IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

特開2024-94921ケーブルシステム、残寿命予測装置、残寿命予測方法、及びコンピュータプログラム
<>
  • 特開-ケーブルシステム、残寿命予測装置、残寿命予測方法、及びコンピュータプログラム 図1
  • 特開-ケーブルシステム、残寿命予測装置、残寿命予測方法、及びコンピュータプログラム 図2
  • 特開-ケーブルシステム、残寿命予測装置、残寿命予測方法、及びコンピュータプログラム 図3
  • 特開-ケーブルシステム、残寿命予測装置、残寿命予測方法、及びコンピュータプログラム 図4
  • 特開-ケーブルシステム、残寿命予測装置、残寿命予測方法、及びコンピュータプログラム 図5
  • 特開-ケーブルシステム、残寿命予測装置、残寿命予測方法、及びコンピュータプログラム 図6
  • 特開-ケーブルシステム、残寿命予測装置、残寿命予測方法、及びコンピュータプログラム 図7
  • 特開-ケーブルシステム、残寿命予測装置、残寿命予測方法、及びコンピュータプログラム 図8
  • 特開-ケーブルシステム、残寿命予測装置、残寿命予測方法、及びコンピュータプログラム 図9
  • 特開-ケーブルシステム、残寿命予測装置、残寿命予測方法、及びコンピュータプログラム 図10
  • 特開-ケーブルシステム、残寿命予測装置、残寿命予測方法、及びコンピュータプログラム 図11
  • 特開-ケーブルシステム、残寿命予測装置、残寿命予測方法、及びコンピュータプログラム 図12
  • 特開-ケーブルシステム、残寿命予測装置、残寿命予測方法、及びコンピュータプログラム 図13
  • 特開-ケーブルシステム、残寿命予測装置、残寿命予測方法、及びコンピュータプログラム 図14
  • 特開-ケーブルシステム、残寿命予測装置、残寿命予測方法、及びコンピュータプログラム 図15
  • 特開-ケーブルシステム、残寿命予測装置、残寿命予測方法、及びコンピュータプログラム 図16
  • 特開-ケーブルシステム、残寿命予測装置、残寿命予測方法、及びコンピュータプログラム 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094921
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】ケーブルシステム、残寿命予測装置、残寿命予測方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/02 20060101AFI20240703BHJP
   G01D 5/353 20060101ALI20240703BHJP
   G01K 1/14 20210101ALI20240703BHJP
【FI】
G01N17/02
G01D5/353 C
G01K1/14 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211842
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】島田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】岡山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】西岡 亮平
(72)【発明者】
【氏名】伊田 尚馬
(72)【発明者】
【氏名】山下 真直
(72)【発明者】
【氏名】大西 庸嵩
(72)【発明者】
【氏名】豊川 修平
(72)【発明者】
【氏名】白地 央樹
(72)【発明者】
【氏名】清水 智規
(72)【発明者】
【氏名】加藤 勇夫
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 真人
【テーマコード(参考)】
2F056
2F103
2G050
【Fターム(参考)】
2F056CL07
2F103BA17
2F103BA22
2F103CA04
2F103CA07
2F103EB32
2F103EC09
2F103EC11
2G050BA10
2G050BA12
2G050EB10
(57)【要約】
【課題】ケーブルの残寿命予測を正確に行うことができる技術を提供する。
【解決手段】 本開示であるケーブルシステムは、電力又は信号が伝送される1又は複数の電線、及び、前記1又は複数の電線の長手方向に沿って配置されたセンサ線を含むケーブルと、前記センサ線の歪を検出する歪検出部と、前記ケーブルの温度を示す温度情報を取得する取得処理、及び、前記歪検出部の出力と前記温度情報とに基づいて前記1又は複数の電線の予測残寿命を求める残寿命予測処理を行う処理部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力又は信号が伝送される1又は複数の電線、及び、前記1又は複数の電線の長手方向に沿って配置されたセンサ線を含むケーブルと、
前記センサ線の歪を検出する歪検出部と、
前記ケーブルの温度を示す温度情報を取得する取得処理、及び、前記歪検出部の出力と前記温度情報とに基づいて前記1又は複数の電線の予測残寿命を求める残寿命予測処理を行う処理部と、を備える
ケーブルシステム。
【請求項2】
前記ケーブルは、
前記ケーブルが用いられる対象装置の第1部分に保持される固定側保持部と、
前記第1部分に対して相対移動する前記対象装置の第2部分に保持される可動側保持部と、を有する
請求項1に記載のケーブルシステム。
【請求項3】
前記固定側保持部に設けられ前記ケーブルの温度を検出するケーブル温度センサをさらに備え、
前記取得処理では、前記ケーブル温度センサの出力に基づいて前記温度情報が取得される
請求項2に記載のケーブルシステム。
【請求項4】
前記ケーブルが配線された配線空間の温度を検出する前記対象装置の空間温度センサの出力を受け付ける受付部をさらに備え、
前記取得処理では、前記空間温度センサの出力に基づいて前記温度情報が取得される
請求項2に記載のケーブルシステム。
【請求項5】
前記残寿命予測処理は、
前記歪検出部の出力に基づいて前記ケーブルの曲率変化量を求める第1処理と、
下記の疲労強度データ、前記ケーブルの曲率変化量、及び、前記温度情報に基づいて、前記1又は複数の電線の累積疲労損傷度を求め、前記1又は複数の電線の累積疲労損傷度に基づいて前記予測残寿命を求める第2処理と、を含む
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のケーブルシステム。
疲労強度データ:前記ケーブル変形時の曲率変化量に応じた前記1又は複数の電線の疲労強度と、前記ケーブルの温度との関係を示すデータ
【請求項6】
前記歪検出部は、前記センサ線の長手方向に沿って並ぶ複数の検出箇所それぞれの歪を検出可能であり、
前記ケーブルの曲率変化量は、前記複数の検出箇所の複数の曲率変化量を含み、
前記1の電線の累積疲労損傷度及び前記予測残寿命は、前記複数の検出箇所に対応する複数の累積疲労損傷度及び予測残寿命を含む
請求項5に記載のケーブルシステム。
【請求項7】
前記疲労強度データは、前記複数の電線のうち直径が最も太い電線の疲労強度データを含み、
前記1の電線の累積疲労損傷度及び前記予測残寿命は、前記直径が最も太い電線の累積疲労損傷度及び予測残寿命を含む
請求項5に記載のケーブルシステム。
【請求項8】
前記センサ線は、光ファイバケーブルを含み、
前記歪検出部は、
前記センサ線に入射光を与える光源と、
前記入射光に応じた反射光又は散乱光に基づいて前記センサ線の歪を検出する検出部と、を備える
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のケーブルシステム。
【請求項9】
前記センサ線は、導体線を含み、
前記歪検出部は、
前記センサ線に入射信号を与える信号源と、
前記入射信号に応じた反射信号に基づいて前記センサ線の歪を検出する検出部と、を備える
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のケーブルシステム。
【請求項10】
電力又は信号が伝送される1又は複数の電線を含むケーブルの残寿命を予測する残寿命予測装置であって、
