(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094998
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】インクジェット記録用処理液
(51)【国際特許分類】
B41M 5/00 20060101AFI20240703BHJP
C09D 11/54 20140101ALI20240703BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20240703BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B41M5/00 132
B41M5/00 120
B41M5/00 110
C09D11/54
C09D11/30
B41J2/01 123
B41J2/01 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211965
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】田村 裕一
(72)【発明者】
【氏名】井上 薫志
(72)【発明者】
【氏名】江口 哲也
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FC01
2C056HA42
2H186AB02
2H186AB27
2H186AB34
2H186AB41
2H186AB44
2H186AB47
2H186AB55
2H186AB57
2H186AB58
2H186BA08
2H186BA10
2H186DA12
2H186DA14
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB58
4J039AD03
4J039AD09
4J039AD14
4J039AE04
4J039AE06
4J039BE01
4J039CA03
4J039EA42
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得ることができ、高浸透性の記録媒体を用いる際に高い画像濃度を有する印刷物を得ることができる、インクジェット記録用処理液、インクジェット記録用インクセット、及びインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】[1]25℃で測定した表面張力が30mN/m以下かつ大気圧下での沸点が100~250℃である有機溶剤(A)と、2つの水酸基が互いに隣接していない炭素原子に結合している炭素数5~8のアルカンジオール(B)と、凝集剤(C)とを含有する、インクジェット記録用処理液、[2]前記[1]に記載のインクジェット記録用処理液と、着色材及び水を含有するインクとを含む、インクジェット記録用インクセット、[3]前記[1]に記載のインクジェット記録用処理液を用い、工程1及び工程2を含む、インクジェット記録方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃で測定した表面張力が30mN/m以下かつ大気圧下での沸点が100℃以上250℃以下である有機溶剤(A)と、2つの水酸基が互いに隣接していない炭素原子に結合している炭素数5以上8以下のアルカンジオール(B)と、凝集剤(C)とを含有する、インクジェット記録用処理液。
【請求項2】
凝集剤(C)が、金属塩、有機酸又はその塩、及びカチオン性樹脂からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載のインクジェット記録用処理液。
【請求項3】
アルカンジオール(B)が炭素数5以上8以下のα,ω-アルカンジオールである、請求項1又は2に記載のインクジェット記録用処理液。
【請求項4】
インクジェット記録用処理液中の有機溶剤(A)の含有量のアルカンジオール(B)の含有量に対する質量比[有機溶剤(A)/アルカンジオール(B)]が0.01以上2.0以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用処理液。
【請求項5】
インクジェット記録用処理液中のアルカンジオール(B)の含有量の凝集剤(C)の含有量に対する質量比[アルカンジオール(B)/凝集剤(C)]が0.20以上7.5以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用処理液。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のインクジェット記録用処理液と、着色材及び水を含有するインクとを含む、インクジェット記録用インクセット。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載のインクジェット記録用処理液を用い、下記の工程1及び工程2を含む、インクジェット記録方法。
工程1:前記処理液を記録媒体に付与し、表面処理記録媒体を得る工程
工程2:工程1で得られた表面処理記録媒体の処理面に、着色材及び水を含有するインクを用いてインクジェット記録方式により画像を形成する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用処理液、該処理液を含むインクジェット記録用インクセット、及び該処理液を用いるインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、製版が不要であり、バリアブル(可変)印刷に対応しやすく、また、被印刷物に対して非接触という多くの利点があるため、オフィス用途、家庭用途等の広い分野で普及が進んでいる。近年では、印刷ボリュームが格段に大きい商業印刷用途、産業印刷用途への展開も試みられ、インクジェット記録方式は多様な材質の記録媒体への印刷が求められている。
このような要求に対して、記録媒体にインクを付着させる前に、色材、樹脂等のインク中に含まれる固体成分を意図的に凝集させる処理液を予め記録媒体に付与し、インク凝集層を記録媒体上に形成する方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、水吸収能力の低い、平滑な印刷用紙において、鮮明で印刷物に近い高品質な画像が得られるインクメディアセット等の提供を目的として、少なくとも着色剤、水分散性樹脂、及び水を含有するインクと、支持体と、該支持体上に少なくとも塗工層とを有する記録用メディアと、インクジェット記録時に記録用メディアの記録面に付与される前処理液と、を有するインクメディアセットが記載され、実施例では、特定の構造を有するカチオン性ポリマー及び水溶性溶媒を含有する前処理液が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、処理液を用いずにコート紙等の低浸透性の記録媒体にインクジェット記録方式により画像を形成する場合には、記録媒体上でドットが真円状に拡張せずにドットの形状に歪みが生じ、にじみやベタの埋まり不足が発生して印刷物の画像低下を引き起こし、ベタ画像均一性が十分でない傾向にある。一方、処理液を用いずに普通紙等の高浸透性の記録媒体にインクジェット記録方式により画像を形成する場合、インクが記録媒体内に浸透してしまうため、高い画像濃度を得ることが難しい傾向がある。
特許文献1の技術も、低浸透性の記録媒体に印刷する際に、ドット拡張性が十分ではなく、また、ベタ画像の均一性も不十分であり、更に高浸透性の記録媒体に印刷する際の画像濃度も高いものではなかった。
本発明は、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得ることができ、高浸透性の記録媒体を用いる際に高い画像濃度を有する印刷物を得ることができる、インクジェット記録用処理液、インクジェット記録用インクセット、及びインクジェット記録方法を提供すること課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、25℃で測定した表面張力30mN/m以下かつ大気圧下での沸点が100℃以上250℃以下である有機溶剤と、2つの水酸基が互いに隣接していない炭素原子に結合している炭素数5以上8以下のアルカンジオールと、凝集剤とを含有することにより、上記課題を解決し得ることを見出した。
本発明は、次の[1]~[3]を提供する。
[1] 25℃で測定した表面張力が30mN/m以下かつ大気圧下での沸点が100℃以上250℃以下である有機溶剤(A)と、2つの水酸基が互いに隣接していない炭素原子に結合している炭素数5以上8以下のアルカンジオール(B)と、凝集剤(C)とを含有する、インクジェット記録用処理液。
[2]前記[1]に記載のインクジェット記録用処理液と、着色材及び水を含有するインクとを含む、インクジェット記録用インクセット。
[3]前記[1]に記載のインクジェット記録用処理液を用い、下記の工程1及び工程2を含む、インクジェット記録方法。
工程1:前記処理液を記録媒体に付与し、表面処理記録媒体を得る工程
工程2:工程1で得られた表面処理記録媒体の処理面に、着色材及び水を含有するインクを用いてインクジェット記録方式により画像を形成する工程
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得ることができ、高浸透性の記録媒体を用いる際に高い画像濃度を有する印刷物を得ることができる、インクジェット記録用処理液、インクジェット記録用インクセット、及びインクジェット記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[インクジェット記録用処理液]
本発明のインクジェット記録用処理液(以下、「本発明の処理液」又は「処理液」ともいう)は、25℃で測定した表面張力が30mN/m以下かつ大気圧下での沸点が100℃以上250℃以下である有機溶剤(A)と、2つの水酸基が互いに隣接していない炭素原子に結合している炭素数5以上8以下のアルカンジオール(B)と、凝集剤(C)とを含有する。
なお、本発明において、記録媒体が低浸透性であるか高浸透性であるかは、記録媒体と純水との接触時間100m秒における該記録媒体の吸水量により判定される。該吸水量は、自動走査吸液計(例えば、熊谷理機工業(株)製「KM500win」)を用いて、23℃、相対湿度50%の条件下で、純水の接触時間100m秒における転移量として測定できる。
本発明において「低浸透性」とは、低浸透性及び非浸透性を含む概念であり、前記吸水量が0g/m2以上7g/m2以下であることを意味し、「高浸透性」とは、前記吸水量が7g/m2超であることを意味する。
【0009】
本発明によれば、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得ることができ、高浸透性の記録媒体を用いる際に高い画像濃度を有する印刷物を得ることができる。その理由は、必ずしも明確ではないが、以下のように考えられる。
本発明の処理液に含まれる有機溶剤(A)は、表面張力が30mN/m以下であるため、その高い界面活性効果により、該処理液を記録媒体に均一に濡れ広がらせる作用を有するため、記録媒体上で連続的で一様な処理液膜を形成し、凝集剤(C)の析出物が記録媒体上に微小かつ均等に配置された状態となると考えられる。そして、本発明の処理液に含まれるアルカンジオール(B)は、炭素数が5以上8以下であり、かつ、2つの水酸基が互いに隣接していない炭素原子に結合しているため、水酸基の配向の自由度が高く、本発明の処理液で処理された低浸透性の記録媒体にインクジェット記録用インクが着弾した時に該水酸基がインクとの強い親和性を発揮してインクのドットを拡張させて、ベタ部でもムラのない画像を形成することができ、ドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得ることができると考えられる。
