IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 川崎重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-液化水素設備及びその運用方法 図1
  • 特開-液化水素設備及びその運用方法 図2
  • 特開-液化水素設備及びその運用方法 図3
  • 特開-液化水素設備及びその運用方法 図4
  • 特開-液化水素設備及びその運用方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094963
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】液化水素設備及びその運用方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 5/04 20060101AFI20240703BHJP
   F17C 13/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
F17C5/04
F17C13/00 302D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211902
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】合志 義亜
(72)【発明者】
【氏名】内藤 悠馬
(72)【発明者】
【氏名】松田 吉洋
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB01
3E172BA06
3E172BD02
3E172BD05
3E172DA90
3E172EA03
3E172EB03
3E172HA04
3E172JA08
3E172KA03
(57)【要約】
【課題】液化機の入口圧力を安定させる。
【解決手段】液化水素設備1は、原料供給源2と液化機3とを接続する原料供給ライン11と、液化水素を貯蔵する貯蔵タンク4と、貯蔵タンク4とキャリア(100)とを接続する荷役ライン13と、荷役時にキャリア(100)から返送される返送ガスと貯蔵タンク4からのボイルオフガスとをそれぞれ液化機3に導く還流ライン14と、原料供給ライン11に設けられた第1バルブ21と、還流ライン14に設けられた第2バルブ22とを備える。荷役時は、液化機3から貯蔵タンク4に液化水素を供給しつつ、液化機3の入口圧力の変動が抑制される方向に第2バルブ22の開度を制御し、通常時は、液化機3から貯蔵タンク4に液化水素を供給しつつ、液化機3の入口圧力の変動が抑制される方向に第1バルブ21の開度を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化水素を生成してキャリアに移す液化水素設備であって、
水素ガスを液化して液化水素を生成する液化機と、
原料供給源からの原料水素ガスを前記液化機に導く原料供給ラインと、
前記液化機で生成された液化水素を貯蔵する貯蔵タンクと、

前記貯蔵タンクから前記キャリアに液化水素を移す荷役に伴い前記キャリアから返送される水素ガスである返送ガスと、前記貯蔵タンク内の液化水素の蒸発により生じるボイルオフガスとを、それぞれ前記液化機に導く還流ラインと、
前記原料供給ラインに設けられた第1バルブと、
前記還流ラインに設けられた第2バルブと、
前記第1バルブ及び前記第2バルブを制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、
前記荷役時に、前記液化機の入口圧力の変動が抑制される方向に前記第2バルブの開度を制御し、
前記荷役が行われない通常時に、前記液化機の入口圧力の変動が抑制される方向に前記第1バルブの開度を制御する、液化水素設備。
【請求項2】
請求項1に記載の液化水素設備において、
前記液化機の入口圧力を検出する圧力センサをさらに備え、
前記コントローラは、
前記荷役時に、前記第1バルブの開度を固定しつつ、前記圧力センサにより検出された前記入口圧力に基づいて前記第2バルブの開度を制御し、
前記通常時に、前記第2バルブの開度を固定しつつ、前記圧力センサにより検出された前記入口圧力に基づいて前記第1バルブの開度を制御する、液化水素設備。
【請求項3】
請求項2に記載の液化水素設備において、
前記原料供給ラインは、前記第1バルブと前記液化機との間にバッファタンクを有し、
前記還流ラインは、その下流端が前記バッファタンクに接続されている、液化水素設備。
【請求項4】
請求項3に記載の液化水素設備において、
前記圧力センサは、前記液化機の入口圧力として前記バッファタンクの内部圧力を検出する、液化水素設備。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の液化水素設備において、
前記還流ラインは、前記原料供給ラインに接続された下流ラインと、前記キャリアからの返送ガスを前記下流ラインに導く返送ラインと、前記貯蔵タンクからのボイルオフガスを前記下流ラインに導くBOGラインとを含む、液化水素設備。
【請求項6】
