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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094903
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】医療用クリップ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/122 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
A61B17/122
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211817
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】阿部 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】石井 靖久
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 道男
(72)【発明者】
【氏名】平賀 智
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD16
4C160DD70
(57)【要約】
【課題】生体組織に対する処置をより好適に行うことが可能な構造の医療用クリップを提供する。
【解決手段】医療用クリップ10は、自然状態において先端側が開いた状態となる一対のアーム部20と、一対のアーム部20を締め付けて閉状態とする締付部(締付リング30)と、を備える医療用クリップであって、アーム部20又は締付部が薬剤51を離脱可能に保持している。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然状態において先端側が開いた状態となる一対のアーム部と、
前記一対のアーム部を締め付けて閉状態とする締付部と、
を備える医療用クリップであって、
前記アーム部又は前記締付部が薬剤を離脱可能に保持している医療用クリップ。
【請求項2】
前記薬剤は止血剤である請求項1に記載の医療用クリップ。
【請求項3】
前記薬剤は粉末状である請求項1又は2に記載の医療用クリップ。
【請求項4】
粉末状の前記薬剤が押し固められて前記アーム部又は前記締付部に配置されている請求項3に記載の医療用クリップ。
【請求項5】
粉末状の前記薬剤がペースト状の保持剤に練り込まれて前記アーム部又は前記締付部に塗布されている請求項3に記載の医療用クリップ。
【請求項6】
前記アーム部又は前記締付部に塗布された粉末状の前記薬剤が、ペースト状の保持剤でコーティングされている請求項3に記載の医療用クリップ。
【請求項7】
前記保持剤は油脂である請求項5に記載の医療用クリップ。
【請求項8】
前記アーム部の、前記締付部が摺動する表面が、前記薬剤を保持している請求項1又は2に記載の医療用クリップ。
【請求項9】
前記アーム部において、他方のアーム部とは反対側を向く外面には、凹部が形成されており、
前記凹部内に前記薬剤を保持している請求項1又は2に記載の医療用クリップ。
【請求項10】
ペースト状の保持剤が前記薬剤を覆う蓋となっている請求項9に記載の医療用クリップ。
【請求項11】
前記アーム部において、他方のアーム部とは反対側を向く外面には凹部が形成され、前記アーム部に対して対向する面には前記凹部と対応する凸部が形成されており、
前記凸部の縁において前記薬剤を保持している請求項1又は2に記載の医療用クリップ。
【請求項12】
前記アーム部は板状に形成されており、
前記アーム部は、先端側に向けて他方のアーム部から離間する方向へ弧状に湾曲している弧状湾曲部と、前記弧状湾曲部の先端側に連接されている先端側部分と、前記先端側部分の先端側に連接されている爪状部と、を有し、
前記閉状態では前記一対のアーム部の前記爪状部が互いに当接するとともに前記先端側部分が互いに並列に延在し、
前記薬剤は、前記弧状湾曲部において他方のアーム部とは反対側を向く外面に配置されており、
前記薬剤をペースト状の保持剤が覆っており、
前記締付部で前記一対のアーム部を締め付ける際に、前記保持剤が前記締付部によりこそげ落とされる請求項1又は2に記載の医療用クリップ。
【請求項13】
前記アーム部は、表裏を貫通する貫通孔を有する板状に形成されており、
前記貫通孔内に前記薬剤を保持している請求項1又は2に記載の医療用クリップ。
【請求項14】
前記アーム部は、他方のアーム部に対する対向面側に空洞を有するカップ状に形成されており、
前記空洞内に前記薬剤を保持している請求項1又は2に記載の医療用クリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用クリップに関する。
【背景技術】
【0002】
生体組織の止血等に用いられる医療用クリップ(同文献には、クリップと記載)として、例えば、特許文献1には、自然状態において先端側が開いた状態となる一対のアーム部(同文献には、腕部と記載)と、一対のアーム部を締め付けて閉状態とする締付部(同文献には、締付部材と記載)と、を備える医療用クリップが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-180607
