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特開2024-94941二次元ホウ化水素含有シート、水素貯蔵放出材料、発光材料、二次元ホウ化水素含有シートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094941
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】二次元ホウ化水素含有シート、水素貯蔵放出材料、発光材料、二次元ホウ化水素含有シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 35/04 20060101AFI20240703BHJP
   C01B 3/04 20060101ALI20240703BHJP
   C01B 6/00 20060101ALI20240703BHJP
   C01B 35/18 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
C01B35/04 Z
C01B3/04 Z
C01B6/00 A
C01B35/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211872
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】近藤 剛弘
(72)【発明者】
【氏名】引地 美亜
(72)【発明者】
【氏名】宮内 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】竹下 純平
(57)【要約】
【課題】水素放出速度を制御した二次元ホウ化水素含有シート、その二次元ホウ化水素含有シートから構成される水素貯蔵放出材料および発光材料、並びに二次元ホウ化水素含有シートの製造方法を提供する。
【解決手段】(BH)(n≧4)からなる二次元ネットワークを有し、赤外線吸収スペクトルにおいて、2500cm-1近傍におけるBH結合に由来する最大吸収値に対する、1360cm-1近傍におけるBHB結合に由来する最大吸収値の比(BHB/BH)が0.7以上である、二次元ホウ化水素含有シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(BH)(n≧4)からなる二次元ネットワークを有し、
赤外線吸収スペクトルにおいて、2500cm-1近傍におけるBH結合に由来する最大吸収値に対する、1360cm-1近傍におけるBHB結合に由来する最大吸収値の比(BHB/BH)が0.7以上である、二次元ホウ化水素含有シート。
【請求項2】
請求項1に記載の二次元ホウ化水素含有シートから構成され、0.7≦BHB/BH<2.0を満たす、水素貯蔵放出材料。
【請求項3】
請求項1に記載の二次元ホウ化水素含有シートから構成され、BHB/BH≧1.5を満たす、発光材料。
【請求項4】
請求項1に記載の二次元ホウ化水素含有シートの製造方法であって、
MB(但し、Mは、Al、Mg、Ta、Zr、Re、Cr、TiおよびVからなる群から選択される少なくとも1種である。)型構造の二ホウ化金属と、前記二ホウ化金属を構成する金属イオンとイオン交換可能なイオンを配位したイオン交換樹脂とを極性有機溶媒中で混合し、二次元ホウ化水素含有シート前駆体を得る工程と、
前記二次元ホウ化水素含有シート前駆体を加熱処理する工程と、を有し、
前記二次元ホウ化水素含有シート前駆体を得る工程において、前記イオン交換樹脂の添加量を調整することにより、前記二次元ホウ化水素含有シートの赤外線吸収スペクトルにおいて、2500cm-1近傍におけるBH結合に由来する最大吸収値に対する、1360cm-1近傍におけるBHB結合に由来する最大吸収値の比(BHB/BH)を制御する、二次元ホウ化水素含有シートの製造方法。
【請求項5】
前記二次元ホウ化水素含有シート前駆体を得る工程において、前記イオン交換樹脂をイオン交換容量の1.5倍超、9倍未満添加する、請求項4に記載の二次元ホウ化水素含有シートの製造方法。
【請求項6】
前記イオン交換樹脂は、スルホ基を有する、請求項4に記載の二次元ホウ化水素含有シートの製造方法。
【請求項7】
前記極性有機溶媒は、アセトニトリルである、請求項4に記載の二次元ホウ化水素含有シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次元ホウ化水素含有シート、その二次元ホウ化水素含有シートから構成される水素貯蔵放出材料および発光材料、並びに二次元ホウ化水素含有シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素は、燃焼または反応により排出される物質が水であるため、クリーンエネルギーとして注目されている。例えば、水素を燃料電池の負極活物質として用い、自動車や電源設備の燃料とする技術開発が精力的に進められている。