前記ケーブルの温度を示す温度情報を取得する取得処理、及び、前記1又は複数の電線の長手方向に沿って前記ケーブル内に配置されるセンサ線の歪検出結果と前記温度情報とに基づいて前記1又は複数の電線の予測残寿命を求める残寿命予測処理を行う処理部を備える
残寿命予測装置。
【請求項11】
電力又は信号が伝送される1又は複数の電線を含むケーブルの残寿命を予測する残寿命予測方法であって、
前記1又は複数の電線の長手方向に沿って前記ケーブル内に配置されるセンサ線の歪を検出する歪検出ステップと、
前記ケーブルの温度を示す温度情報を取得する取得ステップと、
前記歪検出ステップによる検出結果、及び、前記温度情報に基づいて前記1又は複数の電線の予測残寿命を求める残寿命予測ステップと、を含む
残寿命予測方法。
【請求項12】
電力又は信号が伝送される1又は複数の電線を含むケーブルの残寿命を予測する残寿命予測処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータに
前記ケーブルの温度を示す温度情報を取得する取得ステップと、
前記1又は複数の電線の長手方向に沿って前記ケーブル内に配置されるセンサ線の歪検出結果、及び、前記温度情報に基づいて前記1又は複数の電線の予測残寿命を求める残寿命予測ステップと、を実行させる
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ケーブルシステム、残寿命予測装置、残寿命予測方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両やロボットのアーム等に用いられるケーブルには、可動部分に配線されるものがある。このようなケーブルは、可動部分の動作に応じて屈曲変形又は伸長変形が繰り返される。
このような繰り返し変形されるような使用環境下においては、ケーブル内部の電線に疲労が生じ、最終的に電線に断線が生じることがある。電線に断線が生じると、ケーブルは、寿命に至ったものと判断される。
【0003】
このため、繰り返し変形されるケーブルには、電力線や信号線を伝送するための電線以外に、検知線が設けられることがある。
この検知線は、繰り返し変形されるような使用環境下において、電線よりも早く断線するように構成されている。よって、検知線の断線の有無を検知することで、電線に断線が生じる前に、電線の寿命が残り少ないことを検出することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平1-2316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ケーブル等に用いられる撚線等の電線の疲労寿命は、変形時の曲率変化の大きさや、変形回数の他、使用環境の温度(ケーブルの温度)によって大きく変化する。
しかし、上記従来例では、電線とともに繰り返し変形される検知線の断線の有無のみで電線の寿命を予測するので、温度を加味した電線の疲労の進行度合を把握できず、ケーブルの正確な残寿命予測が困難であるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示であるケーブルシステムは、電力又は信号が伝送される1又は複数の電線、及び、前記1又は複数の電線の長手方向に沿って配置されたセンサ線を含むケーブルと、前記センサ線の歪を検出する歪検出部と、前記ケーブルの温度を示す温度情報を取得する取得処理、及び、前記歪検出部の出力と前記温度情報とに基づいて前記1又は複数の電線の予測残寿命を求める残寿命予測処理を行う処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ケーブルの残寿命予測を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係るケーブルシステムの一例を示すブロック図である。
図2図2は、第1実施形態のケーブルの長手方向に垂直な面における断面図である。
図3図3は、第1実施形態のケーブルの外観の一例を示す図である。
図4図4は、センサ線及び歪検出ユニットの構成を示すブロック図である。
図5図5は、センサ線による反射光を分光した分光スペクトルの一例を示すグラフである。
図6図6は、処理装置の一例を示す図である。
図7図7は、残寿命予測処理の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、歪データの内容を示すグラフの一例を示す図である。
図9図9は、変換データの一例を示す図である。
図10図10は、疲労強度データの一例を示す図である。
図11図11は、疲労度データの一例を示す図である。
図12図12は、第2実施形態に係るケーブルシステムの処理装置が実行する残寿命予測処理を示す図である。
図13図13は、第2実施形態の疲労度データの一例を示す図である。
図14図14は、第3実施形態に係るケーブルシステムの処理装置が有する疲労強度データの内容を示す図である。
図15図15は、第3実施形態の疲労度データの一例を示す図である。
図16図16は、第4実施形態に係るケーブルシステムの処理装置を示す図である。
図17図17は、導体線を用いた場合のセンサ線及び歪検出ユニットの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に実施形態の内容を列記して説明する。
[実施形態の概要]
【0010】
(1)本開示であるケーブルシステムは、電力又は信号が伝送される1又は複数の電線、及び、前記1又は複数の電線の長手方向に沿って配置されたセンサ線を含むケーブルと、前記センサ線の歪を検出する歪検出部と、前記ケーブルの温度を示す温度情報を取得する取得処理、及び、前記歪検出部の出力と前記温度情報とに基づいて前記1又は複数の電線の予測残寿命を求める残寿命予測処理を行う処理部と、を備える。
【0011】
上記構成において、センサ線の歪はケーブル及びケーブルに含まれる電線が屈曲変形したり伸長変形したりしたときの変形状態を示す。
すなわち、上記構成によれば、電線の変形状態を示す歪検出部の出力と、温度情報と、に基づいて電線の予測残寿命を求めることで、ケーブルの温度を加味した電線の予測残寿命を求めることができる。
この結果、ケーブルの残寿命予測を正確に行うことができる。
【0012】
(2)上記(1)のケーブルシステムにおいて、前記ケーブルは、前記ケーブルが用いられる対象装置の第1部分に保持される固定側保持部と、前記第1部分に対して相対移動する前記対象装置の第2部分に保持される可動側保持部と、を有することがある。
この場合、ケーブルは、対象装置の第1部分と、第2部分との間に配線され、第2部分の動作に応じて屈曲変形又は伸長変形する。
よって、処理部は、対象装置に配線されて繰り返し変形されるケーブルの予測残寿命を求めることができる。
【0013】
(3)上記(2)のケーブルシステムにおいて、前記固定側保持部に設けられ前記ケーブルの温度を検出するケーブル温度センサをさらに備える場合、前記取得処理では、前記ケーブル温度センサの出力に基づいて前記温度情報が取得されるように構成されていてもよい。
この場合、ケーブル温度センサが第2部分の移動に伴って移動することがない。このため、ケーブル温度センサに位置ずれが生じたり、周囲環境が変化したりするのを抑制でき、安定してケーブルの温度を検出することができる。
【0014】
(4)ケーブル温度は、配線空間の温度に応じて定まる。
従って、上記(2)又は(3)のケーブルシステムにおいて、前記ケーブルが配線された配線空間の温度を検出する前記対象装置の空間温度センサの出力を受け付ける受付部をさらに備える場合、前記取得処理では、前記空間温度センサの出力に基づいて前記温度情報が取得されてもよい。
この場合、対象装置の空間温度センサから温度情報を得ることができる。
【0015】
(5)また、上記(1)から(4)の少なくともいずれかのケーブルシステムにおいて、前記残寿命予測処理は、前記歪検出部の出力に基づいて前記ケーブルの曲率変化量を求める第1処理と、下記の疲労強度データ、前記ケーブルの曲率変化量、及び、前記温度情報に基づいて、前記1又は複数の電線の累積疲労損傷度を求め、前記1又は複数の電線の累積疲労損傷度に基づいて前記予測残寿命を求める第2処理と、を含んでいてもよい。
疲労強度データ:前記ケーブル変形時の曲率変化量に応じた前記1又は複数の電線の疲労強度と、前記ケーブルの温度との関係を示すデータ
この場合、処理部が累積疲労損傷度及び予測残寿命を求めるので、ケーブルの温度を加味した電線の疲労の進行度合を把握することができる。この結果、ケーブルの残寿命予測をより正確に行うことができる。
