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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094910
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】走行制御方法及び走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/08 20120101AFI20240703BHJP
   B60W 50/08 20200101ALI20240703BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240703BHJP
   A61B 5/18 20060101ALI20240703BHJP
   A61B 3/113 20060101ALI20240703BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20240703BHJP
   A61B 5/245 20210101ALI20240703BHJP
   A61B 5/372 20210101ALI20240703BHJP
   A61B 5/378 20210101ALI20240703BHJP
【FI】
B60W40/08
B60W50/08
G08G1/16 F
A61B5/18
A61B3/113
A61B10/00 E
A61B5/245
A61B5/372
A61B5/378
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211827
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】松下 詩穂
(72)【発明者】
【氏名】柳沼 基
【テーマコード(参考)】
3D241
4C038
4C127
4C316
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA01
3D241BA29
3D241BA70
3D241CE05
3D241DC41Z
3D241DD07A
3D241DD07B
3D241DD07Z
4C038PP03
4C038PQ04
4C038PR01
4C038PS00
4C038PS03
4C038PS07
4C127AA03
4C127AA10
4C127DD01
4C127GG15
4C316AA21
4C316AA30
4C316AB13
4C316FC28
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF05
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
5H181LL20
(57)【要約】
【課題】車両の周囲の障害物の視認に用いる視認補助機器によって運転者が車両の周囲を視認する必要がある運転タスクが発生した場合における車両の運転の安全性を向上する。
【解決手段】コントローラ20は、車両1の周囲の障害物の視認に用いる視認補助機器16から提示される像を視認する必要がある運転タスクが運転者に発生した時に、視認補助機器16から提示される像に対する運転者の認知負荷を判定する処理(S5)と、認知負荷が高すぎるか否かを判定する処理(S6)と、認知負荷が高すぎる場合に、車両1の自動運転制御若しくは運転支援制御を実行するか、自動運転制御若しくは運転支援制御の実行を提案する処理(S7)と、を実行する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周囲の障害物の視認に用いる視認補助機器から提示される像を視認する必要がある運転タスクが運転者に発生した時に、前記視認補助機器から提示される像に対する前記運転者の認知負荷を判定する処理と、
前記認知負荷が高すぎるか否かを判定する処理と、
前記認知負荷が高すぎる場合に、前記車両の自動運転制御若しくは運転支援制御を実行するか、前記自動運転制御若しくは前記運転支援制御の実行を提案する処理と、
をコントローラが実行することを特徴とする走行制御方法。
【請求項2】
前記コントローラは、前記運転者の視線の方向と前記視認補助機器の3次元位置情報とに基づいて前記運転者が前記視認補助機器を視認しているか否かを判定する処理を実行し、
前記運転者が前記視認補助機器を視認しているときの前記認知負荷を判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の走行制御方法。
【請求項3】
前記運転者の脳の背外側前頭前野の脳活動量に基づいて前記認知負荷を判定することを特徴とする請求項1に記載の走行制御方法。
【請求項4】
前記運転者の脳の前記背外側前頭前野の脳活動量の低下変化量が判別閾値を超える場合に、前記認知負荷が高すぎると判定することを特徴とする請求項3に記載の走行制御方法。
【請求項5】
機能的近赤外分光分析、脳波計、脳磁計又は脳電位計の少なくとも1つに基づいて前記背外側前頭前野の脳活動量を測定することを特徴とする請求項3に記載の走行制御方法。
【請求項6】
前記視認補助機器に応じて異なる前記判別閾値をデータベースに記憶し、
