(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094944
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】等速自在継手用ブーツ、等速自在継手、およびドライブシャフト
(51)【国際特許分類】
F16D 3/84 20060101AFI20240703BHJP
F16D 3/223 20110101ALI20240703BHJP
F16D 3/205 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
F16D3/84 Z
F16D3/84 W
F16D3/223
F16D3/205 M
F16D3/84 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211879
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】中川 亮
(72)【発明者】
【氏名】小原 美香
(57)【要約】
【課題】転動体と軌道輪間の電食や不快なノイズの発生を防ぐことができる等速自在継手用ブーツ、等速自在継手、およびドライブシャフトを提供する。
【解決手段】一方の開口部が外側継手部材の開口部に装着されるとともに、他方の開口部が内側継手部材に連結されるシャフトに装着されて、継手内部を密封する等速自在継手用ブーツである。外側継手部材とシャフトとの間を導通可能状態とする導通構造とした。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の開口部が外側継手部材の開口部に装着されるとともに、他方の開口部が内側継手部材に連結されるシャフトに装着されて、継手内部を密封する等速自在継手用ブーツであって、
前記外側継手部材とシャフトとの間を導通可能状態とする導通構造としたことを特徴とする等速自在継手用ブーツ。
【請求項2】
前記導通構造を通電素材にて構成したことを特徴とする請求項1に記載の等速自在継手用ブーツ。
【請求項3】
前記通電素材が、導電フィラーと、樹脂又はゴムからなるベースとを備えた導電性部材であることを特徴とする請求項2に記載の等速自在継手用ブーツ。
【請求項4】
樹脂又はゴムからなるブーツ本体と、このブーツ本体に付設される通電部材とを備え、この通電部材にて前記外側継手部材とシャフトとの間を導通可能状態とする導電構造を構成することを特徴とする請求項1に記載の等速自在継手用ブーツ。
【請求項5】
前記通電部材が、金属からなることを特徴とする請求項4に記載の等速自在継手用ブーツ。
【請求項6】
前記通電部材が、導電フィラーと、樹脂又はゴムからなるベースとを備えた導電性部材であることを特徴とする請求項4に記載の等速自在継手用ブーツ。
【請求項7】
前記通電部材が、ブーツ本体の外面と内面との少なくともいずれかに付設されていることを特徴とする請求項4に記載の等速自在継手用ブーツ。
【請求項8】
前記通電部材が、ブーツ本体の内部に埋設されていることを特徴とする請求項4に記載の等速自在継手用ブーツ。
【請求項9】
外側継手部材と、内側継手部材と、外側継手部材と内側継手部材との間に介在されるトルク伝達部材とを備え、ブーツにて継手内部が密封される等速自在継手であって、
前記ブーツを前記請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の等速自在継手用ブーツを用いたことを特徴とする等速自在継手。
【請求項10】
中間シャフトと、前記中間シャフトの一方に固定式等速自在継手を接続し、前記中間シャ フトの他方に摺動式等速自在継手を接続した電動車のドライブシャフトであって、前記固定式等速自在継手及び摺動式等速自在継手を、前記請求項9に記載の等速自在継手を用いるもことを特徴とするドライブシャフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、等速自在継手用ブーツ、等速自在継手、およびドライブシャフトに関し、特に、電動化が進む自動車や各種産業機械向けに適用される等速自在継手用ブーツ、等速自在継手、およびドライブシャフトに関する。
【背景技術】
【0002】
図12に、一般的な等速自在継手(固定式等速自在継手)を示す。この等速自在継手は、軸方向に延びる複数のトラック溝3が内径面4に形成された外側継手部材5と、軸方向に延びる複数のトラック溝6が外径面7に円周方向等間隔に形成された内側継手部材8と、外側継手部材5のトラック溝3と内側継手部材8のトラック溝6との間に介在してトルクを伝達する複数のボール9と、外側継手部材5の内径面4と内側継手部材8の外径面7との間に介在してボール9を保持するケージ10とを備えている。
【0003】
内側継手部材8の軸孔(雌スプライン)8aにトルク伝達可能にシャフトSの雄スプライン部11をスプライン嵌合させている。なお、シャフトSのスプライン部11の端部は、スナップリング等の止め輪12により抜け止めされている。
【0004】
