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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094997
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 45/33 20180101AFI20240703BHJP
   F21S 45/50 20180101ALI20240703BHJP
   F21W 102/13 20180101ALN20240703BHJP
【FI】
F21S45/33
F21S45/50
F21W102:13
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211963
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【弁理士】
【氏名又は名称】簾内 里子
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100168088
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 貴丈
(72)【発明者】
【氏名】薦田 良
(72)【発明者】
【氏名】奥村 亜耶
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆一
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 葵
(57)【要約】
【課題】軽量化、および剛性の向上を図ることができる車両用灯具を提供する。
【解決手段】
ランプボディの背面壁に、灯室内外を連通させるための空気通路を形成する通気孔、および前記通気孔を囲むようにして、前記ランプボディの後方へ延びる筒状壁が形成されており、前記背面壁には、前記筒状壁から離間しつつ、前記筒状壁を取り囲み、前記ランプボディの後方へ延びる防水壁が形成されており、前記防水壁の少なくとも一部は、背面への延在途中の側面から曲面が突出しており、前記曲面は前記防水壁の基端部側へ折り返して延在し、前記背面壁の一部を構成するように構成した。ランプボディの通気孔の周辺を曲面で構成することができる。平面よりも曲面で構成する方が、剛性を高めることができ、ランプボディの薄肉化を図ることができる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面が開口する容器状のランプボディと、
前記ランプボディの前面開口部に組付けられて、内側に灯室を画成する前面カバーと、を備え、
前記ランプボディの背面壁に、灯室内外を連通させるための空気通路を形成する通気孔、および前記通気孔を囲むようにして、前記ランプボディの後方へ延びる筒状壁が形成されており、
前記背面壁には、前記筒状壁から離間しつつ、前記筒状壁を取り囲み、前記ランプボディの後方へ延びる防水壁が形成されており、
前記防水壁の少なくとも一部は、背面への延在途中の側面から曲面が突出しており、前記曲面は前記防水壁の基端部側へ折り返して延在し、前記背面壁の一部を構成する、
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記防水壁から突出した前記曲面の少なくとも一部の表面から突出して、車両取付用のブラケットが設けられており、前記ブラケットと前記防水壁とが一体的に構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記曲面は、一度前記防水壁の前方へ向かって延出し、その後に前記防水壁の基端部側へ折り返して湾曲して延在し、前記背面壁の一部を構成する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ランプボディ本体に通気孔が形成されたランプボディの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ランプボディには、ランプボディと前面カバーで画成された灯室の内外の通気を連通させる通気孔(呼吸孔)が設けられているものがある(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-124108号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、カーボンニュートラルの観念から、薄肉化により軽量化を図りつつ、剛性を向上させて必要剛性は確保できるランプボディが望まれている。