また、本発明の処理液を記録媒体に付与した後において、凝集剤(C)の析出物が記録媒体上に微小かつ均等に配置されることにより、インク中に含まれる水系媒体が記録媒体に供給された際に凝集剤(C)の再溶解が急速に起こり、記録媒体に付着したインクを速やかに増粘させると考えられ、インクが高浸透性の記録媒体の内奥部に浸透することによる画像濃度の低下を抑制することができ、高い画像濃度を有する印刷物を得ることができると考えられる。
さらに、有機溶剤(A)は沸点が100℃以上250℃以下であるため、インクジェット記録用インクで印刷するまでに揮発して記録媒体上に残留しないため、記録媒体上に存在するアルカンジオール(B)のドット拡張効果と凝集剤(C)による増粘効果とを阻害せず、その効果を最大限発揮させることができると考えられる。
【0010】
<有機溶剤(A)>
本発明の処理液は、25℃で測定した表面張力が30mN/m以下かつ大気圧下での沸点が100℃以上250℃以下である有機溶剤(A)(以下、「有機溶剤(A)」ともいう)を含有する。有機溶剤(A)は、後述するアルカンジオール(B)以外の、25℃で測定した表面張力が30mN/m以下かつ大気圧下での沸点が100℃以上250℃以下である有機溶剤である。
有機溶剤(A)は、25℃で測定した表面張力が30mN/m以下であるため、記録媒体上で連続的で一様な処理液膜を形成し、凝集剤(C)の析出物を記録媒体上に微小かつ均等に配置させることができ、さらに、大気圧下での沸点が100℃以上250℃以下であるため、インクジェット記録用インクで印刷するまでに揮発して記録媒体上に残留しないため、記録媒体上に存在するアルカンジオール(B)のドット拡張効果と凝集剤(C)による増粘効果とを最大限発揮させることができると考えられる。
有機溶剤(A)は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0011】
有機溶剤(A)の25℃で測定した表面張力は、記録媒体上で連続的で一様な処理液膜を形成し、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点、及び高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは29mN/m以下、より好ましくは28mN/m以下であり、そして、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点から、好ましくは18mN/m以上、より好ましくは20mN/m以上、更に好ましくは22mN/m以上、より更に好ましくは24mN/m以上である。表面張力が18mN/m以上であると、処理液膜の界面付近への有機溶剤(A)の配向を抑制することができ、アルカンジオール(B)や凝集剤(C)が処理液膜の界面付近への移行を促進し、ドット拡張性及びベタ画像均一性を向上させることができる。
本発明における「表面張力」は、25℃環境で測定した静的表面張力を意味する。
有機溶剤(A)の25℃での表面張力は、実施例に記載の方法で測定する。
有機溶剤(A)として、2種以上の有機溶剤を用いる場合には、有機溶剤(A)の表面張力は、各有機溶剤の含有量(質量%)で重み付けした加重平均値である。
【0012】
有機溶剤(A)の大気圧下での沸点は、記録媒体上からの揮発を促進させて、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点、及び高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは220℃以下、より好ましくは210℃以下、更に好ましくは200℃以下、より更に好ましくは190℃以下であり、そして、揮発速度の過度な促進を抑制して凝集剤(C)の偏在化を抑制し、印刷物の画質を向上させる観点から、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは140℃以上、より更に好ましくは150℃以上、より更に好ましくは160℃以上、より更に好ましくは170℃以上である。
有機溶剤(A)として、2種以上の有機溶剤を用いる場合には、有機溶剤(A)の沸点は、各有機溶剤の含有量(質量%)で重み付けした加重平均値である。
【0013】
有機溶剤(A)としては、前述の表面張力及び沸点を満たすものであれば特に制限はない。有機溶剤(A)としては、1価アルコール類、アルカンジオール(B)以外の多価アルコール類、グリコールエーテル類等が挙げられる。これらの中でも、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点、及び高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させる観点から、1価アルコール類及びグリコールエーテル類からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0014】
1価アルコール類としては、n-ブタノール、イソブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノナノール、n-デカノール等が好ましく挙げられる。記録媒体上で連続的で一様な処理液膜を形成し、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点、及び高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させる観点から、1価アルコールは、炭素数4以上のものが好ましい。
【0015】
アルカンジオール(B)以外の多価アルコール類としては、1,2-ブタンジオール(沸点194℃)、1,2-ペンタンジオール(沸点210℃)、1,2-ヘキサンジオール(沸点247℃)等が好ましく挙げられる。記録媒体上で連続的で一様な処理液膜を形成し、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点、及び高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させる観点から、アルカンジオール(B)以外の多価アルコールは、炭素数4以上のものが好ましい。
【0016】
グリコールエーテル類としては、好ましくは下記式(1)で表されるものが好ましい。
R1O-(R2O)x-R3 (1)
(式中、R1は炭素数が1以上8以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、R2Oは炭素数が2以上6以下の直鎖又は分岐鎖のアルキレンオキシ基を示し、R3は水素原子又は炭素数が1以上3以下のアルキル基を示す。xはアルキレンオキシドの平均付加モル数を示し、x個の(R2O)は、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0017】
R1としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-プロピル基、ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル等が挙げられる。これらの中でも、R1の炭素数は、記録媒体上で連続的で一様な処理液膜を形成し、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点、及び高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは炭素数4以上6以下である。
R2Oの炭素数は、前記と同様の観点から、好ましくは2以上3以下である。すなわち、アルキレンオキシ基であるR2Oは、前記と同様の観点から、好ましくはオキシエチレン基及びオキシプロピレン基からなる群から選ばれる1種以上である。
R3は、前記と同様の観点から、好ましくは水素原子、メチル基、又はエチル基である。
xは、前記と同様の観点から、好ましくは1以上4以下であり、より好ましくは1以上3以下、更に好ましくは1以上2以下である。x個のオキシアルキレン基が互いに異なる場合は、ブロック付加、ランダム付加、及び交互付加のいずれでもよい。
【0018】
グリコールエーテル類の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が好ましく挙げられる。
【0019】
<アルカンジオール(B)>
本発明の処理液は、2つの水酸基が互いに隣接していない炭素原子に結合している炭素数5以上8以下のアルカンジオール(以下、「アルカンジオール(B)」ともいう)を含有する。
本発明の処理液は、アルカンジオール(B)を含有することにより、本発明の処理液で処理された記録媒体にインクジェット記録用インクが着弾した時に該水酸基がインクとの強い親和性を発揮してインクのドットを拡張させることができ、また、凝集剤(C)との特異的な相互作用を発現させることにより、凝集剤(C)を記録媒体上に均等に配置させることができ、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得ることができ、また高浸透性の記録媒体を用いる際に高い画像濃度を有する印刷物を得ることができる。
本発明においてアルカンジオール(B)は、直鎖、分岐鎖、及び環構造のいずれの構造を有してもよい。
アルカンジオール(B)は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
アルカンジオール(B)の炭素数は、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点、及び高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させる観点から、5以上8以下である。アルカンジオール(B)の炭素数が5以上であると、水酸基の配向の自由度を確保することができ、本発明の処理液で処理された記録媒体にインクジェット記録用インクが着弾した時に該水酸基がインクとの強い親和性を発揮してインクのドットを拡張させて、ベタ部でもムラのない画像を形成することができ、アルカンジオール(B)の炭素数が8以下であると、適度な疎水性を有しつつ、インクとの親和性を発揮させることができ、インクのドットを拡張する機能を良好に発現することができ、ドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得ることができると考えられる。
【0021】
アルカンジオール(B)としては、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点、及び高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させる観点から、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、及び1,4-シクロヘキサンジオールからなる群から選ばれる1種類以上が好ましく挙げられる。
【0022】
アルカンジオール(B)は、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点、及び高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは炭素数5以上8以下のα,ω-アルカンジオールである。