また、複数の電線それぞれの累積疲労損傷度及び予測残寿命を求める場合、1つのセンサ線のみで、複数の電線それぞれの累積疲労損傷度及び予測残寿命を求めることができる。
【0016】
(6)また、上記(5)のケーブルシステムにおいて、前記歪検出部は、前記センサ線の長手方向に沿って並ぶ複数の検出箇所それぞれの歪を検出可能であり、前記ケーブルの曲率変化量が、前記複数の検出箇所の複数の曲率変化量を含む場合、前記1の電線の累積疲労損傷度及び前記予測残寿命は、前記複数の検出箇所に対応する複数の累積疲労損傷度及び予測残寿命を含んでいてもよい。
この場合、複数の検出箇所それぞれに対応する電線の部分的な累積疲労損傷度及び予測残寿命を得ることができる。この結果、電線の累積疲労損傷度及び予測残寿命の長手方向における分布を把握でき、電線において最も疲労が進んでいる長手方向の箇所を把握することができる。
【0017】
(7)電線は、一般に、直径が相対的に大きければ、疲労寿命が短くなる傾向がある。
このため、上記(5)又は(6)のケーブルシステムにおいて、前記疲労強度データが、前記複数の電線のうち、直径が最も太い電線の疲労強度データを含む場合、前記1の電線の累積疲労損傷度及び前記予測残寿命は、前記直径が最も太い電線の累積疲労損傷度及び予測残寿命を含んでいてもよい。
この場合、電線及び1又は複数の他の電線のうち、相対的に疲労寿命が短くなる直径が最も太い電線の累積疲労損傷度及び予測残寿命を求めれば、ケーブルの残寿命予測を行うことができる。
【0018】
(8)また、上記(1)から(7)のケーブルシステムにおいて、前記センサ線が、光ファイバケーブルを含む場合、前記歪検出部は、前記センサ線に入射光を与える光源と、前記入射光に応じた反射光又は散乱光に基づいて前記センサ線の歪を検出する検出部と、を備えていてもよい。
【0019】
(9)また、上記(1)から(7)のケーブルシステムにおいて、前記センサ線が、導体線を含む場合、前記歪検出部は、前記センサ線に入射信号を与える信号源と、前記入射信号に応じた反射信号に基づいて前記センサ線の歪を検出する検出部と、を備えていてもよい。
【0020】
(10)また、他の観点からみた本開示は、電力又は信号が伝送される1又は複数の電線を含むケーブルの残寿命を予測する残寿命予測装置である。この残寿命予測装置は、前記ケーブルの温度を示す温度情報を取得する取得処理、及び、前記1又は複数の電線の長手方向に沿って前記ケーブル内に配置されるセンサ線の歪検出結果と前記温度情報とに基づいて前記1又は複数の電線の予測残寿命を求める残寿命予測処理を行う処理部を備える。
【0021】
(11)他の観点からみた本開示は、電力又は信号が伝送される1又は複数の電線を含むケーブルの残寿命を予測する残寿命予測方法である。この残寿命予測方法は、前記1又は複数の電線の長手方向に沿って前記ケーブル内に配置されるセンサ線の歪を検出する歪検出ステップと、前記ケーブルの温度を示す温度情報を取得する取得ステップと、前記歪検出ステップによる検出結果、及び、前記温度情報に基づいて前記1又は複数の電線の予測残寿命を求める残寿命予測ステップと、を含む。
【0022】
(12)さらに他の観点からみた実施形態は、電力又は信号が伝送される1又は複数の電線を含むケーブルの残寿命を予測する残寿命予測処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムである。このコンピュータプログラムは、コンピュータに、前記ケーブルの温度を示す温度情報を取得する取得ステップと、前記1又は複数の電線の長手方向に沿って前記ケーブル内に配置されるセンサ線の歪検出結果、及び、前記温度情報に基づいて前記1又は複数の電線の予測残寿命を求める残寿命予測ステップと、を実行させる。
【0023】
[実施形態の詳細]
以下、好ましい実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、以下に記載する各実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0024】
〔第1実施形態のケーブルシステムについて〕
図1は、第1実施形態に係るケーブルシステムの一例を示すブロック図である。
図1中、ケーブルシステム1は、対象装置に搭載されるシステムである。本実施形態における対象装置は、自動車等の車両である。
ケーブルシステム1は、ケーブル2と、歪検出ユニット4と、ケーブル温度センサ6と、処理装置8と、を含む。
【0025】
ケーブル2は、車両の電動ブレーキ機構100と、車両の電子制御装置102(ECU:Electric Control Unit)との間に設けられる。ケーブル2は、電動ブレーキ機構100と、ECU102と、の間における制御信号や電力等の伝送に用いられる。
ケーブル2は、電力や制御信号の伝送に用いられる電線群10の他、センサ線12を含む。センサ線12は、電線群10の長手方向に沿って配置されている。
歪検出ユニット4(歪検出部)は、センサ線12の歪を検出する機能を有する。歪検出ユニット4は、ECU102に接続されている。歪検出ユニット4の出力は、ECU102に与えられる。
ケーブル温度センサ6は、ケーブル2の温度(ケーブル温度)を検出する機能を有する。ケーブル温度センサ6は、ECU102に接続されている。ケーブル温度センサ6の出力は、ECU102へ与えられる。
【0026】
処理装置8は、処理部8aと、記憶部8bと、出力部8cと、第1入力部8dと、を備えるコンピュータ等により構成される。
処理装置8は、ECU102に通信可能に接続されている。
ECU102は、歪検出ユニット4の出力、及び、ケーブル温度センサ6の出力を、処理装置8へ与える。つまり、歪検出ユニット4の出力、及び、ケーブル温度センサ6の出力は、ECU102を経由して、処理装置8へ与えられる。
処理装置8は、歪検出ユニット4の出力、及び、ケーブル温度センサ6の出力に基づいて、ケーブル2の予測残寿命を求める。処理装置8については、後に詳述する。
【0027】
〔ケーブル2について〕
図2は、本実施形態のケーブル2の長手方向に垂直な面における断面図である。
上述したように、ケーブル2は、電線群10と、センサ線12と、を含む。
電線群10は、2本の電力線16と、1本の対撚信号線18と、1本の電線20と、を含む。
2本の電力線16は、電動ブレーキ機構100に伝達される電力を供給するための被覆電線である。
2本の電力線16のうち、一方がプラス側の電線、他方がマイナス側の電線である。2本の電力線16のそれぞれは、芯線16aと、被覆16bと、を有する。芯線16aは、銅、アルミニウム等の導体によって形成される。芯線16aは、複数の素線を撚り合わせた撚線であってもよいし、撚線を撚り合わせた撚撚線であってもよいし、単一の素線であってもよい。被覆16bは、芯線16aの周囲に形成されている。被覆16bは、樹脂によって形成される。
また、2本の電力線16の直径は同じであり、他の電線の直径よりも大きい。つまり、2本の電力線16の直径は、電線群10のうちで最も大きい。
【0028】
対撚信号線18は、電動ブレーキ機構100と、ECU102と、の間で授受される信号を伝送するための被覆電線である。
対撚信号線18は、2本の信号線19を含む。2本の信号線19は、互いに撚り合わされることで1本の対撚信号線18を構成する。2本の信号線19のそれぞれは、芯線19aと、被覆19bと、を有する。芯線19aは、銅、アルミニウム等の導体によって形成された電線である。芯線19aは、複数の素線を撚り合わせた撚線であってもよいし、撚線を撚り合わせた撚撚線であってもよいし、単一の素線であってもよい。被覆19bは、芯線19aの周囲に形成されている。被覆19bは、樹脂によって形成される。
なお、対撚信号線18は、2本より多い本数の信号線19を含んでいてもよい。
【0029】
電線20は、汎用的に用いられる被覆電線である。電線20も、導体からなる芯線20aと、樹脂からなる被覆20bと、を有する。電線20は無くてもよい。また、後述するようにセンサ線12が導体線である場合、センサ線12に対応する接地線として用いることができる。
【0030】
ケーブル2は、外周被覆層22をさらに有する。外周被覆層22は、電線群10の外周側を覆う樹脂層である。外周被覆層22は、複数の層で構成されていてもよいし、単一の層で構成されていてもよい。
