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特開2024-94987レリーフ弁における弁座部のシール構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094987
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】レリーフ弁における弁座部のシール構造
(51)【国際特許分類】
   F16K 17/04 20060101AFI20240703BHJP
   F16K 1/36 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
F16K17/04 A
F16K17/04 B
F16K1/36 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211944
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000241795
【氏名又は名称】北越工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】弁理士法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 翔
【テーマコード(参考)】
3H052
3H059
【Fターム(参考)】
3H052AA01
3H052BA22
3H052BA35
3H052CA02
3H052CA26
3H052CA34
3H052CB02
3H052CC03
3H059AA02
3H059BB04
3H059BB24
3H059BB40
3H059CA05
3H059CA24
3H059CA28
3H059CB02
3H059CB15
3H059CC02
3H059CD05
3H059EE01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シール材の劣化に伴う作動圧力の変化がないリーフ弁を提供する。
【解決手段】レリーフ弁1の弁体40の閉塞面41の外周縁に,閉弁時,弁座30のシート面31と接触する環状接触面42を設けると共に,該環状接触面42に対して内周側に,弾性体から成るシール材70を収容する凹部43を形成し,この凹部43内に収容される前記シール材70に,環状接触面42よりもシート面31側に膨出した環状膨出部71を設けると共に,環状接触面42よりも前記凹部43の内側に陥没した陥没部72を前記環状膨出部71に隣接して設ける。そして,この環状膨出部71と陥没部72を,閉弁時に環状膨出部71が圧潰されたシール材70が凹部43内に収容されると共に,該収容状態においても陥没部72が消失しないサイズに設定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口と連通する一次流路,出口と連通する二次流路,及び,前記一次流路と前記二次流路を連通する連通口を備えた弁箱と,前記二次流路側より前記連通口を開閉する弁体と,前記連通口を閉塞する方向に前記弁体を付勢する圧縮バネを備え,前記一次流路の圧力によって前記弁体に作用する開弁方向の力が前記圧縮バネの付勢力を超えることで前記連通口が開くよう構成されたレリーフ弁において,
前記連通口の周縁に前記弁体が着座するシート面を有する弁座を設けると共に,前記弁体に前記シート面と接触して前記連通口を閉塞する閉塞面を設け,
前記シート面又は前記閉塞面のいずれか一方の面に,閉弁時に他方の面と接触する環状接触面を前記連通口と同心に設けると共に,該環状接触面に対して内周側に,弾性体から成るシール材を形成する凹部を備え,
前記凹部内に形成される前記シール材は,前記環状接触面よりも前記他方の面側に膨出した環状膨出部を設けると共に,前記環状接触面よりも前記凹部の内側に陥没した陥没部を前記環状膨出部に隣接して設けて成り,
閉弁時に,前記他方の面によって前記環状膨出部が圧潰されて前記シール材が前記凹部内に収容されると共に,該収容状態において前記陥没部を消失させないサイズで前記環状膨出部と前記陥没部を設けたことを特徴とするレリーフ弁における弁座部のシール構造。
【請求項2】
前記陥没部を前記環状膨出部に対し内周側に設けたことを特徴とする請求項1記載のレリーフ弁における弁座部のシール構造。
【請求項3】
前記陥没部を前記環状膨出部に対し外周側に設けると共に,該陥没部を前記環状膨出部と同心の環状溝として形成することを特徴とする請求項1記載のレリーフ弁における弁座部のシール構造。
【請求項4】