本発明において「α,ω-アルカンジオール」は、一般式CnH2n+2(nは、5以上8以下の整数である)で表される飽和炭化水素(アルカン)の2つの炭素原子の水素原子をそれぞれ1つの水酸基で置換したジオールの中で、炭素数5以上8以下の非分岐又は分岐の飽和炭化水素鎖の両末端の炭素原子に2つの水酸基がそれぞれ結合しているジオールを意味する。
ここで、飽和炭化水素鎖の両末端の炭素原子とは、該飽和炭化水素鎖の炭素原子のうち、第一級炭素原子を意味する。
分岐の飽和炭化水素鎖の場合には、飽和炭化水素鎖の両末端の炭素原子とは、分子内の最も長い非分岐の飽和炭化水素鎖の第一級炭素原子を意味する。
本発明において、α,ω-アルカンジオールを構成する飽和炭化水素鎖は非分岐及び分岐のいずれであってもよいが、2つの水酸基の配向の自由度を高めて、インクジェット記録用インクが着弾した時に該水酸基がインクとの親和性を容易に発揮させて、インクのドット拡張性を向上させる観点から、非分岐であることが好ましい。
α,ω-アルカンジオールを構成する飽和炭化水素鎖の炭素数は5以上6以下であることが好ましい。
【0023】
炭素数5以上8以下のα,ω-アルカンジオールの好適な例としては、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、及び1,8-オクタンジオールからなる群から選ばれる1種以上が好ましく挙げられる。
【0024】
本発明においてアルカンジオール(B)が25℃で測定した表面張力が30mN/m以下かつ大気圧下での沸点が100℃以上250℃以下である場合であっても、アルカンジオール(B)として扱い、有機溶剤(A)には該当しないものとする。すなわち、前述のとおり、有機溶剤(A)は、アルカンジオール(B)以外の、25℃で測定した表面張力が30mN/m以下かつ大気圧下での沸点が100℃以上250℃以下である有機溶剤である。
【0025】
<凝集剤(C)>
本発明の処理液は、凝集剤(C)を含有する。本発明の処理液が凝集液(C)を含有することにより、インクジェット記録用インク中に存在する固体成分を不溶化し、又は該固体成分の分散機能を低下させ、該固体成分の凝集又は析出や局所的な増粘を引き起こすことにより、記録媒体内への浸透や乾燥過程における局在化を抑制することができ、印刷条件によらず高品位な印刷画像を得ることができると考えられる。
凝集剤(C)は、1種単独で又は2種以上を併用してもよい。
凝集剤(C)としては、特に限定されるものではないが、金属塩、酸又はその塩、カチオン性化合物等が挙げられる。金属塩としては1価の金属塩、2価以上の金属塩が挙げられる。酸としては、無機酸、有機酸が挙げられる。カチオン性化合物としては、カチオン性樹脂、カチオン性界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも、金属塩、有機酸又はその塩、及びカチオン性樹脂からなる群から選ばれる1種以上が好ましく挙げられる。
【0026】
(金属塩)
金属塩は、好ましくは多価金属塩である。
多価金属塩は、2価以上の多価金属イオンとアニオン(多価金属イオンの対イオン)から構成されてなるものであれば、任意のものを用いることができる。2価以上の多価金属イオンとしては、カルシウム、マグネシウム、銅、ニッケル、亜鉛、バリウム、アルミニウム、チタン、ストロンチウム、クロム、コバルト、鉄等のイオンが挙げられる。これらの中でも、多価金属塩を構成する多価金属イオンは、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点、及び高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは2価又は3価の金属イオンであり、より好ましくは2価の金属イオンである。2価の金属イオンとしては、元素の周期表における第2族に属する元素のイオンが挙げられ、具体的には、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、鉄(II)イオン等が好ましく挙げられる。3価の金属イオンとしては、アルミニウムイオン、鉄(III)イオン等が好ましく挙げられる。これらの中でも、多価金属塩を構成する多価金属イオンは、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点、及び高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させる観点から、更に好ましくはマグネシウムイオン、カルシウムイオン、及びアルミニウムイオンからなる群から選ばれる1種以上、より更に好ましくはマグネシウムイオンである。
多価金属塩のアニオンとしては、無機イオン又は有機イオンが挙げられる。
無機イオンとしては、硝酸イオン、ハロゲン化物イオン等の1価のアニオン;硫酸イオン等の2価のアニオンなどが挙げられる。
有機イオンとしては、カルボン酸イオン等の有機酸イオンが挙げられる。
これらの中でも、アニオンは、好ましくは無機イオンであり、より好ましくは硝酸イオン及び硫酸イオンからなる群から選ばれる1種以上であり、更に好ましくは硝酸イオンである。
【0027】
本発明の処理液において多価金属塩は、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点、及び高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸カルシウム、及び硝酸アルミニウムからなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくは硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、及び硝酸アルミニウムからなる群から選ばれる1種以上であり、更に好ましくは硝酸マグネシウム及び硝酸カルシウムからなる群から選ばれる1種以上であり、より更に好ましくは硝酸マグネシウムである。
多価金属塩は、原料形態において水和水を有していてもよい。
多価金属塩は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
(酸又はその塩)
酸としては、有機酸及び無機酸からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
有機酸としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、酢酸、グリコール酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等が好ましく挙げられる。
無機酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等が好ましく挙げられる。
これらの中でも、酸としては、有機酸又はその塩が好ましい。
酸は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの酸は塩を形成していてもよいが、酸が金属塩を形成している場合には上記の金属塩に含めるものとする。
【0029】
(カチオン性樹脂)
本発明においてカチオン性樹脂の「カチオン性」とは、中和されたポリマーを純水に分散又は溶解させた場合、pHが7未満となること、又は、未中和のポリマーを純水に分散又は溶解させた場合、pHが7以上となること、又は、第4級アンモニウム基等を有するポリマーの場合はその対イオンを水酸化物イオンとして純水に分散又は溶解させた場合、pHが7以上となること、又はポリマーが純水に不溶であり、pHが明確に測定できない場合には、該ポリマーを純水に分散させた分散体のゼータ電位が正となることをいう。
カチオン性樹脂は、高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、第4級アンモニウム基、ヒドラジノ基等の塩基性基を有し、より好ましくは第4級アンモニウム基を有する。
なお、塩基性基は、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、ギ酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、乳酸等の酸で中和されたものを含む。
カチオン性樹脂は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
カチオン性樹脂のカチオン度は、高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは0.5meq/g以上、より好ましくは3.0meq/g以上であり、そして、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点、及び高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは10meq/g以下である。カチオン性樹脂のカチオン度は、ポリビニル硫酸カリウム試薬を用いたコロイド滴定により求めることができる。
【0031】
カチオン性樹脂としては、カチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性オレフィン系樹脂、カチオン性アミン系樹脂等が挙げられる。
【0032】
〔カチオン性ウレタン樹脂〕
カチオン性ウレタン樹脂としては、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有する有機化合物(ポリオール)とポリイソシアネートとを重付加反応させて得られるウレタンプレ樹脂のイソシアネート基を、カチオン性親水基導入のための活性水素化合物と反応させてなるものが挙げられる。前記重付加反応では、必要に応じて鎖伸長剤や反応停止剤を併用してもよい。鎖伸長剤を用いることにより、更に分子量を増加させることができる。鎖伸長剤としては、ポリオールやポリアミンが挙げられ、反応停止剤としては、モノアルコールやモノアミンが挙げられる。
カチオン性ウレタン樹脂はエマルジョンとして用いることが好ましく、該エマルジョンは必要に応じて界面活性剤のような分散剤を含有していてもよい。
カチオン性ウレタン樹脂としては、カチオン性ポリカーボネートポリオール系ウレタン樹脂、カチオン性ポリエステルポリオール系ウレタン樹脂、カチオン性ポリエーテルポリオール系ウレタン樹脂が好ましい。
カチオン性ウレタン樹脂としては、市販品を用いることができる。カチオン性ウレタン樹脂の市販品としては、ハイドランCP-7010、同CP-7020、同CP-7030、同CP-7040、同CP-7050、同CP-7060、同CP-7610(以上、DIC株式会社製、商品名);スーパーフレックス600、同610、同620、同630、同640、同650(以上、第一工業製薬株式会社製、商品名)、ウレタンエマルジョンWBR-2120C、同WBR-2122C(以上、大成ファインケミカル株式会社製、商品名)等を用いることができる。
【0033】
〔カチオン性オレフィン樹脂〕
カチオン性オレフィン樹脂は、エチレン、プロピレン等のオレフィン由来の構成単位を基本骨格として有するものであり、公知のものを適宜選択して用いることができる。また、カチオン性オレフィン樹脂は、水や有機溶媒等を含む媒体に分散させたエマルジョンとして用いてもよい。カチオン性オレフィン樹脂としては、市販品を用いることができる。カチオン性オレフィン樹脂の市販品としては、アローベースCB-1200、同CD-1200(以上、ユニチカ株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【0034】
