(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094984
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】複合容器及び金型
(51)【国際特許分類】
B65D 1/48 20060101AFI20240703BHJP
B65D 1/26 20060101ALI20240703BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20240703BHJP
B29C 33/12 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B65D1/48
B65D1/26 110
B29C45/26
B29C33/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211940
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】小泉 正和
(72)【発明者】
【氏名】川野 朗
【テーマコード(参考)】
3E033
4F202
【Fターム(参考)】
3E033AA08
3E033BA09
3E033BA10
3E033BA15
3E033BA16
3E033BA18
3E033BB08
3E033CA02
3E033DA08
3E033DD05
3E033FA10
4F202AD08
4F202AD35
4F202AG03
4F202AH52
4F202AH55
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CK06
4F202CQ01
4F202CQ05
(57)【要約】
【課題】樹脂製の接合体と面体と組み合わせることで樹脂量の大幅な低減と製造効率の向上を図ることができ、面体に要求される機能を維持することのできる複合容器及びその金型を提供する。
【解決手段】面体21(20)の一の端辺部分21aを、他の端辺部分、又は、他の面体22(20)と接合する接合体31(30)を備え、面体20が接合体30により接合されることで、内容物を収容するための収容部10が形成された複合容器100であって、接合体31(30)は、面体31の一面側において一の端辺部分21aに接合されて、一の端辺部分21aを覆う端辺被覆部32aと、この端辺被覆部32aに設けられ、面体21側に凹む凹部32bとを備える複合容器100とする。また、面体21の一の端辺部分21aが挿入されると共に、面体21側に突出する突起部55が設けられており、端辺被覆部32aを形成するための樹脂充填部を有する金型50とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数のシート状の面体と、当該面体の一の端辺部分を、他の端辺部分、又は、他の面体と接合する接合体とを備え、前記面体が前記接合体により接合されることで、内容物を収容するための収容部が形成された複合容器であって、
前記接合体は、前記一の端辺部分に接合されて、当該一の端辺部分を前記面体の一面側から覆う端辺被覆部と、当該端辺被覆部に設けられ、前記面体側に凹む凹部と、
を備える、複合容器。
【請求項2】
前記面体の他面側であって、前記凹部と前記面体を挟んで対向する位置に前記面体に接合される他面側被覆部を備え、
前記面体の前記他面側に成形時に用いる金型のゲート部が設けられる請求項1に記載の複合容器。
【請求項3】
前記面体として、底面用の底面用面体と、側面用の側面用面体とを含み、
前記接合体は、前記側面用面体の一の側端辺部分と他の側端辺部分とを接合する側接合体と、前記端辺被覆部及び前記凹部を含む底接合体とを備え、
前記端辺被覆部は、前記底面用面体の外縁端辺部分と、前記側面用面体の内面とを接合すると共に、前記外縁端辺部分を被覆し、
前記凹部は、前記端辺被覆部と前記側接合体との接合部分に設けられる、請求項1に記載の複合容器。
【請求項4】
前記面体は、紙製面体、又は、ポリエチレン樹脂層、ポリプロピレン樹脂層、ポリエチレンテレフタレート樹脂層、ポリアミド樹脂層、エチレンビニルアルコール樹脂層及びアルミニウム層のうちいずれか一層以上を含むフィルム体である、請求項1に記載の複合容器。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の複合容器を製造するための金型であって、
分割面を介して分割される一方の金型部材と、他方の金型部材とを有し、
当該一方の金型部材と当該他方の金型部材とを組み合わせることで、前記接合体に応じた形状の樹脂充填部が形成され、
前記樹脂充填部は、前記端辺被覆部に対応する形状を有する端辺被覆部形成領域と、当該端辺被覆部形成領域において前記面体の前記一面側に突出する突起部を有し、
前記一方の金型部材と前記他方の金型部材とにより、前記面体の前記一の端辺部分が前記端辺被覆部形成領域に挿入された状態で、前記面体が挟持される挟持部が設けられた、金型。
【請求項6】
前記面体の他面側に対向配置されるゲート部と、前記ゲート部から前記端辺被覆部形成領域に延びると共に前記面体の前記他面側に接合される他面側被覆部を形成するための他面側被覆部形成領域が設けられ、
前記ゲート部から当該樹脂充填部に樹脂が充填される、請求項5に記載の金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合容器及び金型に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロプラスチックをはじめとするプラスチック廃棄物による自然環境への負荷を抑制すべく、使い捨て容器における樹脂量削減に対する取り組みが進められている。具体的な取り組みとして、プラスチック製容器に使用する樹脂量の低減等が行われている。
例えば、特許文献1には紙製スリーブと、胴部を極薄肉に構成した樹脂容器とを組み合わせた複合容器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示の樹脂容器によれば、胴部の樹脂量が削減されているものの、樹脂容器には紙製スリーブを支持するための厚肉部が設けられており、樹脂量のより一層の低減が求められる。また、当該容器では胴部が極薄肉に形成されているため、胴部を直接把持することができず、胴部の強度を維持するために紙製スリーブを要する。しかしながら、紙製スリーブと樹脂容器とはそれぞれ別々に製造した上で両者を組み合わせる必要があり、製造工程が煩雑となっていた。