前記凹部を,前記環状接触面と同心に形成された環状溝として形成したことを特徴とする請求項1~3いずれか1項記載のレリーフ弁における弁座部のシール構造。
【請求項5】
前記凹部を,前記環状接触面に対し内周側における前記一方の面の全体に設けたことを特徴とする請求項1~3いずれか1項記載のレリーフ弁における弁座部のシール構造。
【請求項6】
前記陥没部の内周側において前記一方の面と前記他方の面が,閉弁時に接触しない構造としたことを特徴とする請求項2記載のレリーフ弁における弁座部のシール構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレリーフ弁における弁座部のシール構造に関し,より詳細にはレリーフ弁の閉弁時に弁座と弁体間の間隔を介した流体の漏出を防止するためのシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一次側の圧力が二次側の圧力に対し所定の作動開始圧力以上の圧力差に上昇すると自動で開弁するレリーフ弁は,回路内の圧力が過大に増加した場合に開弁して圧力を逃がすための安全弁や,一次側の圧力を一定圧力に保持するための保圧弁又は背圧弁等として,油圧回路や空気圧・蒸気圧回路等の流体を取り扱う回路において広く用いられている。
【0003】
このようなレリーフ弁100の一例を,図6を参照して説明する。
【0004】
図6に示すレリーフ弁100は,弁箱110と,該弁箱110の上部を覆うボンネット120を備え,弁箱110には入口115と連通した一次流路111と,該一次流路111と連通する二次流路112が設けられている。
【0005】
一次流路111の上端は,二次流路112に向かって開口しており,これにより一次流路111の上端開口が一次流路111と二次流路112とを連通する連通口113となっていると共に,二次流路112を出口116と連通させることで,入口115から一次流路111を介して二次流路112に導入された流体が出口116より排出されるように構成されている。
【0006】
前述の連通口113の周縁には弁座130が設けられていると共に,二次流路112内には弁体140が設けられており,この弁体140を弁座130に着座させることにより二次流路112側より連通口113を閉じてレリーフ弁100を閉弁することができるように構成されていると共に,弁体140を弁座130から離間させることで連通口113を開いてレリーフ弁100を開弁することができるように構成されている。
【0007】
この弁体140は,ボンネット120内に形成されたバネ室121内に収容されている圧縮バネ122によって弁座130に着座する方向に常時付勢されており,これにより一次流路111内の圧力が低く,二次流路112に対する一次流路111の圧力差が圧縮バネ122の付勢力によって決まる所定の作動開始圧力未満となっている状態では圧縮バネ122の付勢力によって弁体140が弁座130に着座した閉弁状態となる。
【0008】
一方,一次流路111内の圧力が上昇して二次流路112に対する一次流路111の圧力差が前述した作動開始圧力以上となると,この圧力上昇によって弁体140が圧縮バネ122の付勢力に抗して弁座130より離間することで,連通口113が開放された開弁状態となるように構成されている。
【0009】
以上のように構成されたレリーフ弁100では,閉弁時に弁座130と弁体140間を流体が通過しないよう,弁座130と弁体140の間にゴム等の弾性体から成るシール材170を取り付けてシールする構成が採用されており,図6に示すレリーフ弁100では,弁体140の下端面145の全面にゴムシートから成るシール材170を貼着することによりシールする構成を採用している。
【0010】
なお,図6を参照して説明したレリーフ弁100は,弁体140の下端面145の全面にシール材170を貼着する構造を採用するものであったが,後掲の特許文献1には,図7に示すように,弁体240の下端面245の中央部分に凹部243を設け,この凹部243内に弾性体から成るシール材270を取り付けると共に,弁座230の内周縁に弁体240側に向かって突設された環状突起232を設けた構造のレリーフ弁200が記載されている(特許文献1の図2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3292796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図6及び図7を参照して説明したレリーフ弁100,200では,弁体140,240にゴム等の弾性体から成るシール材170,270を取り付けることで,閉弁時における弁体140,240と弁座130,230間の間隔をシールして該間隔を介した流体の漏出を効果的に防止できるものとなっている。