【0003】
水素と酸素を同時に発生することがなく、水から水素を貯蔵し、また貯蔵した水素を放出することができる水素貯蔵放出材料として、二次元ホウ化水素含有シートから構成されるものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7057569号公報
【特許文献2】特開2019-218251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、水素(H)とホウ素(B)とから構成される二次元ホウ化水素含有シートの合成方法が記載されている。しかしながら、特許文献1では、得られる二次元ホウ化水素含有シートにおいて、BH結合部位とBHB結合部位の存在比率を制御する方法が記載されていなかった。
【0006】
特許文献2には、(BH)(n≧4)からなる二次元ホウ化水素含有シートに光を照射することにより、加熱プロセスを経ずに二次元ホウ化水素含有シートから水素放出する方法が記載されている。しかしながら、特許文献2では、材料の合成方法を変えることで二次元ホウ化水素含有シートの水素放出速度を制御できるか明らかではなかった。また、従来、材料の合成方法を変えることで二次元ホウ化水素含有シートの水素放出速度を制御する技術は開発されていなかった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、水素放出速度を制御した二次元ホウ化水素含有シート、その二次元ホウ化水素含有シートから構成される水素貯蔵放出材料および発光材料、並びに二次元ホウ化水素含有シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の態様を有する。
[1](BH)(n≧4)からなる二次元ネットワークを有し、
赤外線吸収スペクトルにおいて、2500cm-1近傍におけるBH結合に由来する最大吸収値に対する、1360cm-1近傍におけるBHB結合に由来する最大吸収値の比(BHB/BH)が0.7以上である、二次元ホウ化水素含有シート。
[2][1]に記載の二次元ホウ化水素含有シートから構成され、0.7≦BHB/BH<2.0を満たす、水素貯蔵放出材料。
[3][1]に記載の二次元ホウ化水素含有シートから構成され、BHB/BH≧1.5を満たす、発光材料。
[4][1]に記載の二次元ホウ化水素含有シートの製造方法であって、
MB(但し、Mは、Al、Mg、Ta、Zr、Re、Cr、TiおよびVからなる群から選択される少なくとも1種である。)型構造の二ホウ化金属と、前記二ホウ化金属を構成する金属イオンとイオン交換可能なイオンを配位したイオン交換樹脂とを極性有機溶媒中で混合し、二次元ホウ化水素含有シート前駆体を得る工程と、
前記二次元ホウ化水素含有シート前駆体を加熱処理する工程と、を有し、
前記二次元ホウ化水素含有シート前駆体を得る工程において、前記イオン交換樹脂の添加量を調整することにより、前記二次元ホウ化水素含有シートの赤外線吸収スペクトルにおいて、2500cm-1近傍におけるBH結合に由来する最大吸収値に対する、1360cm-1近傍におけるBHB結合に由来する最大吸収値の比(BHB/BH)を制御する、二次元ホウ化水素含有シートの製造方法。
[5]前記二次元ホウ化水素含有シート前駆体を得る工程において、前記イオン交換樹脂をイオン交換容量の1.5倍超、9倍未満添加する、[4]に記載の二次元ホウ化水素含有シートの製造方法。
[6]前記イオン交換樹脂は、スルホ基を有する、[4]または[5]に記載の二次元ホウ化水素含有シートの製造方法。
[7]前記極性有機溶媒は、アセトニトリルである、[4]~[6]のいずれかに記載の二次元ホウ化水素含有シートの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水素放出速度を制御した二次元ホウ化水素含有シート、その二次元ホウ化水素含有シートから構成される水素貯蔵放出材料および発光材料、並びに二次元ホウ化水素含有シートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る二次元ホウ化水素含有シートの分子構造を示す模式図である。
図2】実験例1~実験例6で得られた生成物の赤外分光分析の結果を示す図である。
図3】実験例1~実験例6において、2500cm-1近傍におけるBH結合に由来する最大吸収値に対する、1360cm-1近傍におけるBHB結合に由来する最大吸収値の比(BHB/BH)とイオン交換樹脂の添加量(体積)の関係を示す図である。