シャフトSと外側継手部材5との間には、外部からの異物の侵入および内部からのグリースの漏洩を防止するためのブーツ15が装着されている。ブーツ15は、大径端部15aと、小径端部15bと、大径端部15aと小径端部15bとを連結する蛇腹部15cとからなる。ブーツ15の大径端部15aは外側継手部材5の開口端でブーツバンド16により締め付け固定され、その小径端部15bはシャフトSのブーツ装着部17でブーツバンド16により締め付け固定されている。ブーツ(等速自在継手用ブーツ)の材質は、一般的には、その素材は樹脂(熱可塑性エラストマー)やゴムであり、絶縁素材であることが多い。
【0005】
ところで、特許文献1に記載の等速自在継手ブーツは、大作動角をとることが可能な蛇腹形状のものが提案されている。すなわち、この特許文献1では、蛇腹部における山部と谷部を繋ぐ斜面部位の一か所以上を三つの傾斜部で構成したものである。また、大作動角を取らない等速自在継手に用いるブーツとしては、コンパクトさを追求した蛇腹の無いタイプ(特許文献2に記載のブーツ)のものもある。このようなブーツは、インジェクションブロー法や、特殊な金型を用いるが、インジェクション(射出)成形法でも成形することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-155002号公報
【特許文献2】米国特許第7354349号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電動化が進む自動車や各種産業機械向けに適用される等速自在継手において、電動部品に供給される電力が等速自在継手に通電した際(例えば、迷走電流が発生した際)、転動体(ボール)と軌道輪(外側継手部材や内側継手部材)や内部部品(内側継手部材、保持器、ボール等)同士の接触・非接触が繰り返されると、スパーク等が発生するおそれがある。スパークが発生すれば、電食やノイズ(ラジオノイズ等)が発生する懸念がある。電食が発生すれば、電食による早期剥離からの短寿命や、ノイズが発生すれば、車内の音響環境へのノイズ付与による快適性阻害の問題を引き起こすことが懸念される。
【0008】
ところで、転動体と軌道輪が常に完全に接触している状態であれば、流れ込んできた電流は外輪~ボール~内輪及び内輪~ボール~外輪のルート周辺部品へ流れていき、ノイズや電食等は発生しない。また、転動体と軌道輪が完全に非接触であれば、電流は完全に遮断されるため、同様にノイズや電食等は発生しない。このように、等速自在継手においては、回転やトルクの入力変化で転動体と軌道輪や内部部品同士の接触/非接触の繰り返しが発生するために、ノイズや電食等が発生するおそれがある。
【0009】
特に、近年、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)の普及に伴い、トラクションモータシステム(E‐Axle)へのニーズが高まっている。E‐Axleは、モータ、インバータ、減速機が一体なっているため、車体に搭載して、これに電力を供給すれば、タイヤにつながるドライブシャフトの回転トルクを発生させて車を走行させることができる。
【0010】
このため、ドライブシャフトにおける摺動式等速自在継手側での通電対策が求められ、また、ドライブシャフトにおいては摺動式等速自在継手と固定式等速自在継手とがシャフト部材にて連結されるので、シャフト部材(中間シャフト)伝いでの通電のため、固定式等速自在継手側での通電対策が求められる。
【0011】
また、E‐Axleの高出力化にともなう高電圧化による電食発生の懸念が高まっている。さらには、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)等においては、回生ブレーキが使用される。この回生ブレーキが使用された場合、回生により、従来のエンジン駆動方式のものよりも、マイナストルク(非負荷側トルク)が高頻度で高い水準で負荷されることになる。このため、回生時には、等速自在継手の内部すきま分だけ、内部部品(内側継手部材、トルク伝達部材等)が負荷されたトルクと逆方向に動くことになる。このように、内部部品が動けば、金属接触部位が切断されやすくなり、電食発生の懸念が大きくなっていた。
【0012】
なお、エンジン駆動では、主に、駆動方向に一方向の荷重が係ることになり、内部部品の金属接触が維持されやすい。ただし、アクセルオフ時や減速時には非負荷側に接触することになるが、頻度や負荷の大きさは回生時に比べて小さい。
【0013】
そこで、本発明は、転動体と軌道輪間の電食や不快なノイズの発生を防ぐことができ、特に、E‐Axleの高出力化にともなう高電圧化による電食発生や回生ブレーキを用いたことよる電食を有効に防止できる、等速自在継手用ブーツおよびこのようなブーツを用いた等速自在継手、およびドライブシャフトを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の等速自在継手用ブーツは、一方の開口部が外側継手部材の開口部に装着されるとともに、他方の開口部が内側継手部材に連結されるシャフトに装着されて、継手内部を密封する等速自在継手用ブーツであって、前記外側継手部材とシャフトとの間を導通可能状態とする導通構造としたものである。
【0015】