【0005】
本発明は、これを鑑みてなされたものであり、通気孔が設けられたランプボディを備え、軽量化、および剛性の向上を図ることができる車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するため、本開示のある態様においては、前面が開口する容器状のランプボディと、前記ランプボディの前面開口部に組付けられて、内側に灯室を画成する前面カバーと、を備え、前記ランプボディの背面壁に、灯室内外を連通させるための空気通路を形成する通気孔、および前記通気孔を囲むようにして、前記ランプボディの後方へ延びる筒状壁が形成されており、前記背面壁には、前記筒状壁から離間しつつ、前記筒状壁を取り囲み、前記ランプボディの後方へ延びる防水壁が形成されており、前記防水壁の少なくとも一部は、背面への延在途中の側面から曲面が突出しており、前記曲面は前記防水壁の基端部側へ折り返して延在し、前記背面壁の一部を構成するように車両用灯具を構成した。
【0007】
上記構成により、ランプボディの通気孔の周辺を曲面で構成することができる。平面よりも曲面で構成する方が、剛性を高めることができ、これによりランプボディを薄肉化することができる。
【0008】
また、ある態様においては、前記防水壁から突出した前記曲面の少なくとも一部の表面から突出して、車両取付用のブラケットが設けられており、前記ブラケットと前記防水壁とが一体的に構成されているものとした。
【0009】
また、ある態様においては、前記曲面は、一度前記防水壁の前方へ向かって延出し、その後に前記防水壁の基端部側へ折り返して湾曲して延在し、前記背面壁の一部を構成するものとした。
【発明の効果】
【0010】
以上の説明から明らかなように、通気孔が設けられたランプボディを備え、軽量化、および剛性の向上を図ることができる車両用灯具を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】好適な実施形態に係る車両用灯具の概略構成を示す正面図である。
図2】ランプボディの正面図である。
図3】ランプボディの斜視図である。
図4】ランプボディの端面図である。図2に示す各指示線(切断面)に沿っている。
図5】梁によるトラス構造を説明する説明図である。図2に対応する。
図6】ランプボディ形状の説明図である。図6(A)が比較のための従来構成を有するランプボディ102の鉛直端面図である。図6(B)がランプボディ2の鉛直端面図である。
図7図2のF部を示す。図7(A)が背面図、図7(B)が図7(A)のG-G線に沿った水平端面図、図7(C)が図7(A)のH-H線に沿った鉛直端面図、図7(D)が平面図である。
図8図2のF部の背面斜視図である。
図9】効果を説明するための比較図である。図9(A)が比較のためのランプボディ202の鉛直端面図である。図9(B)がランプボディ2の鉛直端面図である。図7(C)に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の具体的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。また、以下の実施形態および変形例の説明において、同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0013】
(車両用灯具1)
図1は、本発明の好適な実施形態に係る車両用灯具1の正面図である。車両用灯具1は車両の前方の左右の角部に装着される前照灯である。
【0014】
図1に示すように、車両用灯具1は、前方側が開口した容器状のランプボディ2と、ランプボディ2の前面開口部に組付けられる前面カバー4とを備える。前面カバー4は例えばポリカーボネイトなどの透光性を有する樹脂やガラスなどで構成され、前面カバー4がランプボディ2の前面開口部に取付けられることで、内側に灯室Sが画成される。
