(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094895
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】外用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/06 20060101AFI20240703BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20240703BHJP
A61K 8/84 20060101ALI20240703BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20240703BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20240703BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/73
A61K8/84
A61K8/19
A61Q1/00
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211795
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(72)【発明者】
【氏名】有賀 美沙樹
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AB211
4C083AB212
4C083AB241
4C083AB242
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC342
4C083AC442
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD281
4C083AD282
4C083AD332
4C083AD351
4C083AD352
4C083BB23
4C083CC03
4C083CC11
4C083CC19
4C083DD33
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE12
4C083EE17
(57)【要約】
【課題】水相に粉体を配合した外用組成物に関して、塗布時の固形物発生低減と経時安定性を両立させること。
【解決手段】多糖系増粘剤とポリアクリルアミド化合物を併用すること。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)多糖系増粘剤、(B)ポリアクリルアミド化合物、及び(C)金属酸化物を含有し、成分(C)が水相に存在する外用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水相に粉体を配合した外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
日常生活において照射を受ける紫外線から皮膚を保護するため、現在、皮膚化粧料の多くに不溶性の粉体化合物が配合されている。特許文献1では、粒子の平均粒子径が小さい金属酸化物を多く含有する組成物における経時安定性を検討し、アクリル酸ナトリウムおよびアクリロイルジメチルタウリンナトリウムを構成単位として有するコポリマーと直鎖型のシリコーン鎖の末端のトリメチルシロキサン以外の部位にポリエーテル鎖が結合したポリエーテル変性シリコーンを併用することで優れた経時安定性を示すことを見出したが、経時の粘度安定性においては十分ではなかった。また、金属酸化物を含む外用組成物において、優れた経時粘度安定性を発揮するには多糖系増粘剤の配合が必須であるが、水相に配合した金属酸化物と共に、塗布時の固形物発生を促進されるという課題が発生した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、水相に粉体を配合した処方において、塗布時の固形物発生低減と経時安定性の両立させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための外用組成物は多糖系増粘剤とポリアクリルアミド化合物を併用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の外用組成物によれば、塗布時の固形物発生低減と経時安定とを両立させることができる。また、本発明の外用組成物は、アンチポリューション効果、ブルーライト及び近赤外線カット効果、紫外線防御効果、化粧下地効果、乾燥小じわを目立たなくする効果、保湿効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明に係る実施形態を説明する。
【0008】
(A)成分である多糖系増粘剤とは、水溶性の増粘多糖類を指す。多糖系増粘剤の代表的な例として、スクレロチウムガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、澱粉、アラビアガム、グアーガム、アルゲコロイド、コラーゲン及びその誘導体、カゼイン、ゼラチン、タマリンドガム、ジェランガム、ヒドロキシエチルセルロースなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0009】
上記多糖系増粘剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0010】
(B)成分であるポリアクリルアミド化合物とは、アクリルアミド、及びその誘導体から成る化合物を指す。ポリアクリルアミド化合物の代表的な例として、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、ポリアクリレート-13、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリン/ジメチルアクリルアミド)クロスポリマー、(アクリル酸/アクリル酸アミド/アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)コポリマー等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0011】
上記ポリアクリルアミド化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0012】