前記コントローラは、前記運転者が視認した前記視認補助機器に基づいて前記データベースから前記判別閾値を読み出して、前記脳活動量の低下変化量が前記判別閾値を超えるか否かを判定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の走行制御方法。
【請求項7】
前記運転者に応じて個人毎に前記判別閾値をデータベースに記憶し、
前記コントローラは、前記運転者の識別結果に基づいて前記データベースから前記判別閾値を読み出し、前記脳活動量の低下変化量が前記判別閾値を超えるか否かを判定し、前記データベースに記憶している前記判別閾値を、前記運転者に応じて個人毎に補正することを特徴とする請求項4に記載の走行制御方法。
【請求項8】
前記コントローラは、
前記運転者が、駐車運転が不得意な運転者であるか又は女性であるかを判定し、
駐車運転が不得意な前記運転者又は女性の前記運転者の前記認知負荷が高すぎる場合に、前記車両の自動運転制御若しくは運転支援制御を実行するか、自動運転制御若しくは運転支援制御の実行を提案する、
ことを特徴とする請求項1に記載の走行制御方法。
【請求項9】
前記運転タスクは、前記視認補助機器から提示される像に写った障害物と前記車両との間の相対的な前後方向位置を認知することを要する運転タスクであることを特徴とする請求項1に記載の走行制御方法。
【請求項10】
車両の周囲の障害物の視認に用いる視認補助機器から提示される像を視認する必要がある運転タスクが運転者に発生した時に、前記視認補助機器から提示される像に対する前記運転者の認知負荷を判定する処理と、前記認知負荷が高すぎるか否かを判定する処理と、前記認知負荷が高すぎる場合に、前記車両の自動運転制御若しくは運転支援制御を実行するか、自動運転制御若しくは運転支援制御の実行を提案する処理と、を実行するコントローラと、
を備えることを特徴とする走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行制御方法及び走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の車両制御装置は、乗員の生体情報に基づいて手動運転が困難であると判定すると、安否確認を車内に報知し、応答が無いと遠隔操作及び自動運転に切り替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-017083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の車両制御装置は、運転者が異常状態である場合のみに遠隔操作や自動運転に切り替える。しかしながら、運転者が異常状態でない状況であっても運転者にとって手動運転が困難であることがある。
例えば駐車運転や車線変更いった運転タスクは、車両の周囲の障害物の視認に用いる視認補助機器によって運転者が車両の周囲を視認することを要するため、運転者によっては過剰な負担となることがある。それにも関わらず手動運転を続けると運転の安全性が低下する虞がある。
本発明は、車両の周囲の障害物の視認に用いる視認補助機器によって運転者が車両の周囲を視認する必要がある運転タスクが発生した場合における車両の運転の安全性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様による走行制御方法では、車両の周囲の障害物の視認に用いる視認補助機器から提示される像を視認する必要がある運転タスクが運転者に発生した時に、視認補助機器から提示される像に対する運転者の認知負荷を判定する処理と、認知負荷が高すぎるか否かを判定する処理と、認知負荷が高すぎる場合に、車両の自動運転制御若しくは運転支援制御を実行するか、自動運転制御若しくは運転支援制御の実行を提案する処理と、をコントローラが実行する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、車両の周囲の障害物の視認に用いる視認補助機器によって運転者が車両の周囲を視認する必要がある運転タスクが発生した場合における車両の運転の安全性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の走行制御装置を備える車両の概略構成図である。
図2】画像内の複数の物体間の前後方向位置を認知する課題を与えられた時の運転者の背外側前頭前野の脳血流量の時間変化を示す図である。
図3】コントローラの機能構成の一例のブロック図である。
図4】第1実施形態の表示制御方法の一例のフローチャートである。
図5】第2実施形態の表示制御方法の一例のフローチャートである。
図6】第3実施形態の表示制御方法の一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下に示す本発明の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
(第1実施形態)
(構成)
実施形態の走行制御装置の一例の概略構成図である。車両1は、走行制御装置10を備える。走行制御装置10は、周囲環境センサ11と、車両センサ12と、測位装置13と、地図データベース(地図DB)14と、ナビゲーション装置15と、表示装置16aと、脳活動センサ17と、視認対象センサ18と、閾値データベース(閾値DB)19と、コントローラ20と、アクチュエータ21を備える。
【0010】
