(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094912
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】排ガス脱硝装置
(51)【国際特許分類】
B63H 21/32 20060101AFI20240703BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20240703BHJP
F02B 3/06 20060101ALI20240703BHJP
B63H 21/38 20060101ALI20240703BHJP
B63B 25/16 20060101ALI20240703BHJP
B63H 21/14 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B63H21/32 Z
F01N3/08 B
F02B3/06 B
B63H21/38 B
B63B25/16 A
B63H21/38 C
B63H21/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211831
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】303047034
【氏名又は名称】株式会社ジャパンエンジンコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 貴裕
【テーマコード(参考)】
3G023
3G091
【Fターム(参考)】
3G023AA05
3G023AC06
3G091AA04
3G091AA15
3G091AA18
3G091AA21
3G091AB05
3G091BA14
3G091CA01
3G091CA17
3G091DB10
3G091EA17
3G091EA22
3G091FB02
(57)【要約】
【課題】装置規模を小型化することができる排ガス脱硝装置を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様である排ガス脱硝装置は、舶用ディーゼルエンジンの燃焼室に燃料として噴射されるアンモニアを収容したアンモニア供給源と連通し、前記アンモニア供給源からのアンモニアを流通させる供給管と、前記舶用ディーゼルエンジンから排出された排ガスと、前記供給管から供給されたアンモニアとを混合する混合器と、前記アンモニアが混合された前記排ガスを脱硝する反応器と、前記混合器に供給されるアンモニアの流量を調整する流量調整弁と、前記流量調整弁によって調整されたアンモニアの流量を検出する流量センサと、前記舶用ディーゼルエンジンのエンジン負荷と前記流量センサによる前記アンモニアの流量検出値とをもとに、前記流量調整弁の開度を制御する制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
舶用ディーゼルエンジンの燃焼室に燃料として噴射されるアンモニアを収容したアンモニア供給源と連通し、前記アンモニア供給源からのアンモニアを流通させる供給管と、
前記舶用ディーゼルエンジンから排出された排ガスと、前記供給管から供給されたアンモニアとを混合する混合器と、
前記アンモニアが混合された前記排ガスを脱硝する反応器と、
前記混合器に供給されるアンモニアの流量を調整する流量調整弁と、
前記流量調整弁によって調整されたアンモニアの流量を検出する流量センサと、
前記舶用ディーゼルエンジンのエンジン負荷と前記流量センサによる前記アンモニアの流量検出値とをもとに、前記流量調整弁の開度を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする排ガス脱硝装置。
【請求項2】
前記供給管は、前記舶用ディーゼルエンジンのシリンダに設けられた燃料噴射弁を介して前記燃焼室に燃料としてアンモニアを噴射するためのアンモニア燃料ポンプを有する燃料噴射系統から分岐する、
ことを特徴とする請求項1に記載の排ガス脱硝装置。
【請求項3】
前記舶用ディーゼルエンジンのエンジン回転数およびエンジン負荷をもとに、前記舶用ディーゼルエンジンの1燃焼サイクル当りに前記燃焼室に燃料として噴射されるアンモニアの噴射量と、前記排ガスの脱硝に必要なアンモニアの供給量とを算出し、前記噴射量と前記供給量との合計量分のアンモニアを吐出するように、前記アンモニア燃料ポンプを制御する制御部をさらに備え、
前記供給管は、前記アンモニア燃料ポンプと前記燃料噴射弁とを連通する連通管から分岐する、
ことを特徴とする請求項2に記載の排ガス脱硝装置。
【請求項4】
前記流量調整弁は、前記アンモニア燃料ポンプと前記燃料噴射弁とを連通する連通管から前記供給管を分岐させるように設けられ、
前記制御部は、前記舶用ディーゼルエンジンのエンジン回転数およびエンジン負荷をもとに、前記舶用ディーゼルエンジンの1燃焼サイクル当りに前記燃焼室に燃料として噴射されるアンモニアの噴射量と、前記排ガスの脱硝に必要なアンモニアの供給量とを算出し、前記噴射量と前記供給量との合計量分のアンモニアを吐出するように、前記アンモニア燃料ポンプを制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の排ガス脱硝装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記エンジン負荷と前記アンモニアの流量検出値とをもとに、前記流量調整弁の前記供給管側の開度を制御し、前記噴射量に応じて前記流量調整弁の前記燃料噴射弁側の開度を制御する、
ことを特徴とする請求項4に記載の排ガス脱硝装置。
【請求項6】
前記供給管内のアンモニアを加熱する加熱部と、
前記加熱部による加熱後のアンモニアの温度を検出する温度センサと、
を備え、
前記加熱部は、前記温度センサによるアンモニアの温度検出値が所定の基準温度以上となるように、前記供給管内のアンモニアを加熱する、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の排ガス脱硝装置。
【請求項7】
前記反応器による脱硝後の前記排ガスに含まれるガス成分量を検出する排ガスセンサをさらに備え、
前記排ガスの脱硝に必要なアンモニアの供給量は、前記排ガスセンサによる前記ガス成分量の検出値をもとに補正される、
ことを特徴とする請求項3~5のいずれか一つに記載の排ガス脱硝装置。
【請求項8】
前記アンモニア供給源に収容されたアンモニアの圧力は、前記流量調整弁によって調整された流量のアンモニアを前記混合器に供給するに必要な圧力以上である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の排ガス脱硝装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舶用ディーゼルエンジンに適用される排ガス脱硝装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶の分野においては、舶用ディーゼルエンジンから排出される排ガス中の窒素酸化物を低減する(すなわち排ガスを脱硝する)排ガス脱硝装置が提案されている。一般に、舶用ディーゼルエンジンは、重油または軽油等の化石燃料をシリンダ内の燃焼室に噴射して燃焼させ、これによる燃焼エネルギーを利用して駆動する。排ガス脱硝装置は、尿素水やアンモニア水等の還元剤と舶用ディーゼルエンジンから排出された排ガスとを混合し、排ガス中の窒素酸化物の還元反応により、排ガスを脱硝する。
【0003】
このような排ガス脱硝装置には、還元剤を収容する還元剤タンクをはじめ、還元剤タンクから配管内へ還元剤を圧送する還元剤ポンプ、排ガス中に還元剤を噴霧して混合する混合器、および排ガス中の窒素酸化物を還元反応によって除去する反応器等の設備が必要になる。また、排ガス脱硝装置には、排ガス中に噴霧する還元剤の流量を、舶用ディーゼルエンジンの回転数または負荷等の情報に応じて調整するドージングユニットが設けられている。
【0004】
なお、排ガスを脱硝するための従来技術としては、例えば、舶用ディーゼルエンジンのシリンダ内に噴射した化石燃料の燃焼後期において、このシリンダ内にアンモニア発生物質を噴射し、化石燃料の燃焼によって生成された窒素酸化物を、当該アンモニア発生物質との反応によって窒素と水とに分解するものが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、船舶の分野においては、舶用ディーゼルエンジンから排出される温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)の排出量を削減する手法の1つとして、アンモニア混焼技術を採用した舶用ディーゼルエンジン(アンモニア燃焼エンジン)が検討されている。アンモニア混焼技術は、舶用燃料として採用されている従来の化石燃料と、燃焼しても二酸化炭素(GHGの1つ)が発生しない燃料としてのアンモニアとを、舶用ディーゼルエンジンの燃焼室に噴射して一緒に燃焼させるものである。これにより、舶用ディーゼルエンジンからの排ガスに含まれる二酸化炭素の含有量(すなわち二酸化炭素の排出量)を削減することができる。
【0007】