【0005】
そこで本発明の課題は、樹脂量の一層の低減と製造効率の向上を図ることができ、収容部に要求される機能を維持することのできる複合容器及び当該複合容器を製造するための金型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る複合容器は、1又は複数のシート状の面体と、当該面体の一の端辺部分を、他の端辺部分、又は、他の面体と接合する接合体とを備え、前記面体が前記接合体により接合されることで、内容物を収容するための収容部が形成された複合容器であって、前記接合体は、前記一の端辺部分に接合されて、当該一の端辺部分を前記面体の一面側から覆う端辺被覆部と、当該端辺被覆部に設けられ、前記面体側に凹む凹部とを備える、ことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る複合容器では、前記面体の他面側であって、前記凹部と前記面体を挟んで対向する位置に前記面体に接合される他面側被覆部を備え、前記面体の前記他面側に成形時に用いる金型のゲート部が設けられることが好ましい。
【0008】
本発明に係る複合容器では、前記面体として、底面用の底面用面体と、側面用の側面用面体とを含み、前記接合体は、前記側面用面体の一の側端辺部分と他の側端辺部分とを接合する側接合体と、前記端辺被覆部及び前記凹部を含む底接合体とを備え、前記端辺被覆部は、前記底面用面体の外縁端辺部分と、前記側面用面体の内面とを接合すると共に、前記外縁端辺部分を被覆し、前記凹部は、前記端辺被覆部と前記側接合体との接合部分に設けられる、ことが好ましい。
【0009】
本発明に係る複合容器において、前記面体は、紙製面体、又は、ポリエチレン樹脂層、ポリプロピレン樹脂層、ポリエチレンテレフタレート樹脂層、ポリアミド樹脂層、エチレンビニルアルコール樹脂層及びアルミニウム層のうちいずれか一層以上を含むフィルム体である、ことが好ましい。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る複合容器を製造するための金型は、分割面を介して分割される一方の金型部材と、他方の金型部材とを有し、当該一方の金型部材と当該他方の金型部材とを組み合わせることで、前記接合体に応じた形状の樹脂充填部が形成され、前記樹脂充填部は、前記端辺被覆部に対応する形状を有する端辺被覆部形成領域と、当該端辺被覆部形成領域において前記面体の前記一面側に突出する突起部を有し、前記一方の金型部材と前記他方の金型部材とにより、前記面体の前記一の端辺部分が前記端辺被覆部形成領域に挿入された状態で、前記面体が挟持される挟持部が設けられた、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る複合容器を製造するための金型において、前記面体の他面側に対向配置されるゲート部と、前記ゲート部から前記端辺被覆部形成領域に延びると共に前記面体の前記他面側に接合される他面側被覆部を形成するための他面側被覆部形成領域が設けられ、
前記ゲート部から当該樹脂充填部に樹脂が充填される、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る複合容器によれば、収容部を樹脂製の接合体と面体とを用いて構成することで、収容部の大部分を面体により構成しつつ、接合体により面体のみでは不足する強度を補うことができる。接合体は強度を補うに足りる樹脂量とすればよいため、当該複合容器を構成するために必要な樹脂量を削減することができる。
【0013】
また、本発明に係る複合容器では、例えば、接合体を樹脂成形体とし、接合体を成形するための金型に設けられた樹脂充填部に、面体の一の端辺部分を挿入し、樹脂を充填することで、面体の一の端辺部分を、他の端辺部分、又は、他の面体と接合することができるため、従来のインサート成形法と同様にして当該複合容器を製造することができる。すなわち、金型の所定の位置に面体を設置して、金型の樹脂充填部に樹脂を充填すれば、接合体を成形すると同時に、面体の一の端辺部分を、他の端辺部分、又は、他の面体と接合されて一体化された複合容器を得ることができ、製造工程が極めて簡略であり、製造効率の向上を図ることができる。
【0014】
また、本発明に係る複合容器では、面体の一の端辺部分を他の端辺部分又は他の面体と接合する際に、一の端辺部分を覆う端辺被覆部により両者を接合する。面体はシート状のため、端辺被覆部を成形する際の樹脂充填圧により端辺部が浮き上がって折れ曲がり、端辺部が端辺被覆部の外側に露出するおそれがある。しかしながら、本発明に係る複合容器では端辺被覆部に凹部を設けている。端辺被覆部に当該凹部を設けることで、接合体を成形するための金型には、面体の一面側に突出する突起部を設けることができる。そのため、突起部により接合体を成形する際に樹脂充填圧によって端辺部分が浮き上がって折れ曲がるのを抑制することができ、歩留まりよく当該複合容器を製造することができる。
【0015】
また、紙製の面体などを用いる場合、表面に耐水性を付与していたとしてもその端面が露出していると、端面から面体の内側へ水が進入する場合がある。本発明に係る複合容器では、端辺部分の浮き上がりを抑制することで、面体の端辺部分において端面が端辺被覆部により良好に覆われるようにすることができる。そのため、当該複合容器を食品等の水分を含む内容物、或いは、液体を収容するための容器に適用しても、面体の内側への水分の侵入を抑制し、面体の剛性が低下する等の不具合が生じることを防ぐことができる。
【0016】
以上より本発明に係る複合容器及び金型によれば、樹脂製の接合体と面体と組み合わせることで樹脂量の低減と製造効率の向上を図ることができ、且つ、収容部に要求される機能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態の複合容器を示す斜視断面図であり、(a)は
図2(a)のA-A断面を表し、(b)はその一部拡大図である。
【
図2】
図1に示す複合容器に関し、(a)は当該複合容器の上面図であり、(b)は当該複合容器の正面図(半断面図)であり、断面部分は(a)のA-A断面を表す。
【
図3】
図1に示す複合容器に関し、(a)は当該複合容器の側面図(半断面図)であり、断面部分は