周囲環境センサ11は、車両1の周囲の周囲環境についての様々な情報(周囲環境情報)を検出する。例えば周囲環境センサ11は、車両1の周囲の歩行者、他車両、自転車などの移動物体や、信号機、交通標識、道路標示、路面上の線(停止線、車線境界線、車線区分線等)や、縁石、ガードレール等の静止物体を検出する。周囲環境センサ11は、これらの物体との相対位置や、距離、移動が存在する方向等を、車両1の周囲環境として検出し、検出した周囲環境の情報を周囲環境情報としてコントローラ20に出力する。
周囲環境センサ11は、車両1に搭載されたカメラ、レーザレーダやミリ波レーダ、LIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)など、車両1の周囲の物体を検出する複数の異なる種類の物体センサを備えてもよい。
【0011】
車両センサ12は、車両1に搭載され、車両1から得られる様々な車両情報を検出する。車両センサ12には、例えば、車両1の車速を検出する車速センサ、車両のタイヤの回転速度を検出する車輪速センサ、車両1の3軸方向の加速度及び減速度を検出する3軸加速度センサ、ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角センサ、操向輪の転舵角を検出する転舵角センサ、シフトノブやシフトレバー等、シフト位置(例えば、パーキング(P)、ドライブ(D)、リバース(R)等)を変更する部材の現在位置を検出するシフトポジションセンサ、車両1の角速度を検出するジャイロセンサ、ヨーレートを検出するヨーレートセンサ、車両1のアクセル開度を検出するアクセルセンサと、乗員によるブレーキ操作量を検出するブレーキセンサ、方向指示器レバーの操作状態を検出するスイッチなどが含まれる。
【0012】
測位装置13は、全地球型測位システム(GNSS)受信機を備え、複数の航法衛星から電波を受信して車両1の現在位置を測定する。GNSS受信機は、例えば地球測位システム(GPS)受信機等であってよい。測位装置13は、例えば慣性航法装置であってもよい。
地図データベース14は、高精度地図データとナビゲーション用の地図データ(以下「ナビゲーション地図データ」と表記することがある)を記憶している。
高精度地図データは、自動運転用の地図情報として好適な地図データであり、道路単位の情報よりも詳細な車線単位の情報を含む。車線単位の情報として、例えば高精度地図データは車線基準線(例えば車線内の中央の線)上の基準点を示す車線ノードの情報と、車線ノード間の車線の区間態様を示す車線リンクの情報などを含む。
ナビゲーション地図データは、道路単位の情報を含む。道路単位の情報として、例えばナビゲーション地図データは、道路基準線上の基準点を示す道路ノードの情報と、道路ノード間の道路の区間態様を示す道路リンクの情報と、道路周辺の施設(駐車場など)の情報を含む。
【0013】
ナビゲーション装置15は、測位装置13により車両1の現在位置を認識し、その現在位置におけるナビゲーション地図データを地図データベース14から取得する。ナビゲーション装置15は、乗員が入力した目的地までの目標走行経路を設定し、目標走行経路に従って乗員に経路案内を行う。
表示装置16aは、運転者が視認可能な位置に設けられて周囲環境センサ11のカメラによって撮影された車両1の周囲の画像を表示する。表示装置16aは、ルームミラー(又はバックミラー)16bやドアミラー(又はサイドミラー)16cに代えて又は加えて車両1の周囲の障害物の視認のために用いられる。
【0014】
例えば表示装置16aは、車両1の周囲のカメラ画像を表示するために用いられるバックビューモニター、リアビューモニター、サイドビューモニター、アラウンドビューモニター、シースルーAピラー、シースルーボンネット等であってよい。表示装置16aは、周囲環境センサ11のカメラによって撮影された3次元画像を表示可能なステレオディスプレイを備えていてもよい。
以下の説明において、表示装置16a、ルームミラー(又はバックミラー)16b、ドアミラー(又はサイドミラー)16cのように車両1の周囲の障害物の視認に用いる装置や器具を総称して「視認補助機器16」と表記することがある。
【0015】
脳活動センサ17は、運転者の脳活動を検出するセンサである。例えば脳活動センサ17は、運転者の脳波を検出する脳波センサや、脳磁場を検出する脳磁計、脳電位を検出する脳電位計であってよい。また、例えば機能的近赤外線分光法(fNIRS:functional Near-InfraRed Spectroscopy)により運転者の脳表面の活動状態を測定する脳機能イメ-ジング装置であってもよい。脳機能イメ-ジング装置の場合には、脳活動センサ17は、近赤外線の送光部と受光部を備えてもよい。脳活動センサ17は、検出した運転者の脳活動に関する脳活動データをコントローラ20に入力する。
【0016】
視認対象センサ18は、運転者が視認している対象物である視認対象を検出するために使用されるセンサである。例えば、視認対象センサ18は運転者の視点の3次元位置と視線の方向を計測する視線計測器であってよい。視認対象センサ18は運転者の視点の3次元位置と視線の方向を示す視線データをコントローラ20に入力する。
【0017】
コントローラ20は、車両1の走行状態を制御する電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)である。例えば、コントローラ20は、車両1の走行状態として手動運転モードと自動運転モードとを切り替える。コントローラ20は、手動運転モードと運転支援モードとを切り替えてもよい。