このようなアンモニア混焼技術を採用した舶用ディーゼルエンジンを船舶内に搭載する場合、燃料としてのアンモニアを高圧の状態で収容したアンモニア燃料タンクを船舶内に設置し、アンモニア燃料タンクから舶用ディーゼルエンジンの燃焼室へ当該アンモニアが供給されるように、供給管を配管する必要がある。また、舶用ディーゼルエンジンからの排ガスを脱硝するために、上述した排ガス脱硝装置を舶用ディーゼルエンジンに設ける場合、還元剤タンクをはじめ、排ガス脱硝装置を構成する各設備を船舶内に配置する必要がある。特に、舶用ディーゼルエンジン用のアンモニア燃料タンクに加え、排ガス脱硝装置用の還元剤タンクという、2台の大型タンクを船舶内に設置することになる。
【0008】
したがって、船舶内の機関室等の設置スペースに占める舶用ディーゼルエンジンおよび排ガス脱硝装置の装置規模が大型化するという問題が生じる。当該装置規模の大型化は、船舶内への舶用ディーゼルエンジンおよび排ガス脱硝装置の設置に要するコストおよび時間の増大につながる場合がある。このため、船舶の分野においては、舶用ディーゼルエンジンに設けられる排ガス脱硝装置の装置規模を小型化することが要望されている。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、装置規模を小型化することができる排ガス脱硝装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る排ガス脱硝装置は、舶用ディーゼルエンジンの燃焼室に燃料として噴射されるアンモニアを収容したアンモニア供給源と連通し、前記アンモニア供給源からのアンモニアを流通させる供給管と、前記舶用ディーゼルエンジンから排出された排ガスと、前記供給管から供給されたアンモニアとを混合する混合器と、前記アンモニアが混合された前記排ガスを脱硝する反応器と、前記混合器に供給されるアンモニアの流量を調整する流量調整弁と、前記流量調整弁によって調整されたアンモニアの流量を検出する流量センサと、前記舶用ディーゼルエンジンのエンジン負荷と前記流量センサによる前記アンモニアの流量検出値とをもとに、前記流量調整弁の開度を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る排ガス脱硝装置は、上記の発明において、前記供給管は、前記舶用ディーゼルエンジンのシリンダに設けられた燃料噴射弁を介して前記燃焼室に燃料としてアンモニアを噴射するためのアンモニア燃料ポンプを有する燃料噴射系統から分岐する、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る排ガス脱硝装置は、上記の発明において、前記舶用ディーゼルエンジンのエンジン回転数およびエンジン負荷をもとに、前記舶用ディーゼルエンジンの1燃焼サイクル当りに前記燃焼室に燃料として噴射されるアンモニアの噴射量と、前記排ガスの脱硝に必要なアンモニアの供給量とを算出し、前記噴射量と前記供給量との合計量分のアンモニアを吐出するように、前記アンモニア燃料ポンプを制御する制御部をさらに備え、前記供給管は、前記アンモニア燃料ポンプと前記燃料噴射弁とを連通する連通管から分岐する、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る排ガス脱硝装置は、上記の発明において、前記流量調整弁は、前記アンモニア燃料ポンプと前記燃料噴射弁とを連通する連通管から前記供給管を分岐させるように設けられ、前記制御部は、前記舶用ディーゼルエンジンのエンジン回転数およびエンジン負荷をもとに、前記舶用ディーゼルエンジンの1燃焼サイクル当りに前記燃焼室に燃料として噴射されるアンモニアの噴射量と、前記排ガスの脱硝に必要なアンモニアの供給量とを算出し、前記噴射量と前記供給量との合計量分のアンモニアを吐出するように、前記アンモニア燃料ポンプを制御する、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る排ガス脱硝装置は、上記の発明において、前記制御部は、前記エンジン負荷と前記アンモニアの流量検出値とをもとに、前記流量調整弁の前記供給管側の開度を制御し、前記噴射量に応じて前記流量調整弁の前記燃料噴射弁側の開度を制御する、ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る排ガス脱硝装置は、上記の発明において、前記供給管内のアンモニアを加熱する加熱部と、前記加熱部による加熱後のアンモニアの温度を検出する温度センサと、を備え、前記加熱部は、前記温度センサによるアンモニアの温度検出値が所定の基準温度以上となるように、前記供給管内のアンモニアを加熱する、ことを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る排ガス脱硝装置は、上記の発明において、前記反応器による脱硝後の前記排ガスに含まれるガス成分量を検出する排ガスセンサをさらに備え、前記排ガスの脱硝に必要なアンモニアの供給量は、前記排ガスセンサによる前記ガス成分量の検出値をもとに補正される、ことを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る排ガス脱硝装置は、上記の発明において、前記アンモニア供給源に収容されたアンモニアの圧力は、前記流量調整弁によって調整された流量のアンモニアを前記混合器に供給するに必要な圧力以上である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、排ガス脱硝装置の装置規模を小型化することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1に係る排ガス脱硝装置の一構成例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態2に係る排ガス脱硝装置の一構成例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態3に係る排ガス脱硝装置の一構成例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態4に係る排ガス脱硝装置の一構成例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態5に係る排ガス脱硝装置の一構成例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態6に係る排ガス脱硝装置の一構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る排ガス脱硝装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、各図面において、同一構成部分には同一符号が付されている。
【0021】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る排ガス脱硝装置について説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係る排ガス脱硝装置の一構成例を示す模式図である。
図1には、本実施形態1に係る排ガス脱硝装置10に加え、この排ガス脱硝装置10が適用される舶用ディーゼルエンジン1が図示されている。この排ガス脱硝装置10としては、例えば、選択式触媒還元(SCR:Selective Catalytic Reduction)の装置であるSCR装置が挙げられる。以下では、まず、舶用ディーゼルエンジン1について説明し、その後、排ガス脱硝装置10について説明する。
【0022】
(舶用ディーゼルエンジン)
舶用ディーゼルエンジン1は、プロペラ軸を介して船舶の推進用プロペラを駆動回転させる推進用の機関(主機)である。具体的には、舶用ディーゼルエンジン1は、ユニフロー掃排気式のクロスヘッド型ディーゼルエンジン等に例示される2ストロークディーゼルエンジンである。特に、舶用ディーゼルエンジン1は、燃料としてのアンモニアおよび化石燃料を燃焼させること(アンモニアおよび化石燃料の混焼)、あるいは燃料としてのアンモニアのみを燃焼させること(アンモニアの専焼)を行って駆動するアンモニア燃焼エンジンである。なお、化石燃料は、ディーゼル燃料、留出油、残渣油等、原油から精製され得る燃料一般を意味する。例えば
図1に示すように、舶用ディーゼルエンジン1は、駆動系統2と、燃料噴射系統3と、制御部9とを備える。
【0023】
駆動系統2は、燃料噴射系統3から噴射された燃料(アンモニアおよび化石燃料、あるいはアンモニアのみ)を燃焼させ、これによる燃焼エネルギーを利用して駆動力を発生させるものである。例えば
図1に示すように、駆動系統2は、シリンダ2aと、ピストン2bと、燃焼室2cと備える。シリンダ2aは、ピストン2bを収容する円筒状の構造体である。舶用ディーゼルエンジン1の燃焼室2cは、シリンダ2aとピストン2bとによってシリンダ2aの内部に区画される。ピストン2bは、燃焼室2cに面する状態でシリンダ2aの内部を往復運動し得るように構成される。特に図示しないが、ピストン2bの下部は、ピストン棒およびクロスヘッド等を介してクランクシャフトと連結されている。
【0024】
また、
図1に示すように、駆動系統2は、燃焼室2cの上部に排気弁2dを備える。排気弁2dは、燃焼室2cの排気口(排気ポート)を開閉可能に閉止する弁であり、動弁装置(図示せず)によって開閉駆動する。燃焼室2cの排気口は、