図2(a)のB-B断面を表す。また、(b)は当該複合容器の底面図である。
【
図4】
図1に示す複合容器の斜視断面図であり、
図2(a)のB-B断面の一部を表す。
【
図5】
図1に示す複合容器の側面図(一部断面図)であり、(a)は2つの複合容器をスタッキングした状態を示す図である。また、(b)は脚体部分を拡大して示す部分断面図であり、断面部分は
図2(a)のA-A断面を表す。
【
図6】
図1に示す複合容器の部分断面図であり、(a)は
図2(b)におけるD部分の拡大図であり、(b)は
図3(a)におけるE部分の拡大図である。
【
図7】
図1に示す複合容器の部分断面図であり、(a)は
図3(b)のG-G断面を表し、(b)は
図3(b)のF-F断面を表す。
【
図8】
図1に示す複合容器を製造する際に用いる金型を示す図であり、(a)はゲート部付近の金型の断面構造を示す模式図であり、(b)は底接合体と側接合体との接合部分における金型の断面構造を示す模式図である。
【
図9】(a)は
図2(a)のC-C断面を表す部分断面図であり、(b)は底接合体と側接合体との接合部分を示す部分断面図である。
【
図10】比較例の複合容器の製造方法を説明するための図であり、(a)は
図8(b)に対応する比較例の金型構造、(b)、(c)は(a)の金型を用いて得られた複合容器の部分断面図であり、(b)は比較例の底接合体と側接合体との接合部分を示し、(c)は
図2(a)のC-C断面に対応する部分を示す。
【
図11】本発明の実施の形態の複合容器の変形例を説明するための斜視図である。
【
図12】本発明の実施の形態の複合容器の変形例の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の複合容器及び金型について説明する。
【0019】
1.複合容器
図1~
図7を参照しながら、本実施の形態の複合容器100を説明する。まず、
図1~
図4を参照しながら概略構成を説明する。
図1(a)は、当該複合容器100の斜視断面図であり、(b)はその一部拡大図である。
図2(a)は当該複合容器100の上面図であり、(b)は正面図(半断面図)である。
図1(a)及び
図2(b)の断面部分は、それぞれ
図2(a)のA-Aを表している。
図3(a)は当該複合容器100の側面図(半断面図)であり、断面部分は
図2(a)のB-B断面を表している。また、
図3(b)は当該複合容器100の底面図である。
図4は
図2(a)のB-B断面の一部を示す斜視断面図である。
【0020】
図1~
図3に示すように、当該複合容器100は、底面11及び側面12を有し、天面13が開口する収容部10を備えている。当該複合容器100は、収容部10がシート状の面体20と、シート状の面体20を接合する樹脂製の接合体30とにより構成されている。収容部10はカップ状に構成されており、底面11及び天面13はそれぞれ同軸の円形であり、天面13の方が底面11よりも大径の円錐台形状を呈する。また、側面12は、底面11の下方に延在し、脚体14を構成する。
【0021】
以下、底面11及び天面13の中心を通る線を中心軸線O(
図2(b)及び
図3(a)参照)とし、中心軸線Oに沿う方向を軸方向と称し、中心軸線Oに直交する方向を径方向と称し、中心軸線Oを中心に周回する向きを周方向と称する。また、
図2(b)等に示す状態で複合容器100を載置したときに軸方向において、底面11側を「下」側と称し、天面13側を「上」側と称する。
【0022】
面体20は収容部10を展開した形状に切断加工されたシート状に構成される。本実施の形態では、底面11を構成する底面用の面体20(以下、底面用面体21)は円形を呈し、側面12を構成する側面用の面体20(以下、側面用面体22)は略扇台形状を呈する。円錐台形状に丸められた側面用面体22の両側端辺部分22a、22b(
図3(b)、
図7(a)参照)が接合体30(側接合体38)により接合される。また、側面用面体22の内面に底面用面体21が接合体30(底接合体31)により接合される。このように面体20が接合体30により接合されることで収容部10が構成される。なお、面体20(底面用面体21、側面用面体22)と、接合体30(底接合体31、天接合体35、側接合体38等)との接合状態については後述する。
【0023】
本実施の形態において、面体20はシート状であればよい。面体20の厚みは特に限定されるものではないが、例えば、0.01mm以上1mm以下程度とすることができる。収容部10に収容する内容物やその用途、収容部10の大きさ等に応じて適宜適切な厚みとすることができる。なお、シート状と称したが、本発明においてシート状及びフィルム状は同義とする。
【0024】
面体20は紙(紙製面体)又はフィルム体(但し、フィルム体はシート体と同義とする)であることが好ましい。
ここで紙とは、植物繊維その他の繊維を膠着させて薄く平らに成形されたものをいい、いわゆる合成紙や、次に説明する各種樹脂層を積層した積層紙・複合紙でもよく、耐水や耐油等の機能を付与した機能紙でもよい。使用する紙の坪量は適宣設計することができる。
【0025】
また、フィルム体は、単層フィルム又は多層フィルムとすることができる。但し、ここでいうフィルム体は主として樹脂層からなるシート状の単層フィルム又は多層フィルムをいうものとする。フィルム体の層構成や層構成材料は特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン樹脂層(PE層)、ポリプロピレン樹脂層(PP層)、ポリエチレンテレフタレート樹脂層(PET層)、ポリアミド樹脂層(PA層)、ナイロン層(Ny層)、EVOH(エチレンビニルアルコール樹脂)層及びアルミニウム層(Al層)のうちいずれか一層以上を含むことが好ましい。なお、面体20が単層フィルムよりなる場合、これらのうちいずれか一層から構成される。面体20が多層フィルムよりなる場合、これらのうちいずれか一層以上含めばよい。
【0026】
PA層及びEVOH層は、食品包装用フィルムにおいてガスバリア性層として用いられている。また、Al層は例えばPET層等にアルミニウムを蒸着したアルミ蒸着フィルム層(PET蒸着層(VM-PET))としてもよい。Al層は、ガスバリア性層、防湿層、遮光層等の各種機能層として用いられている。その他、面体20は、ポリスチレン(PS)層、セロハン(PT)層などを含んでいてもよい。
