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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094937
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】農林用不整地走行車両
(51)【国際特許分類】
   B60G 17/015 20060101AFI20240703BHJP
   B60K 7/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B60G17/015 B
B60K7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211866
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】598099132
【氏名又は名称】松本システムエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】松本 良三
【テーマコード(参考)】
3D235
3D301
【Fターム(参考)】
3D235AA12
3D235BB32
3D235FF34
3D235GA02
3D235GA13
3D301AA19
3D301AA48
3D301AB21
3D301BA18
3D301CA50
3D301DA27
3D301DA44
3D301DB20
3D301DB35
3D301EB02
3D301EC01
3D301EC05
(57)【要約】
【課題】農林用の不整地を走行する農林用不整地走行車両を提供する。
【解決手段】本発明の農林用不整地走行車両1は、車体2と、左前輪部4と、右前輪部6と、第1左後輪部8と、第1右後輪部10と、第2左後輪部12と、第2右後輪部14と、各車軸44,44,50,50,56,56にそれぞれ設けられてこれらの車軸を回転駆動する複数の油圧モータ16,18,20,22,24,26と、左前輪部、右前輪部、第1左後輪部、第1右後輪部、第2左後輪部、及び、第2右後輪部のそれぞれを懸架する複数の懸架装置28,30,32,34と、を有し、各懸架装置は、車両走行時の農林用不整地面Gの状態に関わらず、左前輪部、右前輪部、第1左後輪部、第2左後輪部、第1右後輪部、及び、第2右後輪部のそれぞれの車輪46,46,52,52,58,58を常時接地させて車体の姿勢を一定に保つように作動する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
農林用の不整地を走行する農林用不整地走行車両であって、
車体と、
この車体において前方に向かって左側方に設けられた左前車軸及び左前車輪を含む左前輪部と、
上記車体において前方に向かって右側方に設けられた右前車軸及び右前車輪を含む右前輪部と、
上記車体の左側方において上記左前輪部よりも後方に設けられた第1左後車軸及び第1左後車輪を含む第1左後輪部と、
上記車体の右側方において上記右前輪部よりも後方に設けられた第1右後車軸及び第1右後車輪を含む第1右後輪部と、
上記車体の左側方において上記第1左後輪部よりも後方に設けられた第2左後車軸及び第2左後車輪を含む第2左後輪部と、
上記車体の右側方において上記第1右後輪部よりも後方に設けられた第2右後車軸及び第2右後車輪を含む第2右後輪部と、
上記左前車軸、上記右前車軸、上記第1左後車軸、上記第1右後車軸、上記第2左後車軸、及び、上記第2右後車軸にそれぞれ設けられ、各車軸を回転駆動する複数の油圧モータと、
上記左前輪部、上記右前輪部、上記第1左後輪部、上記第1右後輪部、上記第2左後輪部、及び、上記第2右後輪部のそれぞれを懸架する複数の懸架装置と、を有し、
上記複数の懸架装置は、上記左前輪部の一部と上記車体の一部とを連結する左前輪懸架装置と、上記右前輪部の一部と上記車体の一部とを連結する右前輪懸架装置と、上記第1左後輪部及び上記第2左後輪部の一部と上記車体の一部とを連結する左後輪懸架装置と、上記第1右後輪部及び上記第2右後輪部の一部と上記車体の一部とを連結する右後輪懸架装置と、を備えており、各懸架装置は、車両走行時の農林用不整地面の状態に関わらず、上記左前輪部、上記右前輪部、上記第1左後輪部、上記第2左後輪部、上記第1右後輪部、及び、上記第2右後輪部のそれぞれの車輪を常時接地させて上記車体の姿勢を一定に保つように作動することを特徴とする農林用不整地走行車両。
【請求項2】
上記左後輪懸架装置は、上記車体の左側方部における上記第1左後輪部と上記第2左後輪部との間に連結された左側方軸受部と、この左側方軸受部に連結されて上記第1左後輪部から上記左側方軸受部まで延びた後に上方に屈曲する第1左後輪アーム部と、この第1左後輪アーム部に対して回動可能に連結された左回動軸部を備え且つこの左回動軸部から上記第2左後輪部まで延びる第2左後輪アーム部と、上記第1左後輪アーム部の上端部と上記第2左後輪アーム部の後方側上端部とを連結する左側ガスサスペンションシリンダと、を備えており、
上記右後輪懸架装置は、上記車体の右側方部における上記第1右後輪部と上記第2右後輪部との間に連結された右側方軸受部と、この右側方軸受部に連結されて上記第1右後輪部から上記右側方軸受部まで延びた後に上方に屈曲する第1右後輪アーム部と、この第1右後輪アーム部に対して回動可能に連結された右回動軸部を備え且つこの右回動軸部から上記第2右後輪部まで延びる第2右後輪アーム部と、上記第1右後輪アーム部の上端部と上記第2右後輪アーム部の後方側上端部とを連結する右側ガスサスペンションシリンダと、を備えており、
上記第1左後輪アーム部及び上記第2左後輪アーム部のそれぞれは、車両走行時の農林用不整地面の状態に応じて上記左側ガスサスペンションシリンダが伸縮することにより上記第1左後輪部及び上記第2左後輪部の各車輪が接地して上記車体の姿勢を一定に保つように上記左側方軸受部及び上記左回動軸部のそれぞれの中心軸線回りに回動し、
上記第1右後輪アーム部及び上記第2右後輪アーム部のそれぞれは、車両走行時の農林用不整地面の状態に応じて上記右側ガスサスペンションシリンダが伸縮することにより上記第1右後輪部及び上記第2右後輪部の各車輪が接地して上記車体の姿勢を一定に保つように上記右側方軸受部及び上記右回動軸部のそれぞれの中心軸線回りに回動するように構成されている請求項1記載の農林用不整地走行車両。
【請求項3】
上記左前輪懸架装置は、上記左前輪部の車軸を回転可能に保持する左前輪軸受部と、この左前輪軸受部の後方側に設けられて上記車体の一部に連結される第1左前輪連結部と、この第1左前輪連結部よりも前方側に設けられた第2左前輪連結部と、上記第1左前輪連結部に連結される下方連結部及びこの下方連結部よりも上方に設けられた上方連結部をそれぞれ含む左前輪アーム部と、この左前輪アーム部の上方連結部と上記第2左前輪連結部とを連結する左側油圧サスペンションシリンダと、を備えており、
上記右前輪懸架装置は、上記右前輪部の車軸を回転可能に保持する右前輪軸受部と、この右前輪軸受部の後方側に設けられて上記車体の一部に連結される第1右前輪連結部と、この第1右前輪連結部よりも前方側に設けられた第2右前輪連結部と、上記第1右前輪連結部に連結される下方連結部及びこの下方連結部よりも上方に設けられた上方連結部をそれぞれ含む右前輪アーム部と、この右前輪アーム部の上方連結部と上記第2右前輪連結部とを連結する右側油圧サスペンションシリンダと、を備えており、
上記左側油圧サスペンションシリンダ及び上記右側油圧サスペンションシリンダのそれぞれは、車両走行時の農林用不整地面の状態に応じて上記左前輪部及び上記右前輪部のそれぞれの車輪が接地して上記車体の姿勢を一定に保つように伸縮するように構成されている請求項1記載の農林用不整地走行車両。
【請求項4】
上記第1左後輪アーム部及び上記第2左後輪アーム部のそれぞれの下縁部が水平な状態から回動したときの最大回動角度の大きさは、側面視において、水平面に対して15度~25度に設定されており、上記第1右後輪アーム部及び上記第2右後輪アーム部のそれぞれの下縁部が水平な状態から回動したときの最大回動角度の大きさは、側面視において、水平面に対して15度~25度に設定されている請求項2記載の農林用不整地走行車両。
【請求項5】
上記車体は、上記左前輪部及び上記右前輪部のそれぞれが設けられる前側車体部と、この前側車体部の後端連結部に回動可能に連結されて上記第1左後輪部、上記第1右後輪部、上記第2左後輪部及び上記第2右後輪部のそれぞれが設けられる後側車体部と、を備えており、
上記前側車体部は、平面視において上記後端連結部を中心に上記後側車体部に対して左右方向に旋回可能であり、上記前側車体部が直進方向に対して最大旋回角度で旋回した状態では、上記左前輪部及び上記右前輪部の各車輪の回転中心が車両全体の外郭側縁部よりも内側に位置している請求項1記載の農林用不整地走行車両。
【請求項6】