図1に示すように、舶用ディーゼルエンジン1の排気部101に通じている。排気部101は、燃焼室2cから排気口を通じて排出される排ガスを舶用ディーゼルエンジン1の外部へ導くものである。例えば、排気部101は、燃焼室2cの上部に設けられる排気弁箱内の排気路、排気マニホールドおよび排気管等によって構成される。以下、排ガスといえば、特に説明がない限り、舶用ディーゼルエンジン1から排出される排ガスを意味する。
【0025】
なお、
図1には、1つの駆動系統2が図示されているが、舶用ディーゼルエンジン1は、1つの駆動系統2を備えるものであってもよいし、複数の駆動系統2を備えるものであってもよい。
【0026】
燃料噴射系統3は、舶用ディーゼルエンジン1の燃焼室2cに対し、燃焼させる燃料として、アンモニアおよび化石燃料、あるいはアンモニアのみを噴射するための系統である。例えば
図1に示すように、燃料噴射系統3は、燃料噴射弁4と、アンモニア燃料ポンプ5aと、化石燃料ポンプ5bと、噴射管6a、6bと、第1供給管7と、アンモニア供給源8とを備える。
【0027】
燃料噴射弁4は、
図1に示すように、燃焼室2c内に噴射口を向けた態様でシリンダ2aに設けられる。特に図示しないが、燃料噴射弁4は、当該噴射口に通じる燃料経路を内部に有する。燃料噴射弁4の燃料経路とアンモニア燃料ポンプ5aとは、
図1に示すように、噴射管6aを介して連通する。アンモニア燃料ポンプ5aは、舶用ディーゼルエンジン1の燃料噴射弁4を介して燃焼室2cに燃料としてアンモニアを噴射するためのポンプである。詳細には、アンモニア燃料ポンプ5aは、アンモニア供給源8から供給されたアンモニアを、噴射管6aを通じて燃料噴射弁4に圧送する。この圧送されたアンモニアは、燃料噴射弁4の燃料経路内に充填され、あるいは当該燃料流路内の化石燃料中に注入される。
【0028】
また、燃料噴射弁4の燃料経路と化石燃料ポンプ5bとは、
図1に示すように、噴射管6bを介して連通する。化石燃料ポンプ5bは、舶用ディーゼルエンジン1の燃料噴射弁4を介して燃焼室2cに化石燃料を噴射するためのポンプである。詳細には、化石燃料ポンプ5bは、化石燃料を収容する化石燃料タンク(図示せず)から配管を通じて化石燃料が供給され、供給された化石燃料を、噴射管6bを通じて燃料噴射弁4に圧送する。上記圧送された化石燃料は、燃料噴射弁4の燃料経路内に充填される。
【0029】
第1供給管7は、舶用ディーゼルエンジン1に燃料としてのアンモニアを供給するための配管である。例えば
図1に示すように、第1供給管7は、アンモニア燃料ポンプ5aとアンモニア供給源8とを連通するように配管される。第1供給管7は、アンモニア供給源8からのアンモニアをアンモニア燃料ポンプ5aに向けて流通させる。
【0030】
アンモニア供給源8は、燃料としてのアンモニア(具体的には液体アンモニア)の供給源となる設備である。例えば、アンモニア供給源8は、液体アンモニアを収容するアンモニア燃料タンク、日々使用する分の液体アンモニアを収容するアンモニアデイリータンク、ポンプ、サブタンクおよび配管等(いずれも図示せず)の各種設備によって構成される。アンモニア供給源8は、船舶内であって舶用ディーゼルエンジン1の外部に配置される。このようなアンモニア供給源8は、アンモニアを高圧の状態で収容し、この高圧を利用して、第1供給管7からアンモニア燃料ポンプ5aにアンモニアを供給する。また、舶用ディーゼルエンジン1の燃料として要求されるアンモニアの圧力がアンモニア供給源8内のアンモニアの圧力よりも高い場合、アンモニア供給源8は、ポンプ等によってアンモニアを加圧し、この加圧したアンモニアを、第1供給管7からアンモニア燃料ポンプ5aに供給する。
【0031】
上記のような燃料噴射系統3において、燃料噴射弁4は、その燃料経路内に化石燃料とアンモニアとを充填している場合、化石燃料ポンプ5bから再び圧送された化石燃料の圧力により、当該燃料経路内の化石燃料とアンモニアとを燃焼室2cに噴射する。この際、燃料噴射弁4は、例えば、化石燃料とアンモニアとが交互に連続する層状に、これら化石燃料とアンモニアとを噴射する。また、燃料噴射弁4は、その燃料経路内にアンモニアのみを充填している場合、アンモニア燃料ポンプ5aから再び圧送されたアンモニアの圧力により、当該燃料経路内のアンモニアを燃焼室2cに噴射する。
【0032】
駆動系統2では、燃焼室2cに噴射された燃料が、シリンダ2aの掃気ポート(図示せず)から燃焼室2cに供給された燃焼用ガス(圧縮ガス)によって燃焼する。この燃料の燃焼としては、アンモニアおよび化石燃料の混焼、あるいはアンモニアの専焼が挙げられる。ピストン2bは、上記燃料の燃焼によって発生した燃焼エネルギーにより、シリンダ2aの内部を往復運動する。これにより、駆動系統2は、駆動力を発生させる。排気弁2dは、燃焼室2cの排気口を開放して、燃焼室2cから排気部101へ排ガスを排出させる。その後、排ガスは、排気部101を通じて舶用ディーゼルエンジン1の外部(例えば
図1に示す後述の混合器14)に排出される。
【0033】
制御部9は、舶用ディーゼルエンジン1の燃料噴射系統3を制御するものである。詳細には、本実施形態1において、制御部9は、舶用ディーゼルエンジン1のエンジン回転数をもとに、舶用ディーゼルエンジン1の1燃焼サイクル当りに燃焼室2cに燃料として噴射されるべきアンモニアおよび化石燃料の各噴射量を算出する。制御部9は、この算出した噴射量のアンモニアを吐出するようにアンモニア燃料ポンプ5aを制御し、かつ、この算出した噴射量の化石燃料を吐出するように化石燃料ポンプ5bを制御する。
【0034】
より詳細には、
図1に示すように、制御部9には、舶用ディーゼルエンジン1のエンジン回転数を示す入力信号S1が入力される。入力信号S1は、例えば、舶用ディーゼルエンジン1に設けられたセンサ(図示せず)または操作部(図示せず)等の装置から制御部9に入力される。この入力信号S1によって示されるエンジン回転数には、舶用ディーゼルエンジン1の現在のエンジン回転数(以下、エンジン回転数現在値という)と、舶用ディーゼルエンジン1に対して指令されたエンジン回転数(以下、エンジン回転数指令値という)とが含まれる。制御部9は、入力信号S1に基づいて、舶用ディーゼルエンジン1のエンジン回転数現在値およびエンジン回転数指令値を取得する。制御部9は、このように取得したエンジン回転数指令値とエンジン回転数現在値とを比較し、これらの比較結果をもとに、舶用ディーゼルエンジン1の指令されたエンジン回転数を実現するために燃焼室2cへ今回噴射すべき燃料の噴射量(以下、必要噴射量という)を算出する。
【0035】
例えば、制御部9は、エンジン回転数指令値からエンジン回転数現在値を減算した値(すなわち今回の指令の前後におけるエンジン回転数の変化量)を、1燃焼サイクル当りにおける全燃料の合計噴射量の変化量に変換する。続いて、制御部9は、この変化量と、燃焼室2cへ前回噴射された全燃料の噴射量とを加算し、得られた加算値(すなわち今回の1燃焼サイクル当りに噴射する全燃料の合計噴射量)に混焼率等のパラメータを加味して、今回のアンモニアの必要噴射量を算出する。なお、混焼率は、1燃焼サイクル当りに燃焼室2cに噴射される全燃料の合計噴射量を100%とした場合、この合計噴射量に対するアンモニアの噴射量の比率によって表される。例えば、混焼率が0%超100%未満である場合、燃焼室2cではアンモニアと化石燃料との混焼が行われる。混焼率が100%である場合、燃焼室2cではアンモニアの専焼が行われる。
【0036】
また、制御部9は、上記得られた加算値(今回の1燃焼サイクル当りに噴射する全燃料の合計噴射量)から上記今回のアンモニアの必要噴射量を減算し、これにより、今回の化石燃料の必要噴射量を算出する。なお、制御部9は、今回の1燃焼サイクル当りに噴射する全燃料の合計噴射量と、混焼率に応じた係数(=100%-混焼率)とをもとに、今回の化石燃料の必要噴射量を算出してもよい。
【0037】
その後、制御部9は、上記算出したアンモニアの必要噴射量を、当該必要噴射量のアンモニアを燃料噴射弁4へ圧送するために必要なアンモニア燃料ポンプ5aのプランジャ(ピストン)のストローク量に変換する。制御部9は、上記ストローク量を今回のプランジャのストローク量として指令するための制御信号S2を生成し、この制御信号S2をアンモニア燃料ポンプ5aに送信する。これにより、制御部9は、上記ストローク量のプランジャのストロークを行ってアンモニアを吐出するようにアンモニア燃料ポンプ5aを制御する。
【0038】
また、制御部9は、上記算出した化石燃料の必要噴射量を、当該必要噴射量の化石燃料を燃料噴射弁4へ圧送するために必要な化石燃料ポンプ5bのプランジャのストローク量に変換する。制御部9は、上記ストローク量を今回のプランジャのストローク量として指令するための制御信号S3を生成し、この制御信号S3を化石燃料ポンプ5bに送信する。これにより、制御部9は、上記ストローク量のプランジャのストロークを行って化石燃料を吐出するように化石燃料ポンプ5bを制御する。
【0039】
(排ガス脱硝装置)
排ガス脱硝装置10は、舶用ディーゼルエンジン1から排出される排ガス中の窒素酸化物(例えばNOxやN
2O等)を低減する(すなわち当該排ガスを脱硝する)装置である。例えば
図1に示すように、排ガス脱硝装置10は、第2供給管11と、還元剤ポンプ12と、ドージングユニット13と、混合器14と、反応器15と、送出管16と、排出管17とを備える。