【0027】
なお、ガスバリア性層の場合、ポリエチレン樹脂や、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂との相溶性が低く、両者の密着性が悪い場合がある。そのため、ガスバリア性層と接合体30、或いは、ガスバリア性層と他のポリオレフィン系樹脂層との多層フィルムとする場合には、必要に応じて層間の密着性(接合性、接着性)を確保するために、アドマー(登録商標)等の官能基をポリオレフィン樹脂に導入して接着性を付与した、変性ポリエチレン樹脂、変性ポリオレフィン樹脂等より構成される接着性層を最表層又は内層に含む構成としてもよい。
【0028】
多層フィルムの層構成の一例として、PE/EVOH/PE、PE/PA、PE/VM-PET/PE/EVOH/PE、PE/Al/PE、接着性樹脂層/EVOH等を挙げることができる。その他、食品包装用フィルム等の各種包装用フィルムで用いられている種々の層構成を適宜採用することができる。どのような層構成であっても、後述する製造方法を採用する上で、接合体30と接合される側の面が接合体30の構成材料と相溶性(密着性)の高い材料からなる層であることが好ましい。
【0029】
また、多層フィルムの場合、上記各層と共に、遷移金属やラジカル捕捉剤等の脱酸素剤や、その他の樹脂以外の成分を含む機能性成分を含む酸素吸収層等の機能層を中間層として備えていてもよい。このように面体20を構成する材料等は特に限定されるものではなく、収容部10に収容する内容物や、当該複合容器100に要求される機能や強度に応じて適宜選択することができる。
【0030】
次に、接合体30について説明する。本実施の形態において、接合体30は、
図1~
図4等に示すように底面用面体21の外縁端辺部分21aと側面用面体22の内面とを接合する底接合体31(32、33)と、側面用面体22の天側端辺部分22cに接合される天接合体35と、底接合体31及び天接合体35に接合されると共に、側面用面体22の一の側端辺部分22aと他の側端辺部分22bとを接合する側接合体38とを備えている。また、底面用面体21の下面であって底面用面体21の中心位置(中心軸線Oと底面用面体21とが交差する位置)には、当該接合体30を成形する際に用いる金型50のゲート部50a(
図8(a)参照)に対応する一端部39aが設けられ、この一端部39aから側接合体38に向かって帯状に延在する帯状部39(他面側被覆部)が設けられている。接合体30は、底接合体31、天接合体35、側接合体38及び帯状部39が一体成形された樹脂成形体である。
【0031】
底接合体31は、
図1(b)、
図2(a)、
図4等に示すように、底面用面体21の外縁端辺部分21aに沿って、底面用面体21の一面側(上面側)に接合される底環状枠32と側面用面体22の内面に接合される側環状枠33とを備えている。
【0032】
図1(b)、
図3(a)、
図4等に示すように、底環状枠32は、軸方向における厚みの薄い平環状に構成された外周縁被覆部32a(端辺被覆部)を有する。外周縁被覆部32aは、底面用面体21の外縁端辺部分21aに沿って、底面用面体21の上面側(一面側)に接合されており、底面用面体21の外縁端辺部分21aを、その縁端から径方向内側に所定の幅で被覆する。外周縁被覆部32aは、
図1(b)等に示すように径方向外側から内側に向かうにつれて厚みが徐々に薄くなるように形成されている。このように断面視において角を丸めた状態で底面用面体21に密着させることで、底面用面体21の上面から外周縁被覆部32aが剥がれにくくなるようにしている。
【0033】
また、外周縁被覆部32aは、底面用面体21の外縁端辺部分21aの縁端を超えて径方向外側に延在している。また、
図3(a)、
図4等に示すように、外周縁被覆部32aは、底面用面体21の外縁端辺部分21aの縁端面と側面用面体22の内面との間に介在し、底面用面体21の外縁端辺部分21aの縁端と側面用面体22の内面とを所定の距離離間させた状態で、上記側環状枠33を介してこれらを接合する。
【0034】
側環状枠33は、
図1(b)、
図3(a)及び
図4等に示すように径方向における厚み(長さ)よりも軸方向に長い筒状に形成されており、底環状枠32と、側面用面体22の内面とに接合される。側環状枠33は、軸方向に沿って上方から下方に順に、第一側枠部33a、段部33b、第二側枠部33c、脚枠部33dを備えている。第一側枠部33aは、段部33b側から軸方向上方に向けて厚みが徐々に薄くなるように形成されている。このように断面視において角を丸めた状態で側面用面体22に密着させることで、上記と同様に、側面用面体22の内面から側環状枠33が剥がれにくくなるようにしている。第一側枠部33aと、第二側枠部33cとの間には段部33bが設けられ、第二側枠部33cは側面用面体22の内面において、第一側枠部33aよりも径方向内側に突出するように形成されている。段部33bの上面は径方向に略平らに形成されている。第一側枠部33a、段部33b及び第二側枠部33cは、底面用面体21よりも上方に配置される。
【0035】
脚枠部33dは、底面用面体21よりも下方に延在する。脚枠部33dは底面用面体21の下方において側面用面体22の内面に接合される。脚枠部33dと側面用面体22とによって、収容部10の脚体14が構成される。
側環状枠33は、第二側枠部33cと脚枠部33dの接合部分で底環状枠32と接合されている。
【0036】
ここで、
図5(a)に示すように、一の複合容器100の収容部10に対して、他の複合容器100の収容部10を挿入することができる。このとき
図5(b)の拡大図において仮想線で示す上側の複合容器100の脚体14の下端は、下側の複合容器100の段部33bに当接し、上側の複合容器100と下側の複合容器100とが軸方向に所定の間隔を空けてスタッキングされる。そのため、複数の複合容器100をスタッキングしてコンパクトに収容することができ、スタッキングされた複合容器100を一つ一つ取り出すことも容易になる。
【0037】
天接合体35は、収容部10の天面13の外縁部分を構成する。天接合体35は、
図1(a)、
図2(b)及び
図3等に示すように、側面用面体22の天側端辺部分22cに接合されている。天接合体35は軸方向に所定長を有し、径方向の厚みの薄いリング枠状に構成されており、その上端には、径方向外側に突出するフランジ部35aが設けられている。