本発明の等速自在継手用ブーツによれば、外側継手部材とシャフトとの間を導通可能状態とする導通構造とすることにより、外側継手部材とシャフトとの間に通電ルートを形成でき、継手内部に電流が流れるのを防止できる。
【0016】
前記導通構造を通電素材にて構成することができる。このように構成すれば、ブーツとして、形状や大きさ等を従来のものと同様のもので構成でき、取り付け(組付け)作業が従来と同様の作業でよいとう利点がある。
【0017】
前記通電素材が、導電フィラーと、樹脂又はゴムからなるベースとを備えた導電性部材であってもよい。このような構成であれば、種々の材料を用いて、通電素材を構成できる。このため、種々の体積抵抗率の導通構造を作成できる。導電フィラーとしては、金属系であっても炭素系であってもよい。金属系である場合、銅、アルミニウム、銀、ニッケル、錫の粉末や繊維状のものなどが挙げられる。炭素系であれば、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、炭素繊維などが挙げられる。形状としては、フレーク状、球状(粒状)、及び樹状等がある。なお、繊維状のものが、少ない充填量で導電性を得ることができる。ベースの樹脂材料としては、ウレタン、シリコーン、アクリル、ポリイミド、その他の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を使用でき、ベースのゴム材料としては、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、ウレタンゴム、アクリルエチレンゴム等を使用できる。
【0018】
樹脂又はゴムからなるブーツ本体と、このブーツ本体に付設される通電部材とを備え、この通電部材にて前記外側継手部材とシャフトとの間を導通可能状態とする導電構造を構成する樹脂又はゴムからなるブーツ本体と、このブーツ本体に付設される通電部材とで構成されたものであってもよい。この場合、既存のブーツに、通電部材を貼り付ける等して付設すれば、導通構造のブーツを形成するこができる。
【0019】
前記通電部材が、金属からなるものであっても、導電フィラーと、樹脂又はゴムからなるベースとを備えた導電性部材であってもよい。金属しては、銅、アルミニウム、銀、ニッケル、錫等を用いることができる。また、この場合、箔状であっても、板状であってもよい。
【0020】
前記通電部材が、ブーツ本体の外面と内面との少なくともいずれかに付設されているものであっても、ブーツ本体の内部に埋設されているものであってもよい。このため、ブーツ本体の外面と内面と内部の何れかに配設されたものであっても、外面と内面と内部のいずれか2か所に配設されたものであっても、外面と内面と内部とに配設されたものであってもよい。
【0021】
本発明の等速自在継手は、外側継手部材と、内側継手部材と、外側継手部材と内側継手部材との間に介在されるトルク伝達部材とを備え、ブーツにて継手内部が密封される等速自在継手であって、前記ブーツを前記等速自在継手用ブーツに用いている。
【0022】
本発明の等速自在継手は、外側継手部材とシャフトとの間を導通可能状態とする導通構造とすることにより、外側継手部材とシャフトとの間に通電ルートを形成でき、継手内部に電流が流れるのを防止できる。
【0023】
本発明のドライブシャフトは、中間シャフトと、前記中間シャフトの一方に固定式等速自在継手を接続し、前記中間シャフトの他方に摺動式等速自在継手を接続した電動車のドライブシャフトであって、前記固定式等速自在継手及び摺動式等速自在継手を、前記等速自在継手を用いるものである。
【0024】
本発明のドライブシャフトによれば、E‐Axleの高出力化にともなう高電圧化による電食発生や回生ブレーキを用いたことよる電食を有効に防止できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、通電時の電食発生による短寿命や、音響環境へのノイズ付与を防止できる。
特に、E‐Axleに接続される等速自在継手におけるブーツに導通構造を有するものとすることにより、E‐Axleの高出力化にともなう高電圧化による電食発生や回生ブレーキを用いたことよる電食を有効に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に係るドライブシャフトを使用した電動車の簡略図である。
【
図2】E‐Axleを用いた本発明に係るドライブシャフトを使用した電動車を示し、(a)は前輪駆動方式の簡略図であり、(b)は4輪駆動方式の簡略図である。
【
図3】本発明に係るドライブシャフトの断面である。
【
図4】本発明の第1の等速自在継手用ブーツを示し、(a)はこの等速自在継手用ブーツを用いた等速自在継手の断面図であり、(b)は(a)のA部拡大図である。
【
図5】本発明の第2の等速自在継手用ブーツを示し、(a)はこの等速自在継手用ブーツを用いた等速自在継手の断面図であり、(b)は(a)のB部拡大図である。
【
図6】
図5の等速自在継手用ブーツの簡略斜視図である。
【
図7】本発明の第3の等速自在継手用ブーツを示し、(a)はこの等速自在継手用ブーツを用いた等速自在継手の断面図であり、(b)は(a)のC部拡大図である。