水素ガスを液化して液化水素を生成する液化機と、原料供給源からの原料水素ガスを前記液化機に導く原料供給ラインと、前記液化機で生成された液化水素を貯蔵する貯蔵タンクと、前記貯蔵タンクからキャリアに液化水素を移す荷役に伴い前記キャリアから返送される水素ガスである返送ガスと、前記貯蔵タンク内の液化水素の蒸発により生じるボイルオフガスとを、それぞれ前記液化機に導く還流ラインと、前記原料供給ラインに設けられた第1バルブと、前記還流ラインに設けられた第2バルブと、を備えた液化水素設備を運用する方法であって、
前記液化水素設備が、前記荷役を行う荷役フェーズと、前記荷役を行わない通常フェーズとのいずれにあるかを判定すること、
前記液化水素設備が前記荷役フェーズにあると判定された場合に、前記液化機の入口圧力の変動が抑制される方向に前記第2バルブの開度を制御すること、及び、
前記液化水素設備が前記通常フェーズにあると判定された場合に、前記液化機の入口圧力の変動が抑制される方向に前記第1バルブの開度を制御することを含む、液化水素設備の運用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液化水素を扱う液化水素設備及びその運用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素ガスの液化、並びに液化水素の貯蔵及び荷役を行う液化水素設備が知られている。例えば、下記特許文献1には、原料水素供給源から供給された原料水素ガスを液化する液化機(液化水素製造装置)と、液化機で液化された液化水素を貯蔵する貯蔵タンクと、貯蔵タンクから液化水素輸送船への液化水素の荷役時に発生するボイルオフガスを液化機に戻す還流ライン(ボイルオフガス導入通路)とを備えた液化水素設備が開示されている。還流ラインを通じて液化機に戻されたボイルオフガスは、液化機で再液化されて利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-242021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液化水素は、液化天然ガス(LNG)などと比べて沸点が非常に低いため、液化水素輸送船のようなキャリアへの荷役時に、入熱により比較的多くのボイルオフガスが発生する。このため、この荷役時のボイルオフガスの流量、つまり液化機に還流されて再液化されるボイルオフガスの流量は、上述した原料供給源から供給される原料水素ガスの流量よりもかなり大きくなる傾向にある。このことは、荷役時と荷役時以外(通常時)とで、液化機に導入される水素ガスの流量が大きく変動すること、換言すれば液化機の入口圧力が大きく変動し得ることを意味する。液化機の運転上、その入口圧力は一定に保つことが望ましく、入口圧力が大きく変動することは望ましくない。すなわち、液化機の入口圧力が大きく変動することは、液化機の故障等の不具合を招く要因となり得る。
【0005】
本開示は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、液化機の入口圧力を安定させることが可能な液化水素設備及びその運用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するためのものとして、本開示の一局面に係る設備は、液化水素を生成してキャリアに移す液化水素設備であって、水素ガスを液化して液化水素を生成する液化機と、原料供給源からの原料水素ガスを前記液化機に導く原料供給ラインと、前記液化機で生成された液化水素を貯蔵する貯蔵タンクと、前記貯蔵タンクから前記キャリアに液化水素を移す荷役に伴い前記キャリアから返送される水素ガスである返送ガスと、前記貯蔵タンク内の液化水素の蒸発により生じるボイルオフガスとを、それぞれ前記液化機に導く還流ラインと、前記原料供給ラインに設けられた第1バルブと、前記還流ラインに設けられた第2バルブと、前記第1バルブ及び前記第2バルブを制御するコントローラとを備え、前記コントローラは、前記荷役時に、前記液化機の入口圧力の変動が抑制される方向に前記第2バルブの開度を制御し、前記荷役が行われない通常時に、前記液化機の入口圧力の変動が抑制される方向に前記第1バルブの開度を制御するものである。
【0007】
また、本開示の他の局面に係る方法は、上述した液化機、原料供給ライン、貯蔵タンク、還流ライン、第1バルブ、及び第2バルブを備えた液化水素設備を運用する方法であって、前記液化水素設備が、前記荷役を行う荷役フェーズと、前記荷役を行わない通常フェーズとのいずれにあるかを判定すること、前記液化水素設備が前記荷役フェーズにあると判定された場合に、前記液化機の入口圧力の変動が抑制される方向に前記第2バルブの開度を制御すること、及び、前記液化水素設備が前記通常フェーズにあると判定された場合に、前記液化機の入口圧力の変動が抑制される方向に前記第1バルブの開度を制御すること、を含むものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示の液化水素設備及びその運用方法によれば、液化機の入口圧力を安定させることができ、もって液化機による水素ガスの液化性能を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態に係る液化水素設備の全体構成を示すシステム図である。
