(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009492
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】スライダーおよびスライドファスナー
(51)【国際特許分類】
A44B 19/26 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
A44B19/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111056
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】木戸 晶之
(72)【発明者】
【氏名】張 万里
(72)【発明者】
【氏名】足立 武文
【テーマコード(参考)】
3B098
【Fターム(参考)】
3B098CA01
3B098CC03
(57)【要約】
【課題】ファスナーテープの見え幅を狭めても表皮などとの干渉を低減できるスライダーおよびスライドファスナーを提供すること。
【解決手段】スライダー1は、X方向の案内路を形成する上部材40および下部材50を備える。上部材40は、基部41および押え部42を有する。下部材50は、分離案内部51および連結案内部61を有する。連結案内部61は、底壁部62および左右の側壁部63,64を有する。分離案内部51は、底壁部62のY方向における中間部分に連続した本体部52と、基部41に接続された接続部53とを有する。分離案内部51には、エレメント列32を分離案内可能に前記上部材に向かって立ち上げられた分離案内面55が形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のファスナーストリンガー(2)のエレメント列(32)が通る案内路(10)を形成する上部材(40)および下部材(60)を備え、
前記上部材(40)は、前記案内路(10)の一端側に配置された基部(41)と、前記案内路(10)の他端側に配置された押え部(42)とを有し、
前記下部材(60)は、前記案内路(10)の一端側に配置された分離案内部(51)と、前記案内路(10)の他端側に配置された連結案内部(61)とを有し、
前記連結案内部(61)は、前記押え部(42)に対して前記エレメント列(32)が挿通可能に上下方向(Z方向)の間隔を隔てて配置された底壁部(62)と、前記エレメント列(32)が挿通可能に左右方向(Y方向)の間隔を隔てて配置された左右の側壁部(63,64)とを有し、
前記分離案内部(51)は、前記底壁部(62)の左右方向における中間部分に連続した本体部(52)と、前記基部(41)に接続された接続部(53)とを有し、
前記分離案内部(51)には、前記エレメント列(32)を分離案内可能に前記上部材(40)に向かって立ち上げられた分離案内面(55)が形成されるスライダー。
【請求項2】
前記分離案内部(51)には、前記分離案内面(55)から垂下した左右の側面(56,57)が形成され、
前記連結案内部(61)には、前記左右の側面(56,57)に連続する端面(613)が形成され、
前記左右の側面(56,57)に対する左右の空間は、前記分離案内部(51)の左右に開放した開放空間(58)となる請求項1に記載のスライダー。
【請求項3】
前記押え部(42)には、前記底壁部(62)に対向する押え面(421)が形成され、
前記分離案内部(51)には、左右方向に延出した規制片部(54)が形成され、
前記規制片部(54)の下面(541)の高さ位置は、前記押え面(421)よりも高い位置であって、前記案内路(10)の一端側における前記分離案内面(55)の端縁(551)の高さ位置に対して同等の位置または低い位置に配置される請求項1に記載のスライダー。
【請求項4】
前記分離案内部(51)は、前記底壁部(62)の左右方向における中央位置に配置される請求項1に記載のスライダー。
【請求項5】
前記分離案内面(55)の左右方向における幅寸法は、前記左右の側壁部(63,64)の間の左右方向における寸法に対して4分の1の寸法である請求項4に記載のスライダー。
【請求項6】
前記底壁部(62)には、前記押え部(42)に対向する底面(621)が形成され、
前記分離案内面(55)の前記底面(621)に対する傾斜角度は15°以上60°以下である請求項1に記載のスライダー。
