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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094976
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】ロードセル
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/22 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
G01L1/22 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211925
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000146021
【氏名又は名称】株式会社昭和測器
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】三上 浩
(72)【発明者】
【氏名】登坂 雄造
【テーマコード(参考)】
2F049
【Fターム(参考)】
2F049BA17
2F049DA01
(57)【要約】
【課題】 荷重以外の応力による影響を少なくした高精度のロードセルを得る。
【解決手段】 起歪体11は一体の金属ブロックから切削されている。荷重受部12の周囲に環状の枠体部13が配置され、荷重受部12と枠体部13間に歪みゲージ17を貼付した第1の可動梁部14が設けられている。第1の可動梁部14の一端は荷重受部12に連結され、他端は枠体部13上に設けた第2の可動梁部21を介して枠体部13に連結されている。第2の可動梁部21は長手方向が第1の可動梁部14に対して直交するように配置され、中央部23に第1の可動梁部14が接続されている。第2の可動梁部21は、その両側の端縁22において枠体部13と結合され、中央部23と両側の端縁22との間に、それぞれ2枚の板体24a、24bが掛け渡されて上下方向に貫通する溝部25が設けられ、可撓性を有する撓み機構とされている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一体の金属製ブロックを加工して形成した起歪体を有し、該起歪体は、中心部に荷重受部、外側周囲に環状の枠体部を配置し、孔部を設けると共に歪みゲージを貼付した複数個の角柱状の第1の可動梁部を前記荷重受部から外側に向けて水平かつ放射状に突出し、前記枠体部上に前記第1の可動梁部の長手方向と直交する方向に第2の可動梁部を配置し、該第2の可動梁部の長手方向の中央部に前記第1の可動梁部の端部を連結したロードセルにおいて、
前記第2の可動梁部は、断面を角型とし、前記枠体部上に接合した両側の端縁と前記中央部との間に撓み機構をそれぞれ設けたことを特徴とするロードセル。
【請求項2】
前記撓み機構は、前記中央部と前記両側の端縁とのそれぞれの間に、2枚の板体を平行に掛け渡し、前記2枚の板体間に上下方向に貫通したスリット状の溝部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のロードセル。
【請求項3】
前記第1の可動梁部は3個とし、前記荷重受部から前記枠体部に向けて放射状に配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載のロードセル。
【請求項4】
前記第1の可動梁部はロバーバル機構とし、上下面の薄肉梁部に前記歪みゲージを貼付したことを特徴とする請求項1又は2に記載のロードセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高さが低く薄型でありながら、加工が容易で高精度なロードセルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1においては、例えば図4の斜視図に示すように、ロードセルの起歪体11は、金属ブロックから切削加工により切り出されている。起歪体11の中心に位置する円柱状の荷重受部12の周囲に環状の枠体部13が配置され、荷重受部12と枠体部13間には、角柱状の例えば3個の可動梁部14が放射状に掛け渡されている。
【0003】
各可動梁部14の一端は荷重受部12に直接連結され、他端は枠体部13に設けた壁部15を介して枠体部13に接合されている。この壁部15は可動梁部14に対して直交するような向きにして枠体部13上に配置され、その両側の端縁の下部において枠体部13と一体にされており、壁部15は可動梁部14の方向に可撓性を有している。