自動運転モードは、乗員が関与せずに車両1を自動で運転する自律走行制御が実行される走行状態であり、コントローラ20は、周囲環境センサ11が検出した周囲環境情報、車両センサ12が検出した車両情報、測位装置13が測定した車両1の現在位置、及び高精度地図データに基づいてアクチュエータ21を駆動して自律走行制御を実行する。
【0018】
一方で、運転支援モードは、コントローラ20が運転者に代わって車両1の操舵角、駆動力又は制動力の少なくとも1つを自動制御する運転支援制御が実行される走行状態であり、コントローラ20は、周囲環境情報や車両情報などに基づいてアクチュエータ21を駆動することにより、自動駐車制御、自動車線変更制御、車線維持制御、先行車追従制御、自動ブレーキ制御などを実行する。
【0019】
コントローラ20は、プロセッサ20aと、記憶装置20b等の周辺部品とを含む。プロセッサ20aは、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)であってよい。記憶装置20bは、半導体記憶装置や、磁気記憶装置、光学記憶装置等を備えてよい。記憶装置20bは、レジスタ、キャッシュメモリ、主記憶装置として使用されるROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリを含んでよい。
【0020】
以下に説明するコントローラ20の機能は、例えばプロセッサ20aが、記憶装置20bに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
なお、コントローラ20を以下に説明する各情報処理を実行するための専用のハードウエアにより形成してもよい。例えばコントローラ20は、汎用の半導体集積回路中に設定される機能的な論理回路を備えてもよい。コントローラ20はフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA:Field-Programmable Gate Array)等のプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD:Programmable Logic Device)等を有していてもよい。
【0021】
アクチュエータ21は、コントローラ20からの制御信号に応じて、車両1の操舵装置、アクセル開度及びブレーキ装置を操作して車両1の車両挙動を発生させる。アクチュエータ21は、ステアリングアクチュエータと、アクセル開度アクチュエータと、ブレーキ制御アクチュエータを備える。ステアリングアクチュエータは、車両1の操舵装置の操舵方向及び操舵量を制御する。アクセル開度アクチュエータは、車両1のアクセル開度を制御する。ブレーキ制御アクチュエータは、車両の1ブレーキ装置の制動動作を制御する。
【0022】
次に、コントローラ20による走行制御の一例を説明する。
運転者が車両1を運転する運転タスクには、視認補助機器16から提示される像を視認することを要するものがある。例えば、駐車運転や車線変更といった運転タスクでは、視認補助機器16から提示される像に写った障害物と車両1との間の相対的な前後方向位置を認知することが要求される。
【0023】
このような運転タスクが発生した場合、運転者によっては、視認補助機器16から提示される像から車両1と障害物との間の相対的な前後方向位置を認知する課題が難しすぎて過大な認知負荷となることがある。それにも関わらず手動運転を続けると運転の安全性が低下する虞がある。
例えば、駐車運転が苦手な運転者や女性ドライバーの場合には、視認補助機器16から提示される像を視認して駐車運転や車線変更を行う際の認知負荷が高くなる傾向がある。
【0024】
そこでコントローラ20は、視認補助機器16から提示される像を視認する必要がある運転タスクが運転者に発生した時に、視認補助機器16から提示される像に対する運転者の認知負荷が高すぎるか否かを判定する。認知負荷が高すぎると判定した場合に、車両1の自動運転制御若しくは運転支援制御を実行するか、自動運転制御若しくは運転支援制御の実行を提案する。
【0025】
視覚情報の認知・判断には、背外側前頭前野のワーキングメモリが使用されている。認知課題が難しすぎると、ワーキングメモリ機能が十分に発揮されず、認知課題の発生直後に背外側前頭前野の脳活動量が下がる。このため、運転タスクの発生時に背外側前頭前野の脳活動量の低下変化量が判別閾値を超えるか否かを判定することで、認知負荷が高すぎるか否かを判定できる。
【0026】
図2は、駐車運転が苦手な運転者グループに複数の物体が写った画像を提示して、これらの物体間の相対的な前後方向位置を認知する課題を与えたときに生じる、背外側前頭前野の脳血流量の時間変化を示す図である。背外側前頭前野の脳血流量は、機能的近赤外線分光法(fNIRS)を用いて酸化型ヘモグロビン(oxy-Hb)レベルを測定することによって検出した。実線及び破線は、運転者に与えられた画像がそれぞれ3次元画像及び2次元画像である場合の実験結果を示す。
駐車運転が苦手な運転者では、画像が提示された時点t0の直後に酸化型ヘモグロビンレベルが低下し(すなわち脳血流量や脳活動量が低下し)、その後の酸化型ヘモグロビンレベルの低下変化量Δが大きくなることが確認された。