【請求項7】
前記押え部(42)には、前記底壁部(62)に対向する押え面(421)と、前記押え面(421)から立ち上げられて前記基部(41)に連続する押え端面(422)とが形成され、
前記分離案内部(51)には、前記分離案内面(55)から垂下した左右の側面(56,57)が形成され、
前記連結案内部(61)には、前記左右の側面(56,57)に連続する端面(613)が形成され、
前記押え端面(422)のうち、前記左右の側面(56,57)よりも左右側に位置する部分は、前記連結案内部(61)の端面(613)に沿った仮想線(45)上であって上方の位置に配置される請求項1に記載のスライダー。
【請求項8】
前記押え部(42)には、前記底壁部(62)に対向する押え面(421)と、前記押え面(421)から立ち上げられて前記基部(41)に連続する押え端面(422)とが形成され、
前記分離案内部(51)には、前記分離案内面(55)から垂下した左右の側面(56,57)が形成され、
前記連結案内部(61)には、前記左右の側面(56,57)に連続する端面(613)が形成され、
前記押え端面(422)のうち、前記左右一方の側面(57)よりも左右一方側に位置する部分は、前記連結案内部(61)の端面(613)に沿った仮想線(45)上であって上方の位置に配置され、
前記押え端面(422)のうち、前記左右他方の側面(56)よりも左右他方側に位置する部分は、前記連結案内部(61)の端面(613)に沿った仮想線(45)上であって上方の位置よりも、前記案内路(10)の一端側の位置に配置される請求項1に記載のスライダー。
【請求項9】
前記分離案内部(51)には、前記分離案内面(55)から垂下した左右の側面(56,57)が形成され、
前記連結案内部(61)には、前記左右の側面(56,67)に連続する端面(613)が形成され、
前記底壁部(62)には、前記押え部(42)に対向する底面(621)が形成され、
前記連結案内部(61)の端面(613)のうち、前記左右の側面(56,57)の少なくとも一方側の部分と前記底面(421)とが連続する角部(70,70A)は、円弧状に形成される請求項1に記載のスライダー。
【請求項10】
左右一対のファスナーストリンガー(3A,3B)と、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のスライダー(1)とを備えるスライドファスナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対のファスナーストリンガーを連結および分離するスライダーおよびスライドファスナーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、左右一対のファスナーストリンガーを互いに連結および分離するスライドファスナー用スライダーが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
左右一対のファスナーストリンガーのそれぞれは、帯状のファスナーテープと、ファスナーテープの対向するテープ側縁部に形成されるエレメント列とを有している。
【0004】
スライダーは、スライダー胴体およびスライダー胴体に保持された引手を備えている。スライダー胴体は、上翼板と下翼板とが案内柱によって連結されて構成されている。上翼板には、その左右側縁部に沿ってフランジ部が垂下して設けられている。下翼板には、その左右側縁部に沿って突条部が立設されている。上翼板および下翼板は、左右一対のファスナーストリンガーのエレメント列が通るエレメント案内路を構成しており、フランジ部はエレメント列の左右位置を規制する。案内柱は、スライダーの走行において左右のエレメント列をその上下向きを保ったまま左右方向に分離する構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
左右一対のファスナーストリンガーのそれぞれのファスナーテープは表皮に縫製されるが、ファスナーテープと表皮との材料や構成は異なるので、ファスナーテープに波打ちが生じるおそれがある。ここで、本発明者は、鋭意検討により、左右方向においてファスナーテープと表皮との縫製位置をエレメント列に寄せて配置することで、ファスナーテープの波打ちを抑制することを発見した。
【0007】