【0015】
画成された灯室S内には、ハイビーム用のランプユニットHiおよびロービーム用のランプユニットLoが収容されている。
【0016】
ハイビーム用のランプユニットHiおよびロービーム用のランプユニットLoは、光源からの出射光を車両前方に照射して、ハイビーム配光/ロービーム配光を形成するよう構成された光学ユニットである。各ランプユニット(Hi,Lo)には、従来周知の構成、例えば反射型、プロジェクタ型などのランプユニットが用いられており、その種類は問わない。
【0017】
ランプボディ2には、灯室S内外を連通させるための空気通路を形成する通気孔50が形成されている。通気孔50により、灯室内に配置された各ランプユニット(Hi,Lo)の光源点灯による発熱や、気温の変化などに伴う灯室S内の空気の膨張・収縮が許容されるとともに、灯室S内の湿気が外部へと逃がされ、灯室S内に湿気が溜まることが防止される。これにより、灯室S内の水分が灯室Sの内側から前面カバー4に付着することで生じる灯室S内の曇りが防止される。
【0018】
(ランプボディ2)
ランプボディ2の形状について詳しく説明する。図2は、ランプボディ2の正面図である。図3は、ランプボディ2の正面斜視図である。
【0019】
ランプボディ2は、硬質の合成樹脂材料を用いて射出成形により成形される。ランプボディ2の前方開口部の周縁には、前面カバー4の周縁に設けられたシール脚と係合するためのシール溝3が周設されている。ランプボディ2の外表面には、車体に取付けるための車体取付部であるブラケット5が、車体側の取付部分の形状に対応させて突設されている。
【0020】
ランプボディ2は、構成面として、背面壁6、天井面7、底面8、左右の側面9,9を有し、背面壁6が背面側に膨らみ、隣接する天井面7、底面8、および側面9,9と稜線を介して接続されている。また、天井面7、底面8、および側面9,9は基本としてランプボディ2の外側に向かって緩やかに膨らむ凸状の湾曲形状となっており、互いの縁部で緩やかに湾曲して、屈曲部や段差なく連続して連結されている。このため、ランプボディ2は全体として丸みを帯びた容器状に形成されている。本実施形態においては、天井面7は、ランプボディ2の開口部から背面にむかって延出して形成されるが、その延出量も小さく、開口部の縁部から緩やかに背面下方に向かって湾曲しながら延在して背面壁6と接続しており、背面壁6と一体的に構成されている。このように、ランプボディ2の構成面は主として平面ではなく曲率半径の大きな湾曲面で構成される。
【0021】
ランプボディ2には、ロービーム用のランプユニットLoを装着するための第1ユニット取付用孔31が、背面壁6の中央の上方に形成されている。また、ハイビーム用のランプユニットHiを取付けるための第2ユニット取付用孔32が、背面壁6の左方の上方に形成されている。
【0022】
加えて、ランプボディ2には、第1エイミング部材取付用孔41、第2エイミング部材取付用孔42、および第3エイミング部材取付用孔43が、第1ユニット取付用孔31の回りに形成されている。各エイミング部材取付用孔41,42,43には、不図示のエイミング部材が取付けられる。
【0023】
第1エイミング部材取付用孔41は、左右方向には、第1ユニット取付用孔31および第2ユニット取付用孔32の間に配置され、上下方向には背面壁6の下縁部に設けられている。第2エイミング部材取付用孔42は、第1ユニット取付用孔31を基準として、第1エイミング部材取付用孔41に対しておおむね左右対称の位置に設けられている。このため、第2エイミング部材取付用孔42は、第1ユニット取付用孔31から第1エイミング部材取付用孔41までの距離と略等距離だけ、第1ユニット取付用孔31から第1エイミング部材取付用孔41の設けられた左方とは逆方向の右方向にオフセットされた、背面壁6の下縁部に設けられている。第3エイミング部材取付用孔43は、第2エイミング部材取付用孔42の上方で、背面壁6の上端部に形成されている。
【0024】
さらに、ランプボディ2には、第3エイミング部材取付用孔43の右方の、背面壁6の最も右方寄りの領域に通気孔50が形成されている。
