたと判定し、上記変化量が閾値以下である場合に瞳孔PPから外れていないと判定する。反射光Lrが瞳孔PPから外れていないと判定されると、コントローラ26は、レーザ光Lsの照射範囲を照射範囲R1に維持する。
【0068】
一方、レーザ光が瞳孔PPから外れたと判定されると、コントローラ26は、網膜投影装置10の起動時と同様にして、瞳孔PPの位置を検出する。そして、コントローラ26は、瞳孔PPの位置に応じて、反射体30からレーザ光Lsの照射範囲を決定する。ここでは、コントローラ26は、レーザ光Lsの照射範囲を照射範囲R1から照射範囲R2(第2照射範囲)に変更したとする。照射範囲R2は、照射範囲R1と部分的に重なっている。このとき、コントローラ26は、照射範囲R2にレーザ光Lsを照射可能となるように、ミラードライバ25を制御して、可動ミラー23の揺動範囲を調整する。
【0069】
そして、コントローラ26は、ミラードライバ25を制御して照射範囲R2をレーザ光Lsで走査するように可動ミラー23を揺動させる。コントローラ26は、映像の投影を行う間、以上の処理を繰り返す。
【0070】
コントローラ26は、レーザ光Lsの照射範囲を拡張又は縮小してもよい。例えば、ユーザが照射範囲を拡張するための操作を行うことによって、コントローラ26に拡張指令が出力される。コントローラ26は、拡張指令を受信したことに応じて、レーザ光Lsの照射範囲を拡張する。例えば、コントローラ26は、レーザ光Lsの照射範囲を照射範囲R1から照射範囲R3に変更する。同様に、ユーザが照射範囲を縮小するための操作を行うことによって、コントローラ26に縮小指令が出力される。コントローラ26は、縮小指令を受信したことに応じて、レーザ光Lsの照射範囲を縮小する。映像の内容に応じてレーザ光Lsの照射範囲が拡張又は縮小されてもよい。映像の解像度に応じてレーザ光Lsの照射範囲が拡張又は縮小されてもよい。
【0071】
次に、ニアアイウェアラブル装置1の製造方法を説明する。まず、レンズ3が準備され、レンズ3が真空成膜装置にセットされる。そして、レンズ3の内面3a上の所望の領域に金属層41が形成される。具体的には、DC(Direct Current)スパッタリングなどの手法を用いて、真空成膜により金属層41が形成される。金属層41の形成には、金(Au)、銅(Cu)、銀(Ag)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、及びニッケル(Ni)からなる組から選択されるいずれかの金属、又は、上記組から選択される少なくとも1つの元素を含む金属合金で構成される金属材料が用いられる。金属層41は、例えば、1nm~1000nmの膜厚で形成される。金属材料として金が用いられる場合には、金属層41の膜厚は、例えば、200nmである。
【0072】
続いて、金属層41上に誘電体層42が形成される。具体的には、RF(Radio Frequency)スパッタリングなどの手法を用いて、真空成膜により誘電体層42が形成される。誘電体層42の形成には、半導体プロセスで形成可能な二酸化ケイ素(SiO)、酸化チタン(TiO)、酸化マグネシウム(MgO)、又は酸化アルミニウム(Al)などの誘電体材料が用いられる。誘電体層42は、例えば、1nm~1000nmの膜厚で形成される。誘電体材料として二酸化ケイ素が用いられる場合には、誘電体層42の膜厚は、例えば、40nmである。
【0073】
続いて、誘電体層42上に金属層43のもととなる金属層(以下、「最表面の金属層」と称する。)が形成される。最表面の金属層の形成方法は、金属層41と同様であるので、詳細な説明を省略する。最表面の金属層は、例えば、1nm~1000nmの膜厚で形成される。金属材料として金が用いられる場合には、最表面の金属層の膜厚は、例えば、50nmである。
【0074】
続いて、フォトリソグラフィプロセス及びエッチングプロセスによって、金属層43(複数の金属体44)が形成される。具体的には、スピンコータなどを用いて最表面の金属層上に液状レジストを塗布し、塗布された液状レジストを乾燥させることにより、レジスト膜(フォトレジスト)が形成される。そして、KrF露光機及び電子線描画装置などの露光装置を用いて、レジスト膜に、金属体44に相当するパターンが転写される。そして、現像機を用いて、レジスト膜に転写されたパターンが現像される。そして、イオンミリング法により、最表面の金属層のうちのパターンで覆われていない部分が除去され、その後、レジスト膜が除去される。これにより、金属層43が形成される。各金属体44の幅Wm及び長さLmは、例えば、10nm~1000nmである。以上により、レンズ3の内面3aに反射体30が形成される。