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載の医療用クリップは、生体組織に対する処置をより好適に行う観点で、なお改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、生体組織に対する処置をより好適に行うことが可能な構造の医療用クリップを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、自然状態において先端側が開いた状態となる一対のアーム部と、
前記一対のアーム部を締め付けて閉状態とする締付部と、
を備える医療用クリップであって、
前記アーム部又は前記締付部が薬剤を離脱可能に保持している医療用クリップを提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、生体組織に対する処置をより好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る医療用クリップの側面図である。
図2】第1実施形態における内視鏡用クリップ装置の先端部及びその周辺構造を示す斜視図であり、医療用クリップがシースの先端から突出した状態を示す。
図3】第1実施形態における内視鏡用クリップ装置の先端部及びその周辺構造を示す側面図であり、一対のアーム部が開いた状態を示す。
図4】第1実施形態における内視鏡用クリップ装置の先端部及びその周辺構造を示す側面図であり、一対のアーム部が閉じた状態を示す。
図5】第1実施形態における内視鏡用クリップ装置の先端部及びその周辺構造を示す縦断面図である。
図6図6(a)は図3に示すA-A線に沿った切断端面図であり、図6(b)は図6(a)に示すB-B線に沿った切断端面図であり凹部及びその周辺構造を示す。
図7】第1実施形態における先端側部分をアーム部の外面側から視た状態を示す図である。
図8】第1実施形態における内視鏡用クリップ装置の全体構造を示す模式図である。
図9】第2実施形態における先端側部分の切断端面図である。
図10】第2実施形態における先端側部分をアーム部の内面側から視た状態を示す図である。
図11】第3実施形態における内視鏡用クリップ装置の先端部及びその周辺構造を示す縦断面図であり、医療用クリップがシースの先端から突出した状態を示す。
図12図12(a)及び図12(b)は第3実施形態における内視鏡用クリップ装置の先端部及びその周辺構造を示す縦断面図であり、このうち図12(a)は図11に示す状態から締付リングがアーム部に対して前進した状態を示し、図12(b)は一対のアーム部が閉じた状態を示す。
図13図13(a)は第4実施形態における内視鏡用クリップ装置の先端部及びその周辺構造を示す縦断面図であり、医療用クリップがシースの先端から突出した状態を示し、図13(b)は図13(a)に示すA-A線に沿った切断端面図である。
図14】第5実施形態における内視鏡用クリップ装置の先端部及びその周辺構造を示す側面図であり、医療用クリップがシースの先端から突出した状態を示す。
図15図14に示すA-A線に沿った切断端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
また、以下において、医療用クリップ10及び内視鏡用クリップ装置100の先端側を遠位側、医療用クリップ10の基端側を近位側と称する場合がある。また、遠位端部は、遠位端(最先端)およびその周辺を含む一定の範囲を意味し、近位端部とは、近位端(最基端)およびその周辺を含む一定の範囲を意味するものとする。
また、本実施形態に係る医療用クリップ10及び内視鏡用クリップ装置100の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0010】
〔第1実施形態〕
先ず、図1から図8を用いて第1実施形態を説明する。なお、図5は、図6(a)に示すB-B線に沿った断面図である。
【0011】
図1から図5に示すように、本実施形態に係る医療用クリップ10は、自然状態において先端側が開いた状態となる一対のアーム部20と、一対のアーム部20を締め付けて閉状態とする締付部(本実施形態の場合、後述する締付リング30)と、を備える。
図5に示すように、アーム部20が薬剤51を離脱可能に保持している。
なお、ここで「離脱可能に保持している」とは、生体内における医療用クリップ10の留置箇所において、薬剤51の全部又は一部分がアーム部20から離脱可能となっていることを意味している。
【0012】
医療用クリップ10は、生体組織を結紮するものであり、一対のアーム部20で生体組織を結紮することにより、例えば止血処置、縫縮及びマーキングなどの生体組織に対する処置を行うことができる。
【0013】
本実施形態によれば、アーム部20が薬剤51を離脱可能に保持している。このため、医療用クリップ10によって、当該医療用クリップ10の用途(止血処置、縫縮及びマーキングなど)に応じた薬剤51を生体組織における所望の部位に対して容易に塗布することができる。よって、止血処置、縫縮及びマーキングなどの生体組織に対する処置をより好適に行うことが可能となる。
【0014】
本実施形態の場合、薬剤51は止血剤である。
これにより、医療用クリップ10によって生体組織の止血処置や縫縮をより速やかに行うことができる。
本実施形態の場合、一例として、止血剤は、アルギン酸ナトリウムである。
なお、本発明において、薬剤51は止血剤に限定されず、染色剤や、胃や腸の蠕動運動を抑制する薬剤など、医療用クリップ10の用途に応じて適宜設定することができる。