【0004】
可動梁部14には、水平方向に横切る楕円形の孔部16が穿孔され、ロバーバル機構が構成されている。孔部16の上下面の薄肉梁部には、それぞれ歪みゲージ17が貼り付けられている。なお、荷重受部12には負荷荷重に連結するためのねじ孔18が穿孔されている。
【0005】
荷重受部12に負荷荷重を上下方向に掛けると、荷重は3等分され、各可動梁部14において、ホイートストンブリッジ回路を構成する歪みゲージ17によって荷重を測定することができるので、各歪みゲージ17の出力を加算すればよい。この場合に可動梁部14には、荷重に比例して発生する曲げ歪み以外の張力による変形が生ずる。この変形はヒステリシスに影響を与えるが、枠体部13上に設けた壁部15が可動梁部14の方向に撓むことによりこの余分な変形が吸収されるので、歪みゲージ17の出力はこのヒステリシスの影響を受けずに、荷重を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許公報第2962703号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、この従来のロードセルは、図5に示すように、荷重受部12に上方からの荷重Faを加えた場合に、壁部15の両下端部が固定され、中間部が可撓性を有するので、壁部15の中央部上部には可動梁部14方向に圧縮応力、下部には引張応力が発生し、壁部15の長手方向の軸線を中心とする矢印のような回転モーメントMaが生ずる。また、図6に示すように、荷重受部12に下方からの荷重Fbを加えた場合に、壁部15には矢印のような回転モーメントMbが同様に発生する。これらの回転モーメントMは歪みゲージ17の出力に加わって、測定精度を低下させる原因となる。
【0008】
本発明の目的は、上述の課題を解消し、歪みゲージを貼り付けた第1の可動梁部に加わる回転モーメントの作用を減少すると共に、余分な変形ヒステリシスを効果的に吸収するために、可撓板部を用いた撓み機構を採用することにより、高精度の出力が得られるロードセルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係るロードセルは、一体の金属製ブロックを加工して形成した起歪体を有し、該起歪体は、中心部に荷重受部、外側周囲に環状の枠体部を配置し、孔部を設けると共に歪みゲージを貼付した複数個の角柱状の第1の可動梁部を前記荷重受部から外側に向けて水平かつ放射状に突出し、前記枠体部上に前記第1の可動梁部の長手方向と直交する方向に第2の可動梁部を配置し、該第2の可動梁部の長手方向の中央部に前記第1の可動梁部の端部を連結したロードセルにおいて、前記第2の可動梁部は、断面を角型とし、前記枠体部上に接合した両側の端縁と前記中央部との間に撓み機構をそれぞれ設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るロードセルは、第1の可動梁部と枠体部間に第2の可動梁部を配置し、第2の可動梁部の機能により、精度の良い計測値が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例のロードセルの斜視図である。
図2】平面図である。
図3】荷重が加わった場合の第2の可動梁部の説明図である。
図4】従来例のロードセルの斜視図である。
図5】従来例のロードセルに荷重が上方から加わった状態の説明図である。
図6】従来例のロードセルに荷重が下方から加わった状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を図1図3に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は本実施例のロードセルの斜視図、図2は平面図である。なお、従来例と同一の符号は同一の部位を示している。
【0013】
起歪体11は、鋼、アルミニウム等から成る一体の金属ブロックを、旋盤、フライス盤等によって切削加工をして形成されている。起歪体11の中心に上下方向に配置された円柱状の荷重受部12の周囲に、環状の枠体部13が離隔して配置され、荷重受部12と枠体部13間には、角柱状の例えば3個の第1の可動梁部14が放射状に掛け渡されている。
【0014】
各第1の可動梁部14の一端は、荷重受部12に直接に連結されているが、他端は第2の可動梁部21を介して枠体部13に連結されている。第2の可動梁部21は第1の可動梁部14の長手方向に対し直交するように配置され、枠体部13上の3個所に設けられた断面角型の長形部材である。
【0015】
