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特開2024-94971空気中に浮遊する物質の付着抑制剤、付着抑制方法および付着抑制用皮膚外用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094971
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】空気中に浮遊する物質の付着抑制剤、付着抑制方法および付着抑制用皮膚外用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20240703BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20240703BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240703BHJP
   A61K 31/702 20060101ALI20240703BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240703BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240703BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240703BHJP
   A61K 31/047 20060101ALI20240703BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240703BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/60
A61Q19/00
A61K31/702
A61P31/12
A61P31/04
A61P37/08
A61K31/047
A61P17/00
C09K3/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211913
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】593012228
【氏名又は名称】株式会社希松
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 紘那
(72)【発明者】
【氏名】小谷野 豊
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 嘉純
(72)【発明者】
【氏名】小松 令以子
【テーマコード(参考)】
4C083
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C083AC131
4C083AC132
4C083AD201
4C083AD202
4C083CC02
4C083EE10
4C083EE12
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA01
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA63
4C086NA07
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZB13
4C086ZB32
4C086ZB33
4C086ZB35
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA05
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA83
4C206NA07
4C206NA13
4C206ZA89
4C206ZB13
4C206ZB32
4C206ZB33
4C206ZB35
(57)【要約】
【課題】 空気中に浮遊する物質の付着を抑制できる技術を提供する。
【解決手段】 1-ケストース、ラフィノースおよびエリスリトールから選択される1以上の糖を有効成分とする、空気中に浮遊する物質の付着抑制剤。本発明によれば、空気中に浮遊する物質が、皮膚や毛髪、体、衣服、靴、鞄、装身具といった対象表面に付着することを抑制できる。これにより、有害物質が身体に作用ないし体内に取り込まれるのを抑制することができ、もって、浮遊物質による健康面や美容面への悪影響の低減に寄与することができる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1-ケストース、ラフィノースおよびエリスリトールから選択される1以上の糖を有効成分とする、空気中に浮遊する物質の付着抑制剤。
【請求項2】
1-ケストース、ラフィノースおよびエリスリトールから選択される1以上の糖を対象表面に付ける工程を有する、空気中に浮遊する物質の付着を抑制する方法。