【0015】
また、薬剤51は、一例として、粉末状である。
これにより、アーム部20から離脱した薬剤51が、生体組織の患部に対して広範囲に塗布(散布)されるようにできる。
ただし、本発明において、薬剤51は、粉末状に限定されず、例えば、シート状やペースト状であってもよい。
【0016】
医療用クリップ10は、図8に示す内視鏡用クリップ装置100の遠位端部に装着され、当該内視鏡用クリップ装置100によって生体組織における所望の部位に留置される。
図5及び図8に示すように、内視鏡用クリップ装置100は、長尺な操作ワイヤ86と、操作ワイヤ86が収容された可撓性のシース81と、シース81の近位側に設けられて操作ワイヤ86の近位端が接続された手元操作部90と、を備えている。操作ワイヤ86の遠位端には、例えば、連結部材88が接続されており、医療用クリップ10は、操作ワイヤ86の遠位端部に対して当該連結部材88を介して着脱可能に連結され、手元操作部90に対する操作によって開閉する。なお、図5及び後述する図11図13(b)においては、連結部材88を選択的に側面図で図示している。
内視鏡用クリップ装置100は、内視鏡の鉗子孔(不図示)に挿通して用いられる。より詳細には、生体内に留置された内視鏡の鉗子孔に対して近位側から内視鏡用クリップ装置100のシース81を挿入する。そして、鉗子孔の遠位側の開口からシース81の遠位端を突出させ、さらにシース81から医療用クリップ10を露出させて生体組織を結紮することができる。結紮される生体組織としては、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の被処置部位などの粘膜壁の他、血管などの体管を挙げることができる。
【0017】
図1及び図5に示すように、医療用クリップ10は、例えば、上述の一対のアーム部20及び締付部と、アーム部20の近位側に設けられ、操作ワイヤ86の遠位端部に対して着脱可能に取り付けられる係止部28と、を備える。係止部28が、例えば、連結部材88を介して操作ワイヤ86の遠位端部に取り付けられることにより、医療用クリップ10と操作ワイヤ86とは互いに連結される。係止部28は、例えば、一対のアーム部20と一体成形されている。
係止部28は、例えば、間隔を空けて互いに対向する一対の突片部28aを含む。
係止部28は、連結部材88によって押圧されることにより拡径方向に弾性変形して、当該連結部材88を一対の突片部28aの隙間に収容する。そして、係止部28は、弾性復元することで、連結部材88の細径の首部分に係止可能に構成されている。
【0018】
アーム部20は自己拡開力を有するように弾性変形可能である。後述するように閉状態にあるアーム部20は、シース81から突出することで自然に拡開して開状態となる。ここで、「自己拡開」とは、閉じようとする外力に対して反発して自ら開こうとすることをいう。
本実施形態の場合、一対のアーム部20の各々(アーム部20a、アーム部20b)は、互いに同一形状及び同一寸法に形成されている。ただし、本発明において、一対のアーム部20の各々は、互いに異なる形状及び寸法に形成されていてもよい。
【0019】
図1から図5に示すように、本実施形態の場合、アーム部20は板状に形成されており、アーム部20の表面が薬剤51を保持している。
アーム部20は、例えば、先端側に向けて他方のアーム部20から離間する方向へ弧状に湾曲している弧状湾曲部21と、弧状湾曲部21の先端側に連接されている先端側部分22と、先端側部分22の先端側に連接されている爪状部23と、を有する。
弧状湾曲部21の基端部は、例えば、係止部28に接続されており、当該基端部は、遠位側に向けて他方のアーム部20に近づく方向へ僅かに屈曲している。図2及び図7に示すように、弧状湾曲部21の先端部は、先端側部分22に向けて徐々に幅広となっている。また、弧状湾曲部21と先端側部分22との境界部には括れ部が形成されている。
先端側部分22は、例えば、平板状に形成されており、アーム部20の延在方向において長尺な略長方形状に形成されている。
爪状部23は、例えば、先端側に向けて他方のアーム部20に近づく方向に傾斜している。図2に示すように、一対のアーム部20のうち、一方のアーム部20aの爪状部23は、先端側に向けて徐々に先細りした形状となっており、他方のアーム部20bの爪状部23は、先端側に向けて二股に分かれた二股形状となっている。
図4に示すように、閉状態では一対のアーム部20の爪状部23が互いに当接するとともに先端側部分22が互いに並列に延在している。
【0020】
本実施形態の場合、締付部は、一対のアーム部20を内部に通す挿通孔31を有し、一対のアーム部20に対して摺動しつつ前進することにより、一対のアーム部20を締め付けて閉状態とする。
より詳細には、締付部は、一例として、環状の締付リング30である。ただし、本発明において、締付部は締付リング30に限定されず、例えば、軸方向において長尺な筒状又は鞘状に形成されていてもよい。
図1から図5に示すように、締付リング30は、アーム部20に対して摺動可能に外挿されている。締付リング30は、一対のアーム部20に対して摺動しつつ前進することにより、一対のアーム部20を締め付けて閉状態とする。
なお、本実施形態の場合、「締め付けて閉状態とする」とは、締付リング30の挿通孔31を形成する内壁面が、一対のアーム部20を互いに近づく方向に押圧することで、一対のアーム部20を閉腕させることを意味している。
