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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094957
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】積層体、及びそれを含む車両内装材
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/22 20060101AFI20240703BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20240703BHJP
   D06N 7/00 20060101ALI20240703BHJP
   C08J 9/36 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B32B5/22
B32B5/18
D06N7/00
C08J9/36 CES
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211896
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】590000927
【氏名又は名称】龍田化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】本多 太陽
(72)【発明者】
【氏名】加納 重弘
【テーマコード(参考)】
4F055
4F074
4F100
【Fターム(参考)】
4F055AA21
4F055BA19
4F055CA05
4F055CA15
4F055FA05
4F055GA26
4F055GA34
4F074AA16
4F074CE02
4F074CE46
4F074DA08
4F074DA09
4F074DA23
4F074DA35
4F100AK01A
4F100AK03A
4F100AK03B
4F100AK07B
4F100AL09B
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100DC21B
4F100DJ01A
4F100EJ05A
4F100GB33
4F100JA04B
4F100JA11B
4F100JA13
4F100JB16B
4F100JK02
4F100JK12B
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】表皮層の開裂性が高く、エアバック展開性及び成形性が良好である積層体、及びそれを含む車両内装材を提供する。
【解決手段】本発明は、架橋樹脂発泡体、及び架橋樹脂発泡体の第1表面に配置されたポリオレフィン系樹脂表皮層を含み、ポリオレフィン系樹脂表皮層は、DSCにより、10℃/minの昇温速度で40℃から200℃まで1回目昇温して融解させ、その後、10℃/minの降温速度で200℃から40℃まで降温することにより結晶化させた後、さらに10℃/minの昇温速度で40℃から200℃まで2回目昇温することで得られるDSC曲線の2回目昇温時のDSC曲線において、ピークの温度が110~135℃の範囲の第1ピークを有し、第1ピークの融解熱量が40.0J/g以下であり、ポリオレフィン系樹脂表皮層は、海島構造を有し、海島構造における島領域の面積割合が50.0%以上である、積層体に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋樹脂発泡体、及び前記架橋樹脂発泡体の第1表面に配置されたポリオレフィン系樹脂表皮層を含み、
前記ポリオレフィン系樹脂表皮層は、示差走査熱量測定(DSC)により、10℃/minの昇温速度で40℃から200℃まで1回目昇温して融解させ、その後、10℃/minの降温速度で200℃から40℃まで降温することにより結晶化させた後、さらに10℃/minの昇温速度で40℃から200℃まで2回目昇温することで得られるDSC曲線の2回目昇温時のDSC曲線において、ピークの温度が110~135℃の範囲の第1ピークを有し、前記第1ピークの融解熱量が40.0J/g以下であり、
前記ポリオレフィン系樹脂表皮層は、連続相の海領域と、前記連続相中に分散している分散相の島領域からなる海島構造を有し、前記海島構造における島領域の面積割合が50.0%以上である、積層体。
【請求項2】
前記第1ピークの融解熱量が7.5J/g以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記ポリオレフィン系樹脂表皮層は、示差走査熱量測定(DSC)により、10℃/minの昇温速度で40℃から200℃まで1回目昇温して融解させ、その後、10℃/minの降温速度で200℃から40℃まで降温することにより結晶化させた後、さらに10℃/minの昇温速度で40℃から200℃まで2回目昇温することで得られるDSC曲線の2回目昇温時のDSC曲線において、ピークの温度が140~170℃の範囲の第2ピークを有し、前記第2ピークの融解熱量が2.0~15.2J/gである、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記ポリオレフィン系樹脂表皮層の海島構造において、島の1個当たりの平均面積は0.70~2.5μm2である、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記ポリオレフィン系樹脂表皮層は、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリプロピレン系樹脂、及びポリオレフィン系樹脂を含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
前記ポリオレフィン系樹脂表皮層は、厚さが0.4~1.3mmである、請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
前記ポリオレフィン系樹脂表皮層は、ショアA硬度が70~100である、請求項1に記載の積層体。
【請求項8】
前記架橋樹脂発泡体は、ポリオレフィン系樹脂発泡体である、請求項1に記載の積層体。
【請求項9】