【0075】
続いて、光学エンジン20が搭載されたフレーム2が準備され、フレーム2のリム2aに、反射体30が形成されたレンズ3が装着される。以上により、ニアアイウェアラブル装置1が製造される。
【0076】
反射体30(積層体40)は、レンズ3の内面3aに直接形成されなくてもよい。例えば、サファイア基板又はフレキシブルシートなどの基材に反射体30が形成されてもよい。基材に反射体30を形成する方法は、レンズ3に反射体30を形成する方法と同じである。この場合、基材には、複数の反射体30が形成されてもよい。そして、基材を切断することによって、1つの反射体30を含む部分が得られる。そして、当該部分の基材をレンズ3の内面3aの所定の領域に貼り付けることにより、レンズ3の内面3aに反射体30が形成される。
【0077】
以上説明したニアアイウェアラブル装置1及び網膜投影装置10においては、レンズ3の内面3aに沿って複数の単位領域31が設けられており、ユーザの瞳孔PPの位置に応じて、複数の単位領域31のうちの一部が照射範囲として決定され、レーザ光Lsが照射範囲に照射されるようにプロジェクタモジュール27が制御される。したがって、ユーザが目を動かしたとしても、ユーザの網膜REに反射光Lrが照射され得るので、ユーザは映像を正しく認識することが可能となる。以上のように、アイボックスを拡張することが可能となる。
【0078】
コントローラ26は、瞳孔PPが正面を向いている場合(瞳孔PPが第1位置に位置する場合)に、照射範囲R1を照射範囲として決定し、瞳孔PPが第1位置とは異なる第2位置に位置する場合に、照射範囲R2を照射範囲として決定する。照射範囲R1と照射範囲R2とは、部分的に重なっている。この場合、照射範囲R1と照射範囲R2とが重なっている部分に含まれる単位領域31を照射範囲R1及び照射範囲R2のいずれにも活用することができる。照射範囲の設定の自由度を向上させることができるので、瞳孔PPの位置により適した照射範囲を設定することが可能となる。
【0079】
レーザ光Lsは、網膜REに映像を投影するための赤色成分、緑色成分、及び青色成分と、瞳孔PPの位置を検出するための近赤外線成分と、を含む。式(2)に示されるように、単位領域31にレーザ光Lsが照射された場合の反射角θは、レーザ光Lsの波長によって変動する。これに対し、網膜投影装置10では、レーザ光Lsに含まれる異なる波長成分ごとに単位領域31が設けられるので、レーザ光Lsを所望の反射角θで反射することが可能となる。さらに、瞳孔PPの位置を検出するための別の光源を設ける必要が無いので、網膜投影装置10を小型化することが可能となる。
【0080】
網膜投影(網膜描画)においては、反射体30には映像は表示されないので、ユーザはレンズ3上の反射体30に目の焦点を合わせる必要が無い。さらに、ニアアイウェアラブル装置1及び網膜投影装置10においては、反射体30を構成する各単位領域31がナノ構造体である。したがって、レンズ3上の反射体30が設けられる領域が広くなったとしても、ユーザの視界が制限される可能性を低減することができる。
【0081】
各単位領域31では、Z軸方向において金属層41の上に誘電体層42を介して金属層43が設けられ、金属層43ではX軸方向において複数の金属体44が配列されている。このため、各単位領域31は、反射ミラーとして機能し得る。したがって、各金属体44の大きさを調整することにより、単位領域31における反射角θを制御することができる。
【0082】
具体的には、各金属体44の大きさは、単位領域31の一端31aから他端31bに向かって反射光Lrの位相変化量φが直線的に増加又は減少するように設定されている。このため、X軸方向における位置xと反射光Lrの位相変化量φとの関係を示す関数φ(x)の傾きを波数ベクトルΦとして有する平面波が生じる。この場合、上記式(1)及び式(2)が満たされるので、単位領域31の長さLxによって反射角θを調整することが可能となる。
【0083】
コントローラ26は、可動ミラー23の揺動範囲を調整することで、レーザ光Lsの照射範囲にレーザ光Lsを照射している。この構成によれば、プロジェクタモジュール27を移動するための機構が不要であるので、網膜投影装置10を小型化することが可能となる。
【0084】
