(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094982
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】作業機械の周辺監視システム及び作業機械
(51)【国際特許分類】
B66C 13/00 20060101AFI20240703BHJP
B66C 15/00 20060101ALI20240703BHJP
B66C 23/88 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B66C13/00 D
B66C15/00 E
B66C23/88 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211937
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】大平 祐生
【テーマコード(参考)】
3F204
3F205
【Fターム(参考)】
3F204AA04
3F204AA07
3F204CA05
3F204DC06
3F205AA05
3F205CA01
3F205DA01
(57)【要約】
【課題】位置計測装置の位置ずれの補正を容易に行える作業機械の周辺監視システムを提供する。
【解決手段】作業機械の周辺監視システムは、作業機械に設置されて物体の位置を計測する位置計測装置と、作業機械に設置されて位置計測装置によって計測される位置特定部材と、位置計測装置による位置特定部材の計測結果に基づいて、位置計測装置と位置特定部材との位置情報を取得する取得部と、取得部によって取得された位置情報に基づいて、位置計測装置の位置及び姿勢を特定する特定部と、を備えている。位置特定部材は、作業機械に着脱可能に設置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の位置を計測する位置計測装置と、
作業機械に対して設けられる位置特定部材と、
前記位置計測装置によって前記位置特定部材の位置情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記位置情報に基づいて、前記位置計測装置の位置特定する特定部と、を備え、
前記位置特定部材は、前記作業機械に着脱可能に設置される、
作業機械の周辺監視システム。
【請求項2】
作業機械のカウンタウエイトが配置される端部側を後方とすると、前記位置特定部材は、前記位置計測装置よりも前方側に配置される、
請求項1に記載の作業機械の周辺監視システム。
【請求項3】
前記位置特定部材は、前記作業機械の複数個所に設置され、
前記位置計測装置の計測範囲は、複数個所の位置特定部材の位置を含む
請求項1に記載の作業機械の周辺監視システム。
【請求項4】
前記位置計測装置は、前記位置計測装置を中心に360°計測可能である、
請求項2または3に記載の作業機械の周辺監視システム。
【請求項5】
前記位置計測装置は、前記作業機械に着脱可能に設置される、
請求項1に記載の作業機械の周辺監視システム。
【請求項6】
前記位置計測装置は、上部旋回体のメインフレームに設置される、
請求項5に記載の作業機械の周辺監視システム。
【請求項7】
請求項1に記載の作業機械であって、
前記位置特定部材が着脱可能に設置される設置部を有する作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は 作業機械の周辺監視システム及び作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業機械は、警戒区域内の物体(人や障害物)を検知するため、位置計測装置(LiDAR等のセンサ)が設置されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、作業機械は、作業によって生じる振動や衝撃を受けて、位置計測装置が初期の設置位置に対してずれ(位置ずれ及び/又は姿勢ずれ)を生じると、位置計測装置の検知結果にずれが生じるため、位置計測装置のずれを補正する必要がある。
【0005】
本発明は、位置計測装置のずれの補正をより容易に行える作業機械の周辺監視システム及び作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る作業機械の周辺監視システムは、物体の位置を計測する位置計測装置と、
