IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 宇部エクシモ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-中空構造体及びその製造方法 図1
  • 特開-中空構造体及びその製造方法 図2
  • 特開-中空構造体及びその製造方法 図3
  • 特開-中空構造体及びその製造方法 図4
  • 特開-中空構造体及びその製造方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094975
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】中空構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 44/18 20060101AFI20240703BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20240703BHJP
   B32B 1/00 20240101ALI20240703BHJP
   B29D 23/00 20060101ALI20240703BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B29C44/18
B32B5/18 101
B32B1/06
B29D23/00
B29C44/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211924
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000120010
【氏名又は名称】宇部エクシモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏和
(72)【発明者】
【氏名】堀本 貴敏
【テーマコード(参考)】
4F100
4F213
4F214
【Fターム(参考)】
4F100AG00A
4F100AK44A
4F100AK51B
4F100AK74
4F100BA02
4F100BA07
4F100DA11A
4F100DA12A
4F100DB01A
4F100DB01B
4F100DG11A
4F100DH02A
4F100DJ01A
4F100DJ02B
4F100EC032
4F100EH61B
4F100EH76B
4F100GB51
4F100JD05
4F213AD17
4F213AG08
4F213AH01
4F214AA42
4F214AB02
4F214AC05
4F214AD05
4F214AD16
4F214AG08
4F214AH02
4F214UA01
4F214UB01
4F214UB11
4F214UC02
4F214UC03
4F214UC12
4F214UD17
(57)【要約】
【課題】生産性が向上した、中空構造体及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明では、中空部を有する樹脂製の中芯を少なくとも備えた略円筒状又は略多角筒状の中空構造体であって、前記中空構造体は、中空部内の少なくとも一部に発泡樹脂部を備え、前記発泡樹脂部は、前記中空部内の略円筒状又は略多角筒状の空間の一部を密閉し、前記発泡樹脂部は、発泡倍率が3倍以上である、中空構造体及びその製造方法を提供する。本発明において、前記発泡樹脂部は、前記中空部内の少なくとも一端付近を密閉していてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を有する樹脂製の中芯を少なくとも備えた略円筒状又は略多角筒状の中空構造体であって、
前記中空構造体は、中空部内の少なくとも一部に発泡樹脂部を備え、
前記発泡樹脂部は、前記中空部内の略円筒状又は略多角筒状の空間の一部を密閉し、
前記発泡樹脂部は、発泡倍率が3倍以上である、中空構造体。
【請求項2】
前記発泡樹脂部は、前記中空部内の少なくとも一端付近を密閉する、請求項1に記載の中空構造体。
【請求項3】
前記発泡樹脂部は、前記中芯の内壁側にのみ存在する、請求項1又は2に記載の中空構造体。
【請求項4】
前記発泡樹脂部は、発泡倍率が50倍以下である発泡樹脂フォームを含む、請求項1又は2に記載の中空構造体。
【請求項5】
前記発泡樹脂フォームは、発泡ウレタンフォームである、請求項4に記載の中空構造体。
【請求項6】
前記発泡樹脂部が独立孔を有する場合、前記独立孔の直径は、20μm以上20000μm以下である、請求項4に記載の中空構造体。
【請求項7】
前記中空構造体の長手方向の長さを1とすると、発泡樹脂部の一端における長手方向の長さは0.01~0.5である、請求項2に記載の中空構造体。
【請求項8】
中空部を有する樹脂製の中芯を少なくとも備えた略円筒状又は略多角筒状の中空構造体であって、前記中空構造体は、中空部内の少なくとも一部に発泡樹脂部を備え、前記発泡樹脂部は、前記中空部内の略円筒状又は略多角筒状の空間の一部を密閉し、前記発泡樹脂部は、発泡倍率が3倍以上である、中空構造体の製造方法であって、