図4】実験例1~実験例6で得られた生成物のX線光電子分光分析の結果を示す図である。
図5】実験例1~実験例6で得られた生成物のX線光電子分光分析の結果を示す図である。
図6】実験例1~実験例6で得られた生成物の昇温脱離ガス分析の結果を示す図である。
図7】実験例1~実験例6で得られた生成物のX線回折測定の結果を示す図である。
図8】実験例1~実験例6で得られた生成物の蛍光分析から得られた蛍光最大強度(発光強度)とイオン交換樹脂の添加量(体積)の関係を示す図である。
図9】実験例11で得られた生成物の蛍光分析の結果を示す図である。
図10】実験例1~実験例6で得られた生成物、および実験例11で得られた生成物について、2500cm-1近傍におけるBH結合に由来する最大吸収値に対する、1360cm-1近傍におけるBHB結合に由来する最大吸収値の比(BHB/BH)と発光強度の関係を示す図である。
図11】実験例1~実験例6で得られた二次元ホウ化水素含有シートの発光強度を示す図である。
図12】実験例11で得られた二次元ホウ化水素含有シートの発光強度を示す図である。
図13】実験例1~実験例6で得られた生成物について、水素発生に要する時間と水素発生量の関係を示す図である。
図14】実験例1~実験例6で得られた生成物について、水素発生量とイオン交換樹脂の添加量(体積)の関係を示す図である。
図15】実験例1、実験例2、実験例4~実験例6で得られた二次元ホウ化水素含有シートについて、2500cm-1近傍におけるBH結合に由来する最大吸収値に対する、1360cm-1近傍におけるBHB結合に由来する最大吸収値の比(BHB/BH)と水素発生量の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の二次元ホウ化水素含有シート、水素貯蔵放出材料、発光材料、および二次元ホウ化水素含有シートの製造方法の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0012】
[二次元ホウ化水素含有シート]
本発明の一実施形態に係る二次元ホウ化水素含有シートは、(BH)(n≧4)からなる二次元ネットワークを有する。すなわち、本実施形態の二次元ホウ化水素含有シートは、ホウ素原子(B)と水素原子(H)がモル比で1:1の割合で存在し、これら2つの原子のみから形成される二次元ネットワークを有するシートである。
【0013】
本実施形態の二次元ホウ化水素含有シートは、図1に示すように、ホウ素原子(B)が、ベンゼン環のような六角形の環状に配列するとともに、その六角形の頂点に存在しており、ホウ素原子(B)によって形成される六角形が隙間なく連接して、網目状の面構造(二次元ネットワーク)をなしている。さらに、本実施形態の二次元ホウ化水素含有シートは、図1に示すように、ホウ素原子(B)のうち隣接する2つが同一の水素原子(H)と結合する部位を有する。
本実施形態の二次元ホウ化水素含有シートにおいて、ホウ素原子(B)によって形成される六角形の網目状とは、例えば、ハニカム状のことを言う。
【0014】
図1において、BH結合は符号βで示す結合部位であり、BHB結合符号γで示す結合部位である。
【0015】
本実施形態の二次元ホウ化水素含有シートは、ホウ素原子(B)と水素原子(H)からなる二次元ネットワークを有する薄膜状の物質である。また、本実施形態の二次元ホウ化水素含有シートは、後述する本実施形態の二次元ホウ化水素含有シートの製造方法に用いられる二ホウ化金属に由来する金属原子、または、その他の金属原子をほとんど含まない。
本実施形態の二次元ホウ化水素含有シートにおいて、上記の網目状の面構造を形成するホウ素原子(B)と水素原子(H)の総数は、1000個以上である。
【0016】
図1に示す、隣り合う2つのホウ素原子(B)間の結合距離dは、0.170nm~0.185nmである。また、図1に示す、1つの水素原子(H)を介して、隣り合う2つのホウ素原子(B)間の結合距離dは、0.170nm~0.185nmである。また、図1に示す、隣り合うホウ素原子(B)と水素原子(H)間の結合距離dは、0.125nm~0.135nmである。
【0017】
本実施形態の二次元ホウ化水素含有シートの厚さは、0.23nm~0.50nmである。
本実施形態の二次元ホウ化水素含有シートにおいて、少なくとも一方向の長さが100nm以上であることが好ましい。本実施形態の二次元ホウ化水素含有シートにおいて、少なくとも一方向の長さが100nm以上であれば、本実施形態に係る二次元ホウ化水素含有シートは、電子材料、触媒の担体材料、超伝導材料等として有効に利用することができる。
