(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094890
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】ビニールハウスの強風対策装置
(51)【国際特許分類】
A01G 9/14 20060101AFI20240703BHJP
A01G 9/24 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A01G9/14 Z
A01G9/24 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211788
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】391008294
【氏名又は名称】フルタ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100200621
【弁理士】
【氏名又は名称】堀部 峰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100083068
【弁理士】
【氏名又は名称】竹中 一宣
(72)【発明者】
【氏名】古田 成広
(72)【発明者】
【氏名】土屋 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】鰐部 幸政
【テーマコード(参考)】
2B029
【Fターム(参考)】
2B029GA10
2B029NB10
2B029PA03
(57)【要約】
【課題】 施設園芸ビニールハウスでは、強風がビニールハウ上方を通過する際、上方向に働く力よってビニールハウスが膨らむ。ビニールハウスを覆っている被覆材が上に引っ張られ破れてしまうと恐れがある。また、破れ始めると骨材などに風の力がかかり、ビニールハウスが倒壊してしまうなどの甚大な被害になる。
【解決手段】 本発明は、吸気側シャッター、排気側シャッター、排気用換気扇を備えたビニールハウスにおいて、強風時に、吸気側のシャッターを閉じ、排気側シャッターを開き、換気扇を廻し、内部の空気をビニールハウス外に排出することにより、ビニールハウス内を負圧状態にする。ビニールハウス内が負圧になることで、前記ビニールハウスを覆っている被覆材を内側に引っ張り、被覆材が浮き上がり防止と、破れて防止を図ることを意図したビニールハウスの強風対策装置と、そのシステムである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強風時の施設園芸ビニールハウスであって、
前記強風が、前記ビニールハウス上方を通過する際、前記ビニールハウスに対し、上方向に力が働き、前記ビニールハウスを覆っている被覆材が上に引っ張られ、ビニールが破れ始め、かつ前記ビニールハウスの骨材に風の力がかかる状況で、前記ビニールハウス倒壊、又は破壊、或いは危険な状況、甚大な被害、所謂、前記被害が発生する恐れがある時に、
1) 前記ビニールハウスに設置した、排気側シャッターを開け、換気扇を廻し、前記ビニールハウスに設置した吸気側シャッターを閉め、前記ビニールハウスへの風の流入を止め、前記ビニールハウス内の負圧状況にし、
2) 前記ビニールハウスを覆っている前記被覆材を内側に引っ張ることで、前記被覆材が破れる状況回避を可能とし、
た構成とするビニールハウスの強風対策装置。
【請求項2】
前記強風時の前記施設園芸ビニールハウスにおいて、
各種の計器を配備し、
前記計器は、風速計にて風速を測定し、制御盤で強風判定を行い、前記排気側シャッター、前記換気扇、前記吸気側シャッターを、駆動する構成とし、
前記計器、及び/又は、風速計を配備し、
前記制御盤は、前記風速計から受信した信号から、前記強風判定を行い、
前記強風判定により、前記強風と判定された場合には、更に強風レベル判定を行い、