上記複数の油圧モータのそれぞれは、上記左前輪部、上記右前輪部、上記第1左後輪部、上記第1右後輪部、上記第2左後輪部、及び、上記第2右後輪部のそれぞれの一部に組み込まれているインホイールモータである請求項1乃至5の何れか1項に記載の農林用不整地走行車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農林用不整地走行車両に係り、特に、農林用の不整地の状態(凹凸状態又は傾斜状態等)に関わらず車体の姿勢を水平に保つように前輪及び後輪のそれぞれを独立に懸架することができる農林用不整地走行車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、農林用不整地走行車両として、例えば、特許文献1、2に記載されているように、木材運搬用のトラクタや、山林地で伐採された木材等を運搬する林業用の集材作業車等が知られている。
これらの車両の走行装置としては、自走可能な無限軌道(クローラ式等)が採用されており、泥濘等の不整地においても走行可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭59-182477号公報
【特許文献2】特開2022-152434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した無限軌道を採用している従来の農林用不整地走行車両においては、接地面積が大きいため、不整地においても比較的安定して走行することができる反面、無限軌道の駆動により発生する振動や騒音が大きいという問題があり、また、農林業用の車両としては比較的高速の速度(例えば、15[km/h]以上の速度)で移動することが難しいという問題もある。
また、無限軌道については、一般的なホイール式の走行装置に比べて重量が大きくなるため、出力が大きいエンジンが必要になるという問題がある。
一方、農林用不整地走行車両において、無限軌道の走行装置の代わりにホイール式の走行装置を採用すると、農林用不整地面の様々な状態(凹凸状態、傾斜状態)によっては、すべての車輪を常時接地させて、車体や荷台の姿勢を一定に保ちながらの安定した走行が難しくなるため、農林用不整地において積載物を安定して迅速に運搬することが難しいという問題もある。
したがって、農林用不整地走行車両において、無限軌道以外の走行装置を採用した場合であっても、不整地面の状態に関わらず、いかに各車輪を常時接地させて車体の姿勢を一定に保ちながら、車体を迅速に移動させるかが課題となっている。
【0005】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題や課題を解決するためになされたものであり、車両走行時の農林用不整地面の状態(凹凸状態、傾斜状態)に関わらず、各車輪を常時接地させて車体の姿勢を一定に保ちながら、迅速に移動することができる農林用不整地走行車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、農林用の不整地を走行する農林用不整地走行車両であって、車体と、この車体において前方に向かって左側方に設けられた左前車軸及び左前車輪を含む左前輪部と、上記車体において前方に向かって右側方に設けられた右前車軸及び右前車輪を含む右前輪部と、上記車体の左側方において上記左前輪部よりも後方に設けられた第1左後車軸及び第1左後車輪を含む第1左後輪部と、上記車体の右側方において上記右前輪部よりも後方に設けられた第1右後車軸及び第1右後車輪を含む第1右後輪部と、上記車体の左側方において上記第1左後輪部よりも後方に設けられた第2左後車軸及び第2左後車輪を含む第2左後輪部と、上記車体の右側方において上記第1右後輪部よりも後方に設けられた第2右後車軸及び第2右後車輪を含む第2右後輪部と、上記左前車軸、上記右前車軸、上記第1左後車軸、上記第1右後車軸、上記第2左後車軸、及び、上記第2右後車軸にそれぞれ設けられ、各車軸を回転駆動する複数の油圧モータと、上記左前輪部、上記右前輪部、上記第1左後輪部、上記第1右後輪部、上記第2左後輪部、及び、上記第2右後輪部のそれぞれを懸架する複数の懸架装置と、を有し、上記複数の懸架装置は、上記左前輪部の一部と上記車体の一部とを連結する左前輪懸架装置と、上記右前輪部の一部と上記車体の一部とを連結する右前輪懸架装置と、上記第1左後輪部及び上記第2左後輪部の一部と上記車体の一部とを連結する左後輪懸架装置と、上記第1右後輪部及び上記第2右後輪部の一部と上記車体の一部とを連結する右後輪懸架装置と、を備えており、各懸架装置は、車両走行時の農林用不整地面の状態に関わらず、上記左前輪部、上記右前輪部、上記第1左後輪部、上記第2左後輪部、上記第1右後輪部、及び、上記第2右後輪部のそれぞれの車輪を常時接地させて上記車体の姿勢を一定に保つように作動することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、農林用不整地走行車両が農林用の不整地を走行する際、左前輪部、右前輪部、第1左後輪部、第1右後輪部、第2左後輪部、及び、第2右後輪部のそれぞれを懸架する各懸架装置が、車両走行時の農林用不整地面の状態(凹凸状態、傾斜状態)に関わらず、各車輪を常時接地させて車体の姿勢を一定に保つように作動することができる。
これにより、農林用の不整地の走行時に各車輪が受ける衝撃力を各懸架装置が効率よく低減させることができ、車体を安定させた姿勢で迅速に移動させることができる。
また、例えば、車体に荷台を設けた場合には、この荷台に積載された物を安定させた状態で迅速に運搬することができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、上記左後輪懸架装置は、上記車体の左側方部における上記第1左後輪部と上記第2左後輪部との間に連結された左側方軸受部と、この左側方軸受部に連結されて上記第1左後輪部から上記左側方軸受部まで延びた後に上方に屈曲する第1左後輪アーム部と、この第1左後輪アーム部に対して回動可能に連結された左回動軸部を備え且つこの左回動軸部から上記第2左後輪部まで延びる第2左後輪アーム部と、上記第1左後輪アーム部の上端部と上記第2左後輪アーム部の後方側上端部とを連結する左側ガスサスペンションシリンダと、を備えており、上記右後輪懸架装置は、上記車体の右側方部における上記第1右後輪部と上記第2右後輪部との間に連結された右側方軸受部と、この右側方軸受部に連結されて上記第1右後輪部から上記右側方軸受部まで延びた後に上方に屈曲する第1右後輪アーム部と、この第1右後輪アーム部に対して回動可能に連結された右回動軸部を備え且つこの右回動軸部から上記第2右後輪部まで延びる第2右後輪アーム部と、上記第1右後輪アーム部の上端部と上記第2右後輪アーム部の後方側上端部とを連結する右側ガスサスペンションシリンダと、を備えており、上記第1左後輪アーム部及び上記第2左後輪アーム部のそれぞれは、車両走行時の農林用不整地面の状態に応じて上記左側ガスサスペンションシリンダが伸縮することにより上記第1左後輪部及び上記第2左後輪部の各車輪が接地して上記車体の姿勢を一定に保つように上記左側方軸受部及び上記左回動軸部のそれぞれの中心軸線回りに回動し、上記第1右後輪アーム部及び上記第2右後輪アーム部のそれぞれは、車両走行時の農林用不整地面の状態に応じて上記右側ガスサスペンションシリンダが伸縮することにより上記第1右後輪部及び上記第2右後輪部の各車輪が接地して上記車体の姿勢を一定に保つように上記右側方軸受部及び上記右回動軸部のそれぞれの中心軸線回りに回動するように構成されている。
このように構成された本発明においては、第1左後輪アーム部及び第2左後輪アーム部のそれぞれが、車両走行時の農林用不整地面の状態に応じて左側ガスサスペンションシリンダが伸縮することにより第1左後輪部及び第2左後輪部の各車輪が接地して車体の姿勢を一定に保つように左側方軸受部及び左回動軸部のそれぞれの中心軸線回りに回動することができると共に、第1右後輪アーム部及び第2右後輪アーム部のそれぞれが、車両走行時の農林用不整地面の状態に応じて右側ガスサスペンションシリンダが伸縮することにより第1右後輪部及び第2右後輪部の各車輪が接地して車体の姿勢を一定に保つように右側方軸受部及び右回動軸部のそれぞれの中心軸線回りに回動することができる。
したがって、車両走行時の農林用不整地面の状態に応じて、第1左後輪部及び第2左後輪部の各車輪の相対位置、並びに、第1右後輪部及び第2右後輪部の各車輪の相対位置を調整することができる。