図2】前記液化水素設備の制御系統を示す機能ブロック図である。
図3】前記液化水素設備の運用中にコントローラが行う制御の詳細を示すフローチャートである。
図4】通常時に行われるバルブ制御の内容を説明する説明図である。
図5】荷役時に行われるバルブ制御の内容を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[液化水素設備の構成]
図1は、本開示の一実施形態に係る液化水素設備1の全体構成を示すシステム図である。本図に示される液化水素設備1は、水素ガスを液化して得た液化水素を貯蔵し、貯蔵した液化水素を運搬船100(キャリア)に荷役するための設備である。具体的に、液化水素設備1は、液化される前の原料水素ガスを供給する原料供給源2と、原料供給源2から供給された原料水素ガスを液化する液化機3と、液化機3で生成された液化水素を貯蔵する貯蔵タンク4と、貯蔵タンク4から運搬船100に液化水素を払い出す液化水素ポンプ5と、運搬船100からの返送ガスやボイルオフガスを含む還流水素ガスを液化機3に再導入する圧縮機6とを備える。
【0011】
上述した各要素は、複数の通路を介して互いに接続されている。すなわち、液化水素設備1は、原料供給源2と液化機3とを接続する原料供給ライン11と、液化機3と貯蔵タンク4とを接続する液化水素供給ライン12と、貯蔵タンク4と運搬船100とを接続する荷役ライン13と、運搬船100と原料供給ライン11とを接続する還流ライン14とを備える。
【0012】
原料供給源2は、水素ガスを生成して当該水素ガスを液化水素の原料として液化機3に供給する装置である。原料供給源2から液化機3へは、例えば数MPa程度まで高圧化された原料水素ガスが供給される。原料供給源2は、水素ガスを生成できるものであればその種類を問わないが、例えば、メタン等の炭化水素から水蒸気改質により水素ガスを生成する装置を原料供給源2として用いることができる。あるいは、水の電気分解によって水素ガスを生成する装置を原料供給源2として用いてもよい。
【0013】
原料供給源2から供給された高圧の原料水素ガスは、原料供給ライン11を通じて液化機3に導入される。液化機3は、導入された原料水素ガスを冷却しつつ膨張させて液化し、液化水素を生成する。液化機3は、水素ガスを冷却して液化できるものであればその種類を問わないが、例えば、冷凍サイクルを用いた熱交換により水素ガスを液化直前の状態まで冷却する冷却器と、当該冷却器により冷却された水素ガスをジュールトムソン膨張(等エンタルピー膨張)させて液化するジュールトムソン弁と、を含んだものとすることができる。
【0014】
原料供給ライン11の途中には、容積が拡大したバッファタンク19が設けられている。バッファタンク19には、還流ライン14の下流端が接続されている。バッファタンク19では、原料供給源2から供給された原料水素ガスと、還流ライン14を通じて導入された還流水素ガスとが合流する。合流後の水素ガスは、バッファタンク19から液化機3に導入されて液化される。言い換えると、液化機3は、原料供給源2からの原料水素ガスを液化するとともに、還流ライン14からの還流水素ガスを再液化するものである。
【0015】
液化機3で生成された液化水素は、液化水素供給ライン12を通じて貯蔵タンク4に導入される。貯蔵タンク4は、導入された液化水素を保冷しつつ貯蔵する。貯蔵タンク4は、例えば、液化水素を収容する内槽と、内槽の外側に配置されかつ当該内槽との間に真空断熱層を形成する外槽とを含む多重殻タンクとすることができる。
【0016】
貯蔵タンク4に貯蔵された液化水素は、運搬船100に液化水素を移す荷役時に、液化水素ポンプ5によって貯蔵タンク4から払い出される。液化水素ポンプ5は、貯蔵タンク4から液化水素を吸い込んで下流側に吐出する。液化水素ポンプ5から吐出された液化水素は、荷役ライン13を通じて運搬船100へと送り込まれる。
【0017】
荷役ライン13は、荷積み機111を介して運搬船100の受入部102に接続されている。荷積み機111は、運搬船100が着岸する港湾に設置されており、荷役ライン13から送られてきた液化水素を運搬船100に荷積みする。荷積み機111は、多関節構造のローディングアーム111aを含む。ローディングアーム111aは、接続部C1を介して運搬船100と接続されている。
【0018】
運搬船100は、液化水素が貯留される貯槽101を有する。荷役ライン13から送られてきた液化水素は、荷積み機111を介して貯槽101に供給され、貯槽101において保冷されつつ貯留される。液化水素が運搬船100に荷役される前において、貯槽101には水素ガスが充填されている。荷役により貯槽101に液化水素が供給されると、供給された液化水素に押し出されるようにして水素ガスが貯槽101から排出される。また、液化水素が入熱により蒸発することで生じるボイルオフガスも、貯槽101から排出される。これらの水素ガス、つまり荷役前に貯槽101に存在していた水素ガスと荷役中の蒸発により生じたボイルオフガスとの混合ガスは、返送ガスとして運搬船100の排出部103から下流側へと排出される。
【0019】