【
図8】本発明の第4の等速自在継手用ブーツを示し、(a)はこの等速自在継手用ブーツを用いた等速自在継手の断面図であり、(b)は(a)のD部拡大図である。
【
図9】本発明の第5の等速自在継手用ブーツを示し、この等速自在継手用ブーツを用いた等速自在継手の断面図である。
【
図10】
図9の等速自在継手用ブーツの簡略斜視図である。
【
図11】本発明の第6の等速自在継手用ブーツを示し、(a)は大径側の断面図であり、(b)は小径側の断面図である。
【
図12】一般的な固定式等速自在継手の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下本発明の実施の形態を
図1~
図11に基づいて説明する。
図1は電気自動車の概略平面図である。電気自動車100は、駆動力源として単一の回転機102を備え、バッテリー103からインバータ等のパワーコントロールユニット(PCU)104を経て所定の電力が回転機102に供給されるようになっている。回転機102は、電動モータおよび発電機として機能するもので、所謂モータジェネレータであり、走行時に回生制御されて発電機として機能することにより回生ブレーキ力を発生する。
【0028】
電気駆動ユニット101は、駆動力源として用いられる回転機102とトランスアクスル105とを備えている。電気駆動ユニット101は、車両前側部分に配置されて左右の前輪106fを回転駆動して走行する前輪駆動車両である。なお、電気駆動ユニット101を、電気自動車100の後側部分に配置して、左右の後輪106rを回転駆動して走行する後輪駆動車両を構成することもできる。
【0029】
ここで、本明細書および特許請求の範囲における電動車について定義する。電動車とは、電気エネルギーを車の動力の全て又は一部として使って走行する全ての自動車を指す。具体的には、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV、PHV)、ハイブリッド車(HEV、HV)、燃料電池車(FCEV、FCV)を含む概念のものである。
【0030】
トランスアクスル105は、デファレンシャル装置107と、回転機102の出力軸(図示省略)とデファレンシャル装置107との間で動力伝達する減速機構108とを備えている。デファレンシャル装置107は、左右一対のドライブシャフト109を介して駆動車輪である左右の前輪106fに動力伝達する。ドライブシャフト109が本実施形態の電動車のドライブシャフトである。詳細は後述する。
【0031】
電気自動車100の前輪106fおよび後輪106rには、常用ブレーキとして用いられるホイールブレーキ111が取り付けられている。ホイールブレーキ111は、油圧によって摩擦係合させられる油圧ブレーキで、走行時にホイールブレーキ制御回路110から供給されるブレーキ油圧に応じた制動力を発生する。ホイールブレーキ制御回路110は、ブレーキ制御装置112から供給される指令信号に従って油圧制御弁等が制御されることにより、ブレーキ要求量に応じた所定の制動力を発生するブレーキ油圧をホイールブレーキ111に供給する。ブレーキ要求量は、例えば、運転者によって足踏み操作される図示しないブレーキペダルの足踏み操作力である。なお、ホイールブレーキ111は、電動ブレーキで構成することもできる。
【0032】
図2(a)(b)は、トラクションモータシステム(eAxle)を用いた電動車の簡略図を示し、
図2(a)は、前輪駆動方式の電動車を示し、
図2(b)は、4輪駆動方式の電動車を示している。前輪駆動方式の電動車は、eAxle120をフロント(前方部分)に配置し、このeAxle120に、前輪106f、106fが連結されている左右一対のドライブシャフト109、109を接続している。この場合、後方側には、eAxle120を配置せずに、後輪106r、106rをシャフト118にて連結している。4輪駆動方式の電動車は、リア後方部分)にも、eAxle120を配置し、この後方のeAxle120に左右一対のドライブシャフト109、109を接続している。
【0033】
このように、電動車に用いられるドライブシャフトは、
図3に示すように、シャフト部材(中間シャフト)Sのアウトボード側の一端に固定式等速自在継手121が装着され、インボード側の他端に摺動式等速自在継手115が装着されている。アウトボード側の固定式等速自在継手121は、前輪106fの車輪用軸受のハブ輪(図示省略)に動力伝達可能に連結され、インボード側の摺動式等速自在継手115はデファレンシャル装置107に動力伝達可能に連結されている。
【0034】
摺動式等速自在継手115は、外側継手部材122、内側継手部材としてのトリポード部材123と、トルク伝達要素(トルク伝達部材)としてのローラ124とを備える、所謂、トリポード型等速自在継手である。外側継手部材122は、一端が開口したカップ部122aを有し、内周面に軸方向に延びる3つの直線状トラック溝125が周方向等間隔に形成され、各トラック溝125の両側には、円周方向に対向して配置され、それぞれ軸方向に延びる部分円筒状のローラ案内面126が形成されている。外側継手部材122の内部には、トリポード部材23とローラ124が収容されている。