前記計器、及び/又は、前記風速計からの信号を介して、前記制御盤に指令を送り、前記指令で、前記排気側シャッターを開け、かつ前記強風レベルに従った回転数で前記換気扇を駆動し、併せて、前記吸気側シャッターは閉じる操作をする構成とした請求項1に記載のビニールハウスの強風対策システム。
【請求項3】
前記強風時の前記施設園芸ビニールハウスにおいて、
前記強風時に、商用電源停止に備えて発電機電源を設け、前記商用電源停止時に、前記発電機電源に切替え、当該発電機を駆動し、前記吸気側シャッターを閉じ、前記排気側シャッターを開け、前記換気扇を駆動する構成とした請求項1に記載のビニールハウスの強風対策装置。
【請求項4】
前記ビニールハウス内が負圧状態において、
前記換気扇を廻し続ける状況下で、換気扇モーターが過負荷状態となった際に、前記モーターを保護するために、
前記強風時に、前記ビニールハウスの内気圧、外気圧を測定し、
前記測定値により、前記ビニールハウスの前記被覆材が浮き上がらない程度に前記換気扇の回転数を決め、
前記換気扇の回転数は、回転数制御器を介し、回転制御を可能とし、
前記強風が治まった時は、前記内気圧の状態、及び/又は、前記ビニールハウス内の温度を確認し、
前記ビニールハウス内の前記換気扇、及び前記排気側シャッター、及び前記吸気側シャッターを平常運転に制御する構成とした請求項1に記載のビニールハウスの強風対策装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニールハウスの強風対策装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の施設園芸ビニールハウス(ビニールハウスとする)において、強風時には、強風がビニールハウス上方を通過する際、上方向に働く力よってビニールハウスが膨らむことで、例えば、ビニールハウスを覆っている被覆材が上に引っ張られ破れてしまう恐れがある。また、破れ始めると骨材などに風の力がかかり、ビニールハウスが倒壊してしまうなどの甚大な被害になってしまう場合がある。
【0003】
その対策として、先行文献(1)としては、例えば、特許第6854454号の「農業用ハウス」がある。発明の概要は、段落0136に開示されている。即ち、「農業用ハウスは、外殻と、吸気用ファンと、排気用ファンと、カーテンとを備える。外殻は、互いに対向する第1妻面、及び第2妻面、並びに屋根を含む。吸気用ファンは、第1妻面に設け、外殻内に外気を送り込む、排気用ファンは、第2妻面に設け、外殻内の空気を外殻外に排出、カーテンは、外殻内に配置され、カーテンは、外殻内で引き出される閉状態と、外殻内で収束する開状態との間で変形可能に構成され、閉状態のカーテンは、外殻内を上部空間と上部空間より下方の下部空間とに区切り、かつ、上部空間と下部空間との間の通気を可能にし、屋根から入射した光を減光する。
【0004】
農業用ハウスは、カーテン閉状態である場合、上部空間と下部空間との間の通気を可能にするカーテンで、上部空間と下部空間との間の換気が行われ、農業用ハウスは、カーテンの開状態、閉状態の両方で効率的に換気できる。
【0005】
農業用ハウスは、カーテンは、第1カーテン、及び第2カーテンを含むことが好ましい。
【0006】
農業用ハウスは、外殻の側面に窓を備える。また、カーテン、吸気用ファン、及び排気用ファンの制御する制御装置を備える構造である」と開示されている。
【0007】
また、先行文献(2)としては、特開2018-88904号の「外張り用の農業用フィルム」がある。この発明は、「所定間隔をあけて設置された複数のアーチパイプに、広幅長尺状のフィルムを展張して用いる農業用フィルム10であり、フィルム10の天井部に、直径2.0~4.0mmの小孔が形成され、平均風速(気象庁「風の強さと吹き方」、10分間の平均、平成12年8月作成、平成25年一部改正)10m/秒以上50m/秒以下の強い風の下で、アーチパイプから浮き上がらないことを特徴とする」と開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6854454号公報