運搬船100の排出部103は、荷下し機112を介して還流ライン14に接続されている。荷下し機112は、前記港湾における荷積み機111の近傍に設置されており、運搬船100から排出された返送ガスを還流ライン14に送出する。荷下し機112は、多関節構造のローディングアーム112aを含む。ローディングアーム112aは、接続部C2を介して運搬船100と接続されている。
【0020】
還流ライン14は、返送ライン15と、BOGライン16と、分岐ライン17と、下流ライン18とを含む。返送ライン15は、荷下し機112の接続部C2から圧縮機6に向かって延びる通路である。BOGライン16は、貯蔵タンク4から返送ライン15に向かって延びる通路である。返送ライン15とBOGライン16とは、圧縮機6の上流側の合流点P1において合流している。下流ライン18は、合流点P1と原料供給ライン11のバッファタンク19とを接続する共用の通路である。分岐ライン17は、荷役ライン13における液化水素ポンプ5よりも下流側の部位から分岐する通路である。分岐ライン17の下流端は、BOGライン16の途中に接続されている。
【0021】
還流ライン14は、各部で発生するボイルオフガス等を含む水素ガスを液化機3に再導入する用途に供される。すなわち、貯蔵タンク4の内部には、液化水素が入熱により蒸発することで生じるボイルオフガス(BOG)が存在している。このボイルオフガスは、BOGライン16を通じて合流点P1に導入される。一方、液化水素の荷役時には、液化水素が荷役ライン13を流れる過程でやはりボイルオフガスが発生する。このボイルオフガスは、分岐ライン17を通じて合流点P1に導入される。また、液化水素の荷役時に運搬船100から返送される返送ガスは、返送ライン15を通じて合流点P1に導入される。合流点P1に到達した各ガス(還流水素ガス)は、下流ライン18を通じてバッファタンク19へと還流される。
【0022】
ここで、液化水素の荷役が行われない通常時は、貯蔵タンク4から運搬船100への液化水素の払い出しが行われないから、荷役ライン13でボイルオフガスが発生することもなければ、運搬船100から返送ガスが戻ってくることもない。このため、通常時は、貯蔵タンク4からBOGライン16を通じて戻ってくるボイルオフガスのみが、還流水素ガスとしてバッファタンク19に導入される。一方、液化水素の荷役時は、貯蔵タンク4からのボイルオフガスに加えて、荷役ライン13から分岐ライン17を通じて戻ってくるボイルオフガスと、運搬船100から返送ライン15を通じて戻ってくる返送ガスとが、いずれもバッファタンク19に導入される。言い換えると、荷役時にバッファタンク19に導入される還流水素ガスは、貯蔵タンク4及び荷役ライン13からの各ボイルオフガスと、運搬船100からの返送ガスとの両方を含む。
【0023】
圧縮機6は、水素ガスを圧送する装置であり、下流ライン18の途中に設けられている。圧縮機6は、下流ライン18を流れる還流水素ガスを下流側に押し出し、バッファタンク19へと送り込む。
【0024】
バッファタンク19には、圧力センサ20が設けられている。圧力センサ20は、バッファタンク19の内部圧力を検出するセンサである。ここで、バッファタンク19の内部圧力は、液化機3に導入される直前の水素ガスの圧力であり、液化機3の入口圧力と等価である。言い換えると、圧力センサ20は、液化機3の入口圧力を検出するセンサである。
【0025】
原料供給ライン11におけるバッファタンク19よりも上流側の部位には、第1バルブ21が設けられている。第1バルブ21は、バルブ本体と当該バルブ本体を開閉駆動するアクチュエータとを含む自動式のバルブである。原料供給源2からバッファタンク19に導入される原料水素ガスの圧力は、第1バルブ21の開度制御によって調整可能である。
【0026】
還流ライン14におけるバッファタンク19の近傍部、つまり圧縮機6とバッファタンク19との間に位置する下流ライン18の途中には、第2バルブ22が設けられている。第2バルブ22は、上述した第1バルブ21と同様の自動式のバルブである。還流ライン14を通じてバッファタンク19に導入される還流水素ガスの圧力は、第2バルブ22の開度制御によって調整可能である。
【0027】
[液化水素設備の運用]
次に、上述した液化水素設備1の運用例について説明する。図2は、液化水素設備1の制御系統を示す機能ブロック図である。本図に示すように、液化水素設備1は、その運用中の動作を統括的に制御するコントローラ30と、オペレータからの操作を受け付ける入力部31とをさらに備える。コントローラ30は、例えば、演算を行うプロセッサ(CPU)と、ROM及びRAM等のメモリーと、各種の入出力バスと、を含むマイクロコンピュータを要部とする制御装置である。入力部31は、液化水素設備1の運用に関する各種指示等を入力するためにオペレータが操作するインターフェースである。
【0028】
コントローラ30には、入力部31から操作信号が入力されるとともに、上述した圧力センサ20から圧力の検出信号が入力される。コントローラ30は、入力されたこれらの情報に基づいて、液化水素設備1における各種の制御対象を制御する。すなわち、コントローラ30は、入力部31に対するオペレータの操作状況と、圧力センサ20により検出されるバッファタンク19の内部圧力とに基づいて、液化機3、液化水素ポンプ5、圧縮機6、第1バルブ21、及び第2バルブ22をそれぞれ制御する。