前記中空部内に対し、発泡樹脂フォームを充填する工程を少なくとも行う、中空構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空構造体及びその製造方法に関する。より詳しくは、生産性が向上した、中空構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂を用いた略円筒状の中空構造体は、鋼管等の金属製の中空パイプよりも軽量であり、運搬や作業に手間がかからず、且つ、腐食もしないという特徴がある。
【0003】
ここで、例えば、特許文献1には、上方開口部に栓と、下方開口部に尖塔部と、特定の範囲の曲げ剛性を有する、繊維強化熱硬化性樹脂層を備えた複数層からなる中空パイプが開示されている。前記中空パイプは、長芋その他の蔓性作物等の栽培に用いられる栽培用支柱として用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-141157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、海苔の養殖用支柱として、中空構造体を海に浮かべて使用する場合、中空構造体の両端に栓をして水が中空構造体内部に浸入することを防ぐ必要がある。そこで、栓を中空構造体に取り付ける場合、産業ロボット等を使用して栓を回転させ、中空構造体との摩擦熱により溶着することで、自動加工することができる。この場合、加工する際に内部の空気の逃げ場が無くなるため、溶着した部分に小さな穴が出来てしまい、水に浸漬して数日後には、内部に水が浸入してしまう中空構造体が発生する恐れがある。
【0006】
また、手作業で接着剤を付けて栓を中空構造体に挿入しようとする場合も、上述した理由や作業のバラつきにより、水が浸入する中空構造体が発生する恐れがある。これに対し、接着剤を塗ったゴム栓を用いてプラスチック栓内部で中空構造体を密閉することにより水の浸入を防ぐことも考えられるが、この作業には時間と労力が必要である。
【0007】
そこで、本発明では、このような実情に鑑み、生産性が向上した、中空構造体及びその製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らが鋭意実験検討を行った結果、中空構造体自体の構造に着目することで、生産性が向上した、中空構造体及びその製造方法が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明では、まず、中空部を有する樹脂製の中芯を少なくとも備えた略円筒状又は略多角筒状の中空構造体であって、前記中空構造体は、中空部内の少なくとも一部に発泡樹脂部を備え、前記発泡樹脂部は、前記中空部内の略円筒状又は略多角筒状の空間の一部を密閉し、前記発泡樹脂部は、発泡倍率が3倍以上である、中空構造体を提供する。
本発明に係る中空構造体において、前記発泡樹脂部は、前記中空部内の少なくとも一端付近を密閉してもよい。
本発明に係る中空構造体において、前記発泡樹脂部は、前記中芯の内壁側にのみ存在してもよい。
本発明に係る中空構造体において、前記発泡樹脂部は、発泡倍率が50倍以下である発泡樹脂フォームを含んでいてもよい。この場合、前記発泡樹脂フォームは、発泡ウレタンフォームであってもよい。また、前記発泡樹脂部が独立孔を有する場合、前記独立孔の直径は、20μm以上20000μm以下であってもよい。
本発明に係る中空構造体は、前記中空構造体の長手方向の長さを1とすると、発泡樹脂部の一端における長手方向の長さは0.01~0.5であってよい。
【0010】
また、本発明では、中空部を有する樹脂製の中芯を少なくとも備えた略円筒状又は略多角筒状の中空構造体であって、前記中空構造体は、中空部内の少なくとも一部に発泡樹脂部を備え、前記発泡樹脂部は、前記中空部内の略円筒状又は略多角筒状の空間の一部を密閉し、前記発泡樹脂部は、発泡倍率が3倍以上である、中空構造体の製造方法であって、前記中空部内に対し、発泡樹脂フォームを充填する工程を少なくとも行う、中空構造体の製造方法も提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、生産性が向上した、中空構造体及びその製造方法を提供することができる。
なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る中空構造体1の外観の実施形態の一例を模式的に示す図である。
図2】A及びBは、本発明に係る中空構造体1のP-P線断面図である。AとBでは、異なる実施形態を示している。
図3】A及びBは、本発明に係る中空構造体1のQ-Q線断面図である。AとBでは、異なる実施形態を示している。
図4】実施例1に係る中空構造体を示す図面代用写真である。
図5】比較例4に係る中空構造体を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好適な形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0014】