より詳細には、締付リング30を弧状湾曲部21に対して相対的に前進させることにより、開状態(図3参照)のアーム部20を自己拡開力に抗して締め付けることができる。これにより、アーム部20は閉状態(図4参照)となる。また、締付リング30を弧状湾曲部21に対して相対的に後退させることでアーム部20は自己拡開力により開腕し開状態となる。
ただし、本発明において、例えば、一対のアーム部20のうちの一方のアーム部20が、例えば、締付部に対して固定されており、他方のアーム部20が選択的に一方のアーム部20に近づく方向に押圧されることによって閉状態となるように構成されていてもよい。
【0021】
また、本実施形態の場合、医療用クリップ10は、閉状態でシース81内に収容可能となっている。医療用クリップ10は、シース81の遠位端部内に収容された状態で体内における所望の部位に搬送される。そして、シース81の遠位端部が留置箇所に到達したら、医療用クリップ10をシース81の遠位端から突出(露出)させる。これにより、アーム部20は自己拡開力により開腕し開状態となる。
【0022】
シース81は、操作ワイヤ86を収容する長尺かつ管状の部材である。本実施形態の場合、シース81は、ステンレス線等の導電性ワイヤを密着巻回して作製された、金属製のコイルにより構成されている。ただし、シース81としては、金属製のコイルに代えて管状部材(チューブ)を用いてもよい。
本実施形態の場合、シース81の最遠位端部82には、一例として、金属の口金が取り付けられている。
また、施術者は、医療用クリップ10を回転させて、生体組織を挟持する向きを調節するときには、シース81に対して後述する指掛けリング92を回すことで操作ワイヤ86を回す。操作ワイヤ86には医療用クリップ10が係止されているため、医療用クリップ10の向きを調節できることになる。
【0023】
更に、図3図4及び図5に示すように、本実施形態の場合、内視鏡用クリップ装置100は、シース81の遠位端部において、締付リング30を保持可能な保持部材40と、径方向におけるシース81と保持部材40との間に配置されている伸縮部材89と、を備えている。なお、図3及び図4において、保持部材40を破線で図示している。
保持部材40は、例えば、軸方向において長尺な略円筒状に形成されている。
保持部材40の先端部42は、例えば、先端側に向けて四又に分岐している。同様に、保持部材40の基端部44は、例えば、基端側に向けて四又に分岐している。
保持部材40は、例えば、シース81内に収容される。シース81に収容されている間は、先端部42は縮径方向に弾性変形している。そして、操作ワイヤ86を遠位側に押し込むことによって、図4及び図5に示すように、先端部42は締付リング30に続いてシース81の遠位側の開口から外部に突出する。これにより、保持部材40の先端部42は、シース81による拘束から解放され拡径方向に弾性復元し、当該シース81の遠位端に対して係止される。この状態において、先端部42は、締付リング30の周方向における複数個所を保持する。これにより、締付リング30ひいては医療用クリップ10がシース81へ再収容されることが規制される。
【0024】
手元操作部90は、一対のアーム部20の開閉操作を行うためのものであり、内視鏡用クリップ装置100における近位側に配置されている。
手元操作部90は、例えば、操作ワイヤ86が挿通された軸部98と、この軸部98の近位端部に設けられた指掛けリング92と、操作ワイヤ86の近位端が連結されて軸部98に対して進退移動するスライダ94と、を備えている。操作ワイヤ86は軸部98に対して摺動可能に挿通されている。施術者は、指掛けリング92に例えば親指を挿入し、スライダ94を他の2本の指で挟んで軸部98の長手方向に沿って進退駆動する。これにより、操作ワイヤ86は手元操作部90に対して前進または後退する。シース81の近位端は手元操作部90に固定され、操作ワイヤ86はシース81に対して進退可能に挿通されているため、スライダ94の進退移動に連動して操作ワイヤ86の先端はシース81に対して前進または後退する。これにより、医療用クリップ10の係止部28(図1図5)が進退駆動されて、一対のアーム部20が開閉する。
【0025】
図4に示すように、操作ワイヤ86が近位側に牽引されると、一対のアーム部20が閉状態となる。逆に、図3に示すように、操作ワイヤ86が遠位側に押し出されると、一対のアーム部20が開状態となる。
【0026】
ここで、本実施形態の場合、粉末状の薬剤51が押し固められてアーム部20(本実施形態の場合、アーム部20の先端側部分22の外面)に配置されている。
これにより、医療用クリップ10を留置箇所に搬送する過程で、薬剤51がアーム部20から離脱してしまうことを抑制できる。
【0027】
より詳細には、アーム部20において、他方のアーム部20とは反対側を向く外面22aには、凹部26が形成されており、凹部26内に薬剤51を保持している。
これにより、アーム部20が、十分な量の薬剤51を離脱可能に保持することができる。
【0028】
更には、本実施形態の場合、ペースト状の保持剤56が薬剤51を覆う蓋となっている。
これにより、薬剤51が保持剤56によって蓋をされている状態においては、薬剤51がアーム部20から離脱してしまうことを抑制することができる。一方、保持剤56がアーム部20から離脱し薬剤51が露出すると、薬剤51はアーム部20又は保持剤56からに離脱するようにできる。すなわち、医療用クリップ10が留置位置に到達するまでは薬剤51が離脱することを抑制し、当該留置箇所に薬剤51をより確実に供給(デリバリー)することができる。