【0029】
図3は、液化水素設備1の運用中にコントローラ30が行う制御の詳細を示すフローチャートである。液化水素設備1を起動する信号を受けて本図に示す制御がスタートすると、コントローラ30は、液化機3及び圧縮機6を駆動する(ステップS1,S2)。これにより、液化機3による水素ガスの液化が行われ、生成された液化水素が貯蔵タンク4に送られる。また、圧縮機6による還流水素ガスの圧送が行われ、バッファタンク19に還流水素ガスが還流される。
【0030】
次いで、コントローラ30は、入力部31からの入力情報に基づいて、液化水素設備1が荷役フェーズにあるか否かを判定する(ステップS3)。例えば、オペレータは、運搬船100が港湾に着岸して液化水素の受け入れ準備が整ったときに、入力部31を操作して、貯蔵タンク4から運搬船100に液化水素を荷役する指示を出す。当該ステップS3において、コントローラ30は、このような入力部31を通じたオペレータからの指示の有無に基づいて、液化水素設備1が荷役フェーズにあるか否かを判定する。
【0031】
前記ステップS3でNOと判定された場合、つまり液化水素設備1が荷役フェーズではなく通常フェーズにあることが確認された場合、コントローラ30は、圧力センサ20からバッファタンク19の内部圧力の検出値を取得する(ステップS4)。
【0032】
次いで、コントローラ30は、図4に示すように、前記ステップS4で取得されたセンサ圧力に基づいて第1バルブ21の開度を制御するとともに、第2バルブ22の開度を一定値に固定する(ステップS5)。
【0033】
具体的に、前記ステップS5において、コントローラ30は、圧力センサ20により検出されたバッファタンク19の内部圧力から、予め定められた目標圧力を差し引いて、得られた値を圧力偏差として特定する。そして、特定した圧力偏差に基づいて、第1バルブ21の開度をフィードバック制御する。例えば、前記圧力偏差がプラスである場合、第1バルブ21は、当該圧力偏差がプラス側に拡大するほど、つまりバッファタンク19の内部圧力が前記目標圧力を大きく上回るほど、開度が小さくなるように制御される。逆に、前記圧力偏差がマイナスである場合、第1バルブ21は、当該圧力偏差がマイナス側に拡大するほど、つまりバッファタンク19の内部圧力が前記目標圧力を大きく下回るほど、開度が大きくなるように制御される。
【0034】
上述した第1バルブ21の開度制御は、原料供給源2からバッファタンク19に導入される原料水素ガスの圧力を前記圧力偏差に基づき調整し、バッファタンク19の内部圧力(換言すれば液化機3の入口圧力)を前記目標圧力付近で安定させる作用をもたらす。言い換えると、液化水素の荷役が行われない通常時、第1バルブ21の開度は、液化機3の入口圧力の変動が抑制される方向に制御される。
【0035】
一方、第2バルブ22については、前記圧力偏差に基づく開度制御は行われない。第2バルブ22の開度は、全閉以外の所定開度に固定される。このことは、還流ライン14を通過する還流水素ガス(ここでは貯蔵タンク4からのボイルオフガス)が圧力調整を経ずにバッファタンク19に導入されることを意味する。このため、条件によっては還流水素ガスの圧力が変動し得るが、この変動は、上述した第1バルブ21による原料水素ガスの圧力調整によって相殺される。その結果、バッファタンク19の内部圧力が前記目標圧力付近に維持されて、液化機3の入口圧力の変動が抑制される。
【0036】
次いで、コントローラ30は、入力部31からの入力情報に基づいて、液化水素設備1を停止させる操作が行われたか否かを判定する(ステップS6)。
【0037】
前記ステップS6でNOと判定されて設備停止の操作が行われていないことが確認された場合、コントローラ30は、上述したステップS3以降の処理を繰り返す。
【0038】
一方、前記ステップS6でYESと判定されて設備停止の操作が行われたことが確認された場合、コントローラ30は、液化機3及び圧縮機6を停止する(ステップS7,S8)。
【0039】
次に、前記ステップS3でYESと判定された場合、つまり液化水素設備1が荷役フェーズにある場合の制御について説明する。この場合、コントローラ30は、液化水素ポンプ5を駆動する(ステップS10)。これにより、貯蔵タンク4から運搬船100への液化水素の払い出しが行われ、運搬船100の貯槽101に液化水素が荷役される。
【0040】
次いで、コントローラ30は、圧力センサ20からバッファタンク19の内部圧力の検出値を取得する(ステップS11)。
【0041】
次いで、コントローラ30は、図5に示すように、第1バルブ21の開度を一定値に固定するとともに、前記ステップS11で取得されたセンサ圧力に基づいて第2バルブ22の開度を制御する(ステップS12)。
【0042】