車両内装材用である、請求項1に記載の積層体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の積層体を含む、車両内装材。
【請求項11】
自動車内装インストルメントパネルである、請求項10に記載の車両内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内装材に好適に用いることができる積層体、及びそれを含む車両内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の内装には、表皮材として架橋樹脂発泡体の表面に樹脂表皮層を積層した積層体が広く用いられている。例えば、自動車のインスツルメントパネルにおいては、このような積層体は、エアバックを収納した樹脂基材の表面に配置されて一体化されている。
一方、自動車のインスツルメントパネルには、衝撃等が生じた場合に、エアバックが展開できるように、裏側に切込み部(いわゆる開裂用のティアライン)が設けられている。近年、エアバックを収納した基材のみに切込み部を設け、基材表面に配置されている積層体には切込み部を設けず、開裂性を高めることが行われている。例えば、特許文献1には、架橋ポリオレフィン発泡体及び表皮層を備えた積層体において、開裂しやすくするために、-30℃での剥離強度、架橋ポリオレフィン発泡体の160℃の伸び及び25%圧縮硬さを所定の範囲にすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-163753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の積層体において、表皮層の開裂性が劣る場合があった。また、積層体は、車両内装材に用いる場合、真空成形等の成形に所定の形状に加工する必要がある。
【0005】
本発明は、表皮層の開裂性が高く、エアバック展開性及び成形性が良好である積層体、及びそれを含む車両内装材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、架橋樹脂発泡体、及び架橋樹脂発泡体の第1表面に配置されたポリオレフィン系樹脂表皮層を含み、前記ポリオレフィン系樹脂表皮層は、示差走査熱量測定(DSC)により、10℃/minの昇温速度で40℃から200℃まで1回目昇温して融解させ、その後、10℃/minの降温速度で200℃から40℃まで降温することにより結晶化させた後、さらに10℃/minの昇温速度で40℃から200℃まで2回目昇温することで得られるDSC曲線の2回目昇温時のDSC曲線において、ピークの温度が110~135℃の範囲の第1ピークを有し、前記第1ピークの融解熱量が40.0J/g以下であり、前記ポリオレフィン系樹脂表皮層は、連続相の海領域と、前記連続相中に分散している分散相の島領域からなる海島構造を有し、前記海島構造における島領域の面積割合が50.0%以上である、積層体に関する。
【0007】
本発明は、また、前記積層体を含む車両内装材に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、表皮層の開裂性が高く、エアバック展開性及び成形性が良好である積層体、及びそれを含む車両内装材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例4の積層体における表皮層を透過電子顕微鏡で観察した画像である。
図2】比較例4の積層体における表皮層を透過電子顕微鏡で観察した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、所定のDSC特性を示し、島領域の面積割合が50.0%以上の海島構造を有するポリオレフィン系樹脂表皮層を用いることで、表皮層の開裂性が高くなり、架橋樹脂発泡体の一方の表面(第1表面)に該表皮層を配置した積層体のエアバック展開性が向上し、成形性も良好であることを見出した。
【0011】
本明細書において、数値範囲が「~」で示されている場合、該数値範囲は両端値(上限及び下限)を含む。例えば、「A~B」という数値範囲は、A及びBという両端値を含む範囲となる。また、本明細書において、数値範囲が複数記載されている場合、異なる数値範囲の上限及び下限を適宜組み合わせた数値範囲を含むものとする。
【0012】
(ポリオレフィン系樹脂表皮層)
ポリオレフィン系樹脂表皮層(以下において、単に「表皮層」とも記す。)は、ポリオレフィン系樹脂で構成され、連続相の海領域(以下、海相とも記す。)と、前記連続相中に分散している分散相の島領域(以下、島相とも記す。)からなる海島構造を有するものであればよい。海島構造を形成しやすい観点から、表皮層は、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂を含むことが好ましい。表皮層は、シート状でよい。
【0013】
ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体(ホモポリマー)でもよく、プロピレンと他のα―オレフィンとの共重合体でもよい。ポリプロピレン共重合体は、プロピレンを70~99.5質量%、他のα-オレフィンを0.5~30質量%含んでもよい。他のα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチルー1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等が挙げられる。ポリプロピレン共重合体は、ランダム共重合体でもよく、ブロック共重合体でもよい。ポリプロピレン系樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(以下、MFRとも記す。)は、特に限定されないが、例えば、表皮層用シートの加工性や表皮層用シートの加工時のポリプロピレン系樹脂の分散性の観点から、0.3~30.0g/10minであることが好ましく、0.5~20.0g/10minであることがより好ましく、0.5~10.0g/10minであることがさらに好ましい。本明細書において、ポリプロピレン系樹脂のMFRは、JIS K 6921-2に準じ、温度230℃、及び荷重2.16kg(21.18N)の条件下で測定することができる。