〔カチオン性アミン系樹脂〕
カチオン性アミン系樹脂としては、樹脂構造中に第一級アミノ基(-NH2)、第二級アミノ基(-NHR11、=NH(イミノ基))、又は第三級アミノ基(-NR11R12)を有するものであればよく、公知のものを適宜選択して用いることができる。カチオン性アミン系樹脂としては、ポリアミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリルアミン樹脂等が挙げられる。
【0035】
ポリアミン樹脂は樹脂の主骨格中にアミノ基を有する樹脂である。
ポリアミン樹脂としては、ポリアルキレンイミン、ポリエチレンポリアミン、アルキルアミンとエピハロヒドリンとの縮合物、アルキルアミン/アンモニア/エピハロヒドリン縮合物等が挙げられる。
ポリアミド樹脂は樹脂の主骨格中にアミド基を有する樹脂である。
ポリアリルアミン樹脂は樹脂の主骨格中にアリルアミン化合物に由来する構造を有する樹脂である。ポリアリルアミン樹脂としては、アリルアミン、ジメチルアリルアミン、ジアリルアミン、メチルジアリルアミン等のアリルアミン化合物の単独重合体又は共重合体等が挙げられる。
ポリアリルアミン樹脂の具体例としては、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアリルアミンアミド硫酸塩、アリルアミン塩酸塩/ジアリルアミン塩酸塩コポリマー、アリルアミン酢酸塩/ジアリルアミン酢酸塩コポリマー、アリルアミン酢酸塩/ジアリルアミン酢酸塩コポリマー、アリルアミン塩酸塩/ジメチルアリルアミン塩酸塩コポリマー、アリルアミン/ジメチルアリルアミンコポリマー、ポリジアリルアミン塩酸塩、ポリメチルジアリルアミン塩酸塩、ポリメチルジアリルアミンアミド硫酸塩、ポリメチルジアリルアミン酢酸塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルアミン酢酸塩/二酸化硫黄コポリマー、ジアリルメチルエチルアンモニウムエチルサルフェイト/二酸化硫黄コポリマー、メチルジアリルアミン塩酸塩/二酸化硫黄コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/二酸化硫黄コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリルアミドコポリマー等が挙げられる。
【0036】
カチオン性アミン系樹脂としては、ユニセンスKHE103L(ヘキサメチレンジアミン/エピクロロヒドリン縮合物)、同KHE104L(ジメチルアミン/エピクロロヒドリン縮合物、固形分濃度20質量%の水溶液)(以上、センカ株式会社製、商品名);FL-14(SNF社製の商品名);アラフィックス100、同251S、同255、同255LOX(以上、荒川化学株式会社製、商品名);DK6810、DK6853、DK6885等の変性ポリアミン系樹脂、WS4010、WS4011、WS4020、WS4024、WS4027、WS4030等のポリアミドエピクロロヒドリン樹脂又はポリアミンエピクロロヒドリン樹脂(以上、星光PMC株式会社製、商品名);パピオゲンP-105(センカ株式会社製、商品名)等のジメチルアミン/アンモニア/エピクロロヒドリン縮合物;Sumirez Resin650(30)、同675A、同6615、同SLX-1(以上、田岡化学工業社製、商品名)等のポリアミドエポキシ樹脂;カチオマスターPD-1、同PD-7(ジメチルアミン/エピクロロヒドリン縮合物)、同PD-30、同A、同PDT-2、同PE-10、同PE-30(ジメチルアミン/エチレンジアミン/エピクロロヒドリン縮合物)、DT-EH、EPA-SK01(ポリアミドポリアミン/エピクロロヒドリン縮合物)、TMHMDA-E(以上、四日市合成株式会社製、商品名);ジェットフィックス36N、同38A、同5052(以上、里田化工株式会社製、商品名)が挙げられる。
【0037】
(カチオン性界面活性剤)
カチオン性界面活性剤としては、第1級、第2級、又は第3級のアミン塩、第四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤のアルキル基の炭素数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上、より更に好ましくは12以上、より更に好ましくは14以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは18以下である。
【0038】
アミン塩としては、ラウリルアミン、ヤシアミン、ロジンアミン等の塩酸塩又は酢酸塩等のモノアルキルアミン塩;ジラウリルアミン等の塩酸塩又は酢酸塩等のジアルキルアミン塩;テトラデシルジメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルジメチルアンモニウムクロリド、オクタデシルジメチルアンモニウムクロリド等のアルキルジメチルアンモニウム塩等のトリアルキルアミン塩などが挙げられる。
第四級アンモニウム塩としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド等のアルキルトリメチルアンモニウム塩;ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド等のベンジルトリアルキルアンモニウム塩;デシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド等のアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩(塩化ベンザルコニウム);塩化ベンゼトニウム等のベンゼトニウム塩などが挙げられる。
ピリジニウム塩としては、セチルピリジニウムクロリド、セチルピリジニウムブロミドが挙げられる。
【0039】
(水)
本発明の処理液は、更に水を含有することが好ましい。本発明の処理液は、水系であることが好ましい。本発明の処理液が「水系」であるとは、処理液に含まれる液体成分において水が質量基準で最大割合を占めるものを意味する。
水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水又は超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものが好ましい。
【0040】
本発明の処理液は、必要に応じて、有機溶剤(A)、アルカンジオール(B)、及び凝集剤(C)以外の、有機溶剤、pH調整剤、界面活性剤、樹脂、着色材、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤等の他の成分を更に含有してもよい。
【0041】
(有機溶剤(D))
本発明の処理液は、有機溶剤(A)及びアルカンジオール(B)以外の他の有機溶剤(D)(以下、「有機溶剤(D)」ともいう)を更に含有してもよい。
なお、本発明において、有機溶剤(D)には有機溶剤(A)及びアルカンジオール(B)は含まれない。
有機溶剤(D)としては、例えば、多価アルコール類;多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類等のエーテル類;含窒素複素環化合物;アミド類;アミン類;含硫黄化合物類などが挙げられる。
【0042】
多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール(異性体混合物)、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジオールが挙げられる。
【0043】
多価アルコールアルキルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルが挙げられる。
多価アルコールアリールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテルが挙げられる。
【0044】
含窒素複素環化合物としては、例えば、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタムが挙げられる。
アミド類としては、例えば、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミドが挙げられる。
アミン類としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミンが挙げられる。
含硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノールが挙げられる。
また、上記以外の有機溶剤としては、例えば、プロピレンカーボネート、炭酸エチレンも挙げられる。
有機溶剤(D)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
(pH調整剤)
本発明の処理液は、pH調整剤を含有してもよい。
pH調整剤とは、環境変化によるpH変動を抑制し、処理液のpHを一定に保つ剤を意味する。
pH調整剤は、本発明の処理液のpHに応じて公知のものを任意に選択することができる。
【0046】
(界面活性剤)
本発明の処理液は、更に界面活性剤を含有してもよい。
界面活性剤は、好ましくはノニオン性界面活性剤である。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、多価アルコール型界面活性剤、脂肪酸アルカノールアミド、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤が挙げられる。これらの中でも、界面活性剤は、より好ましくはアセチレングリコール系界面活性剤である。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2,4-ジメチル-5-ヘキシン-3-オール、及びこれらのジオールのエチレンオキシド付加物が挙げられる。前記エチレンオキシド付加物のエチレンオキシ基(EO)の平均付加モル数の和(n)は、好ましくは0以上であり、そして、好ましくは20以下、より好ましくは10以下である。
ノニオン性界面活性剤の市販品例としては、日信化学工業株式会社及びAir Products & Chemicals社製の「サーフィノール」シリーズ、川研ファインケミカル株式会社製の「アセチレノール」シリーズ等が挙げられる。
界面活性剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
(定着樹脂)
本発明の処理液は、定着性を向上させる観点から、更に定着助剤として機能する樹脂(以下、「定着樹脂」ともいう)を含有していてもよい。
定着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。定着樹脂としては、アクリル系樹脂、アクリル/スチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン/ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂等が挙げられる。
【0048】
(着色材)
本発明の処理液は、本発明の効果を損なわない範囲で、着色材を含有してもよい。かかる着色材としては、後述するインクジェット記録用水系インクで用いられるものが挙げられる。本発明の処理液が着色材を含有する場合には、該着色材としては、耐水性の観点から、顔料及び疎水性染料が好ましく、高耐候性を発現させる観点からは、顔料が好ましい。