【0040】
第2供給管11は、舶用ディーゼルエンジン1の燃焼室2cに燃料として噴射されるアンモニアを収容したアンモニア供給源8と連通し、このアンモニア供給源8からのアンモニアを流通させる配管の一例である。詳細には、
図1に示すように、第2供給管11は、アンモニア供給源8と連通する第1供給管7から分岐するように配管され、これにより、燃料噴射系統3から分岐している。
【0041】
より詳細には、
図1に示すように、第2供給管11の入口端は第1供給管7の中途部と接合され、第2供給管11の出口端は混合器14(具体的には後述の還元剤噴射部14a)と接合されている。この第2供給管11には、その入口端から出口端に向かって順に、還元剤ポンプ12と、ドージングユニット13とが設けられている。すなわち、第2供給管11は、第1供給管7を介してアンモニア供給源8と還元剤ポンプ12とを連通する第1連通管11aと、還元剤ポンプ12とドージングユニット13とを連通する第2連通管11bと、ドージングユニット13と混合器14とを連通する第3連通管11cとによって構成される。このような第2供給管11は、アンモニア供給源8から送出されたアンモニアを、排ガスを脱硝するための還元剤として、還元剤ポンプ12およびドージングユニット13を経由して混合器14へ流通させる。
【0042】
還元剤ポンプ12は、
図1に示すように、第2供給管11の中途部(第1連通管11aと第2連通管11bとの間)に設けられる。還元剤ポンプ12は、第2供給管11内のアンモニアを、アンモニア供給源8側から混合器14側に向かって圧送する。この還元剤ポンプ12の作用により、第2供給管11内のアンモニアの圧力は、当該アンモニアがドージングユニット13を通って混合器14内へ流通するために必要な圧力に調整される。
【0043】
ドージングユニット13は、第2供給管11内を通って混合器14に還元剤として供給されるアンモニアの流量を調整するものである。詳細には、
図1に示すように、ドージングユニット13は、流量調整弁13aと流量センサ13bとを備え、第2供給管11の中途部(第2連通管11bと第3連通管11cとの間)に設けられる。特に図示しないが、ドージングユニット13には、船舶内に設置された空気供給装置から配管等を通じて圧縮空気が供給される。ドージングユニット13は、この供給された圧縮空気とともに上記アンモニアを、第2供給管11を介して混合器14内の還元剤噴射部14aへ供給する。
【0044】
流量調整弁13aは、開度の制御によって流体の流量を調整する弁であり、
図1に示すように、第2連通管11bと第3連通管11cとを連通する配管に設けられる。流量調整弁13aは、後述の制御部19によって開度が制御され、これにより、この配管内のアンモニアの流量、すなわち、混合器14に供給されるアンモニアの流量(供給量)を調整する。流量センサ13bは、
図1に示すように、この配管の中途部であって流量調整弁13aよりも流体の流通方向の下流側に設けられる。流量センサ13bは、流量調整弁13aによって調整されたアンモニアの流量を検出し、その都度、得られたアンモニアの流量検出値を示す検出信号S12を制御部19に送信する。
【0045】
混合器14は、還元剤としてのアンモニアと排ガスとを混合するものである。詳細には、
図1に示すように、混合器14は、還元剤噴射部14aを内部に備え、舶用ディーゼルエンジン1の排気部101と送出管16との間に設けられる。還元剤噴射部14aは、例えば、2流体ノズル等の噴射ノズルによって構成され、
図1に示すように、混合器14の内部に噴射口を向けるように配置される。還元剤噴射部14aは、ドージングユニット13から第2供給管11を介して圧縮空気とともに供給されたアンモニアを、混合器14の内部に噴射(噴霧)する。混合器14は、排気部101を通じて舶用ディーゼルエンジン1からの排ガスを受け入れ、受け入れた排ガスと還元剤噴射部14aからのアンモニアとを混合する。混合器14は、このようにアンモニアと混合した排ガスを、送出管16を通じて反応器15へ送出する。
【0046】
反応器15は、還元剤としてのアンモニアが混合された排ガスを脱硝するものである。詳細には、反応器15は、触媒層を有する触媒反応器等によって構成され、
図1に示すように、混合器14の後段に配置される。反応器15は、アンモニアが混合された排ガスを混合器14から受け入れ、受け入れた排ガス中の窒素酸化物と還元剤との還元反応を触媒作用によって選択的に進行(促進)させる。これにより、反応器15は、当該排ガス中の窒素酸化物を除去(脱硝)して、当該窒素酸化物の排出量を低減する。また、反応器15の出側には、
図1に示すように、排出管17が接続されている。排出管17は、船舶の煙突(図示せず)に通じる配管であり、反応器15から送出された排ガス(脱硝された排ガス)を、煙突を介して船舶の外部に排出する。
【0047】
なお、反応器15によって脱硝される排ガス中の窒素酸化物としては、例えば、化石燃料の燃焼によって発生するNOx、アンモニアの燃焼によって発生するN2O等が挙げられる。
【0048】
制御部19は、アンモニア供給源8から排ガス脱硝装置10に供給されるアンモニアの供給量を制御するためにドージングユニット13を制御するものである。詳細には、本実施形態1において、制御部19は、舶用ディーゼルエンジン1のエンジン負荷と流量センサ13bによるアンモニアの流量検出値とをもとに、ドージングユニット13の流量調整弁13aの開度を制御する。
【0049】
より詳細には、
図1に示すように、制御部19には、舶用ディーゼルエンジン1のエンジン負荷を示す入力信号S11が入力される。例えば、入力信号S11は、舶用ディーゼルエンジン1に設けられたセンサ(図示せず)等の装置から制御部19に入力される。入力信号S11によって示されるエンジン負荷は、舶用ディーゼルエンジン1に対して指令されたエンジン回転数で舶用ディーゼルエンジン1が駆動した際のエンジン負荷である。制御部19は、入力信号S11に基づいて、舶用ディーゼルエンジン1のエンジン負荷を取得し、この取得したエンジン負荷を、排ガスの脱硝に必要なアンモニアの供給量(以下、必要供給量という)に変換する。
【0050】
また、
図1に示すように、制御部19には、ドージングユニット13の流量センサ13bから、アンモニアの流量検出値を示す検出信号S12が入力される。制御部19は、検出信号S12に基づいて、アンモニアの流量検出値、すなわち、流量調整弁13aによって調整されたアンモニアの現在の流量を取得する。本実施形態1において、当該アンモニアの現在の流量は、ドージングユニット13から混合器14に供給されるアンモニアの現在の供給量である。
【0051】
制御部19は、上述したアンモニアの必要供給量と流量検出値とを比較し、これらの比較結果をもとに、必要供給量のアンモニアを混合器14に供給すべく流量調整弁13aに指令する開度(以下、開度指令値という)を算出する。例えば、制御部19は、上述したアンモニアの必要供給量から流量検出値を減算し、この得られた値(すなわちアンモニアの必要供給量と現在の流量との差)を、流量調整弁13aの開度の変化量に変換する。続いて、制御部19は、この開度の変化量と、流量調整弁13aに対して前回指令した開度(流量調整弁13aの現時点での開度)とを加算する。これにより、制御部19は、流量調整弁13aの今回の開度指令値を算出する。
【0052】
その後、制御部19は、上記算出した開度指令値を示す制御信号S13を生成し、この制御信号S13を流量調整弁13aに送信する。これにより、制御部19は、流量調整弁13aの開度を上記開度指令値の開度に制御する。ドージングユニット13から混合器14に供給されるアンモニアの流量は、上記開度の制御により、必要供給量に調整される。
【0053】
以上、説明したように、本発明の実施形態1に係る排ガス脱硝装置10では、舶用ディーゼルエンジン1の燃焼室2cに燃料として噴射されるアンモニアを収容したアンモニア供給源8と連通する第2供給管11が、アンモニア供給源8からのアンモニアを流通させ、舶用ディーゼルエンジン1から排出された排ガスと第2供給管11から供給されたアンモニアとを混合器14が混合し、アンモニアと混合された排ガスを反応器15が脱硝し、混合器14に供給されるアンモニアの流量を流量調整弁13aが調整し、流量調整弁13aによって調整されたアンモニアの流量を流量センサ13bが検出し、制御部19が、舶用ディーゼルエンジン1のエンジン負荷と流量センサ13bによるアンモニアの流量検出値とをもとに、流量調整弁13aの開度を制御している。
【0054】
このため、従来の排ガス脱硝装置に必要とされていた還元剤タンクを船舶内に設置する必要が無く、舶用ディーゼルエンジン1用のアンモニア供給源8のタンク(例えばアンモニア燃料タンク等)を上記還元剤タンクとして共有することができる。これにより、排ガス脱硝装置10の装置規模を従来の排ガス脱硝装置よりも小型化することができる。この結果、船舶内という限られたスペースにおいて排ガス脱硝装置10の設置に要する設置スペースを小規模化(省スペース化)できることから、船舶内への舶用ディーゼルエンジンおよび排ガス脱硝装置の設置に要するコストおよび時間を低減することができる。
【0055】