【特許文献2】特開2018-88904号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】園芸用施設設計施工標準仕様書 令和元年5月発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
施設園芸ビニールハウスの台風・強風による倒壊と作物被害を防ぐため、多くの自治体や(一社)日本施設園芸協会から対策マニュアルや安全構造基準が公開されている。防風対策には,(1)ハウスの周囲に防風塀やネットを設置する、(2)ハウスをネットで被いバンドで締める、(3)換気扇でハウス内部を陰圧にする、などが知られている。そこで、これらについて,特許文献として開示されているか検索した。その結果、(1)の一例として特許4395544号公報(ハウス防風機構,釜原 董隆)、(2)の一例として特開2007-68448号公報(ハウス用保護ネットと保護ベルトの同時締め付け構造と使用方法,沖縄県他)があった。しかしながら、(3)に関する先行文献は見つからなかったが、単にビニールシートに孔をあけるとハウスの倒壊が防ぐことができることを開示した文献(特開2018-88904号公報)が見つかった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
吸気側シャッター、排気側シャッター、排気用換気扇を備えたビニールハウスにおいて、強風時に、吸気側のシャッターを閉じ、排気側シャッターを開き、換気扇を廻し、内部の空気をビニールハウス外に排出することにより、ビニールハウス内を負圧状態にする。ビニールハウス内が負圧になることで、前記ビニールハウスを覆っている被覆材を内側に引っ張り、被覆材の浮き上がり防止と、破れ防止を図ることを意図したビニールハウスの強風対策装置と、そのシステムである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1においては、
強風時の施設園芸ビニールハウスであって、
前記強風が、前記ビニールハウス上方を通過する際、前記ビニールハウスに対し、上方向に力が働き、前記ビニールハウスを覆っている被覆材が上に引っ張られ、ビニールが破れ始め、かつ前記ビニールハウスの骨材に風の力がかかる状況で、前記ビニールハウス倒壊、又は破壊、或いは危険な状況、甚大な被害、所謂、前記被害が発生する恐れがある時に、
1) 前記ビニールハウスに設置した、排気側シャッターを開け、換気扇を廻し、前記ビニールハウスに設置した吸気側シャッターを閉め、前記ビニールハウスへの風の流入を止め、前記ビニールハウス内の負圧状況にし、
2) 前記ビニールハウスを覆っている前記被覆材を内側に引っ張ることで、前記被覆材が破れる状況回避を可能とし、
た構成とするビニールハウスの強風対策装置である。
【0013】
ビニールハウスにおいて、ハウスの壁面(他方妻面)にシャッターと、ハウス内の空気を排出する大径の換気扇と、換気扇の対面(一方妻面)にシャッターを備え、風速、内外の気圧によりハウス外へ空気を排出する構成とする。
【0014】
強風が吹くと強風の影響で外側に膨らむ力が働き、ビニールハウスを覆っている被覆材が浮かび上がり、強いては破れてしまい、また、そのまま強風がビニールハウスにあたり続ければ、ビニールハウスを倒壊させることもある。
【0015】
上記に鑑み、本発明の装置、システムでは、台風、突風等の強風時に於いて、ビニールハウスに設置した風速計により強風と判断した場合は、前述の如く、吸気側シャッターを閉じ、排気側シャッターを開け、換気扇を回し、例えば、換気扇により内部の空気が排出すると、ビニールハウス内は負圧状態となり(ハウス内部の気圧が負圧となって)、当該ビニールハウスを覆っている被覆材がビニールハウス内部に引っ張られる。即ち、被覆材は、ビニールハウスに押さえつけられる形をとり、強風によって外側に膨らむのを防ぐことができる。
【0016】
この装置、システムでは、電気によって換気扇を廻すことを前提としている。また台風時には、停電となることが多く、そのため、発電機電源を備え、商用電源が停電となった場合には、自動的に発電機を駆動させ、換気扇用電源を確保している。