【0027】
そこでコントローラ20は、視認補助機器16から提示される像を視認する必要がある運転タスクが運転者に発生した時に、視認補助機器16から提示される像を運転者が視認したか否かを判定する。
コントローラ20は、視認補助機器16から提示される像を運転者が視認した時点からの背外側前頭前野の脳活動量の低下変化量Δを測定する。
すなわち、視認補助機器16から提示される像を視認した時点における背外側前頭前野の脳活動量A0を、その後の背外側前頭前野の脳活動量A1から減算して得られる低下変化量Δ=A1-A0を測定する。
【0028】
コントローラ20は、低下変化量Δが判別閾値Thを超えるか否か、視認補助機器16から提示される像を運転者が視認した時点からすぐに判定し、低下変化量Δが判別閾値Thを超える場合に、視認補助機器から提示される像に対する運転者の認知負荷が高すぎると判定する。すなわちコントローラ20は、視認補助機器16から提示される像を運転者が視認したらすぐに、運転者の認知負荷が高すぎるか否かを判断する。例えば、コントローラ20は、視認補助機器16から提示される像を運転者が視認した時点から1秒間が経過するまでの間に、低下変化量Δに基づいて運転者の認知負荷が高すぎるか否かを判断してよい。低下変化量Δが判別閾値Th以内である場合に、視認補助機器から提示される像に対する運転者の認知負荷が高すぎないと判定する(例えば認知負荷が許容範囲内であると判定する)。
【0029】
認知負荷が高すぎると判定した場合に、コントローラ20は車両1の走行状態を手動運転モードから自動運転モード又は運転支援モードへ切り替える。
これに代えて、認知負荷が高すぎると判定した場合に車両1の走行状態を手動運転モードから自動運転モード又は運転支援モードへ切り替えることを提案してもよい。
【0030】
このように、運転者個人の認知負荷に合わせて、車両1の走行状態を自動運転モード又は運転支援モードへ切り替えることで、又は切り替えを提案することで、視認補助機器16によって運転者が車両1の周囲を視認する必要がある運転タスクが発生した場合における車両1の運転の安全性を向上できる。
【0031】
以下、コントローラ20の機能をより詳しく説明する。図3は、コントローラ20の機能構成の一例のブロック図である。コントローラ20は、脳活動解析部30と、運転タスク検出部31と、視認対象判定部32と、認知負荷判定部33と、走行状態制御部34を備える。
脳活動解析部30は、脳活動センサ17から出力される検出信号を解析して、運転者の脳の背外側前頭前野からの脳活動信号(例えばEEG(ElectroEncephaloGraphy)データ、MEG(Magnetoencephalography)データ、fNIRSデータ等)を検出する。脳活動解析部30は、検出した脳活動信号の強度に基づいて、運転者の脳の背外側前頭前野の脳活動量を判定する。例えば、fNIRSデータに基づいて背外側前頭前野の脳血流量が多いほど背外側前頭前野の脳活動量が大きいと判定し、脳血流量が少ないほど脳活動量が小さいと判定してよい。
【0032】
運転タスク検出部31は、視認補助機器16から提示される像を運転者が視認する必要がある運転タスク(以下、単に「運転タスク」と表記することがある)の発生を検出する。例えば運転タスク検出部31は、車両センサ12が検出した車両情報や、周囲環境センサ11が検出した周囲環境情報や、測位装置13が測定した車両1の現在位置、高精度地図データ、ナビゲーション地図データに基づいて運転タスクの発生を検出してよい。
【0033】
例えば運転タスク検出部31は、測位装置13が測定した車両1の現在位置に基づいて車両1が予め登録された目標駐車スペースの付近に位置することを検出してもよく、車両1の現在位置とナビゲーション地図データに基づいて、車両1が公共の駐車場内に位置することを検出してもよい。車両1が目標駐車スペースの付近や公共の駐車場内に位置しているときにシフトノブやシフトレバーの位置がパーキング(P)に切り替わった場合に、運転タスクの一例である駐車運転が開始したことを検出してもよい。
【0034】
また例えば運転タスク検出部31は、測位装置13が測定した車両1の現在位置と高精度地図データに基づいて、又は周囲環境センサ11が検出した周囲環境情報に基づいて、車両1が走行する走行車線と同一進行方向の隣接車線が存在しているか否かを判定してもよい。そして、このような隣接車線へ向かう方向に方向指示器レバーが操作された場合に、運転タスクの一例である車線変更が開始したことを検出してもよい。
【0035】
視認対象判定部32は、視認補助機器16の既知の3次元位置情報と、運転者の視点の3次元位置と、視線の方向に基づいて、運転者の視線が視認補助機器16に向けられているかを判定してよい。運転者の視線が視認補助機器16に向けられている場合に、運転者の視認対象が視認補助機器16であると判定してよい。言い換えれば、視認補助機器16から提示される像を運転者が視認していると判定してよい。
【0036】
なお視認対象判定部32は、運転者の視線が視認補助機器16に向けられているか否かに加えて、運転者の注意状態を判定してもよい。例えば視認対象判定部32は、運転者の眼球運動を計測することにより、サッケード運動の終了時刻である眼球停留開始時刻を検出してよい。運転者の眼球運動は、例えば視認対象センサ18が出力する視線データに基づいて計測してもよく、EOG(electro-oculography)法に基づいて検出してもよい。