電線群10及びセンサ線12は、外周被覆層22によって、1本のケーブル2とされる。
【0031】
センサ線12は、ケーブル2の断面におけるほぼ中心に配置されている。本実施形態のセンサ線12は、光ファイバケーブルによって構成されている。センサ線12については、後に詳述する。
【0032】
図3は、本実施形態のケーブル2の外観の一例を示す図である。
本実施形態のケーブル2は、上述したように、車両の電動ブレーキ機構100と、ECU102との間に設けられる。
ここで、電動ブレーキ機構100は、車両において車輪を支持するハブ側に設けられる。一方、ECU102は車両の車体側に設けられる。
車両のハブは、車体に対して移動可能に設けられている。
ケーブル2は、車体側と、車体に対して移動可能なハブ側と、の間をつなぐように配線される。
【0033】
図3に示すように、ケーブル2の第1端部2aは、車両110の第1部分104に保持される。第1部分104は、車両110の車体の一部分である。第1端部2aは、ケーブル2の長手方向一方側の端部である。
第1部分104には、ブラケット104aが固定されている。ブラケット104aは、ケーブル2の外周に装着される。
ケーブル2の第1端部2aは、ブラケット104aによって保持される固定側保持部2a1を有する。固定側保持部2a1は、第1端部2aの外周面に設けられる。固定側保持部2a1は、第1端部2aの外周面のうち、装着されたブラケット104aが当接する部分である。
ブラケット104aは、ケーブル2の固定側保持部2a1を保持する。これによって、第1端部2aは、第1部分104に保持される。
【0034】
また、ケーブル2の第2端部2bは、車両110の第2部分106に保持される。第2部分106は、ハブとともに可動する可動部の一部分である。よって、第2部分106は、第1部分104に対して相対移動する。第2端部2bは、ケーブル2の長手方向において第1端部2aと反対側の端部である。
第2部分106には、ブラケット106aが固定されている。ブラケット106aは、ケーブル2の外周に装着される。
ケーブル2の第2端部2bは、ブラケット106aによって保持される可動側保持部2b1を有する。可動側保持部2b1は、第2端部2bの外周面に設けられる。可動側保持部2b1は、第2端部2bの外周面のうち、装着されたブラケット106aが当接する部分である。
ブラケット106aは、ケーブル2の可動側保持部2b1を保持する。これによって、第2端部2bは、第2部分106に保持される。
【0035】
図3に示すように、第2部分106は、第1位置と、第2位置との間を第1部分104に対して相対移動する。
図3では、第2部分106が第1位置に位置するときのケーブル2を実線で示し、第2部分106が第2位置に位置するときのケーブル2を2点鎖線で示している。
【0036】
第2部分106が第1位置に位置するとき、ケーブル2は屈曲状態である。
第2部分106が第2位置に位置するとき、ケーブル2は第1位置よりもさらに深い屈曲状態となる。
車両が走行すると、第2部分106は、第1位置と第2位置との間を繰り返し相対移動する。
ケーブル2は、第2部分106の移動に応じて、屈曲変形及び伸長変形する。
屈曲変形とは、曲率が増加する方向への変形である。伸長変形とは、曲率が減少する方向への変形である。よって、第2部分106が第1位置から第2位置へ移動するとき、ケーブル2は、屈曲変形する。また、第2部分106が第2位置から第1位置へ移動するとき、ケーブル2は、伸長変形する。
なお、ケーブル2の固定側保持部2a1は、第1部分104に保持される。よって、固定側保持部2a1は、第2部分106の移動に応じて移動することはない。
【0037】
また、固定側保持部2a1には、上述のケーブル温度センサ6が装着されている。
ケーブル温度センサ6は、ケーブル2の外周面(外周被覆層22の外面)に装着されている。ケーブル温度センサ6は、ケーブル2の固定側保持部2a1と、ブラケット104aとの間に介在し固定される。
【0038】
〔センサ線及び歪検出ユニット4について〕
図4は、センサ線12及び歪検出ユニット4の構成を示すブロック図である。
本実施形態のセンサ線12は、光ファイバケーブルである。
センサ線12は、光ファイバ部12aと、複数のFBG(Fiber Bragg Grating)部12bと、を含む。複数のFBG部12bは、第1FBG部12b1、第2FBG部12b2、第3FBG部12b3、・・・及び、第nFBG部12bnを含む。各FBG部12b1、12b2、12b3・・・12bnは、単にFBG部12bと示すことがある。
【0039】
複数のFBG部12bは、センサ線12の長手方向に沿って所定の間隔を置いて設けられている。
光ファイバ部12aは、複数のFBG部12bのうち互いに隣接するFBG部12b同士の間に設けられている。
歪検出ユニット4は、複数のFBG部12bに生じる歪みを検出する。つまり、各FBG部12bの位置は、歪検出ユニット4によって歪が検出される検出箇所である。
複数のFBG部12bそれぞれのコアには、所定のピッチで長手方向に並ぶ複数の回折格子が設けられている。FBG部12bは、コアに複数の回折格子が形成されている以外、光ファイバ部12aと同じ構造を有している。
【0040】
FBG部12bは、入射光のうち特定の波長の光のみを反射させ、それ以外の光を透過させる機能を有している。
この反射光の強度や波長変化等に基づいて、センサ線12の長手方向におけるFBG部12bの部分の歪が検出される。
FBG部12bの反射光の波長は、複数の回折格子のピッチによって定まる。複数のFBG部12bは、互いに異なる波長の光を反射するように構成される。
このため、センサ線12に入射光を与えたときに得られる反射光を分光することで、複数のFBG部12bそれぞれの反射光のデータを個別に取得することができる。
複数のFBG部12bそれぞれの反射光に基づいて、複数のFBG部12bそれぞれの歪が個別に検出される。
【0041】
図5は、センサ線12による反射光を分光した分光スペクトルの一例を示すグラフである。図5中、横軸は波長、縦軸は反射波の強度を示している。
図5中、反射光のスペクトルに表れるピークS1、S2、S3、・・Snは、FBG部12b1、12b2、12b3・・・12bnの反射光に対応しているものとする。
このように、各FBG部12bの反射光は互いに波長が異なる。このため、センサ線12から得られる反射光のスペクトルから、各FBG部12bの反射光を分離し、個別に特性を取得することができる。
【0042】
ここで、例えば、第3FBG部12b3に歪が生じたとする。この場合、ピークS3は、歪量に応じてΔλだけ基準波長に対してずれが生じる。この波長のずれΔλを検出することで、FBG部12bにおいて生じた歪を検出することができる。なお、基準波長は、予め設定される。
【0043】
図4に示すように、歪検出ユニット4は、センサ線12の端部に接続されている。歪検出ユニット4が接続されるセンサ線12の端部は、ケーブル2の第1端部2a側の端部である。
歪検出ユニット4は、光源4aと、サーキュレータ4bと、検出部4cと、を有する。
光源4aは、センサ線12の端部に与える入射光を出力する。
サーキュレータ4bは、光源4aから出力される入射光をセンサ線12の端部に与え、センサ線12からの反射光を検出部4cへ与える。
検出部4cは、サーキュレータ4bから与えられる反射光を受光する。検出部4cは、受光した反射光を分光し、反射光の分光スペクトルを示すデータを生成する。生成されたデータは、歪検出ユニット4の出力としてECU102へ与える。歪検出ユニット4の出力は、ECU102を介して処理装置8へ与えられる。
【0044】
歪検出ユニット4の出力である反射光のデータは、複数のFBG部12bにより検出された歪を示す情報を含んでいる。つまり、歪検出ユニット4は、センサ線12の長手方向に沿って並ぶ複数のFBG部12bの部分それぞれの歪を検出する。
【0045】
〔処理装置8について〕
図6は、処理装置8の一例を示す図である。上述のように、処理装置8は、処理部8aと、記憶部8bと、出力部8cと、第1入力部8dと、を備える。
処理部8aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、量子プロセッサ等、コンピュータの制御に適合する種々のプロセッサである。
【0046】