【0015】
ポリプロピレン系樹脂の融点は、特に限定されないが、例えば、真空成形加工などの2次加工時の溶融張力を保持しやすい観点から、140~170℃であることが好ましく、142~165℃であることがより好ましく、145~163℃であることがさらに好ましい。
【0016】
ポリエチレン系樹脂は、エチレンの単独重合体(ホモポリマー)でもよく、エチレンと他のモノマーとの共重合体でもよい。ポリエチレン共重合体は、エチレンを70.0~99.0質量%、及び他のモノマーを1.0~30.0質量%含んでもよい。他のモノマーとしては、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチルー1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等の炭素数4以上のα-オレフィンが挙げられる。ポリエチレン共重合体は、ランダム共重合体でもよく、ブロック共重合体でもよい。ポリエチレン系樹脂としては、より具体的には、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(以下、LLDPEとも記す。)、及びエチレン-ブテン共重合体等が挙げられる。ポリエチレン系樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
ポリエチレン系樹脂のMFRは、特に限定されないが、例えば、シート加工時の分散性の観点から、1.0~15.0g/10minであることが好ましく、1.0~10.0g/10minであることがより好ましく、1.0~8.0g/10minであることがさらに好ましい。本明細書において、ポリエチレン系樹脂のMFRは、JIS K 6922-2に準じ、温度190℃、及び荷重2.16kg(21.18N)の条件下で測定することができる。
【0018】
ポリエチレン系樹脂の融点は、特に限定されないが、例えば、真空成形時の抗張力を調整しやすい観点から、100~135℃であることが好ましく、110~130℃であることがより好ましく、115~125℃であることがさらに好ましい。
【0019】
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、ブレンドタイプ、重合タイプ(リアクターTPOとも称される。)、及び動的架橋タイプ(TPVとも称される。)のいずれでもよい。表皮層の開裂性を高める観点から、オレフィン系熱可塑性エラストマーは、動的架橋タイプを含むことが好ましい。動的架橋タイプは、部分架橋でもよく、完全架橋でもよい。
【0020】
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、具体的には、ポリプロピレン及びポリエチレン等のハードセグメントと、エチレン-プロピレン共重合体(EPM)及びエチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)等のソフトセグメント(ゴム成分とも称される。)を含むものであってもよい。EPM及びEPDM等のゴム成分は、無架橋でもよく、動的架橋されてもよい。動的架橋は、部分架橋でもよく、完全架橋でもよい。
【0021】
オレフィン系熱可塑性エラストマーのMFRは、特に限定されないが、例えば、表皮層用シート加工性や表皮層を破断しやすくする観点から、1.0~50.0g/10minであることが好ましく、2.0~40.0g/10minであることがより好ましく、3.0~35.0g/10minであることがさらに好ましい。本明細書において、オレフィン系熱可塑性エラストマーのMFRは、具体的には、ISO 1130に準じ、温度230℃、及び荷重98N又は49Nの条件下で測定することができる。
【0022】
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、特に限定されないが、例えば、真空成形時の絞転写性と成形性の観点から、示唆走査熱量測定において、10℃/minの昇温速度40℃から200℃まで1回目昇温して融解させ、その後、10℃/minの降温速度で200℃から40℃まで降温することにより結晶化させた後、さらに10℃/minの昇温速度で40℃から200℃まで2回目昇温することで得られるDSC曲線の2回目昇温時のDSC曲線において、二つのピークを有し、低温側のピークの温度(低温側融点とも記す。)が110~135℃であり、高温側のピークの温度(以下、高温側融点とも記す。)が140~170℃であることが好ましい。このようなオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、住友化学株式会社のエスポレックス(登録商標)TPEシリーズ、三菱ケミカル株式会社のトレックスプレーンTPVシリーズ等の市販品が挙げられる。
【0023】
オレフィン系熱可塑性エラストマーのショアA硬度は、特に限定されないが、例えば、表皮層を押し込んだ時の触感やクッション感の観点から、40~90であることが好ましく、50~80であることがより好ましく、55~70であることがさらに好ましい。本明細書において、ショアA硬度は、具体的には、実施例に記載のとおりに測定することができる。
【0024】
表皮層の海島構造において、島領域の面積割合が50.0%以上である。これにより、海相、及び海相と島相の界面が開裂しやすくなるため、表皮層の開裂性が向上すると推測される。また、表皮層の開裂性が向上することで、該表皮層を含む積層体のエアバック展開性も良好になる。また、海相の面積割合が50%未満になるため、表皮層を含む積層体の真空成形性等の成形性も良好になる。島領域の面積割合は、50.5%以上であることが好ましく、51.0%以上であることがより好ましい。また、例えば、真空成形性を更に良くする観点から、海島構造における島領域の面積割合は90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましい。表皮層のモルフォロジーは、透過電子顕微鏡で観察することができる。本明細書において、海島構造の確認及び島領域の面積割合の測定は、実施例に記載のとおりに行うことができる。
【0025】