これにより、第1左後輪部及び第2左後輪部の各車輪、並びに、第1右後輪部及び第2右後輪部の各車輪を常時接地させながら、車体の姿勢を一定に保つ際に左後輪懸架装置及び右後輪懸架装置の作動の追従性を向上させることができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記左前輪懸架装置は、上記左前輪部の車軸を回転可能に保持する左前輪軸受部と、この左前輪軸受部の後方側に設けられて上記車体の一部に連結される第1左前輪連結部と、この第1左前輪連結部よりも前方側に設けられた第2左前輪連結部と、上記第1左前輪連結部に連結される下方連結部及びこの下方連結部よりも上方に設けられた上方連結部をそれぞれ含む左前輪アーム部と、この左前輪アーム部の上方連結部と上記第2左前輪連結部とを連結する左側油圧サスペンションシリンダと、を備えており、上記右前輪懸架装置は、上記右前輪部の車軸を回転可能に保持する右前輪軸受部と、この右前輪軸受部の後方側に設けられて上記車体の一部に連結される第1右前輪連結部と、この第1右前輪連結部よりも前方側に設けられた第2右前輪連結部と、上記第1右前輪連結部に連結される下方連結部及びこの下方連結部よりも上方に設けられた上方連結部をそれぞれ含む右前輪アーム部と、この右前輪アーム部の上方連結部と上記第2右前輪連結部とを連結する右側油圧サスペンションシリンダと、を備えており、上記左側油圧サスペンションシリンダ及び上記右側油圧サスペンションシリンダのそれぞれは、車両走行時の農林用不整地面の状態に応じて上記左前輪部及び上記右前輪部のそれぞれの車輪が接地して上記車体の姿勢を一定に保つように伸縮するように構成されている。
このように構成された本発明においては、左前輪懸架装置の左側油圧サスペンションシリンダ及び右前輪懸架装置の右側油圧サスペンションシリンダのそれぞれが、車両走行時の農林用不整地面の状態に応じて左前輪部及び右前輪部のそれぞれの車輪を接地させて車体の姿勢を一定に保つように伸縮することができる。
これにより、左前輪部及び右前輪部の各車輪を常時接地させながら、車体の姿勢を一定に保つ際に左前輪懸架装置及び右前輪懸架装置の作動の追従性を向上させることができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記第1左後輪アーム部及び上記第2左後輪アーム部のそれぞれの下縁部が水平な状態から回動したときの最大回動角度の大きさは、側面視において、水平面に対して15度~25度に設定されており、上記第1右後輪アーム部及び上記第2右後輪アーム部のそれぞれの下縁部が水平な状態から回動したときの最大回動角度の大きさは、側面視において、水平面に対して15度~25度に設定されている。
このように構成された本発明においては、車両走行時の農林用不整地面の状態に応じて、左後輪懸架装置における第1左後輪アーム部及び第2左後輪アーム部のそれぞれが左側方軸受部及び左回動軸部のそれぞれの中心軸線回りに回動した際、第1左後輪アーム部及び第2左後輪アーム部のそれぞれの下縁部を水平な状態に対して最大回動角度の大きさが、側面視において、水平面P0に対して15度~25度になるような範囲内で回動させることができる。
また、同様に、右後輪懸架装置における第1右後輪アーム部及び第2右後輪アーム部のそれぞれが右側方軸受部及び右回動軸部のそれぞれの中心軸線回りに回動した際、第1右後輪アーム部及び第2右後輪アーム部のそれぞれの下縁部を水平な状態に対して最大回動角度の大きさが、側面視において、水平面P0に対して15度~25度になるような範囲内で回動させることができる。
したがって、車両走行時の農林用不整地面の状態に応じて、第1左後輪部及び第2左後輪部の各車輪の相対位置、並びに、第1右後輪部及び第2右後輪部の各車輪の相対位置を効果的に調整することができる。
これにより、第1左後輪部及び第2左後輪部の各車輪、並びに、第1右後輪部及び第2右後輪部の各車輪を常時接地させながら、車体の姿勢を一定に保つ際に左後輪懸架装置及び右後輪懸架装置の作動の追従性をさらに向上させることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記車体は、上記左前輪部及び上記右前輪部のそれぞれが設けられる前側車体部と、この前側車体部の後端連結部に回動可能に連結されて上記第1左後輪部、上記第1右後輪部、上記第2左後輪部及び上記第2右後輪部のそれぞれが設けられる後側車体部と、を備えており、上記前側車体部は、平面視において上記後端連結部を中心に上記後側車体部に対して左右方向に旋回可能であり、上記前側車体部が直進方向に対して最大旋回角度で旋回した状態では、上記左前輪部及び上記右前輪部の各車輪の回転中心が車両全体の外郭側縁部よりも内側に位置している。
このように構成された本発明においては、前側車体部が平面視において後端連結部を中心に後側車体部に対して左右方向に旋回可能であり、前側車体部が直進方向に対して最大旋回角度で旋回した状態では、左前輪部及び右前輪部の各車輪の回転中心が車両全体の外郭側縁部よりも内側に位置しているため、前側車体部が後端連結部を中心に左折方向及び右折方向の双方にスムーズに旋回することができる。
また、前側車体部の左折方向及び右折方向の旋回時において、左前輪部及び右前輪部の各車輪の回転中心が車両全体の外郭側縁部よりも内側に位置していることにより、車両全体の外郭側縁部の外側周辺部にある障害物等が、旋回時の左前輪部及び右前輪部の各車輪に接触して干渉するリスクを低減することができると共に、旋回時の車両全体がバランスを崩して転倒する等の事故を抑制することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記複数の油圧モータのそれぞれは、上記左前輪部、上記右前輪部、上記第1左後輪部、上記第1右後輪部、上記第2左後輪部、及び、上記第2右後輪部のそれぞれの一部に組み込まれているインホイールモータである。
このように構成された本発明においては、複数の油圧モータのそれぞれが、左前輪部、右前輪部、第1左後輪部、第1右後輪部、第2左後輪部、及び、第2右後輪部のそれぞれの一部に組み込まれているインホイールモータであるため、各油圧モータを各車輪に近接させて配置することができる。
したがって、各油圧モータを駆動させた際、左前輪部、右前輪部、第1左後輪部、第1右後輪部、第2左後輪部、及び、第2右後輪部のそれぞれの各車輪に対して駆動力を効率よく伝達して駆動させることができる。
また、左前輪部、右前輪部、第1左後輪部、第1右後輪部、第2左後輪部、及び、第2右後輪部のそれぞれの各車輪を駆動する駆動源について、油圧モータを独立に採用したことにより、電気モータ等に比べて大きい駆動力を得ることができると共に、小型化することができる。
さらに、各車輪についてそれぞれ独立の油圧モータが駆動するため、車両が不整地を走行する際にも安定して、比較的高速で走行が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の農林用不整地走行車両によれば、車両走行時の農林用不整地面の状態(凹凸状態、傾斜状態)に関わらず、各車輪を常時接地させて車体の姿勢を一定に保ちながら、迅速に移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両の側面図である。
図2】本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両の平面図である。
図3】本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両の正面図である。
図4】本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両の背面図である。
図5A】本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両の左前輪部の左前輪懸架装置の側面図である。
図5B】本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両の左前輪部の左前輪懸架装置の平面図である。
図5C】本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両の左前輪部の左前輪懸架装置の背面図である。
図5D】本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両の左前輪懸架装置及び右前輪懸架装置の各油圧サスペンションシリンダの回路図である。
図6A】本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両の第1左後輪部及び第2左後輪部の左後輪懸架装置の側面図である。
図6B】本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両の第1左後輪部及び第2左後輪部の左後輪懸架装置の平面図である。
図6C】本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両の第1左後輪部及び第2左後輪部の左後輪懸架装置の背面図(図6Aの線VIC-VICに沿った背面図)である。
図7A】本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両の左前輪懸架装置及び右前輪懸架装置における空荷時の作動状態を示す図である。