1.中空構造体1
図1は、本発明に係る中空構造体1の外観の実施形態の一例を模式的に示す図である。また、図2のA及びBは、本発明に係る中空構造体1のP-P線断面図である。図2のAとBでは、異なる実施形態を示している。更には、図3のA及びBは、本発明に係る中空構造体1のQ-Q線断面図である。図3のAとBでは、異なる実施形態を示している。なお、図1図3で示している中空構造体1の長手方向の長さ、短手方向の長さ(=中空構造体1の外径)、中空部100の直径、中芯10の内径等は、あくまでも一例であり、単に説明し易いように描写しているに過ぎず、実際の長さとは一切関係はない。
【0015】
本発明に係る中空構造体1は、略円筒状又は略多角筒状であり、中芯10と、中芯10内の少なくとも一部に発泡樹脂部11と、を少なくとも備える。また、必要に応じて、栓12等を有していてもよい。
【0016】
本明細書において、「略円筒状」とは、具体的には、その断面が円形、又は楕円形などの扁平形状となる形状をいう。「略多角筒状」とは、具体的には、その断面が三角形、四角形などの多角形となる形状をいう。
【0017】
本発明に係る中空構造体1の用途は、海等に浮かべて海苔などの海産物養殖用支柱(上下方向、又は横方向(いかだ)で用いる場合も含む。)の他にも、金属製の中空パイプに代わる材料として、自動車部材、電子部品、農林資材、建築材、家具等の幅広い分野で利用されることが期待できる。
以下、各部位について詳細に説明する。
【0018】
(1)中芯10
中芯10は、略円筒状又は略多角筒状であり、中空部100を有し、且つ、樹脂である。具体的には、例えば、強化層のみからなっていてもよく、相互に密着した強化層と被覆層とからなっていてもよい。更には、相互に密着した内層と強化層と被覆層との三層構造からなっていてもよい。すなわち、中芯10は、一層構造、二層構造、三層構造、或いはそれ以上の層を有する構造であってもよい。なお、本発明では、必要に応じて、中芯の最外層に凹凸形状等が形成されていてもよい。
【0019】
本発明では、中芯10は、これらの中でも、相互に密着した強化層と被覆層とからなる二層構造、又は相互に密着した内層と強化層と被覆層との三層構造であることが好ましい。
【0020】
(1-1)一層構造の場合
一層構造の場合(図3のA参照)は、例えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用いた強化層からなる。該強化層は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を含浸させた強化用繊維束により形成される層である。本発明では、一層構造の場合、中芯10は強化層からなることが好ましい。また、本発明では、強化用繊維を合成樹脂で結着した繊維強化熱硬化性樹脂(FRP)や、強化用繊維に熱可塑性樹脂を含浸させた繊維強化熱可塑性樹脂(FRTP)等の繊維強化樹脂を用いることができる。
【0021】
強化用繊維束としては、例えば、連続長繊維束、繊維編組物(例えば、織物、編物、組物など)の形態を有する基材であることが好ましい。これらを用いることで、連続含浸性、被覆層の連続形成性が確保でき、生産性に優れた強化層を有する中芯10の製造が可能となる。
【0022】
強化用繊維束を構成する繊維としては、例えば、オレフィン系繊維、アラミド繊維、液晶ポリエステル(LCP)繊維等の有機繊維;ガラス繊維;炭素繊維等の無機繊維;チラノ繊維等のセラミック繊維;ボロン繊維、銅、ステンレス等の金属繊維;アモルファス繊維等を用いることができるが、本発明ではこれらに限定されない。また、本発明では、これらの混織物等を用いることもできる。
【0023】
ガラス繊維としては、例えば、ガラス繊維モノフィラメント、ガラス繊維ストランド、ガラス繊維ロービング、ガラス繊維ヤーン等の長繊維を用いることができる。また、ガラス繊維織物、ガラス繊維組物、ガラス繊維編物等のガラス繊維編組物をも適用可能である。なお、ガラス繊維は、エポキシシランカプリング剤、アクリルシランカップリング剤等の表面処理剤で表面処理を行ったものでもよい。また、ガラス繊維中のガラス組成としては、例えば、Eガラス、Sガラス、Cガラス等が挙げられる。また、ガラス繊維モノフィラメントの断面は円形でも、楕円形等の扁平形状でもよい。ガラス繊維ロービングとしては、例えば、直径3~100μmのガラス繊維モノフィラメントが100~2,000本束ねられたガラス繊維束を、10~200本更に束ねたもの等が挙げられる。
【0024】
炭素繊維としては、コールタールピッチや石油ピッチを原料にした「ピッチ系」と、ポリアクリロニトリルを原料とする「PAN系」と、セルロース繊維を原料とする「レーヨン系」の3種類があるが、本発明では、どの炭素繊維も用いることができる。
【0025】
強化用繊維束は、必要に応じて、周知の方法により所望の尺長に織り上げるか組み上げるか又は編み上げるか等の方法により調製しておくことができ、又は、長尺のものをロールに巻き取って使用してもよい。また、強化用繊維への樹脂の含浸性を高めるためや、強化用繊維中の水分を除去させるために、強化用繊維束を加熱してもよい。