【0038】
図6(a)は
図2(b)のD部分の拡大図であり、次に説明する側接合体38が設けられた部分を示し、
図6(b)は
図3(a)のE部分の拡大図である。なお、側接合体38と天接合体35との接合部分を除いて、天接合体35と側面用面体22の天側端辺部分22cとの接合部分は
図6(b)に示す状態となる。
図6(b)に示すように、側面用面体22の天側端辺部分22cの内面側及び端面は天接合体35により被覆されている。天接合体35と側面用面体22の天側端辺部分22cの接合部分についても、軸方向において下方に向けて厚みが徐々に薄くなるように、断面視において角を丸めた状態で天接合体35が側面用面体22に密着されている。このようにすることで、上記と同様に、側面用面体22の内面から天接合体35が剥がれにくくなるようにしている。
【0039】
側接合体38は、
図2(b)、
図3(a)、(b)、
図4等に示すように、下端側が底接合体31に連結され、上端側が天接合体35に連結されており、軸方向に沿って底接合体31から天接合体35まで延びる接合リブとして形成されている。
図7(a)は、
図3(b)のG-G断面を表す。
図3(b)及び
図7に示すように、側接合体38において、側面用面体22の一の側端辺部分22aと他の側端辺部分22bとが接合されて、上述したとおり、側面用面体22が円錐台形状に丸められた状態となる。
【0040】
本実施の形態では、
図1(b)、
図2(a)、
図4、
図9(a)等に示すように、底接合体31と側接合体38との接合部分において、底接合体31の外周縁被覆部32aにその上面から底面用面体21側に凹む凹部32bが等間隔に3つ設けられている。なお、
図9(a)は、収容部10の底面11の部分断面図であり、
図2(a)のC-C断面を表す。各凹部32bは径方向に長尺で周方向の幅の狭い凹溝として構成されている。各凹部の内側の角は丸められており、底面用面体21の上面が収容部10の内側に露出する面積が小さくなるようにしている。この凹部32b後述する金型50に設けられた突起部55が、外周縁被覆部32aに転写されてできたものである。
【0041】
次に、底面用面体21の下面に設けられた帯状部39について説明する。
図1、
図3(b)、
図4、
図7(b)等に示すように、帯状部39は、底面用面体21の中心位置に配置される上記一端部39aから底接合体31と側接合体38との接合部分に向かって延在する。底面用面体21を挟んで、凹部32bと帯状部39は対向配置されている。帯状部39は底接合体31と側接合体38との接合部分においてこれらに接合されている。なお、
図7(b)は
図3(b)のF-F断面図である。
【0042】
当該複合容器100において、接合体30を構成する樹脂の種類は特に限定されるものではないが、包装容器材料として用いられるポリプロピレン樹脂(ホモポリマー、ブロック共重合体、ランダム共重合体;以下、PP(但し、延伸ポリプロピレン(OPP)、無延伸ポリプロピレン(CPP)であってもよいものとする))、ポリエチレン樹脂(高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)等;以下、PE)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、PET)等の汎用樹脂を広く用いることができる。
【0043】
2.複合容器の製造方法
次に、上記複合容器100の製造方法について説明する。当該複合容器100を製造する際にはいわゆるインサート成形法を応用することができる。上記接合体30の形状に応じた金型50(
図8(a)、(b)参照)と、予め所定形状に切断加工された底面用面体21及び側面用面体22とを準備する。
【0044】
図8は、
図1に示す複合容器を製造する際に用いる金型50を示す図であり、(a)はゲート部50a付近の金型50の断面構造を示す模式図であり、(b)は底接合体31(底環状枠32、側環状枠33)と側接合体38との接合部分における金型50の断面構造を示す模式図である。
【0045】
本実施の形態では、金型50は、分割面を介して分割される第一の金型部材51~第三の金型部材53を備え、これらを組み合わせることで接合体30の各部の形状に応じた帯状部形成領域54a(
図8(a)参照)、底枠体形成領域(底環状枠形成領域54b、側環状枠形成領域54c)、側接合体形成領域54d(
図8(b)参照)、天枠体形成領域(図示略)を有する樹脂充填部が設けられる。
【0046】
金型50の構成をより具体的に説明する。本実施の形態では、帯状部形成領域54aの一端側にゲート部50aが配置される。金型50のゲート部50a付近では、
図8(a)に示すように、分割面を介して分割される第一の金型部材51(一方の金型部材)と第二の金型部材52(他方の金型部材)とを備え、第二の金型部材52側に帯状部形成領域54aが設けられている。ゲート部50aを介して、帯状部形成領域54aの一端側から金型50内に充填樹脂材が充填される。
【0047】
ゲート部50a付近において、第一の金型部材51の分割面は平坦面とされている。また、第二の金型部材52の分割面についても、帯状部形成領域54a以外の領域は平坦面とされている。底面用面体21を金型50の所定位置に設置すると、帯状部形成領域54a以外の領域では、底面用面体21の一面側は第一の金型部材51に当接され、底面用面体21の他面側は第二の金型部材52とに当接され、これらにより挟持される。なお、底面用面体21の一面は、複合容器100において収容部10の内面であり、複合容器100において「上面」となる面である。同様に底面用面体21の他面は、複合容器100において収容部10の外面であり、複合容器100において「下面」となる面である。なお、製造工程では金型50は、
図8(a)、(b)に示す向きから90度回転させた向きに配置され、金型50に対して横方向から充填樹脂材が充填される。但し、ゲート部50aの配置や、充填樹脂材の充填方向等は特に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0048】
図8(b)に、底接合体31(底環状枠32、側環状枠33)と側接合体38との接合部分における金型50の断面構造を示す。
図8(b)に示すように、金型50には第一の金型部材51及び第二の金型部材52に加えて、第三の金型部材53が設けられている。