作業機械に対して設けられる位置特定部材と、前記位置計測装置によって前記位置特定部材の位置情報を取得する取得部と、前記取得部によって取得された前記位置情報に基づいて、前記位置計測装置の位置及び姿勢を特定する特定部と、を備えている。そして、前記位置特定部材は、前記作業機械に着脱可能に設置される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、位置計測装置のずれの補正をより容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る作業機械としてのクレーンの側面図である。
【
図3】クレーンの周辺監視システムを示すブロック図である。
【
図4】位置計測装置と位置特定部材との関係を示す図である。
【
図5】位置計測装置を使用した障害物検出のフローチャート図である。
【
図6】位置計測装置と位置特定部材との関係の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る作業機械の周辺監視システムの実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
(クレーンの構成)
図1は、作業機械としてのクレーン1の側面図である。
図2は、
図1に示したクレーン1の裏面図である。
【0011】
図1に示すように、クレーン1は、いわゆる移動式のクローラクレーンである。具体的に、クレーン1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とを備えている。
なお、以下では、クレーン1の搭乗者から見た前後左右方向をクレーン1の前後左右方向として説明する。また、特に言及しない場合には、原則として、下部走行体2は上部旋回体3と前後方向が一致した状態(基準姿勢とする)にあるものとして、クレーン1の前後方向を説明する。また、クレーン1を水平面に置いた状態における上下方向を鉛直方向という場合もある。
【0012】
上部旋回体3の前側には、ブーム4が起伏可能に取り付けられている。上部旋回体3の後部には、ブーム4及び吊荷の重量バランスをとるカウンタウエイト5が取付けられている。上部旋回体3の右側前部には、オペレータが着座してクレーン1の操縦を行うキャビン6が配置されている。
【0013】
ブーム4の起伏動作は、図示しない起伏ウィンチによるワイヤロープ(起伏ロープ)7の巻き取り又は巻き出しにより行われる。ブーム4の先端(上端)には巻上ロープ8の一端がフック10に接続されており、フック10がブーム4の先端から吊下されている。巻上ロープ8の他端は上部旋回体3上の図示しない巻上ウィンチに巻回されており、巻上ウィンチの駆動によってフック10が昇降する。
【0014】
図1及び
図2に示すように、上部旋回体3の下面側に位置するメインフレーム11には、旋回ベアリング12を避ける位置に位置計測装置としてのセンサ13(例えば、360°計測可能な全周LiDAR)と複数の位置特定部材14(物体としての第1から第3位置特定部材14a~14c)が着脱可能に取り付けられている。複数の位置特定部材14(第1~第3位置特定部材14a~14c)は、それぞれメインフレーム11に形成されたねじ穴50(設置部50a~50c)に螺合するようにして着脱可能に取り付けられている。なお、設置部は、位置特定部材14と螺合するねじ穴50に限られず、着脱可能に取り付けられる構造であれば他の構造でもよい。センサ13は、メインフレーム11の下面の垂直方向に延びるセンサ中心軸15の周りを360°計測できるようになっている。そして、センサ13は、下部走行体2と上部旋回体3との間に生じる空間からクレーン1の外部空間にレーザー光を照射し、周囲の物体の位置情報(周囲の物体の1点の位置情報だけでなく、周囲の物体の位置と形状(姿勢)を含めた3次元形状情報)を広範囲に計測する。また、センサ中心軸15は、上部旋回体3の旋回中心16の軸心と平行の回転軸心である。また、第1~第3位置特定部材14a~14cは、同一形状の丸棒状部材であり、メインフレーム11の表面から突出している。メインフレーム11の表面から突出しているため、そのままではクレーンの輸送時の輸送幅や輸送高さの制限に影響しやすい。しかし、複数の位置特定部材14は、着脱可能で、輸送時には外すことができるため、輸送幅や輸送高さの制限に影響しにくい。なお、センサ13をメインフレーム11の下面に設置する場合は、センサ13がメインフレーム11から外されにくいものの、クレーン1の組立時に後付けされるため、センサ13のずれを補正する意義が大きい。また、位置特定部材14は、同一形状の丸棒状部材に限定されるものではないが、その中心軸位置を正確にセンサ13で計測するためには、同一形状の丸棒状部材が好ましい。