図7B】本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両の左前輪懸架装置及び右前輪懸架装置における積載時の作動状態を示す図である。
図7C】本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両の左前輪懸架装置及び右前輪懸架装置における最大ストローク時の作動状態を示す図である。
図7D】本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両の左前輪懸架装置及び右前輪懸架装置における最小ストローク時の作動状態を示す図である。
図8A】本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両の左後輪懸架装置及び右後輪懸架装置における空荷時の作動状態を示す図である。
図8B】本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両の左後輪懸架装置及び右後輪懸架装置における最大積載時の作動状態を示す図である。
図8C】本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両の左後輪懸架装置及び右後輪懸架装置における最大ストローク時の作動状態を示す図である。
図8D】本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両の左後輪懸架装置及び右後輪懸架装置における最小ストローク時の作動状態を示す図である。
図9A】本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両において農林用不整地を走行する状態Aを示す正面図である。
図9B】本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両において農林用不整地を走行する状態Aを示す側面図である。
図10A】本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両において農林用不整地を走行する状態Bを示す正面図である。
図10B】本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両において農林用不整地を走行する状態Bを示す側面図である。
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両について説明する。
図1図4は、本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両の側面図、平面図、正面図、及び、背面図をそれぞれ示す。
図1図3に示すように、本実施形態の農林用不整地走行車両1は、車体2と、左前輪部4と、右前輪部6と、第1左後輪部8と、第1右後輪部10と、第2左後輪部12と、第2右後輪部14と、複数(6つ)の油圧モータ16,18,20,22,24,26(左前輪用油圧モータ16、右前輪用油圧モータ18、第1左後輪用油圧モータ20、第1右後輪用油圧モータ22、第2左後輪用油圧モータ24、第2右後輪用油圧モータ26)と、複数(4つ)の懸架装置28,30,32,34(左前輪懸架装置28、右前輪懸架装置30、左後輪懸架装置32、右後輪懸架装置34)とを備えている。
【0015】
まず、図1図4に示すように、本実施形態の農林用不整地走行車両1の車体2は、左前輪部4及び右前輪部6のそれぞれが設けられる前側車体部36と、この前側車体部36の後端連結部36aに対して回動可能に連結され、かつ、第1左後輪部8、第1右後輪部10、第2左後輪部12及び第2右後輪部14のそれぞれが設けられる後側車体部38とを備えている
また、後側車体部38の上面には、荷台40が設けられている。この荷台40には、木材等の積載物W1(図4参照)が積載可能となっており、例えば、最大積載時で7トン程度の積載物が積載可能になっている。
さらに、後側車体部38の上面において、荷台40の前方には、ローダークレーン42の支柱部42aが設けられている。また、ローダークレーン42の支柱部42aの上端には、複数の関節アーム42bが連結されている。この関節アーム42bの先端部には、作業目的に応じて、つかみ具又は切断具等の作業用のアタッチメント42cが交換可能に取り付けられている。
【0016】
つぎに、図1図3に示すように、本実施形態の農林用不整地走行車両1の左前輪部4は、車体2の前側車体部36において前方に向かって左側方に設けられた左前車軸44と、この車軸44の外側端部に連結された左前車輪46と、この車輪46の外周に取り付けられた左前タイヤ48とを備えている。
また、本実施形態の農林用不整地走行車両1の右前輪部6については、上述した図1図3に示す左前輪部4に対して左右対称に配置された構造であるため、同一の構造部分については同一の符号を付すことにする。これにより、右前輪部6は、車体2の前側車体部36において前方に向かって右側方に設けられた右前車軸44と、この車軸44の外側端部に連結された右前車輪46と、この車輪46の外周に取り付けられた右前タイヤ48とを備えている。
【0017】
つぎに、図1及び図2に示すように、本実施形態の農林用不整地走行車両1の第1左後輪部8は、車体2の後側車体部38の左側方において左前輪部4よりも後方に設けられた第1左後車軸50と、この車軸50の外側端部に連結された第1左後車輪52と、この車輪52の外周に取り付けられた第1左後タイヤ54とを備えている。
また、図1図2及び図4に示すように、本実施形態の農林用不整地走行車両1の第2左後輪部12は、車体2の後側車体部38の左側方において第1左後輪部8よりも後方に設けられた第2左後車軸56と、この車軸56の外側端部に連結された第2左後車輪58と、この車輪58の外周に取り付けられた第2左後タイヤ60とを備えている。
さらに、本実施形態の農林用不整地走行車両1の第1右後輪部10及び第2右後輪部14のそれぞれについては、上述した図1図2及び図4に示す第1左後輪部8及び第2左後輪部12のそれぞれに対して左右対称に配置された構造であるため、同一の構造部分については同一の符号を付すことにする。これにより、第1右後輪部10及び第2右後輪部14のそれぞれは、車体2の後側車体部38において前方に向かって右側方にかつ前後にそれぞれ設けられた第1右後車軸50及び第2右後車軸56と、これらの各車軸50,56の外側端部にそれぞれ連結された第1右後車輪52及び第2右後車輪58と、これらの各車輪52,58の外周にそれぞれ取り付けられた第1右後タイヤ54及び第2右後タイヤ60とを備えている。
【0018】
つぎに、図1図4に示すように、複数(6つ)の油圧モータ16,18,20,22,24,26のそれぞれは、左前車軸44、右前車軸44、第1左後車軸50、第1右後車軸50、第2左後車軸56、及び、第2右後車軸56のそれぞれに連結されており、各車軸44,44,50,50,56,56を互いに対して独立に回転駆動することができるようになっている。
また、各モータ16,18,20,22,24,26は、左前輪部4、右前輪部6、第1左後輪部8、第1右後輪部10、第2左後輪部12、及び、第2右後輪部14のそれぞれの一部に組み込まれているインホイールモータとなっている。
これらにより、本実施形態の農林用不整地走行車両1は、各油圧モータ16,18,20,22,24,26のそれぞれが各々の回転出力により各車軸44,44,50,50,56,56を独立に回転させて、各車輪46,46,52,52,58,58を独立に回転させる自走式の車両となっている。
【0019】
つぎに、図1図4に示すように、複数(4つ)の懸架装置28,30,32,34のそれぞれの詳細については後述するが、左前輪部4、右前輪部6、第1左後輪部8、第1右後輪部10、第2左後輪部12、及び、第2右後輪部14のそれぞれを懸架するようになっている。
これら複数(4つ)の懸架装置28,30,32,34のうち、左前輪懸架装置28は、左前輪部4の一部と車体2の前側車体部36の一部とを連結するようになっている。
また、右前輪懸架装置30は、右前輪部6の一部と車体2の前側車体部36の一部とを連結するようになっている。
さらに、左後輪懸架装置32は、第1左後輪部8及び第2左後輪部12の一部と車体2の後側車体部38の一部とを連結するようになっている。
また、右後輪懸架装置34は、第1右後輪部10及び第2右後輪部14の一部と車体2の後側車体部38の一部とを連結するようになっている。
これらにより、各懸架装置28,30,32,34は、車両1の走行時の農林用不整地面Gの状態に関わらず、左前輪部4、右前輪部6、第1左後輪部8及び第2左後輪部12、並びに、第1右後輪部10及び第2右後輪部14の各車輪46,46,52,52,58,58の各タイヤ48,48,54,54,60,60を常時接地させて車体2の姿勢を一定(水平)に保つように作動することができるようになっている。