なお、本開示に係る網膜投影装置及びニアアイウェアラブル装置は上記実施形態に限定されない。
【0085】
上記実施形態では、各金属体44の幅Wmを固定し、長さLmを変更することによって、位相変化量φが調整されるが、幅Wm及び長さLmの両方を変更することによって位相変化量φが調整されてもよい。例えば、幅Wm及び長さLm以外のパラメータは、すべての金属体44で同じ値に設定されており、図12に示される関係と同様に、幅Wm及び長さLmの組み合わせと位相変化量φとの関係が計算又は実験などによって予め求められる。そして、一端31aから他端31bにわたって位相変化量φが直線的に(1次関数的に)変化し、かつ、一端31aから他端31bまでで位相変化量φが360°(2πラジアン)変化するという条件を満たすように、単位領域31に含まれる各金属体44の幅Wm及び長さLmが決定される。
【0086】
例えば、5つの金属体44で直線的に360°の位相変化量を得る場合には、100nmの幅Wm及び100nmの長さLmを有する金属体44と、250nmの幅Wm及び250nmの長さLmを有する金属体44と、300nmの幅Wm及び300nmの長さLmを有する金属体44と、350nmの幅Wm及び350nmの長さLmを有する金属体44と、400nmの幅Wm及び400nmの長さLmを有する金属体44と、がX軸方向に順に配列されてもよい。
【0087】
各単位領域31は、レーザ光Lsが入射した時に当該単位領域31が設けられている位置に応じた反射角θでレーザ光Lsを反射するように構成されていればよく、積層体40(ナノ構造体)でなくてもよい。
【0088】
網膜投影装置10は、光源ユニット21とは別にアイトラッキング用の光源を含んでもよい。この場合、光源ユニット21は、近赤外線成分を含まないレーザ光を出射してもよく、複数の単位領域31は、近赤外線成分用の単位領域31を含まなくてもよい。
【0089】
図19に示されるように、反射体30は、複数の区画に分割されていてもよい。図19に示される例では、反射体30は、4つの区画(区画30a、区画30b、区画30c及び区画30d)に分割されている。この場合、コントローラ26は、複数の区画のうちのいずれかをレーザ光Lsの照射範囲として決定してもよい。具体的には、コントローラ26は、上記実施形態と同様にして瞳孔PPの位置を検出し、複数の区画のうち、瞳孔PPの位置に反射光Lrを照射可能な区画をレーザ光Lsの照射範囲として決定する。この変形例では、瞳孔PPの位置に応じて、いずれかの区画を照射範囲として決定すればよいので、コントローラ26によるプロジェクタモジュール27の制御を簡易化することができる。
【0090】
プロジェクタモジュール27は、レーザドライバ24、ミラードライバ25、及びコントローラ26の少なくともいずれかを更に含んでもよい。
【0091】
図20に示されるように、光学エンジン20は、プロジェクタモジュール27を移動させるための移動機構28を含んでもよい。移動機構28は、例えば、プロジェクタモジュール27をX軸方向に移動させる。本変形例では、移動機構28は、ガイドレール28aと、ステージ28bと、を含む。
【0092】
ガイドレール28aは、X軸方向に沿って直線状に延びている。ガイドレール28aは、ステージ28bの移動経路を規定する。ステージ28bは、プロジェクタモジュール27をX軸方向に移動可能に支持する部材である。ステージ28bは、ガイドレール28aに沿って移動する。ステージ28bは、例えば、リニアアクチュエータによって駆動される。ステージ28bには、光源ユニット21及び光学部品22が固定されている。ステージ28bには、可動ミラー23がX軸方向及びY軸方向に揺動可能に取り付けられている。ステージ28bの位置によらず、光源ユニット21、光学部品22、及び可動ミラー23の相対的な位置関係は固定されている。ステージ28bには、レーザドライバ24、ミラードライバ25、及びコントローラ26の少なくともいずれかが更に搭載されてもよい。
【0093】
コントローラ26は、瞳孔PPの位置に応じて、移動機構28にプロジェクタモジュール27を移動させる。例えば、瞳孔PPが正面を向いている場合(瞳孔PPがアイボックスの左右方向における中心に位置する場合)には、ステージ28bが位置PAfに位置するように、コントローラ26は、移動機構28を制御する。瞳孔PPが右を向いている場合(瞳孔PPがアイボックスの右端に位置する場合)には、ステージ28bが位置PArに位置するように、コントローラ26は、移動機構28を制御する。瞳孔PPが左を向いている場合(瞳孔PPがアイボックスの左端に位置する場合)には、ステージ28bが位置PAlに位置するように、コントローラ26は、移動機構28を制御する。