本実施形態の二次元ホウ化水素含有シートの大きさ(面積)は、特に限定されず、後述する本実施形態の二次元ホウ素化合物含有シートの製造方法によって、任意の大きさに形成することができる。
【0018】
本実施形態の二次元ホウ化水素含有シートは、酸化物で終端されていてもよい。すなわち、本実施形態の二次元ホウ化水素含有シートは、その分子構造の末端が酸化物を形成していてもよい。本実施形態の二次元ホウ化水素含有シートの分子構造の末端をなす酸化物としては、例えば、ホウ酸(B(OH))や酸化ホウ素(B)が挙げられる。本実施形態の二次元ホウ化水素含有シートは、酸化物で終端されることにより、より安定な分子構造を形成する。
【0019】
本実施形態の二次元ホウ化水素含有シートは、結晶構造を有する物質である。また、本実施形態の二次元ホウ化水素含有シートでは、六角形の環を形成するホウ素原子(B)間、および、ホウ素原子(B)と水素原子(H)の間の結合力が強い。そのため、本実施形態の二次元ホウ化水素含有シートは、製造時に複数積層されてなる結晶(凝集体)を形成したとしても、グラファイトと同様に結晶面に沿って容易に劈開し、単層の二次元シートとして分離(回収)することができる。
【0020】
本実施形態の二次元ホウ化水素含有シートは、赤外線吸収スペクトルにおいて、2500cm-1近傍におけるBH結合に由来する最大吸収値(吸収ピーク)に対する、1360cm-1近傍におけるBHB結合に由来する最大吸収値(吸収ピーク)の比(BHB/BH)が0.7以上である。前記の比(BHB/BH)が1.5以上では、本実施形態の二次元ホウ化水素含有シートは、発光材料として好ましく、0.7≦BHB/BH<2.0であると、本実施形態の二次元ホウ化水素含有シートは、水素貯蔵放出材料として好ましい。
【0021】
本実施形態の二次元ホウ化水素含有シートは、上記の比(BHB/BH)が0.7に近いほど、すなわち、BH結合に由来する最大吸収値がBHB結合に由来する最大吸収値に近いほど、短時間で水素を放出できる(水素を放出しやすい)材料となる。なお、赤外線吸収スペクトルにおいて、吸収ピーク高さや面積から、BH結合の量とBHB結合の量を定量することができる。そのため、BH結合に由来する最大吸収値がBHB結合に由来する最大吸収値に近いとは、BH結合の量がBHB結合の量に近いことを示す。また、本実施形態の二次元ホウ化水素含有シートは、上記の比(BHB/BH)が0.7から離れる(0.7よりも大きくなる)、すなわち、BH結合に由来する最大吸収値がBHB結合に由来する最大吸収値よりも小さくなると、水素を放出しにくい材料となる。また、本実施形態の二次元ホウ化水素含有シートは、紫外線を照射すると発光するが、その発光強度が高くなる。BH結合に由来する最大吸収値がBHB結合に由来する最大吸収値よりも小さとは、BH結合の量がBHB結合の量よりも少ないことを示す。このように、本実施形態の二次元ホウ化水素含有シートは、上記の比(BHB/BH)を調整することにより、水素貯蔵放出材料または発光材料、あるいは、水素貯蔵放出材料および発光材料の性質を兼ね備えた材料として、好適に用いることができる。
【0022】
[二次元ホウ化水素含有シートの製造方法]
本発明の一実施形態に係る二次元ホウ素化合物含有シートの製造方法は、本発明の一実施形態に係る二次元ホウ化水素含有シートの製造方法であって、MB(但し、Mは、Al、Mg、Ta、Zr、Re、Cr、TiおよびVからなる群から選択される少なくとも1種である。)型構造の二ホウ化金属と、前記二ホウ化金属を構成する金属イオンとイオン交換可能なイオンを配位したイオン交換樹脂とを極性有機溶媒中で混合し、二次元ホウ化水素含有シート前駆体を得る工程(以下、「第1の工程」という。)と、前記二次元ホウ化水素含有シート前駆体を加熱処理する工程(以下、「第2の工程」という。)と、を有する。
【0023】
「第1の工程」
MB型構造の二ホウ化金属としては、六角形の環状の構造を有するものが用いられ、例えば、二ホウ化アルミニウム(AlB)、二ホウ化マグネシウム(MgB)、二ホウ化タンタル(TaB)、二ホウ化ジルコニウム(ZrB)、二ホウ化レニウム(ReB)、二ホウ化クロム(CrB)、二ホウ化チタン(TiB)、二ホウ化バナジウム(VB)が用いられる。
極性有機溶媒中にて、容易にイオン交換樹脂とのイオン交換を行うことができることから、二ホウ化マグネシウムを用いることが好ましい。
【0024】
二ホウ化金属を構成する金属イオンとイオン交換可能なイオンを配位したイオン交換樹脂としては、特に限定されないが、例えば、二ホウ化金属を構成する金属イオンとイオン交換可能なイオンを配位した官能基(以下、「官能基α」という。)を有するスチレンの重合体、官能基αを有するジビニルベンゼンの重合体、官能基αを有するスチレンと官能基αを有するジビニルベンゼンの共重合体等が挙げられる。