【請求項3】
1-ケストース、ラフィノースおよびエリスリトールから選択される1以上の糖を有効成分とする、空気中に浮遊する物質の付着抑制用皮膚外用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1-ケストース、ラフィノースおよびエリスリトールから選択される1以上の糖を有効成分とする、空気中に浮遊する物質の付着抑制剤、付着抑制方法および付着抑制用皮膚外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
大気(地表の空気)中には、ウイルスや細菌、微小粒子状物質(PM2.5)、黄砂、浮遊粒子状物質(SPM)、花粉、真菌等のアレルゲン、ハウスダストなどの微小な物質が浮遊している。これらはヒトや動物に様々な悪影響を与えうるものであり、例えば、ウイルスや細菌は感染症の原因となることが知られている。また、微小粒子状物質(PM2.5)や浮遊粒子状物質(SPM)は、気管支炎、ぜんそく等の呼吸器疾患や循環器疾患をはじめとして様々な健康への悪影響との関連が指摘され、環境省により大気中濃度の環境基準が設けられている(非特許文献1)。さらに、PM2.5は、近年では美容分野においても注目されており、シミ形成との関連が指摘されている(非特許文献2,3)。
【0003】
これら空気中に浮遊する物質が生体に作用する経路は、呼吸器系から取り込まれる、皮膚を介して作用する、目や口、鼻などの粘膜に作用する、あるいはそこから取り込まれる、飲食物を介して消化器系から取り込まれる、など様々な経路があるが、いずれにしても、生体と浮遊物質との接触機会を減らすことがその悪影響を低減する対策になり得る。そこで、浮遊物質の付着を抑制する技術が研究開発されており、例えば、特許文献1には、ヒドロキシアルキルキトサン又はその塩が、空気中に浮遊している有害物質の付着を防止することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6198799号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】関根嘉香、総説 微小粒子状物質(PM2.5)の健康影響について、Indoor Environment, Vol. 17, No.1, pp.19-35, 2014
【非特許文献2】奥野凌輔、大気汚染物質によるシミ形性に対する予防的アプローチ、FRAGRANCE JOURNAL 2010-10,第10~14頁
【非特許文献3】中西智洋、肌細胞のアンチポリューションシステムとアンチポリューション素材について、FRAGRANCE JOURNAL 2010-10,第21~25頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のヒドロキシアルキルキトサンは、甲殻類より抽出されるキトサンを原料とするため、アレルギー症状を引き起こす懸念を消費者に抱かせるという問題がある。本発明は、係る課題を解決するためになされたものであって、より安心して、空気中に浮遊する物質の付着を抑制できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、1-ケストース、ラフィノースおよびエリスリトールから選択される糖が、浮遊物質の対象表面への付着を抑制できることを見出した。そこで、これらの知見に基づいて、下記の各発明を完成した。
【0008】
(1)本発明に係る付着抑制剤は、空気中に浮遊する物質が対象表面に付着することを抑制する剤であって、1-ケストース、ラフィノースおよびエリスリトールから選択される1以上の糖を有効成分とする。
【0009】
(2)本発明に係る付着抑制方法は、空気中に浮遊する物質が対象表面に付着することを抑制する方法であって、1-ケストース、ラフィノースおよびエリスリトールから選択される1以上の糖を前記対象の表面に付ける工程を有する。
【0010】
(3)本発明に係る付着抑制用皮膚外用組成物は、空気中に浮遊する物質が皮膚に付着することを抑制する組成物であって、外用により使用するものであり、1-ケストース、ラフィノースおよびエリスリトールから選択される1以上の糖を有効成分とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、空気中に浮遊する物質が、皮膚や毛髪、体、衣服、靴、鞄、装身具といった対象表面に付着することを抑制できる。これにより、有害物質が身体に作用ないし体内に取り込まれるのを抑制することができ、もって、浮遊物質による健康面や美容面への悪影響の低減に寄与することができる。
【0012】