【0026】
強化用繊維(束)の体積含有比率としては、例えば、強化層全体に対して20%以上80%以下、又は40%以上60%以下とすることができる。体積含有比率が20%未満であると、強化用繊維による補強効果が低くなる。逆に、体積含有比率が80%超であると、樹脂量が少ないために、曲げ強力に悪影響を生じる。
【0027】
強化層に用いられるマトリックス樹脂としての熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリブチレン(PB)等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PENp)、液晶ポリエステル(LCP)等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン(PS)、アクリロ二トリル-スチレン樹脂(AS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)、アクリロニトリル-アクリル-スチレン樹脂(AAS)、アクリロニトリル・エチレンプロピレンゴム・スチレン(AES)等のスチレン系樹脂;ポリウレタン等のウレタン樹脂等が挙げられる。また、その他にも、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性PPE、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)、変性PSU、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルニトリル(PEN)等が挙げられる。また、本発明では、これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0028】
強化層に用いられるマトリックス樹脂としての熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、不飽和物カルボン酸変性ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。また、本発明では、これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0029】
本発明では、これらの中でも、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂であることが好ましく、これらの中でも特に、汎用性、経済性等の観点から、不飽和ポリエステル樹脂が好ましい。また、不飽和ポリエステル樹脂は、モノマー成分としてスチレンを含み、強化層及び被覆層、又は内層、強化層及び被覆層の熱可塑性樹脂に化学的親和性を有するものを選択でき、熱硬化後において、これらの二層又は三層を密着一体化したものを用いることもできる。
【0030】
熱硬化性樹脂は、熱硬化触媒(硬化剤)、粘度調整のための炭酸カルシウムなど、必要に応じて、超微粒子シリカであるアエロジル(登録商標)などの揺変剤を添加混合した熱硬化性樹脂組成物として準備され、強化繊維に含浸され、最終的に熱硬化されてマトリックス成分を構成する。
【0031】
本発明では、後述する栓12を取り付ける場合は、強化層又は内層は、接着剤で接着できる樹脂又は熱で溶融することができる樹脂であることが好ましく、熱で溶融することができる樹脂であることがより好ましい。これにより、栓12を回転させ、中芯10との摩擦熱により溶着させることができるため、栓12加工に優れ、作業効率が向上する。
【0032】
なお、本発明では、後述する二層構造の場合、強化層の素材として、FRTPを用いることが好ましく、後述する三層構造の場合、強化層の素材として、FRPを用いることが好ましい。
【0033】
(1-2)二層構造の場合
二層構造の場合は、例えば、相互に密着した前記強化層と被覆層とからなっていてもよい。強化層については、上述した通りであるため、ここでは説明を割愛する。該被覆層は、前記強化層の最外側を熱可塑性樹脂により被覆する層である。なお、本発明では、二層構造の場合、中芯10は強化層と被覆層とからなることが好ましい。
【0034】
被覆層に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリブチレン(PB)等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PENp)、液晶ポリエステル(LCP)等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン(PS)、アクリロ二トリル-スチレン樹脂(AS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)、アクリロニトリル-アクリル-スチレン樹脂(AAS)、アクリロニトリル・エチレンプロピレンゴム・スチレン(AES)等のスチレン系樹脂;ポリウレタン等のウレタン樹脂等が挙げられる。また、その他にも、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性PPE、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)、変性PSU、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルニトリル(PEN)等が挙げられる。また、本発明では、これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0035】