記憶部8bは、例えば、フラッシュメモリ、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)等である。
記憶部8bには、処理部8aに実行させるためのコンピュータプログラムや、必要な情報が記憶されている。処理部8aは、記憶部8bのようなコンピュータ読み取り可能な非一過性の記録媒体に記憶されたコンピュータプログラムを実行することで、処理装置8が有する各種処理機能を実現する。
さらに、記憶部8bには、変換データ26、疲労強度データ27、及び疲労度データ28が記憶されている。これらデータについては、後に説明する。
【0047】
出力部8cは、処理部8aによる処理に関する各種情報を、外部へ向けて出力する機能を有する。出力部8cは、無線通信装置を含んでいてもよい。この場合、出力部8cは、無線通信によって、各種情報を出力する。また、出力部8cは、モニタや、インジケータ、スピーカを含んでいてもよい。この場合、出力部8cは、これらデバイスによって、各種情報を出力する。
第1入力部8dは、ECU102からの各種情報を受信するためのインターフェースである。処理装置8は、ECU102を経由して与えられる歪検出ユニット4の出力、及び、ケーブル温度センサ6の出力を、第1入力部8dによって受け付ける。
【0048】
処理部8aは、取得処理24、及び、残寿命予測処理25を行う機能を有する。
取得処理24は、ケーブル2の温度を示す温度情報を取得する処理である。
残寿命予測処理25は、歪検出ユニット4の出力、及び、温度情報に基づいて、電線群10の疲労残寿命を予測する処理である。
残寿命予測処理25は、第1処理25aと、第2処理25bと、を含む。
第1処理25aは、歪検出ユニット4の出力に基づいてケーブル2の曲率変化量を求める処理である。
第2処理25bは、疲労強度データ27、ケーブル2の曲率変化量、及び、ケーブル温度センサ6に基づいて、電線群10の累積疲労損傷度を求め、求めた累積疲労損傷度に基づいて電線群10の予測残寿命を求める処理である。
【0049】
〔処理装置8が実行する処理について〕
処理部8aは、取得処理24(図6)を常時実行する。取得処理24において、処理部8aは、ケーブル温度センサ6の出力に基づいて、ケーブル2の温度を示す温度情報を取得する。
記憶部8bには、ケーブル温度センサ6の出力と、温度情報と、の関係を示すデータが記憶されている。処理部8aは、このデータを用いて温度情報を取得する。温度情報は、疲労強度データ27におけるケーブル2の温度の取得条件と同様の取得条件で取得されるケーブル2の温度を示している。前記データは、ケーブル温度センサ6の出力から、温度情報を求めることが可能なデータであればよく、実験やシミュレーション等によって求められたテーブルであってもよいし、数式であってもよい。
【0050】
処理部8aは、ケーブル温度センサ6の出力に基づいて温度情報を経時的に取得する。処理部8aは、温度情報と、その温度情報を取得した時間と、を対応付け、温度データとして記憶部8bに記憶させる。
処理部8aは、取得処理24を実行しつつ、残寿命予測処理25(図6)を実行する。
【0051】
図7は、残寿命予測処理25の一例を示すフローチャートである。
残寿命予測処理25において、処理部8aは、まず、カウンタ値nを1に設定し(ステップS1)、歪検出ユニット4の出力の取得を開始する(ステップS2)。
【0052】
歪検出ユニット4の出力である反射光のデータは、複数のFBG部12bそれぞれの反射光の波長を示す情報を含んでいる。
処理部8aは、反射光のデータに基づいて、複数のFBG部12bそれぞれの反射光の波長のずれΔλを求め、波長のずれΔλに基づいて、複数のFBG部12bそれぞれの箇所の歪εを求める。
【0053】
記憶部8bには、複数のFBG部12bそれぞれの反射光の波長のずれΔλと、歪εと、の間の関係を示すデータが記憶されている。処理部8aは、前記データを用いて歪εを求める。前記データは、反射光の波長のずれΔλから、歪εを求めることが可能なデータであればよく、実験やシミュレーション等によって求められたテーブルであってもよいし、数式であってもよい。
【0054】
処理部8aは、歪検出ユニット4の出力に基づいて歪εを経時的に取得する。処理部8aは、歪εと、その歪εを取得した時間と、を対応付け、歪データとして記憶部8bに記憶させる。
記憶部8bには、複数の歪データが記憶される。複数の歪データは、複数のFBG部12bに対応する。
処理部8aは、ステップS3以降の処理を実行しつつ、歪検出ユニット4の出力の取得(歪εの取得)を継続的に実行する。
なお、上記歪εとは、複数のFBG部12bそれぞれの箇所における部分的な長手方向の変形量である。
【0055】
図8は、歪データの内容を示すグラフの一例を示す図である。図8に示すように、歪データは、歪εの経時変化を示している。
図8中、歪εは、増加及び減少を繰り返す。
歪εの増加は、ケーブル2の屈曲変形によって生じる。
歪εの減少は、ケーブル2の伸長変形に応じて生じる。
以下の説明では、処理装置8が、時間t0において残寿命予測処理25を開始したものとし、時系列に従って順番に説明する。
【0056】
図7中のステップS2において歪検出ユニット4の出力の取得を開始すると、処理部8aは、歪εの最大振幅値Δεmaxを取得する(図7中、ステップS3)。
処理部8aは、図8に示す歪データを参照し、極大値Vmax、及び、極小値Vminを特定し、歪εの振幅値Δεを求める。
【0057】
ここで、極大値Vmaxは、歪εが増加から減少に転じる値である。極小値Vminは、減少から増加に転じる値である。歪εの振幅値Δεは、経時的に隣接する極大値Vmaxと極小値Vminとの差である。
【0058】
図8中、極大値Vmaxの時間t1、t3、t5は、屈曲変形から伸長変形に切り替わるタイミングである。また、極小値Vminの時間t2、t4は、伸長変形から屈曲変形に切り替わるタイミングである。
本実施形態では、経時的に隣接する極値同士の期間を1回の変形とカウントする。
時間t1から時間t2までの間は、1回の伸長変形とカウントされる。この1回の伸長変形よる歪変化量が振幅値Δε1である。
また、時間t2から時間t3までの間は、1回の屈曲変形とカウントされる。この1回の屈曲変形よる歪変化量が振幅値Δε2である。
【0059】
図8において、処理部8aは、時間t0から時間軸に沿って順番に極大値Vmax及び極小値Vminを特定する。
よって、処理部8aは、残寿命予測処理25を開始すると、まず、時間t1における極大値Vmaxと時間t2における極小値Vminとを特定し、振幅値Δε1を求める。
このとき、処理部8aは、複数のFBG部12bに対応して複数の振幅値Δε1を求める。
【0060】
なお、ケーブル2が屈曲変形又は伸長変形する際、ケーブル2の各部は同じ方向に変形するため、複数のFBG部12bの複数の歪εそれぞれの極大値Vmaxのタイミング(極小値Vminのタイミング)は、互いにほぼ一致すると考えられる。
よって、複数のFBG部12bそれぞれの振幅値Δεが得られるタイミングもほぼ一致すると考えられる。以下の説明では、複数のFBG部12bそれぞれの振幅値Δεが得られるタイミングは一致するものとして説明する。
【0061】
次いで、処理部8aは、同じタイミングで得られた複数の振幅値Δεのうち、最も大きい振幅値Δεを最大振幅値Δεmaxとして取得する。
上述のように、複数のFBG部12bそれぞれの振幅値Δεが得られるタイミングは一致するので、例えば、複数のFBG部12bのうちのいずれか1つを選択し、選択した1つのFBG部12bの極大値Vmaxのタイミング及び極小値Vminのタイミングを基準タイミングとし、同じ基準タイミングにおいて得られる複数の振幅値Δεのうち、最も大きい振幅値Δεが最大振幅値Δεmaxとして取得される。
【0062】
図8において、処理部8aは、時間t2のタイミングを基準タイミングとし、複数のFBG部12bに対応する複数の振幅値Δε1を求める。
処理部8aは、複数の振幅値Δε1を求めると、複数の振幅値Δε1のうち、最も大きい振幅値Δε1を、時間t2における最大振幅値Δε1maxとして取得する。
【0063】
次いで、処理部8aは、ステップS4へ進み、ケーブル2の曲率変化量Δκを求める(ステップS4:第1処理)。
センサ線12の歪εはケーブル2及び電線群10(電力線16)の変形状態を示している。
そこで、処理部8aは、最大振幅値Δε1maxに基づいて、ケーブル2の曲率変化量Δκを求める。