第2の可動梁部21の両側の端縁22の下部は、枠体部13に一体に接合されており、端縁22間の中央部23を含む中間部は枠体部13から上方に離隔されており、第2の可動梁部21の中央部23に第1の可動梁部14の他端が接合されている。
【0016】
第2の可動梁部21の中央部23と両側の端縁22間には、それぞれ撓み機構が構成されており、この撓み機構では板厚方向に可撓性を有する2枚の平行な板体24a、24bが間隙をおいて対向して配列されている。つまり、2枚の板体24a、24bの間には、上下方向に貫通するスリット状の溝部25が形成されている。
【0017】
第1の可動梁部14のロバーバル機構を構成する孔部16の上下面の薄肉梁部にはそれぞれ計4個の歪みゲージ17が貼付されている。歪みゲージ17に接続された図示しないリード線は第1の可動梁部14に沿って布線され、4個の歪みゲージ17によりホイートストンブリッジ回路が構成されているが、下部の歪みゲージ17は図示を省略している。
【0018】
なお、荷重受部12には負荷荷重に連結するためのねじ孔18が穿孔されており、枠体部13には起歪体11を他部材に固定するための複数個の透孔19が形成されている。
【0019】
実施例の第2の可動梁部21の寸法を例示すると、枠体部13の直径は84mmであり、第2の可動梁部21の水平方向の長さは46mm、水平方向の厚みは5mm、上下方向の高さは8mm、板体24a、24bの長さは12.5mm、厚みは各1mm、板体24a、24b同士の間隙である溝部25の内幅は3mmである。
【0020】
なお、図4に示す従来例の壁部15の長さは46mm、厚みは2mm、上下方向の高さは8mmである。
【0021】
荷重受部12を介して、この起歪体11に測定すべき荷重を負荷すると、荷重は3等分され、荷重受部12と枠体部13との間に介在する第1の可動梁部14は薄肉梁部が変形し、貼付された歪みゲージ17によって加わる荷重を測定することができ、3個の第1の可動梁部14の歪みゲージ17による出力を加算すればよい。
【0022】
このとき、図3に誇張して示すように、荷重受部12に荷重Fが加わると、第2の可動梁部21は2枚の板体24a、24bによる撓み機構によって、第1の可動梁部14の方向に効果的に中央部23が撓むことが可能であり、従来例の壁部15と同様に、荷重による曲げ歪み以外の張力による変形の影響を吸収することができる。
【0023】
この場合に、第2の可動梁部21の板体24a、24bの厚みは各1mmで合計2mmであり、従来例の厚み2mmと一致するが、第2の可動梁部21は撓み易い板厚1mmの板体24a、24bによる撓み機構を採用しているために、従来例よりも柔軟性があり、余分な張力を十分に吸収することが可能となる。
【0024】
また、従来例のロードセルにおいては、前述したように、壁部15がその長手方向の軸線を中心に回転し易く、この回転モーメントMが歪みゲージ17の出力に相乗し測定値に影響を及ぼすことが避けられなかった。しかし、本実施例に係るロードセルでは、第2の可動梁部21は第1の可動梁部14の方向に5mmの肉厚であり、従来例の2mmの肉厚に比較して十分に大きく、上述の回転モーメントMは発生しても、その大きさは肉厚に反比例して小さくなり、従来例の2/5程度となる。
【0025】
従って、本実施例の第2の可動梁部21は、撓み機構による従来例以上の可撓性を有しながら、発生する回転モーメントMが従来例よりも小さくなるので、その分測定精度が向上する。
【0026】
起歪体11において、第1の可動梁部14、第2の可動梁部21は枠体部13の上方に位置しているので、これらの可動梁部14、21は他部位に阻害されることなく、必要な切削加工が可能となる。
【0027】
また本実施例において、第1の可動梁部14はロバーバル構造としたことを説明したが、孔部16を水平方向に貫通させなくとも、孔部16の中間を行き止まり状態とし、この行き止まり部に歪みゲージ17を貼付し、第1の可動梁部14における剪断応力を測定して、負荷荷重を求めることもできる。
【0028】
なお、第1の可動梁部14は3方向だけでなく、対向する2方向や、十字形の4方向やその他の複数方向に掛け渡しをすることもできる。これらの場合にも、第2の可動梁部21は第1の可動梁部14ごとに設けることになる。
【符号の説明】
【0029】
11 起歪体
12 荷重受部
13 枠体部
14 第1の可動梁部
16 孔部
17 歪みゲージ
21 第2の可動梁部
22 端縁
23 中央部
24a、24b 板体
25 溝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6