具体的に、前記ステップS12において、コントローラ30は、圧力センサ20により検出されたバッファタンク19の内部圧力から、予め定められた目標圧力を差し引いて、得られた値を圧力偏差として特定する。そして、特定した圧力偏差に基づいて、第2バルブ22の開度をフィードバック制御する。例えば、前記圧力偏差がプラスである場合、第2バルブ22は、当該圧力偏差がプラス側に拡大するほど、つまりバッファタンク19の内部圧力が前記目標圧力を大きく上回るほど、開度が小さくなるように制御される。逆に、前記圧力偏差がマイナスである場合、第2バルブ22は、当該圧力偏差がマイナス側に拡大するほど、つまりバッファタンク19の内部圧力が前記目標圧力を大きく下回るほど、開度が大きくなるように制御される。
【0043】
ここで、液化水素設備1が荷役フェーズにあるとき、つまり貯蔵タンク4から運搬船100に液化水素が荷役されているとき、還流ライン14の下流ライン18を通過する還流水素ガスには、運搬船100からの返送ガスと、荷役ライン13からのボイルオフガスと、貯蔵タンク4からのボイルオフガスとが含まれる。上述した第2バルブ22の開度制御は、これら各ガスが混合した還流水素ガスの圧力を前記圧力偏差に基づき調整し、バッファタンク19の内部圧力(換言すれば液化機3の入口圧力)を前記目標圧力付近で安定させる作用をもたらす。言い換えると、液化水素の荷役時、第2バルブ22の開度は、液化機3の入口圧力の変動が抑制される方向に制御される。
【0044】
一方、第1バルブ21については、前記圧力偏差に基づく開度制御は行われない。第1バルブ21の開度は、予め定められた所定開度に固定される。ここでの所定開度は、全閉以外の適宜の開度に設定される。第1バルブ21の開度が全閉以外の開度に固定されることは、原料供給源2からの原料水素ガスが圧力調整を経ずにバッファタンク19に導入されることを意味する。このため、条件によっては原料水素ガスの圧力が変動し得るが、この変動は、上述した第2バルブ22による還流水素ガスの圧力調整によって相殺される。その結果、バッファタンク19の内部圧力が前記目標圧力付近に維持されて、液化機3の入口圧力の変動が抑制される。
【0045】
次いで、コントローラ30は、荷役フェーズが終了したか否かを判定する(ステップS13)。例えば、オペレータは、運搬船100の貯槽101に規定量の液化水素が貯留された状態が確認されたときに、入力部31を操作して、荷役作業を終了する指示を出す。当該ステップS13において、コントローラ30は、このような入力部31を通じたオペレータからの指示の有無に基づいて、荷役フェーズが終了したか否かを判定する。
【0046】
前記ステップS13でNOと判定されて荷役フェーズが継続していることが確認された場合、コントローラ30は、上述したステップS11以降の処理を繰り返す。
【0047】
一方、前記ステップS13でYESと判定されて荷役フェーズが終了したことが確認された場合、コントローラ30は、液化水素ポンプ5を停止する(ステップS14)。その後、フローは前記ステップS4へと移行する。
【0048】
[作用効果]
以上説明したとおり、本実施形態では、液化機3に原料水素ガスを導く原料供給ライン11上に第1バルブ21が設けられるとともに、液化機3に再導入される還流水素ガスが通る還流ライン14上に第2バルブ22が設けられる。原料供給ライン11と還流ライン14との合流部にあるバッファタンク19には、その内部圧力を検出する圧力センサ20が設けられ、当該圧力センサ20による検出圧力が第1バルブ21又は第2バルブ22の開度制御に反映される。具体的に、貯蔵タンク4から運搬船100に液化水素を移す荷役時には、第1バルブ21の開度を固定しつつ第2バルブ22の開度を前記検出圧力に基づき増減させる制御が実行され、荷役が行われない通常時には、第2バルブ22の開度を固定しつつ第1バルブ21の開度を前記検出圧力に基づき増減させる制御が実行される。このような構成によれば、液化機3の入口圧力を安定させることができ、もって液化機3による水素ガスの液化性能を良好に維持することができる。
【0049】
すなわち、本実施形態では、荷役時か通常時(非荷役時)かに応じて、原料水素ガスが通る原料供給ライン11上の第1バルブ21と、還流水素ガスが通る還流ライン14上の第2バルブ22とのいずれかを用いて液化機3の入口圧力が調整されるので、両方のバルブ21,22を制御対象とした場合と比べて、ハンチング等の制御上の不具合が起き難くなり、液化機3の入口圧力の変動を適切に抑制することができる。
【0050】
例えば、液化水素の荷役が行われない通常時は、還流ライン14を通じて液化機3に還流される還流水素ガスに運搬船100からの返送ガスが含まれず、還流水素ガスの流量は比較的少ない。言い換えると、通常時は、還流水素ガスの流量よりも、原料供給ライン11を通じて液化機3に導入される原料水素ガスの流量が多くなり易い。このような通常時に、本実施形態では、原料供給ライン11上の第1バルブ21の開度のみが検出圧力に基づき制御されるので、ハンチング等の不具合を防止しつつ、液化機3の入口圧力を第1バルブ21の開度制御によって効率的に調整することができ、当該圧力調整によって液化機3の入口圧力の変動を適切に抑制することができる。
【0051】