また、1-ケストース、ラフィノースおよびエリスリトールはいずれも、野菜や果実に元来含まれている糖であり、古来より食品あるいは食品含有成分として摂取されてきた物質であるため、安全性および消費者に与える安心感は高い。したがって、本発明によれば、安全性やアレルギー反応への懸念をより低減し、安心して、空気中に浮遊する物質の対象表面への付着を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】グリセリン、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、スクロース、1-ケストースおよびラフィノースをそれぞれ含有する液体を人工皮膚に塗布した後、石松子を付着させた様子を示す画像である。
図2】グリセリン、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、スクロース、1-ケストースおよびラフィノースをそれぞれ含有する液体を塗布した人工皮膚における石松子の付着個数を示す棒グラフである。**は試料間に有意差(p値<0.01)があったことを示す。
図3】グリセリン、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、スクロース、1-ケストースおよびラフィノースをそれぞれ含有する液体を塗布した人工皮膚における石松子の付着面積率を示す棒グラフである。**は試料間に有意差(p値<0.01)があったことを示す。
図4】グリセリン、ソルビトール、エリスリトール、マルトース、1-ケストースおよびラフィノースをそれぞれ含有する液体を人工皮膚に塗布した後、竹炭粉末を付着させた様子を示す画像である。
図5】グリセリン、ソルビトール、エリスリトール、マルトース、1-ケストースおよびラフィノースをそれぞれ含有する液体を塗布した人工皮膚における竹炭粉末の付着個数を示す棒グラフである。**は試料間に有意差(p値<0.01)があったことを示す。
図6】グリセリン、ソルビトール、エリスリトール、マルトース、1-ケストースおよびラフィノースをそれぞれ含有する液体を塗布した人工皮膚における竹炭粉末の付着面積率を示す棒グラフである。**は試料間に有意差(p値<0.01)があったことを示す。
図7】1-ケストースを0~3質量%含有する液体を塗布した人工皮膚における石松子の付着面積率を示す棒グラフである。
図8】1-ケストースを3~20質量%含有する液体を塗布した人工皮膚における石松子の付着個数を示す棒グラフである。
図9】1-ケストースを0~5質量%含有する液体を塗布した人工皮膚における竹炭粉末の付着個数を示す棒グラフである。
図10】1-ケストースを3~20質量%含有する液体を塗布した人工皮膚における竹炭粉末の付着個数を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明についてさらに説明する。本発明は、空気中に浮遊する物質が対象表面に付着するのを抑制すること、ならびに、1-ケストース、ラフィノースおよびエリスリトールから選択される1以上の糖を有効成分とすることを特徴としている。
【0015】
「空気中に浮遊する物質」(本発明において、単に「浮遊物質」という場合がある。)は、大気中に浮遊している微小な物質のうち、特に気体を除く固体や液体の物質(粒子状物質)をいう。具体的には、インフルエンザウイルス等のウイルス(粒径約0.01~0.1μm程度)、細菌(粒径約1μm程度)、微小粒子状物質(PM2.5:粒径2.5μm以下)、黄砂(粒径約4μm程度)、浮遊粒子状物質(SPM:粒径10μm以下)、花粉(スギ花粉やヒノキ花粉は粒径約30~40μm程度)、真菌(粒径約100μm~)等のアレルゲン、ハウスダスト、粉塵、煤塵などを例示することができる。花粉は、より具体的には、例えば、スギ花粉、ヒノキ花粉、カモガヤ花粉、ブタクサ花粉、ハンノキ花粉、シラカンバ花粉、イネ花粉、カナムグラ花粉、コナラ花粉、イチョウ花粉、ヒメガマ花粉、スズメノテッポウ花粉、セイタカアキノキリンソウ花粉、ケヤキ花粉、オオアワガエリ花粉、ヨモギ花粉などを例示することができる。
【0016】
1-ケストース、ラフィノースおよびエリスリトールは、後述する実施例に示すように、煤塵等の燃焼排出物を模した竹炭粉末(粒径:1~20μm、測定値平均径:約10μm)であっても、花粉を模した石松子(中位径:約30μm)であっても、同様に、人工皮膚への付着を抑制する。このことから、本発明の有効成分は、浮遊物質の粒子径や物性等を問わず、空気中の微粒子が対象に付着するのを抑制できるといえる。
【0017】
空気中に浮遊する物質が「対象表面に付着するのを抑制する」とは、対象表面に付着する浮遊物質の数を少なくすること、または、対象表面において浮遊物質が付着した範囲の面積を小さくすることをいう。
【0018】
ここで、浮遊物質の付着を抑制する「対象」は、浮遊物質が付着する可能性のある物質である。対象として、具体的には、皮膚や毛髪といったヒトや動物の生体の一部または全身、衣服や靴、鞄、帽子、アクセサリーなどの装飾品、ハンカチやタオル、マスク等の携帯品、カーテン、カーペット、布団、ソファー等の室内用品などを例示することができる。また、対象は、パウダーファンデーションやおしろい、頬紅、ボディパウダーなどの粉体や固体の化粧料ないし化粧品原料などを例示することができる。