【0020】
つぎに、図5A図6Cを参照して、本実施形態の農林用不整地走行車両1の各懸架装置28,30,32,34の詳細について説明する。
まず、図5A図5Dにより、本実施形態の農林用不整地走行車両1の各前輪部4,6の各懸架装置28,30の詳細について説明する。
図5A図5Cのそれぞれは、本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両の左前輪部の左前輪懸架装置の側面図、平面図、及び、背面図をそれぞれ示す。
図5A図5Cに示すように、左前輪懸架装置28は、左前輪軸受部62と、第1左前輪連結部64と、第2左前輪連結部66と、左前輪アーム部68と、左側油圧サスペンションシリンダ70とを備えている。
まず、左前輪軸受部62は、左前輪部4の車軸44を回転可能に保持するように設けられている。
つぎに、第1左前輪連結部64は、左前輪軸受部62の後方側に設けられて前側車体部36の一部に連結されている。
また、第2左前輪連結部66は、左前輪軸受部62における第1左前輪連結部64よりも前方側に設けられ、左側油圧サスペンションシリンダ70の下端に対して回動可能に連結されている。
さらに、左前輪アーム部68は、概ね上下方向に延びた形状となっており、前側車体部36の一部及び第1左前輪連結部64に対して回動可能に連結される下方連結部68aと、この下方連結部68aよりも上方に設けられて左側油圧サスペンションシリンダ70の上端に対して回動可能に連結されている上方連結部68bとを備えている。
また、左側油圧サスペンションシリンダ70は、その一端(上端)が左前輪アーム部68の上方連結部68bに回動可能に連結されると共に、他端(下端)が第2左前輪連結部66に回動可能に連結されている。
【0021】
同様に、図5A図5Cに示すように、右前輪懸架装置30についても、左前輪懸架装置28に対して左右対称に配置された構造であるため、同一の構造部分については同一の符号を付すことにする。
すなわち、右前輪懸架装置30は、右前輪軸受部62と、第1右前輪連結部64と、第2右前輪連結部66と、右前輪アーム部68と、右側油圧サスペンションシリンダ72とを備えている。
右前輪軸受部62は、右前輪部6の車軸44を回転可能に保持するように設けられている。
また、第1右前輪連結部64は、右前輪軸受部62の後方側に設けられて前側車体部36の一部に連結されている。
さらに、第2右前輪連結部66は、右前輪軸受部62における第1右前輪連結部64よりも前方側に設けられ、右側油圧サスペンションシリンダ72の下端に対して回動可能に連結されている。
また、右前輪アーム部68は、概ね上下方向に延びた形状となっており、前側車体部36の一部及び第1右前輪連結部64に対して回動可能に連結される下方連結部68aと、この下方連結部68aよりも上方に設けられて右側油圧サスペンションシリンダ72の上端に対して回動可能に連結されている上方連結部68bとを備えている。
さらに、右側油圧サスペンションシリンダ72は、その一端(上端)が右前輪アーム部68の上方連結部68bに回動可能に連結される共に他端(下端)が第2右前輪連結部66に回動可能に連結されている。
また、左側油圧サスペンションシリンダ70及び右側油圧サスペンションシリンダ72のそれぞれは、車両1の走行時の農林用不整地面Gの状態に応じて左前輪部4及び右前輪部6の各車輪46,46のタイヤ48,48が接地して車体2の姿勢を一定(水平)に保つように伸縮するようになっている。
【0022】
ここで、図5Dは、本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両の左前輪懸架装置及び右前輪懸架装置の各油圧サスペンションシリンダの回路図である。
図5Dに示すように、各油圧サスペンションシリンダ70,72は、各絞り回路C1,C2を介して各アキュームレータ71,73に流体連通可能に接続されている。
また、各アキュームレータ71,73については、車両1の各前輪部4,6における車輪46,46のタイヤ48,48が不整地面G(段差や斜面等)を走行する際、不整地面Gの状況に応じて、各アキュームレータ71,73に供給されるガス(窒素ガス等)量が調整されるようになっており、各アキュームレータ71,73から各油圧サスペンションシリンダ70,72に供給する油の蓄積量を調整することができるようになっている。
これにより、車両1が走行する不整地面Gの状況に応じて、各油圧サスペンションシリンダ70,72が伸縮する際のストローク量を調整することができるようになっている。
【0023】
つぎに、図6A図6Cにより、本実施形態の農林用不整地走行車両1の各後輪部8,10,12,14の各懸架装置32,34の詳細について説明する。
図6A図6Cのそれぞれは、本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両の第1左後輪部及び第2左後輪部の左後輪懸架装置の側面図、平面図、及び、背面図(図6Aの線VIC-VICに沿った背面図)をそれぞれ示す。
図6A図6Cに示すように、左後輪懸架装置32は、車体2の後側車体部38の左側方部における第1左後輪部8と第2左後輪部12との間に連結された左側方軸受部74と、第1左後輪部8の車軸50を回転可能に保持する第1左後輪軸受部76と、左側方軸受部74に連結されてその前方の第1左後輪軸受部76から左側方軸受部74まで延びた後に上方に屈曲する第1左後輪アーム部78とを備えている。
また、図6A図6Cに示すように、左後輪懸架装置32は、第2左後輪部12の車軸56を回転可能に保持する第2左後輪軸受部80と、第1左後輪アーム部78に対して回動可能に連結された左回動軸部82aを備え且つこの左回動軸部82aからその後方の第2左後輪軸受部80まで延びる第2左後輪アーム部82と、第1左後輪アーム部78の上端部78aと第2左後輪アーム部82の後方側上端部82bとを連結する左側ガスサスペンションシリンダ84とを備えている。
【0024】
同様に、図6A図6Cに示すように、右後輪懸架装置34は、左後輪懸架装置32に対して左右対称に配置された構造であるため、同一の構造部分については同一の符号を付すことにする。これにより、右後輪懸架装置34は、車体2の後側車体部38の右側方部における第1右後輪部10と第2右後輪部14との間に連結された右側方軸受部74と、第1右後輪部10の車軸50を回転可能に保持する第1右後輪軸受部76と、右側方軸受部74に連結されてその前方の第1右後輪軸受部76から右側方軸受部74まで延びた後に上方に屈曲する第1右後輪アーム部78とを備えている。
また、図6A図6Cに示すように、右後輪懸架装置34は、第2右後輪部14の車軸56を回転可能に保持する第2右後輪軸受部80と、第1右後輪アーム部78に対して回動可能に連結された右回動軸部82aを備え且つこの右回動軸部82aからその後方の第2右後輪軸受部80まで延びる第2右後輪アーム部82と、第1右後輪アーム部78の上端部78aと第2右後輪アーム部82の後方側上端部82bとを連結する右側ガスサスペンションシリンダ86とを備えている。
【0025】
さらに、図6A図6Cに示すように、第1左後輪アーム部78及び第2左後輪アーム部82のそれぞれは、車両1の走行時の農林用不整地面Gの状態に応じて左側ガスサスペンションシリンダ84が伸縮することにより第1左後輪部8及び第2左後輪部12の各車輪52,58のタイヤ54,60が接地して車体2の姿勢を一定(水平)に保つように左側方軸受部74及び左回動軸部82aのそれぞれの中心軸線A1,A2回りに回動することができるようになっている。
同様に、第1右後輪アーム部78及び第2右後輪アーム部82のそれぞれは、車両1の走行時の農林用不整地面Gの状態に応じて右側ガスサスペンションシリンダ86が伸縮することにより第1右後輪部10及び第2右後輪部14の各車輪52,58のタイヤ54,60が接地して車体2の姿勢を一定(水平)に保つように右側方軸受部74及び右回動軸部82aのそれぞれの中心軸線A1,A2回りに回動することができるようになっている。
【0026】
つぎに、図6Aに示すように、左後輪懸架装置32の第1左後輪アーム部78及び第2左後輪アーム部82のそれぞれについては、車両1の走行時の農林用不整地面Gの状態に応じて左側方軸受部74及び左回動軸部82aのそれぞれの中心軸線A1,A2回りに回動した際、左後輪懸架装置32の第1左後輪アーム部78の下縁部78b及び第2左後輪アーム部82の下縁部82cのそれぞれが水平な状態から左側方軸受部74及び左回動軸部82aのそれぞれの中心軸線A1,A2回りに回動したときの最大回動角度の大きさα1,α2が、側面視において、水平面P0に対して15度~25度に設定されており、より好ましくは、20度に設定されている。