【0013】
しかしながら,このようなシール材170,270を備えたレリーフ弁100,200では,閉弁時,シール材170,270は弁体140,240と弁座130,230間に挟持されて弾性変形した状態に保持されているため,経年劣化によりシール材170,270の復元力が失われて挟持部分のシール材170,270の厚みが減少すると,この厚みの減少分,閉弁時における弁体140,240の下降位置が下がり,圧縮バネ122,222の伸張長さが増大する。
【0014】
この圧縮バネ122,222は,圧縮された状態から伸張するに従い付勢力が減少することから,前述したように閉弁時における圧縮バネ122,222の伸張長さが増大すれば,閉弁時に弁体140,240に加わる付勢力も低下し,その結果,経時と共にレリーフ弁100,200の作動開始圧力が徐々に低下して一定に維持できないという問題が生じ得る。
【0015】
また,図6に示したレリーフ弁100では,弁座130の内周縁に形成されているエッジE(図6中の拡大図参照)が閉弁時にシール材170に食い込むことで,この食い込み部分でシール材170の劣化が加速する。
【0016】
同様に図7に示すレリーフ弁200の構成でも,弁座230の内周縁に弁体240側に向かって突出させた環状突起232が設けられており,この環状突起232をシール材270に深く食い込ませることで弁座230とシール材270の接触圧を確保していることから,環状突起232を食い込ませている部分のシール材270の劣化が加速する。
【0017】
その結果,上記いずれの構造を採用した場合であっても,シール材170,270のうち他部材の食い込みが生じている部分には比較的早期に破断やひび割れ等が生じ,その結果,シール材170,270の寿命が短くなるという問題が生じ得る。
【0018】
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消すべくなされたものであり,経年劣化等に伴う復元力の低下等,シール材の特性に変化が生じた場合であってもレリーフ弁の作動開始圧力が変化することを抑制し得る,レリーフ弁における弁座部のシール構造を提供することを第1の目的とする。
【0019】
また,本発明は,シール材に対し他部材を局部的に食い込ませる構造を採用することなく流体をシールするために必要な面圧を確保し得る,レリーフ弁における弁座部のシール構造を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするために記載したものであり,言うまでもなく,本発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0021】
上記目的を達成するために,本発明のレリーフ弁1における弁座部のシール構造は,
入口15と連通する一次流路11,出口16と連通する二次流路12,及び,前記一次流路11と前記二次流路12を連通する連通口13を備えた弁箱10と,前記二次流路12側より前記連通口13を開閉する弁体40と,前記連通口13を閉塞する方向に前記弁体40を付勢する圧縮バネ22を備え,
前記一次流路11の正圧又は二次流路12の負圧のいずれによっても,開弁可能に,前記一次流路11と前記二次流路12の圧力差によって,前記弁体40に作用する開弁方向の力が前記圧縮バネ22の付勢力を超えることで前記連通口13が開くよう構成されたレリーフ弁1において,
前記連通口13の周縁に前記弁体40が着座するシート面31を有する弁座30を設けると共に,前記弁体40に前記シート面31と接触して前記連通口13を閉塞する閉塞面41を設け,
前記シート面31又は前記閉塞面41のいずれか一方の面(実施形態において閉塞面41)に,閉弁時に他方の面(実施形態においてシート面31)と接触する環状接触面42を前記連通口13と同心に設けると共に,該環状接触面に対して内周側に,弾性体から成るシール材70を形成する凹部43を形成し,
前記凹部43内に形成される前記シール材70に,前記環状接触面42よりも前記他方の面(シート面31)側に膨出した環状膨出部71を設けると共に,前記環状接触面42よりも前記凹部43の内側に陥没した陥没部72を前記環状膨出部71に隣接して設けて成り,
閉弁時に,前記他方の面(シート面31)によって前記環状膨出部71が圧潰されて前記シール材70が前記凹部43内に収容されると共に,該収容状態において前記陥没部72を消失させないサイズで前記環状膨出部71と前記陥没部72を設けたことを特徴とする(請求項1)。