本発明では、後述する栓12を取り付ける場合は、強化層は、熱で溶融することができる樹脂であることが好ましい。これにより、栓12を回転させ、中芯10との摩擦熱により溶着させることができるため、栓12加工に優れ、作業効率が向上する。
【0036】
(1-3)三層構造の場合
三層構造の場合(図3のB参照)は、例えば、相互に密着した内層と強化層と被覆層との三層構造からなっていてもよい。また、強化層の最外層を二層の被覆層により覆うことで、三層構造としてもよい。強化層及び被覆層については、上述した通りであるため、ここでは説明を割愛する。内層とは、強化層の内壁側に形成された樹脂製の層である。
【0037】
内層に用いられる樹脂としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、被覆層に用いられる熱可塑性樹脂と同様であるため、ここでは説明を割愛する。また、熱硬化性樹脂としても、従来公知のものを用いることができる。
【0038】
本発明では、後述する栓12を取り付ける場合は、内層は、熱で溶融することができる樹脂であることが好ましい。これにより、栓12を回転させ、中芯10との摩擦熱により溶着させることができるため、栓12加工に優れ、作業効率が向上する。
【0039】
(1-4)四層以上の場合
本発明では、中芯10の構造として、例えば、強度を更に付与したい場合など、必要に応じて、四層以上の構造を採用することもできる。この場合、例えば、上述した三層構造から、更に被覆層、内層、又は強化層の数を増やすなど、当業者により適宜設計できる。
【0040】
(2)発泡樹脂部11
発泡樹脂部11は、上述した中芯10内に備えられ、前記中芯10内の略円筒状又は略多角筒状の空間の一部を密閉する。本明細書において、「密閉」とは、中芯10内への水の浸入を防ぐことを指す。また、本明細書では、単に、「水」と表記しているが、これには、海水、河川水、湖水、地下水、雨水、工業用水、上水、中水、下水等の概念も含まれる。
【0041】
前記発泡樹脂部11は、前記中芯10内の少なくとも一端付近が密閉されていることが好ましい。これにより、例えば、中芯10内の中央付近で密閉するよりも、生産性に優れる。また、上述したように、横方向(いかだ)に浮かべて中空構造体1を用いる場合などには、中芯10内の両端付近が密閉されていることが好ましい。なお、本明細書において、「付近」とは、図2のAに示すように、中芯10の端部ギリギリに発泡樹脂部11が充填されている場合や、図2のBのように、端部(栓12がある場合は、栓12)から数cm(例えば、1cm~10cm)離れて発泡樹脂部11が充填されている場合を含む概念である。
【0042】
本発明に係る中空構造体1において、発泡樹脂部11は、図1及び図2に示すように、中芯10の内壁側にのみ存在する。なお、複数層構造で構成された中芯10の場合は、発泡樹脂部11は、最内壁にのみ存在することを意味する。これにより、中空構造体1の意匠性の悪化を防ぎ、また、中空構造体1を束にした際などに嵩張ることを防ぐことができる。
【0043】
発泡樹脂部11を形成する発泡樹脂フォームとしては、例えば、熱可塑性樹脂と、発泡剤と、により形成することができる。また、本発明の効果に影響を与えない限り、その他の任意の成分を含んでいてもよい。
【0044】
熱可塑性樹脂としては、例えば、「(1)中芯10」で記載したものが挙げられるが、これらの中でも、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリウレタン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)等が挙げられる。また、本発明では、これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0045】
発泡剤としては、例えば、揮発性発泡剤、分解型発泡剤等が挙げられる。
揮発性発泡剤としては、例えば、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル、ケトン等が挙げられる。
分解型発泡剤としては、例えば重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、アジド化合物、ホウ水素化ナトリウム等の無機系発泡剤;アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウム、ジニトロソペンタメチレンテトラミン等の有機系発泡剤が挙げられる。