処理部8aは、記憶部8bに記憶されている変換データ26を参照し、最大振幅値Δε1maxから、ケーブル2の曲率変化量Δκを求める。
変換データ26は、ケーブル2の振幅値Δε(歪変化)と、ケーブル2の曲率変化量Δκと、の対応関係を示すデータである。
変換データ26は、振幅値Δεから、ケーブル2の曲率変化量Δκを求めることが可能なデータであればよく、実験やシミュレーション等によって求められたテーブルであってもよいし、数式であってもよい。
【0064】
図9は、変換データ26の一例を示す図である。図9では、変換データ26をグラフとして表している。
よって、図9では、横軸がケーブル2の振幅値Δεを示し、縦軸がケーブル2の曲率変化量Δκを示している。
【0065】
図9に示すように、変換データ26は、線図Lhとして表される。線図Lhが示すように、ケーブル2の振幅値Δεと、ケーブル2の曲率変化量Δκとは、ほぼ線形関係にある。
処理部8aは、変換データ26を参照し、最大振幅値Δε1maxに対応する曲率変化量Δκを得る。
ここで得られる曲率変化量Δκは、複数のFBG部12bにより検出された歪から求められた最大の曲率変化量であり、ケーブル2が1回変形(屈曲変形又は伸長変形)したときのケーブル2全体としての曲率変化量の代表値を示している。
【0066】
ケーブル2の曲率変化量Δκを求めると、処理部8aは、次いで、累積疲労損傷度D及び予測残寿命を求める(ステップS5:第2処理)。
処理部8aは、記憶部8bに記憶された温度データを参照し、複数の振幅値Δε1を得たタイミングに対応する時間における温度情報を取得する。ここでは、処理部8aは、時間t2(図8)における温度情報を取得する。
【0067】
さらに、処理部8aは、記憶部8bに記憶されている疲労強度データ27、ケーブル2の曲率変化量Δκ、及び、温度情報が示すケーブル2の温度Tに基づいて、ケーブル2の予測残寿命を求める。
疲労強度データ27は、電線が変形したときの曲率変化量Δκeと、破断繰返し回数Nと、の対応関係を示すデータを含む。破断繰返し回数Nは、一定の曲率変化量Δκeで屈曲変形又は伸長変形が繰り返されたときに電線が疲労破断するまでの回数である。
また、本実施形態の疲労強度データ27は、複数の前記対応関係を示すデータを含んでいる。疲労強度データ27に含まれる複数の前記対応関係は、変形時のケーブル2の温度Tが互いに異なっている。
つまり、疲労強度データ27は、屈曲変形時又は伸長変形時の曲率変化量Δκeに応じた電線の疲労強度とケーブル2の温度Tとの対応関係を示すデータである。
【0068】
本実施形態の疲労強度データ27は、電力線16の疲労強度データを含む。よって、処理部8aは、ケーブル2の予測残寿命として、電力線16の累積疲労損傷度Dを求める。
【0069】
図10は、疲労強度データ27の一例を示す図である。なお、図10では、疲労強度データ27をグラフとして表している。
図10中、横軸は破断繰返し回数Nであり、縦軸は電力線16の曲率変化量Δκeである。
図10中、グラフとして表した疲労強度データ27は、複数の線図L1、L2、L3・・・Liを有する。
複数の線図L1、L2、L3・・・Liは、それぞれ、ケーブル2が1回変形したときの曲率変化量Δκeと、破断繰返し回数Nと、の対応関係を示している。
例えば、線図Liにおける点Pは、曲率変化量Δκepで電力線16を繰り返し変形させたときに、Np回変形が繰り返されると電力線16が破断に至ることを示している。複数の線図L1、L2、L3・・・Liは、ケーブル2変形時の曲率変化量Δκeに応じた電力線16の疲労強度を示している。
【0070】
また、複数の線図L1、L2、L3・・・Liは、繰り返し変形時のケーブル2の温度Tが互いに異なっている。
図10中、線図L1が、繰り返し変形時のケーブル2の温度Tが最も高いデータを示している。線図Liが、繰り返し変形時のケーブル2の温度Tが最も低いデータを示している。
複数の線図L1、L2、L3・・・Liは、繰り返し変形時のケーブル2の温度Tの順番に従って並んでいる。
この図から判るように、電力線16(電線)は、温度が低くなると疲労強度が低下する傾向を有している。
【0071】
処理部8aは、疲労強度データ27を参照し、複数の線図L1、L2、L3・・・Liの中から、温度情報が示すケーブル2の温度Tに応じた線図を選択する。処理部8aは、選択した線図を用いて、ケーブル2の曲率変化量Δκに対応する曲率変化量Δκeにおける破断繰返し回数Nを求める。
これにより、処理部8aは、ケーブル2の温度Tに応じた曲率変化量Δκにおける電力線16の破断繰返し回数Nを求めることができる。
なお、疲労強度データ27は、曲率変化量Δκe(曲率変化量Δκ)、及びケーブル2の温度Tから、破断繰返し回数Nを求めることが可能なデータであればよく、実験やシミュレーション等によって求められたテーブルであってもよいし、数式であってもよい。
【0072】
時間t2におけるケーブル2の温度T、及び、ステップS4にて求めたケーブル2の曲率変化量Δκにおける破断繰返し回数Nを求めると、処理部8aは、下記式(1)に基づいて、電力線16の累積疲労損傷度Dを求める。
【0073】
【数1】
【0074】
上記式(1)中、dnは、下記式(3)に示すように、求めた破断繰返し回数Nnの逆数である。上記式(1)及び式(3)中のnは、カウンタ値を示す。式(3)中のNnは、カウンタ値nのときに求めた破断繰返し回数Nを示す。

dn=1/Nn ・・・(3)
【0075】
処理部8aは、上記式(1)に示すように、dnの積算値を電力線16の累積疲労損傷度Dとして求める。
【0076】
なお、累積疲労損傷度Dは、上記式(2)のように表すこともできる。
上記式(2)中、N(Δκ,T)は、ある曲率変化量Δκ及び温度Tの組み合わせにおける破断繰返し回数Nを示している。n(Δκ,T)は、ある曲率変化量Δκ及び温度Tの組み合わせにおけるカウント回数(変形回数)である。
なお、カウンタ値nは、後に説明するようにケーブル2の変形回数を示している。
上記式(1)から(3)は、線形累積損傷則、マイナー則と呼ばれる疲労度の予測方法に基づいている。
【0077】
累積疲労損傷度Dが1に達すると、電力線16は寿命に到達し破断すると予測することができる。よって、残り寿命の予測値である予測残寿命は、下記式(4)によって求めることができる。
処理部10aは、電力線16の累積疲労損傷度Dを求めると、下記式(4)に基づいて電力線16の予測残寿命を求める。
予測残寿命=1-D ・・・(4)
【0078】
図7に示すように、電力線16の累積疲労損傷度D及び予測残寿命を求めると、処理部8aは、求めた累積疲労損傷度Dを疲労度データ28に登録する(ステップS6)。
図11は、疲労度データ28の一例を示す図である。図11に示すように、疲労度データ28には、時間と、累積疲労損傷度Dとが対応付けて登録される。
時間は、例えば、複数の振幅値Δε1を取得したときの基準タイミングを示す時間(時間t2)である。
この疲労度データ28によって、ケーブル2の温度を加味した電力線16の疲労の進行度合を把握することができる。
【0079】
図7に示すように、累積疲労損傷度Dを疲労度データ28に登録すると、処理部8aは、カウンタ値nに1を加算し(ステップS7)、ステップS8へ進む。
ステップS8において、処理部8aは、直前に取得した複数の振幅値Δεの基準タイミングの次に現れる基準タイミングにおける複数の振幅値Δεを用いて最大振幅値Δεmaxを求める(ステップS8)。直前に取得した複数の振幅値Δεとは、直前の最大振幅値Δεmaxを求めるために用いた複数の振幅値Δεである。
【0080】
ステップS3では、時間t2で得られた複数の振幅値Δε1を用いて最大振幅値Δε1maxを求めた(図8参照)。
よって、ステップS8では、時間t3で得られた複数の振幅値Δε2を用いて最大振幅値Δε2maxを求める(図8参照)。
【0081】
次いで、処理部8aは、ステップS4へ戻り、最大振幅値Δε2maxに基づいてケーブル2の曲率変化量Δκを求め(ステップS4)、時間t3であってカウンタ値nが2であるときの累積疲労損傷度Dを求める(ステップS5)。
さらに、処理部8aは、ステップS6~S8を経て、次の最大振幅値Δε3maxを求める(ステップS8)。
処理部8aは、ステップS4へ戻り、最大振幅値Δε3maxに基づいてケーブル2の曲率変化量Δκを求め(ステップS4)、時間t4であってカウンタ値nが3であるときの累積疲労損傷度Dを求める(ステップS5)。