【0049】
(処理液の組成)
本発明の処理液中の有機溶剤(A)の含有量は、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点、及び高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは7質量%以下である。
【0050】
本発明の処理液中のアルカンジオール(B)の含有量は、高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは55質量%以下、より更に好ましくは50質量%以下、より更に好ましくは40質量%以下であり、そして、低浸透性の記録媒体を用いる際に優れた良好なドット拡張性に優れる高画質の印刷物を得る観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、より更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上である。
【0051】
本発明の処理液中の有機溶剤(A)の含有量のアルカンジオール(B)の含有量に対する質量比[有機溶剤(A)/アルカンジオール(B)]は、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点、及び高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.10以上、より更に好ましくは0.13以上であり、そして、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点から、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.0以下、より更に好ましくは0.50以下、より更に好ましくは0.20以下である。
【0052】
本発明の処理液中の有機溶剤(A)及びアルカンジオール(B)の合計含有量の、有機溶剤(A)、アルカンジオール(B)、及び有機溶剤(D)の合計含有量に対する質量比[〔有機溶剤(A)+アルカンジオール(B)〕/〔有機溶剤(A)+アルカンジオール(B)+有機溶剤(D)〕]は、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点、及び高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは0.80以上、より好ましくは0.90以上、更に好ましくは0.95以上であり、そして、好ましくは1以下であり、より更に好ましくは1である。
【0053】
本発明中の処理液中の凝集剤(C)の含有量は、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点、及び高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは45質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、より更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは15質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上である。
【0054】
本発明の処理液中の凝集剤(C)の含有量に対する有機溶剤(A)の含有量の質量比[有機溶剤(A)/凝集剤(C)]は、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点、及び高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上、更に好ましくは0.07以上、より更に好ましくは0.10以上、より更に好ましくは0.15以上、より更に好ましくは0.20以上、より更に好ましくは0.25以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは7.5以下、より好ましくは6.5以下、更に好ましくは1.0以下、より更に好ましくは0.50以下である。
【0055】
本発明の処理液中のアルカンジオール(B)の含有量の凝集剤(C)の含有量に対する質量比[アルカンジオール(B)/凝集剤(C)]は、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点、及び高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは0.20以上、より好ましくは0.25以上、更に好ましくは0.30以上、より更に好ましくは0.50以上、より更に好ましくは1.0以上、より更に好ましくは1.5以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは7.5以下、より好ましくは6.5以下、更に好ましくは6.0以下、より更に好ましくは5.5以下、より更に好ましくは5.0以下、より更に好ましくは4.0以下、より更に好ましくは3.0以下である。
【0056】
本発明の処理液中の水の含有量は、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点、及び高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下、より更に好ましくは70質量%以下、より更に好ましくは65質量%以下、より更に好ましくは60質量%以下、より更に好ましくは55質量%以下、より更に好ましくは50質量%以下であり、そして、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点から、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、より更に好ましくは35質量%以上である。
なお、多価金属塩の原料形態として水和水を有する水和物の形態で用いる場合、本発明の処理液中の水の含有量は、該多価金属塩の水和物からの水の含有量を含めた量を意味する。
【0057】
本発明の処理液中の有機溶剤(D)の含有量は、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点、及び高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは1質量%以下、より更に好ましくは0質量%である。
【0058】
本発明の処理液中の着色材の含有量は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、より更に好ましくは0.1質量%以下、より更に好ましくは0質量%である。
【0059】
(処理液の調製)
本発明の処理液は、有機溶剤(A)、アルカンジオール(B)、凝集剤(C)、及び必要に応じて有機溶剤(D)、水や前述の他の成分を適宜混合して用いる。該処理液のpHは、前述のpH調整剤で適宜調整することができる。
【0060】
[インクセット]
<インクジェット記録用インク>
以下、本発明の処理液で処理してなる記録媒体(以下、「表面処理記録媒体」ともいう)に適用されるインクジェット記録用インクについて説明する。該インクジェット記録用インクは前述の本発明の処理液とともに、本発明のインクセットを構成する。すなわち、本発明のインクセットは、前記インクジェット記録用処理液と、着色材及び水を含有するインクとを含むものである。
前記インクジェット記録用インクは、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点、及び高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させる観点から、着色材及び水を含有することが好ましい。前記インクジェット記録用インクが水を含有する場合、該インク中の液体成分において水が質量基準で最大割合を占めるものであることがより好ましい。すなわち、本発明において、表面処理記録媒体に適用されるインクジェット記録用インクは着色材を含有する水系インクであることが好ましい。
【0061】
〔着色材〕
前記インクジェット記録用インクが含有する着色材としては、染料及び顔料のいずれでもよい。これらの中でも、耐水性、耐光性、耐候性、耐ガス性等を有する観点から、顔料が好ましい。
顔料は、公知の有機顔料及び無機顔料のいずれも用いることができる。顔料は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、混晶を用いてもよい。
無機顔料としては、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー等が挙げられる。また、無機顔料として、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラックを用いることができる。
有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどが挙げられる。
顔料としては、樹脂中空粒子、無機中空粒子等の中空粒子を用いることもできる。また金色、銀色等の光沢色顔料又はメタリック顔料も用いることができる。
黒色インク用の顔料の具体例としては、例えば、カーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類;銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン(C.I.ピグメントブラック35)等の無機顔料;アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられる。
白色インク用の顔料の具体例としては、例えば、酸化チタン(C.I.ピグメントホワイト6)等の無機顔料が挙げられる。
有彩色インク用の顔料の具体例としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー、C.I.ピグメントオレンジ、C.I.ピグメントレッド、C.I.ピグメントバイオレット、C.I.ピグメントブルー、及びC.I.ピグメントグリーンからなる群から選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられる。
【0062】
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、塩基性染料、直接染料、反応性染料等が挙げられる。染料は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー、C.I.アシッドレッド、C.I.アシッドブルー、C.I.アシッドブラック、C.I.フードブラック、C.I.ダイレクトイエロー、C.I.ダイレクトレッド、C.I.ダイレクトブルー、C.I.ダイレクトブラック、C.I.リアクティブレッド、及びC.I.リアクティブブラックからなる群から選ばれる各品番製品が挙げられる。
【0063】
前記インクジェット記録用インクが顔料を含有する場合、該インク中で顔料は媒体に分散されてなる、すなわち、顔料は、顔料分散体の形態で配合されてなることが好ましい。前記インクジェット記録用インク中の顔料の形態としては、分散剤として樹脂(以下、「顔料分散樹脂」ともいう)若しくは界面活性剤で分散されてなる形態、又は分散剤を用いずに分散されてなる自己分散顔料の形態が好ましく挙げられる。
顔料分散樹脂としては、水溶性樹脂及び水不溶性樹脂のいずれであってもよい。