図6(a)、図6(b)及び図7等に示すように、本実施形態の場合、保持剤56は、薬剤51の表面上の略全体と薬剤51の外周囲とに亘って塗布されている。
より詳細には、保持剤56は、薬剤51の表面を覆っている覆い部56aと、薬剤51の表面から外側にはみ出しておりアーム部20の表面に付着している付着部56bと、を含む。図7に示すように、付着部56bは薬剤51の外周囲の全域を取り囲んでいる。
【0029】
また、本実施形態の場合、保持剤56は油脂である。
なお、ここでいう油脂は、36℃で固体の油脂が好ましい。
これにより、医療用クリップ10を留置箇所に搬送する過程で薬剤51が血液や体液などの水分と接触してしまうことを抑制できる。このような構成は、薬剤51が、例えば、上述のアルギン酸ナトリウムなどのように水分との接触により溶解し高い粘性を持つ薬剤である場合に有用である。
本発明において、油脂は、特に限定されないが、一例として、ワセリンである。
なお、図5図6(a)及び図6(b)では、保持剤56(油脂)が薬剤51の配置領域を覆うように局所的に塗布されている例を図示しているが、本発明において、保持剤56は、一対のアーム部20の弧状湾曲部21の外面(他のアーム部20と対向する面とは反対側の面)や締付リング30の内周面にも塗布されていてもよい。この場合、一対のアーム部20に対する締付リング30の摺動をスムーズにすることができる。
【0030】
より詳細には、図6(a)、図6(b)及び図7に示すように、アーム部20の先端側部分22の外面(他のアーム部20と対向する面とは反対側の面)には、当該先端側部分22の長手方向に延在する溝部が形成されており、当該溝部が薬剤51を保持する凹部26を構成している。
凹部26は、例えば、弧状湾曲部21の先端部から先端側部分22の先端部に亘って直線状に延在している。
図6(a)に示すように、凹部26は、例えば、アーム部20の内面22b側に向けて徐々に幅狭となっている。
凹部26の各寸法は、特に限定されないが、アーム部20の剛性を適度に確保することができる寸法に設定されていることが好ましい。
より詳細には、本実施形態の場合、凹部26の深さ寸法は、例えば、先端側部分22の厚み寸法の0.5倍以上2倍以下であることが好ましく、より好ましくは、先端側部分22の厚み寸法の1倍以上1.5倍以下である。
また、凹部26の幅寸法(延在方向に対して直交する方向における寸法)は、例えば、0.1mm以上1.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1mm以上0.4mm以下である。
凹部26の長さ寸法(延在方向における寸法)は、例えば、1.0mm以上7.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは2.0mm以上5.0mm以下である。
このような構成によれば、凹部26によって、生体組織を良好に把持できる程度のアーム部20の剛性を確保しつつ、当該アーム部20が内視鏡の屈曲の妨げとなってしまうことを抑制できる。
【0031】
また、図6(a)及び図6(b)等に示すように、本実施形態の場合、アーム部20において、他方のアーム部20とは反対側を向く外面22aには凹部26が形成され、アーム部に対して対向する面(内面22b)には凹部26と対応する凸部27が形成されている。
一対のアーム部20により生体組織を把持した状態では、アーム部20の内面22bに形成された凸部27が生体組織に対して密着するようにできる。
より詳細には、一対のアーム部20の内面22bにおいて、溝状の凹部26と対応する部位は、他方のアーム部20側に向けて突出した突条部が形成されており、当該突条部が凸部27を構成している。一対のアーム部20の長手方向に対して直交する断面(図6(a)参照)において、凸部27は、丸みを帯びたドーム状に形成されている。
凸部27の各寸法は、特に限定されないが、アーム部20の剛性を適度に確保することができる寸法に設定されていることが好ましい。
より詳細には、本実施形態の場合、凸部27の突出高さは、例えば、先端側部分22の厚み寸法の0.5倍以上2倍以下であることが好ましく、より好ましくは、先端側部分22の厚み寸法の1倍以上1.5倍以下である。
また、凸部27の幅寸法(延在方向に対して直交する方向における寸法)は、例えば、0.1mm以上1.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1mm以上0.4mm以下である。
凸部27の長さ寸法(延在方向における寸法)は、例えば、1.0mm以上7.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは2.0mm以上5.0mm以下である。
このような構成によれば、凸部27によって、生体組織を良好に把持できる程度のアーム部20の剛性を確保しつつ、当該アーム部20が内視鏡の屈曲の妨げとなってしまうことを抑制できる。
【0032】
本実施形態の場合、一対のアーム部20(アーム部20a及びアーム部20b)の各々が、薬剤51を保持している。すなわち、一対のアーム部20において、他方のアーム部20とは反対側を向く外面22aには、凹部26が形成されており、凹部26内に薬剤51を保持している。