その他にも、炭酸ガス、窒素、空気等のガスを発泡剤として用いてもよい。
また、本発明では、これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0046】
その他の任意成分としては、例えば、安定剤、滑剤、加工助剤等が挙げられるが、本発明ではこれらに限定されない。
【0047】
本発明では、発泡樹脂フォームとして、栓12を取り付ける場合は、熱で溶融することができる樹脂であることが好ましい。具体的には、例えば、発泡ウレタンフォームとして、軟質又は硬質ポリウレタンフォームを挙げることができる。軟質又は硬質ポリウレタンフォームは、ポリオール成分とイソシアネート成分とを主反応成分として、これらの反応熱により発泡剤を気化し、各気泡が独立した小さな独立孔となった構造を有している。発泡成形された熱硬化性ポリウレタンフォームであり、他の合成樹脂フォームに比較して、種々の形状に賦形できるという特徴を有する。これらの中でも、硬質ポリウレタンフォームは、外部からの水圧の影響を受けにくい点でより好ましい。
【0048】
また、本発明では、発泡樹脂フォームに、市販品のものを用いてもよい。市販品としては、スプレータイプのものが挙げられ、一般的に、スプレータイプのものは、硬化・発泡前の組成物を注入後、乾燥させることで、発泡樹脂フォームを形成することができる。具体的には、ジェフコム株式会社製の発泡ウレタン充填剤等が挙げられるが、本発明ではこれに限定されない。
【0049】
本発明において、発泡樹脂部11は、発泡倍率が3倍以上である。また、発泡倍率が5倍以上であることが好ましい。発泡倍率が3倍未満であると、中芯10内に硬化・発泡前の発泡樹脂フォームを形成する組成物を注入後、該フォームが中芯10内で流動してしまい、充填が十分にできず、密閉することが困難である。
【0050】
また、本発明において、発泡樹脂部11は、発泡倍率が50倍以下であることが好ましく、40倍以下であることがより好ましい。発泡倍率が50倍超であると、中芯10の両端から注入された発泡樹脂フォームが溢れ出ることにより、発泡樹脂部11の位置制御が難しくなり、また、屑が増えるなどの無駄や不具合が生じる。すなわち、発泡倍率が高すぎると、発泡により中芯10から溢れる発泡樹脂フォームの量が多くなり、取り扱い難くなる。
【0051】
本発明では、発泡樹脂部11の少なくとも一部に独立孔が形成されていることが好ましい。具体的には、発泡樹脂部11における独立孔は、発泡樹脂部11全体の体積に対して50%以上の体積を有していることが好ましく、60%以上の体積を有していることがより好ましく、70%以上の体積を有していることが更に好ましい。本発明では、独立孔以外の部分に、気泡が連続することにより形成された孔が連続した部分があってもよい。
【0052】
発泡樹脂部11が独立孔を有する場合、前記独立孔の直径は、20μm以上20000μm以下であることが好ましい。20μm未満であると、中芯10から発泡樹脂フォームが溢れる可能性が高く、取り扱い難くなる。一方で、20000μm超であると、密閉することが困難となる恐れがある。
【0053】
発泡樹脂部11の一端における長手方向の長さは、中空構造体1の長手方向の長さを1とすると、0.01~0.5であることが好ましく、0.03~0.3であることがより好ましい。0.01以上とすることにより、十分に密閉することができる。また、0.5以下とすることにより、軽量化や、コスト削減に繋がる。
【0054】
(3)栓12
栓12は、本発明において、必須の構成ではないが、必要に応じて、取り付けることができる。
【0055】
栓12を形成する素材としては、例えば、熱可塑性樹脂が挙げられる。栓12に用いられる熱可塑性樹脂としては、被覆層に用いられる熱可塑性樹脂と同様であるため、ここでは説明を割愛する。
【0056】
本発明では、栓12は、熱で溶融することができる樹脂であることが好ましい。これにより、栓12を回転させ、中芯10との摩擦熱により溶着させることができるため、栓12加工に優れ、作業効率が向上する。
【0057】
栓12の形状としては、特に限定されず、用途に応じて、適宜設計できる。例えば、中芯10の端部の断面形状を視た場合に、略正方形状、略長方形状、略コの字形状、略U字形状等が挙げられるが、本発明ではこれらに限定されない。また、例えば、図2のA及び図2のBのように、中芯10の内側に一部分を押し込み、それ以外の部分は中空構造体1の直径と同様の大きさとして外部に出ていてもよい。更には、栓12は、少なくとも一部に凹凸形状、嵌合機構等を有していてもよい。
【0058】
2.中空構造体1の製造方法
本発明に係る製造方法は、上述した本発明に係る中空構造体1の製造方法であって、前記中芯10内に対し、発泡樹脂フォームを充填する工程を少なくとも行う。また、必要に応じて、その他の工程を行ってもよい。
以下、本発明に係る製造方法について、詳細に説明する。
【0059】
(1)中芯10を製造する工程