【0017】
そして、ハウスの膨らみ・崩壊防止のために、負圧制御を数値的に制御する装置と、かつそのシステムの提供であり、具体的の条件としては、イ)換気扇、及び吸気側シャッター、及び排気側シャッターの利用と制御と、ロ)センサの活用、ハ)温度センサ、その他のセンサ等の活用が望ましい。
【0018】
更に、具体的には、請求項1に於いては、強風時において、どれだけの負圧が必要かの確認、また風速数値確認と、負圧の数値を、数値制御で図ることにある。
【0019】
請求項2においては、
前記強風時の前記施設園芸ビニールハウスにおいて、
各種の計器を配備し、
前記計器は、風速計用に風速を測定し、制御盤は強風判定を行い、前記排気側シャッター、前記換気扇、前記吸気側シャッターを、駆動する構成とし、
前記計器、及び/又は、風速計を配備し、
前記制御盤は、前記風速計から受信した信号から、前記強風判定を行い、
前記強風判定により、前記強風と判定された場合には、更に強風レベル判定を行い、
前記計器、及び/又は、前記風速計からの信号を介して、前記制御盤に指令を送り、前記指令で、前記排気側シャッターを開け、かつ前記強風レベルに従った回転数で前記換気扇を駆動し、併せて、前記吸気側シャッターは閉じる操作をする構成としたビニールハウスの強風対策システムである。
【0020】
前記風速計により強風と判断した場合、吸気側シャッターを閉じ、排気側シャッターを開け、換気扇を回す。負圧の状態で、ハウスバンドが緩むことがあるので注意を要する。換気扇により内部の空気が排出されると、内部の気圧が負圧となってビニールハウスを覆っている被覆材がビニールハウス内部へ引っ張られる。換気扇が全回転で回り続けると、ビニールハウスにかかる押さえつけ力が強すぎて被覆材が破れる場合や、負圧状態で換気扇を廻した場合、モーターが過負荷状態となり、モータートリップしてしまう場合がある。
【0021】
そこで、内気圧、外気圧を測定し、内気圧が外気圧に比べて低くなりすぎた場合は、換気扇の回転数を下げ、空気の吐出量を抑え、内圧を上げることにより被覆材にかかる押さえつける力をやわらげ、被覆材への負荷を減らすことができる。
【0022】
また、台風通過後、強風が治まり通常状態になった場合は、速やかに通常の管理状態に戻す。吸気側シャッター、排気側シャッター、換気扇は通常にしたほうが良い。
【0023】
また、ビニールハウスの膨らみを、負圧と、負圧の位置のコントロールすることが良い。さらに、目的達成するための数値が必要であり、例えば、負圧の数値等は、計算式により決定することが良い。
【0024】
請求項3においては、
前記強風時の前記施設園芸ビニールハウスにおいて、
前記強風時に、商用電源停止に備えて発電機電源を設け、前記商用電源停止時に、前記発電機電源に切替え、当該発電機を駆動し、前記吸気側シャッターを閉じ、前記排気側シャッターを開け、前記換気扇を駆動する構成としたビニールハウスの強風対策装置である。
【0025】
強風時には停電となることがしばしば発生する。この停電時に、換気扇を使用するために、発電機電源を設け、停電時に発電機電源に切替え、当該発電機を駆動し、吸気側シャッターを閉じ、排気側シャッターを開け、換気扇を駆動する。
【0026】
請求項4においては、
前記ビニールハウス内が負圧状態において、
前記換気扇を廻し続ける状況下で、換気扇モーターが過負荷状態となった際に、前記モーターを保護するために、
前記強風時に、前記ビニールハウスの内気圧、外気圧を測定し、
前記測定値により、前記ビニールハウスの前記被覆材が浮き上がらない程度に前記換気扇の回転数を決め、
前記換気扇の回転数は、回転数制御器を介し、回転制御を可能とし、
前記強風が治まった時は、前記内気圧の状態、及び/又は、前記ビニールハウス内の温度を確認し、
前記ビニールハウス内の前記換気扇、及び前記排気側シャッター、及び前記吸気側シャッターを平常運転に制御する構成としたビニールハウスの強風対策装置である。
【0027】