【0015】
図2に示すように、センサ13は、上部旋回体3のメインフレーム11の後端部寄りの位置で且つ上部旋回体3の旋回中心16を通り前後方向に延びる中心線17上に配置される。そして、この
図2において、センサ中心軸(回転軸心)15をセンサ13の基準位置18とし、センサ13の姿勢を示す姿勢線20が上部旋回体3の旋回中心16を通り前後方向に延びる中心線17に沿って位置している場合をセンサ13の基準姿勢19とする。なお、センサ13は、カウンタウエイト5が搭載されるベースウエイト5Aの下面に着脱可能に取り付けてもよい。ベースウエイト5Aは、クレーン1の輸送時にメインフレーム11から外されるものもあるため、センサ13のずれが生じやすく、センサ13のずれを補正する意義が大きい。また、ベースウエイト5Aの下面にセンサ13を設置する場合には、メインフレーム11にセンサ13を設置する場合と比較し、センサ13がより一層クレーン1の後端側に位置することになり、センサ13がクレーン11の後方側の周囲をより一層計測し易くなる。また、センサ13は、クレーン1の周囲の計測対象に応じて設置位置を変更でき、カウンタウエイト5や上部旋回体3に設置してもよい。
【0016】
また、
図2に示すように、第1位置特定部材14aは、上部旋回体3の旋回中心16を通り前後方向に延びる中心線17上で且つセンサ13と旋回ベアリング12との間の位置に配置されている。また、第2位置特定部材14bと第3位置特定部材14cは、上部旋回体3の旋回中心16を通り前後方向に延びる中心線17に対して線対称の関係にあり、第1位置特定部材14aと旋回ベアリング12との間の位置に配置されている。そして、第1から第3位置特定部材14a~14cは、第1位置特定部材14aを頂点とする二等辺三角形を描くように配置されている。また、位置特定部材14(第1から第3位置特定部材14a~14c)は、メインフレーム11に着脱可能に取り付けられているため、クレーン1の分解・組立時や洗浄時に、位置特定部材14をクレーン1から取り外すことができ、位置特定部材14の損傷を防止できる。また、位置特定部材14(第1から第3位置特定部材14a~14c)は、メインフレーム11に着脱可能に取り付けられているため、センサ13のずれの補正後にメインフレーム11から取り外すことにより、クレーン作業時におけるセンサ13の周囲計測を邪魔することがなく、またクレーン1の設計制約(例えば、位置特定部材14の分だけ下部走行体2のクローラと上部旋回体3との間の隙間を大きくするという設計制約)を生じさせることがない。
【0017】
(作業機械の周辺監視システムの構成)
図3は、作業機械としてのクレーン1の周辺監視システムを示すブロック図である。この
図3に示すように、クレーンの周辺監視システムは、上記クレーン1の構成のほか、コントローラ21、入力部22、センサ13(位置計測装置)、記憶部23、表示部24、通信部25を備える。
【0018】
コントローラ21は、例えばCPU(Central Processing Unit)等により構成され、クレーン1の各部の動作を制御する。コントローラ21は、ECU(Electronic Control Unit)の機能を含み、上部旋回体3に配置される。具体的に、コントローラ21は、オペレータの入力部22からの操作入力等に基づいてクレーン1を作動させ、記憶部23に予め記憶されている各種プログラムを展開すると共に各種データを読み出し、展開されたプログラムや読み出した各種データを利用して各種処理を実行する。
【0019】
このコントローラ21は、取得部26、特定部27、補正部28、判定部30の各機能を有している。
【0020】
取得部26は、センサ13による第1から第3位置特定部材14a~14cの計測結果に基づいて、センサ座標面PB上における第1から第3位置特定部材14a~14cの位置情報を取得する(