同様に、右後輪懸架装置34の第1右後輪アーム部78及び第2右後輪アーム部82のそれぞれについては、車両1の走行時の農林用不整地面Gの状態に応じて右側方軸受部74及び右回動軸部82aのそれぞれの中心軸線A1,A2回りに回動した際、右後輪懸架装置34の第1右後輪アーム部78の下縁部78b及び第2右後輪アーム部82の下縁部82cのそれぞれが水平な状態から右側方軸受部74及び右回動軸部82aのそれぞれの中心軸線A1,A2回りに回動したときの最大回動角度の大きさα1,α2が、側面視において、水平面P0に対して15度~25度に設定されており、より好ましくは、20度に設定されている。
【0027】
つぎに、図2に示すように、前側車体部36は、平面視において、その後端連結部36aを中心に後側車体部38に対して左右方向に旋回可能となっている。
また、前側車体部36が直進方向に対して最大旋回角度β(例えば、β=45度、等)で旋回した状態では、左前輪部4及び右前輪部6の各車輪46,46の回転中心O1が車両1の全体の外郭側縁部S1よりも内側に位置している。
【0028】
つぎに、図1図10Bを参照して、本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両1の各懸架装置28,30,32,34の動作(作用)について説明する。
図7A図7Dのそれぞれは、本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両の左前輪懸架装置及び右前輪懸架装置における空荷時、積載時、最大ストローク時、及び、最小ストローク時のそれぞれの作動状態を示す図である。
また、図8A図8Dのそれぞれは、本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両の左後輪懸架装置及び右後輪懸架装置における空荷時、最大積載時、最大ストローク時、及び、最小ストローク時のそれぞれの作動状態を示す図である。
さらに、図9A及び図9Bのそれぞれは、本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両において農林用不整地を走行する状態Aを示す正面図及び側面図である。
また、図10A及び図10Bのそれぞれは、本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両において農林用不整地を走行する状態Bを示す正面図及び側面図である。
【0029】
まず、図7A図7Dを参照して、本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両の左前輪懸架装置及び右前輪懸架装置における空荷時、積載時、最大ストローク時、及び、最小ストローク時のそれぞれの動作について説明する。
左前輪懸架装置28及び右前輪懸架装置30においては、図7Aに示す空荷時では、荷台40の積載物W1による荷重(積載荷重)が作用していない。
一方、図7Bに示す積載時では、荷台40の積載物W1による下向きの荷重(積載荷重)F1が後側車体部38及び前側車体部36を介して第1左前輪連結部64及び第1右前輪連結部64のそれぞれに作用する。
これにより、図7Bに示す積載時の各懸架装置28,30の各軸受部62,62及び各連結部64,64,66,66が、図7Aに示す空荷時の状態から左前車輪46及び右前車輪46の回転中心O1を中心に回動方向R1に回動すると共に、積載時の各前輪アーム部68,68の下方連結部68a及び上方連結部68bが空荷時よりも下降する。これにより、積載時の各油圧サスペンションシリンダ70,72が空荷時よりも圧縮されるように作動する。
したがって、図7Bに示す積載時の車両1における地面Gから前側車体部36の底面36bまでの高さH2(例えば、H2=550mm)は、図7Aに示す空荷時の車両1における地面Gから前側車体部36の底面36bまでの高さH1(例えば、H1=600mm)よりも低くなる(H2<H1)。
これらの結果、空荷時及び積載時においても、図9A図10Bに示すように、車両1が走行する不整地面Gの状態A,Bに関わらず、各前車輪46,46のタイヤ48,48が常時接地され、車体2や荷台40の姿勢が一定(水平)に保たれる。
【0030】
つぎに、車両1が不整地面Gの段差や傾斜箇所等を走行した際に、左前輪部4及び右前輪部6の少なくとも一方の車輪46が他方の車輪46よりも低い位置にある(例えば、図9A及び図9Bに示すように、左前輪部4の車輪46のタイヤ48が右前輪部6の車輪46のタイヤ48よりも低い位置にある)ときには、図7Cに示すように、左前輪懸架装置28の左側油圧サスペンションシリンダ70が、アキュームレータ71から供給される油圧により最大ストローク量だけ伸びると共に、左前輪アーム部68の上方連結部68bが図7Bに示す積載時の状態よりも上方に引き上げられる。
これにより、左前輪アーム部68の下方連結部68aについても上向きの力F2で引き上げられるため、左前輪軸受部62、第1左前輪連結部64及び第2左前輪連結部66のそれぞれが図7Bに示す積載時の状態から左前車輪46の回転中心O1を中心に回動方向R2に回動する(図7C参照)。
また、このような上向きの力F2は、左側に傾こうとする車体2の全体又は前側車体部36を元の水平状態に回復させようとする力としても作用する。
したがって、図7Cに示す左側油圧サスペンションシリンダ70の最大ストローク時の車両1における地面Gから前側車体部36の底面36bまでの高さH3(例えば、H3=800mm)は、図7Aに示す空荷時の車両1における地面Gから前側車体部36の底面36bまでの高さH1(例えば、H1=600mm)よりも高くなる(H3>H1)。
一方、右前輪懸架装置30の右側油圧サスペンションシリンダ72は、アキュームレータ73による油圧の低下によって、最小ストローク量の範囲内で圧縮される。
これらの結果、各油圧サスペンションシリンダ70,72の最大ストローク時においても、図9A及び図9Bに示すように、車両1が走行する不整地面Gの状態Aに関わらず、各前車輪46,46のタイヤ48,48が常時接地され、車体2や荷台40の姿勢が一定(水平)に保たれる。
【0031】
一方、車両1が不整地面Gの段差や傾斜箇所等を走行した際に、左前輪部4及び右前輪部6の少なくとも一方の車輪46が他方の車輪46よりも高い位置にある(例えば、図10A及び図10Bに示すように、左前輪部4の車輪46が右前輪部6の車輪46よりも高い位置にある)ときには、図7Dに示すように、車体2の姿勢を水平状態に保つように、左前輪懸架装置28の左側油圧サスペンションシリンダ70が、アキュームレータ71による油圧の低下によって、最小ストローク量まで圧縮される。
このとき、左側油圧サスペンションシリンダ70を圧縮させる付勢力F3(図7D参照)により、左前輪アーム部68の下方連結部68aが図7Bに示す積載時の状態よりも下方に引き下げられると共に、左前輪アーム部68の上方連結部68bについても引き下げられる。これにより、左前輪軸受部62、第1左前輪連結部64及び第2左前輪連結部66のそれぞれが図7Bに示す積載時の状態から左前車輪46の回転中心O1を中心に回動方向R1に回動する(図7D参照)。
したがって、図7Dに示す左側油圧サスペンションシリンダ70の最小ストローク時の車両1における地面Gから前側車体部36の底面36bまでの高さH4(例えば、H4=400mm)は、図7Aに示す空荷時の車両1における地面Gから前側車体部36の底面36bまでの高さH1(例えば、H1=600mm)よりも低くなる(H4<H1)。
一方、右前輪懸架装置30の右側油圧サスペンションシリンダ72は、アキュームレータ73から供給される油圧により最大ストローク量の範囲内で伸長する。
これらの結果、各油圧サスペンションシリンダ70,72の最小ストローク時においても、図10A及び図10Bに示すように、車両1が走行する不整地面Gの状態Bに関わらず、各前車輪46,46のタイヤ48,48が常時接地され、車体2や荷台40の姿勢が一定(水平)に保たれる。
【0032】
つぎに、図8A図8Dを参照して、本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両の左後輪懸架装置及び右後輪懸架装置における空荷時、最大積載時、最大ストローク時、及び、最小ストローク時のそれぞれの動作について説明する。
まず、左後輪懸架装置32及び右後輪懸架装置34においては、図8Aに示す空荷時では、荷台40の積載物W1による荷重(積載荷重)が作用していない。
一方、図8Bに示す最大積載時(例えば、7トンの積載物W1の積載時)では、荷台40の積載物W1による下向きの荷重(積載荷重)F4が後側車体部38を介して左側方軸受部74及び右側方軸受部74のそれぞれに作用する。
これにより、図8Bに示すように、最大積載時の各懸架装置32,34の各側方軸受部74及び各回動軸部82aのそれぞれが下降すると共に、各アーム部78,82が各側方軸受部74及び各回動軸部82aのそれぞれの中心軸線A1,A2回りに回動方向R3,R4のそれぞれの方向に回動する。