特に、この排ガス脱硝装置10では、第2供給管11が、舶用ディーゼルエンジン1の燃料噴射系統3から分岐し、より詳細には、燃料噴射系統3のアンモニア燃料ポンプ5aとアンモニア供給源8とを連通する第1供給管7から分岐している。このため、排ガス脱硝装置10の第2供給管11とアンモニア供給源8とを直に接合しなくとも、アンモニア供給源8に既存の配管(第1供給管7)を介して、第2供給管11とアンモニア供給源8とを連通させることができる。この結果、第2供給管11とアンモニア供給源8とを直に接合する際に必要とされる配管構造をアンモニア供給源8に新たに設ける必要が無いことから、簡易に、アンモニア供給源8と第2供給管11とを連通させることができる。
【0056】
(実施形態2)
つぎに、本発明の実施形態2に係る排ガス脱硝装置について説明する。
図2は、本発明の実施形態2に係る排ガス脱硝装置の一構成例を示す模式図である。
図2には、本実施形態2に係る排ガス脱硝装置10Aに加え、この排ガス脱硝装置10Aが適用される舶用ディーゼルエンジン1が図示されている。
図2に示すように、この排ガス脱硝装置10Aは、上述した実施形態1に係る排ガス脱硝装置10の第2供給管11に代えて第2供給管11Aを備え、さらに、舶用ディーゼルエンジン1と共有する制御部9Aを備える。その他の構成は実施形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0057】
第2供給管11Aは、上述したアンモニア供給源8と連通し、このアンモニア供給源8からのアンモニアを流通させる配管の一例である。詳細には、
図2に示すように、第2供給管11Aは、燃料噴射系統3の噴射管6aから分岐するように配管され、これにより、燃料噴射系統3から分岐している。噴射管6aは、上述した実施形態1の場合と同様に、アンモニア燃料ポンプ5aと燃料噴射弁4とを連通する連通管である。
【0058】
より詳細には、
図2に示すように、第2供給管11Aの入口端は噴射管6aの中途部と接合され、第2供給管11Aの出口端は混合器14(具体的には還元剤噴射部14a)と接合されている。この第2供給管11Aの中途部には、
図2に示すように、ドージングユニット13が設けられている。すなわち、第2供給管11Aは、第1供給管7とアンモニア燃料ポンプ5aと噴射管6aとを介してアンモニア供給源8とドージングユニット13とを連通する第1連通管11Aaと、ドージングユニット13と混合器14とを連通する第2連通管11Abとによって構成される。このような第2供給管11Aは、アンモニア供給源8から送出されたアンモニアを、排ガスを脱硝するための還元剤として、ドージングユニット13を経由して混合器14へ流通させる。
【0059】
制御部9Aは、舶用ディーゼルエンジン1と排ガス脱硝装置10Aとが共有する制御部の一例であり、舶用ディーゼルエンジン1の燃料噴射系統3を制御する機能と、還元剤として排ガス脱硝装置10Aに供給されるアンモニアの供給量を制御する機能とを兼ね備える。詳細には、本実施形態2において、制御部9Aは、舶用ディーゼルエンジン1のエンジン回転数およびエンジン負荷をもとに、舶用ディーゼルエンジン1の1燃焼サイクル当りに燃焼室2cに燃料として噴射されるべきアンモニアの噴射量と、排ガスの脱硝に必要なアンモニアの供給量とを算出する。制御部9Aは、上記算出した噴射量と供給量との合計量分のアンモニアを吐出するように、アンモニア燃料ポンプ5aを制御する。
【0060】
より詳細には、
図2に示すように、制御部9Aには、舶用ディーゼルエンジン1のエンジン回転数およびエンジン負荷を示す入力信号S1Aが入力される。入力信号S1Aは、例えば、舶用ディーゼルエンジン1に設けられたセンサ(図示せず)または操作部(図示せず)等の装置から制御部9Aに入力される。なお、入力信号S1Aによって示されるエンジン回転数は、上述した実施形態1と同様である。すなわち、制御部9Aは、入力信号S1Aに基づいて、舶用ディーゼルエンジン1のエンジン回転数現在値およびエンジン回転数指令値を取得する。制御部9Aは、上述した実施形態1の制御部9と同様に、これら取得したエンジン回転数指令値とエンジン回転数現在値との比較結果をもとに、舶用ディーゼルエンジン1の燃焼室2cに対する今回のアンモニアの必要噴射量を算出する。
【0061】
また、入力信号S1Aによって示されるエンジン負荷は、上述した実施形態1と同様である。すなわち、制御部9Aは、入力信号S1Aに基づいて、ドージングユニット13側の制御部19と同じエンジン負荷を取得する。制御部9Aは、この取得したエンジン負荷を、ドージングユニット13側の制御部19と同様に、排ガスの脱硝に必要なアンモニアの必要供給量に変換する。制御部9Aは、この変換によって得られたアンモニアの必要供給量にSCR運転係数等のパラメータを加味して、混合器14に対する今回のアンモニアの必要供給量を算出する。なお、SCR運転係数は、排ガスを脱硝する排ガス脱硝装置10Aの運転(SCR運転)の有無を示す係数である。具体的には、排ガス脱硝装置10Aが排ガスの脱硝を行う場合、SCR運転係数は100%であり、排ガス脱硝装置10Aが排ガスの脱硝を停止する場合、SCR運転係数は0%である。
【0062】
その後、制御部9Aは、上記算出したアンモニアの必要噴射量と必要供給量とを加算することにより、アンモニア燃料ポンプ5aから今回吐出させるアンモニアの合計量を算出する。続いて、制御部9Aは、この算出した合計量を、当該合計量のアンモニアを吐出するために必要なアンモニア燃料ポンプ5aのプランジャ(ピストン)のストローク量に変換する。制御部9Aは、上記ストローク量を今回のプランジャのストローク量として指令するための制御信号S2Aを生成し、この制御信号S2Aをアンモニア燃料ポンプ5aに送信する。これにより、制御部9Aは、上記ストローク量のプランジャのストロークを行って上記合計量のアンモニアを吐出するように、アンモニア燃料ポンプ5aを制御する。
【0063】
ここで、第2供給管11Aおよび噴射管6aは、
図2に示すように、アンモニア燃料ポンプ5aからドージングユニット13を経て混合器14に至る流路と、アンモニア燃料ポンプ5aから燃料噴射弁4に至る流路との2流路に分岐するよう配管されている。また、ドージングユニット13から第2供給管11Aを通じて混合器14に供給されるアンモニアの流量は、流量調整弁13aによって調整される。したがって、アンモニア燃料ポンプ5aから今回吐出されたアンモニアのうち、排ガスの脱硝に必要な流量(必要供給量)のアンモニアが、第2供給管11A内を流通して混合器14に供給される。この結果として、噴射管6a内には、アンモニア燃料ポンプ5aによる1回の吐出量(すなわち上記合計量)から第2供給管11Aへのアンモニアの流量(上記必要供給量)を減算した流量、すなわち、上記必要噴射量のアンモニアが流通する。燃料噴射弁4から燃焼室2cには、上記必要噴射量のアンモニアが噴射される。
【0064】
なお、制御部9Aは、上述した実施形態1の制御部9と同様に、今回の化石燃料の必要噴射量を算出し、この算出した必要噴射量の化石燃料を吐出するように、化石燃料ポンプ5bのプランジャのストローク量を制御する。
【0065】
以上、説明したように、本発明の実施形態2に係る排ガス脱硝装置10Aでは、第2供給管11Aが、舶用ディーゼルエンジン1の燃料噴射系統3においてアンモニア燃料ポンプ5aと燃料噴射弁4とを連通する噴射管6aから分岐し、制御部9Aが、舶用ディーゼルエンジン1のエンジン回転数およびエンジン負荷をもとに、舶用ディーゼルエンジン1の1燃焼サイクル当りに必要なアンモニアの必要噴射量と排ガスの脱硝に必要なアンモニアの必要供給量とを算出し、これら必要噴射量と必要供給量との合計量分のアンモニアを吐出するようアンモニア燃料ポンプ5aを制御し、その他を実施形態1と同様に構成している。
【0066】
このため、上述した実施形態1と同様の作用効果を享受するとともに、従来の排ガス脱硝装置に必要とされていた還元剤ポンプを船舶内に設置する必要が無く、舶用ディーゼルエンジン1の燃焼室2cに対するアンモニアの必要噴射量を確保しつつ、舶用ディーゼルエンジン1用のアンモニア燃料ポンプ5aを上記還元剤ポンプとして共有することができる。これにより、排ガス脱硝装置の装置規模をさらに小型化することができ、この結果、船舶内における排ガス脱硝装置の設置スペースをより小規模化できることから、船舶内への舶用ディーゼルエンジンおよび排ガス脱硝装置の設置に要するコストおよび時間をより低減することができる。
【0067】
(実施形態3)
つぎに、本発明の実施形態3に係る排ガス脱硝装置について説明する。
図3は、本発明の実施形態3に係る排ガス脱硝装置の一構成例を示す模式図である。
図3には、本実施形態3に係る排ガス脱硝装置10Bに加え、この排ガス脱硝装置10Bが適用される舶用ディーゼルエンジン1が図示されている。
図3に示すように、この排ガス脱硝装置10Bは、上述した実施形態2に係る排ガス脱硝装置10Aの第2供給管11Aに代えて第2供給管11Bを備え、ドージングユニット13に代えて流量調整弁21および流量センサ22を備え、制御部9A、19に代えて舶用ディーゼルエンジン1と共有する制御部19Bを備える。その他の構成は実施形態2と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0068】
第2供給管11Bは、上述したアンモニア供給源8と連通し、このアンモニア供給源8からのアンモニアを流通させる配管の一例である。詳細には、