表皮層は、示差走査熱量測定(DSC)により、10℃/minの昇温速度で40℃から200℃まで1回目昇温して融解させ、その後、10℃/minの降温速度で200℃から40℃まで降温することにより結晶化させた後、さらに10℃/minの昇温速度で40℃から200℃まで2回目昇温することで得られるDSC曲線の2回目昇温時のDSC曲線において、ピークの温度が110~135℃の範囲の第1ピークを有し、前記第1ピークの融解熱量(以下、単に第1融解熱量とも記す。)が40.0J/g以下である。これにより、表皮層の開裂性が向上する。その理由は、推定の域を超えないが、低温領域で樹脂が破壊しやすく、海島構造をより形成しやすくなるためである。また、表皮層の開裂性が向上することで、該表皮層を含む積層体のエアバック展開性も良好になる。また、表皮層の第1融解熱量が上述した範囲であると、真空成形時に表面温度が低下した場合でも表皮層の伸度や柔軟性が保たれるため、該表皮層を含む積層体の真空成形性等の成形性も良好になる。表皮層の第1融解熱量は、好ましくは39.5J/g以下であり、より好ましくは39.0J/g以下であり、さらに好ましくは38.5J/g以下である。表皮層の第1融解熱量の下限は特に限定されないが、例えば、真空成形時の絞転写性や耐熱性を向上させる観点から、7.5J/g以上であることが好ましく、8.0J/g以上であることがより好ましく、8.5J/g以上であることがさらに好ましい。表皮層の第1融解熱量は、具体的には、実施例に記載のとおりに測定する。
【0026】
表皮層は、DSCにより、10℃/minの昇温速度で40℃から200℃まで1回目昇温して融解させ、その後、10℃/minの降温速度で200℃から40℃まで降温することにより結晶化させた後、さらに10℃/minの昇温速度で40℃から200℃まで2回目昇温することで得られるDSC曲線の2回目昇温時のDSC曲線において、ピークの温度が140~170℃の範囲の第2ピークを有し、前記第2ピークの融解熱量が2.0~15.2J/gであることが好ましい。これにより、外観がより良好なシートが得られ、更に真空成形性も良くなる。
【0027】
表皮層がオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂を含む場合、ポリプロピレン系樹脂が連続相の海領域を構成し、オレフィン系熱可塑性エラストマー及びポリエチレンが分散相の島領域を構成する。表皮層のモルフォロジーが上述した条件を満たしやすい観点から、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂の合計質量を100質量部とした場合、オレフィン系熱可塑性エラストマーは55~90質量部、ポリプロピレン系樹脂は5~40質量部、及びポリエチレン系樹脂は5~40質量部であることが好ましく、オレフィン系熱可塑性エラストマーは60~85質量部、ポリプロピレン系樹脂は5~35質量部、及びポリエチレン系樹脂は5~35質量部であることがより好ましい。
【0028】
表皮層がオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂を含む場合、上述した2回目昇温時のDSC曲線において、第1ピークはポリエチレン系樹脂由来のものであり、第2ピークはポリプロピレン系樹脂由来のものである。表皮層の2回目昇温時のDSC曲線が上述した条件を満たしやすい観点から、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂の合計質量を100質量部とした場合、オレフィン系熱可塑性エラストマーは55~90質量部、ポリプロピレン系樹脂は5~40質量部、及びポリエチレン系樹脂は5~40質量部であることが好ましく、オレフィン系熱可塑性エラストマーは60~85質量部、ポリプロピレン系樹脂は5~35質量部、及びポリエチレン系樹脂は5~35質量部であることがより好ましい。
【0029】
表皮層は、特に限定されないが、本発明の効果を阻害しない範囲内において、必要に応じて、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、及び無機充填剤等の添加剤を含んでもよい。添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。添加剤は、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂の合計100質量部に対し、0.5質量部以下使用してもよく、0.5~10.0質量部使用してもよい。
【0030】
表皮層の引張強度は特に限定されないが、例えば、表皮層の開裂性をより高める観点から、-35℃引張強度は、表皮層(表皮層用シート)の流れ方向(機械方向とも称される、以下、MDとも記す。)及び表皮層(表皮層用シート)の流れ方向と垂直な横方向(以下、TDとも記す。)のいずれにおいても、18~40MPaであることが好ましく、20~35MPaであることがより好ましい。本明細書において、表皮層の-35℃引張強度は、具体的には、実施例に記載のとおりに測定することができる。
【0031】
表皮層の引張伸度は特に限定されないが、例えば、表皮層の開裂性をより高める観点から、-35℃引張伸度は、MD及びTDのいずれにおいても、150~400%であることが好ましく、200~350%であることがより好ましい。本明細書において、表皮層の-35℃引張伸度は、具体的には、実施例に記載のとおりに測定することができる。
【0032】
表皮層の引裂強度は特に限定されないが、例えば、表皮層の開裂性をより高める観点から、-35℃引裂強度は、MD及びTDのいずれにおいても、850~1850N/cmであることが好ましく、900~1800N/cmであることがより好ましい。本明細書において、表皮層の-35℃引裂強度は、具体的には、実施例に記載のとおりに測定することができる。
【0033】
表皮層の厚みは特に限定されないが、例えば、耐摩耗性及び開裂性を両立する観点から、0.4~1.3mmであることが好ましく、0.5~1.2mmであることがより好ましく、0.5~1.0mmであることがさらに好ましい。
【0034】
表皮層のショアA硬度は、特に限定されないが、例えば、耐摩耗性及び開裂性を両立する観点から、60~100であることが好ましく、70~95であることがより好ましく、80~90であることがさらに好ましい。本明細書において、表面層のショアA硬度は、具体的には、実施例に記載のとおりに測定することができる。