ところで、左右方向においてファスナーテープと表皮との縫製位置をエレメント列に寄せて配置すると、左右一対のファスナーストリンガーを表皮側から見た際におけるファスナーテープの左右方向の見え幅が狭まることになる。このようにファスナーテープの見え幅が狭まる場合に特許文献1に記載のスライダーを採用すると、スライダーが表皮などに干渉するおそれがある。つまり、特許文献1に記載のスライダーでは、案内柱が左右のエレメント列をその上下向きを保ったまま左右方向に分離する構成とされているので、上翼板および下翼板の左右側縁部に設けられたフランジ部および突条部のうち、案内柱に対して左右に位置する部分が左右に大きく張り出した位置に配置されることとなり、この部分が表皮や縫製部分の糸に干渉するおそれがある。
【0008】
本発明は、ファスナーテープの見え幅を狭めても表皮などとの干渉を低減できるスライダーおよびスライドファスナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のスライダーは、左右一対のファスナーストリンガーのエレメント列が通る案内路を形成する上部材および下部材を備え、前記上部材は、前記案内路の一端側に配置された基部と、前記案内路の他端側に配置された押え部とを有し、前記下部材は、前記案内路の一端側に配置された分離案内部と、前記案内路の他端側に配置された連結案内部とを有し、前記連結案内部は、前記押え部に対して前記エレメント列が挿通可能に上下方向の間隔を隔てて配置された底壁部と、前記エレメント列が挿通可能に左右方向の間隔を隔てて配置された左右の側壁部とを有し、前記分離案内部は、前記底壁部の左右方向における中間部分に連続した本体部と、前記基部に接続された接続部とを有し、前記分離案内部には、前記エレメント列を分離案内可能に前記上部材に向かって立ち上げられた分離案内面が形成される。
本発明のスライドファスナーは、左右一対のファスナーストリンガーと、前述した本発明のスライダーとを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ファスナーテープの見え幅を狭めても表皮などとの干渉を低減できるスライダーおよびスライドファスナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るスライダーを示す斜視図。
【
図6】前記スライダーに通されるエレメントを後口側から示す説明図。
【
図7】前記スライダーに通されるエレメントを肩口側から示す説明図。
【
図8】前記スライダーの押え部の第1変形例を示す側面図。
【
図9】前記スライダーの押え部の第2変形例を示す側面図。
【
図10】前記スライダーの連結案内部の変形例を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本実施形態の構成]
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1から
図5において、本実施形態に係るスライダー1は、自動車シートなどの表皮2(
図5参照)に縫製される左右一対のファスナーストリンガー3A,3B(
図5参照)を連結および分離するものである。ファスナーストリンガー3A,3Bのそれぞれは、帯状のファスナーテープ31と、ファスナーテープ31の対向するテープ側縁部に形成されるエレメント列32とを有している。エレメント列32は、コイルエレメント等のエレメントがX方向に複数並んで配置されることで構成されている。なお、エレメントはコイルエレメントに限らず、各種のエレメントが採用可能である。
【0013】
以下の説明において、X方向をスライダー1の走行方向とし、X方向に直交するY方向をスライダー1の左右方向(幅方向)とし、X,Y方向に直交するZ方向をスライダー1の上下方向とする。また、+X方向をスライダー1が左右のエレメント列32を連結する方向とし、-X方向をスライダー1が左右のエレメント列32を分離する方向とし、+Y方向をスライダー1の左右一方の方向とし、-Y方向を左右他方の方向とし、+Z方向をスライダー1の上方向とし、-Z方向をスライダー1の下方向とする。
【0014】
スライダー1は、左右のエレメント列32が通る案内路10を形成する上部材40および下部材50を備えている。なお、本実施形態では、説明の便宜上、上部材40および下部材50がZ方向に対向して配置されているが、これらの対向方向は、ファスナーストリンガー3A,3Bの配置向きに応じて適宜変更される。