図4(a)、
図4(b)参照)。なお、センサ座標面PBは、センサ13に位置ずれ及び姿勢ずれが生じていない場合、クレーン座標面(作業機械座標面)PAに一致する。また、センサ座標面PBは、
図4(b)に示すように、センサ13に位置ずれ及び姿勢ずれが生じている場合、クレーン座標面PAに一致しない。
【0021】
特定部27は、取得部26によって取得されたセンサ13に対する第1から第3位置特定部材14a~14cの位置情報に基づいて、センサ13の位置及び姿勢を特定する。ここで、特定とは、取得部26によって取得されたセンサ13に対する第1から第3位置特定部材14a~14cの位置情報(センサ座標面PB上の位置情報)と、記憶部23から読み出したセンサ13の基準位置データ31とを使用し、クレーン座標面PA上におけるセンサ13の位置ずれΔX、ΔY及びセンサ13の姿勢ずれΔΘを記憶部23から展開した位置ずれ算出プログラム32によって算出することをいう(
図4(c)参照)。なお、必ずしも位置および姿勢の両方を特定する必要はなく、例えば、位置ずれだけを補正するのであれば、位置を特定するだけでよい。
【0022】
補正部28は、センサ13が測定したクレーン1の外部の物体33の位置情報(センサ座標面PB上の位置情報)を、センサ13の位置ずれΔX、ΔY及び姿勢ずれΔΘの数値を使用し、記憶部23から展開した補正値算出プログラム34によってクレーン座標面PA上の位置情報(センサ13の基準位置18及び基準姿勢19に対する位置情報)に補正する(
図4(c)参照)。
【0023】
判定部30は、補正部28によって補正された外部の物体33の位置情報と、記憶部23に予め記録されている作業機械基礎データ35(立ち入り禁止エリアデータ)とを比較し、外部の物体33が障害物になり得るか否か判定する。
【0024】
入力部22は、オペレータによって操作される各種操作ボタン、キーボード等であって、クレーン1の作動に関する信号をコントローラ21に入力できるようになっている。なお、入力部22には、表示面がタッチパネルである場合、タッチパネル上に表示される入力ボタンを含んでいる。また、入力部22は、コントローラ21が外部情報端末から操作されるようになっている場合、その外部情報端末を含んでいる。
【0025】
センサ13(位置計測装置)は、基準位置18の周りを360°計測可能な全周LiDARが使用され、位置特定部材14(14a~14c)の位置及び姿勢(形状)、クレーン1の外部の物体33の位置及び姿勢(形状)を測定できるようになっている。言い換えると、センサ13を中心に360°計測可能な全周LiDARが使用され、位置特定部材14(14a~14c)の位置及び姿勢(形状)、クレーン1の外部の物体33の位置及び姿勢(形状)を測定できるようになっている。なお、センサ13は、全周LiDARと同様の測距機能を備えたものであれば適用できる。例えば、ミリ波、ステレオカメラ、超音波センサなどのあらゆるセンサを用いることができる。ただし、LiDARセンサであると精度よく形状を測定できる。なお、作業機械の周囲を360°計測するためには、LiDARのように回転中心をもって回転しながらセンシングするものに限らず、360°全周を同時に計測するものであってもよい。
【0026】
記憶部26は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等により構成されるメモリであり、各種のプログラム及びデータを記憶するとともに、コントローラ21の作業領域としても機能する。本実施形態の記憶部23は、基準位置データ31、位置ずれ算出プログラム32、補正値算出プログラム34、作業機械基礎データ35を記録している。
【0027】
基準位置データ31は、クレーン座標面PA上におけるセンサ13の基準位置18及び基準姿勢19、第1~第3位置特定部材14a~14cの位置データを含んでいる。
【0028】
位置ずれ算出プログラム32は、センサ13が設置時における基準位置18及び基準姿勢19から位置ずれ及び姿勢ずれを生じている場合(
図4(b)参照)に、センサ座標面PB上の第1から第3位置特定部材14a~14cの位置情報と、記憶部23から読み出したセンサ13の基準位置データ31とを使用し、クレーン座標面PA上におけるセンサ13の位置ずれΔX、ΔY及び姿勢ずれΔΘを算出できるようになっている。