【0035】
トリポード部材123は、半径方向に突出した3本の脚軸127を有する。ローラ124は、脚軸127の円筒形外周面127aに複数の針状ころ128を介して外篏され、脚軸127に回転自在に支持されている。脚軸127の円筒形外周面127aは針状ころ28の内側軌道面を構成し、ローラ124の円筒形内周面124aは針状ころ28の外側軌道面を構成している。ローラ124は球状外周面124bを有し、部分円筒状のローラ案内面126上を転動する。トリポード部材123の軸心には、中間シャフトSが挿入されるスプライン穴が設けられている。外側継手部材122はステム部122bを一体に有し、ステム部122bのインボード側端部の外周には、デファレンシャルギヤのスプライン穴に挿入されるスプライン122eが設けられている。
【0036】
シャフトSと外側継手部材122との間には、外部からの異物の侵入および内部からのグリースの漏洩を防止するためのブーツ35が装着されている。このブーツ35は、後述する固定式等速自在継手121のブーツ35と同様の構成であり、大径端部35aと、小径端部35bと、大径端部35aと小径端部35bとを連結する蛇腹部35cとからなる。ブーツ35の大径端部35aは外側継手部材25の開口端でブーツバンド36により締め付け固定され、その小径端部35bはシャフトSのブーツ装着部37でブーツバンド36により締め付け固定されている。なお、大径端部35aの外径面と小径端部35bの外径面とには、それぞれ、ブーツバンド36が嵌合する凹周溝が形成されている。
【0037】
また、固定式等速自在継手は、
図4に示すように、軸方向に延びる複数のトラック溝23が内径面24に形成された外側継手部材25と、軸方向に延びる複数のトラック溝26が外径面27に円周方向等間隔に形成された内側継手部材28と、外側継手部材25のトラック溝23と内側継手部材28のトラック溝26との間に介在してトルクを伝達するトルク伝達部材20としてのボール29と、外側継手部材25の内径面24と内側継手部材28の外径面27との間に介在してボール29を保持するケージ30とを備えている。
【0038】
内側継手部材28の軸孔(雌スプライン)28aにトルク伝達可能にシャフトSの雄スプライン部31をスプライン嵌合させている。なお、シャフトSのスプライン部31の端部は、スナップリング等の止め輪32により抜け止めされている。
【0039】
シャフトSと外側継手部材25との間には、外部からの異物の侵入および内部からのグリースの漏洩を防止するためのブーツ35が装着されている。ブーツ35は、大径端部35aと、小径端部35bと、大径端部35aと小径端部35bとを連結する蛇腹部35cとからなる。ブーツ35の大径端部35aは外側継手部材25の開口端でブーツバンド36により締め付け固定され、その小径端部35bはシャフトSのブーツ装着部37でブーツバンド36により締め付け固定されている。なお、大径端部35aの外径面と小径端部35bの外径面とには、それぞれ、ブーツバンド36が嵌合する凹周溝38,39が形成されている。
【0040】
この
図4に示すブーツ35は、本発明に係る第1の等速自在継手用ブーツであり、
図4(a)は第1の等速自在継手用ブーツを用いた等速自在継手の断面図であり、
図4(b)は
図4(a)のA部拡大図である。
【0041】
この場合のブーツ35は、外側継手部材25とシャフトSとの間を導通可能状態とする導通構造となっている。この実施形態では、ブーツ自体を通電素材にて構成している。この通電素材としては、
図4(b)に示すように、導電フィラー40と、樹脂又はゴムからなるベース41とを備えた導電性部材42である。このため、導電性部材42は、導電性樹脂又は導電性ゴムである。
【0042】
導電フィラー40は、金属系であっても炭素系であってもよい。金属系である場合、銅、アルミニウム、銀、ニッケル、錫の粉末や繊維状のものなどが挙げられる。炭素系であれば、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、炭素繊維などが挙げられる。形状としては、フレーク状、球状(粒状)樹状等がある。なお、繊維状のものが、少ない充填量で導電性を得ることができる。ベース41の樹脂材料としては、ウレタン、シリコーン、アクリル、ポリイミド、その他の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を使用でき、ベース41のゴム材料としては、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、ウレタンゴム、アクリルエチレンゴム等を使用できる。なお、ベース41に樹脂を用いる場合、熱可塑性ポリエステルエラストマー、ゴムであればクロロプレンゴムが好ましい。これらの材料は、等速自在継手用ブーツの材料として耐久性能に優れ、従来から実績のある材料である。
【0043】
この場合、導電フィラー40が、