そして、請求項1の目的を達成するため、内外気圧、回転数等の数値が必要となることで、例えば、負圧の数値、計算式により決定することが良い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】(イ)強風時ビニールハウスを覆っている被覆材が膨らむ状態を示した図、(ロ)
図1(イ)を壁面(妻面)よりみた図
【
図2】(イ)吸気側シャッターを閉じ、排気側シャッターを開け、換気扇を廻した時、被覆材が内側に引っ張られる図、(ロ)
図2(イ)を壁面(妻面)よりみた図
【
図3】(イ)ビニールハウスの位置と風力係数の関係を説明した図、(ロ)~(ニ)パイプハウスの変形と、その回避方法に関する図
【
図4】(イ)ビニールハウスの気密性を上げる手法の一例の図、(ロ)換気扇で減圧する(ハウス内の気圧を負圧にする)際の注意点の一例を示した図
【
図5】参考文献「園芸用ビニールハウスの設計用風力係数に関する研究用論文」から抜粋した内容であり、かつ関連する図を縮小した図で、この図を基に説明する、(イ)は台風で倒壊したBGHの写真、(ロ)は桁行断面図、(ハ)、(ニ)は、それぞれ端面図(断面図)
【
図6】ビニールハウス内の簡易密閉度の測定具の一例を示す図
【
図7】本発明におけるシステム構成図と、各種機器、装置等を示し、かつ配置関係を示した図
【
図8】強風時のビニールハウスにおける、吸気側シャッター、排気側シャッター、及び換気扇の制御フローを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の各実施例を説明する。各実施例は、好ましい一例であり、各実施例の説明、及び/又は、図面に限定されない。従って、発明の趣旨の範囲において構成の一部を変更する構造、又は同じ特徴と効果を達成できる構造等は、本発明の範疇である。
【0030】
図1、
図2に、台風、突風、季節風(施風)、又は海風、陸風、山風を要因とする強風時(前記各風を総称し、強風とする)のビニールハウスAの図を示す。
図1には、強風時、ビニールハウスAを覆っている被覆材5が膨らむ状態を示した図であり、
図2は、吸気側シャッター3を閉じ、排気側シャッター1を開け、換気扇2を廻した時のビニールハウスAの図を示す。
【0031】
強風がビニールハウスAの上方A1を通過する際、ビニールハウスAに対し、上方向A11に力が働き、ビニールハウスAを覆っている被覆材5(農業用フィルム)が上に引っ張られ破れる。この状況下では、ビニール等の被覆材5が、破れ始めると、ビニールハウスAの骨材A2に風の力がかかり、ビニールハウスAが倒壊し、甚大な被害が発生する。この被害発生の恐れがある場合に、
1) ビニールハウスAに設置した、排気側シャッター1を開け、換気扇2を廻し、ビニールハウスAに設置した吸気側シャッター3を閉め、ビニールハウスAへの強風の流入を止め、ビニールハウスA内の負圧状況にする。
2) ビニールハウスAを覆っている被覆材5を内側に引っ張ることで、被覆材5が破れる状況回避を可能とし、
たビニールハウスAの強風対策装置を示す。
【0032】
図3(イ)~(ニ)は、強風時に被覆材5が破れ、ビニールハウスAが倒壊する恐れがある場合の、骨材A2や被覆材5の施工に関する事項を説明する。強風時、被覆材の破損や剥離が生じたり、開口部の建具が破損したり、吹き飛ばされたりして施設内に風が吹き込むと大被害が生じる。従って、事前に被覆材5の固定部の点検と、必要な補修をする。例えば、建具類の建て付け、及びロック部を点検補修する。また、強風時、施設周辺から小石・小枝等の飛来で被覆材5が損傷するのを防ぐ目的で、ビニールハウスAを保護する。その他、窓(図示しない)の保護も大切である。
【0033】
尚、
図3(ハ)の如く、風力係数cf(建物の形状や作用する箇所によって異なる係数)と、ビニールハウスの位置、その風上側地際、上下棟と、風下側地際を説明する。そして、風圧力に関する数値であり、一例として示してある。
【0034】
本発明が意図する換気扇2による防風効果を、
図3(イ)~(ニ)で示してみると、例えば、強風時、閉じた施設の室内気圧と外部気圧とに僅かな差が生じる。この差圧を室内圧(Cpi)「陽圧と陰圧」という。室内圧は風向に対する施設の開口部の位置によって、