図3に示すように、第2供給管11Bは、流量調整弁21を介して燃料噴射系統3の噴射管6aから分岐するように配管され、これにより、燃料噴射系統3から分岐している。
【0069】
より詳細には、
図3に示すように、第2供給管11Bの入口端は流量調整弁21と接合され、第2供給管11Bの出口端は混合器14(具体的には還元剤噴射部14a)と接合されている。この第2供給管11Bの中途部には、
図3に示すように、流量センサ22が設けられている。このような第2供給管11Bは、アンモニア供給源8から送出されたアンモニアを、排ガスを脱硝するための還元剤として、流量調整弁21側から流量センサ22を経由して混合器14へ流通させる。このアンモニアは、還元剤噴射部14aから混合器14内に噴射される。特に図示しないが、圧縮空気を供給する配管を第2供給管11Bまたは還元剤噴射部14aに接合し、第2供給管11B内のアンモニアを圧縮空気とともに還元剤噴射部14aから混合器14内に噴射(噴霧)してもよい。
【0070】
流量調整弁21は、例えば、三方分岐弁等の電磁弁によって構成され、分岐する流体の流量を開度の制御によって調整するものである。詳細には、
図3に示すように、流量調整弁21は、アンモニア燃料ポンプ5aと燃料噴射弁4とを連通する噴射管6aから第2供給管11Bを分岐させるように、この噴射管6aの中途部に設けられる。以下、噴射管6aのうち、アンモニア燃料ポンプ5aと流量調整弁21とを連通する管部分を上流側の噴射管6aといい、流量調整弁21と燃料噴射弁4とを連通する管部分を下流側の噴射管6aという。流量調整弁21は、アンモニア燃料ポンプ5aから上流側の噴射管6aを通じて吐出されたアンモニアを、開度によって第2供給管11Bと下流側の噴射管6aとに分流させるとともに、第2供給管11Bへのアンモニアの流量と下流側の噴射管6aへのアンモニアの流量とを各々調整する。当該第2供給管11Bへのアンモニアの流量は、混合器14に還元剤として供給されるアンモニアの供給量に相当する。当該下流側の噴射管6aへのアンモニアの流量は、燃料噴射弁4から燃焼室2cへ燃料として噴射されるアンモニアの噴射量に相当する。また、流量調整弁21の開度は、制御部19Bによって制御される。
【0071】
流量センサ22は、
図3に示すように、第2供給管11Bの中途部であって流量調整弁21よりも流体の流通方向の下流側に設けられる。例えば、流量センサ22は、第2供給管11Bの中途部において、流量調整弁21の下流側近傍に設けられることが好ましい。流量センサ22は、流量調整弁21によって調整された第2供給管11B内のアンモニアの流量を検出し、その都度、得られたアンモニアの流量検出値を示す検出信号S12を制御部19Bに送信する。
【0072】
制御部19Bは、舶用ディーゼルエンジン1と排ガス脱硝装置10Bとが共有する制御部の一例であり、舶用ディーゼルエンジン1の燃料噴射系統3を制御する機能と、還元剤として排ガス脱硝装置10Bに供給されるアンモニアの供給量を制御する機能とを兼ね備える。詳細には、本実施形態3において、制御部19Bは、舶用ディーゼルエンジン1のエンジン回転数およびエンジン負荷をもとに、舶用ディーゼルエンジン1の1燃焼サイクル当りに燃焼室2cに燃料として噴射されるべきアンモニアの噴射量と、排ガスの脱硝に必要なアンモニアの供給量とを算出し、算出した噴射量と供給量との合計量分のアンモニアを吐出するように、アンモニア燃料ポンプ5aを制御する。
【0073】
より詳細には、
図3に示すように、制御部19Bには、上述した実施形態2と同様に、入力信号S1Aが入力される。すなわち、制御部19Bは、上述した実施形態2の制御部9Aと同様に、舶用ディーゼルエンジン1のエンジン回転数(具体的にはエンジン回転数現在値およびエンジン回転数指令値)とエンジン負荷とを取得する。制御部19Bは、これら取得したエンジン回転数指令値およびエンジン回転数現在値とエンジン負荷とをもとに、舶用ディーゼルエンジン1の燃焼室2cに対する今回のアンモニアの必要噴射量と、混合器14に対する今回のアンモニアの必要供給量とを算出する。その後、制御部19Bは、これら必要噴射量と必要供給量との合計量のアンモニアを吐出するように、アンモニア燃料ポンプ5aを制御する。
【0074】
なお、制御部19Bによる上記アンモニアの必要噴射量および必要供給量の算出処理、並びに、アンモニア燃料ポンプ5aの制御は、上述した実施形態2の制御部9Aと同様である。また、制御部19Bによる化石燃料の必要噴射量の算出処理および化石燃料ポンプ5bの制御は、上述した実施形態1の制御部9と同様である。
【0075】
また、本実施形態3において、制御部19Bは、舶用ディーゼルエンジン1のエンジン負荷と流量センサ22によるアンモニアの流量検出値とをもとに、流量調整弁21の第2供給管11B側の開度を制御し、上記アンモニアの必要噴射量に応じて流量調整弁21の燃料噴射弁4側の開度を制御する。
【0076】
詳細には、
図3に示すように、制御部19Bには、上述した実施形態2と同様のエンジン負荷を示す入力信号S1Aが入力される。すなわち、制御部19Bは、上述した実施形態2の制御部19と同様に、舶用ディーゼルエンジン1のエンジン負荷を取得し、この取得したエンジン負荷を、排ガスの脱硝に必要なアンモニアの必要供給量に変換する。また、制御部19Bには、流量センサ22から、アンモニアの流量検出値を示す検出信号S12が入力される。制御部19Bは、検出信号S12に基づいて、アンモニアの流量検出値、すなわち、流量調整弁21によって調整されたアンモニアの現在の流量を取得する。本実施形態3において、当該アンモニアの現在の流量は、流量調整弁21から第2供給管11Bを通じて混合器14に供給されるアンモニアの現在の供給量である。
【0077】
制御部19Bは、上述した実施形態2の制御部19と同様に、アンモニアの必要供給量と流量検出値とをもとに、流量調整弁21の今回の第1開度指令値を算出する。当該第1開度指令値は、流量調整弁21における今回の第2供給管11B側の開度指令値である。また、制御部19Bは、上述した必要噴射量のアンモニアを下流側の噴射管6a内へ流通させるべく流量調整弁21に指令する開度を、流量調整弁21における今回の燃料噴射弁4側の第2開度指令値として算出する。
【0078】
その後、制御部19Bは、上記算出した第1開度指令値および第2開度指令値を示す制御信号S4を生成し、この制御信号S4を流量調整弁21に送信する。これにより、制御部19Bは、流量調整弁21における今回の第2供給管11B側の開度を上記第1開度指令値の開度に制御するとともに、流量調整弁21における今回の燃料噴射弁4側の開度を上記第2開度指令値の開度に制御する。流量調整弁21から第2供給管11Bを通じて混合器14に供給されるアンモニアの流量は、上記開度の制御により、必要供給量に調整される。また、流量調整弁21から下流側の噴射管6aを通じて燃料噴射弁4に圧送されるアンモニアの流量は、上記開度の制御により、必要噴射量に調整される。
【0079】
以上、説明したように、本発明の実施形態3に係る排ガス脱硝装置10Bでは、流量調整弁21が、アンモニア燃料ポンプ5aと燃料噴射弁4とを連通する噴射管6aから第2供給管11Bを分岐させるように設けられ、流量センサ22が、流量調整弁21から第2供給管11B内を流通するアンモニアの流量を検出し、制御部19Bが、必要噴射量と必要供給量との合計量分のアンモニアを吐出するようにアンモニア燃料ポンプ5aを制御し、流量調整弁21の第2供給管11B側の開度を制御し、必要噴射量に応じて流量調整弁21の燃料噴射弁4側の開度を制御するようにし、その他を上述した実施形態2と同様に構成している。
【0080】
このため、上述した実施形態2と同様の作用効果を享受するとともに、従来の排ガス脱硝装置に必要とされていた還元剤タンクおよび還元剤ポンプに加え、さらに、アンモニアの吐出量および流量を制御する制御部を舶用ディーゼルエンジン1と共有することができる。これにより、排ガス脱硝装置の装置規模をより一層小型化することができ、この結果、船舶内における排ガス脱硝装置の設置スペースをより一層小規模化できることから、船舶内への舶用ディーゼルエンジンおよび排ガス脱硝装置の設置に要するコストおよび時間をより一層低減することができる。さらに、第2供給管11Bと噴射管6aとが分岐する流量調整弁21の開度を制御することにより、排ガス脱硝装置10Bの混合器14に対するアンモニアの必要供給量と、舶用ディーゼルエンジン1の燃焼室2cに対するアンモニアの必要噴射量との双方を精度よく確保することができる。この結果、燃焼室2cでのアンモニアの燃焼(混焼または専焼)を効率よく行いつつ、排ガスの脱硝を効率よく行うことができる。
【0081】
また、上述したドージングユニット13の代わりに、流量調整弁21および流量センサ22を備えるようにしたため、排ガスの脱硝に必要なアンモニアの流量を確保しつつ、ドージングユニット13の装置規模を流量調整弁21および流量センサ22の装置規模に小型化することができる。これにより、排ガス脱硝装置の装置規模の更なる小型化を促進することができる。
【0082】
(実施形態4)
つぎに、本発明の実施形態4に係る排ガス脱硝装置について説明する。
図4は、本発明の実施形態4に係る排ガス脱硝装置の一構成例を示す模式図である。
図4には、本実施形態4に係る排ガス脱硝装置10Cに加え、この排ガス脱硝装置10Cが適用される舶用ディーゼルエンジン1が図示されている。