そして視認対象判定部32は、眼球停留開始時刻を起点に運転者の脳波を切り出してことによりEFRP(Eye Fixation related Potential:眼球停留関連電位)波形を抽出して、抽出したEFRP波形を解析する。
【0037】
EFRP波形を解析する時間的区間である解析区間は、複数の部分区間に分割されている。視認対象判定部32は、抽出されたEFRP波形が、どの各部分区間に含まれるかを特定する。ある部分区間に分類されたEFRPが複数の場合には、視認対象判定部32は、部分区間ごとにEFRPを加算平均する。視認対象判定部32は、部分区間ごとのEFRPに基づき、部分区間ごとに運転者の注意状態を判別する。例えば、EFRPのラムダ反応の振幅値と閾値との比較により、運転者が集中しているか否かを判定してよい。
【0038】
視認対象判定部32は、運転者の視線が視認補助機器16に向けられており、且つ運転者が集中している注意状態である場合、運転者の視認対象が視認補助機器16であると判定してよい。
なお、車内に複数の視認補助機器16が設けられている場合には、視認対象判定部32は、複数の視認補助機器16のうちどの表示装置が運転者の視認対象であるかを判定してもよい。
【0039】
認知負荷判定部33は、脳活動解析部30が判定した背外側前頭前野の脳活動量に基づいて、運転タスクが運転者に発生した時に、視認補助機器16から提示される像に対する運転者の認知負荷が高すぎるか否かを判定する。
例えば認知負荷判定部33は、運転タスク検出部31が運転タスクの発生を検出したときに、運転者が視認補助機器16を視認しているか否かを判定する。すなわち視認補助機器16から提示される像を運転者が視認しているか否かを判定する。
【0040】
認知負荷判定部33は、運転タスク検出部31が運転タスクの発生を検出してから、運転者が視認補助機器16を視認していることを最初に検出した時点における背外側前頭前野の脳活動量A0を、その後の背外側前頭前野の脳活動量A1から減算して得られる低下変化量Δ=A1-A0を測定する。
認知負荷判定部33は、背外側前頭前野の脳活動量の低下変化量Δが判別閾値Thを超えるか否かを判定する。低下変化量Δが判別閾値Thを超える場合に、視認補助機器16から提示される像に対する運転者の認知負荷が高すぎると判定する。低下変化量Δが判別閾値Th以内である場合に、認知負荷が高すぎない(例えば認知負荷が許容範囲内であると判定する)。
【0041】
走行状態制御部34は、認知負荷が高すぎると判定した場合に、車両1の走行状態を手動運転モードから自動運転モード又は運転支援モードへ切り替える。なお自動運転モードにおいて実行される自動運転制御は、車両1が停止した状態を保持する制御を含んでもよい。すなわち、走行状態制御部34は、認知負荷が高すぎると判定した場合に自動的に車両1を停車させてもよい。
これに代えて、認知負荷が高すぎると判定した場合に車両1の走行状態を手動運転モードから自動運転モード又は運転支援モードへ切り替えることを提案してもよい。
【0042】
例えば車両1の走行状態を手動運転モードから自動運転モード又は運転支援モードへ切り替えることを促す視覚的信号(例えば画像メッセージや警告灯の表示)や、聴覚的信号(例えば音声メッセージや警報音)を、図示しないユーザインタフェースから出力してもよい。
認知負荷が高すぎないと判定した場合に、走行状態制御部34は、車両1の手動運転モードを継続する。また、手動運転モードから自動運転モード又は運転支援モードへの切り替えの提案を出力しない。
【0043】
(作用)
図4は、第1実施形態の表示制御方法の一例のフローチャートである。
ステップS1において運転タスク検出部31は、視認補助機器16から提示される像を運転者が視認する必要がある運転タスクが発生したか否かを判定する。運転タスクが発生した場合(ステップS1:Y)に処理はステップS2へ進む。運転タスクが発生しない場合(ステップS1:N)に処理はステップS8へ進む。
ステップS2において脳活動センサ17は、運転者の脳活動を検出する。
ステップS3において視認対象センサ18は、運転者の視点の3次元位置と視線の方向を計測する。
【0044】
ステップS4において視認対象判定部32は、運転者が視認補助機器16を視認したか否かを判定する。運転者が視認補助機器16を視認した場合(ステップS4:Y)に処理はステップS5へ進む。運転者が視認補助機器16を視認しない場合(ステップS4:N)に処理はステップS8へ進む。
ステップS5において脳活動解析部30は、運転者の脳の背外側前頭前野の脳活動量を測定する。
【0045】
ステップS6において認知負荷判定部33は、背外側前頭前野の脳活動量の低下変化量Δが判別閾値Th以内であるか否かを判定する。例えば、認知負荷判定部33は、ステップS4において運転者が視認補助機器16を視認したと判定されたらすぐに低下変化量Δが判別閾値Th以内であるか否かを判定する。例えば、運転者が視認補助機器16を視認したと判定された時点から1秒間が経過するまでの間に、低下変化量Δが判別閾値Th以内であるか否かを判定する。低下変化量Δが判別閾値Th以内である場合(ステップS6:Y)に処理はステップS8へ進む。低下変化量Δが判別閾値Thを超える場合(ステップS6:N)に処理はステップS7へ進む。