【0025】
(背面壁と梁)
背面壁6には、該背面壁6の一部を構成する、第1梁61、第2梁62、第3梁63、第4梁64、および第5梁65が、背面壁6の上端部から下端部に亘り延在している。ここで、背面壁6の梁61~65の構成部分以外の部分を背面壁本体69と称する。
【0026】
第1梁61は、背面壁6の下端部に設けられた第1エイミング部材取付用孔41から、正面視しておおむね上方に向かって、まっすぐに背面壁6の上端部まで延在している。
【0027】
第2梁62は、下方の第1エイミング部材取付用孔41と、上方の第2ユニット取付用孔32を端点として、両者を結ぶようにして延在している。このため、第2梁62は、正面視して、右方に傾いて形成されている。
【0028】
第3梁63は、下方の第2エイミング部材取付用孔42と、上方の第1ユニット取付用孔31を端点として、両者を結ぶようにして延在している。このため、第3梁63は、正面視して、第2梁62とは逆方向の左方に傾いて形成されてている。
【0029】
第4梁64は、下方の第2エイミング部材取付用孔42と、上方の第3エイミング部材取付用孔43を端点として、両者を結ぶようにして延在している。このため、第4梁64は、正面視して、ほぼ鉛直に形成されている。
【0030】
第5梁65は、下方の第2エイミング部材取付用孔42と、上方の通気孔50を起点として、両者を結ぶように延在している。このため、第5梁は、正面視して、右方に傾いて形成されている。
【0031】
図4は、図2に示す切断線に沿った端面図である。図4(A)は図2のA-A線に沿った端面図であり、主として第1梁61の断面形状を示す。図4(B)は、図2のB-B線に沿った端面図であり、主として第2梁62の断面形状を示す。図4(C)は、図2のC-C線に沿った端面図であり、主として第3梁63の断面形状を示す。図4(D)は、図2のD-D線に沿った端面図であり、主として第4梁64の断面形状を示す。図4(E)は、図2のE-E線に沿った端面図であり、主として第5梁65の断面形状を示す。
【0032】
図5(A)~図5(E)に示すように、各梁61~65は、その延在方向に直交した横断面形状が、それぞれの曲率半径や幅、および突出量は異なるものの、全て略円弧状に構成される。梁61,62,63,65は、その湾曲面の突出方向が、灯室S方向(前方)となるように形成されている。梁64は、その湾曲面と突出方向が、灯室S外方向(背面方向)となるように形成されている。
【0033】
各梁は61~65は、突出方向に関わらず、背面壁本体69とは稜線を介して滑らかに接続されており、ランプボディ2の該当断面形状は、一定の肉厚を保ったまま、屈曲部なく連続して構成されている。
【0034】
例えば、第2梁62を含む背面壁6の縦断面形状について、図4(B)を詳しく説明する。図4(B)に示すように、ランプボディ2の開口部上方の縁部にはシール溝3が設けられており(図2も参照のこと)、ここから天井面7と一体化した背面壁本体69が背面の下方に向かって延在し、第2梁62との境界部では、前方に向かって湾曲して、滑らかに第2梁62と接続される。第2梁62は下方へ延在しつつ前方に湾曲してのちに背面へ再び湾曲することで、前方に向かって膨らむ略円弧状に形成される。第2梁62は下縁部で、前方下方に湾曲して、背面壁本体69と再び滑らかに接続される。背面壁本体69は前方下方に延在して、灯室S内側に湾曲して、同曲率で湾曲した底面8の縁部と接続される。底面8はそのまま前方に向かって延在して、ランプボディ2の開口部下方の縁部に設けられたシール溝3に接続される。このように、天井面7と背面壁本体69、背面壁本体69と第2梁62、背面壁本体69と底面8が、それぞれその接続部において、屈曲部や段差を形成しないように、同曲率で湾曲して滑らかに接続されている。
【0035】
図5(A)(C)(D)(E)に示すように、第1梁61、第3梁63、第4梁64(梁部分の凸方向は逆方向)、および第5梁65も、同様にして背面壁本体69と稜線を介して接続される。このように、各梁61~65は、それぞれ延在方向の断面形状を略円弧状に保ちつつ、背面壁6の上端部から下端部まで延在し、かつ背面壁本体69とは、隣接する面同士として端部で、段差や角部を形成せずに、連続して滑らかに接続される。