図4(b)に示すように、連続した導通路43を形成するのが好ましい。このように形成された導通路43を形成することによって、外側継手部材25とシャフトSとの間に通電ルートが形成されることになる。すなわち、導電フィラー40の配合率を増やしていけば、導電フィラー40のクラスタ(導電材がつながったもの)の数が増えていき、ある配合率を超えるとクラスタ同士がつながり導通路43(パーコレーション)を形成して導電率が急に高くなる。このときの充填材(導電フィラー)濃度を「パーコレーション濃度」、または「パーコレーションしきい値」という。
【0044】
一般に部材の導電性は体積抵抗率で表され、この導電性部材42の体積抵抗率は、1×10
-4以下Ω・cmに設定するのが好ましく、1×10
-1Ω・cm以下に設定するのがより好ましい。ここで、体積抵抗率とは、試験物の単位体積(1cm
3)もしくは単位体積(1m
3)当たりの体積抵抗値であり、体積抵抗値とは、試験物体積の抵抗値である。試験物の断面積の単位は[cm
2]、試験物の長さの単位は[cm]、抵抗の単位は[Ω]なので、体積抵抗率の単位は[Ω・cm]となる。この体積抵抗率は四端子法によって求めることができる。試験物(断面形状において、幅寸法をWとし、厚寸法をtとしたとき)の断面積をSとし、抵抗をRとし、体積抵抗率をρvとしたときに、断面積S(W×t)に一定電流I(A)流し、距離Lだけ離れた電極間の電位差V(V)を測ることにより求めることができる。すなわち、体積抵抗率ρvは次に数1に示す数式で求めことができる。
【数1】
【0045】
ところで、抵抗率ρは『電流の流れにくさを表す比例定数』であり、導電率σは『電流の流れやすさを表す比例定数』である。このため、導電率σは抵抗率ρの逆数となる。従って、導電率σの単位は[S/m]となり、Sは『ジーメンス(Siemens)』であり、[Ω]の逆数の単位となっている。
【0046】
一般に、106[S/m]以上の導電率のものが導体であり、106[S/m]から10-6[S/m]の導電率のものが半導体であり、10-6[S/m]の導電率以下のものが絶縁体と呼ぶことができる、このため、導電性部材42として、106[S/m]以上の導電率を備えたものであればよい。
【0047】
また、
図3に示すドライブシャフトの摺動式等速自在継手においても、
図4(a)(b)に示す外側継手部材25とシャフトSとの間を導通可能状態とする導通構造を備えたブーツを使用することができる。
【0048】
図4に示す等速自在継手用ブーツによれば、外側継手部材25とシャフトSとの間を導通可能状態とする導通構造とすることにより、外側継手部材25とシャフトSとの間に通電ルートを形成でき、継手内部に電流が流れるのを防止できる。通電時の電食発生による短寿命や、音響環境へのノイズ付与を防止できる。特に、E‐Axleを用いた電動車において、導通構造を有する等速自在継手用ブーツを用いることにより、E‐Axleをの高出力化にともなう高電圧化による電食発生や回生ブレーキを用いたことよる電食を有効に防止できる。
【0049】
次に、
図5は第2の等速自在継手用ブーツを示し、(a)はこの等速自在継手用ブーツを用いた等速自在継手の断面図であり、(b)は(a)のB部拡大図である。この場合のブーツ35は、樹脂又はゴムからなるブーツ本体45と、このブーツ本体45に付設される通電部材46とで構成される。
【0050】
ブーツ本体45は既存のブーツ、つまり、
図12に示すブーツ15に対応し、樹脂やゴム材で構成される。このため、ブーツ本体45は、大径端部45aと、小径端部45bと、大径端部45aと小径端部45bとを連結する蛇腹部45cとからなる。
【0051】
ブーツ本体45の樹脂としては、ウレタン、シリコーン、アクリル、ポリイミド、その他の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を使用でき、ブーツ本体45のゴム材料としては、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、ウレタンゴム、アクリルエチレンゴム等を使用できる。
【0052】
通電部材46としては、金属箔や金属板で構成することができる。金属としては、銅、アルミニウム、銀、ニッケル、錫等に導体にて構成できる。この場合、通電部材46は、
図5及び
図6に示すように、ブーツ本体45の外側表面に付設(張り合わせ)されている。この実施形態では、所定幅の帯状体とされ、
図5(b)に示すように、ブーツ35の小径端部35b側においては、通電部材46は折り返されて、その折り返し部46bが、シャフトSに接触させている。また、ブーツ35の大径端部35a側においても、通電部材46は、折り返されて、その折り返し部46aが、外側継手部材に接触させている。
【0053】
ところで、
図5(a)に示す等速自在継手は、
図4(a)に示す等速自在継手と同様の構成であるので、同一部材は、
図4(a)に示す符号と同一の符号を付してそれらの説明を省略する。なお、通電部材46としては、1×10
-4以下Ω・cmに設定するのが好ましく、1×10
-1Ω・cm以下に設定するのがより好ましい。
【0054】
このため、
図5に示す等速自在継手用ブーツであっても、外側継手部材25とシャフトSとの間を導通可能状態とする導通構造とすることにより、外側継手部材25とシャフトSとの間に通電ルートを形成でき、継手内部に電流が流れるのを防止できる。通電時の電食発生による短寿命や、音響環境へのノイズ付与を防止できる。