(C)成分である金属酸化物の好ましい具体例として、酸化亜鉛、酸化チタン(ルチル、アナターゼ)、酸化鉄、酸化クロム、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化ニッケル、酸化カルシウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウムが挙げることができるが、これらに限定されない。
【0013】
上記金属酸化物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0014】
本発明の外用組成物は、水中油型乳化組成物であることが好ましい。連続層としては水および多価アルコール類が好ましく、それらの混合物がより好ましい。本願における多価アルコール類としては、プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ヘキシレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、20℃において液状のポリエチレングリコールなどが挙げられ、グリセリンを除くアルジトールやシクリトールは含まれない。外用組成物全量に対して水および多価アルコール類の総量は、55~85質量%程度であり、好ましくは、60~80質量%程度であり、最も好ましくは65~80質量%程度である。
【0015】
本発明の外用組成物は、その剤形に応じた任意成分、その他の添加剤を配合し、通常の方
法により調製することができる。
【0016】
また、本発明の外用組成物は、上記した成分の他、他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては特に限定的ではなく、通常、化粧料に配合可能な成分を用いることができる。例えば、上記(A)、又は(B)成分以外の水溶性高分子、上記(C)成分以外の紫外線散乱剤/遮蔽剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、油性成分、糖アルコール、アルコール類、保湿剤、酸化防止剤、防腐剤、キレート剤、アミノ酸類、糖類、ビタミン類、動植物抽出物、着色剤、有機酸及び無機酸などのpH調整剤などの成分が挙げられる。
【0017】
上記(A)、又は(B)成分以外の水溶性高分子は例えば、(B)成分以外のアクリル系高分子、平均分子量が数万程度のポリエチレングリコール、セルロース系高分子、アルギン酸系高分子、澱粉系高分子、ビニル系高分子などが挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて配合することができる。
【0018】
上記(C)成分以外の紫外線散乱剤/遮蔽剤としては、例えば、平均粒子径が100nm以上の金属酸化物、タルク、セリサイト、マイカ、カオリン、ベンガラ、グンジョウ、炭酸カルシウム、雲母チタン、水酸化クロム、硫酸バリウム、酸化チタン被覆タルク、微粒子酸化チタン被覆タルクカオリンなどが挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0019】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤の何れの界面活性剤も配合することができる。その中でもノニオン性界面活性剤が好ましい。ノニオン性界面活性剤の例としては、ポリエーテル変性シリコーン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、アルキルグリコシド、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンコレスタノール、アルカノールアミドなどが挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0020】
紫外線吸収剤としては、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ケイ皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ウロカニン酸、4-tert-4'-メトキシベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤などが挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0021】
油性成分としてはオリーブ油、大豆油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、椿油、メドウフォーム油などの植物油;流動パラフィン、スクワラン、オレフィンオリゴマー、ワセリン、セレシン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックスなどの炭化水素類;ラノリン、ミツロウ、キャンデリラロウ等のロウ類;パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸、ポリヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸などの脂肪酸類;ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、バチルアルコール、セタノール、セチルアルコールなどの高級アルコール類;オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸オレイル、オクタン酸イソステアリル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシルなどの脂肪酸エステル類;ジメチコン、シクロペンタシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、ハイドロゲンジメチコンなどのシリコーン油等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0022】
糖アルコールとしては、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、ラクチト-ル、エリスリトールなどが挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0023】