ステップS7において走行状態制御部34は、車両1の走行状態を手動運転モードから自動運転モード又は運転支援モードへ切り替える。または、手動運転モードから自動運転モードや運転支援モードへの切り替えを提案する。その後に処理はステップS8へ進む。
ステップS8においてコントローラ20は、車両のイグニションキーがオフに切り替わったか否かを判定する。イグニションキーがオフに切り替わってない場合(ステップS8:N)に処理はステップS1へ戻る。イグニションキーがオフに切り替わった場合(ステップS8:Y)に処理は終了する。
【0046】
(第2実施形態)
第2実施形態のコントローラ20は、車両1の運転者が、駐車運転が不得意な運転者であるか又は女性であるかを判定する。
例えばコントローラ20は、運転者が駐車運転を行う度に、駐車終了時における駐車枠に対する車両の角度や位置の正確さを測定してよい。また、駐車に要する所要時間や切替し回数を測定してよい。コントローラ20は、これらの想定結果に基づいて、駐車運転が得意な運転者であるか否かを判定し、判定結果を記憶装置20bに記憶してよい。
【0047】
また運転者が女性であるか否かは、予めディーラーや運転者が走行制御装置10に入力し、記憶装置20bに記憶してよい。
コントローラ20は、駐車運転が不得意な運転者や女性の運転者に運転タスクが発生したときの視認補助機器16から提示される像に対する認知負荷が高すぎる場合に、車両1の自動運転制御若しくは運転支援制御を実行するか、自動運転制御若しくは運転支援制御の実行を提案する。
【0048】
図5は、第2実施形態の表示制御方法の一例のフローチャートである。
ステップS10において走行状態制御部34は、駐車運転が不得意な運転者であるか否かを判定する。駐車運転が不得意な運転者である場合(ステップS10:Y)に処理はステップS12へ進む。駐車運転が不得意な運転者でない場合(ステップS10:N)に処理はステップS11へ進む。
【0049】
ステップS11において走行状態制御部34は、運転者が女性であるか否かを判定する。運転者が女性である場合(ステップS11:Y)に処理はステップS12へ進む。運転者が女性でない場合(ステップS11:N)に処理はステップS19へ進む。
ステップS12~S19の処理は、図4のステップS1~S8の処理と同様である。
【0050】
(第3実施形態)
第3実施形態における認知負荷判定部33は、運転タスクにおいて運転者が視認する視認補助機器16に応じて認知負荷の判別閾値Thを変更する。
図1を参照する。閾値データベース19は、視認補助機器16毎に異なる判別閾値Thを記憶するデータベースである。
【0051】
閾値データベース19は、例えば、SRAM(Static Random Access Memory)等を含む小容量の高速メモリ(例えば、キャッシュメモリ)等を用いて形成されている。また、閾値データベース19は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の固定ストレージ手段やネットワーク上のクラウド等を用いて形成されていてよい。
【0052】
例えば、判別閾値Thは、複数の視認補助機器16(例えば、バックビューモニター、リアビューモニター、サイドビューモニター、アラウンドビューモニター、シースルーAピラー、シースルーボンネットといった表示装置16aや、ルームミラー(又はバックミラー)16b、ドアミラー(又はサイドミラー)16c)のうち、どの視認補助機器16を運転者が視認するかに応じて異なる値に設定されていてよい。
【0053】
また、第3実施形態における認知負荷判定部33は、運転席に着座している運転者を識別し、運転者に応じて判別閾値Thを個人毎に補正する。走行状態制御部34は、運転席に着座している運転者を、車内の撮影画像や、車両の動力源(エンジン、モータ)を始動させるキー等に固有のID番号等を用いて識別してよい。
閾値データベース19は、運転者毎に、個々の運転者用にそれぞれ補正した判別閾値Thを記憶する。閾値データベース19は、運転者の個人毎に且つ視認補助機器16毎に異なる複数の判別閾値Thを記憶してよい。
【0054】
運転者の認知負荷が過大であるか否かを判定する際に、認知負荷判定部33は、運転者の視認対象の視認補助機器16と運転者の識別結果とに基づいて、閾値データベース19から、運転者と視認補助機器16とに対応する判別閾値Thを読み出す。認知負荷判定部33は、運転者の背外側前頭前野の脳活動量の低下変化量Δが判別閾値Thを超える場合に認知負荷が過大であると判定する、一方で、低下変化量Δが判別閾値Th以内である場合に認知負荷が過大でないと判定する。
【0055】
また、認知負荷判定部33は、認知負荷の判定結果に基づいて、当該運転者用に閾値データベース19に記憶している判別閾値Thを補正する。例えば、低下変化量Δが判別閾値Thを超えた場合には、認知負荷判定部33は、閾値データベース19に記憶している判別閾値Thをより高い値に補正してよい。また例えば低下変化量Δが判別閾値Th以下の場合には、認知負荷判定部33は、閾値データベース19に記憶している判別閾値Thをより低い値に補正してよい。
【0056】
図6は、第3実施形態の表示制御方法の一例のフローチャートである。ステップS20~ステップS24の処理は、図4のステップS1~S5の処理と同様である。
ステップS25において走行状態制御部34は、運転者の視認対象の視認補助機器16と運転者の識別結果とに基づいて、閾値データベース19から判別閾値Thを読み出す。