【0022】
前記陥没部72は,前記環状膨出部71に対し内周側(一次流路11側)に設けるものとすることができる(請求項2;図1~4参照)。
【0023】
又は,前記陥没部72は,前記環状膨出部71に対し外周側(二次流路12側)に設けることもでき,この場合,陥没部72を該環状膨出部71と同心の環状溝として形成する(請求項3;図5参照)。
【0024】
また,前記凹部43は,前記環状接触面42と同心に形成された環状溝として形成することができる(請求項4:図1,2,4及び5参照)。
【0025】
更に,前記凹部43は,前記環状接触面42に対し内周側における前記一方の面(実施形態において閉塞面41)の全体に設けるものとしても良い(請求項5;図3参照)。
【0026】
陥没部72を環状膨出部71に対し内周側(一次流路11側)に設ける構成を採用する場合,前記陥没部72の内周側において前記一方の面(実施形態において閉塞面41)と前記他方の面(実施形態においてシート面31)が,閉弁時に接触しない構造とするものとしても良い(請求項6;図3,4参照)。
【発明の効果】
【0027】
以上で説明した本発明の構成により,本発明の弁座部のシール構造を備えたレリーフ弁1では,以下の顕著な効果を得ることができた。
【0028】
弁座30に設けたシート面31と,弁体40に設けた閉塞面41のいずれか一方の面(実施形態において閉塞面41)に,閉弁時に他方の面(実施形態においてシート面31)と接触する環状接触面42を前記連通口13と同心に設けることで,環状接触面42と他方の面(シート面31)が接触した状態で閉弁することでシール材70の劣化の程度に拘わらず閉弁時における弁体40の配置位置を常に同じ位置とすることができた。
【0029】
その結果,閉弁時における圧縮バネ22の伸張長さについても変化させることなく一定とでき,弁体40に加わる付勢力も一定となることで,シール材70の経年劣化によってもレリーフ弁1の作動開始圧力が変化しないレリーフ弁1を提供することができた。
【0030】
しかも,他方の面(シート面31)に対し環状接触面42が接触した状態で閉弁することで,閉弁時にシール材70に加えられる変形量(潰し代)も一定に制限されることとなることから,過度に変形させた状態で使用することにより生じるシール材70の短寿命化を防止して,シール材を設けた弁体40又は弁箱10の交換時期を延長することができた。
【0031】
しかも,本発明の弁座部のシール構造では,シール材70に環状膨出部71を設けるだけでなく,この環状膨出部71に隣接して閉弁時においても消失することなく残存する陥没部72を設けたことで,閉弁時にこの陥没部72内に導入された圧縮流体が,この陥没部72に隣接する部分のシール材70(環状膨出部71を圧潰させた部分71’)を圧迫することで他方の面(シート面31)に対するシール材70の面圧を高めてシール性を向上させることができた。
【0032】
その結果,陥没部72を環状膨出部71に対し内周側(一次流路11側)に設けた構成(図1図4参照)では,閉弁時に一次流路11から二次流路12に向かう流体の漏出防止効果を高めることができると共に,陥没部72を環状膨出部71に対し外周側(二次流路12側)に設けた構成(図5参照)では,閉弁時に一次流路11に対し二次流路12の圧力が高くなる用途でレリーフ弁1を使用した場合であっても,二次流路12から一次流路11に向かう流体の逆流防止効果を高めることができた。
【0033】
なお,陥没部72を環状膨出部71に対し内周側に設ける構成では,陥没部72に対し内周側における前記一方の面(閉塞面41)と前記他方の面(シート面31)を閉弁時においても接触させない構造とすることで,陥没部72に対し一次流路11内の圧縮流体が導入され易くなることで前述したように他方の面(シート面31)に対するシール材70の接触部分の面圧をより一層高めることができた。
【0034】
しかも,一次流路11内の加圧された流体,従って,温度の高い流体が陥没部72内に導入され易くなることで,寒冷時の使用においてシール材70を好適に温めることができ,シール材70の冷却に伴うゴム硬度の上昇によってレリーフ弁1の作動開始圧力が変化することも好適に防止することができた。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の弁座部のシール構造を備えたレリーフ弁の断面図。
図2】本発明の一実施形態を示す弁座部のシール構造の拡大断面図であり,(A)は開弁時,(B)は閉弁時の状態。
図3】本発明の別の実施形態を示す弁座部のシール構造の拡大断面図であり,(A)はレリーフ弁全体を示し,(B)は開弁時,(C)は閉弁時の状態をそれぞれ示す。