官能基αとしては、例えば、スルホ基、カルボキシル基等が挙げられる。これらの中でも、極性有機溶媒中にて、容易に二ホウ化金属を構成する金属イオンとのイオン交換を行うことができることから、スルホ基が好ましい。
【0025】
極性有機溶媒としては、特に限定されず、例えば、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、アルコール等が挙げられる。これらの中でも、酸素を含んでいない点からアセトニトリルが好ましい。
【0026】
第1の工程では、極性有機溶媒に二ホウ化金属とイオン交換樹脂を投入し、極性有機溶媒、二ホウ化金属およびイオン交換樹脂を含む混合溶液を撹拌し、二ホウ化金属とイオン交換樹脂を充分に接触させる。これにより、二ホウ化金属を構成する金属イオンと、イオン交換樹脂の官能基αのイオンとがイオン交換して、ホウ素原子と、イオン交換樹脂の官能基αに由来する原子によって形成される二次元ネットワークを有する二次元ホウ素化合物含有シートが生成する。
【0027】
例えば、二ホウ化金属として二ホウ化マグネシウムを用い、イオン交換樹脂としてスルホ基を有するイオン交換樹脂を用いれば、二ホウ化マグネシウムのマグネシウムイオン(Mg2+)と、イオン交換樹脂のスルホ基の水素イオン(H)2つとが置換して、上述のようなホウ素原子(B)と水素原子(H)からなる二次元ネットワークを有する二次元ホウ化水素含有シートが生成する。
【0028】
第1の工程では、混合液に超音波等を加えることなく、二ホウ化金属を構成する金属イオンと、イオン交換樹脂の官能基αのイオンとがイオン交換する反応を、穏やかに進めることが好ましい。
【0029】
混合溶液を撹拌する際、混合溶液の温度は、15℃~35℃であることが好ましい。
混合溶液を撹拌する時間は、特に限定されないが、例えば、700分~7000分とする。
【0030】
また、第1の工程は、窒素(N)やアルゴン(Ar)等の不活性ガスからなる不活性雰囲気下で行う。
【0031】
第1の工程において、イオン交換樹脂の添加量を調整することにより、二次元ホウ化水素含有シートの赤外線吸収スペクトルにおいて、2500cm-1近傍におけるBH結合に由来する最大吸収値に対する、1360cm-1近傍におけるBHB結合に由来する最大吸収値の比(BHB/BH)を制御する。
【0032】
第1の工程において、上記の比(BHB/BH)を制御するには、イオン交換樹脂をイオン交換容量の1.5倍超、9倍未満添加することが好ましい。イオン交換樹脂の添加量がイオン交換容量の1.5倍程度と少ないと、上記の比(BHB/BH)が小さくなる。イオン交換樹脂の添加量がイオン交換容量の9倍程度と多いと、上記の比(BHB/BH)が大きくなる。
【0033】
次いで、撹拌が終了した混合溶液を濾過する。
混合溶液の濾過方法は、特に限定されず、例えば、自然濾過、減圧濾過、加圧濾過、遠心濾過等の方法が用いられる。また、濾材としては、例えば、セルロースを基材とする濾紙、メンブレンフィルター、セルロースやグラスファイバー等を圧縮成型した濾過板等が用いられる。
【0034】
「第2の工程」
次いで、シート状の二次元ホウ化水素含有シート前駆体を加熱処理し、本実施形態の二次元ホウ化水素含有シートを得る。
【0035】
第2の工程では、シート状の二次元ホウ化水素含有シート前駆体を加熱処理する温度は、特に限定されないが、例えば、150℃~450℃である。
また、加熱処理する時間は、特に限定されないが、例えば、5分~1200分とする。
【0036】
また、第2の工程は、真空下、または、窒素(N)やアルゴン(Ar)等の不活性ガスからなる不活性雰囲気下で行う。
【0037】
本実施形態の二次元ホウ素化合物含有シートの製造方法によって得られた、生成物の分析方法としては、例えば、X線光電子分光分析法(X-ray Photoelectron Spectroscopy、XPS)、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)および透過型電子顕微鏡内で行うエネルギー分散型X線分析(Energy dispersive X-ray Spectroscopy、EDS)と電子エネルギー損失分光(Electron energy loss Spectroscopy、EELS)による観察等が挙げられる。
【0038】