ただし、本発明において、一対のアーム部20のうち一方のアーム部20が、選択的に薬剤51を保持していてもよい。
また、本発明において、アーム部20の外面22a及び内面22bのうち内面22bが、選択的に薬剤51を保持していてもよい。この場合、凹部26は、例えば、アーム部20の内面22bに形成されており、当該凹部26内に薬剤51を保持していてもよい。
また、本発明において、アーム部20の外面22a及び内面22bの両方が薬剤51を保持していてもよい。
【0033】
以下、内視鏡用クリップ装置100を用いて、医療用クリップ10を生体組織に結紮する際の動作の一例を説明する。
【0034】
医療用クリップ10は、初期状態において、一対のアーム部20の外周に締付リング30が装着された状態で、カートリッジ(不図示)に収容されている。そして、カートリッジに収容された医療用クリップ10の係止部28に対して、操作ワイヤ86の遠位端に接続されている連結部材88が係止されることにより、医療用クリップ10と操作ワイヤ86とが着脱可能に連結される。そして、医療用クリップ10は、連結部材88ひいては操作ワイヤ86によって近位側に牽引され、シース81の遠位端部内に収容される。
【0035】
続いて、医療用クリップ10がシース81の遠位端部に収容された状態で、内視鏡の鉗子孔を通じて生体内にシース81を進入させる。シース81の遠位端部が結紮を要する生体組織の近傍に到達したら、施術者は、スライダ94を遠位側に押し込み、操作ワイヤ86を遠位側へ押し出す。これにより、図3に示すように、医療用クリップ10は、シース81の遠位側の開口から突出し、その自己拡開力により自然に最大開口幅まで広がる。また、締付リング30は、保持部材40の先端部42によってシース81の先端から突出した状態が維持され、シース81への医療用クリップ10の再収容が規制される。
次に、医療用クリップ10を所望の向きで所望の位置に配置し、生体組織を把持した状態で当該医療用クリップ10を留置する。より詳細には、施術者は、スライダ94により操作ワイヤ86を近位側に牽引する。これにより、締付リング30はアーム部20に対して相対的に前進し、一対のアーム部20は開状態(図3参照)から閉状態(図4参照)となる。このようにして、一対のアーム部20によって生体組織を把持することができる。
そして、スライダ94を更に後退させることによって、係止部28と操作ワイヤ86との連結を解除する。より詳細には、操作ワイヤ86を近位側に更に牽引することによって、突片部28aが連結部材88の周面に乗り上がり、連結部材88から突片部28aに径方向外向きの荷重が加わる。この荷重により、突片部28aは、拡径変形することになる。この突片部28aの拡径変形により、連結部材88が係止部28から近位側に引き抜き可能となる。
このようにして、医療用クリップ10は操作ワイヤ86から分離され、生体組織を結紮した状態で体内に留置される。
ここで、本実施形態の場合、医療用クリップ10を留置した後、生理食塩水などの液体によって薬剤51を覆う保持剤56をすすぎ落とす。これにより、凹部26内に収容された薬剤51は当該凹部26から離脱し、生体組織に対して塗布又は散布される。更に、本実施形態の場合、上述のように薬剤51はアルギン酸ナトリウムである。このため、薬剤51(アルギン酸ナトリウム)は溶解し粘性を有する状態となり、生体組織の患部に対して広範囲且つ良好に密着するようにできる。
【0036】
〔第2実施形態〕
次に、図9及び図10を用いて第2実施形態を説明する。なお、図9は、図3に示すA-A線に相当する位置での切断端面図である。
本実施形態に係る医療用クリップ10は、以下に説明する点で、上記の第1実施形態に係る医療用クリップ10と相違しており、その他の点では、上記の第1実施形態に係る医療用クリップ10と同様に構成されている。
【0037】
本実施形態の場合も、第1実施形態と同様に、アーム部20において、他方のアーム部20とは反対側を向く外面22aには凹部26が形成され、アーム部20に対して対向する面(内面22b)には凹部26と対応する凸部27が形成されている。
ただし、本実施形態の場合、アーム部20が凸部27の縁において薬剤51を保持している点において第1実施形態と相違している。
上述のように、一対のアーム部20により生体組織を把持した状態では、アーム部20の内面22bに形成された凸部27が生体組織に対して密着するようにできる。
そして、本実施形態の場合、生体組織に対して密着する凸部27の縁において薬剤51が保持されているため、当該生体組織に対して薬剤51が良好に塗布されるようにできる。
【0038】
また、アーム部20に塗布された粉末状の薬剤51は、例えば、ペースト状の保持剤56でコーティングされている。
これにより、意図しないタイミングで、薬剤51がアーム部20の表面から離脱してしまうことをより確実に抑制できる。
より詳細には、図9及び図10に示すように、薬剤51は、例えば、内面22bにおいて、凸部27の外縁に沿って周回状に塗布されている。また、保持剤56も、薬剤51の表面を周回状に覆った状態でコーティングしている。
より詳細には、本実施形態の場合も、保持剤56は、例えば、薬剤51の表面を覆っている覆い部56aと、薬剤51の表面から外側にはみ出しておりアーム部20の表面(内面22b)に付着している付着部56bと、を含む。
【0039】
〔第3実施形態〕
次に、図11図12(a)及び図12(b)を用いて第3実施形態を説明する。なお、図11図12(a)及び図12(b)は、図6(a)に示すB-B線に相当する位置での断面図である。