したがって、各アーム部78,82の上端部78a,82bが各ガスサスペンションシリンダ84,86の両端部を圧縮するため、図8Bに示す最大積載時の各ガスサスペンションシリンダ84,86は、空荷時よりも圧縮する方向に作動する。
このとき、図8Bに示す最大積載時の第1左後車輪52及び第1右後車輪52の中心O2と第2左後車輪58及び第2右後車輪58の中心O3との前後方向の距離L1が、図8Aに示す空荷時の第1左後車輪52及び第1右後車輪52の中心O2と第2左後車輪58及び第2右後車輪58の中心O3との前後方向の距離L0よりも大きくなる(L1>L0)。
また、図8Bに示す最大積載時の車両1における地面Gから後側車体部38の底面38aまでの高さH6(例えば、H6=558.2mm)は、図8Aに示す空荷時の車両1における地面Gから後側車体部38の底面38aまでの高さH5(例えば、H5=626.8mm)よりも低くなる(H6<H5)。
これらの結果、空荷時及び最大積載時においても、図9A図10Bに示すように、車両1が走行する不整地面Gの状態A,Bに関わらず、各後車輪52,52,58,58のタイヤ54,54,60,60が常時接地され、車体2や荷台40の姿勢が一定(水平)に保たれる。
【0033】
つぎに、図9A図10Bに示すように、車両1が不整地面Gの段差や傾斜箇所等を走行した際に、左後輪部8,12及び右後輪部10,14の少なくとも一方側の後車輪52,58が他方側の後車輪52,58よりも低い位置にある(例えば、左後輪部8,12の後車輪52,58が右後輪部10,14の車輪52,58よりも低い位置にある)ときには、図8Cに示すように、左後輪懸架装置32の左側ガスサスペンションシリンダ84が最大ストローク量だけ伸長する。
これにより、図8Cに示すように、第1左後輪アーム部78及び第2左後輪アーム部82のそれぞれが、側方軸受部74及び左回動軸部82aのそれぞれの中心軸線A1,A2回りにそれぞれの回動方向R5,R6に回動する。
したがって、図8Cに示す最大ストローク時の第1左後車輪52及び第1右後車輪52の中心O2と第2左後車輪58及び第2右後車輪58の中心O3との前後方向の距離L2が、図9Aに示す空荷時の第1左後車輪52及び第1右後車輪52の中心O2と第2左後車輪58及び第2右後車輪58の中心O3との前後方向の距離L0よりも小さくなる(L2<L0)。
また、図8Cに示す左側ガスサスペンションシリンダ84の最大ストローク時の車両1における地面Gから後側車体部38の底面38aまでの高さH7(例えば、H7=646.3mm)は、図8Aに示す空荷時の車両1における地面Gから後側車体部38の底面38aまでの高さH5(例えば、H5=626.8mm)よりも高くなる(H7>H5)。
これらの結果、各ガスサスペンションシリンダ84,86の最大ストローク時においても、図9A図10Bに示すように、車両1が走行する不整地面Gの状態に関わらず、各後車輪52,52,58,58のタイヤ54,54,60,60が常時接地され、車体2や荷台40の姿勢が一定(水平)に保たれる。
【0034】
つぎに、図9A図10Bに示すように、車両1が不整地面Gの段差や傾斜箇所等を走行した際に、左後輪部8,12及び右後輪部10,14の少なくとも一方側の後車輪52,58が他方側の後車輪52,58よりも高い位置にある(例えば、左後輪部8,12の後車輪52,58が右後輪部10,14の車輪52,58よりも高い位置にある)ときには、図8Dに示すように、左後輪懸架装置32の左側ガスサスペンションシリンダ84が最小ストローク量だけ圧縮される。
これにより、図8Dに示すように、第1左後輪アーム部78及び第2左後輪アーム部82が側方軸受部74及び回動軸部82aのそれぞれの中心軸線A1,A2回りにそれぞれの回動方向R3,R4に回動する。
したがって、図8Dに示す最小ストローク時の第1左後車輪52及び第1右後車輪52の中心O2と第2左後車輪58及び第2右後車輪58の中心O3との前後方向の距離L3が、図9Aに示す空荷時の第1左後車輪52及び第1右後車輪52の中心O2と第2左後車輪58及び第2右後車輪58の中心O3との前後方向の距離L0よりも大きくなる(L3>L0)。
また、図8Dに示す左側ガスサスペンションシリンダ84の最小ストローク時の車両1における地面Gから後側車体部38の底面38aまでの高さH8(例えば、H8=553.8mm)は、図8Aに示す空荷時の車両1における地面Gから後側車体部38の底面38aまでの高さH5(例えば、H5=626.8mm)よりも低くなる(H8<H5)。
これらの結果、各ガスサスペンションシリンダ84,86の最小ストローク時においても、車両1が走行する不整地面Gの状態に関わらず、各後車輪52,52,58,58のタイヤ54,54,60,60が常時接地され、車体2や荷台40の姿勢が一定(水平)に保たれる。
【0035】
上述した本実施形態による農林用不整地走行車両1によれば、この農林用不整地走行車両1が農林用の不整地を走行する際、左前輪部4、右前輪部6、第1左後輪部8、第1右後輪部10、第2左後輪部12、及び、第2右後輪部14のそれぞれを懸架する各懸架装置28,30,32,34が、車両1の走行時の農林用不整地面Gの状態(凹凸状態、傾斜状態)に関わらず、各車輪46,46,52,52,58,58のタイヤ48,48,54,54,60,60を常時接地させて車体2の姿勢を一定(水平)に保つように作動することができる。
これにより、農林用の不整地の走行時に各車輪46,46,52,52,58,58が受ける衝撃力を各懸架装置28,30,32,34が効率よく低減させることができ、車体2を安定させた姿勢で迅速に移動させることができる。
また、車体2の荷台40に積載された物を安定させた状態で迅速に運搬することができる。
【0036】
また、本実施形態による農林用不整地走行車両1によれば、第1左後輪アーム部78及び第2左後輪アーム部82のそれぞれが、車両1の走行時の農林用不整地面Gの状態に応じて左側ガスサスペンションシリンダ84が伸縮することにより第1左後輪部8及び第2左後輪部12の各車輪52,58のタイヤ54,60が接地して車体2の姿勢を一定(水平)に保つように左側方軸受部74及び左回動軸部82のそれぞれの中心軸線A1,A2回りに回動することができる。
また、第1右後輪アーム部78及び第2右後輪アーム部82のそれぞれが、車両1の走行時の農林用不整地面Gの状態に応じて右側ガスサスペンションシリンダ86が伸縮することにより第1右後輪部10及び第2右後輪部14の各車輪52,58のタイヤ54,60が接地して車体2の姿勢を一定(水平)に保つように右側方軸受部74及び右回動軸部82aのそれぞれの中心軸線A1,A2回りに回動することができる。
したがって、図9A図10Bに示すように、車両1の走行時の農林用不整地面Gの状態A,Bに応じて、第1左後輪部8及び第2左後輪部12の各車輪52,58の相対位置、並びに、第1右後輪部10及び第2右後輪部14の各車輪52,58の相対位置を調整することができる。
これにより、第1左後輪部8及び第2左後輪部12の各車輪52,58、並びに、第1右後輪部10及び第2右後輪部14の各車輪52,58のタイヤ54,60を常時接地させながら、車体2の姿勢を一定(水平)に保つ際に左後輪懸架装置32及び右後輪懸架装置34の作動の追従性を向上させることができる。
【0037】
さらに、本実施形態による農林用不整地走行車両1によれば、左前輪懸架装置28の左側油圧サスペンションシリンダ70及び右前輪懸架装置30の右側油圧サスペンションシリンダ72のそれぞれが、車両1の走行時の農林用不整地面Gの状態に応じて左前輪部4及び右前輪部6のそれぞれの車輪46,46のタイヤ48,48を接地させて車体2の姿勢を一定(水平)に保つように伸縮することができる。
これにより、左前輪部4及び右前輪部6の各車輪46,46のタイヤ48,48を常時接地させながら、車体2の姿勢を一定(水平)に保つ際に左前輪懸架装置28及び右前輪懸架装置30の作動の追従性を向上させることができる。
【0038】
また、本実施形態による農林用不整地走行車両1によれば、車両1の走行時の農林用不整地面Gの状態に応じて、左後輪懸架装置32における第1左後輪アーム部78及び第2左後輪アーム部82のそれぞれが左側方軸受部74及び左回動軸部82aのそれぞれの中心軸線A1,A2回りに回動することにより、第1左後輪アーム部78及び第2左後輪アーム部82のそれぞれの下縁部78b,82cを水平な状態に対して最大回動角度の大きさα1が、側面視において、水平面P0に対して15度~25度になるような範囲内で回動させることができる。
同様に、右後輪懸架装置34における第1右後輪アーム部78及び第2右後輪アーム部82のそれぞれが右側方軸受部74及び右回動軸部82aのそれぞれの中心軸線A1,A2回りに回動することにより、第1右後輪アーム部78及び第2右後輪アーム部82のそれぞれの下縁部78b,82cを水平な状態に対して最大回動角度の大きさα2が、側面視において、水平面P0に対して15度~25度になるような範囲内で回動させることができる。