一方、運搬船100に液化水素を移す荷役時は、運搬船100からの返送ガスを含む比較的多くの還流水素ガスが還流ライン14を通じて液化機3に還流されるので、原料水素ガスの流量よりも還流水素ガスの流量が多くなり易い。このような荷役時に、本実施形態では、還流ライン14上の第2バルブ22の開度のみが検出圧力に基づき制御されるので、ハンチング等の不具合を防止しつつ、液化機3の入口圧力を第2バルブ22の開度制御によって効率的に調整することができ、当該圧力調整によって液化機3の入口圧力の変動を適切に抑制することができる。
【0052】
このように、本実施形態では、荷役時/通常時という運用フェーズに応じた適切なバルブ制御によって液化機3の入口圧力の変動を抑制できるので、運用フェーズにかかわらず液化機3の入口圧力を安定させることができ、もって液化機3による水素ガスの液化性能を良好に維持することができる。
【0053】
また、本実施形態では、荷役時又は通常時に、第1バルブ21及び第2バルブ22のいずれか一方のみが圧力調整のための制御対象とされ、残りのバルブについてはその開度が固定されるので、当該残りのバルブの開度変化による圧力への影響を考慮する必要がなく、簡単かつ合理的な構成で液化機3の入口圧力を安定させることができる。
【0054】
また、本実施形態では、原料供給ライン11における第1バルブ21と液化機3との間に設けられたバッファタンク19に還流ライン14(下流ライン18)の下流端が接続されるので、原料供給源2からの原料水素ガスと還流ライン14からの還還流水素ガスとの微小な圧力変動をバッファタンク19で吸収することができる。
【0055】
[変形例]
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示はこれに限定されるわけではなく、例えば次のような変形が可能である。
【0056】
前記実施形態では、貯蔵タンク4から運搬船100に液化水素を移す荷役時に、第1バルブ21の開度を一定値に固定しつつ第2バルブ22の開度を圧力センサ20による検出値(換言すれば液化機3の入口圧力)に基づき制御したが、第1バルブ21の開度は必ずしも一定値に固定される必要はない。すなわち、荷役時における第1バルブ21の開度は、液化機3の入口圧力とは無関係に定まる値であればよく、例えば液化機3の入口圧力とは異なる別のパラメータに基づいて第1バルブ21の開度を可変的に設定してもよい。
【0057】
同様に、前記実施形態では、液化水素の荷役が行われない通常時に、第2バルブ22の開度を一定値に固定しつつ第1バルブ21の開度を圧力センサ20による検出値(換言すれば液化機3の入口圧力)に基づき制御したが、第2バルブ22の開度は必ずしも一定値に固定される必要はない。すなわち、通常時における第2バルブ22の開度は、液化機3の入口圧力とは無関係に定まる値であればよく、例えば液化機3の入口圧力とは異なる別のパラメータに基づいて第2バルブ22の開度を可変的に設定してもよい。
【0058】
前記実施形態では、荷役時か通常時かの判定、つまり運用フェーズが荷役フェーズであるか通常フェーズであるかの判定を、入力部31を通じたオペレータからの指示に基づいて行ったが、運用フェーズの判定方法はこれに限られない。例えば、貯蔵タンク4から液化水素を払い出す液化水素ポンプ5が作動しているか否かに基づいて運用フェーズを判定してもよい。もしくは、還流ライン14の適宜の箇所に流量センサを取り付けて、当該流量センサにより検出される還流水素ガスの流量に基づいて運用フェーズを判定してもよい。
【0059】
前記実施形態では、バッファタンク19の内部圧力を圧力センサ20によって検出し、この検出圧力を液化機3の入口圧力として扱ったが、圧力センサは、液化機3の入口圧力と等価ないずれかの箇所の圧力を検出するものであればよく、例えばバッファタンク19と液化機3との間に位置する原料供給ライン11の途中に圧力センサを取り付けてもよい。もしくは、圧力センサは、液化機3の入口圧力を直接検出するセンサであってもよい。
【0060】
前記実施形態では、貯蔵タンク4に貯蔵されている液化水素を運搬船100に荷役する例について説明したが、液化水素の荷役先は、液化水素を運搬する何らかのキャリアであればよく、例えばタンクローリー等の運搬車であってもよい。
【0061】
[まとめ]
前記実施形態及びその変形例には、以下の開示が含まれる。
【0062】
本開示の一局面に係る設備は、液化水素を生成してキャリアに移す液化水素設備であって、水素ガスを液化して液化水素を生成する液化機と、原料供給源からの原料水素ガスを前記液化機に導く原料供給ラインと、前記液化機で生成された液化水素を貯蔵する貯蔵タンクと、前記貯蔵タンクから前記キャリアに液化水素を移す荷役に伴い前記キャリアから返送される水素ガスである返送ガスと、前記貯蔵タンク内の液化水素の蒸発により生じるボイルオフガスとを、それぞれ前記液化機に導く還流ラインと、前記原料供給ラインに設けられた第1バルブと、前記還流ラインに設けられた第2バルブと、前記第1バルブ及び前記第2バルブを制御するコントローラとを備える。前記コントローラは、前記荷役時に、前記液化機の入口圧力の変動が抑制される方向に前記第2バルブの開度を制御し、前記荷役が行われない通常時に、前記液化機の入口圧力の変動が抑制される方向に前記第1バルブの開度を制御する。
【0063】