図4に示すように、この排ガス脱硝装置10Cは、第2供給管11Bの中途部に加熱部23および温度センサ24をさらに備え、上述した実施形態3に係る排ガス脱硝装置10Bの制御部19Bに代えて舶用ディーゼルエンジン1と共有する制御部19Cを備える。その他の構成は実施形態3と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0083】
加熱部23は、還元剤として排ガスの脱硝に使用されるアンモニアの温度を所定温度以上に調整するものである。詳細には、
図4に示すように、加熱部23は、第2供給管11Bの中途部であって流量センサ22の後段(アンモニアの流通方向の下流側)に設けられる。加熱部23は、混合器14に向かって第2供給管11B内を順次流通するアンモニアを加熱する。この際、加熱部23は、制御部19Cの制御に基づき、温度センサ24によるアンモニアの温度検出値が所定の基準温度以上となるように、第2供給管11B内のアンモニアを加熱する。
【0084】
温度センサ24は、
図4に示すように、第2供給管11Bの中途部であって加熱部23の後段に設けられる。温度センサ24は、加熱部23によって加熱された後のアンモニアの温度を検出し、その都度、得られたアンモニアの温度検出値を示す検出信号S14を制御部19Cに送信する。
【0085】
制御部19Cは、舶用ディーゼルエンジン1と排ガス脱硝装置10Cとが共有する制御部の一例である。制御部19Cは、上述した実施形態3の制御部19Bと同様に、舶用ディーゼルエンジン1の燃料噴射系統3を制御する機能と、還元剤として排ガス脱硝装置10Cに供給されるアンモニアの供給量を制御する機能とを兼ね備える。また、制御部19Cは、温度センサ24によるアンモニアの温度検出値をもとに、加熱部23の加熱運転を制御する機能を備えている。
【0086】
詳細には、
図4に示すように、制御部19Cには、温度センサ24から、アンモニアの温度検出値を示す検出信号S14が入力される。制御部19Cは、検出信号S14に基づいて、アンモニアの温度検出値、すなわち、加熱部23による加熱後のアンモニアの温度を取得する。また、制御部19Cは、アンモニアの温度に関する基準温度を有している。この基準温度は、例えば、混合器14内でアンモニアと混合された排ガスの温度を、当該排ガスの脱硝を行うために必要な温度に維持し得る当該アンモニアの下限温度以上に設定される。制御部19Cは、取得したアンモニアの温度検出値と基準温度とを比較し、これらの比較結果をもとに、加熱部23に対する運転指令を生成する。
【0087】
例えば、制御部19Cは、上記温度検出値が基準温度未満である場合、アンモニアを加熱するよう指令する運転指令を生成し、上記温度検出値が基準温度以上である場合、アンモニアの加熱を弱めるまたは停止するよう指令する運転指令を生成する。制御部19Cは、このような運転指令を示す制御信号S5を生成し、この制御信号S5を加熱部23に送信する。これにより、制御部19Cは、温度センサ24によるアンモニアの温度検出値が上記基準温度以上となるように、加熱部23の運転を制御する。
【0088】
以上、説明したように、本発明の実施形態4に係る排ガス脱硝装置10Cでは、第2供給管11B内のアンモニアを加熱部23が加熱し、加熱部23による加熱後のアンモニアの温度を温度センサ24が検出し、第2供給管11B内のアンモニアは、温度センサ24によるアンモニアの温度検出値が所定の基準温度以上となるように加熱されるようにし、その他を実施形態3と同様に構成している。このため、上述した実施形態3と同様の作用効果を享受するとともに、第2供給管11Bを通じて混合器14内に供給されたアンモニアと排ガスとが混合された際、当該排ガスの温度が脱硝に支障をきたす程度に低下する事態を防止することができ、この結果、排ガスの脱硝に必要な温度を確保して、排ガスの脱硝を十分に行うことができる。
【0089】
(実施形態5)
つぎに、本発明の実施形態5に係る排ガス脱硝装置について説明する。
図5は、本発明の実施形態5に係る排ガス脱硝装置の一構成例を示す模式図である。
図5には、本実施形態5に係る排ガス脱硝装置10Dに加え、この排ガス脱硝装置10Dが適用される舶用ディーゼルエンジン1が図示されている。
図5に示すように、この排ガス脱硝装置10Dは、反応器15の排出管17に排ガスセンサ25をさらに備え、上述した実施形態3に係る排ガス脱硝装置10Bの制御部19Bに代えて舶用ディーゼルエンジン1と共有する制御部19Dを備える。その他の構成は実施形態3と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0090】
排ガスセンサ25は、反応器15による脱硝後の排ガスに含まれるガス成分量を検出するものである。詳細には、
図5に示すように、排ガスセンサ25は、反応器15の排出管17の中途部に設けられる。排ガスセンサ25は、排出管17の内部を流通する現在の排ガス中のガス成分量を検出し、その都度、検出したガス成分量(以下、ガス成分検出値という)を示す検出信号S15を制御部19Dに送信する。なお、当該ガス成分量は、排出管17内の排ガス(すなわち反応器15による脱硝後の排ガス)中に含まれるガス成分の含有量である。当該ガス成分量の検出対象となるガス成分は、当該排ガス中の窒素酸化物(例えばNOxやN
2O等)であってもよいし、アンモニア成分であってもよいし、これら窒素酸化物およびアンモニア成分の両方であってもよい。
【0091】
制御部19Dは、舶用ディーゼルエンジン1と排ガス脱硝装置10Dとが共有する制御部の一例である。制御部19Dは、上述した実施形態3の制御部19Bと同様に、舶用ディーゼルエンジン1の燃料噴射系統3を制御する機能と、還元剤として排ガス脱硝装置10Dに供給されるアンモニアの供給量を制御する機能とを兼ね備える。また、制御部19Dは、排ガスセンサ25による排ガスのガス成分検出値をもとに、排ガスの脱硝に必要なアンモニアの供給量を補正する機能を備えている。
【0092】
詳細には、
図5に示すように、制御部19Dには、排ガスセンサ25から、排ガスのガス成分検出値を示す検出信号S15が入力される。制御部19Dは、検出信号S15に基づいて、排ガスのガス成分検出値、すなわち、反応器15による脱硝後の排ガス中に含まれるガス成分量を取得する。また、制御部19Dは、脱硝後の排ガス中のガス成分量に関する基準値(以下、ガス成分基準値という)を有している。このガス成分基準値は、例えば、脱硝後の排ガス中に含まれるガス成分量の上限値を規定するように設定される。制御部19Dは、取得した排ガスのガス成分検出値とガス成分基準値とを比較し、これらの比較結果をもとに、排ガスの脱硝に必要なアンモニアの供給量を補正する。
【0093】
例えば、制御部19Dは、ガス成分検出値からガス成分基準値を減算した値を、還元剤としてのアンモニアの補正量に変換する。当該補正量は、上記減算した値を所定値以下(好ましくは零値)にするために調整されるべきアンモニアの量である。すなわち、当該補正量は、脱硝後の排ガス中に含まれる窒素酸化物、アンモニア成分、または窒素酸化物およびアンモニア成分の両方の含有量を所定値以下(好ましくは零値)にするためのアンモニアの調整量である。制御部19Dは、このようなアンモニアの補正量を、上述したように算出したアンモニアの必要供給量に加算し、これにより、当該必要供給量を補正する。
【0094】
その後、制御部19Dは、上記補正後のアンモニアの必要供給量と、上述した実施形態3と同様に算出したアンモニアの必要噴射量と、を加算することにより、アンモニア燃料ポンプ5aから今回吐出させるアンモニアの補正後の合計量を算出する。続いて、制御部19Dは、この補正後の合計量を、当該補正後の合計量のアンモニアを吐出するために必要なアンモニア燃料ポンプ5aのプランジャのストローク量(補正後のストローク量)に変換する。制御部19Dは、上記補正後のストローク量を今回のプランジャのストローク量として指令するための制御信号S2Bを生成し、この制御信号S2Bをアンモニア燃料ポンプ5aに送信する。これにより、制御部19Dは、上記補正後のストローク量のプランジャのストロークを行って上記補正後の合計量のアンモニアを吐出するように、アンモニア燃料ポンプ5aを制御する。
【0095】
また、制御部19Dは、上述したアンモニアの補正量をもとに、流量調整弁21の第2供給管11B側の開度を補正する。詳細には、制御部19Dは、上述した実施形態3と同様に取得したエンジン負荷を、排ガスの脱硝に必要なアンモニアの必要供給量に変換し、この必要供給量と上記補正量とを加算する。これにより、制御部19Dは、上記アンモニアの必要供給量を補正する。続いて、制御部19Dは、上記アンモニアの補正後の必要供給量と流量センサ22による流量検出値とをもとに、実施形態3と同様の手法によって、流量調整弁21の今回の第1開度指令値を算出する。当該第1開度指令値は、流量調整弁21における今回の第2供給管11B側の開度指令値を、上記補正後のアンモニアの必要供給量に応じて補正したものである。
【0096】
その後、制御部19Dは、上記補正後の第1開度指令値と、実施形態3と同様に算出した第2開度指令値と、を示す制御信号S4Aを生成し、この制御信号S4Aを流量調整弁21に送信する。これにより、制御部19Dは、流量調整弁21における今回の第2供給管11B側の開度を上記補正後の第1開度指令値の開度に制御するとともに、流量調整弁21における今回の燃料噴射弁4側の開度を上記第2開度指令値の開度に制御する。以上のようにして、排ガスの脱硝に必要なアンモニアの供給量は、排ガスセンサ25によるガス成分検出値をもとに補正される。