本実施形態に係る医療用クリップ10は、以下に説明する点で、上記の第1、2実施形態に係る医療用クリップ10と相違しており、その他の点では、上記の第1、2実施形態に係る医療用クリップ10と同様に構成されている。
【0040】
本実施形態の場合、アーム部20の、締付部(本実施形態の場合、締付リング30)が摺動する表面が、薬剤51を保持している。なお、ここでいうアーム部20の表面とは、他のアーム部20と対向する面とは反対側の面(外面22a)である。
このような構成によれば、締付部(締付リング30)で一対のアーム部20を締め付ける際に、薬剤51が締付部によりこそげ落とされるようにできる。よって、医療用クリップ10の留置箇所において薬剤51をアーム部20から離脱させることが容易となる。
【0041】
より詳細には、本実施形態の場合、図11に示すように、薬剤51は、例えば、弧状湾曲部21において他方のアーム部とは反対側を向く外面22aに配置されており、薬剤51をペースト状の保持剤56が覆っている。そして、図12(a)及び図12(b)に示すように、締付部(締付リング30)で一対のアーム部20を締め付ける際に、保持剤56が締付部によりこそげ落とされる。
このような構成によれば、より確実に医療用クリップ10の留置箇所において、薬剤51をアーム部20から離脱させることが容易となる。
より詳細には、上述のように、医療用クリップ10を閉状態とする際には、締付リング30を、弧状湾曲部21に対して摺動しつつ前進させる。この際、締付リング30の先端部又は内周面によって、弧状湾曲部21の外面に配置された保持剤56ひいては薬剤51がこそぎ落とされる。このため、医療用クリップ10を閉状態とし生体組織を結紮する際に、薬剤51がアーム部20の表面から離脱するようにできる。
また、本実施形態の場合も、保持剤56は、例えば、薬剤51の表面を覆っている覆い部56aと、薬剤51の表面から外側にはみ出しておりアーム部20の表面に付着している付着部56bと、を含む。
【0042】
なお、本発明において、上述の第1及び第2実施形態においても、本実施形態のように、締付リング30で一対のアーム部20を締め付ける際に、保持剤56及び薬剤51が締付リング30によりこそげ落とされるように構成されていてもよい。この場合、例えば、一対のアーム部20において、締付リング30を、先端側部分22に対して摺動しつつ前進させることによって、凹部26に収容された薬剤51や凸部27の縁に配置された薬剤51をこそぎ落とすことができるように構成されている。
【0043】
〔第4実施形態〕
次に、図13(a)及び図13(b)を用いて第4実施形態を説明する。なお、図13(a)は、図6(a)に示すB-B線に相当する位置での断面図である。
本実施形態に係る医療用クリップ10は、以下に説明する点で、上記の第1~3実施形態に係る医療用クリップ10と相違しており、その他の点では、上記の第1~3実施形態に係る医療用クリップ10と同様に構成されている。
【0044】
本実施形態の場合、図13(a)及び図13(b)に示すように、アーム部20は、表裏を貫通する貫通孔61を有する板状に形成されており、貫通孔61内に薬剤51を保持している。
このような構成によっても、医療用クリップ10によって、所望の薬剤51を生体組織に対して良好に塗布又は散布することができる。
より詳細には、本実施形態の場合、貫通孔61が、アーム部20の先端側部分22に形成されている。貫通孔61は、例えば、先端側部分22の長手方向に沿って延在している。また、貫通孔61は、先端側部分22の内面と外面とを貫通している。
図13(a)及び図13(b)に示す例では、薬剤51は、例えば、貫通孔61の内側の間隙の全域に配置されている。ただし、本発明において、例えば、貫通孔61の基端部には薬剤51が配置されていない構成となっていてもよい。このようにすることによって、例えば、貫通孔61の基端部に対して操作ワイヤ86との連結用の糸部材(不図示)を係止することができる。
【0045】
また、本実施形態の場合、粉末状の薬剤51がペースト状の保持剤56に練り込まれてアーム部20の表面に塗布されている。
このような構成によっても、医療用クリップ10が留置位置に到達するまでは薬剤51が離脱することを抑制し、当該留置箇所に薬剤51をより確実に供給(デリバリー)することができる。
本実施形態の場合も、一例として、保持剤56は油脂(例えば、ワセリン)である。そして、例えば、第1実施形態と同様に、生理食塩水などの液体によってすすぎ落とすことによって、薬剤51は生体組織に対して塗布される。
【0046】
〔第5実施形態〕
次に、図14及び図15を用いて第5実施形態を説明する。
本実施形態に係る医療用クリップ10は、以下に説明する点で、上記の第1~4実施形態に係る医療用クリップ10と相違しており、その他の点では、上記の第1~4実施形態に係る医療用クリップ10と同様に構成されている。
【0047】
本実施形態の場合、アーム部20は、他方のアーム部20に対する対向面(内面22b)側に空洞63(図15参照)を有するカップ状に形成されており、空洞63内に薬剤51を保持している。
このような構成によっても、薬剤51をアーム部20によって離脱可能に良好に保持し、留置箇所において当該薬剤51を生体組織に対して塗布又は散布することができる。
【0048】