ここで、樹脂の「水溶性」及び「水不溶性」については、105℃で2時間乾燥させ、恒量に達した樹脂を、飽和に達するまで25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が10gを超える時は「水溶性」、10g以下である時は「水不溶性」と判断する。また、後述するように、樹脂がアニオン性基を有する場合、その溶解量は、樹脂のアニオン性基を水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。
【0064】
前記インクジェット記録用インク中の顔料の形態としては、具体的には、顔料の分散安定性を向上させる観点から、(a)顔料表面に水溶性樹脂を吸着させた形態、(b)顔料表面に水溶性の界面活性剤又は水分散性の界面活性剤を吸着させた形態、(c)顔料表面に親水性官能基を化学的又は物理的に導入し、顔料分散樹脂及び界面活性剤を用いずに分散させた自己分散顔料の形態、(d)顔料を顔料分散樹脂で被覆した形態等が好ましく挙げられる。
【0065】
前述の(a)~(d)の形態を有する顔料は、アニオン性を有することが好ましい。これにより、本発明の処理液に含まれる凝集剤(C)と相互作用し、インク中に存在する顔料の分散性を低下させて凝集させることができ、その結果、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得ることができ、高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させると考えられる。当該観点から、(a)の形態では前記水溶性樹脂が好ましくはアニオン性基を有し、(b)の形態では水溶性の界面活性剤又は水分散性の界面活性剤が好ましくはアニオン性基を有し、(c)の形態では顔料表面に導入された親水性官能基が好ましくはアニオン性基を有し、(d)の形態では顔料分散樹脂が好ましくはアニオン性基を有する。
アニオン性基としては、カルボキシ基(-COOM)、スルホン酸基(-SO3M)、リン酸基(-OPO3M2)等の解離して水素イオンが放出される基、又はそれらの解離したイオン形(-COO-、-SO3
-、-OPO3
2-、-OPO3
-M)等が挙げられる。前記化学式中、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを示す。
【0066】
これらの中でも、前記インクジェット記録用インク中の顔料の形態は、凝集剤(C)によりインク中に存在する分散質の分散性を低下させて凝集効果を良好に発現させる観点、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点、及び高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは(c)の形態及び(d)の形態からなる群から選ばれる1種以上の形態であり、より好ましくは(d)の形態である。
前記インクジェット記録用インク中の顔料の形態が(d)の形態である場合、顔料分散樹脂は水不溶性であることが好ましい。
前記インクジェット記録用インク中の顔料の形態が(d)の形態である場合、顔料を顔料分散樹脂で被覆した形態としては、顔料分散樹脂が顔料を内包(カプセル化)した形態、顔料分散樹脂中に顔料が均一に分散された形態、顔料分散樹脂の粒子の表面から顔料が露出した形態、顔料分散樹脂が顔料に吸着している形態等が含まれる。
前記インクジェット記録用インク中の顔料の形態が(d)の形態である場合においては、架橋構造を有する顔料分散樹脂で顔料を被覆した形態であることが好ましい。架橋構造を有する顔料分散樹脂で顔料を被覆した形態としては、顔料分散樹脂が、分岐鎖を有していてもよい直鎖の二次元構造を有するポリマーの構成成分と、架橋剤由来の構成成分とを含む構造を有することが好ましい。このような架橋構造は、分岐鎖を有していてもよい直鎖の二次元構造を有するポリマーが、架橋剤由来の構成成分によって三次元構造となっていると考えられる。
【0067】
前記インクジェット記録用インクが(d)の形態である場合、顔料の分散に用いられる顔料分散樹脂の種類は特に限定されない。
顔料分散樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン/(メタ)アクリル系樹脂、マレイン酸樹脂、スチレン/マレイン酸樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられる。これらの中でも、顔料分散樹脂は、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点、及び高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは(メタ)アクリル系樹脂、スチレン/(メタ)アクリル系樹脂、及びウレタン樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくは(メタ)アクリル系樹脂及びスチレン/(メタ)アクリル系樹脂からなる群から選ばれる1種以上である。
本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味する。
顔料分散樹脂は、公知の方法により合成したものを用いてもよく、市販品を用いることもできる。顔料分散樹脂は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
本発明のインクセットの好ましい組み合わせは、本発明の処理液と、顔料分散樹脂で被覆した顔料を含有するインクジェット記録用インクであって、該顔料分散樹脂が(メタ)アクリル系樹脂及びスチレン/(メタ)アクリル系樹脂からなる群から選ばれる1種以上であるインクジェット記録用インクとのセットである。
【0069】
顔料分散樹脂の数平均分子量は、好ましくは5,000以上、より好ましくは7,000以上、更に好ましくは10,000以上であり、そして、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下、更に好ましくは30,000以下である。前記数平均分子量は、実施例に記載の方法により測定される。
顔料分散樹脂の酸価は、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは50mgKOH/g以上、更に好ましくは100mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは800mgKOH/g以下、より好ましくは500mgKOH/g以下、更に好ましくは300mgKOH/g以下である。
顔料が架橋構造を有する顔料分散樹脂で顔料を被覆した形態である場合は、顔料を被覆する架橋構造を有する顔料分散樹脂の酸価は、好ましくは2mgKOH/g以上、より好ましくは20mgKOH/g以上、更に好ましくは40mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは320mgKOH/g以下、より好ましくは200mgKOH/g以下、更に好ましくは120mgKOH/g以下である。
顔料分散樹脂の酸価及び架橋構造を有する顔料分散樹脂の酸価は、実施例に記載の方法により求めることができるが、構成するモノマーの質量比から算出することもできる。
【0070】
〔水〕
前記インクジェット記録用インクが水系インクである場合、該インクの媒体は、好ましくは水系媒体である。
ここで、「水系媒体」とは、媒体中で、水が質量基準で最大割合を占めていることを意味する。
前記インクジェット記録用インクの媒体が水系媒体であることにより、該インク中に含まれる水系媒体が前記処理液で処理されてなる記録媒体に供給され、該記録媒体に析出していた凝集剤(C)が再溶解し、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得ることができ、高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させることができると考えられる。
前記インクジェット記録用インクに含まれる水としては、イオン交換水、脱イオン水、又は蒸留水が好ましく用いられる。
【0071】
〔定着樹脂〕
前記インクジェット記録用インク中は、定着助剤として機能する樹脂(定着樹脂)を含有してもよい。前記インクジェット記録用インク中の定着樹脂の存在形態は、顔料を被覆しない樹脂の形態であることが好ましく、顔料を含有しない樹脂粒子の形態であることがより好ましい。
定着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。定着樹脂の具体例としては、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン/ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、スチレン/アクリル系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂が挙げられる。
定着樹脂として粒子の形態である樹脂を、着色材、水、有機溶剤等と混合してインクを得ることができる。定着樹脂は、合成したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
定着樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
〔ワックス〕
前記インクジェット記録用インクは、ワックスを含有してもよい。
本明細書において「ワックス」とは、常温(25℃)で固体又は半固体であって加熱により液体となる有機物を意味する。この時、ワックスが液体となる温度、いわゆるワックスの融点は45℃以上150℃以下の範囲に存在する。ワックスは、天然ワックス及び合成ワックスのいずれであってもよい。
天然ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス等の植物系ワックス;ラノリン、みつろう等の動物系ワックス等が挙げられる。
合成ワックスとしては、ポリオレフィンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス等の合成炭化水素系ワックス;シリコーン系ワックス;パラフィンワックス誘導体、モンタンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体等の変性ワックス等が挙げられる。これらの中でも、オレフィン系モノマーを主成分とするポリオレフィンワックスが好ましい。
ワックスは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0073】
前記インクジェット記録用インクは、ワックスを分散体(以下、「ワックス分散体」ともいう)として含有することが好ましい。
ワックス分散体としては、特に制限はなく、例えば、ワックスを公知の界面活性剤で乳化してなるものが挙げられる。界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤等を用いることができる。
ノニオン性界面活性剤としては、高級アルコールのエチレンオキシド付加物、アルキル化したフェノールのエチレンオキシド付加物等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、高級アルコールのエチレンオキシド付加物をベースとした硫酸エステル塩やリン酸エステル塩;アルキル化したベンゼンスルホン酸塩等が挙げられる。