図4】本発明の更に別の実施形態を示す弁座部のシール構造の拡大断面図であり,(A)は開弁時,(B)は閉弁時の状態。
図5】陥没部72を環状膨出部71に対し外周側(二次流路12側)に設けた実施例を示し,(A)は開弁時,(B)は閉弁時の状態。
図6】従来のレリーフ弁の断面図。
図7】従来のレリーフ弁の断面図(特許文献1の図2に対応)。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に,添付図面を参照しながら,本発明の弁座部のシール構造を備えたレリーフ弁1について説明する。
【0037】
〔レリーフ弁の全体構造〕
図1に,本発明の弁座部のシール構造を備えたレリーフ弁1の構成例を示す。
【0038】
このレリーフ弁1は,図6を参照して説明したレリーフ弁100と基本構造を共通とするもので,弁箱10と,該弁箱10の上部を覆うボンネット20を備え,このうちの弁箱10には,入口15と連通した一次流路11と,該一次流路11と連通する二次流路12が出口16と連通して形成されている。
【0039】
二次流路12内に向かって開口する一次流路11の上端開口は,一次流路11と二次流路12を連通する連通口13となっており,二次流路12内に設けた弁体40が連通口13の中心を通る軸線X上を進退移動することで二次流路12側より連通口13を開閉することができるように構成されている。
【0040】
この連通口13の周縁には,弁体40が着座するシート面31を備える弁座30が形成されており,閉弁時,弁体40が弁座30に着座すると弁体40の下端部に設けた閉塞面41がシート面31上に載置されることにより弁体40の閉塞面41によって連通口13が閉塞されるように構成されている。
【0041】
この弁体40は,ボンネット20内に形成されたバネ室21に収容されている圧縮バネ22によって弁座30に着座する方向に付勢されており,これにより,一次流路11内の圧力が低く二次流路12との圧力差が圧縮バネ22の付勢力によって決まる所定の作動開始圧力未満となっている状態では圧縮バネ22の付勢力によって弁体40が弁座30に着座して閉弁した状態となり,一次流路11内の圧力が上昇して二次流路12との圧力差が前述した作動開始圧力以上になると,この圧力差によって弁体40を弁座30より離間させる方向に作用する力が圧縮バネ22の付勢力に打ち勝って,弁体40が弁座30より離間して連通口13が開くことでレリーフ弁1が開弁する。
【0042】
〔シール構造〕
弁座30のシート面31と,弁体40の閉塞面41のいずれか一方の面には,ゴム等の弾性材料から成るシール材70が設けられ,閉弁時に前記一方の面に設けたシール材70を他方の面に圧接させることで前記一方の面と他方の面間をシールすることができるように構成されている。
【0043】
以下で説明する実施形態では,弁体40の閉塞面41を前述した「一方の面」としてこの閉塞面41にシール材70を設けると共に,弁座30のシート面31を弁体40の閉塞面41(一方の面)に設けたシール材70が圧接される前述の「他方の面」とした例について説明する。
【0044】
しかしながら,本発明の弁座部のシール構造は以下に説明する実施形態の構成に限定されず,これとは逆に弁座30のシート面31を前述の「一方の面」として該シート面31にシール材70を設けると共に,弁体40の閉塞面41をシート面31(一方の面)に設けたシール材70が圧接される前述の「他方の面」とするものとしても良い。
【0045】
弁体40に設けた前述の閉塞面41(一方の面)の周縁部には,閉弁時に弁座30のシート面31(他方の面)と接触される環状接触面42が設けられていると共に,該環状接触面42に対し内周側に位置する部分の閉塞面41には,弾性体から成るシール材70を形成するための凹部43が形成されている。
【0046】
図1に示す実施形態では,閉塞面41のうち環状接触面42に対し内周側の部分に環状接触面42と同心を成す環状溝を形成し,この環状溝を前述の凹部43と成すと共に,この凹部43内に無端環状のシール材70を取り付けている。
【0047】
図1に示す実施形態では,凹部43である環状溝の内径を,連通口13の開口径よりも大きく形成することで,閉弁時に環状接触面42だけでなく,凹部43に対し内周側に存在する閉塞面41の一部41aについてもシート面31と接触させることができるようにしている。
【0048】
閉塞面41に設けた凹部43内に形成されるシール材70には,図2(A)に示すように環状接触面42よりもシート面31側(図中の紙面下側)に膨出した環状膨出部71を環状接触面42と同心に設けると共に,該環状膨出部71に隣接して環状接触面42よりも前記凹部43の内側(図中の紙面上側)に陥没した陥没部72を設けている。