【0019】
「1-ケストース」は、1分子のグルコースと2分子のフルクトースからなる三糖類のオリゴ糖である。1-ケストースは、当業者に公知の方法に従って製造して用いてもよく、簡便には、市販されているものを用いてもよい。市販品には、1-ケストースを高い純度(糖の総量を100%とした場合の、当該糖の質量%)で含有する精製品や、30~70質量%程度の比較的低い純度で含有するフラクトオリゴ糖の混合物などがあるが、それらのいずれを用いてもよい。
【0020】
「ラフィノース」は、1分子のグルコース、1分子のガラクトースおよび1分子のフルクトースからなる三糖類のオリゴ糖である。ビート(甜菜)やサトウキビ、キャベツ、マメ科植物の種子、トウモロコシなど高等植物に広く存在する。ラフィノースは、化粧品原料として水和物が市販されているほか、健康食品や試薬としても販売されている。また、ビートから抽出精製したラフィノースを高純度で含むビートオリゴ糖も市販されており、本発明ではこれらの市販品を用いることができる。
【0021】
「エリスリトール(エリトリトール)」は、化学名を1,2,3,4-Butaneterolとする、四価の単糖アルコールである。ブドウやナシなどの果実、味噌や醤油、清酒などの発酵食品に元来含まれている。エリスリトールはエリスロースの還元体であるが、現在のところ、工業的には発酵により得られる。エリスリトールは、食品(甘味料)や化粧品原料として市販されており、本発明では係る市販品を用いることができる。
【0022】
1-ケストース、ラフィノースおよびエリスリトールから選択される1以上の糖は、対象表面に付けることにより用いる。ここで、1-ケストース、ラフィノースおよびエリスリトールは、そのまま(粉粒体や水溶液の形態)で用いてもよく、他の成分と混合した形態で用いてもよい。
【0023】
すなわち、本発明の付着抑制剤および付着抑制用皮膚外用組成物は、有効成分である1-ケストース、ラフィノースおよびエリスリトールから選択される1以上の糖以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を含むことができる。他の成分としては、化粧品や医薬部外品、医薬品、衛生用品などに通常用いられる原料(例えば、油性基剤、水性基剤、界面活性剤、アルコール、防腐剤、キレート剤、酸化防止剤、増粘剤、賦形剤、香料、ビタミン類、抗炎症剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、高分子化合物、動植物由来抽出成分、殺菌剤、抗酸化成分、老化防止成分、抗炎症成分、美白成分、細胞賦活化成分、血行促進成分、保湿成分、DNAの損傷の予防・修復作用を有する成分、抗糖化成分、ペプチド又はその誘導体、アミノ酸またはその誘導体、ヒドロキノン配糖体およびそのエステル類など)を例示することができる。
【0024】
すなわち、本発明の付着抑制剤は、化粧品や医薬部外品、医薬品の他、洗浄料や入浴料、消毒剤、殺菌剤などの衛生用品の製品形態とすることができる。本発明の付着抑制用皮膚外用組成物もまた、皮膚に直接塗布や貼付、噴霧等する化粧品や医薬部外品、医薬品の他、皮膚と接する態様で用いられる衛生用品(洗浄料や入浴料、消毒剤、殺菌剤など)の製品形態とすることができる。これら製品形態のより具体的な剤型としては、例えば、クリーム、シート剤、ローション、乳液、ジェル、エアゾール剤、ロールオン、スティック、粉剤、錠剤等の剤型を例示することができる。
【0025】
1-ケストース、ラフィノースおよびエリスリトールから選択される1以上の糖を対象表面に付ける際の付け方は、これら有効成分を含む製品の製品形態(剤型)に応じて、塗布や貼付、噴霧、浸漬など、適宜行うことができる。
【0026】
1-ケストースの含有量は、製品形態や用途に応じて適宜設定することができる。含有量として、具体的には、例えば、0.001質量%以上、0.01質量%以上、0.1質量%以上、100質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下を例示することができる。
【0027】
ラフィノースの含有量もまた、製品形態や用途に応じて適宜設定することができる。含有量として、具体的には、例えば、0.001質量%以上、0.01質量%以上、0.1質量%以上、100質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下を例示することができる。
【0028】