【0015】
上部材40は、案内路10の一端側としての肩口側に配置された基部41と、案内路10の他端側としての後口側に配置された押え部42とを有している。また、上部材40の肩口側の端面には引手取付部43が形成されており、引手取付部43に引手11(
図1参照)が取り付けられている。なお、
図2、
図4および
図7において引手11の図示を省略する。
【0016】
基部41は、略直方体状に形成されており、後述する接続部53が接続される接続穴部416が形成されている。基部41には、基部上面410と、後述する分離案内部51に対して+Z方向に面する基部下面412(下面)と、肩口側の基部端面413(端面)と、左右の基部側面414,415(側面)とが形成されている。基部下面412の高さ位置は、後述する押え面421の高さ位置よりも+Z方向に高い位置に配置されている。
【0017】
押え部42は、略立方体状に形成されている。押え部42には、押え上面420と、後述する底面621に対して、エレメント列32のZ方向の厚さ寸法と略同等の寸法の間隔を隔ててZ方向に対向して配置された押え面421(押え部42の下面)と、押え面421から+Z方向に立ち上げられ且つ押え面421に連続した押え端面422と、後口側の押え端面423(端面)と、左右の押え側面424,425とが形成されている。押え端面422のうちの少なくとも、左右の基部側面414,415よりもY方向における左右側(左右外側)に位置する部分(本実施形態では押え端面422の全体)は、後述する連結案内部61の端面613に沿った仮想線45(
図2参照)上であって+Z方向の位置に配置される。
【0018】
この上部材40のY方向における幅寸法は、後述する連結案内部61のY方向における幅寸法W3よりも小さい。上部材40の側面414,424は、連結案内部61の+Y方向側の外側面611に対して-Y方向側に配置されている。側面414,424は、外側面611に対して、Y方向の間隔寸法W2(
図3参照)を隔てて配置されている。
上部材40の側面415,425は、連結案内部61の-Y方向側の外側面612に対して+Y方向側に配置されている。側面415,425は、外側面612に対して上記の間隔寸法W2を隔てて配置されている。
【0019】
下部材50は、案内路10の肩口側に配置された分離案内部51と、案内路10の後口側に配置された連結案内部61とを有している。
【0020】
分離案内部51は、後述する底壁部62のY方向における中間部分に連続した本体部52と、基部41の接続穴部416に接続された接続部53と、本体部52からY方向に延出した規制片部54とを有している。
【0021】
本体部52は、本実施形態では略板状に形成されており、底壁部62のY方向における中央位置に配置されている。本体部52には、底壁部62から接続部53に向かうに連れてX方向に対して上方に傾斜した分離案内面55と、分離案内面55から垂下した左右の側面56,57とが形成されている。側面56,57に対する左右の空間は、分離案内部51の左右に開放した開放空間58となっている。開放空間58にフランジ部などは形成されていない。
【0022】
分離案内面55の底面621に対する傾斜角度は15°以上90°以下であり、より好ましくは30°以上45°以下である。この傾斜角度は、本実施形態では30°であるが、エレメント列32の材料や形状などに応じて、左右のエレメント列32を分離するのに適切な角度に適宜設定可能である。前述した傾斜角度を15°以上とすることで、エレメント列32が十分に立ち上げた状態にならず、このエレメント列32を押え部42で押さえて寝かせつつ連結案内部61を通しても、左右のエレメント列32の連結が困難となることをなくし得る。また、前述した傾斜角度を60°以下とすることで、エレメント列が過度に立ち上がってしまってスライダーの走行に対する抵抗が増すことを抑制できる。なお、前述した傾斜角度が15°よりも小さくても左右のエレメント列32の連結可能な構成であれば15°よりも小さくてもよい。
【0023】
分離案内面55の肩口側における端縁551から後口側における端縁552までの長さ寸法L1(
図2参照)もエレメント列32の材料や形状などに応じて、左右のエレメント列32を分離するのに適切な角度に適宜設定可能である。
【0024】
分離案内面55のY方向における幅寸法W1(