【0035】
表皮層の耐油性は、特に限定されないが、例えば、日焼け用サンオイルやグリスオイル等の付着による外観不良を抑制しやすい観点から、110~200%であることが好ましく、115~180%であることがより好ましく、120~160%であることがさらに好ましい。本明細書において、耐油性は、具体的には、実施例に記載のとおりに測定することができる。
【0036】
(架橋樹脂発泡体)
架橋樹脂発泡体は、特に限定されず、公知のものを適宜用いることができる。クッション性、耐熱性、及び表面平滑性の観点から、架橋オレフィン系樹脂発泡体を用いることが好ましい。架橋樹脂発泡体は、シート状でよい。
【0037】
架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、特に限定されず、ポリオレフィン系樹脂を従来公知の方法で架橋させた後に、発泡させたものでもよい。ポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されず、表皮層で説明したオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂等を適宜用いることができる。架橋構造を形成する方法は、特に限定されず、例えば、α線、β線、γ線及び電子線等の電離性放射線を照射する方法、紫外線を照射する方法、有機過酸化物及びシラン化合物等の架橋剤を用いる方法等が挙げられる。発泡方法は、特に限定されず、例えば、押出発泡、型内発泡、常圧発泡、化学反応発泡等が挙げられる。発泡剤としては、無機ガス、沸点が-50~120℃である炭化水素またはハロゲン化炭化水素、水、熱分解型発泡剤等を用いることができる。
【0038】
架橋樹脂発泡体は、特に限定されないが、例えば、成形性をより高める観点から、架橋度が30~65%であってもよく、35~55%でもよい。本明細書において、架橋樹脂発泡体の架橋度は、例えば、実施例に記載のとおりに測定することができる。
【0039】
架橋樹脂発泡体は、特に限定されないが、例えば、柔軟性やクッション感の観点から、発泡倍率が5~40倍であってもよい。架橋樹脂発泡体の発泡倍率は、具体的には、実施例に記載のとおりに測定することができる。
【0040】
架橋樹脂発泡体は、特に限定されないが、本発明の効果を阻害しない範囲において、必要に応じて、発泡助剤、軟化剤、滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、及び無機充填剤等の添加剤を含んでもよい。
【0041】
架橋樹脂発泡体の厚みは、特に限定されないが、例えば、弾力性の観点から、0.5~5.0mm以下でもよく、1.0~4.5mmでもよく、1.5~4.0mmでもよい。
【0042】
架橋樹脂発泡体のショアC硬度は、特に限定されないが、例えば、手で押し込んだ時の触感やクッション感の観点から、55~100であることが好ましく、60~90であることがより好ましく、65~80であることがさらに好ましい。本明細書において、ショアC硬度は、具体的には、実施例に記載のとおりに測定することができる。
【0043】
架橋樹脂発泡体の25%圧縮硬さは、特に限定されないが、例えば、弾力性に優れる観点から、230N以下であることが好ましく、200N以下であることがより好ましく、180N以下であることがさらに好ましい。また、手で押し込んだ時の底打ち感や衝撃吸収の観点から、架橋樹脂発泡体の25%圧縮硬さは、100N以上であることが好ましく、110N以上であることがより好ましく、120N以上であることがさらに好ましい。本明細書において、25%圧縮硬さは、具体的には、実施例に記載のとおりに測定することができる。
【0044】
(積層体)
積層体は、架橋樹脂発泡体及び架橋樹脂発泡体の一方の表面(第1表面)に配置されたポリオレフィン系樹脂表皮層を含む。積層体は、シート状でよく、後述するように車両内装材の形状に応じて所定の立体形状に成形してもよい。
【0045】
積層体において、特に限定されないが、例えば、エアバック展開性をより高める観点から、ポリオレフィン系樹脂表皮層と架橋樹脂発泡体の間の-35℃剥離強度は、28N/25mm以上であることが好ましく、30N/25mm以上であることがより好ましく、32N/25mm以上であることがさらに好ましい。また、表皮材と架橋樹脂発泡体との加熱による貼り合わせの観点から、ポリオレフィン系樹脂表皮層と架橋樹脂発泡体の間の-35℃剥離強度は、60N/25mm以下であることが好ましく、58N/25mm以下であることがより好ましく、55N/25mm以下であることがさらに好ましい。本明細書において、ポリオレフィン系樹脂表皮層と架橋樹脂発泡体の間の-35℃剥離強度は、実施例に記載のとおりに測定することができる。
【0046】
積層体のショアA硬度は、特に限定されないが、例えば、耐摩耗性の観点から、ポリオレフィン系樹脂表皮層を測定面とした場合、30~85であることが好ましく、35~80であることがより好ましく、40~80であることがさらに好ましい。
【0047】
積層体は、エアバック展開性に優れる観点から、JIS K 7211-2に準じた-35℃の高速打ち抜き試験(パンクチャー衝撃試験とも称される。)において、最大試験力が500Nより大きい場合は、破断エネルギーが1.0~2.0Jであることが好ましく、最大試験力が500N以下の場合、破断エネルギーが3.0J以下であることが好ましく、破断エネルギーが2.0J以下であることがより好ましく、最大試験力が100~400Nであることが特に好ましい。
【0048】
積層体の引張強度は特に限定されないが、例えば、エアバック展開性をより高める観点から、-35℃引張強度は、MD及びTDのいずれにおいても、3.0~6.5MPaであることが好ましく、3.5~6.0MPaであることがより好ましい。本明細書において、積層体の-35℃引張強度は、具体的には、実施例に記載のとおりに測定することができる。
【0049】