図5のように大きく異なり、閉め切った施設では、風上側に開口部があれば室内圧が非常に高くなり被覆材5の膨れ上がり、飛散する。逆に風下側を開くか、側面を開けると室内圧は下がり、被覆材5は凋んで構造体を下に押しつけ、ビニールハウスAのバタ付きが無くなり被害を受けにくい状況とする。
【0035】
この一例では、ビニールハウスAに設けた開口部A6や、吸気孔A7をふさいで換気扇2を排気運転した実験では、1台運転で49N(5kgf/m2)、2台で68.6N(7kgf/m2)、3台で88.2N(9kgf/m2)程度室内圧が低下したと報告されている。この実験値を使って換気扇2の効果を検討してみる。
【0036】
例えば、開口部A6は6m×3連棟、奥行き50m、面積900m2のビニールハウスAで、換気扇2を2台運転したときビニールハウスA内の圧力低下総量は、68.6N/m2×900m2=61740N(6300kgf)、即ち、ビニールハウスA全体に6.3tの重しを載せたと同じ効果と考えられることで、それだけ台風時に安定し、被害を軽減できる。
【0037】
図4は(イ)はビニールハウスAの気密性を上げる手法の一例の図であり、戸部等の隙間からの外気の侵入防止を図る。また、(ロ)は換気扇2で負圧にした際の注意点の一例を示した図であり、例えば、被覆材5を活用し、気密性を上げる。
【0038】
尚、
図5は、参考資料として挙げた一例であり、概要は、園芸用ハウスBamboo Green-House(以下、BGH)において、近年の台風に伴う強風によりBGHが倒壊する事例が発生した一例である。耐風設計に基づいたものではないため、この事例を受け適正な耐風設計が必要と考えられた。これに鑑み、園芸用施設の耐風設計に呈するため、一般社団法人日本施設園芸協会が「園芸用施設設計施工標準仕様書」2)に定めている。
【0039】
基準は、主にガラスハウス、プラスチックハウス、パイプハウス等の園芸用施設に関して構造設計を行う際に適用されるが、この一例は、馬蹄形断面を有しており、例外となっている。従って、別途に規定する必要がある。例えば、新たに設計用風力係数を設定する必要がある。
【0040】
このような背景を踏まえ、強風時にBGHに生じる風圧分布を風洞実験により評価し、耐風設計で用いる設計用風力係数を提案する。また、馬蹄形という特有の断面形状の風力係数が一般的な断面形状の風力係数とどのように異なるかについて、この参考資料の研究で提案する設計用風力係数と「園芸用施設設計施工標準仕様書」で示されている丸屋根式(アーチ)あるいは半円式園芸用ハウスの風力係数との比較を行い、その差異および原因を考察した。
【0041】
BGHの図面を
図5(ロ)~(ニ)に示す。なお、BGHはプロジェクトを通じて改良が繰り返され、いくつかの形状が存在するが、この参考資料の研究では
図6に示した馬蹄形断面を有する現行のBGHを対象とする。対象とするBGHには、梁間断面図に描かれた地面と接するフレームが5つ存在する。
図5(イ)に示したように、破壊が見られた箇所は、フレームの柱脚部分である。
【0042】
図7に、制御装置の回路構成の一例を示す。停電検出回路にて停電と判定したときは、商用電源・発電機電源切換え装置に信号を送り、商用電源回路をOFFにし、発電機電源回路をONにする。また、発電機駆動信号を出力する。この状態が、矢視Bに示されている。風速センサ、外気圧センサ、内気圧センサ、温度センサの値を読込み回路Cにて読取り、演算Dにて判定を行い、また、換気扇2の回転周波数を決める。判定した結果を、出力回路Eを介して吸気側シャッター3の開閉信号、排気側シャッター1の開閉信号、また、換気扇2の回転周波数信号を各駆動装置(開閉器6)、回転数制御器7(インバーター等)に出力する。Fは制御盤を示す。
【0043】