本開示によれば、原料水素ガスを液化機に導く原料供給ライン上の第1バルブと、キャリアからの返送ガスや貯蔵タンクからのボイルオフガスを含む水素ガス(以下、これらを総称して還流水素ガスという)を液化機に導く還流ライン上の第2バルブと、のいずれか一方を用いて液化機の入口圧力が調整されるので、両方の弁を制御対象とした場合と比べて、ハンチング等の制御上の不具合が起き難くなり、液化機の入口圧力の変動を適切に抑制することができる。
【0064】
例えば、液化水素の荷役が行われない通常時は、還流ラインを通じて液化機に還流される還流水素ガスにキャリアからの返送ガスが含まれず、還流水素ガスの流量は比較的少ない。言い換えると、通常時は、還流水素ガスの流量よりも、原料供給ラインを通じて液化機に導入される原料水素ガスの流量が多くなり易い。このような通常時に、本開示では、原料供給ライン上の第1バルブの開度が制御されるので、ハンチング等の不具合を防止しつつ、液化機の入口圧力を第1バルブの開度制御によって効率的に調整することができ、当該圧力調整によって液化機の入口圧力の変動を適切に抑制することができる。
【0065】
一方、キャリアに液化水素を移す荷役時は、キャリアからの返送ガスを含む比較的多くの還流水素ガスが還流ラインを通じて液化機に還流されるので、原料水素ガスの流量よりも還流水素ガスの流量が多くなり易い。このような荷役時に、本開示では、当該還流ライン上の第2バルブの開度が制御されるので、ハンチング等の不具合を防止しつつ、液化機の入口圧力を第2バルブの開度制御によって効率的に調整することができ、当該圧力調整によって液化機の入口圧力の変動を適切に抑制することができる。
【0066】
このように、本開示では、荷役時/通常時という運用フェーズに応じた適切なバルブ制御によって液化機の入口圧力の変動を抑制できるので、運用フェーズにかかわらず液化機の入口圧力を安定させることができ、もって液化機による水素ガスの液化性能を良好に維持することができる。
【0067】
好ましくは、前記液化水素設備は、前記液化機の入口圧力を検出する圧力センサをさらに備える。前記コントローラは、前記荷役時に、前記第1バルブの開度を固定しつつ、前記圧力センサにより検出された前記入口圧力に基づいて前記第2バルブの開度を制御し、前記通常時に、前記第2バルブの開度を固定しつつ、前記圧力センサにより検出された前記入口圧力に基づいて前記第1バルブの開度を制御する。
【0068】
この態様では、荷役時及び通常時のそれぞれにおける制御対象のバルブが、圧力センサにより検出された液化機の入口圧力に基づき制御される一方、制御対象でないバルブの開度は一定値に固定されるので、簡単かつ合理的な構成で液化機の入口圧力を安定させることができる。
【0069】
好ましくは、前記原料供給ラインは、前記第1バルブと前記液化機との間にバッファタンクを有し、前記還流ラインは、その下流端が前記バッファタンクに接続される。
【0070】
この態様では、原料供給源からの原料水素ガスと還流ラインからの還還流水素ガスとの微小な圧力変動をバッファタンクで吸収することができる。
【0071】
好ましくは、前記圧力センサは、前記液化機の入口圧力として前記バッファタンクの内部圧力を検出する。
【0072】
バッファタンクの内部圧力は、液化機の上流側で原料水素ガスと還流水素ガスとが合流して得られる水素ガスの圧力であり、液化機の入口圧力と等価である。したがって、当該バッファタンクの内部圧力を圧力センサにより検出することで、液化機の入口圧力を適切に入手することができる。
【0073】
好ましくは、前記還流ラインは、前記原料供給ラインに接続された下流ラインと、前記キャリアからの返送ガスを前記下流ラインに導く返送ラインと、前記貯蔵タンクからのボイルオフガスを前記下流ラインに導くBOGラインとを含む。
【0074】
この態様では、キャリアからの返送ガスや貯蔵タンクからのボイルオフガスを、還流水素ガスとして液化機に適切に還流することができる。
【0075】
本開示の他の局面に係る方法は、上述した液化機、原料供給ライン、貯蔵タンク、還流ライン、第1バルブ、及び第2バルブを備えた液化水素設備を運用する方法であって、前記液化水素設備が、前記荷役を行う荷役フェーズと、前記荷役を行わない通常フェーズとのいずれであるかを判定すること、前記液化水素設備が前記荷役フェーズにあると判定された場合に、前記液化機の入口圧力の変動が抑制される方向に前記第2バルブの開度を制御すること、及び、前記液化水素設備が前記通常フェーズにあると判定された場合に、前記液化機の入口圧力の変動が抑制される方向に前記第1バルブの開度を制御すること、を含むものである。
【0076】
本開示に係る運用方法によれば、上述した液化水素設備の開示と同様に、運用フェーズにかかわらず液化機の入口圧力を安定させることができ、もって液化機による水素ガスの液化性能を良好に維持することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 液化水素設備
2 原料供給源
3 液化機
4 貯蔵タンク
11 原料供給ライン
13 荷役ライン
14 還流ライン
15 返送ライン
16 BOGライン
18 下流ライン
19 バッファタンク
20 圧力センサ
21 第1バルブ
22 第2バルブ
30 コントローラ
100 運搬船(キャリア)
図1
図2
図3
図4
図5