第一の金型部材51及び第二の金型部材52に挟持された底面用面体21の外縁端辺部分21aの端面に対して、側面用面体22の内面が所定の距離離間した状態で対向配置される。
【0049】
当該部分において、第一の金型部材51の第二の金型部材52との分割面には底枠体形成領域の底環状枠形成領域54bが設けられる。また、第二の金型部材52の第一の金型部材51との分割面には上述のとおり上記帯状部形成領域54aが設けられている。
また、第一の金型部材51及び第二の金型部材52には、第三の金型部材53との分割面(対向面)に、底枠体形成領域の側環状枠形成領域54cが設けられている。また、当該部分には側接合体形成領域54dが設けられており、第一の金型部材51には、第三の金型部材53との分割面において、側環状枠形成領域54cと連通するように側接合体形成領域54dとが設けられている。
【0050】
ここで、底面用面体21は第一の金型部材51と第二の金型部材52とにより挟持された状態で、その外縁端辺部分21aが底環状枠形成領域54bに挿入されている。また、帯状部形成領域54aの他端側は底面用面体21の外縁端辺部分21aを挟んで底環状枠形成領域54bと対向配置されている。
【0051】
側面用面体22はその一の側端辺部分22aと、他の側端辺部分22bとが側接合体形成領域54dに挿入された状態で、第一の金型部材51及び第三の金型部材53、第二の金型部材52及び第三の金型部材53に挟持される。なお、
図8(b)には、一の側端辺部分22aの端面のみを示すが、当該側接合体形成領域54dにおいて側面用面体22の一の側端辺部分22aと、他の側端辺部分22bは、
図7(a)に示すように両端面間が所定の距離離間した状態で配置される。
【0052】
また、帯状部形成領域54a、底環状枠形成領域54b、側環状枠形成領域54cは、底面用面体21の外縁端辺部分21aと、側面用面体22の内面との間であって、側面用面体22の両側端辺部分22a、22bが配置される領域において合流する。これらが合流する領域を以後合流部Jと称する(
図8(b)参照)。
【0053】
このように構成された金型50を用い、底面用面体21及び側面用面体22をそれぞれインサート品として金型50の所定位置に設置して、ゲート部50aを介して金型50に充填樹脂材を流し込み、充填樹脂材を固化させることで上記複合容器100が得られる。
【0054】
次に、金型50内における充填樹脂材の流れを説明する。金型50のゲート部50aから充填樹脂材を充填すると、まず、
図8(a)に白抜矢印で示すように、樹脂充填材は帯状部形成領域54aの一端側に向かって流れる。帯状部形成領域54aの一端側に流入した充填樹脂材は、底面用面体21の他面に到達し、その後、
図8(b)に示すように、底面用面体21の他面に沿って、帯状部形成領域54aの他端側に向かって流れる。そして、上記合流部Jに到達した樹脂充填材は、底枠体形成領域の底環状枠形成領域54b、側環状枠形成領域54cに分流する。底環状枠形成領域54bに流入した充填樹脂材は、合流部Jから、底面用面体21の一面側に回り込み、底面用面体21の外縁端辺部分21aに沿うように分流する。また、側環状枠形成領域54cに流入した充填樹脂材は、底面用面体21の一面(上面)側に設けられる上部領域と、底面用面体21の他面(下面)側に設けられる下部領域とに分流する。但し、上部領域は、
図1等に示す側環状枠33の第一側枠部33a、段部33b、第二側枠部33cに相当し、下部領域は
図1等に示す側環状枠33の脚枠部33dに相当する。
【0055】
そして、金型50内に充填された樹脂が固化(又は硬化)すると、円錐台形状に丸められた側面用面体22の両側端辺部分22a、22bが側接合体38により接合される。これと共に、側面用面体22の内面に底面用面体21が底接合体31により接合され、側面用面体22の天側端辺部分22cに天接合体35が接合される。このようにして、面体20と接合体30とが一体化した本実施の形態の複合容器100が得られる。
【0056】
以上のようにして得られた複合容器100の上記
図8(b)に対応する部分を
図9(a)、(b)に示す。本実施の形態の複合容器100には、上述したとおり、底接合体31と側接合体38との接合部分であって、金型50の上記合流部Jに対応する部分には、底接合体31の外周縁被覆部32aにその上面から底面用面体21側に凹む凹部32bが設けられている。なお、
図9(a)は、収容部10の底面11の部分断面図であり、
図2(a)のC-C断面を表している。
【0057】
図8(b)に示すように、金型50には、底枠体形成領域の底環状枠形成領域54bには、底面用面体21の外縁端辺部分21aの上面に略当接する位置まで突出する突起部55が設けられている。該突起部55は、上記凹部32bに対応する形状を有し、底面用面体21の外縁端辺部分21aに対向配置されると共に、当該外縁端辺部分21aの端面よりも径方向外側まで延在する。
【0058】
以下、当該突起部55の機能を説明する。
上記突起部55を備えていない金型60(
図10(a)参照)を用いて、上記凹部32bの存在しない比較例の複合容器の製造方法を説明する。
図10(a)に示す比較例としての金型60は、第一の金型部材51に替えて、上記突起部55が設けられていない底環状枠形成領域64bを有する第一の金型部材61を用いる点を除いて、
図8(a)に示す金型50と同様の構成を有する。但し、
図10(b)は、
図10(a)に示す金型60を用いて得られた複合容器の断面を表し、本実施の形態の複合容器100の
図9(b)に示す部分に対応し、
図10(c)は
図9(a)に示す部分に対応する。
【0059】
この比較例の金型60でも、ゲート部50aから流し込んだ充填樹脂材が、上記金型50と同様に合流部Jにおいて、底環状枠32を形成するための底環状枠形成領域64bと、側環状枠33を形成するための側環状枠形成領域54cにおいて底面用面体21の一面(上面)側に設けられる上部領域と、底面用面体21の他面(下面)側に設けられる下部領域とに分流する。
【0060】
しかしながら、比較例の金型60は、上記突起部55を有していない。また、合流部J内に位置する底面用面体21の外縁端辺部分21aは、第一の金型部材61、第二の金型部材52及び第三の金型部材53のいずれにも当接せず、上記突起部55にも当接しない。そのため、合流部Jにおいて、底面用面体21の他面側から底面用面体21の一面側に向かう充填樹脂材の充填圧が、底面用面体21の外縁端辺部分21aに負荷されることになる。そのため、