本工程では、中芯10を製造する。本工程は、必須の工程ではなく、例えば、相互に密着した強化層と被覆層とからなる二層構造の場合には、本発明に係る製造方法において行われてもよい。本工程では、まず、強化用繊維束を引取可能とする。具体的には、強化用繊維束を所要本数クリールより引き出し、必要に応じて、強化用繊維束に張力調整手段を介して、未昇温の予熱装置内に通し、強化用繊維束群を引出し、冷却水を満たしていない冷却槽を経て、引取装置により強化用繊維束群を引取可能とする。
【0060】
次いで、引取装置を駆動して、繊維強化用繊維束群を所定の速度で引取りながら、強化用繊維束に対して張力調整手段を介して1本当たり所定の張力を負荷し、予熱装置を昇温して強化用繊維束を加熱しつつ溶融押出機を駆動して、クロスヘッドダイに熱可塑性樹脂を供給し、含浸槽内にて各強化用繊維束と溶融した熱可塑性樹脂を接触させ、各強化用繊維束に熱可塑性樹脂を含浸させて、含浸槽内絞りで径を整えながら、加圧下にて長繊維強化用繊維束を線状物として金型引抜加工する。なお、本工程にて作製される強化層全体に対する前記強化用繊維の体積含有比率としては、当業者により適宜自由に設定される。
【0061】
次いで、熱可塑性樹脂を含浸させた強化用繊維束を冷却し、強化層を作製する。具体的には、例えば、風冷、水冷、又はミスト噴射からなる群より選ばれるいずれか1つ以上の方法により冷却し、強化層を作製する。
【0062】
次いで、作製された強化層の最外層に熱可塑性樹脂を被覆し、被覆層を作製する。具体的には、溶融押出機を駆動して、クロスヘッドダイに熱可塑性樹脂を供給し、強化層の最外層に該熱可塑性樹脂を接触させて、加圧下にてロッド状となるように押出被覆する。次いで、従来公知の方法により冷却固化させ、中芯10を作製する。
【0063】
(2)発泡樹脂フォームを充填する工程
本工程では、中芯10内に、発泡樹脂部11を形成する発泡樹脂フォームを充填する。充填する方法としては、従来公知の方法により行われてよいが、例えば、硬化・発泡前の組成物を吐出する。より具体的には、発泡樹脂フォームを形成する組成物が含有するスプレーを、中芯10内に注入する方法が挙げられるが、本発明ではこれに限定されない。注入後、前記組成物は膨らみ、数時間(例えば、5時間~10時間など)乾燥させることで、発泡樹脂フォームとなり、中芯10内を密閉する。本工程おいて、発泡樹脂フォームは、意匠性の観点から、好ましくは中芯10内の内壁(中芯10が複数層構造で構成されている場合は最内壁)にのみ存在することが好ましい。また、発泡樹脂フォームを充填する位置は、好ましくは中芯10の端部(一端、又は両端)付近である。
【0064】
(3)栓12取り付け工程
本工程では、中芯10に対して栓12を取り付ける。本工程は、必須の工程ではなく、例えば、発泡樹脂部11のみにより、中芯10内を密閉してもよいが、本発明に係る製造方法において行われてもよい。本工程では、中芯10の一端又は両端に、産業用ロボット等を使用して栓12を回転させ、中芯10との摩擦熱により溶着させる。この際の回転数としては、例えば、500rpm~3000rpmとして、栓12の中芯10への押し込み長さは10mm~50mmとすることができるが、本発明ではこれに限定されない。
【実施例0065】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0066】
<実施例1>
中空部は、三層構造体を使用した。中空部を形成している繊維強化熱硬化樹脂としてはガラス繊維ロービング(日東紡績株式会社製、RS-220RL-510H)に不飽和ポリエステル樹脂(日本ユピカ株式会社製、ユピカ(商標登録)3464)を含浸させて硬化した強化層に被覆層、及び内層にアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(東レ株式会社製、トヨラック(商標登録)600-309N)を使用した。中空部の両端に、発泡倍率が約30倍の硬質発泡ウレタンフォームを形成するスプレー(ジェフコム株式会社製、商品名:アワフォーム AW-500FR)を約1秒間注入し、乾燥させた。これにより、内径35mmの中空部に長さ約25cmの硬質発泡ウレタンフォームが充填された。硬化は室温で約8時間乾燥した。その後、中空部の両端に産業用ロボットを使用して熱可塑性樹脂製の栓を回転させ、中空部との摩擦熱により溶着させ、中空構造体を10本作製した。なお、回転数は2000rpmとして、栓の中空部への押し込み長さは約32mmとした。得られた10本の中空構造体に重りを載せて、水を入れた浴槽に沈めた。二日後に各中空構造体を取り出し、中空部内に水の浸入がないかを目視にて確認した。具体的には、各中空構造体を長手方向に割り、目視にて水の有無を確認した。その結果、10本全ての中空構造体に水の浸入は認められなかった。
【0067】
<比較例1>