これらの中でも、ワックス分散体は、インクの吐出安定性及び印刷物の画像堅牢性等を向上させる観点から、ワックスをノニオン性界面活性剤で乳化してなるノニオン性のワックス分散体が好ましく、ノニオン性のポリオレフィンワックス分散体がより好ましい。
ワックス分散体の市販品の好適例としては、東邦化学工業株式会社製の「ハイテックE」シリーズ、BYK社製の「AQUACER」シリーズ、中京油脂株式会社製の「セロゾール」シリーズ、三井化学株式会社製の「ケミパール」シリーズ等が挙げられる。
【0074】
〔水溶性有機溶剤〕
前記インクジェット記録用インクは、水系媒体として更に水溶性有機溶剤を含有してもよい。該インクに含まれる水溶性有機溶剤としては、水と任意の割合で混和できるものであれば特に制限はなく、前述の処理液で用いられる有機溶剤(A)、アルカンジオール(B)、及び有機溶剤(D)で例示した多価アルコール類;グリコールエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類等のエーテル類;含窒素複素環化合物;アミド類;アミン類;含硫黄化合物類等が好ましく挙げられる。
なお、前記インクジェット記録用インクの水系媒体中の水の含有量は、環境性の観点から、好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは65質量%以上である。
【0075】
前記インクジェット記録用インクは、必要に応じて、顔料及びワックスの分散に用いられる界面活性剤以外の界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を含有していてもよい。
【0076】
(インクジェット記録用インクの組成)
前記インクジェット記録用インク中の着色材の含有量は、印刷物の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは4質量%以上である。また、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
前記インクジェット記録用インクが顔料分散樹脂を含有する場合、該インク中の顔料分散樹脂の含有量は、顔料の分散安定性の観点、及び低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは4質量%以上、更に好ましくは6質量%以上であり、そして、印刷物の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
前記インクジェット記録用インクが定着樹脂を含有する場合、該インク中の定着樹脂の含有量は、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であり、そして、印刷物の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
前記インクジェット記録用インクがワックスを含有する場合、該インク中のワックスの含有量は、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点、及び高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは0.8質量%以上であり、そして、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
前記インクジェット記録用インクが水溶性有機溶剤を含有する場合、該インク中の水溶性有機溶剤の含有量は、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点、及び高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上であり、そして、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
前記インクジェット記録用インク中の水の含有量は、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点、及び高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは55質量%以上であり、そして、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは65質量%以下である。
【0077】
[インクジェット記録方法]
本発明のインクジェット記録方法は、本発明の処理液を用いて処理されてなる表面処理記録媒体の処理面にインクジェット記録用インクを用いてインクジェット記録方式により画像を形成する方法である。本発明のインクジェット記録方法は、好ましくは下記の工程1及び工程2を含む。
工程1:前記処理液を記録媒体に付与し、表面処理記録媒体を得る工程
工程2:工程1で得られた表面処理記録媒体の処理面に、着色材及び水を含有するインクを用いてインクジェット記録方式により画像を形成する工程
【0078】
(工程1)
工程1は、前記処理液を記録媒体に付与し、表面処理記録媒体を得る工程である。
本発明に用いる記録媒体としては、低浸透性記録媒体及び高浸透性記録媒体のいずれも用いることができる。
低浸透性記録媒体としては、低吸水性のコート紙、非吸水性の樹脂フィルムが挙げられる。コート紙としては、汎用光沢紙、多色フォームグロス紙等が挙げられる。樹脂フィルムとしては、好ましくはポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、及びポリエチレンフィルムからなる群から選ばれる少なくとも1種である。これらの樹脂フィルムは、コロナ処理等の表面処理がされたものを用いてもよい。
高浸透性記録媒体としては、高吸水性の普通紙が挙げられる。
【0079】
前記処理液を記録媒体に付与する方法については、特に制限はない。前記処理液を記録媒体に付与する方法としては、例えば、浸漬、ローラーによる塗布、スプレーによる塗布、ブラシによる塗布、インクジェット記録方式による塗布等が好ましく挙げられる。
これらの中でも、簡便かつ均一に処理液を付与することができる観点からは、ローラーによる塗布がより好ましい。
ローラーによる塗布方法としては、(i)記録媒体と記録媒体に接触する部材との間隙に前記処理液を保持し、記録媒体及び記録媒体に接触する部材の一方を移動させ、記録媒体の一部分に付与された前記処理液を記録媒体全体に行き渡らせることで、前記処理液で処理されてなる表面処理記録媒体を得る方法、又は、(ii)記録媒体と記録媒体に接触又は微小な間隙を保持して近接する部材とを回転させて前記処理液を記録媒体に印捺又は微小な間隙に保持した前記処理液を記録媒体に吸収させる方法を意味する。
ローラーによる塗布に用いるローラーの具体例としては、オフセットグラビアコーター、グラビアコーター、ドクターコーター、バーコーター、ブレードコーター、フレキソコーター、ロールコーターが好ましく挙げられる。これらの中でも、ドクターコーター、バーコーター、及びロールコーターからなる群から選ばれる1種以上がより好ましい。
また、工程1及び工程2を連続的に行える観点からは、前記処理液の記録媒体への付与に用いる装置としては、工程1で用いる前記処理液の付与手段と工程2で用いるインクジェット記録用インクの付与手段とが一体になっているものが好ましい。この場合、例えば、後述するインクジェット記録装置内にローラー塗布機等の前記処理液の付与手段が組み込まれているものであってもよい。
【0080】
前記処理液の記録媒体への付与量は、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点、及び高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは0.2g/m2以上、より好ましくは0.5g/m2以上、更に好ましくは1g/m2以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは5g/m2以下、より好ましくは2g/m2以下、更に好ましくは1.8g/m2以下である。
【0081】
工程1において、低浸透性の記録媒体を用いる際にドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得る観点、及び高浸透性の記録媒体を用いる際に印刷物の画像濃度を向上させる観点から、前記処理液を記録媒体に付与した後、該記録媒体上の処理液を乾燥させることが好ましい。
工程1における乾燥方法としては、静置乾燥、送風乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥等が好ましく挙げられる。本発明の記録方法において、紫外線や放射線等の活性エネルギー線の付与は、本発明における乾燥には含まれない。
工程1における乾燥時の温度は、記録媒体の変形を抑制する観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは80℃以下、より更に好ましくは70℃以下であり、そして、短時間で乾燥させる観点から、好ましくは20℃以上、より好ましくは25℃以上である。
工程1における乾燥時間は、好ましくは0.5秒以上、より好ましくは1秒以上、更に好ましくは1.5秒以上であり、そして、好ましくは30分以下、より好ましくは20分以下、更に好ましくは10分以下である。
【0082】
(工程2)
工程2は、工程1で得られた表面処理記録媒体の処理面に、インクジェット記録用インクを用いてインクジェット記録方式により画像を形成する工程である。
前記インクジェット記録用インクは公知のインクジェット記録装置に装填され、工程1で得られた表面処理記録媒体の処理面にインクドットとして付着し、画像を形成することができる。インクジェット記録装置としては、サーマル式、ピエゾ式等のいずれの方式でも用いることができる。
【実施例0083】
以下の製造例、実施例及び比較例において、「部」は特記しない限り「質量部」である。各種物性は、以下の方法により測定又は算出した。
【0084】
(1)有機溶剤(A)の表面張力の測定
自動表面張力計(協和界面科学株式会社製、商品名:DY-300)を用いて25℃における表面張力をWilhelmy測定法にて測定した。
【0085】
(2)カチオン性樹脂のカチオン度の測定
コニカルビーカーに脱イオン水90mLを取り、試料(乾燥品換算)の500ppm水溶液を10mL加えてアミン水溶液でpH7.1とし、約1分間撹拌した。次にトルイジンブルー指示薬を2~3滴加え、N/400ポリビニル硫酸カリウム試薬(N/400PVSK)で滴定した。滴定速度は2mL/分とし、検水が青から赤紫色に変色して10秒間以上保持する時点を終点とした。カチオン度(meq/g)の計算式は次のとおりである。
カチオン度=(N/400PVSK滴定量)×(N/400PVSKの力価)/2
【0086】
(3)顔料分散樹脂の数平均分子量の測定
ゲル浸透クロマトグラフィー法により求めた。測定試料は、ガラスバイアル中に樹脂0.1gを下記溶離液10mLと混合し、25℃で10時間、マグネチックスターラーで撹拌し、シリンジフィルター「DISMIC―13HP」(PTFE製、0.2μm、アドバンテック株式会社製)で濾過したものを用いた。測定条件を下記に示す。
GPC装置:東ソー株式会社製「HLC-8320GPC」
カラム:東ソー株式会社製「TSKgel SuperAWM―H」、「TSKgel SuperAW3000」、「TSKgel guardcolum Super AW―H」