図3参照)は、本実施形態では、左右の側壁部63,64の間のY方向における寸法(間隔寸法)に対して4分の1の寸法であるが、1分の1から4分の1の寸法であってもよく、また、4分の1のよりも小さい寸法であってもよく、エレメント列のエレメント材料や形状に応じて適宜設定される。
【0025】
接続部53は、分離案内面55よりも肩口側に配置されており、規制片部54から+Z方向に延出して接続穴部416に挿通されている。接続部53は接続穴部416に接着されていてもよく、ネジやリベットなどの固定具によって基部41に固定されていてもよい。また、上部材40および下部材50を一体成形可能であれば、接続部53は基部41に一体に接続されていてもよい。
【0026】
規制片部54は、端縁551から本体部52の肩口側の端面521(
図2参照)までにわたって形成されている。規制片部54のY方向における端部の間の寸法(規制片部54のY方向長さ寸法)は、連結案内部61のY方向における幅寸法よりも小さい。規制片部54の下面541のZ方向における高さ位置は、押え面421の高さ位置よりも高い位置であって、分離案内面55の端縁551の高さ位置に対して同等の高さ位置に配置されている。
【0027】
連結案内部61は、押え部42に対してエレメント列32が挿通可能にZ方向の間隔を隔てて配置された底壁部62と、エレメント列32が挿通可能にY方向の間隔を隔てて配置された左右の側壁部63,64とを有している。また、連結案内部61には、前述した左右の外側面611,612と、分離案内部51の左右の側面56,57に連続する肩口側の端面613と、後口側の端面614とが形成されている。
【0028】
底壁部62には、押え部42にZ方向に対向する底面621が形成されている。底面621は、押え面421との間に、エレメント列32が挿通可能なZ方向の間隔を隔てて配置されている。
【0029】
側壁部63,64は、底壁部62のX方向寸法と同じX方向寸法を有して形成されている。側壁部63,64には、前述した外側面611,612と、底面621のX方向に沿った左右の側縁から+Z方向に立ち上げられた内側面631,641とが形成されている。
【0030】
内側面631,641は、X方向に沿った幅狭面部631A,641Aと、後口側から肩口側に向かうに連れてY方向外側に広がって傾斜した幅広面部631B,641Bとが形成されている。
【0031】
幅狭面部631A,641AにおけるY方向間隔は連結状態の左右のエレメント列32のY方向間隔と同じ間隔(1mm程度の若干の差がある場合を含む)である。幅広面部631B,641Bは幅狭面部631A,641Aの肩口側の縁部および端面613に連続している。本実施形態では、幅広面部631B,641Bの肩口側の縁部におけるY方向間隔は、規制片部54のY方向長さ寸法と略同じである。
【0032】
連結案内部61のY方向における幅寸法W3は、表皮2の間のY方向における寸法W4よりも小さくされている。このため、スライダー1全体は、その走行において表皮2に干渉することはない。
【0033】
[本実施形態の動作]
以下、本実施形態に係るスライダー1の動作について説明する。
第一に、連結状態のファスナーストリンガー3A,3Bを分離する場合について説明する。
まず、スライダー1を左右のエレメント列32に対して-X方向に走行させる。この走行により、
図6に示す連結状態(係合状態)の左右のエレメント列32が連結案内部61から分離案内部51へ案内される。
【0034】
分離案内部51では、分離案内面55に対して左右のエレメント列32のY方向内側部分が摺接し、この部分が分離案内面55に+Z方向に持ち上げられる。このように持ち上げられると、左右のエレメント列32は、そのY方向内側部分がそのY方向外側部分よりも+Z方向側の位置にある
図7に示す傾斜状態となりつつ互いに分離する。また、分離された左右のエレメント列32は、分離案内部51の規制片部54における下面541によって+Z方向に過度に立ち上がらないように規制される。
【0035】
分離された左右のエレメント列32は、スライダー1の肩口側から出る。前述したように、スライダー1はその-X方向の走行によって左右のエレメント列32を分離するので、例えば左右のエレメント列32を上方に全く立ち上げないでY方向だけに分離するようなスライダーと比べて、分離した左右のエレメント列32のY方向の開き幅寸法を小さくすることができる。