【0094】
可動ミラー23を制御するだけでは、レーザ光Lsを照射できる範囲には限界がある。この問題に対し、上記変形例では、コントローラ26が移動機構28を制御することによって、瞳孔PPの位置に応じた位置にプロジェクタモジュール27(光源ユニット21、光学部品22、及び可動ミラー23)が移動される。これにより、レーザ光Lsを照射可能な範囲を広げることが可能となる。
【0095】
(付記)
[条項1]
ニアアイウェアラブル装置に搭載される網膜投影装置であって、
レーザ光を出射する光源及び前記レーザ光による走査を行うための可動ミラーを含むプロジェクタモジュールと、
前記可動ミラーを経由した前記レーザ光を反射して、前記ニアアイウェアラブル装置を装着するユーザの網膜に反射光を照射することで、前記網膜に映像を投影する反射体と、
前記ユーザの瞳孔の位置に応じて、前記反射体のうちの前記レーザ光を照射する照射範囲を決定し、前記レーザ光が前記照射範囲に照射されるように前記プロジェクタモジュールを制御するコントローラと、
を備え、
前記反射体は、前記ニアアイウェアラブル装置のレンズのうち、前記ユーザの眼球と向かい合う面に沿って設けられた複数の単位領域を含み、
前記複数の単位領域のそれぞれは、当該単位領域に前記可動ミラーを経由した前記レーザ光が入射した時に前記単位領域が設けられている位置に応じた反射角で前記レーザ光を反射するように構成されたナノ構造体であり、
前記照射範囲は、前記複数の単位領域のうちの一部である、網膜投影装置。
【0096】
[条項2]
前記コントローラは、前記瞳孔が第1位置に位置する場合に、第1照射範囲を前記照射範囲として決定し、前記瞳孔が前記第1位置とは異なる第2位置に位置する場合に、第2照射範囲を前記照射範囲として決定し、
前記第1照射範囲と前記第2照射範囲とは、部分的に重なっている、条項1に記載の網膜投影装置。
【0097】
[条項3]
前記反射体は、複数の区画に分割されており、
前記コントローラは、前記複数の区画のうちのいずれかを前記照射範囲として決定する、条項1に記載の網膜投影装置。
【0098】
[条項4]
前記プロジェクタモジュールを移動させるための移動機構を更に備え、
前記コントローラは、前記瞳孔の位置に応じて、前記移動機構に前記プロジェクタモジュールを移動させる、条項1~条項3のいずれか一項に記載の網膜投影装置。
【0099】
[条項5]
前記レーザ光は、前記網膜に映像を投影するための第1成分と、前記瞳孔の位置を検出するための第2成分と、を含み、
前記複数の単位領域は、前記第1成分用の単位領域と前記第2成分用の単位領域とを含む、条項1~条項4のいずれか一項に記載の網膜投影装置。
【0100】
[条項6]
前記複数の単位領域のそれぞれは、前記面と交差する第1方向において、第1金属層、誘電体層、及び第2金属層を順に含む積層体であり、
前記第2金属層は、前記第1方向と交差する第2方向に配列された複数の金属体を含む、条項1~条項5のいずれか一項に記載の網膜投影装置。
【0101】
[条項7]
前記複数の単位領域のそれぞれは、前記第2方向において、前記反射角に応じた長さを有し、
前記複数の金属体のそれぞれの大きさは、前記単位領域の前記第2方向における第1端から第2端に向かって前記反射光の位相変化量が直線的に増加又は減少するように設定されている、条項6に記載の網膜投影装置。
【0102】
[条項8]
条項1~条項7のいずれか一項に記載の網膜投影装置と、
前記レンズと、
を備える、ニアアイウェアラブル装置。
【符号の説明】
【0103】
1…ニアアイウェアラブル装置、3…レンズ、3a…内面(面)、10…網膜投影装置、21…光源ユニット(光源)、23…可動ミラー、26…コントローラ、27…プロジェクタモジュール、28…移動機構、30…反射体、30a,30b,30c,30d…区画、31…単位領域、31a…一端(第1端)、31b…他端(第2端)、40…積層体、41…金属層(第1金属層)、42…誘電体層、43…金属層(第2金属層)、44,44A,44B,44C,44D,44E…金属体、E…眼球、PP…瞳孔、R1…照射範囲(第1照射範囲)、R2…照射範囲(第2照射範囲)、R3…照射範囲、RE…網膜。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図20