積層体の引張伸度は特に限定されないが、例えば、エアバック展開性をより高める観点から、-35℃引張伸度は、MD及びTDのいずれにおいても、30~120%であることが好ましく、40~90%であることがより好ましい。本明細書において、積層体の-35℃引張伸度は、具体的には、実施例に記載のとおりに測定することができる。
【0050】
積層体の引裂強度は特に限定されないが、例えば、エアバック展開性をより高める観点から、-35℃引裂強度は、MD及びTDのいずれにおいても、180~420N/cmであることが好ましく、190~400N/cmであることがより好ましい。本明細書において、積層体の-35℃引裂強度は、具体的には、実施例に記載のとおりに測定することができる。
【0051】
積層体は、ポリオレフィン系樹脂又はポリオレフィン系樹脂及び添加剤を含むポリオレフィン系樹脂組成物を用いて表皮層用シートを作製した後、得られた表皮層用シートを架橋樹脂発泡体の第1表面に配置して貼り合わせることで作製することができる。表皮層用シートの成形は、カレンダー成形でもよく、押出成形でもよい。例えば、ポリオレフィン系樹脂又はポリオレフィン系樹脂及び添加剤を含むポリオレフィン系樹脂組成物を185~210℃の範囲で溶融混練した後、二本ロールでカレンダー成形することで表皮層用シートを得てもよい。表皮層用シートと架橋樹脂発泡体の貼り合わせは、構成樹脂の融点以上に加熱することで直接貼り合わせてもよく、接着剤を介して貼り合わせてもよい。架橋樹脂発泡体が、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の場合、例えば、表皮層用シートと架橋樹脂発泡体を重ね合わせた後、熱プレス機を使用し、165~185℃の温度範囲で、表皮層用シートと架橋樹脂発泡体を重ね合わせた時の総厚みの80~95%になるように加圧して熱融着させることで、表皮層用シートと架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を貼り合わせてもよい。
【0052】
積層体は、本発明の効果を阻害しない範囲において、必要に応じて、ポリオレフィン系樹脂表皮層の架橋樹脂発泡体が配置されている側の反対側の表面に配置されている表面処理層を含んでもよい。表面処理層を構成する表面処理剤としては、特に限定されず、例えば、水系ポリウレタン分散液(水系ウレタン塗料とも称される。)、溶剤系ポリウレタン分散液(溶剤系ウレタン塗料とも称される。)等が挙げられ、シリコン、シリコンビーズ、ウレタンビーズ等を含んでもよい。前記表面処理層は、トップ層のみで構成されても良く、トップ層とプライマー層で構成されてもよい。トップ層は、例えばトップ用表面処理剤で構成することができる。プライマー層用表面処理剤としては、特に限定されず、例えば、水系産業材用接着剤や溶剤系産業材用接着剤等が挙げられ、プライマー層は、例えばポリウレタン、塩化ビニル、アクリル、酢酸ビニル等を含んでも良いプライマー用表面処理剤で構成してもよい。
【0053】
積層体は、特に限定されないが、例えば、車両内装基材の表皮材として用いることができ、自動車等の車両のインストルメントパネル、ドアトリム、トランクトリム、座席シート、ピラーカバー、天井材、リアトレイ、コンソールボックス、エアバッグカバー、アームレスト、ヘッドレスト、メーターカバー、クラッシュパッド等の車両内装基材の表皮材として好適に用いることができ、エアバックが収納された車両内装基材の表皮材として特に好適に用いることができる。
【0054】
車両内装材は、表皮材として積層体を含むことができる。積層体が車両内装基材の表皮材である場合、積層体を車両内装材の形状に合わせるよう成形することができる。車両内装基材の一方の表面に積層体を配置し、真空成型等により、所定の形状に成形することで、車両内装材を得ることができる。車両内装材としては、例えば、自動車等の車両のインストルメントパネル、ドアトリム、トランクトリム、座席シート、ピラーカバー、天井材、リアトレイ、コンソールボックス、エアバッグカバー、アームレスト、ヘッドレスト、メーターカバー、クラッシュパッド等基材が挙げられる。
【実施例0055】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0056】
実施例及び比較例にて用いた測定・評価方法は下記のとおりである。
【0057】
(DSC:示差走査熱量測定)
JIS K7122(1987)に準じ、島津製作所社製「示差走査熱量計DSC-60Plus」を用いて、サンプル8gを10℃/minの昇温速度で40℃から200℃まで昇温(1回目昇温)して融解させ、その後、10℃/minの降温速度で200℃から40℃まで降温することにより結晶化させた後、さらに10℃/minの昇温速度で40℃から200℃まで昇温(2回目昇温)することで得られるDSC曲線の2回目昇温で得られるDSC曲線における融解ピークと融解熱量を測定した。
【0058】
(厚さ)
JIS K 7130(1999)の測定方法に準じ、ミツトヨ社製「マイクロメーターCLM1-15QMX」を用いて5回測定した平均値を厚さとした。
【0059】
(ショアA硬度)
JIS K 7215に準じ、高分子計器社製「アスカーゴム硬度計A型」を用いて、押針接触後直ちに目盛を読み取った3回の平均値をショアA硬度とした。
【0060】
(ショアC硬度)
JIS K 7215に準じ、高分子計器社製「アスカーゴム硬度計C型」を用いて、半円形の押針接触後直ちに目盛を読み取った3回の平均値をショアC硬度とした。
【0061】
(モルフォロジーの状態評価)
JIS K 0132(1997)走査電子顕微鏡試験方法通則に準じ、表皮層用シートの表面にエポキシ樹脂を塗布し、-60℃に冷却し、ミクロトームにて面だし後、1%Ru04水溶液の蒸気中にて60℃で、90分間染色した。染色した表皮層用シートサンプルを-60℃に冷却し、ミクロトームにて面だし後、日立ハイテック社製「イオンスパッタ試料前処理装置E-1010」にてPt-Pdを約2mmコーティングし、モルフォロジーの状態観察用サンプルを作製した。日立ハイテック社製「透過電子顕微鏡H-7650」を用いて加速電圧100Kv、撮影倍率5000倍、観察方向TD方向(幅方向)で、3箇所を観察した。染色によって黒色化した部分がモルフォロジーの島相であり、島相は球形の形状でかつ周辺と色調が異なることで判断した。島相が判断できる場合は、海島構造と判断し、島相が判断できない場合は海島構造ではない、すなわち、相互連結状態と判断した。