図10(b)、(c)に示すように、得られた成形品(複合容器)ではこの合流部Jに対応する位置において、底面用面体21の外縁端辺部分21aが一面側に浮き上げられて折れ曲がり、外縁端辺部分21aの端面を底接合体31により十分に被覆することができない場合がある。
【0061】
これに対して、本実施の形態では、底枠体形成領域の底環状枠形成領域54bにおいて、底面用面体21の外縁端辺部分21aの上面に略当接する位置まで突出する突起部55を備えた金型50を用いる。そのため、
図8(b)に示すように、底面用面体21の外縁端辺部分21a付近において、上記合流部Jにおいて、充填樹脂材が、底面用面体21の他面から一面側に向かって、外縁端辺部分21aを押し上げる方向に樹脂の充填圧が加わっても、突起部55により底面用面体21の外縁端辺部分21aが一面側に押しつけられるため、外縁端辺部分21aの浮き上がりを防ぐことができる。そのため、底面用面体21の外縁端辺部分21aの端面を樹脂で被覆すると共に、接合連設部等を介して側面用面体22の内面に良好に接合することができる。
【0062】
よって、本実施の形態の複合容器100では、底面用面体21の端面の繊維が、収容部10の底面11の外側(例えば、上面の外側)に露出することを防止することができる。内容物をスプーン等ですくって取り出す際には、端面の繊維がスプーン等に引っ掛かり、繊維がほつれて内容物に混入することを防ぐことができる。
【0063】
さらに、本実施の形態では、ゲート部50aを底面用面体21の他面(下面)の中心に配置し、帯状部形成領域54aに対して底面用面体21を挟んで対向する面(一面/上面)には、第一の金型部材51の平坦面が当接されるようにしている。そのため、ゲート部50aから流入する樹脂の充填圧によって底面用面体21が変形するのを抑制することができる。
【0064】
また、本実施の形態では、側面用面体22の内面に対して、底面用面体21の外縁端辺部分21aを接合し、側面用面体22を底面用面体21よりも下方に延在させて脚体14とし、脚体14の内面に側環状枠33(底接合体31)の脚枠部33dを全周にわたって接合させている。そのため、複合容器100を載置面に載置したときに内容物の重量を脚体14により良好に支持することができる。
【0065】
さらに、本実施の形態では、底面用面体21の上方において、側環状枠33に、段部33bを設けることで、複合容器100をスタッキングしたときに、樹脂成形体部分である段部33bに、樹脂成形体である脚枠部33dにより補強された脚体14が当接するようにしている。そのため、多数の複合容器100をスタッキングしたときに、脚体14が底面用面体21の上面に当接して、底面用面体21にスタッキングされた他の複合容器100の重量が底面用面体21に負荷されて、底面11が変形することを抑制することができる。
【0066】
上記説明した複合容器100によれば、所定形状に切断された底面用面体21及び側面用面体22を樹脂製の接合体30により接合することで、収容部10に要求される強度等を維持しつつ、収容部10の大部分を紙等のシート状の面体20により構成することができる。接合体30に対して面体20の厚みは薄くすることができるため、収容部10全体を樹脂で構成する場合と比較すると、使用する樹脂量を大きく低減することができる。さらに、接合体30についても面体20(底面用面体21等)の端辺部分(外縁端辺部分21a等)を他の面体20(側面用面体22)や、他の端辺部分に接合するために必要な程度の量等にすればよいため、接合体30に要する樹脂量も少なくて済む。
【0067】
また、当該複合容器100は上記のようにインサート成形法を応用して製造することができる。すなわち、接合体30を製造するための金型50に、所定形状の底面用面体21及び側面用面体22をインサート品として所定位置に設置して、金型50の樹脂充填部に樹脂を充填することで、樹脂製の接合体30と面体20とが接合されて一体化した収容部10を有する上記複合容器100を製造することができる。
【0068】
ところで、面体20(底面用面体21、側面用面体22)として紙製面体を用いる場合、その表面に耐水機能が付与されていれば面体20の表面は耐水性を有する。しかしながら、切断面では紙自体が露出するため、端面に水が接触すると、紙製面体の内側に水が浸入してしまう。また、中間層としてEVOH層等の親水性を有する層を備えた多層フィルムなどについても、表層が疎水性であり耐水性を有する場合であっても、切断面では親水性を有する層が露出するため、端面から多層フィルムの内側に水の浸入が可能な場合がある。しかしながら、上記複合容器100では、外縁端辺部分21a等の面体20の端面を外周縁被覆部32a等の接合体30により良好に覆うことができる。そのため、当該複合容器100を食品等の水分を含む内容物、或いは、液体を収容するための容器に適用しても、面体20の内側への水分の侵入を抑制し、面体20の剛性が低下する等の不具合が生じることを防ぐことができる。
【0069】
以上説明した複合容器100及び当該複合容器100を製造する際に用いた金型50は、本発明に係る複合容器及び金型の一態様に過ぎず、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【0070】
例えば、上記実施の形態では、底接合体31と側接合体38との接合部分において、
図1等に示すように、底接合体31の外周縁被覆部32aに径方向に長尺な幅の狭い凹溝からなる凹部32bを3つ設けたが、本発明にいう凹部は当該構成に限定されるものではない。
図11及び
図12(a)の変形例の複合容器200では、底接合体31と側接合体38との接合部分において、底接合体31の変形例の底環状枠32’として、外周縁被覆部32aにその上面から底面用面体21側に凹む、周方向に幅広の凹部32cを1つ設けてもよい。
図11及び
図12(a)に示す例では、帯状部39と同程度の幅を有する凹部32cを設けた例を示した。但し、
図12(a)は、上記実施の形態の複合容器100の
図9(a)に対応する図である。
【0071】
なお、変形例の複合容器200を成形するための金型70を