中空部の両端に、産業用ロボットを用いて熱可塑性樹脂製の栓を回転させながら摩擦熱により溶着させ、中空構造体を10本作製した。なお、ここでの回転数及び栓の中空部への押し込み長さは、実施例1と同様とした。得られた10本の中空構造体に重りを載せて、水を入れた浴槽に沈めた。二日後に各中空構造体を取り出し、中空構造体内に水の浸入がないかを目視にて確認した。なお、確認の具体的な手法については、実施例1と同様である。その結果、10本の中空構造体中、2本の中空構造体の中空部内に水の浸入が認められた。
【0068】
<比較例2>
中空部の両端に対し、接着剤(コニシ株式会社製、商品名:ボンド VP-2000)を塗布した熱可塑性樹脂製の栓をハンマーで叩いて取り付けて中空構造体を10本作製した。得られた10本の中空構造体に重りを載せて、水を入れた浴槽に沈めた。二日後に各中空構造体を取り出し、中空部内に水の浸入がないか目視にて確認した。なお、確認の具体的な手法については、実施例1と同様である。その結果、10本の中空構造体中、1本の中空構造体の中空部内に水が認められた。また、接着剤の作業時には、臭気が気になり、熱可塑性樹脂製の栓を挿入するときには、周囲に接着剤が付着してしまい、汚れてしまった。
【0069】
<比較例3>
中空部の両端から、接着剤(コニシ株式会社製、商品名:ボンド VP-2000)を塗布したゴム栓を中空部内に押し込み乾燥させた。その後、比較例1と同様の方法により、中空部の両端に熱可塑性樹脂製の栓を溶着させた中空構造体を10本作製した。得られた10本の中空構造体に重りを載せて、水を入れた浴槽に沈めた。二日後に各中空構造体を取り出し、中空部内に水の浸入がないか目視にて確認した。なお、確認の具体的な手法については、実施例1と同様である。その結果、10本全ての中空構造体に水の浸入は認められなかったが、本比較例3では、ゴム栓及びプラスチック製の栓の両方を、接着剤を用いて取り付けなければならず、生産効率が悪かった。また、上述したように、接着剤の作業時には、臭気が気になり、プラスチック製の栓を挿入するときには、周囲に接着剤が付着してしまい、汚れてしまった。更には、ゴム栓を挿入するのには力を加える必要があり、挿入作業には手間がかかった。
【0070】
<比較例4>
実施例1の硬質発泡ウレタンフォームの発泡倍率を、用いる硬質発泡ウレタンのスプレー(株式会社エービーシー商会製、商品名:インサルパック(登録商標)GS360ロング)に種類を変更することで、約2倍に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、中空構造体を10本作成した。得られた10本の中空構造体に重りを載せて、水を入れた浴槽に沈めた。二日後に各中空構造体を取り出し、中空部内に水の浸入がないかを目視にて確認した。なお、確認の具体的な手法については、実施例1と同様である。その結果、10本の中空構造体中、4本は中空部内に水の浸入が認められた。
【0071】
<考察>
図4は、実施例1に係る中空構造体を示す図面代用写真である。図4のAにおいて、上から2本は中空構造体であり、上から3本目は、中空構造体を長手方向に割った一方であり、上から4本目は、もう一方である。図4のAからも分かるように、実施例1では、中空部内の両端に発泡樹脂部及び栓を備えている。図4のBは、実施例1に係る中空構造体の一端の拡大図である。
【0072】
図5は、比較例4に係る中空構造体を示す図面代用写真である。図5のAにおいて、上から2本は中空構造体であり、上から3本目は、中空構造体を長手方向に割った一方であり、上から4本目は、もう一方である。図5のAからも分かるように、比較例4では、中空部内で発泡樹脂部が移動してしまい、密閉の機能を果たしていない。図5のBは、比較例4に係る中空構造体の一端の拡大図である。これらの拡大図においても、たとえ栓があったとしても、発泡倍率が低いと水が浸入することを回避することができない。
【0073】
以上のことから、中空部を有する樹脂製の中芯を少なくとも備えた略円筒状又は略多角筒状の中空構造体であって、前記中空構造体は、中空部内の少なくとも一部に発泡樹脂部を備え、前記発泡樹脂部は、前記中空部内の略円筒状又は略多角筒状の空間の一部を密閉し、前記発泡樹脂部は、発泡倍率が3倍以上である実施例1は、比較例1、比較例2、及び比較例4と比較して、中空部内への水の浸入を回避することができた。また、比較例3は、実施例1と同様に水の浸入を回避できたものの、ゴム栓及プラスチック製の栓の両方を、接着剤を用いて取り付けなければならず、接着剤の周囲への付着や、挿入時の手間などを鑑みると、非常に作業効率が悪く、大量生産には向かない。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によれば、生産性が向上した、中空構造体及びその製造方法を提供することができる。したがって、生産性に優れるという特徴を生かし、金属製の中空パイプに代わる材料として、海等に浮かべて海苔などの海産物養殖用支柱(上下方向、又は横方向(いかだ)で用いる場合も含む。)の他、金属製の中空パイプに代わる材料として、自動車部材、電子部品、農林資材、建築材、家具等の幅広い分野で利用されることが期待できる。
【符号の説明】
【0075】
1:中空構造体
10:中芯
100:中空部
11:発泡樹脂部
12:栓
図1
図2
図3
図4
図5