したがって、図9A図10Bに示すように、車両走行時の農林用不整地面Gの状態A,Bに応じて、第1左後輪部8及び第2左後輪部12の各車輪52,58の相対位置、並びに、第1右後輪部10及び第2右後輪部14の各車輪52,58の相対位置を効果的に調整することができる。
これにより、第1左後輪部8及び第2左後輪部12の各車輪52,58のタイヤ54,60、並びに、第1右後輪部10及び第2右後輪部14の各車輪52,58のタイヤ54,60を常時接地させながら、車体2の姿勢を一定(水平)に保つ際に左後輪懸架装置32及び右後輪懸架装置34の作動の追従性をさらに向上させることができる。
【0039】
さらに、本実施形態による農林用不整地走行車両1によれば、図2に示すように、車体2の前側車体部36が平面視において後端連結部36aを中心に後側車体部38に対して左右方向に旋回可能であり、前側車体部36が直進方向に対して最大旋回角度β(例えば、β=45度、等)で旋回した状態では、左前輪部4及び右前輪部6の各車輪46,46の回転中心O1が車両1の全体の外郭側縁部S1よりも内側に位置している。
これにより、前側車体部36が後端連結部36aを中心に左折方向及び右折方向の双方にスムーズに旋回することができる。
また、前側車体部36の左折方向及び右折方向の旋回時において、左前輪部4及び右前輪部6の各車輪46,46の回転中心が車両1の全体の外郭側縁部S1よりも内側に位置している。
これにより、車両1の全体の外郭側縁部S1の外側周辺部にある障害物等が、旋回時の左前輪部4及び右前輪部6の各車輪46,46に接触して干渉するリスクを低減することができると共に、旋回時の車両1の全体がバランスを崩して転倒する等の事故を抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態による農林用不整地走行車両1によれば、複数の油圧モータ16,18,20,22,24,26のそれぞれが、左前輪部4、右前輪部6、第1左後輪部8、第1右後輪部10、第2左後輪部12、及び、第2右後輪部14のそれぞれの一部に組み込まれているインホイールモータであるため、各油圧モータ16,18,20,22,24,26を各車輪46,46,52,52,58,58に近接させて配置することができる。
したがって、各油圧モータ16,18,20,22,24,26を駆動させた際、左前輪部4、右前輪部6、第1左後輪部8、第1右後輪部10、第2左後輪部12、及び、第2右後輪部14のそれぞれの各車輪46,46,52,52,58,58に対して駆動力を効率よく伝達して駆動させることができる。
また、6つの各車輪46,46,52,52,58,58を駆動する駆動源について、油圧モータ16,18,20,22,24,26を独立に採用したことにより、電気モータ等に比べて大きい駆動力を得ることができると共に、小型化することができる。
さらに、各車輪46,46,52,52,58,58について、それぞれ独立した6つの油圧モータ16,18,20,22,24,26が駆動するため、車両1が不整地を走行する際にも安定して走行することができ、無限軌道(クローラ式等)の走行装置を採用した場合に比べて、高速の速度(例えば、30[km/h]以上の速度)で走行が可能となる。
【0041】
なお、上述した本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両1においては、左前輪部4、右前輪部6、第1左後輪部8、第1右後輪部10、第2左後輪部12、及び、第2右後輪部14の6つの車輪46,46,52,52,58,58を採用した形態について説明したが、このような形態に限られず、車輪の個数については、6つよりも多い個数に設定してもよく、6つ以上の各車輪のそれぞれについて、油圧モータ及び懸架装置のそれぞれを独立に設けてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 本発明の一実施形態による農林用不整地走行車両
2 車体
4 左前輪部
6 右前輪部
8 第1左後輪部
10 第1右後輪部
12 第2左後輪部
14 第2右後輪部
16 左前輪用油圧モータ(油圧モータ)
18 右前輪用油圧モータ(油圧モータ)
20 第1左後輪用油圧モータ(油圧モータ)
22 第1右後輪用油圧モータ(油圧モータ)
24 第2左後輪用油圧モータ(油圧モータ)
26 第2右後輪用油圧モータ(油圧モータ)
28 左前輪懸架装置(懸架装置)
30 右前輪懸架装置(懸架装置)
32 左後輪懸架装置(懸架装置)
34 右後輪懸架装置(懸架装置)
36 前側車体部
36a 前側車体部の後端連結部
36b 前側車体部の底面
38 後側車体部
38a 後側車体部の底面
40 荷台
42 ローダークレーン
42a ローダークレーンの支柱部
44 左前輪部の左前車軸、右前輪部の右前車軸
46 左前輪部の左前車輪、右前輪部の右前車輪
48 左前輪部の左前タイヤ、右前輪部の右前タイヤ
50 第1左後輪部の第1左後車軸、第1右後輪部の第1右後車軸
52 第1左後輪部の第1左後車輪、第1右後輪部の第1右後車輪
54 第1左後輪部の第1左後タイヤ、第1右後輪部の第1右後タイヤ
56 第2左後輪部の第2左後車軸、第2右後輪部の第2右後車軸
58 第2左後輪部の第2左後車輪、第2右後輪部の第2右後車輪
60 第2左後輪部の第2左後タイヤ、第2右後輪部の第2右後タイヤ
62 左前輪軸受部、右前輪軸受部
64 第1左前輪連結部、第1右前輪連結部
66 第2左前輪連結部、第2右前輪連結部
68 左前輪アーム部、右前輪アーム部
68a 左前輪アーム部の下方連結部、右前輪アーム部の下方連結部
68b 左前輪アーム部の上方連結部、右前輪アーム部の上方連結部
70 左側油圧サスペンションシリンダ
71 アキュームレータ
72 右側油圧サスペンションシリンダ
73 アキュームレータ
74 左後輪懸架装置の左側方軸受部、右後輪懸架装置の右側方軸受部
76 第1左後輪軸受部、第1右後輪軸受部
78 左後輪懸架装置の第1左後輪アーム部、右後輪懸架装置の第1右後輪アーム部
78a 左後輪懸架装置の第1左後輪アーム部の上端部、右後輪懸架装置の第1右後輪アーム部の上端部
78b 左後輪懸架装置の第1左後輪アーム部の下縁部、右後輪懸架装置の第1右後輪アーム部の下縁部
80 第2左後輪軸受部、第2右後輪軸受部
82 左後輪懸架装置の第2左後輪アーム部、右後輪懸架装置の第2右後輪アーム部
82a 左回動軸部、右回動軸部
82b 左後輪懸架装置の第2左後輪アーム部の後方側上端部、右後輪懸架装置の第2右後輪アーム部の後方側上端部
82c 左後輪懸架装置の第2左後輪アーム部の下縁部、右後輪懸架装置の第2右後輪アーム部の下縁部
84 左側ガスサスペンションシリンダ
86 右側ガスサスペンションシリンダ
A1 左側方軸受部及び右側方軸受部の中心軸線
A2 左回動軸部及び右回動軸部の中心軸線
C1 絞り回路
C2 絞り回路
F1 荷重
F2 力
F3 付勢力
F4 荷重
H1 空荷時の車両における地面から前側車体部の底面までの高さ
H2 積載時の車両における地面から前側車体部の底面までの高さ
H3 左側油圧サスペンションシリンダの最大ストローク時の車両における地面から前側車体部の底面までの高さ
H4 左側油圧サスペンションシリンダの最小ストローク時の車両における地面から前側車体部の底面までの高さ
H5 空荷時の車両における地面から後側車体部の底面までの高さ
H6 最大積載時の車両における地面から後側車体部の底面までの高さ
H7 左側ガスサスペンションシリンダの最大ストローク時の車両における地面から後側車体部の底面までの高さ
H8 左側ガスサスペンションシリンダの最小ストローク時の車両における地面から後側車体部の底面までの高さ
G 地面
L0 空荷時の第1左後車輪及び第1右後車輪の中心と第2左後車輪及び第2右後車輪の中心との前後方向の距離
L1 最大積載時の第1左後車輪及び第1右後車輪の中心と第2左後車輪及び第2右後車輪の中心との前後方向の距離
L2 最大ストローク時の第1左後車輪及び第1右後車輪の中心と第2左後車輪及び第2右後車輪の中心との前後方向の距離
L3 最小ストローク時の第1左後車輪及び第1右後車輪の中心と第2左後車輪及び第2右後車輪の中心との前後方向の距離
O1 左前輪部及び右前輪部の車輪の回転中心
O2 第1左後輪部の第1左後車輪の中心、第1右後輪部の第1右後車輪の中心
O3 第2左後輪部の第2左後車輪の中心、第2右後輪部の第2右後車輪の中心
P0 水平面
R1 回動方向
R2 回動方向
R3 回動方向
R4 回動方向
R5 回動方向
R6 回動方向
S1 車両全体の外郭側縁部
W1 積載物
α1 第1左後輪アーム部及び第1右後輪アーム部の最大回動角度の大きさ
α2 第2左後輪アーム部及び第2右後輪アーム部の最大回動角度の大きさ
β 最大旋回角度
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図10A
図10B