X線光電子分光分析法(XPS)では、例えば、日本電子(JEOL)社製のX線光電子分光分析装置(商品名:JPS9010TR)を用いて、生成物の表面にX線を照射し、そのときに生じる光電子のエネルギーを測定することによって、生成物の構成元素とその電子状態を分析する。この分析において、原料の二ホウ化金属を構成する金属元素に由来する光電子のエネルギーがほとんど検出されず、ホウ素と上記のイオン交換樹脂の官能基αに由来する元素に由来する光電子のエネルギーのみが検出されれば、生成物はホウ素と上記のイオン交換樹脂の官能基αに由来する元素のみから構成されていると言える。X線光電子分光分析法による分析により、原料の二ホウ化金属を構成する金属元素に由来する光電子のエネルギーがほとんど検出されず、ホウ素と水素に由来する光電子のエネルギーのみが検出されれば、生成物はホウ素と水素のみから構成されていると言える。
【0039】
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察では、例えば、日本電子(JEOL)社製の透過型電子顕微鏡(商品名:JEM-2100F TEM/STEM)を用いて、生成物を観察することにより、生成物の形状(外観)等を分析する。この分析において、膜状(シート状)の物質が観察されれば、生成物は二次元的なシート状の物質であると言える。透過型電子顕微鏡内において、エネルギー分散型X線分析(EDS)を行うことにより、生成物のTEM観察した部位における金属元素の存在の有無を観察できる。この分析において、原料の二ホウ化金属を構成する金属元素に由来するX線のエネルギーがほとんど検出されず、金属元素(例えば、Mg)のピークが現われなければ、金属元素が存在しないと言える。また、透過型電子顕微鏡内において、電子エネルギー損失分光(EELS)を行うことにより、生成物のTEM観察した部位における構成元素を観察できる。この分析において、ホウ素と上記のイオン交換樹脂の官能基αに由来する元素に由来するX線エネルギーのみが検出されれば、生成物はホウ素と上記のイオン交換樹脂の官能基αに由来する元素のみから構成されていると言える。
【0040】
本実施形態の二次元ホウ素化合物含有シートの製造方法によれば、ホウ素原子と、イオン交換樹脂の官能基αに由来する原子(水素:H)を含む二次元ネットワークを有する二次元ホウ素化合物含有シートを容易に生成することができる。なお、第1の工程において、イオン交換樹脂の添加量を調整することにより、最終的に得られる二次元ホウ化水素含有シートの赤外線吸収スペクトルにおいて、2500cm-1近傍におけるBH結合に由来する最大吸収値に対する、1360cm-1近傍におけるBHB結合に由来する最大吸収値の比(BHB/BH)を制御することができる。
【実施例0041】
以下、実験例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
【0042】
[実験例1]
アセトニトリルに、二ホウ化マグネシウム(純度:99%、レアメタリック社製)を加えるとともに、スルホ基を有するイオン交換樹脂(アンバーライト(登録商標)IR120B、オルガノ社製)を体積で30mL加えて、ガラス棒で撹拌し、二ホウ化マグネシウムとイオン交換樹脂の混合溶液を調製した。アセトニトリルに対する二ホウ化マグネシウムの添加量を、5mg/mLとした。
このとき、イオン交換樹脂をイオン交換容量の1.5倍量加えた。
この混合溶液を25℃にて72時間撹拌した後、この混合溶液を、孔径0.2μmのメンブレンフィルターで濾過し、濾液を回収した。その後、窒素雰囲気下、70℃のオイルバスを用いて減圧状態で30分間乾燥させて、生成物を得た。
【0043】
「赤外分光分析」
赤外分光分析装置(商品名:FTIR ALPHA II、ブルッカー社製)を用いて、得られた生成物を分析した。結果を図2に示す。図2において、イオン交換樹脂を30mL用いた場合のスペクトルをHB-r30、イオン交換樹脂を60mL用いた場合のスペクトルをHB-r60、イオン交換樹脂を70mL用いた場合のスペクトルをHB-r70、イオン交換樹脂を90mL用いた場合のスペクトルをHB-r90、イオン交換樹脂を1200mL用いた場合のスペクトルをHB-r120、イオン交換樹脂を180mL用いた場合のスペクトルをHB-r180と示す。
図2に示す結果から、2500cm-1近傍にB-Hの伸縮振動に由来すると帰属可能なピークが、1360cm-1近傍にB-H-Bに由来する振動と帰属可能なピークが現れていることが示された。すなわち、二次元ホウ化水素含有シートが得られていることが確認された。
また、2500cm-1近傍におけるBH結合に由来する最大吸収値に対する、1360cm-1近傍におけるBHB結合に由来する最大吸収値の比(BHB/BH)が1.1であることが分かった。
なお、BH結合に由来する最大吸収値とBHB結合に由来する最大吸収値を、ピークの最大値とピークの裾の値との差として得た。
【0044】