【0036】
上記のように構成されるランプボディ2の断面形状は、複雑なカーブが連続とした波状に構成される。さらに、背面壁6と天井面7、底面8、側面9,9も同様に稜線を介して接続されており、境界部分で両者は同曲率に湾曲してなめらかに連続して接続される。背面壁6と天井面7、底面8、側面9,9自体も概ね曲率半径の大きな、緩やかに外側に膨らんだ曲面であり、隣接する曲面同士が滑らかに連続している。このため、ランプボディ2自体が、主として湾曲面で構成されて、角部の形成が削減され、肉厚はおおむね一定に保たれる。
【0037】
上記のように構成される背面壁6およびランプボディ2の作用効果を、図5および図6を用いて説明する。図5は、ランプボディ2の正面図であり、ランプボディ2の各梁61~65を薄墨で示した。
【0038】
図5に示すように、各梁61~65は、背面壁6の上端部から下端部まで延在し、かつある梁の端部から他の梁が斜めに延出するなど、三角形を単位としたトラス構造となっている。このため、背面壁6を含むランプボディ2は、荷重に対して変形しにくい構造となっている。また、梁61~65自体が応力を分散させる横断面略円弧状の湾曲面であることから、より変形に強い剛性の高い構造となっている。これによりランプボディ2の剛性が向上し、剛性の向上により薄肉化も可能であり、軽量化を図ることができる。
【0039】
本実施形態においては、各梁61~65の端部には、背面壁6に設けられた第1ユニット取付用孔31およびエイミング部材取付用孔41,42,43が形成されている。これは、取付用孔は、他部品を取付ける性質上、背面壁6の他箇所よりも肉厚で剛性が高い構成となっていることから、これら構造上必要な構成要素を梁の一部、とくに重要な梁の接合点となる箇所に利用することで、背面壁6ひいてはランプボディ2の剛性を向上させた。なお、詳しくは後述するが、通気孔50には、通気孔50を囲うように防水壁が周設されているため、取付用孔と同様に剛性の高い箇所となっている。
【0040】
また、開口部のシール溝3の一部も、トラス構造の一部を構成している。取付孔同様に、開口部のシール溝3は、他部品が係合する性質上、他箇所よりも肉厚で、剛性が高く構成されており(図4参照)、シール溝3の少なくとも一部を用いて、梁61~65と共にトラス構造に構成させることで、ランプボディ2の剛性を向上させた。
【0041】
次に、ランプボディ2の形状の作用効果について説明する。図6(A)は比較用の従来構成のランプボディ102の概略図を示す鉛直断面図である。図6(B)は、ランプボディ2の鉛直断面図である。
【0042】
図6(A)に示すように、従来構成のランプボディ102は、おおむね平面状の背面壁106、天井面107、底面108を有し、鉛直配置される背面壁106の上下の端部に、水平面である天井面107,底面108が、接続される。このため、接続部には90度に曲がった角部が形成される。このように平面と平面とがぶつかり形成される角部は、応力集中が発生しやすい。応力集中による変形を抑制して剛性を確保するために、角部にはリブ110が設けられる。
【0043】
これに対し、図6(B)に示すように、ランプボディ2においては、背面壁6、天井面7、底面8は、互いに稜線を介して接続されている。このように、ランプボディ2は主として湾曲面で構成されており、隣接する面同士が、境界で同曲率に湾曲して接続する。構成面同士が滑らかに連続しており、接続部に屈曲部を形成せず、応力集中による角部が形成されていない。応力が集中する角部の形成を抑制することにより、応力が分散され、変形に強い、剛性の高い構造となっている。本実施形態においては、構成面全てが稜線で接続されたが、少なくとも背面壁6が、天井面7、底面8、側面9,9のいずれかの一面と稜線を介して接続していればよい。
【0044】
同様に、梁61~65は、背面壁本体69とは稜線を介して接続されており、接続部でも滑らかに連続している。このため、背面壁6の断面形状は、屈曲部を持たない波型に構成され、角部への応力集中が抑制され、剛性が向上する。この場合、平面でなければ、各梁61~65が延在方向に対して湾曲する方向(略円弧状断面の突出方向)は、前方/後方(背面方向)のどちらであっても構わない。