【0029】
補正値算出プログラム34は、センサ13が測定したクレーン1の外部の物体33の位置情報(センサ座標面PB上の位置情報)を、センサ13の位置ずれΔX、ΔY及び姿勢ずれΔΘの数値を使用し、クレーン座標面PA上の位置情報(センサ13の基準位置18及び基準姿勢19に対する位置情報)に補正できるようになっている。
【0030】
作業機械基礎データ35は、クレーン1の下部走行体2の左右方向における幅寸法、クレーン1の下部走行体2の前後方向における長さ寸法、上部旋回体3の旋回半径、立ち入り禁止エリア(クレーン座標面PA上におけるエリアデータ)等を含んでいる。
【0031】
表示部24は、例えば液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のディスプレイであり、コントローラ21から入力される表示信号に基づいて各種情報を表示する。なお、表示部24は、入力部22の一部を兼ねるタッチパネルであってもよい。
【0032】
通信部25は、例えば図示しない外部情報端末等との間で各種情報を送受信可能な通信デバイスである。
【0033】
(センサと位置特定部材との関係)
図4は、センサ13(位置計測装置)と位置特定部材14(第1から第3位置特定部材14a~14c)との関係を示す図である。
【0034】
この
図4において、
図4(a)は、
図2の一部を模式的に示す図である。この
図4(a)において、センサ13は、クレーン1のメインフレーム11の下面と平行な面をクレーン座標面PAとすると、このクレーン座標面PA上の基準位置18にセンサ中心軸15が位置し、センサ13の姿勢線20が基準位置18から-Y方向に中心線17に沿って延びている。この
図4(a)に示すクレーン座標面PA上のセンサ13は、基準位置18に対して位置ずれがなく、且つ、姿勢ずれが無い状態で取り付けられている。
【0035】
また、
図4(b)は、センサ13が基準位置18に対して位置ずれを生じ、センサ13が基準姿勢19に対して姿勢ずれを生じた状態を示す図である。この
図4(b)において、センサ13の姿勢線20が延びる方向に直交する方向がX方向であり、センサ13の姿勢線20が延びる方向と反対の方向(X方向と直交する方向)がY方向になっており、このX-Y座標面をセンサ座標面PBとしている。なお、センサ13は、クレーン1が受ける衝撃や振動により、位置ずれや姿勢ずれを生じる場合がある。また、センサ13は、クレーン1の分解・再組立て時に生じる場合がある。
【0036】
また、
図4(c)は、
図4(a)のクレーン座標面PAに
図4(b)のセンサ座標面PBを第1から第3位置特定部材14a~14cをそれぞれ位置合わせするように重ね合わせた状態を示す図である。この
図4(c)に示すように、
図4(a)のクレーン座標面PAと
図4(b)のセンサ座標面PBとを重ね合わせ、
図4(b)に示すセンサ13の位置及び姿勢をクレーン座標面PAに投影することにより、センサ13の基準位置18に対する位置ずれΔX、ΔYを求めることができると共に、センサ13の基準姿勢19に対する姿勢ずれΔΘを求めることができる。また、
図4(c)に示すように、クレーン1の外部の物体33をセンサ13で測定したセンサ座標面PB上の位置情報(Lxb、Lyb)は、センサ13の位置ずれΔX、ΔYとセンサの姿勢ずれΔΘを使用することにより、クレーン座標面PA上の位置情報(Lxa、Lya)に補正することができる。
【0037】
(障害物検出のフローチャート)
図5は、本実施形態に係るクレーン1のセンサ13(位置計測装置)を使用した障害物検出のフローチャート図である。
【0038】
この
図5において、クレーン1のセンサ13を使用した障害物検出は、オペレータが入力部22からスタート信号を入力することにより開始される。コントローラ21は、入力部22からのスタート信号に基づいてセンサ13を作動させ、センサ13が全周(360°)計測を開始し、そのセンサ13が第1から第3位置特定部材14a~14c及びクレーン1の外部の物体33を計測する(ステップS1)。
【0039】