【0049】
本実施形態では,図2(A)に示すように環状膨出部71をシール材70の外周縁側(二次流路12側)に設けると共に,この環状膨出部71に対し内周側(一次流路11側)に,陥没部72を,環状膨出部71と同心の環状溝として設けている。
【0050】
この環状膨出部71と陥没部72は,図2(B)に示すように,閉弁時にシート面31によって環状膨出部71を圧潰することで,シール材70が凹部43内に収容されると共に,該収容された状態においても陥没部72が消失することなく残存するように,そのサイズが設定されている。
【0051】
以上のように構成された弁座部のシール構造を有するレリーフ弁1において,弁座30に対し弁体40が着座して閉弁すると,弁体40の閉塞面41に設けた環状接触面42が弁座30のシート面31と接触することで,シール材70の劣化の程度に拘わらず閉弁時における弁体40の下降位置が常に同一位置となることでレリーフ弁1の作動開始圧力が変化することが防止される。
【0052】
このとき,シール材70のうち環状膨出部71を圧潰させた部分71’,従って,高い復元力を有する部分が弁座30のシート面31に圧接されることで,シート面31と閉塞面41間がシールされるが,前述したように閉弁時には弁体40の閉塞面41に設けた環状接触面42が弁座30のシート面31に接触した状態にあるため,シール材70の変形量(潰れ代)は一定の範囲に制限されている。
【0053】
その結果,シール材70に他部材を深く食い込ませる等して接触部の面圧を確保していた従来の構成に比較して,シール材70の経年劣化を遅らせることができると共に,部分的な劣化の発生についても防止することができる。
【0054】
しかも,シール材70には環状膨出部71に対し内周側に隣接して陥没部72が設けられており,この陥没部72は,閉弁時に環状膨出部71が圧潰されて起こるシール材70の変形によっても消失することなく残存している。
【0055】
ここで,図1及び図2に示した構成では閉弁時にはシール材70のうち陥没部72の内周側の部分70aがシート面31に接触しているものの,ここでの接触は単なる接触であって圧接された状態ではなく該部分はシールされていない状態となっている。
【0056】
また,弁体40の閉塞面41のうち,凹部43に対し内周側にある部分の一部41aもシール面31と接触しているものの,この部分の接触は金属同士の接触であるため該部分もシールされていない状態となっている。
【0057】
その結果,一次流路11内の圧縮流体は,図2(B)中に矢印で示すように閉塞面41の一部41a及びシール材70の部分70aとシート面31間の間隔を通過して陥没部72内に導入され,シール材70のうち陥没部72の外周側にある部分(環状膨出部71を圧潰させた部分)71’を外周方向に圧迫することで,該部分71’のシート面31に対する圧接力(面圧)が増大してシール性を向上させることができるものとなっている。
【0058】
〔シール構造の変形例1〕
以上,図1及び図2を参照して説明した弁座部のシール構造では,シール材70に設けた陥没部72に対し内周側においてもシール材の一部70aや閉塞面41の一部分41aをシート面31と接触させた状態となっており,この接触部分に生じた狭い隙間を介して一次流路11内の圧縮流体が陥没部72内に導入される構造となっていた。
【0059】
これに対し,図3及び図4に示す実施形態では,閉弁時,シール材70に設けた陥没部72の内周側におけるシール材70や閉塞面41がシート面31と接触することなく所定の間隔を開けて対峙するように構成したことで,一次流路11内の圧縮流体を陥没部72内に円滑に導入できるようにしている。
【0060】
このように構成することで,図3及び図4に示す構成では,シール材70のうち陥没部72の外周側の部分(環状膨出部71を圧潰させた部分)71’を外周方向に圧迫する作用を高めて該部分71’をシート面31側に押し出す作用を更に高めることができ,閉弁時におけるシール性をより一層向上させることができる。
【0061】
また,外気温度が低い場合には冷却によってシール材70のゴム硬度が上昇して変形し難くなることで,閉弁時にシール材70の環状膨出部71を完全に圧潰させることができずに環状接触面42がシート面31より浮き上がった状態で弁体40が下降を停止してしまう場合がある。この場合,閉弁時における圧縮バネ22の伸張長が短くなることで,弁体40に作用する付勢力が増大する結果,レリーフ弁1の作動開始圧力が高くなる変化が起こる。