図12(b)に示す。当該金型70は、第一の金型部材71に、上記凹部32cに対応する形状を有する突起部75を、外周縁被覆部32aを形成するための底環状枠形成領域74b内に設け、当該突起部75が底面用面体21の一面側に突出するように設けた点を除いて、上記実施の形態で説明した金型50(
図8参照)と略同様の構成を有する。なお、
図12(b)において、
図8(b)に示す金型50と同じ構成要素については同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0072】
上記実施の形態で用いた金型50における突起部55と比較すると、当該変形例の金型70における突起部75は周方向の幅が広く、底面用面体21の外縁端辺部分21aが浮き上がるのを広い面積で抑制することができる。また、底環状枠形成領域74b内に当該突起部75を設ける際の金型70の加工が容易になる。当該突起部75についても、角丸形状とし、
図11及び
図12(a)に示す凹部32cの内側において角が丸められた状態とすることで、外周縁被覆部32aが底面用面体21と剥がれにくくすることができる。
【0073】
また、金型50、70に設ける突起部55、75は、面体20(底面用面体21、側面用面体22)の端辺部分(外縁端辺部分21a、一の側端辺部分22a、他の側端辺部分22b、天側端辺部分22c)と接合体30との接合部分であって、樹脂充填圧によって折れ曲がるおそれのある位置であれば、任意に設けることができる。このとき、接合体30に凹部32b、32cが設けられても各面体20と接合体30との接合強度が維持することができ、且つ、樹脂充填圧に抗して面体20の端辺部分が折れ曲がらないようにすることができる程度の大きさの突起部55、75であれば、突起部55、75の大きさや形状も任意である。
【0074】
また、上記実施の形態では、接合体30が主として面体20(底面用面体21、側面用面体22)が収容部10の内面側において接合され、収容部10の内面側にこれらの接合体30による凸部が構成されるようにしたが、本発明に係る複合容器は当該態様に限定されるものではない。例えば、接合体30が主として収容部10の外面側から面体20(底面用面体21、側面用面体22)を接合し、収容部10の内面側に接合体30が凸部となって配置されないようにしてもよいし、接合体30の一部が面体20の外面側から接合され、残りが面体20の内面側から接合されるなど種々の態様を適用することができる。
【0075】
上記実施の形態のように、接合体30を主として収容部10の内面側から接合し、接合体30を面体20で外側から覆うように構成すれば、収容部10の外面側から接合体30が視認されないようにすることができる。また、当該複合容器100を浴室等で使用する容器として用いる場合、結露等により複合容器100の外面に水滴が付着することがあり、接合体30が収容部10の外面側に突出しない方が好ましい場合がある。上記実施の形態のように、接合体30を主として収容部10の内面側から接合することで、湿気の多い環境下での使用でも十分に強度を維持することのできる容器として用いることができる。
【0076】
一方、接合体30を主として面体20の外面側に接合するようにすれば、収容部10の内側に接合体30が突出して存在しないため、例えば、収容部10にヨーグルト、プリン、或いはクリーム等の化粧品等を収容したときに、接合体30と面体20との接合部分にこれらの内容物が付着して内容物をきれいに取り出すことができないといった不具合が生じることを抑制することができる。
【0077】
このように内容物や当該複合容器100に求められる外観や機能等に応じて、接合体30を収容部10の内面側から面体20を接合するようにするか、或いは収容部10の外面側から面体20を接合するようにするか等については適宜選択することができる。また、例えば、側面用面体22の一の側端辺部分22aと他の側端辺部分22bとを接合する際に、上述した側接合体38を側面用面体22の内面側及び外面側のそれぞれに設け、両側から側面用面体22の一の側端辺部分22aと他の側端辺部分22bとを接合するなど、面体20に対する接合体30の配置は特に限定されるものではない。
【0078】
上記実施の形態では収容部10が、その底面11及び天面13が円形のカップ状に形成された例を示したが、収容部10の具体的な形状は特に限定されるものではない。例えば、深皿状、或いは壜状等に形成されていてもよく、底面11及び天面13の形状についても円形に限らず、正方形、長方形等であってもよいし、多角形状等であってもよい。
【0079】
上記実施の形態では、1枚の側面用面体22を丸めて、一の側端辺部分22aと他の側端辺部分22bとを接合するものとしたが、収容部10の側面12を構成する際に用いる側面用面体22の枚数は特に限定されるものではなく、2枚以上を用いて、各側面用面体22の端辺同士を接合することにより面体20を得てもよい。また、1枚の側面用面体22は切り込み部分を有していてもよく、その切断辺同士を上記実施の形態と同様に側接合体38の一部を用いて接合するようにしてもよい。そのようにすれば多様な形状の収容部10を形成することができる。
【0080】
さらに、上記実施の形態では、底接合体31と底面用面体21とを用いて、収容部10の底面11を構成したが、底接合体31の形状は特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0081】
10 :収容部
11 :底面
12 :側面
13 :天面
14 :脚体
20 :面体
21 :底面用面体
21a :外縁端辺部分(端辺部分)
22 :側面用面体
22a :側端辺部分
22b :側端辺部分
22c :天側端辺部分
30 :接合体
31 :底接合体
32 :底環状枠
32a :外周縁被覆部(端辺被覆部)
32b :凹部
32c :凹部
33 :側環状枠
33a :第一側枠部
33b :段部
33c :第二側枠部
33d :脚枠部
35 :天接合体
35a :フランジ部
38 :側接合体
39 :帯状部
39a :一端部
50 :金型
50a :ゲート部
51 :第一の金型部材
52 :第二の金型部材
53 :第三の金型部材
54a :帯状部形成領域
54b :底環状枠形成領域
54c :側環状枠形成領域
54d :側接合体形成領域
55 :突起部
60 :金型
61 :第一の金型部材
64b :底環状枠形成領域
70 :金型
71 :第一の金型部材
74b :底環状枠形成領域
75 :突起部
100 :複合容器
J :合流部
O :中心軸線