アルコール類としては、エチルアルコール、ブチルアルコール、プロパノール、ヘキサノール、ラノリンアルコールが挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0024】
保湿剤としては、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸塩、コラーゲン類、植物抽出物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて配合することができる。
【実施例0025】
以下に処方例を挙げ、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではなく、また本発明はこれらの処方例に限定されるものではない。
【0026】
表1に記載する処方例1~5は水相に粉体を配合した外用組成物の処方。
【0027】
【0028】
顔料級酸化亜鉛として、適宜XZ-1000F(粒径1μm、厚さ290nm)、XZ-1000F-LP(粒径1μm、厚さ290nm)、XZ-3000F-LP(粒径3μm、厚さ750nm)、XZ-1000F-KR(粒径1μm、厚さ290nm)、CANDY ZINC 1000(粒径1μm)、Lumate G(粒径2.5μm、蛍光発光機能あり)、LPZINC-2(粒径2μm)、LPZINC-5(粒子径5μm)、LPZINC-11(粒径11μm)、LPZINC-30S(粒径40μm)、LPZINC-50S(粒径70μm)(以上、堺化学工業株式会社)等を用いることができるが、これらに限られない。
【0029】
多糖系増粘剤として、適宜AMIGEL(スクレロチウムガム:Alban Muller International社製)、グリロイド6C(タマリンドシードガム:住友ファーマフード&ケミカル株式会社製)、HECダイセルSE400(ヒドロキシエチルセルロース:ダイセルミライズ株式会社製)、HECダイセルSE550(ヒドロキシエチルセルロース:ダイセルミライズ株式会社製)、HECダイセルSE600(ヒドロキシエチルセルロース:ダイセルミライズ株式会社製)、HECダイセルSE850(ヒドロキシエチルセルロース:ダイセルミライズ株式会社製)、HECダイセルSE900(ヒドロキシエチルセルロース:ダイセルミライズ株式会社製)、エコーガムT(キサンタンガム:住友ファーマフード&ケミカル株式会社製)、ラボールガムGS-C(キサンタンガム:住友ファーマフード&ケミカル株式会社製)、ケルコゲル(ジェランガム:住友ファーマフード&ケミカル株式会社製)等を適宜用いることができるが、これらに限られない。
【0030】
上記多糖系増粘剤を構成する糖としてグルコース、キシロース、ガラクトース、マンノース、ラムノース等を挙げることができるが、これらに限られない。
【0031】
上記多糖系増粘剤の由来としては植物種子、植物繊維、微生物等を挙げることができるが、これらに限られない。
【0032】
ポリアクリルアミド化合物として、適宜SEPINOV EMT-10, SEPIPLUS400, SIMULGEL EG(SEPPIC S.A.社製)、Aristoflex AVC (クラリアントジャパン株式会社製)等を用いることができるが、これらに限られない。
【0033】
得られた各処方について、次のようにしてアンチポリューション試験を実施した。人工皮革を3cm×3cmにカットし、その上に一定量の薬剤をとり、スパチュラを用いて均一に塗り広げ、120分乾燥させた。そこに、大気汚染微粒子のモデル物質として、酸化鉄粉末(310050、シグマアルドリッチ社製)を付着させた。一定時間水洗し乾燥させたのち、人工皮革1枚あたり5か所の色差を測定し、a*の平均値を求めた。薬剤無塗布の人口皮革と比較して、上記数値が統計的有意に低い場合、アンチポリューション効果があるとした。
【0034】
処方例1~6の処方は、上記の試験方法によりアンチポリューション効果を有した。
アンチポリューション性能の面から、金属酸化物粉体は外相である水相に配合することが望ましい。
【0035】
得られた各処方について、ブルーライト及び近赤外線透過率測定試験方法を実施した。ガラス基板に薬剤を2mg/cm2の厚さで塗布し、ブルーライト波長域や近赤外線波長域における平均透過率を測定し、その値から平均遮断率を算出した。
【0036】
処方例1~6の処方は、ブルーライト、及び近赤外線をカットする効果を有した。中でも処方例3および4は、上記の試験方法によりブルーライトを40%程度、近赤外線を30%程度カットする効果を有した。
【0037】
得られた各処方について、ISO24444にもとづいたSPF測定試験、及び、ISO24442に基づいたUVAPF測定試験により、薬剤のSPF・PAを測定した。
【0038】
処方例1~6の処方は、優れた紫外線防御性能を有した。中でも処方例3および4の処方は、上記の試験方法によりSPF50, PA++++の紫外線防御性能を有した。
【0039】
得られた各処方について、化粧下地効果の評価を行った。合成皮革(1)市販のファンデーションのみ塗布したもの (2)処方例3塗布後に市販のファンデーションを塗布したもの を作成し、目視及びマイクロスコープでの拡大撮影(×30)にて観察し、ファンデーションの均一性について評価を行った。
【0040】
処方例1~6は、上記の試験方法により化粧下地効果を有した。
【0041】
処方例3について、抗シワ試験を行った。「新規効能取得のための抗シワ製品評価ガイドライン(日本香粧品学会誌(Vol.30、No.4、p.316-332、2006)」に準じて試験を行い、シワグレード1~3の成人女性20名を被験者とし、処方例3の化粧料を顔面目尻の片方の皮膚に8週間連用させ、目尻のシワグレード、レプリカによる画像解析パラメータ、角層水分量を測定した。
【0042】
その結果、シワグレードと最大シワ最大深度において、試験品無塗布部位と比較して試験品塗布部位に有意なシワ改善が認められ、処方例3は乾燥による小ジワを目立たなくする効果を有した。
【0043】
得られた処方について、保湿性能評価を行った。成人女性8名を被験者とし、洗浄した前腕内側の角層水分量を測定したのち、薬剤を2mg/cm2量塗布し、1時間後の角層水分量を測定した。
【0044】
その結果、塗布1時間後では無塗布部位と比較して有意に角層水分量が上昇することが確認され、処方例1~6は高い保湿力を有した。