【0045】
また厚肉になりがちな面との接続部でも肉厚をおおむね一定に保つことができることから、軽量化を図ることできる。加えて、リブなどの補強部材の接続個所や、角部は、肉厚になり熱がこもりやすいことから、樹脂成型時に成形不良が発生しやすい箇所であったが、これを削減できることで、成形不具合も抑制できる。
【0046】
(通気孔周辺の背面壁形状)
ランプボディ2は、主として曲面の滑らかな連続で構成されており、これによりランプボディ2の剛性を向上させて、ランプボディ2の薄肉化を図っている。本実施形態においては、ランプボディ2の全体が主として曲面で構成されているが、ランプボディ2の少なくとも一部が主として曲面で構成されていればよく、構成面に曲面を用いることで剛性を高めて、薄肉化を図ることができる。本実施形態においては、ランプボディ2の背面壁6に設けられる通気孔50の周辺が主として曲面で構成されており、少なくともこの通気孔50の周辺の構成面に曲面を用いることにより、ランプボディ2の剛性を高め、少なくとも通気孔50周辺部の薄肉化を図ることができる。
【0047】
通気孔50周辺の背面壁6の構成を、図7および図8を用いて説明する。図7および図8は、図2のF部を示し、主として通気孔50および通気孔50周辺の構造を示す。図7(A)は、F部の背面図を示す。図7(B)は図7(A)に示すG-G線に沿った端面図である。図7(C)は図8(A)に示すH-H線に沿った端面図である。図7(D)はF部の平面図である。図8は、F部の背面斜視図である。図2の正面図、および図3の正面斜視図も参照のこと。
【0048】
図7および図8に示すように、通気孔50は、背面壁6に設けられた貫通孔であり背面視して、上方側が膨らんだ半円柱形状を有している。筒状壁51が、通気孔50を囲むようにして、背面壁6の背面側表面から後方に突出して形成されており、通気孔50は筒状壁51内側の空間として構成されている。
【0049】
筒状壁51は、上方側が膨らんだ略半円筒形状であり、その半円筒部分が平面部分よりも多少下側まで延長して形成されている。換言すれば、筒状壁51は、円筒形状に形成され、筒状壁51の内部には、筒状壁51の内部空間を上下に仕切る隔壁57が形成されており、筒状壁51の下側には、下端に開口する切り欠き部58が深く形成されている。筒状壁51の水平部分(隔壁57)よりも多少下方位置まで延長された部分に挟まれた空間が切り欠き部58である。これにより通気孔50が略半円柱形状に構成される。
【0050】
筒状壁51の内周面および外周面は、軸線に対して僅かな勾配が設けられている。即ち、内周面は後端に行くに従って、軸線から遠ざかるように、外周面は後端に行くに従って軸線に近づくようになっている。
【0051】
筒状壁51が設けられた背面壁6の背面側表面には、通気孔50を、筒状壁51からある程度離れた位置において筒状壁51を囲むようにして、防水壁53が設けられている。防水壁53は後方へ突出して設けられており、防水壁53の後方へ突出する後方先端部は、筒状壁51の最も後方に突出する後方最先端部よりも、より後方へ位置するように設けられている。
【0052】
図7(A)に示すように、防水壁53は、背面視して、上方に膨らんだ庇部53aと、庇部53aの右端点から、下方へまっすぐに伸びる右側面53bと、庇部53aの左端点から、下方へまっすぐに伸びる左側面53cと、右側面53bの下端点から、左下方へ斜めに延びる下斜面53dからなる。下斜面53dは、左側面53cの下端点から下方延長線上まで伸びて形成されており、防水壁53は、最も下方に配置される部分が解放された囲い形態となっている。
【0053】
筒状壁51および防水壁53により、水が通気孔50を通り灯室Sへ侵入しにくい構成となっている。また、筒状壁51や防水壁53に水が付着した場合でも、防水壁53の開放部や筒状壁51の勾配により、速やかに流れ落ちる。
【0054】
図7(B)および図7(C)に示すように、防水壁53は背面壁6から背面に向かって突出して設けられており、防水壁53の少なくとも一部(本実施形態においては、庇部53a、右側面53b、および左側面53cの基端側)は、ランプボディ2の背面壁6も構成している。