[実験例2]
イオン交換樹脂を体積で60mL、すなわち、イオン交換容量の3倍量加えたこと以外は実験例1と同様にして、生成物を得た。
得られた生成物を、実験例1と同様にして分析した。結果を図2に示す。
図2に示す結果から、2500cm-1近傍にB-Hの伸縮振動に由来すると帰属可能なピークが、1360cm-1近傍にB-H-Bに由来する振動と帰属可能なピークが現れていることが示された。すなわち、二次元ホウ化水素含有シートが得られていることが確認された。
また、2500cm-1近傍におけるBH結合に由来する最大吸収値に対する、1360cm-1近傍におけるBHB結合に由来する最大吸収値の比(BHB/BH)が約1(0.7~1.3)であることが分かった。
【0045】
[実験例3]
イオン交換樹脂を体積で70mL、すなわち、イオン交換容量の3.5倍量加えたこと以外は実験例1と同様にして、生成物を得た。
得られた生成物を、実験例1と同様にして分析した。結果を図2に示す。
図2に示す結果から、2500cm-1近傍にB-Hの伸縮振動に由来すると帰属可能なピークが、1360cm-1近傍にB-H-Bに由来する振動と帰属可能なピークが現れていることが示された。すなわち、二次元ホウ化水素含有シートが得られていることが確認された。
また、2500cm-1近傍におけるBH結合に由来する最大吸収値に対する、1360cm-1近傍におけるBHB結合に由来する最大吸収値の比(BHB/BH)が約1.5であることが分かった。
【0046】
[実験例4]
イオン交換樹脂を体積で90mL、すなわち、イオン交換容量の4.5倍量加えたこと以外は実験例1と同様にして、生成物を得た。
得られた生成物を、実験例1と同様にして分析した。結果を図2に示す。
図2に示す結果から、2500cm-1近傍にB-Hの伸縮振動に由来すると帰属可能なピークが、1360cm-1近傍にB-H-Bに由来する振動と帰属可能なピークが現れていることが示された。すなわち、二次元ホウ化水素含有シートが得られていることが確認された。
また、2500cm-1近傍におけるBH結合に由来する最大吸収値に対する、1360cm-1近傍におけるBHB結合に由来する最大吸収値の比(BHB/BH)が約1.8であることが分かった。
【0047】
[実験例5]
イオン交換樹脂を体積で120mL、すなわち、イオン交換容量の6倍量加えたこと以外は実験例1と同様にして、生成物を得た。
得られた生成物を、実験例1と同様にして分析した。結果を図2に示す。
図2に示す結果から、2500cm-1近傍にB-Hの伸縮振動に由来すると帰属可能なピークが、1360cm-1近傍にB-H-Bに由来する振動と帰属可能なピークが現れていることが示された。すなわち、二次元ホウ化水素含有シートが得られていることが確認された。
また、2500cm-1近傍におけるBH結合に由来する最大吸収値に対する、1360cm-1近傍におけるBHB結合に由来する最大吸収値の比(BHB/BH)が約2であることが分かった。
【0048】
[実験例6]
イオン交換樹脂を体積で180mL、すなわち、イオン交換容量の9倍量加えたこと以外は実験例1と同様にして、生成物を得た。
得られた生成物を、実験例1と同様にして分析した。結果を図2に示す。
図2に示す結果から、2500cm-1近傍にB-Hの伸縮振動に由来すると帰属可能なピークが、1360cm-1近傍にB-H-Bに由来する振動と帰属可能なピークが現れていることが示された。すなわち、二次元ホウ化水素含有シートが得られていることが確認された。
また、2500cm-1近傍におけるBH結合に由来する最大吸収値に対する、1360cm-1近傍におけるBHB結合に由来する最大吸収値の比(BHB/BH)が約3(2.4~3.5)であることが分かった。
【0049】
実験例1~実験例6で得られた上記の比(BHB/BH)とイオン交換樹脂の添加量(体積)の関係を図3に示す。
図3に示す結果から、上記の比(BHB/BH)とイオン交換樹脂の添加量(体積)は比例関係にあることが分かった。
【0050】
[実験例7]
実験例1~実験例6で得られた二次元ホウ化水素含有シートのX線光電子分光(XPS)分析を行った。
X線光電子分光分析の分析装置として、日本電子(JEOL)社製のX線光電子分光分析装置(商品名:JPS9010TR)を用いた。X線光電子分光分析の結果を図4および図5に示す。図4および図5において、イオン交換樹脂を60mL用いた場合のスペクトルをHB-r60、イオン交換樹脂を90mL用いた場合のスペクトルをHB-r90、イオン交換樹脂を1200mL用いた場合のスペクトルをHB-r120、イオン交換樹脂を180mL用いた場合のスペクトルをHB-r180と示す。