【0062】
しかしながら,前述したようにシール材70の陥没部72に対し一次流路11内の圧縮流体が導入され易い構造とすることで,圧力が高く,従って温度が高い一次流路11内の圧縮流体が陥没部72内に導入されることでシール材70を効果的に温めることができ,シール材70の低温化に伴い生じ得る前述の作動開始圧力の変化の発生についても防止し,乃至は短時間で解消することができる。
【0063】
このように一次流路11内の圧縮流体をシール材70の陥没部72内に導入し易くするために,図3に示す実施形態では,環状接触面42の形成位置に対し内周側に位置する閉塞面41全体にシール材を形成するための凹部43を設けると共に,この凹部43内に円盤状のシール材70を形成させた構成を採用している。
【0064】
そして,このシール材70の外周縁近傍に環状接触面42よりもシート面31側に膨出した環状膨出部71を設けると共に,この環状膨出部71の形成位置に対し内周側のシール材70全体を環状接触面42よりも凹部43の内側(図中上側)に陥没させて陥没部72を形成した。
【0065】
このように構成することで,図3(C)に示すように閉弁時における閉塞面41とシート面31の接触は,環状接触面42と環状膨出部71を圧潰させた部分71’のみで行われ,この位置よりも内周側での接触が行われないことで,一次流路11内の圧縮流体を陥没部72内に直接導入することができるようになっている。
【0066】
また,図4に示す実施形態では,環状接触面42の形成位置に対し内周側に位置する閉塞面41にシール材70を形成するための凹部43を環状接触面42と同心を成す環状溝として形成すると共に,この凹部43の形成位置よりも内周側の閉塞面41を,環状接触面42よりも上方側に後退させて形成した後退面41’とした。
【0067】
また,シール材70のうち陥没部72の内周側の部分70aについてもこの後退面41’の位置まで上昇させて後退させている。
【0068】
このように構成することで,図4(B)に示すように閉弁時における閉塞面41とシート面31の接触は,環状接触面42と環状膨出部71を圧潰させた部分71’のみで行われ,その内周側では両者の接触が行われないことで一次流路11内の圧縮流体を陥没部72内に直接導入できる構造となっている。
【0069】
〔シール構造の変形例2〕
図1図4を参照して説明した弁座部のシール構造では,いずれもシール材70に設ける陥没部72を,環状膨出部71に対し内周側(一次流路11側)に設けた構成について説明した。
【0070】
これに対し,例えば閉弁時に一次流路11内の圧力よりも二次流路12内の圧力が高まる場合がある用途に使用するレリーフ弁1の場合には,図5に示すように前述の陥没部72を環状膨出部71に対し外周側(二次流路12側)に設ける構成を採用するものとしても良く,また,図示は省略するが陥没部72を環状膨出部71に対し内周側(一次流路11側)と外周側(二次流路12側)の双方に設ける構成を採用するものとしても良い。
【0071】
このように構成することで,図5(B)に示すように閉弁時,二次流路12内の圧力が上昇すると,二次側流路12内の圧縮流体は金属同士で接触している環状接触面42とシート面31との接触部分を通過して陥没部72に導入され,この圧縮流体が,陥没部72に隣接する部分のシール材(環状膨出部71を圧潰させた部分71’)を内周方向に圧迫することで,シート面31に対するシール材70の面圧を上昇させて閉弁時における流体の逆流を好適に防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0072】
1 レリーフ弁
10 弁箱
11 一次流路
12 二次流路
13 連通口
15 入口
16 出口
20 ボンネット
21 バネ室
22 圧縮バネ
30 弁座
31 シート面(他方の面)
40 弁体
41 閉塞面(一方の面)
41a 閉塞面の一部(凹部43に対し内周側の)
41’ 後退面
42 環状接触面
43 凹部
70 シール材
70a シール材の部分(陥没部に対し内周側の)
71 環状膨出部
71’ シール材の部分(環状膨出部を圧潰させた部分)
72 陥没部
100,200 レリーフ弁
110 弁箱
111 一次流路
112 二次流路
113 連通口
115 入口
116 出口
120 ボンネット
121 バネ室
122,222 圧縮バネ
130,230 弁座
232 環状突起
140,240 弁体
243 凹部
145,245 下端面
170,270 シール材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7