また、本実施形態では、分離案内部51の左右は前述したように開放空間58となっており、分離した左右のエレメント列32をX方向に案内するようなフランジ部などを備えておらず、このようなフランジ部などを備えるものと比べて、スライダー1のY方向寸法を小さくすることができる。
このため、ファスナーテープ31を表皮2に縫い付ける位置をY方向においてエレメント列32側に寄せた位置とし、表側からのファスナーテープ31のY方向における寸法、すなわち、Y方向の見え幅W5(
図5参照)を小さくしても、表皮2や、表皮2およびファスナーテープ31同士を縫製する糸などにスライダー1が干渉するおそれを低減でき、干渉による表皮2などの劣化やスライダー1の走行抵抗を抑えることができる。
【0036】
第二に、分離状態のファスナーストリンガー3A,3Bを連結する場合について説明する。
まず、スライダー1を左右のエレメント列32に対して+X方向に走行させる。この走行により、
図7に示す分離状態の左右のエレメント列32が分離案内部51から連結案内部61へ案内される。
【0037】
連結案内部61へ案内されるエレメント列32は、押え面421によって-Z方向に押えられ且つ底面621に支持されて、
図7に示す傾斜状態から
図6に示すY方向に沿った状態とされる。また、内側面631,641の間において幅広面部631B,641B側から幅狭面部631A,641A側に相対移動する左右のエレメント列32は、幅狭面部631A,641AによってY方向に挟持される。このため、左右のエレメント列32は、押え面421に押えられつつ内側面631,641に挟持されることで互いに連結(係合)する。
【0038】
連結された左右のエレメント列32は、スライダー1の後口側から出る。前述したように、スライダー1はその+X方向の走行によって左右のエレメント列32を連結する。
【0039】
なお、前述した本実施形態に係るスライダー1と、ファスナーストリンガー3A,3Bとを備えることによってスライドファスナーを構成できる。
【0040】
[変形例]
前記実施形態では、押え端面422は、連結案内部61の肩口側の端面613に沿った仮想線45上であって上方の位置に配置されているが、例えば
図8に示す第1変形例のように、押え端面422のうち、分離案内部51の側面57の左右位置よりも-Y方向側に位置する部分が仮想線45上であって上方の位置に配置され、且つ、押え端面422のうち、側面56の左右位置よりも+Y方向側に位置する部分が仮想線45上であって上方の位置よりも、肩口側の位置に配置されてもよい。また例えば、押え端面422のうち、分離案内部51の側面56の左右位置よりも+Y方向側に位置する部分が仮想線45上であって上方の位置に配置され、且つ、押え端面422のうち、側面57の左右位置よりも-Y方向側に位置する部分が仮想線45上であって上方の位置よりも、肩口側の位置に配置されてもよい。押え端面422のうち、側面57の左右位置よりも-Y方向側に位置する部分は、
図8に示すように、分離案内面55の端縁551,552の間のX方向における長さ寸法と同じX方向における長さ寸法L2とされてもよい。
【0041】
前記実施形態では、分離案内面55は底壁部62から接続部53に向かうに連れて上方に傾斜しているが、例えば
図9に示す第2変形例のように、分離案内部51において底壁部62から肩口側に離間した位置からZ方向に立ち上げられていてもよい。また、前記実施形態では、接続部53が基部41の接続穴部416に差し込まれて接続されているが、接続部53が基部41に一体に連続していてもよい。更に、基部41のY方向における幅寸法は接続部53と略同寸法であってもよく、肩口側から後口側に向かって平面視において先窄まり形状となっていてもよい。また、押え端面422は、押え部42から基部41までの部分が側面視において円弧状に形成され、且つ、基部41と連続する部分から押え上面420までの部分がZ方向に沿って形成されていてもよい。加えて、規制片部54は有していなくてもよい。
【0042】
前記実施形態では、連結案内部61の端面613と底面621とが連続する角部70(
図4および
図5参照)では、端面613と底面621とが直角に交わっているが、端面613のうち、左右の側面56,57の少なくとも一方側の部分と底面621とが連続する角部は、円弧状に形成されていてもよく、例えば