次に、コントローラ21は、位置特定部材14(第1から第3位置特定部材14a~14c)の測定結果からセンサ13の位置及び姿勢を特定する(ステップS2)。このセンサ13の位置及び姿勢の特定は、取得部26によって取得されたセンサ13に対する第1から第3位置特定部材14a~14cの位置情報(センサ座標面PB上の位置情報)と、記憶部23から読み出したセンサ13の基準位置データ31とを使用し、クレーン座標面PA上におけるセンサ13の位置ずれΔX、ΔY及びセンサ13の姿勢ずれΔΘを記憶部23から展開した位置ずれ算出プログラム32によって算出する。
【0040】
次に、コントローラ21は、ステップS2で算出されたセンサ13の位置ずれΔX、ΔY及びセンサ13の姿勢ずれΔΘのデータと、センサ13の基準位置データ31とを比較し、センサ13に位置ずれ、姿勢ずれがあるか否かを判断する(ステップS3)。
【0041】
次に、コントローラ21は、ステップS3でセンサ13の位置ずれ、姿勢ずれがあると判断すると、補正部28により、センサ13が測定した位置特定部材14の位置情報(センサ座標面PB上の位置情報)を、センサ13の位置ずれΔX、ΔY及び姿勢ずれΔΘの数値を使用し、記憶部23から展開した補正値算出プログラム34によってクレーン座標面PA上の位置情報(センサ13の基準位置18及び基準姿勢19に対する位置情報)に補正する(ステップS4)。
【0042】
また、コントローラ21は、ステップS3でセンサ13の位置ずれ、姿勢ずれがないと判断すると、位置特定部材14以外の物体(外部の物体33)の位置認識をクレーン座標面PAで実行する(ステップS5)。また、コントローラ21は、ステップS4でセンサ座標面補正されたクレーン座標面において、位置特定部材14以外の物体(外部の物体33)の位置認識を実行する(ステップS5)。
【0043】
次に、コントローラ21は、補正部28によって補正された外部の物体33の位置情報と、記憶部23に予め記録されている作業機械基礎データ35(立ち入り禁止エリアデータ)とを比較し、外部の物体33が障害物になり得るか否かを判定部30で判定する(ステップS6)。
【0044】
次に、コントローラ21は、判定部30で障害物があると判断すると、障害物の存在及び障害物の位置データを表示部24に表示し、オペレータに警告して(ステップS7)、障害物の計測作業を終了する。また、コントローラ21は、判定部30で障害物がないと判断すると、障害物の計測作業を終了する。
【0045】
(本実施形態の効果)
本実施形態に係るクレーン(作業機械)1の周辺監視システムは、センサ13のずれの補正を容易に行える(請求項1の発明に対応する効果)。また、本実施形態に係るクレーン1の周辺監視システムは、位置特定部材14がクレーン1に着脱可能に設置されるため、クレーン1の分解・組立時や洗浄時に、位置特定部材14をクレーン1から取り外すことにより、位置特定部材14の損傷を防止できる。また、輸送時に、位置特定部材14をクレーン1から取り外すことによってクレーン1の輸送幅や輸送高さに影響しにくくすることができる。
【0046】
また、本実施形態に係るクレーン(作業機械)1の周辺監視システムは、カウンタウエイトが配置される端部側を後方としたとき、位置特定部材14がセンサ13よりも前方側に配置されるため、センサ13がクレーン後方の障害物を位置特定部材14で邪魔されることなく検知できる。
【0047】
また、本実施形態に係るクレーン(作業機械)1の周辺監視システムは、位置計測装置13が回転軸心の周りを360°回転可能であるため、センサ13のずれを計測できると共にクレーン後方の障害物を検知できる。
【0048】
また、本実施形態に係るクレーン(作業機械)1の周辺監視システムは、ランドマークとなる位置特定部材14がクレーン1の複数個所に設置され、位置計測装置の計測範囲は、その複数の位置特定部材14を含むため、センサ13の位置及び姿勢の特定の精度が向上する。
【0049】
また、本実施形態に係るクレーン(作業機械)1の周辺監視システムは、センサ13がクレーンに着脱可能に設置されるため、クレーンの分解・組立時や洗浄時に、センサ13をクレーン1から取り外すことにより、センサ13の損傷を防止できる。
【0050】
また、本実施形態に係るクレーン(作業機械)1の周辺監視システムは、センサ13がメインフレーム11に設置されるため、クレーン1の運搬時の分解・組立時に、センサ13がメインフレームから取り外されてずれを生じても、センサ13のずれを容易に補正できる。
【0051】