【0097】
以上、説明したように、本発明の実施形態5に係る排ガス脱硝装置10Dでは、反応器15による脱硝後の排ガスに含まれるガス成分量を排ガスセンサ25が検出し、排ガスの脱硝に必要なアンモニアの供給量を、排ガスセンサ25によるガス成分検出値をもとに補正するようにし、その他を実施形態3と同様に構成している。このため、上述した実施形態3と同様の作用効果を享受するとともに、混合器14内において排ガスと混合されるアンモニアの供給量を、当該排ガスの脱硝に適した供給量に補正することができ、これにより、脱硝後の排ガス中に含まれる窒素酸化物、アンモニア成分、または窒素酸化物およびアンモニア成分の両方の含有量を低減することができる。この結果、船舶から排出される排ガス中の窒素酸化物、アンモニア成分、または窒素酸化物およびアンモニア成分の両方の排出量を低減することができ、特に、排ガスの脱硝において過剰となったアンモニア成分が船舶外に排出される事態を防止することができる。
【0098】
(実施形態6)
つぎに、本発明の実施形態6に係る排ガス脱硝装置について説明する。
図6は、本発明の実施形態6に係る排ガス脱硝装置の一構成例を示す模式図である。
図6には、本実施形態6に係る排ガス脱硝装置10Eに加え、この排ガス脱硝装置10Eが適用される舶用ディーゼルエンジン1が図示されている。
図6に示すように、この排ガス脱硝装置10Eは、上述した実施形態1に係る排ガス脱硝装置10の第2供給管11に代えて第2供給管11Eを備える。また、本実施形態6においては、上述した実施形態1のアンモニア供給源8に代えてアンモニア供給源8Eが設置されている。その他の構成は実施形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0099】
第2供給管11Eは、舶用ディーゼルエンジン1の燃焼室2cに燃料として噴射されるアンモニアを収容したアンモニア供給源8Eと連通し、このアンモニア供給源8Eからのアンモニアを流通させる配管の一例である。詳細には、
図6に示すように、第2供給管11Eは、アンモニア供給源8Eと連通する第1供給管7から分岐するように配管され、これにより、燃料噴射系統3から分岐している。
【0100】
より詳細には、
図6に示すように、第2供給管11Eの入口端は第1供給管7の中途部と接合され、第2供給管11Eの出口端は混合器14(具体的には還元剤噴射部14a)と接合されている。この第2供給管11Eの中途部には、
図6に示すように、ドージングユニット13が設けられている。すなわち、第2供給管11Eは、第1供給管7を介してアンモニア供給源8とドージングユニット13とを連通する第1連通管11Eaと、ドージングユニット13と混合器14とを連通する第2連通管11Ebとによって構成される。このような第2供給管11Eは、アンモニア供給源8Eから送出されたアンモニアを、排ガスを脱硝するための還元剤として、ドージングユニット13を経由して混合器14へ流通させる。
【0101】
アンモニア供給源8Eは、燃料としてのアンモニア(具体的には液体アンモニア)の供給源となる設備である。本実施形態6において、アンモニア供給源8Eの内部(具体的にはアンモニア燃料タンク等のタンク内)には、上述した実施形態1のアンモニア供給源8よりも高圧の状態でアンモニアが収容されている。具体的には、このアンモニア供給源8Eに収容されたアンモニアの圧力は、ドージングユニット13の流量調整弁13aによって調整された流量のアンモニアを混合器14に供給するに必要な圧力以上である。したがって、アンモニア供給源8E内のアンモニアは、その高圧を利用して、アンモニア供給源8Eから第1供給管7および第2供給管11E(第1連通管11Ea)を通じてドージングユニット13へ流入し、流量調整弁13aによって流量調整されつつ、第2供給管11E(第2連通管11Eb)を通じて混合器14に供給される。なお、アンモニア供給源8Eの機能および構成は、収容するアンモニアが実施形態1よりも高圧であること以外、実施形態1のアンモニア供給源8と同様である。
【0102】
以上、説明したように、本発明の実施形態6に係る排ガス脱硝装置10Eでは、アンモニア供給源8Eに収容されたアンモニアの圧力を用い、流量調整弁13aによって調整された流量のアンモニアを混合器14に供給し、その他を実施形態1と同様に構成している。このため、上述した実施形態1の場合と同様の作用効果を享受するとともに、従来の排ガス脱硝装置に必要とされていた還元剤ポンプを用いなくとも、アンモニア供給源8E内のアンモニアの高い圧力を利用することにより、舶用ディーゼルエンジン1のアンモニア燃料ポンプ5aに必要なアンモニアの流量を確保しつつ、排ガスの脱硝に必要な供給量のアンモニアを排ガス脱硝装置10Eの混合器14に供給することができる。したがって、還元剤ポンプの設置が不要となることから、排ガス脱硝装置の装置規模をさらに小型化することができ、この結果、船舶内における排ガス脱硝装置の設置スペースをより小規模化して、船舶内への舶用ディーゼルエンジンおよび排ガス脱硝装置の設置に要するコストおよび時間をより低減することができる。
【0103】
なお、上述した実施形態1~6では、排ガス脱硝装置の供給管(第2供給管11、11A、11B、11E)を、アンモニア供給源とアンモニア燃料ポンプとを連通する配管(第1供給管7)に接合して、舶用ディーゼルエンジンの燃料噴射系統から分岐させていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、排ガス脱硝装置の供給管は、上記燃料噴射系統から分岐させず、アンモニア供給源に対して直に接合されてもよい。
【0104】
また、上述した実施形態1~6では、本発明に係る排ガス脱硝装置が適用される舶用ディーゼルエンジン1として、アンモニアおよび化石燃料の混焼、あるいはアンモニアの専焼を行って駆動するアンモニア燃焼エンジンを例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、舶用ディーゼルエンジン1は、化石燃料の代わりにバイオ燃料または合成燃料等の代替燃料を用いるものであって、アンモニアおよび代替燃料の混焼、あるいはアンモニアの専焼を行って駆動するアンモニア燃焼エンジンとしてもよい。
【0105】
また、上述した実施形態3では、アンモニア燃料ポンプのストローク制御と流量調整弁の開度制御とを一つの制御部によって行っていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、アンモニア燃料ポンプのストローク制御を行う制御部と、流量調整弁の開度制御を行う制御部とが、別体として分けて設けられてもよい。
【0106】
また、上述した実施形態4では、還元剤として排ガスと混合するアンモニアの温度を調整するための加熱部および温度センサを供給管の中途部(流量調整弁および流量センサの後段)に備えた排ガス脱硝装置を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、他の実施形態1~3、5、6においても同様に、これらの加熱部および温度センサを供給管の中途部に設けてもよく、この温度センサの検出結果をもとに、この加熱部の運転を制御してもよい。
【0107】
また、上述した実施形態5では、脱硝後の排ガス中のガス成分量を検出する排ガスセンサを反応器の排出管に備えた排ガス脱硝装置を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、他の実施形態1~4、6においても同様に、排ガスセンサを反応器の排出管に設けてもよく、この排ガスセンサの検出結果をもとに、混合器に供給するアンモニアの供給量を補正してもよい。
【0108】
また、上述した実施形態1~6により本発明が限定されるものではなく、上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上述した実施形態1~6に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0109】
1 舶用ディーゼルエンジン
2 駆動系統
2a シリンダ
2b ピストン
2c 燃焼室
2d 排気弁
3 燃料噴射系統
4 燃料噴射弁
5a アンモニア燃料ポンプ
5b 化石燃料ポンプ
6a、6b 噴射管
7 第1供給管
8、8E アンモニア供給源
9、9A 制御部
10、10A、10B、10C、10D、10E 排ガス脱硝装置
11、11A、11B、11E 第2供給管
11a、11Aa、11Ea 第1連通管
11b、11Ab、11Eb 第2連通管
11c 第3連通管
12 還元剤ポンプ
13 ドージングユニット
13a 流量調整弁
13b 流量センサ
14 混合器
14a 還元剤噴射部
15 反応器
16 送出管
17 排出管
19、19B、19C、19D 制御部
21 流量調整弁
22 流量センサ
23 加熱部
24 温度センサ
25 排ガスセンサ
101 排気部
S1、S1A、S11 入力信号
S2、S2A、S2B、S3、S4、S4A、S5、S13 制御信号
S12、S14、S15 検出信号