図10に示す変形例のように、端面613のうち、側面56側の部分と底面621とが連続する角部70Aは、円弧状に形成されていてもよい。また、端面613のうち、側面57側の部分と底面621とが連続する角部70(角部70Aを除く)が、円弧状に形成されていてもよく、更に、角部70全体が円弧状に形成されていてもよい。
【0043】
前記実施形態では、規制片部54の下面541の高さ位置は、分離案内面55の端縁551の高さ位置に対して同等の高さ位置に配置されているが、エレメント列32が案内路10を通れるのであれば、分離案内面55の端縁551の高さ位置よりも低い位置に配置されていてもよい。
【0044】
前記実施形態では、下部材50は、左右双方に延出した規制片部54を有しているが、左右一方のみに延出した規制片部を有していてもよく、また規制片部54を有していなくてもよい。
【0045】
前記実施形態では、分離案内部51は、底壁部62のY方向における中央位置に配置されているが、エレメント列32を案内可能であれば、Y方向に多少片寄っていてもよい。
【0046】
前記実施形態では、連結案内部61の側壁部63,64は、底壁部62のX方向寸法と同じX方向寸法を有して形成されているが、底壁部62のX方向寸法よりも小さくてもよい。
【0047】
[発明のまとめ]
本発明のスライダーは、左右一対のファスナーストリンガーのエレメント列が通る案内路を形成する上部材および下部材を備え、前記上部材は、前記案内路の一端側に配置された基部と、前記案内路の他端側に配置された押え部とを有し、前記下部材は、前記案内路の一端側に配置された分離案内部と、前記案内路の他端側に配置された連結案内部とを有し、前記連結案内部は、前記押え部に対して前記エレメント列が挿通可能に上下方向の間隔を隔てて配置された底壁部と、前記エレメント列が挿通可能に左右方向の間隔を隔てて配置された左右の側壁部とを有し、前記分離案内部は、前記底壁部の左右方向における中間部分に連続した本体部と、前記基部に接続された接続部とを有し、前記分離案内部前記エレメント列を分離案内可能に前記上部材に向かって立ち上げられた分離案内面が形成される。
本発明のスライダーによれば、左右一対のファスナーストリンガーを分離する場合には、案内路の他端側から一端側に向かってスライダーを走行させることで、連結状態の左右のエレメント列を分離案内部に向かって送ることができ、前述した分離案内面によって左右のエレメント列の少なくとも一方を上方に立ち上げつつ分離することができる。このため、左右のエレメント列をその上下向きを保ったまま左右方向に分離する場合と比べて、左右のエレメント列を分離する際の左右開き幅を狭めることができる。
また、左右一対のファスナーストリンガーを連結する場合には、案内路の一端側から他端側に向かってスライダーを走行させることで、分離状態の左右のエレメント列を連結案内部に向かって送ることができ、立ち上げられたエレメント列を押え部で下方に押えて寝かしつつ連結案内部の左右の側壁部の間を通すことで、左右のエレメント列を連結することができる。
更に、本発明のスライドファスナー用スライダーによれば、前述したように走行することで、左右一対のファスナーストリンガーを連結および分離できるので、分離案内部の左右位置や基部の左右位置に上下方向に延びたフランジ部や突条部などの構成を不要にでき、このため、ファスナーテープの見え幅を狭めても表皮などとの干渉を低減できる。
【0048】
本発明のスライダーでは、前記分離案内部には、前記分離案内面から垂下した左右の側面が形成され、前記連結案内部には、前記左右の側面に連続する端面が形成され、前記左右の側面に対する左右の空間は、前記分離案内部の左右に開放した開放空間となっていてもよい。
【0049】
本発明のスライダーでは、前記押え部には、前記底壁部に対向する押え面が形成され、前記分離案内部には、左右方向に延出した規制片部が形成され、前記規制片部の下面の高さ位置は、前記押え面よりも高い位置であって、前記案内路の一端側における前記分離案内面の端縁の高さ位置に対して同等の位置または低い位置に配置されてもよい。
このような構成によれば、規制片部によってエレメント列が過度に立ち上がることを規制でき、これにより、エレメント列が過度に立ち上がることでスライダーの走行に対する抵抗が増すことを抑制できる。
【0050】
本発明のスライダーでは、前記分離案内部は、前記底壁部の左右方向における中央位置に配置されてもよい。
このような構成によれば、左右のエレメント列が左右片側に片寄ることなく、スライダーを円滑に走行させることができる。