【0062】
(モルフォロジーの領域割合評価)
モルフォルジーの状態観察で撮影した画像から任意の選択した約100μm2の画像をキーエンス社製「VHX7000」に取り込み、機器に内蔵される自動面積測定ソフトにて黒色部分をモルフォルジーの島相、白色部分を海相とし、面積変換し、島相及び海相の領域割合を測定し、それぞれ、島領域の割合及び海領域の割合を得た。
【0063】
(発泡倍率)
JIS K 6767に準じ、アルファーテック社製「電子比重計MDS-300」を使用して測定した架橋樹脂発泡体の密度から発泡倍率を算出した。
【0064】
(架橋度)
発泡体を厚さ方向に0.3~0.5mmサイズに切断し、約100mgを0.1mgの精度で秤量した。100メッシュのステンレス製金網に秤量されたサンプルを入れ、140℃に加温されたテトラリン溶液200mlに3時間浸漬させた後、金網内の不溶解分を120℃に保温された熱風オーブンで1時間乾燥した。次いでシリカゲルをいれたデシケーター内で30分間冷却し、不溶解分の質量を秤量し、次の式に従って架橋度を算出した。
架橋度(%)={不溶解分の質量(mg)/秤量した発泡体の質量(mg)]×100
【0065】
(25%圧縮硬さ)
JIS K 6767(ISO7214)に準じ、島津製作所社製「卓上試験機:EZ-LX」を用いて幅50mm、長さ50mm、厚さ25mm以上の架橋樹脂発泡体のサンプルを元の厚さから速度10mm/minで25%圧縮し20秒停止後の荷重を測定し、圧縮硬さ(=荷重/面積)を算出し、3回の平均値を25%圧縮硬さとした。
【0066】
(-35℃引張強度及び-35℃引張伸度)
JIS K 7128-3(1998)に準じ、ダンベル3号で打ち抜かれたサンプルを島津製作所社製「オートグラフ:AGS-X」を用いて-35℃で3分間保持後、速度200mm/分で引張試験を行い、測定した最大破断強度及び破断伸度の3回の平均値を、それぞれ、-35℃引張強度及び-35℃引張伸度とした。測定は、MD方向(機械方向、シートの流れ方向とも称される)及び、TD方向(シート流れ方向と垂直な横方向)で行った。
【0067】
(-35℃引裂強度)
JIS K 7128-3(1998)に準じ、引き裂きダンベルで打ち抜かれたサンプルを島津製作所社製「オートグラフ:AGS-X」を用いて-35℃で3分間保持後、速度200mm/分で引裂き試験を行い、測定した最大破断強度の3回の平均値を-35℃引裂強度とした。測定は、MD方向及びTD方向で行った。
【0068】
(耐油性)
サイズ50mm×50mmの表皮層用シートのサンプルを200mLの蓋付瓶に入れ、関東化学社製「流動パラフィン」を約50mL以上、サンプルが浸漬するまで投入し、80℃の環境下で24時間流動パラフィン中に浸漬させた後の重量変化率(%)を耐油性とした。
重量変化率(%)=浸漬後の表皮層用シートのサンプルの重量(g)ー浸漬前の表皮層用シートのサンプルの重量(g)/浸漬前の表皮層用シートのサンプルの重量(g)×100
【0069】
(表皮層と発泡体の間の-35℃剥離強度)
積層体のMD方向及びTD方向のそれぞれにおいて、150mm×25mmに切断した試験片を東亞合成社製の接着剤「アロンアルファ(登録商標)EXTRA(登録商標)速効多用途」を使用して保持版(厚さ3mmのポリプロピレン系樹脂製板)に貼り付け、接着剤硬化後に島津製作所社製「オートグラフ:AGS-X」を用いて-35℃で3min保持後、速度200mm/min、剥離角度180°、剥離距離80mm内で測定した時の平均剥離強度の値を求め、MD方向及びTD方向の平均剥離強度の平均値を表皮層と発泡体の間の-35℃剥離強度とした。
【0070】
(高速打ち抜き試験)
JIS K 7211-2に準じ、島津製作所社製「ハイドロショット:HITS-P10」を用いて、表皮層側がストライカーに面するように積層体を配置し、-35℃で3分間保持後、ストライカー径:1/2インチ、速度:5m/s、保持治具Φ40mmの条件にて測定した3回の衝撃力の平均値を最大試験力(N)、及び、破断時のトータルエネルギーを破断エネルギー(J)とした。
【0071】
(高速打ち抜き試験時の表皮層シートの切れ方)
高速打ち抜き試験で打ち抜かれたサンプルにおける表皮層シートの切れ方を下記の基準で判定を行った。
A:打ち抜き形状がかなり良好
ストライカーで打ち抜かれた表皮材を垂直方向にノギスで挟み込み、打ち抜かれ時に発生した表皮材の破片の長さを測定し、その長さが1.0mm以上2.0mm以下で且つ、打ち抜かれ形状が綺麗な円形である状態
B:打ち抜き形状が良好
ストライカーで打ち抜かれた表皮材を垂直方向にノギスで挟み込み、打ち抜かれ時に発生した表皮材の破片の長さを測定し、その長さが2.0mm超え5.0mm以下で且つ、打ち抜かれ形状が円形もしくは楕円形である状態
C:打ち抜き形状が不良
ストライカーで打ち抜かれた表皮材を垂直方向にノギスで挟み込み、打ち抜かれ時に発生した表皮材の破片の長さを測定し、その長さが5.0mm超え10.0mm以下で且つ、打ち抜かれ形状が円形もしくは楕円形である状態
D:打ち抜き形状がかなり不良
ストライカーで打ち抜かれた表皮材を垂直方向にノギスで挟み込み、打ち抜かれ時に発生した表皮材の破片の長さを測定し、その長さが10.0mm超え且つ、打ち抜かれ形状が円形もしくは楕円形である状態
【0072】
(高速打ち抜き試験時の積層体のサンプルの切れ方)
高速打ち抜き試験で打ち抜かれたサンプルの状態を下記の基準で判定を行った。判定が3以上の場合、切れ方が良好と判断した。
5:表皮層側が円形状に2/3以上、もしくは、全周破断し、ひび割れが無い状態
4:表皮層側が円形状に2/3以上、もしくは、全周破断し、ひび割れが確認出来る状態
3:表皮層側が円形状に1/2以上2/3未満破断し、ひび割れが無い状態
2:表皮層側が円形状に1/2以上2/3未満破断し、ひび割れが確認できる状態
1:表皮層側が円形状に1/2未満破断している。もしくは円形状に破断していない状態
【0073】
(エアバック展開性)
高速打ち抜き試験で測定された試験力と破断エネルギーに基づいて下記の基準で判定を行った。判定が4以上の場合、エアバック展開性が良好と判断した。
5:最大試験力が100~400N、且つ、破断エネルギーが1.0~2.0J