【0055】
図7は第3の等速自在継手用ブーツを示し、
図7(a)はこの等速自在継手用ブーツを用いた等速自在継手の断面図であり、
図7(b)は、
図7(a)のC部拡大図である。この場合のブーツ35も、ブーツ本体45と、このブーツ本体45に付設される通電部材46とで備えたものであるが、両端部に折り返し部46a、46bを設けていない。
【0056】
このため、通電部材46は、外側継手部材とシャフトに接触できない、乃至接触できたと端縁が接触するのみで、その接触面積が極めて小であり、接触の信頼性に欠けることになる。そこで、
図7(b)に示すように、ブーツ本体の小径端部の端面乃至シャフトの外面の一部を導電性接着剤49にて覆っている。
【0057】
導電性接着剤49は、導電性部材を同様に、導電フィラーと、樹脂又はゴムからなるベースとを備えたものであり、導電性接着剤49は、導電性ペースト(流動性と高い粘性のある状態のもの)を塗布後に乾燥・硬化させてなるものである。このため、
図7に示す等速自在継手用ブーツであっても、
図5に示す等速自在継手用ブーツと同様、外側継手部材25とシャフトSとの間を導通可能状態とする導通構造とすることにより、外側継手部材25とシャフトSとの間に通電ルートを形成でき、継手内部に電流が流れるのを防止できる。通電時の電食発生による短寿命や、音響環境へのノイズ付与を防止できる。
【0058】
なお、
図7(a)に示す等速自在継手は、
図4(a)に示す等速自在継手と同様の構成であるので、同一部材は、
図4(a)に示す符号と同一の符号を付してそれらの説明を省略する。この
図7に示すブーツの形状は通常の蛇腹タイプであるので、高角度に対応できる。
【0059】
図8に示す等速自在継手用ブーツ50は、大径端部50aと、小径端部50bと、大径端部50aと小径端部50bを連結する湾曲部50cとを備えたものである。すなわち、
図8に示す等速自在継手用ブーツ50は
図4等に示す等速自在継手用ブーツ35が有する蛇腹部35cを有するものではない。なお、この等速自在継手用ブーツ50は、その大径端部50aには、ブーツバンド36が嵌合する凹溝50a1が設けられ、その小径端部50bには、ブーツバンド36が嵌合する凹溝50b1が設けられている。
【0060】
図8に示す等速自在継手用ブーツ50は、
図4に示すブーツ35と同様、ブーツ自体を通電素材にて構成している、この通電素材としては、
図8(b)に示すように、導電フィラー40と、樹脂又はゴムからなるベース41とを備えた導電性部材42としている。
【0061】
また、
図9に示す等速自在継手用ブーツ50は、樹脂又はゴムからなるブーツ本体51と、このブーツ本体51に付設される通電部材52とで構成される。ブーツ本体51は既存のブーツで構成でき、樹脂やゴム材で構成される。このため、ブーツ本体51は、大径端部51aと、小径端部51bと、大径端部51aと小径端部51bとを連結する湾曲部51cとを備えたものである。
【0062】
通電部材52は、金属箔(金属板)で構成することができる。金属としては、銅、アルミニウム、銀、ニッケル、錫等の導体にて構成できる。この場合、通電部材52は、
図9及び
図10に示すように、ブーツ本体45の内面に付設(張り合わせ)されている。
【0063】
このように、通電部材52のブーツ本体45の内面に付設すれば、
図5に示すように、通電部材52の端部を折り返したり、
図7に示すように、導通性接着材49を使用したりすることなく、外側継手部材とシャフトとの間を導通可能状態とする導通構造とすることができる。
【0064】
なお、
図8(a)及び
図9(a)に示す等速自在継手は、
図4(a)に示す等速自在継手と同様の構成であるので、同一部材は、
図4(a)に示す符号と同一の符号を付してそれらの説明を省略する。なお、
図8及び
図9に示すブーツは、使用角度が低角度側に規制されるものに使用される場合である。
【0065】
ブーツ35,50として、
図11(a)(b)に示すように、ブーツ本体45,51内に、通電部材46,52を埋設したものであってもよい。この場合、大径端部側および小径端部側に
図7に示すように、導通性接着材49を付設する必要がある。すなわち、大径端部側では、通電部材46,52の大径端46a1,52a1を、ブーツ本体45,51の端面45a1,51a1に沿わせて、これらを導通性接着材49で覆うことになる。また、小径端部側では、通電部材46,52の小径端46b1,52b1を、ブーツ本体45,51の端面45b1,51b1に沿わせて、これらを導通性接着材49で覆うことになる。
【0066】
また、摺動式等速自在継手側のブーツとして、第1の等速自在継手用ブーツに限るものではなく、前記した、第2~第6の等速自在継手用ブーツを用いることができる。
【0067】
E‐Axle(eAxle120)に接続されるドライブシャフトにおいて、等速自在継手用ブーツに導通構造を備えたものを使用すれば、E‐Axleの高出力化にともなう高電圧化による電食発生や回生ブレーキを用いたことよる電食を有効に防止できる。
【0068】