また、本実施形態に係るクレーン(作業機械)1の周辺監視システムは、複数の位置特定部材14が同一形状であるため、センサ13による位置特定部材14の計測精度が向上し、センサ13の位置及び姿勢の特定の精度が向上する。
【0052】
また、本実施形態に係るクレーン(作業機械)1の周辺監視システムは、複数の位置特定部材14が全て異なる形状であるため、センサ13のずれを生じる前の状態とセンサ13のずれを生じた後の状態とを位置特定部材14の重ね合わせで判別する場合に、センサ13のずれを生じる前の状態における位置特定部材14とセンサ13のずれを生じた後の状態における位置特定部材14を容易に重ね合わせることができ、センサ13のずれの補正を効率的に行える。
【0053】
(第1変形例)
図6(a)は、上記実施形態に係る位置特定部材14の第1変形例を示す図である。この
図6(a)に示すように、第1変形例に係る位置特定部材40は、メインフレーム11の下面(クレーン座標面PA)の中心線17上で且つセンサ17と旋回ベアリング(図示せず)との間の位置に1箇所だけ着脱可能に取り付けられている。この位置特定部材40は、丸棒状体の側面からセンサ17に向かって中心線17上を直線状に延びる張り出し突起40aが形成されている。
【0054】
このような本変形例の位置特定部材40は、センサ13が位置ずれ、姿勢ずれを生じた場合、センサ座標面PB上の位置特定部材40の張り出し突起40aとクレーン座標面PA上の位置特定部材40の張り出し突起40aとを重ね合わせることにより、
図4(c)で示したようにセンサ13の位置ずれ及び姿勢ずれを検出できる。そして、このような本変形例に係る位置特定部材40を作業機械の周辺監視システムに適用することにより、上記実施形態に係る作業機械の周辺監視システムと比較し、センサ13のレーザー光を遮る物体が少なくなるため、センサ13の計測範囲が広がる。なお、本変形例において、位置特定部材40は、張り出し突起40aを放射状に3箇所(
図6(a)に示す張り出し突起40aの両側にそれぞれ1箇所)設けるようにしてもよい。
【0055】
(第2変形例)
図6(b)は、上記実施形態に係る位置特定部材14の第2変形例を示す図である。この
図6(b)に示すように、第2変形例に係る位置特定部材41、42は、丸棒状の突起であり、メインフレーム11の下面(クレーン座標面PA)の中心線17に対して線対称の位置にそれぞれ配置されている。そして、
図6(b)の図中左側に位置する位置特定部材41は、位置特定部材42よりも外径寸法が大きく形成されている。
【0056】
このような本変形例は、複数の位置特定部材14が全て異なる形状であるため、センサ13がずれ(位置ずれ、姿勢ずれ)を生じた場合、センサ座標面PB上の位置特定部材41、42とクレーン座標面PA上の位置特定部材41、42とを容易に重ね合わせることができ、センサ座標面PB上のセンサ13とクレーン座標面PA上のセンサのずれを容易に判別でき、センサ13のずれの補正を効率的に行える
【0057】
(その他の適用例)
本発明は、クレーンの種類は特に限定されず、クローラクレーンやホイールクレーン、トラッククレーン等の移動式クレーンに加えて、港湾クレーン、天井クレーン、門型クレーン、アンローダ、固定式クレーン等のあらゆるクレーンを含んでよい。
また、本発明は、作業機械としてのクレーンへの適用に限定されず、作業機械であれば他の作業機械でも適用できる。例えば、フォークリフト、ショベルカー、アスファルトフィニッシャー、土質改良機、基礎機械などの作業機械にも適用できる。
また、本発明において、センサ13の設置位置は、上部旋回体3の下面側、又はカウンタウエイト5の下面側に限定されず、上部旋回体3の上面側に配置してもよい。
また、位置特定部材は、上記実施形態や各変形例の構成に限定されず、センサ座標面PB上の位置特定部材とクレーン座標面PA上の位置特定部材とを重ね合わせることにより、
図4(c)で示したようにセンサ13の位置ずれ及び姿勢ずれを検出できるようになっていればよい。
その他、上記実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 クレーン(作業機械)
3 上部旋回体
5 カウンタ
11 メインフレーム
13 センサ(位置計測装置)
14 位置特定部材
15 センサ中心軸(回転軸心)
16 旋回中心
26 取得部
27 特定部