4:最大試験力が100~400N、且つ、破断エネルギーが2.0Jより大きく3.0J以下;もしくは、
最大試験力が400Nより大きく500N以下、且つ、破断エネルギーが1.0~2.0J
3:最大試験力が100~400N、且つ、破断エネルギーが3.0Jより大きい;
最大試験力が400Nより大きく500N以下、且つ、破断エネルギーが2.0Jより大きく3.0J以下;もしくは、
最大試験力が500Nより大きく、且つ、破断エネルギーが1.0~2.0J
2:最大試験力が400Nより大きく500N以下、且つ、破断エネルギーが3.1J以上;もしくは、
最大試験力が500Nより大きく、且つ、破断エネルギーが2.0Jより大きく3.0J以下
1:最大試験力が500Nより大きく、且つ、破断エネルギーが3.1Jより大きい
【0074】
(成形性)
テスト用真空成型機を用いて、積層シートの両面を180℃~230℃になるように加熱し、縦150mm、横100mm、深さ50mmの絞付きの箱型でメス引き真空成型をし、展開率が220%の部分を下記の基準で判定を行った。判定が3以上の場合、成形性良好と判断した。
5:外観及び箱形状、並びに絞形状がいずれもかなり良好である。
4:外観及び箱形状、並びに絞形状がいずれも良好であるうえ、外観及び箱形状か、絞形状のどちらかがかなり良好である。
3:外観及び箱形状、並びに絞形状がいずれも良好である。
2:外観及び箱形状か絞形状のどちらかに不良がある。
1:破れによる外観及び形状不良が発生する。
【0075】
実施例及び比較例で用いたポリオレフィン系樹脂を下記表1及び表2に示した。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
(実施例1)
<表皮層用シートの作製>
下記表3に示す配合割合のポリオレフィン系樹脂をテストロール(二本ロール)を用いて185℃~195℃の温度範囲で5~8分溶融混錬し、厚さが約0.5mmの均一な表皮層用シートを作製し、サイズ360mm×360mmにカットした。
<積層体の作製>
サイズ350mm×350mmにカットされた架橋樹脂発泡体(架橋オレフィン系樹脂発泡体、東レ株式会社社製、品名「AH1F―15025」)の一方の表面に前記表皮層用シートの作製で作成した表皮層用シートを重ね合わせ160℃~175℃の温度で熱プレス機を使用し、表皮層と架橋発泡体層を重ね合わせた時の総厚みの90%のクリアランスで熱融着し、積層体を作成した。
【0079】
(実施例2)
架橋樹脂発泡体として、架橋オレフィン系樹脂発泡体(東レ株式会社社製、品名「AHSF―15025」)を用いた以外は、実施例1と同様の工程にて、表皮層用シート及び積層体を作製した。
【0080】
(実施例3~8)
ポリオレフィン系樹脂の配合及び表皮層用シートの厚みを下記表3又は表4に示すとおりにした以外は、実施例1と同様の工程にて、表皮層用シート及び積層体を作製した。
【0081】
(実施例9)
ポリオレフィン系樹脂の配合及び表皮層用シートの厚みを下記表4に示すとおりにし、架橋樹脂発泡体として、架橋オレフィン系樹脂発泡体(積水化学工業株式会社社製、品名「NVF-15040」)を用いた以外は、実施例1と同様の工程にて、表皮層用シート及び積層体を作製した。
【0082】
(実施例10~14)
ポリオレフィン系樹脂の配合及び表皮層用シートの厚みを下記表4に示すとおりにした以外は、実施例1と同様の工程にて、表皮層用シート及び積層体を作製した。
【0083】
(比較例1、3~5、7~13)
ポリオレフィン系樹脂の配合及び表皮層用シートの厚みを下記表5に示すとおりにした以外は、実施例1と同様の工程にて、表皮層用シート及び積層体を作製した。
【0084】
(比較例2、6)
ポリオレフィン系樹脂の配合及び表皮層用シートの厚みを下記表5又は表6に示すとおりにし、架橋樹脂発泡体として、架橋オレフィン系樹脂発泡体(東レ株式会社社製、品名「AHSF-15025)を用いた以外は、実施例1と同様の工程にて、表皮層用シート及び積層体を作製した。
【0085】
実施例及び比較例において、表皮層用シートの示差走査熱量測定、厚さ及びショアA強度の測定、モルフォルジーの状態観察及び領域観察、-35℃引張強度、-35℃引張伸度及び-35℃引裂強度の測定、並びに耐油性評価を上述したとおりに行った。結果を下記表3~6に示した。なお、積層体をスライス加工することで表皮層を分離し、分離した表皮層を測定サンプルとしてもよい。なお、表3~6において、第1融解熱量及び第2融解熱量における「-」という表記は、融解熱量であることを意味する。
【0086】
実施例及び比較例において、積層体における表皮層と発泡体の間の剥離強度、積層体の-35℃引張強度、-35℃引張伸度及び-35℃引裂強度の測定、-35℃高速打ち抜き試験最大試験力及び-35℃高速打ち抜き試験破断エネルギーを測定した。結果を下記表7~10に示した。なお、架橋樹脂発泡体の発泡倍率、厚さ、ショアC硬度及び25%圧縮硬さを上述したとおりに測定し、その結果を表7~10に示した。
【0087】
【表3】
【0088】
【表4】
【0089】
【表5】
【0090】
【表6】
【0091】
【表7】
【0092】
【表8】
【0093】
【表9】
【0094】
【表10】
【0095】
実施例4及び比較例4の積層体における表皮層を透過電子顕微鏡で観察した画像をそれぞれ図1及び図2に示した。図1から、実施例4において、表皮層は海島構造を有することが分かる。図2から、比較例4において、表皮層は海島構造を有さず、成分が相互連結状態になっていることが分かる。
【0096】
上記表3、4、7及び8から分かるように、実施例において、表皮層の切れ方が良好であり、開裂性が高い上、積層体のエアバック展開性及び成形性も良好であった。
【0097】
一方、表5、6、9及び10から分かるように、海島構造を有しない比較例3、5~7及び11、海島構造における島領域の面積割合が50.0%未満である比較例1、2、4、9,10、12及び13、或いは、第1ピークの融解熱量が40.0J/gを超える比較例8、9及び11において、表皮層の切れ方が悪く、開裂性が劣っていた。また、比較例1~7、9~13は、積層体のエアバック展開性が劣っていた。また、比較例3、6、8、10及び11は、積層体の成形性が劣っていた。
図1
図2