図8に、強風時のビニールハウスにおける、吸気側シャッター3、排気側シャッター1、及び換気扇2の制御フロー図を示す。風速センサにより風速値を読み取る(ST-10)。風速値が、任意に決めた設定値より大きければ(風速が大きい=強風)(ST-ll)、内気圧センサ、外気圧センサの値を読込む(ST-12)。読み込んだ内気圧値、外気圧値を比較し、(外気圧値-内気圧値)を計算する(ST-13)。気圧差が設定値より小さいときは、気圧差に応じて換気扇2の回転数をきめる。気圧差が設定値より大きくなった場合、回転数を下げる(ST-14)。また、気圧差が設定値より小さくなった場合、回転数を上げる(ST-15)。吸気側シャッター3に閉信号、排気側シャッター1に開信号を送り、ST-l4または、ST-15で決めた回転周波数信号を換気扇2に送る(ST-16)。吸気側シャッター3は閉じ、排気側シャッター1は開き、換気扇2が回る。
【0044】
また、風速が弱いとき(ST-11)は、温度センサ値によって、設定値より低ければ(ST-17)、ST-10に戻る。温度センサ値によって、高ければ、温度と設定値との差に応じた回転周波数を決める(ST-18)。吸気側シャッター3に開信号、排気側シャッター1に開信号を送り、ST-18できめた回転周波数を換気扇2に送る(ST-19)。吸気側シャッター3、排気側シャッター1が開き、換気扇2が回る。(通常の温度制御運転)
次に、振動障害については、内圧が低いと変形が大きくなり、振動障害が発生すると考えられるため、膜面近傍の風速より大きくなるように、内圧を設定するのが望ましいとしている。また、強風時に膜面にしわができないような内圧を確保する必要があり、次式が目安となる(以下、非特許文献1を参考とする)。
【0045】
q=0.016×V2×√h ・・・・・(1)
ここで、qは速度圧(kgf/m2)、0.016は従来単位kgfの時の係数(SI単位では0.16となる。)、Vは台風を想定した時の風速全国平均値(ここでは、30m/sとした。)、hは施設の軒部(肩部)の地表面からの高さ、又は棟部高さの1/2の高さ、のうち大きい方の値であり、4mとした。
【0046】
q=0.016×30×30×√4
=28.8 kgf/m2 ・・・・・(2)
これが強風等により、風速30m/sの風がハウスに作用した時、膜面にしわを作り、バタつかせる要因である。
【0047】
次に、換気扇2を作動させ、ハウス内の圧力を減少させた時の値をPinとする。
【0048】
Pinは計算で求めることも可能であるが、出願人により、見つけ面積900m2に換気扇(フルタ電機株式会社製FGS1043)を2台設置し、開口部を全て塞いだ状態で排気した結果、Pinが7kgf/m2まで負圧にするデータを得た。
【0049】
風速30m/s時に、換気扇を作動させて負圧にした圧力Pwは、次式により表すことが出来る。
【0050】
Pw=q-Pin ・・・・・(3)
ここで、Pwは換気扇により負圧にした圧力kgf/m2、qは速度圧kgf/m2、Pinは換気扇作動後のハウス内圧kgf/m2であり、
(3)=28.8-7
=21.8kgf/m2 ・・・(4)
ハウス内が7kgf/m2に負圧されることにより、被膜のバタつきは抑えられ、破損が防止される。
【0051】
尚、非特許文献1においては、ハウス全体の風圧力(kg)は、次式で計算することになっている。
【0052】
P=q×C×A ・・・・・(5)
ここで、Pは風圧力(kgf)であり、これはハウス全体に作用する力である。
【0053】
qは速度圧(kgf/m2)、Cは風速係数で一般的には0.7、Aは見つけ面積であり、ここでは900m2とする。
【0054】
以上から、風圧力Pは次式から求められる。
【0055】
P=28.8×0.7×900
=18,144kg
=およそ18トン ・・・・・(6)
【0056】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【符号の説明】
【0057】
A ビニールハウス
AA 連棟ビニールハウス
A1 上方
A11 上方向
A2 骨材
A4 妻面
A6 開口部
A7 吸気孔
A8 風向
C 読込み回路
D 演算
E 出力回路
F 制御盤
1 排気側シャッター
2 換気扇
3 吸気側シャッター
5 被覆材
6 開閉器
7 回転数制御器(インバータ等)