エリスリトールの含有量もまた、製品の形態や用途に応じて適宜設定することができる。含有量として、具体的には、例えば、0.001質量%以上、0.01質量%以上、0.1質量%以上、100質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下を例示することができる。
【0029】
以下、本発明について実施例に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲はこれらの実施例によって示される特徴に限定されない。
【実施例0030】
<試験方法>
(1)試験材料
煤塵を模したものとして、石炭粉末(粒径:1~20μm、測定値平均径:約10μm、製品規格:中位径25μm以下)を用いた。また、花粉を模したものとして、石松子(常緑ほふく草ヒカゲノカヅラLycopodium clavatum LINNAEUSの胞子、中位径:約30μm、桃色粉末)を用いた。
【0031】
石炭粉末および石松子を付着させる対象は、ヒト皮膚を模した人工皮膚(「バイオスキンプレート」、素材;ウレタンエラストマー、厚さ;5mm、ビューラックス社製)を用いた。
【0032】
被験物質は表1に記載の多価アルコールまたは糖(全て市販品)を用いた。本実施例において、被験物質の濃度(質量%)は、表1の製品の濃度である。
【表1】
【0033】
(2)石松子の付着試験
10質量%濃度のエタノール水溶液に被験物質を終濃度が0~20質量%となるよう溶解して被験物質溶液を調製した。また、人工皮膚を1cm×1cm大の四角形にカットした切片を作製した。人工皮膚切片の上面に被験物質溶液0.020gを塗布し、室温に3時間置くことにより乾燥させた。その後、切片および石松子0.020gを容量50mLの広口びんに入れ、上下に10回振って石松子を浮遊させた。続いて、人工皮膚切片をびんから取り出し、顕微鏡(KEYENCE VHX-7000)を用いて被験物質溶液を塗布した面(塗布面)を撮影した。撮影した画像に基づき、塗布面に付着した石松子の数(付着個数)を測定した。また、画像を2値化して塗布面において石松子が付着した部分の面積(付着面積)を測定し、塗布面全体に占める割合(付着面積率)を百分率で算出した。各被験物質を用いた試料について作業は計4回繰り返し、付着個数および付着面積率の平均値を求めた。各群間の有意差検定は、Tukey-Kramer法により行った。
【0034】
(3)竹炭粉末の付着試験
10質量%濃度のエタノール水溶液に被験物質を終濃度が0~20質量%となるよう溶解して被験物質溶液を調製した。バイオスキンプレートを適宜の大きさにカットし、その2cm×2cm=4cmの区域に被験物質溶液0.08gを塗布し、室温に30分置くことにより乾燥させた。1リットル容量のビーカーに竹炭粉末0.3gを入れ、人工皮膚切片をビーカー内部に吊り下げる態様で固定した。ビーカー内部にて、攪拌機の羽根を3000回転/分で5分間回転させて風を起こし竹炭粉末を浮遊させた。その後、切片をビーカーから取り出し、「試験方法(2)石松子の付着試験」に記載の方法により塗布面における竹炭粉末の付着個数および付着面積率を測定した。各群間の有意差検定は、Tukey-Kramer法により行った。
【0035】
<実施例1>付着抑制効果をもつ物質の検討:石松子
被験物質としてグリセリン、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、スクロース、1-ケストースおよびラフィノースを用いて、試験方法(2)に記載の方法により石松子の付着個数および付着面積率を測定した。被験物質溶液における被験物質の終濃度は3質量%とした。塗布面を撮影した画像を図1に、付着個数を図2に、付着面積率を図3に、それぞれ示す。
【0036】
図1~3に示すように、エリスリトールを用いた試料では、グリセリンを用いた試料と比較して石松子の付着個数および付着面積率が有意(p値<0.01)に小さかった。1-ケストースを用いた試料でも、グリセリン、キシリトール、ソルビトールおよびスクロースをそれぞれ用いた試料と比較して付着個数および付着面積率が有意(p値<0.01)に小さかった。ラフィノースを用いた試料でも、グリセリン、キシリトール、ソルビトールおよびスクロースをそれぞれ用いた試料と比較して付着個数および付着面積率が有意(p値<0.01)に小さかった。なお、図2~3には、グリセリンを用いた試料との有意差のみを図示する。これらの結果から、エリスリトール、1-ケストースおよびラフィノースは空気中に浮遊する物質の対象表面への付着を抑制できることが明らかになった。
【0037】
<実施例2>付着抑制効果をもつ物質の検討:竹炭粉末
被験物質としてグリセリン、ソルビトール、エリスリトール、マルトース、1-ケストースおよびラフィノースを用いて、試験方法(3)に記載の方法により竹炭粉末の付着個数および付着面積率を測定した。被験物質溶液における被験物質の終濃度は3質量%とした。塗布面を撮影した画像を図4に、付着個数を図5に、付着面積率を図6に、それぞれ示す。
【0038】