【0055】
防水壁53が囲う、筒状壁51がある方向を内側、逆方向を外側とすると、庇部53a、右側面53b、および左側面53cは、背面壁6の背面側表面から、後方に向かって突出して設けられている壁面であり、これらが後方に向かって突出(延在)する途中で、これらの外側表面に、外側へ向かって曲面が突出して設けられており、この曲面がそれぞれ庇部53a、右側面53b、および左側面53cの基端部側(前方)へ折り返すように湾曲し延在して、背面壁6の一部を構成している。
【0056】
換言すれば、庇部53a、右側面53b、および左側面53cの外側の周辺の背面壁6は、防水壁53からある程離間した位置から、後方へ向かって湾曲して延在し、その後さらに防水壁53に向かって湾曲して庇部53a、右側面53b、および左側面53cの外側表面に接続される。庇部53a、右側面53b、および左側面53cにおいては、それぞれ背面壁6が接続された箇所から、それぞれの基端部までは背面壁6の一部を構成することとなる。庇部53a、右側面53b、および左側面53cである背面壁6は、それぞれの基端部で防水壁53の内側に向かって、さらに湾曲して、防水壁53の内側の背面壁6を構成している。
【0057】
上記のように構成されるため、ランプボディ2を正面視すると、通気孔50の周辺のランプボディ2は、通気孔50を中心として、通気孔50からある程度離間した位置に、窪みが形成されているように見え、ランプボディ2を背面視すると、通気孔50の周辺のランプボディ2は、後方へ向かって盛り上がっているように見える。通気孔50を中心とした凹凸部がランプボディ2に形成される。
【0058】
(作用効果)
上記のよう構成することで、通気孔50の周辺の背面壁6を、曲面で構成することができる。ランプボディ2を、平面よりも曲面で構成する方が、曲げモーメントを向上させて剛性を高めることができ、これによりランプボディ2を薄肉化することができる。上記構成により、少なくとも通気孔50の周辺の背面壁6の剛性を高めることができ、通気孔50周辺の背面壁6の肉厚を薄肉としても、従来と同程度の剛性を確保することができる。
【0059】
本実施形態においては、背面壁6は庇部53a、右側面53b、および左側面53cの周辺の背面壁6が曲面で構成されたが、これに限られず、防水壁53の少なくとも一部で、防水壁53の後方への突出途中の外側表面に、曲面が外側へ突出して設けられ、該曲面が防水壁53の基端部側へ湾曲して折り返して延在し、背面壁6の一部を構成すればよい。換言すれば、この防水壁53から外側に突出して設けられる湾曲面が背面壁6であり、湾曲した背面壁6が防水壁53の外側表面に接続される。
【0060】
防水壁53が後方突出する途中で、曲面(背面壁6)が外側に突出しており、該曲面は、基端部側に湾曲して折り返しているところ、該曲面は、防水壁53から突出する際、一度防水壁53の先端(後方)外側に延出して、その後に防水壁53の基端部側に湾曲して折り返して延在し、背面壁6の一部を構成すると好ましい。該曲面が二度湾曲して背面壁6を構成することで、背面壁6を構成する曲面数を増加させて、よりランプボディ2の剛性を高めることができる。
【0061】
本実施形態においては、背面壁6は庇部53a、右側面53b、および左側面53cの後方突出の先端ではなく、突出途中(延出途中)の外側表面から突出している。換言すれば、背面壁6の一部は、防水壁53の背面突出の途中の側面に接続される。これは、設計の自由度や防水壁53の機能を確保するためである。仮に背面壁6の一部が、防水壁53の後方突出の先端に接続されると、その部分の防水壁53は、全て背面壁6も構成することとなる。防水壁53は、水の侵入を防ぐ役割上、傾斜や勾配など必要な構成があるが、完全に防水壁53が背面壁6となってしまうと、背面壁6として必要とされる構成が、防水壁53として必要とされる構成と相反する場合に不具合が生じやすい。設計の自由度を確保するため、防水壁53の突出先端ではなく、防水壁53の側面の一部に背面壁6に接続されると好ましい。
【0062】