より詳細には、図14に示すように、アーム部20bの先端側部分22は、例えば、他のアーム部20aに向けて湾曲している。図15に示すように、先端側部分22の長手方向に対して直交する断面において、先端側部分22は、他のアーム部20aに向けて開放している略U字状に形成されている。また、本実施形態の場合、一例として、空洞63内に収容された薬剤51は、保持剤56によって蓋をされている。
【0049】
以上、図面を参照して各実施形態を説明したが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0050】
例えば、上記の各実施形態では、アーム部20が薬剤51を離脱可能に保持している例を説明したが、本発明において、締付部(例えば、締付部の表面)が薬剤51を離脱可能に保持していてもよい。
すなわち、本発明は、自然状態において先端側が開いた状態となる一対のアーム部20と、一対のアーム部20を締め付けて閉状態とする締付部(例えば、締付リング30)と、を備える医療用クリップ10であって、締付部が薬剤51を離脱可能に保持している医療用クリップ10を含む。
この場合、粉末状の薬剤51が押し固められて締付部に配置されていてもよい。
また、粉末状の薬剤51がペースト状の保持剤56に練り込まれて締付部に塗布されていてもよい。
また、締付部に塗布された粉末状の薬剤51が、ペースト状の保持剤56でコーティングされていてもよい。
【0051】
また、上記の各実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、適宜に組み合わせることができる。
【0052】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)自然状態において先端側が開いた状態となる一対のアーム部と、
前記一対のアーム部を締め付けて閉状態とする締付部と、
を備える医療用クリップであって、
前記アーム部又は前記締付部が薬剤を離脱可能に保持している医療用クリップ。
(2)前記薬剤は止血剤である(1)に記載の医療用クリップ。
(3)前記薬剤は粉末状である(1)又は(2)に記載の医療用クリップ。
(4)粉末状の前記薬剤が押し固められて前記アーム部又は前記締付部に配置されている(1)から(3)のいずれか一項に記載の医療用クリップ。
(5)粉末状の前記薬剤がペースト状の保持剤に練り込まれて前記アーム部又は前記締付部に塗布されている(1)から(3)のいずれか一項に記載の医療用クリップ。
(6)前記アーム部又は前記締付部に塗布された粉末状の前記薬剤が、ペースト状の保持剤でコーティングされている(1)から(3)のいずれか一項に記載の医療用クリップ。
(7)前記保持剤は油脂である(5)に記載の医療用クリップ。
(8)前記アーム部の、前記締付部が摺動する表面が、前記薬剤を保持している(1)から(7)のいずれか一項に記載の医療用クリップ。
(9)前記アーム部において、他方のアーム部とは反対側を向く外面には、凹部が形成されており、
前記凹部内に前記薬剤を保持している(1)から(8)のいずれか一項に記載の医療用クリップ。
(10)ペースト状の保持剤が前記薬剤を覆う蓋となっている(9)に記載の医療用クリップ。
(11)前記アーム部において、他方のアーム部とは反対側を向く外面には凹部が形成され、前記アーム部に対して対向する面には前記凹部と対応する凸部が形成されており、
前記凸部の縁において前記薬剤を保持している(1)から(10)のいずれか一項に記載の医療用クリップ。
(12)前記アーム部は板状に形成されており、
前記アーム部は、先端側に向けて他方のアーム部から離間する方向へ弧状に湾曲している弧状湾曲部と、前記弧状湾曲部の先端側に連接されている先端側部分と、前記先端側部分の先端側に連接されている爪状部と、を有し、
前記閉状態では前記一対のアーム部の前記爪状部が互いに当接するとともに前記先端側部分が互いに並列に延在し、
前記薬剤は、前記弧状湾曲部において他方のアーム部とは反対側を向く外面に配置されており、
前記薬剤をペースト状の保持剤が覆っており、
前記締付部で前記一対のアーム部を締め付ける際に、前記保持剤が前記締付部によりこそげ落とされる(1)から(11)のいずれか一項に記載の医療用クリップ。
(13)前記アーム部は、表裏を貫通する貫通孔を有する板状に形成されており、
前記貫通孔内に前記薬剤を保持している(1)から(12)のいずれか一項に記載の医療用クリップ。
(14)前記アーム部は、他方のアーム部に対する対向面側に空洞を有するカップ状に形成されており、
前記空洞内に前記薬剤を保持している(1)から(13)のいずれか一項に記載の医療用クリップ。
【符号の説明】
【0053】
10 医療用クリップ
20、20a、20b アーム部
21 弧状湾曲部
21a 外面
22 先端側部分
22a 外面
22b 内面
23 爪状部
26 凹部
27 凸部
28 係止部
28a 突片部
30 締付リング(締付部)
31 挿通孔
40 保持部材
42 先端部
44 基端部
51 薬剤
56 保持剤
56a 覆い部
56b 付着部
61 貫通孔
63 空洞(符号)
81 シース
82 最遠位端部
86 操作ワイヤ
88 連結部材
89 伸縮部材
90 手元操作部
92 指掛けリング
94 スライダ
98 軸部
100 内視鏡用クリップ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
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図15