【0082】
以上のようにして、処理部8aは、複数のFBG部12bの歪εに基づいて得られる複数の振幅値Δε及び最大振幅値Δεmaxを時系列に沿って順番に求める。さらに、処理部8aは、最大振幅値Δεmaxに基づいて曲率変化量Δκを時系列に沿って求め、dnを積算することで累積疲労損傷度Dを求める。
【0083】
複数の振幅値Δε及び最大振幅値Δεmaxが取得される毎に、ケーブル2は、屈曲変形又は伸長変形している。よって、処理部8aは、ケーブル2が変形動作する毎に、複数の振幅値Δε及び最大振幅値Δεmaxを取得し、累積疲労損傷度Dを求める。
よって、カウンタ値nはケーブル2の変形回数を示している。
【0084】
求めた累積疲労損傷度D及び予測残寿命は、出力部8cから外部へ向けて出力される。
出力部8cが無線通信装置を含む場合、処理部8aは、無線通信によって、累積疲労損傷度D及び予測残寿命を出力する。
【0085】
上述のように、センサ線12の歪εはケーブル2及び電線群10(電力線16)の変形状態を示している。
すなわち、上記構成によれば、ケーブル2及び電力線16の変形状態を示す歪検出ユニット4の出力と、温度情報と、に基づいて電力線16の予測残寿命を求めることで、ケーブル2の温度を加味した電力線16の予測残寿命を求めることができる。
【0086】
ここで、電線は、一般に、直径が相対的に大きければ、疲労寿命が短くなる傾向がある。
本実施形態では、本実施形態の疲労強度データ27は、電力線16の疲労強度データを含む。
電力線16の直径は、電線群10のうちで最も大きい。よって、2本の電力線16の疲労寿命は、電線群10の中で、相対的に疲労寿命が短く、同じ使用環境下においては電線群10のうちで最初に破断する可能性が高い。電線群10のうち少なくとも1本が破断すれば、ケーブル2は寿命に至ったものと判断される。つまり、電力線16の寿命が、ケーブル2の寿命となる。
【0087】
よって、電線群10のうち、直径が最も太い電力線16の累積疲労損傷度D及び予測残寿命を求めれば、ケーブルの残寿命予測を行うことができる。
このように、本実施形態では、ケーブル2の寿命を定める電力線16の予測残寿命を求めることができるので、ケーブル2の残寿命予測を正確に行うことができる。
【0088】
また、本実施形態の残寿命予測処理25は、歪検出ユニット4の出力に基づいてケーブル2の曲率変化量Δκを求める第1処理25aと、電力線16の疲労強度データ27、ケーブル2の曲率変化量Δκ、及び、温度情報に基づいて、電力線16の累積疲労損傷度Dを求め、累積疲労損傷度Dに基づいて電力線16の予測残寿命を求める第2処理25bと、を含む。
すなわち、処理部8aが累積疲労損傷度D及び予測残寿命を求め、疲労度データ28に累積疲労損傷度Dを登録するので、ケーブル2の温度を加味した電力線16の疲労の進行度合を把握することができる。この結果、ケーブルの残寿命予測をより正確に行うことができる。
【0089】
また、本実施形態のケーブル2は、上述したように、第1部分104に保持される固定側保持部2a1と、第1部分104に対して相対移動する第2部分106に保持される可動側保持部2b1と、を有する。
このため、ケーブル2は、第1部分104と、第2部分106と、の間に配線され、第2部分106の動作に応じて屈曲変形又は伸長変形する。
よって、処理部8aは、車両に配線されて繰り返し変形されるケーブル2の予測残寿命を求めることができる。
【0090】
また、本実施形態のケーブル温度センサ6は、固定側保持部2a1に設けられている。
よって、ケーブル温度センサ6が第2部分106の移動に伴って移動することがない。このため、ケーブル温度センサ6に位置ずれが生じたり、周囲環境が変化したりするのを抑制でき、安定してケーブル2の温度を検出することができる。
【0091】
なお、ケーブル温度センサ6は、ケーブル2の一箇所のみに設けられている。ケーブル2は、電線群10を含んでおり、熱伝導性が比較的高く、長手方向における温度のばらつきが比較的低い。このため、固定側保持部2a1一箇所だけでケーブル2の温度を検出したとしても、ケーブル2全体の温度を把握することができる。
【0092】
〔第2実施形態について〕
図12は、第2実施形態に係るケーブルシステム1の処理装置8が実行する残寿命予測処理25を示す図である。
本実施形態の残寿命予測処理25では、電力線16の累積疲労損傷度Dが、複数のFBG部12bの位置(複数の検出箇所)に対応する複数の累積疲労損傷度(部分損傷度)を含む点において、第1実施形態と相違する。
【0093】
図12中、ステップS11及びステップS12は、図7と同様であるので説明を省略する。
ステップS13において、処理部8aは、歪データを参照し、極大値Vmax、及び、極小値Vminを特定し、歪εの振幅値Δεを求める(図8参照)。
このステップS13の説明において、図8を参照する場合、図8中の振幅値Δε1が、残寿命予測処理を開始してから最初の振幅値Δεであるとして説明する。このとき、複数の振幅値Δε1を得た基準タイミングは、時間t2である。
【0094】
振幅値Δε1は、複数のFBG部12bそれぞれに対応して複数求められる。
本実施形態の処理部8aは、第1実施形態と同様、複数の振幅値Δε1を求める。しかし、本実施形態の処理部8aは、第1実施形態とは異なり、最大振幅値Δεmaxを求めない。
【0095】
次いで、処理部8aは、ステップS14へ進み、ケーブル2の曲率変化量Δκを複数求める(ステップS14:第1処理)。
処理部8aは、記憶部8bに記憶されている変換データ26を参照し、複数の振幅値Δε1から、複数の曲率変化量Δκを求める。
【0096】
複数の曲率変化量Δκを求めると、処理部8aは、複数の部分損傷度を求める(ステップS15:第2処理)。
処理部8aは、疲労強度データ27を参照することで、温度情報が示すケーブル2の温度T、及び、複数の曲率変化量Δκにおける複数のFBG部12bに対応する複数の破断繰返し回数Nを求めることができる。
さらに、処理部8aは、複数の破断繰返し回数Nに基づいて、複数の部分損傷度を求める。
複数の部分損傷度は、複数の破断繰返し回数Nに基づいて、第1実施形態における累積疲労損傷度Dと同様の方法で求められる。よって、複数の部分損傷度は、複数のFBG部12bに対応する複数の累積疲労損傷度である。
処理部8aは、複数の破断繰返し回数Nに基づいて、複数の部分損傷度を含む累積疲労損傷度Dを求める。
【0097】
図12に示すように、複数の部分損傷度(累積疲労損傷度D)を求めると、処理部8aは、求めた複数の部分損傷度を疲労度データ28に登録する(ステップS16)。
図13は、本実施形態の疲労度データ28の一例を示す図である。図13に示すように、疲労度データ28には、複数のFBG部12b(検出箇所)ごとに、時間と、部分損傷度とが対応付けて登録される。
【0098】
図13に示すように、複数の部分損傷度を疲労度データ28に登録すると、処理部8aは、カウンタ値nに1を加算し(ステップS17)、ステップS18へ進む。
【0099】
ステップS18において、処理部8aは、直前に取得した複数の振幅値Δε1の基準タイミングの次に現れる基準タイミングにおける複数の振幅値Δε2を求める(ステップS18)。
次いで、処理部8aは、ステップS14へ戻り、複数の振幅値Δεに基づいて複数の曲率変化量Δκを求める(ステップS14)。
以降、処理部8aは、上述した処理を行い、時間t3における累積疲労損傷度Dを求める。
【0100】
以上のようにして、処理部8aは、複数のFBG部12bの歪εに基づいて得られる複数の振幅値Δεを時系列に沿って順番に求める。さらに、処理部8aは、時系列に沿って複数のFBG部12bに対応する複数の部分損傷度及び予測残寿命を求める。
【0101】
本実施形態では、複数のFBG部12b(複数の検出箇所)に対応する複数の部分損傷度及び予測残寿命を求めることができる。複数のFBG部12bは、センサ線12の長手方向に沿って所定の間隔を置いて設けられている。
よって、疲労度データ28によって、電力線16の累積疲労損傷度及び予測残寿命の長手方向における分布を把握でき、電力線16(ケーブル2)において最も疲労が進んでいる長手方向の箇所を把握することができる。
【0102】
〔第3実施形態について〕
図14は、第3実施形態に係るケーブルシステム1の処理装置8が有する疲労強度データ27の内容を示す図である。