【0051】
本発明のスライダーでは、前記分離案内面の左右方向における幅寸法は、前記左右の側壁部の間の左右方向における寸法に対して4分の1の寸法であってもよい。
【0052】
本発明のスライダーでは、前記底壁部には、前記押え部に対向する底面が形成され、前記分離案内面の前記底面に対する傾斜角度は15°以上60°以下であってもよい。
このような構成によれば、前述した傾斜角度を15°以上とすることで、エレメント列が十分に立ち上げた状態にならず、このエレメント列を押え部で押さえて寝かせつつ連結案内部を通しても、左右のエレメント列の連結が困難となることをなくし得る。
また、前述した傾斜角度を60°以下とすることで、エレメント列が過度に立ち上がってしまってスライダーの走行に対する抵抗が増すことを抑制できる。
【0053】
本発明のスライダーでは、前記押え部には、前記底壁部に対向する押え面と、前記押え面から立ち上げられて前記基部に連続する押え端面とが形成され、前記分離案内部には、前記分離案内面から垂下した左右の側面が形成され、前記連結案内部には、前記左右の側面に連続する端面が形成され、前記押え端面のうち、前記左右の側面よりも左右側に位置する部分は、前記連結案内部の端面に沿った仮想線上であって上方の位置に配置されてもよい。
このような構成によれば、連結案内部から分離案内部に送られる左右のエレメント列を互いに同様に立ち上げて分離できる。
【0054】
本発明のスライダーでは、前記押え部には、前記底壁部に対向する押え面と、前記押え面から立ち上げられて前記基部に連続する押え端面とが形成され、前記分離案内部には、前記分離案内面から垂下した左右の側面が形成され、前記連結案内部には、前記左右の側面に連続する端面が形成され、前記押え端面のうち、前記左右一方の側面よりも左右一方側に位置する部分は、前記連結案内部の端面に沿った仮想線上であって上方の位置に配置され、前記押え端面のうち、前記左右他方の側面よりも左右他方側に位置する部分は、前記連結案内部の端面に沿った仮想線上であって上方の位置よりも、前記案内路の一端側の位置に配置されてもよい。
このような構成によれば、分離案内部において左右のエレメント列の互いの上下位置を異ならせることができ、これにより、左右のエレメント列をより円滑に分離できる。
【0055】
本発明のスライダーでは、前記分離案内部には、前記分離案内面から垂下した左右の側面が形成され、前記連結案内部には、前記左右の側面に連続する端面が形成され、前記底壁部には、前記押え部に対向する底面が形成され、前記連結案内部の端面のうち、前記左右の側面の少なくとも一方側の部分と前記底面とが連続する角部は、円弧状に形成されてもよい。
このような構成によれば、連結案内部の端面のうち、左右の側面の少なくとも一方側の部分と底面とが連続する角部を円弧状に形成することで、左右のエレメント列に沿った方向および左右方向において当該左右のエレメント列をスライダーに対して固定した状態としても、左右のエレメント列の互いの上下位置を異ならせたり合わせたりすることができ、このため、左右のエレメント列を連結および連結解除できる。
【0056】
本発明のスライドファスナーは、左右一対のファスナーストリンガーと、前述した本発明のスライダーとを備える。
本発明のスライドファスナーによれば、前述した本発明のスライダーと同様の効果を発揮するスライドファスナーを構成できる。
【符号の説明】
【0057】
1…スライダー、10…案内路、11…引手、2…表皮、31…ファスナーテープ、32…エレメント列、3A,3B…ファスナーストリンガー、40…上部材、41…基部、410…基部上面、412…基部下面、413…基部端面、414,415…基部側面、416…接続穴部、42…押え部、420…押え上面、421…押え面、422,423…押え端面、424,425…押え側面、43…引手取付部、45…仮想線、50…下部材、51…分離案内部、52…本体部、521,613,614…端面、53…接続部、54…規制片部、541…下面、55…分離案内面、551,552…端縁、56,57…側面、58…開放空間、61…連結案内部、611…外側面,612…外側面、62…底壁部、621…底面、63,64…側壁部、631,641…内側面、631A,641A…幅狭面部、631B,641B…幅広面部、70…角部、70A…角部、L1,L2…長さ寸法、W1~W4…寸法、W5…見え幅。