図4および図5に示す結果から、実験例1~実験例6で得られた二次元ホウ化水素含有シートは、マグネシウムを含んでいないことが分かった。
【0051】
[実験例8]
実験例1~実験例6で得られた二次元ホウ化水素含有シートの昇温脱離ガス分析(Thermal Desorption Spectrometry、TDS)を行った。分析結果を、図6に示す。図6において、イオン交換樹脂を60mL用いた場合のスペクトルをHB-r60、イオン交換樹脂を90mL用いた場合のスペクトルをHB-r90、イオン交換樹脂を1200mL用いた場合のスペクトルをHB-r120、イオン交換樹脂を180mL用いた場合のスペクトルをHB-r180と示す。
図6における脱離水素の強度の積分値と使用した二次元ホウ化水素含有シートの重さの解析からホウ素と水素の原子数比がB:H=1:1±0.1であった。
【0052】
[実験例9]
X線回折(商品名:MINI FLEX、リガク社製)装置を用いて、実験例1~実験例6で得られた二次元ホウ化水素含有シートを分析した。結果を図7に示す。図7において、イオン交換樹脂を60mL用いた場合のスペクトルをHB-r60、イオン交換樹脂を90mL用いた場合のスペクトルをHB-r90、イオン交換樹脂を1200mL用いた場合のスペクトルをHB-r120、イオン交換樹脂を180mL用いた場合のスペクトルをHB-r180と示す。
図7に示す結果から、実験例1~実験例6で得られた二次元ホウ化水素含有シートは、非晶質な構造で構成されている物質であることが分かった。
【0053】
[実験例10]
実験例1~実験例6で得られた二次元ホウ化水素含有シートの蛍光分析を行った。蛍光分析を、HORIBA社のDUETTAを用いて波長300nm~600nmの光を照射し、波長350nm~750nmの波長の発光強度を測定した。発光最大強度とイオン交換樹脂の添加量(体積)の関係を、図8に示す。
図8に示す結果から、イオン交換樹脂の添加量が多いほど、発光強度が大きくなることが分かった。
【0054】
[実験例11]
アセトニトリルに対する二ホウ化マグネシウムの添加量を、1mg/mLとしたこと以外は実験例1~実験例6と同様にして、二次元ホウ化水素含有シートを作製した。
実験例10と同様にして、得られた二次元ホウ化水素含有シートの蛍光分析を行った。発光強度とイオン交換樹脂の添加量(体積)の関係を、図9に示す。
図9に示す結果から、イオン交換樹脂の添加量が多いほど、発光強度が大きくなることが分かった。
【0055】
実験例1~実験例6で得られた上記の比(BHB/BH)と実験例1~実験例6で得られた二次元ホウ化水素含有シートの発光強度の関係、および実験例11で得られた上記の比(BHB/BH)と実験例11で得られた二次元ホウ化水素含有シートの発光強度の関係を図10に示す。
図10に示す結果から、上記の比(BHB/BH)が大きいほど、発光強度が大きくなることが分かった。
【0056】
実験例1~実験例6で得られた二次元ホウ化水素含有シートの発光強度を図11に示す。また、実験例11で得られた二次元ホウ化水素含有シートの発光強度を図12に示す。図11および図12に示す結果から、イオン交換樹脂の添加量が多いほど、発光強度が大きくなることが分かった。
【0057】
[実験例12]
実験例1、実験例2、実験例4~実験例6で得られた二次元ホウ化水素含有シートについて、水素発生速度を測定した。水素発生速度は光照射時間に対する水素発生量を、ガスクロマトグラフィーを用いた水素量測定により算出した。水素発生に要する時間と水素発生量の関係を、図13に示す。水素発生量とイオン交換樹脂の添加量(体積)の関係を、図14に示す。図13において、イオン交換樹脂を30mL用いた場合のグラフをHB-r30、イオン交換樹脂を60mL用いた場合のグラフをHB-r60、イオン交換樹脂を90mL用いた場合のグラフをHB-r90、イオン交換樹脂を1200mL用いた場合のグラフをHB-r120、イオン交換樹脂を180mL用いた場合のグラフをHB-r180と示す。
図13および図14に示す結果から、イオン交換樹脂の添加量が少ないほど、水素発生量が大きくなることが分かった。
【0058】
実験例1、実験例2、実験例4~実験例6で得られた二次元ホウ化水素含有シートについて、上記の比(BHB/BH)と水素発生量の関係を図15に示す。図15に示す結果から、0.7≦BHB/BH<2.0を満たすと、水素発生量が大きくなることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の二次元ホウ化水素含有シートは、水素貯蔵放出材料、発光材料等として利用可能である。
図1
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