湾曲した背面壁6が、防水壁53の後方突出途中の外側表面に接続されると、防水壁53のうち接続部分から基端側が、背面壁6と一体となって防水壁53および背面壁6を構成し、接続部から先端側が防水壁53を構成する。ここで、防水壁53のうち、背面壁6との接続部から突出先端までを防水壁先端部53fとすると、通気孔50への水の侵入を防止する役割のため、防水壁先端部53fが存在する方が好ましい。即ち、湾曲した背面壁6が防水壁53の後方突出先端に接続されるより、後方突出の途中に接続されている方が好ましい。これを、図9を用いて説明する。図9(B)は比較用のランプボディ202である。図9(A)は本実施形態のランプボディ2である。図9中の矢印は、水の流れを示す。
【0063】
図9(A)に示すように、ランプボディ202の背面壁206は、防水壁253の庇部253aと一体化しており、庇部253a全体が、曲面で構成されている。換言すれば背面壁206の一部が庇部253aの先端に湾曲して接続されて、庇部253aを構成している。
【0064】
庇部253aの表面に付着した水は、庇部253a全体が曲面であることから、庇部253aを伝って防水壁253の内側まで流れ込む。これは、たとえ庇部253aが平面であっても、射出成形時に抜き勾配を設ける必要であるため、庇部253aは僅かに内側に向かって傾斜して設けられることから、庇部253a上部に落ちた水は、背面壁206からそのまま庇部253aの内側を伝い、防水壁253の内側まで流れ込みやすい。このように、庇部253aの先端に背面壁206が接続されると、防水壁253の防水機能が低下する。
【0065】
これに対し、図9(A)に示すように、本実施形態のランプボディ2においては、庇部53aの後方延出の途中の外側表面に背面壁6が接続されており、庇部53aの先端には防水壁先端部53fが形成されている。防水壁先端部53fを設けることで、庇部53aに接続する背面壁6に付着した水が、庇部53aへ向かって流れても、防水壁先端部53fでせき止められる。防水壁先端部53fは、庇部53aの内側まで水が流れ込むことを抑制している。防水壁先端部53fが設けられることで、通気孔50の周辺の背面壁6が曲面化して剛性が高められるとともに、防水壁としての機能が確保される。
【0066】
防水壁53は、通気孔50を形成する筒状壁51から離間しつつ、筒状壁51を取り囲み、ランプボディ2の後方へ延びて形成されており、防水壁53の少なくとも一部で背面壁6を構成する曲面が接続されていればよく、防水壁53を構成する壁面(庇部53a、右側面53b、左側面53c、下斜面53d)の一部、例えば左側面の上半分のみに、背面壁6を構成する曲面が接続されてもよい。
【0067】
(ブラケット)
図7および図8に示すように、ランプボディ2の防水壁53の近傍には、車両用灯具1を車体に取付けるために二つのブラケット5が設けられている。これを第1ブラケット5aおよび第2ブラケット5bと称する。第1ブラケット5aは、防水壁53の右側上方に、上方に突出して設けられている。第2ブラケット5bは、防水壁53の右側かつ第1ブラケット5aの下方に設けられている。
【0068】
第2ブラケット5bは、長孔が設けられた平板状に構成され、背面壁6から後方に突出するようにして水平に設けられている。図7および図8に示すように、第2ブラケット5bの左側基端部は、防水壁53の右側面53bに接続されており、防水壁53と一体化している。第2ブラケット5bは車両取付用のブラケットであることから、肉厚に構成されており、剛性が高い。剛性の高い第2ブラケット5bの少なくとも一部が防水壁53と一体化することで、防水壁53の剛性、および防水壁53周辺の背面壁6の剛性を向上させた。これにより、より背面壁6の薄肉化を図ることができる。
【0069】
以上、本発明の好ましい実施形態について述べたが、上記の実施形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1 :車両用灯具
2 :ランプボディ
4 :前面カバー
5、5a、5b :ブラケット
6 :背面壁
33 :防水壁
50 :通気孔
51 :筒状壁
53 :防水壁
S :灯室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9