図4~6に示すように、エリスリトールを用いた試料では、グリセリン、ソルビトールおよびマルトースをそれぞれを用いた試料と比較して竹炭粉末の付着個数および付着面積率が有意(p値<0.01)に小さかった。1-ケストースを用いた試料でも、グリセリン、ソルビトールおよびマルトースをそれぞれ用いた試料と比較して付着個数および付着面積率が有意(p値<0.01)に小さかった。ラフィノースを用いた試料でも、グリセリン、ソルビトールおよびマルトースをそれぞれ用いた試料と比較して付着個数および付着面積率が有意(p値<0.01)に小さかった。なお、図5~6には、グリセリンを用いた試料との有意差のみを図示する。これらの結果から、エリスリトール、1-ケストースおよびラフィノースは空気中に浮遊する物質の対象表面への付着を抑制できることが明らかになった。
【0039】
<実施例3>配合濃度の検討:石松子
(1)下限濃度の検討
被験物質として1-ケストースを用いて、試験方法(2)に記載の方法により石松子の付着面積率を測定した。ただし、被験物質溶液は、10質量%濃度のエタノール水溶液に1,3-ブチレングリコールを終濃度が3質量%となるよう溶解し、さらに1-ケストースを終濃度が0、0.1、0.5、1または3質量%となるよう溶解して調製した。その結果を図7に示す。
【0040】
図7に示すように、1-ケストースを0.1質量%、0.5質量%、1質量%および3質量%含有する被験物質溶液を塗布した試料はいずれも、1ケストースを含有しない溶液を塗布した試料と比較して、石松子の付着面積率が小さかった。この結果から、1-ケストースは、その使用濃度の多少に関わらず、空気中に浮遊する物質の対象表面への付着を抑制できることが明らかになった。
【0041】
(2)上限濃度の検討
被験物質として1-ケストースを用いて、試験方法(2)に記載の方法により石松子の付着個数を測定した。ただし、被験物質溶液における1-ケストースの終濃度は3質量%、10質量%または20質量%とした。その結果を図8に示す。
【0042】
図8に示すように、1-ケストースを3質量%、10質量%および20質量%含有する被験物質溶液を塗布した試料における石松子の付着個数はそれぞれ18個、19個および26個であった。当該付着個数は、1ケストース濃度が大きくなるにつれて多くなる傾向ではあったが、群間に有意差は無かった。また、グリセリン、キシリトール、ソルビトールおよびスクロースを各3質量%含有する被験物質溶液を塗布した試料における付着個数(実施例1の図2、147~462個)と比較して、いずれも顕著に少なかった。これらの結果から、1-ケストースは、その使用濃度の多少に関わらず、空気中に浮遊する物質の対象表面への付着を抑制できることが明らかになった。なお、1-ケストースを3質量%含有する被験物質溶液を塗布した試料における付着個数について、本実施例3では18個(図8)である一方で、実施例1では32個(図2)であるのは、室温や湿度等の実験環境の違いによる誤差と考えられる。
【0043】
<実施例4>配合濃度の検討:竹炭粉末
(1)下限濃度の検討
被験物質として1-ケストースを用いて、試験方法(3)に記載の方法により竹炭粉末の付着個数を測定した。ただし、被験物質溶液は、10質量%濃度のエタノール水溶液にグリセリンを終濃度が3質量%となるよう溶解し、さらに1-ケストースを終濃度が0、0.1、0.5、1、3または5質量%となるよう溶解して調製した。その結果を図9に示す。
【0044】
図9に示すように、1-ケストースを0.1質量%、0.5質量%、1質量%、3質量%および5質量%含有する被験物質溶液を塗布した試料はいずれも、1ケストースを含有しない溶液を塗布した試料と比較して、竹炭粉末の付着個数が少なかった。この結果から、1-ケストースは、その使用濃度の多少に関わらず、空気中に浮遊する物質の対象表面への付着を抑制できることが明らかになった。
【0045】
(2)上限濃度の検討
被験物質として1-ケストースを用いて、試験方法(3)に記載の方法により竹炭粉末の付着個数を測定した。ただし、被験物質溶液における1-ケストースの終濃度は3質量%、10質量%または20質量%とした。その結果を図10に示す。
【0046】
図10に示すように、1-ケストースを3質量%、10質量%および20質量%含有する被験物質溶液を塗布した試料における竹炭粉末の付着個数はそれぞれ1165個、1901個および3440個であった。当該付着個数はいずれも、グリセリン、ソルビトールおよびマルトースを各3質量%含有する被験物質溶液を塗布した試料における付着個数(実施例2の図5、5454~8081個)と比較して顕著に少なかった。この結果から、1-ケストースは、その使用濃度の多少に関わらず、空気中に浮遊する物質の対象表面への付着を抑制できることが明らかになった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10