ところで、モータに組み込まれる転がり軸受等は、回路からの電流が軸受内部に流れ込むことで、転動体と軌道面間の転がり接触する面(以下、「転走面」という)の油膜を通してスパークすることがある。すなわち、軸受の転動面と転動体との間には回転中に油膜が形成され、軌道面と転動体とは非接触となっている。このため、このような軸受においては回転に伴って静電気が発生することになって、転動体と軌道面間にスパークが発生することになる。このスパークによって転走面が局部的に溶解する「電食」が発生し、軸受機能が低下する場合がある。そこで、グリースとして、導電性グリースを用いてスパークを発生しにくくしたものがある。すなわち、導電性グリースを用いることにより、グリース自体の体積抵抗率を下げて(導電性を上げて)電食を防止している。
【0069】
また、等速自在継手には潤滑用のグリースが封入されるので、本発明に係る等速自在継手において、グリースに導電性グリースを用いるようにしてもよい。導電性グリースとして、転がり軸受に用いているもの、例えば、カーボンブラック粒子等を導電物質兼増ちょう剤としたグリース、または、フッ素油基油にグラファイト粒子を増ちょう剤として配合したグリース等がある。このように、導電性グリースを用いれば、内部部品が常に導通状態となり、部品同士の接触・非接触が繰り返されたとしても、スパーク等が発生しにくく、単に、外側継手部材とシャフトとの間を導通可能状態とする導通構造としたものよりも、導電性グリースを併用することによって、ノイズや電食等の発生を防止する機能をより有効に発揮することができる。
【0070】
なお、一般的には、導電性グリースの導電性が、経年的に低下していく。すなわち、導電性物質が徐々に基油と分離したり、凝集したりすることにより、軸受に導電性グリースを使用していれば、軸受の抵抗値が初期は低くても経時的に高くなり、電食が起こしやすくなる場合がある。そこで、従来では、導電性グリースとして、導電性の経時的な劣化が生じにくいものが、特開2022-155416号公報に記載のように提案されている。このため、本等速自在継手に用いる導電性グリースとして、特開2022-155416号公報等に記載の導電性グリースのように、導電性の経時的な劣化が生じにくいものを使用するのが好ましい。
【0071】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、
図5等のように通電部材46を用いる場合、その数として、1本に限るものではなく、周方向に所定ピッチで複数本配設されたものであってもよく、その幅寸法としても任意に変更できる。なお、通電部材46として、ブーツ本体45の全周(外周及び又は内周)に亘るものであってもよい。また、ブーツ本体45の外面と内面と内部の何れか配設されたものであっても、外面と内面と内部のいずれか2か所に配設されたものであっても、外面と内面と内部とに配設されたものであってもよい。
【0072】
また、金属製の通電部材46(52)を用いる場合、ブーツ本体45(51)に凹溝を設け、この凹溝に通電部材46(52)を嵌合させて、通電部材46(52)をブーツ本体45(51)の外面や内面から突出させないようにすることも可能である。ブーツ本体45(51)とこのブーツ本体45(51)に付設される通電部材46(52)でブーツが構成される場合、金属製であっても、樹脂製であっても、通電部材46(52)は、ブーツ本体の変動(変位)に追従可能な可撓性及び伸縮性を具備するものが好ましい。
【0073】
通電部材46(52)を、導電フィラー40と、樹脂又はゴムからなるベース41とを備えた導電性部材42を用いて、外面側又は内面側にこの導電性部材46(52)を全周に配設するものであれば、内側半分を通常のブーツ材にて構成し、外側半分を導電性部材42にて構成したり、外側半分を通常のブーツ材にて構成し、内側半分を導電性部材42にて構成したりできる。
【0074】
通電部材が一つのブーツに対して複数の通電部材を付設するものでは、金属製の通電部材と、導電フィラー40とベース41とを備えた導電性部材42とが混在されたものであっても、いずれか一方で構成するものであってもよい。
【0075】
等速自在継手として、固定式等速自在継手の一種であるバーフィールド型等速自在継手(BJ)に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、アンダーカットフリー型等速自在継手(UJ)にも適用可能であり、さらに、摺動式等速自在継手として、図示したトリポード型等速自在継手(TJ)以外のダブルオフセット型等速自在継手(DOJ)、クロスグルーブ型等速自在継手(LJ)等も適用可能である。用途面では、電気自動車(EV)、バッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV、PHV)、ハイブリッド車(HEV、HV)、燃料電池車(FCEV、FCV)に使用することができる。
【符号の説明】
【0076】
20 トルク伝達部材
28 内側継手部材
29 ボール
35 等速自在継手用ブーツ
40 導電フィラー
41 ベース
42 導電性部材
45 ブーツ本体
46 通電部材
50 等速自在継手用ブーツ
51 ブーツ本体
52 通電部材
121 固定式等速自在継手
115 摺動式等速自在継手