ステップS26において認知負荷判定部33は、背外側前頭前野の脳活動量の低下変化量Δが判別閾値Th以内であるか否かを判定する。低下変化量Δが判別閾値Th以内である場合(ステップS26:Y)に処理はステップS29へ進む。低下変化量Δが判別閾値Thを超える場合(ステップS26:N)に処理はステップS27へ進む。
【0057】
ステップS27において走行状態制御部34は、車両1の走行状態を手動運転モードから自動運転モード又は運転支援モードへ切り替える。または、手動運転モードから自動運転モードや運転支援モードへの切り替えを提案する。
ステップS28において認知負荷判定部33は、閾値データベース19に記憶している判別閾値Thをより高い値に補正する。その後に処理はステップS30へ進む。
【0058】
ステップS29において認知負荷判定部33は、閾値データベース19に記憶している判別閾値Thをより低い値に補正する。その後に処理はステップS30へ進む。
ステップS30においてコントローラ20は、車両のイグニションキーがオフに切り替わったか否かを判定する。イグニションキーがオフに切り替わってない場合(ステップS30:N)に処理はステップS20へ戻る。イグニションキーがオフに切り替わった場合(ステップS30:Y)に処理は終了する。
【0059】
(実施形態の効果)
(1)コントローラ20は、車両1の周囲の障害物の視認に用いる視認補助機器16から提示される像を視認する必要がある運転タスクが運転者に発生した時に、視認補助機器16から提示される像に対する運転者の認知負荷を判定する処理と、認知負荷が高すぎるか否かを判定する処理と、認知負荷が高すぎる場合に、車両1の自動運転制御若しくは運転支援制御を実行するか、自動運転制御若しくは運転支援制御の実行を提案する処理と、を実行する。
このように、運転者個人の認知負荷に合わせて、車両1の走行状態を自動運転モード又は運転支援モードへ切り替えることで、又は切り替えを提案することで、視認補助機器16によって運転者が車両1の周囲を視認する必要がある運転タスクが発生した場合における車両1の運転の安全性を向上できる。
【0060】
(2)コントローラ20は、運転者の視線の方向と視認補助機器16の3次元位置情報とに基づいて運転者が視認補助機器16を視認しているか否かを判定する処理を実行し、運転者が視認補助機器16を視認しているときの認知負荷を判定してよい。
これにより、視認補助機器16から提示される像に対する運転者の認知負荷の測定精度を向上できる。
【0061】
(3)運転者の脳の背外側前頭前野の脳活動量に基づいて認知負荷を判定してよい。例えば、運転者の脳の背外側前頭前野の脳活動量の低下変化量が判別閾値を超える場合に、認知負荷が高すぎると判定してよい。
これにより、運転者の認知負荷が高すぎるか否かを判定する精度が向上する。
【0062】
(4)機能的近赤外分光分析、脳波計、脳磁計又は脳電位計の少なくとも1つに基づいて背外側前頭前野の脳活動量を測定してよい。
これにより、運転者の認知負荷の測定精度を向上できる。
【0063】
(5)視認補助機器16に応じて異なる判別閾値をデータベースに記憶してよい。コントローラ20は、運転者が視認した視認補助機器16に基づいてデータベースから判別閾値を読み出して、脳活動量の低下変化量が判別閾値を超えるか否かを判定してよい。
これにより、視認補助機器16の違いに応じて運転者の認知負荷が過大であるか否かを判別できる。
【0064】
(6)運転者に応じて個人毎に判別閾値をデータベースに記憶してよい。コントローラ20は、運転者の識別結果に基づいてデータベースから判別閾値を読み出し、脳活動量の低下変化量が判別閾値を超えるか否かを判定し、データベースに記憶している判別閾値を、運転者に応じて個人毎に補正してもよい。
これにより、運転者の個人差に応じて運転者の認知負荷が過大であるか否かを判別できる。
【0065】
(7)コントローラ20は、運転者が、駐車運転が不得意な運転者であるか又は女性であるかを判定し、駐車運転が不得意な運転者又は女性の運転者の認知負荷が高すぎる場合に、車両1の自動運転制御若しくは運転支援制御を実行するか、自動運転制御若しくは運転支援制御の実行を提案してもよい。
これにより、運転者の属性に応じて認知負荷が高すぎる場合の運転支援を実現できる。
【0066】
(8)運転タスクは、視認補助機器16から提示される像に写った障害物と車両1との間の相対的な前後方向位置を認知することを要する運転タスクであってよい。
これにより、視認補助機器16を用いて障害物と車両1との間の相対的な前後方向位置を認知することを要する運転の安全性を向上できる。
【符号の説明】
【0067】
1…車両、10…走行制御装置、11…周囲環境センサ、12…車両センサ、13…測位装置、14…地図データベース、15…ナビゲーション装置、16…視認補助機器、16a…表示装置、16b…ルームミラー、16c…ドアミラー、17…脳活動センサ、18…視認対象センサ、19…閾値データベース、20…コントローラ、20a…プロセッサ、20b…記憶装置、21…アクチュエータ、30…脳活動解析部、31…運転タスク検出部、32…視認対象判定部、33…認知負荷判定部、34…走行状態制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6