本実施形態では、電線群10に含まれる、電力線16に対する残寿命予測処理に加え、対撚信号線18に含まれる信号線19に対する残寿命予測処理、及び、電線20に対する残寿命予測処理を行う点において、上記第1実施形態と相違する。
【0103】
本実施形態の疲労強度データ27は、第1疲労強度データ27a、第2疲労強度データ27b、及び、第3疲労強度データ27cを含む。
第1疲労強度データ27aは、電力線16に対応する疲労強度データである。第2疲労強度データ27bは、信号線19に対応する疲労強度データである。第3疲労強度データ27cは、電線20に対応する疲労強度データである。
【0104】
本実施形態の処理部8aは、電力線16、信号線19、及び電線20のそれぞれについて残寿命予測処理25を実行する。残寿命予測処理25の内容は、第1実施形態にて説明した通りである。
【0105】
図15は、本実施形態の疲労度データ28の一例を示す図である。図15に示すように、疲労度データ28には、電線ごとに、時間と、累積疲労損傷度Dとが対応付けて登録される。
この場合、1つのセンサ線12で、ケーブル2に含まれる電線群10それぞれの累積疲労損傷度D及び予測残寿命を求めることができる。
【0106】
〔第4実施形態について〕
図16は、第4実施形態に係るケーブルシステム1の処理装置8を示す図である。
本実施形態では、処理装置8が第1入力部8dと異なる第2入力部8e(受付部)をさらに有し、第2入力部8eが空間温度センサ30の出力を受け付けるように構成されている点において、第1実施形態と相違する。
空間温度センサ30は、対象装置である車両が有する温度センサである。空間温度センサ30は、ケーブル2が配線された配線空間の温度を検出する機能を有する。
ケーブル2が車両の室内に配線される場合、車両が有するエアコンの温度センサを空間温度センサ30として利用することができる。
【0107】
この場合、記憶部8bには、空間温度センサ30の出力と、温度情報と、の関係を示すデータが記憶される。処理部8aは、このデータを用いて温度情報を取得する。
このように、本実施形態では、ケーブル温度センサ6に代えて、車両の空間温度センサ30から温度情報を得ることができる。
【0108】
なお、本実施形態では、第2入力部8eから空間温度センサ30の出力を受け付ける場合を例示したが、第1入力部8dが、空間温度センサ30の出力を受け付けるように構成されていてもよい。
【0109】
〔その他〕
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
例えば、上記実施形態では、センサ線12として、複数のFBG部12bを有する光ファイバケーブルを用いた場合を例示したが、1つのFBG部12bを有する光ファイバケーブルをセンサ線12として用いてもよい。
【0110】
また、FBG部12bを備えない光ファイバケーブルをセンサ線12として用い、センサ線12に光源4aからのパルス光を与え、パルス光に対するセンサ線12からの散乱光を検出部4cで受光するように構成してもよい。
検出部4cは、受光した散乱光を分光し、散乱光の分光スペクトルを示すデータを生成する。生成されたデータは、歪検出ユニット4の出力として処理装置8へ与えられる。
処理装置8は、このデータに基づいて、センサ線12の歪εを検出する。例えば、処理装置8は、前記データに含まれるブルリアン散乱光を特定し、ブルリアン散乱光の波長の移動量に基づいて、センサ線12の歪εを検出することができる。
【0111】
なお、散乱光を用いてセンサ線12の歪εを検出する場合、センサ線12の長手方向の任意の位置における歪εを検出することが困難な場合がある。
しかし、散乱光を用いてセンサ線12の歪εを検出すれば、センサ線12に生じる歪εの最大値を検出することができ、この最大値をケーブル2全体としての歪εの代表値として用いることができる。
よって、センサ線12の長手方向の任意の位置における歪εを検出することができなくても、処理装置8は、散乱光を用いて得られる歪εを用いて振幅値Δεを求め、曲率変化量Δκを求めることができる。さらに、処理装置8は、曲率変化量Δκを用いて累積疲労損傷度Dを求めることができる。
【0112】
また、上記各実施形態では、センサ線12が光ファイバケーブルである場合を例示したが、センサ線12として、銅、アルミニウム等からなる導体線を用いることもできる。
図17は、導体線を用いた場合のセンサ線12及び歪検出ユニット4の構成例を示すブロック図である。
図17のセンサ線12は、導体線からなる。また、歪検出ユニット4は、信号源4dと、サーキュレータ4bと、検出部4cと、終端装置4eと、を有する。
信号源4dは、センサ線12の端部に与える入力信号を出力する。センサ線12に与えられる入力信号は、例えば、正弦波やパルス波である。終端装置4eは、センサ線12において入力信号が与えられる端部の反対側の端部を終端する機能を有する。
【0113】
サーキュレータ4bは、信号源4dから出力される入力信号をセンサ線12の端部に与え、センサ線12からの反射信号を検出部4cへ与える。
検出部4cは、センサ線12に入力信号を与えたときの反射信号を受信する。検出部4cは、反射信号の位相や振幅等を取得し、これらの変化に基づいて、センサ線12の歪εを検出する。
センサ線12の一部が変形することで歪が生じると、その歪によってセンサ線12の特性インピーダンスが部分的に変化し、反射信号に影響を与える。このため、反射信号の位相や振幅等に基づいて、センサ線12の歪εを検出することができる。
【0114】
さらに、信号源4d及び検出部4cが、センサ線12の特性インピーダンスの測定を行う機能を有する場合、センサ線12の特性インピーダンスの変化に基づいて、センサ線12の歪εを検出することもできる。
【0115】
また、上記各実施形態では、対象装置が車両110である場合を例示した。しかし、対象装置としては、ケーブル2が配線される可動部分を有する装置であればよく、例えば、ケーブル2が配線されるアームを有する産業用ロボットであってもよい。
この場合、前記アームが、第1リンクと、第2リンクと、両リンクを揺動可能に連結する関節部と、を有しており、ケーブル2の第1端部2aが第1リンクに保持され、ケーブル2の第2端部2bが第2リンクに保持される。このように、ケーブル2は、第1リンクと第2リンクとの間に配線される。
【0116】
また、上記各実施形態では、ケーブル2が電線群10と、センサ線12とを含む場合を例示したが、ケーブル2が1本の電線と、センサ線12とを含むように構成されていてもよい。この場合もケーブル2の残寿命予測を行うことができる。
【0117】
また、上記各実施形態では、センサ線12を含むケーブル2と、歪検出ユニット4と、処理装置8と、を含むケーブルシステム1を例示したが、センサ線12と、歪検出ユニット4と、処理装置8と、によってケーブル2の残寿命予測を行う残寿命予測装置を構成することもできる。
【0118】
本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0119】
1 ケーブルシステム
2 ケーブル
2a 第1端部
2a1 固定側保持部
2b 第2端部
2b1 可動側保持部
4 歪検出ユニット
4a 光源
4b サーキュレータ
4c 検出部
4d 信号源
4e 終端装置
6 ケーブル温度センサ
8 処理装置
8a 処理部
8b 記憶部
8c 出力部
8d 第1入力部
8e 第2入力部
10 電線群
12 センサ線
12a 光ファイバ部
12b FBG部
12b1 第1FBG部
12b2 第2FBG部
12b3 第3FBG部
12bn 第nFBG部
16 電力線
16a 芯線
16b 被覆
18 対撚信号線
19 信号線
19a 芯線
19b 被覆
20 電線
20a 芯線
20b 被覆
22 外周被覆層
22a 第1被覆層
22b 第2被覆層
24 取得処理
25 残寿命予測処理
25a 第1処理
25b 第2処理
26 変換データ
27 疲労強度データ
27a 第1疲労強度データ
27b 第2疲労強度データ
27c 第3疲労強度データ
28 疲労度データ
30 空間温度センサ
100 電動ブレーキ機構
102 電子制御装置
104 第1部分
104a ブラケット
106 第2部分
106a ブラケット
110 対象装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17