溶離液:N,N-ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液
流速:0.5mL/min
標準物質:分子量既知の単分散ポリスチレンキット 東ソー株式会社製「PStQuick b(F-550,F-80,F-10,F-1,a-1000)」、「PStQuick c(F-288、F-40、F-4、A-5000、A-500)」
【0087】
(4)顔料分散樹脂の酸価及び架橋構造を有する顔料分散樹脂の酸価の測定
顔料分散樹脂の酸価は、電位差自動滴定装置(京都電子工業株式会社製、電動ビューレット、型番:APB-610)に樹脂をトルエンとアセトン(2:1)を混合した滴定溶剤に溶かし、また、架橋構造を有する顔料分散樹脂の酸価は、該顔料分散樹脂を含む顔料分散体として該滴定溶液に分散させて、電位差滴定法により0.1N水酸化カリウム/エタノール溶液で滴定し、滴定曲線上の変曲点を終点とした。水酸化カリウム溶液の終点までの滴定量から酸価(mgKOH/g)を算出した。
【0088】
(5)顔料分散体及びワックス分散体の固形分濃度の測定
30mLのポリプロピレン製容器(φ:40mm、高さ:30mm)を精秤し、該容器中にデシケーターで恒量化した硫酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製 試薬)約10.0gを量り取って硫酸ナトリウムの質量を精秤した。そこへ、顔料分散体又はワックス分散体約1gを添加して混合させた後、顔料分散体又はワックス分散体の質量を精秤した。次いで、105℃で2時間維持して揮発分を除去し、デシケーター内で更に15分間放置した後、該容器全体の質量を精秤した。該容器全体の質量の精秤値から容器の質量の精秤値と硫酸ナトリウムの質量の精秤値を差し引いて揮発分除去後の顔料分散体又はワックス分散体の残渣の質量を算出した。揮発分除去後の顔料分散体又はワックス分散体の残渣の質量を、揮発分除去前の顔料分散体又はワックス分散体の質量の精秤値で除して固形分濃度とした。
【0089】
(6)ワックスの融点の測定
ワックスの融点は、JIS K 0064に準拠した装置により測定した。具体的には、ワックス分散体を乾固したものを試料とし、該試料を示差走査熱量計「DSC Q20」(ティー・エイ・インスルメント社製)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで、試料を昇温速度10℃/minで昇温し、200℃まで熱量を測定した。観測された融解熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を融解の最大ピーク温度とし、該ピーク温度をワックスの融点とした。
【0090】
(7)顔料分散体の平均粒径の測定
レーザー粒子解析システム「ELS―8000」(大塚電子株式会社製)を用いて、動的光散乱法により粒径を測定し、キュムラント法解析により算出した。
測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力した。測定試料には、顔料分散体をスクリュー管(マルエム株式会社製、No.5)に計量し、固形分濃度が2×10-4質量%になるように水を加えてマグネチックスターラーを用いて25℃で1時間撹拌したものを用いた。
【0091】
(8)ワックス分散体の平均粒径の測定
ワックス分散体の平均粒径(平均分散粒径)は、マイクロトラック粒度分析計「UPA」(日機装株式会社製)を用いて測定した。
【0092】
製造例1-1(顔料分散樹脂(1)の製造)
アクリル酸(富士フイルム和光純薬株式会社製 試薬)31部、スチレン(富士フイルム和光純薬株式会社製 試薬)69部を混合してモノマー混合液を調製した。
反応容器内に、メチルエチルケトン(以下、「MEK」ともいう)(富士フイルム和光純薬株式会社製 試薬)10部、重合連鎖移動剤(2-メルカプトエタノール)(富士フイルム和光純薬株式会社製 試薬)0.2部、及び前記モノマー混合液の10質量%を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行った。
別途、滴下ロートに前記モノマー混合液の残りの90質量%、前記重合連鎖移動剤0.13部、MEK30部及びラジカル重合開始剤(2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名「V-65」)1.1部の混合液を入れ、窒素雰囲気下、反応容器内の前記モノマー混合液を撹拌しながら65℃まで昇温し、滴下ロート中の混合液を3時間かけて滴下した。滴下終了から65℃で2時間経過後、前記重合開始剤0.1部をMEK2部に溶解した溶液を加え、更に65℃で2時間、70℃で2時間熟成させた後に減圧乾燥して顔料分散樹脂(1)(数平均分子量:19,000、酸価:240mgKOH/g)を得た。
【0093】
製造例2-1(インクジェット記録用ブラックインク1の製造)
(顔料分散体の製造)
製造例1-1で得られた顔料分散樹脂(1)100部及びMEK78.6部を混合し、更に中和剤として5N水酸化ナトリウム水溶液(富士フイルム和光純薬株式会社製 容量分析用、水酸化ナトリウムの含有量:16.9質量%)41.2部を加えて中和した(中和度:40モル%)。次いで、イオン交換水800部を加え、更にブラック顔料(C.I.ピグメント・ブラック7、キャボット株式会社製、商品名「モナーク717」)100部を加え、ディスパー(淺田鉄工株式会社製、商品名「ウルトラディスパー」)を用いて、20℃でディスパー翼を7,000rpmの回転条件で60分間撹拌し、顔料混合物を得た。
得られた顔料混合物をマイクロフルイダイザー(Microfluidics社製、商品名)で200MPaの圧力で10パス分散処理し、ブラック顔料分散液を得た。
得られたブラック顔料分散液にイオン交換水250部を加えて撹拌した後、減圧下60℃でMEKを完全に除去し、更に一部の水を除去した後に、架橋剤としてトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「デナコールEX-321」、エポキシ当量:140)35.7部を加えて密栓し、スターラーで撹拌しながら70℃で5時間加熱した後、室温まで降温し、固形分濃度が24質量%になるようにイオン交換水を加え、孔径5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士フイルム和光純薬株式会社製)で濾過してブラック顔料分散体(架橋率60モル%、架橋構造を有する顔料分散樹脂の酸価96mgKOH/g、平均粒径:100nm)を得た。
(インクジェット記録用インクの製造)
得られたブラック顔料分散体50部、ポリエチレンワックス分散体(東邦化学工業株式会社製、商品名「ハイテックE-6500」、イオン種別:ノニオン性、ワックスの融点:140℃、固形分濃度:35質量%)2.9部、1,2-プロパンジオール(富士フイルム和光純薬株式会社製 試薬)19部、エチレングリコールモノブチルエーテル(富士フイルム和光純薬株式会社製 試薬)8部、アセチレングリコール系界面活性剤として2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール(Air Products and Chemicals社製、商品名「サーフィノール104」)0.5部を混合し、合計量が100部となるようイオン交換水を添加し、孔径5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士フイルム和光純薬株式会社製)で濾過してインクジェット記録用ブラックインク1(固形分濃度:13質量%、顔料の含有量:5質量%、顔料分散樹脂の含有量:7質量%、ワックスの含有量:1質量%)を得た。
【0094】
実施例1
(処理液の調製)
撹拌機を備えた容器に硝酸マグネシウム6水和物(東京化成工業株式会社製)25.9部、1,6-ヘキサンジオール(東京化成工業株式会社製)30部、及びエチレングリコールモノブチルエーテル(表面張力:24.0mN/m、沸点:172℃、富士フイルム和光純薬株式会社製)5部を添加し、更に合計量が100部になるようにイオン交換水を加えて25℃にて1時間混合した後、孔径5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士フイルム和光純薬株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ(テルモ株式会社製)を用いて濾過し、処理液1を得た。
(表面処理記録媒体の作製)
ハンディフレキソ印刷機「Esiproof」(イージープルーフ)(RK プリントコートインスツルメント社)にゴムロール(材質:EPDM、硬度:60)とアニロックスローラー(線数:500)とを取り付けたものを用い、ミューマット紙(北越製紙株式会社製、坪量:127.9g/m2、接触時間100m秒における純水の吸水量:5.6g/m2)に処理液1を均一に塗工した後、25℃、50%RH環境下で10分間静置することで乾燥を行い、表面処理された低浸透性記録媒体を得た。処理液1の付与量は1.6±0.3g/m2となるようにした。
別途、上記の表面処理された低浸透性記録媒体の作製において、ミューマット紙に代えて高浸透性記録媒体として上質普通紙「NPiフォームNext-IJ」(日本製紙株式会社製、坪量:81.4g/m2、接触時間100m秒における純水の吸水量:9.9g/m2)を用いた以外は同様の方法で塗布した後、25℃、50%RH環境下で10分間静置することで乾燥を行い、表面処理された高浸透性記録媒体を得た。
得られた表面処理された低浸透性記録媒体及び表面処理された高浸透性記録媒体を用いて、後述する(1)~(3)に示す方法により前記インクジェット記録用ブラックインク1を用いてインクジェット記録方式により画像を形成して印刷物を得た。得られた印刷物を評価した。結果を表1に示す。
【0095】
実施例2~24及び比較例1~3
実施例1の処理液の調製において、処理液の配合組成を表1に従って変更した以外は同様にして、各処理液を調製した。
実施例1の表面処理記録媒体の作製において、処理液1に代えて表1に示す各処理液を用いた以外は同様の方法で、表面処理された低浸透性記録媒体及び表面処理された高浸透性記録媒体をそれぞれ得た。
得られた表面処理された低浸透性記録媒体及び表面処理された高浸透性記録媒体を用いて、後述する(1)~(3)に示す方法により前記インクジェット記録用ブラックインク1を用いてインクジェット記録方式により画像を形成して印刷物を得た。得られた印刷物を評価した。結果を表1に示す。
実施例1以外で用いた処理液の各成分を以下に示す。
[有機溶剤(A)]
・プロピレングリコールモノブチルエーテル(表面張力:27.2mN/m、沸点:170℃、東京化成工業株式会社製)
・3-メチル-3-メトキシブタノール(表面張力:29.7mN/m、沸点:174℃、東京化成工業株式会社製)
・ジプロピレングリコールジメチルエーテル(表面張力:21.1mN/m、沸点:171℃、富士フイルム和光純薬株式会社製)
・n-ブタノール(表面張力:24.9mN/m、沸点:118℃、東京化成工業株式会社製)
・エチレングリコールモノヘキシルエーテル(表面張力:24.5mN/m、沸点:208℃、関東化学株式会社製)
・ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル(表面張力:24.6mN/m、沸点:220℃、東京化成工業株式会社製)
[アルカンジオール(B)]
・1,5-ペンタンジオール(東京化成工業株式会社製)
・3-メチル-1,5-ペンタンジオール(株式会社クラレ製)
・1,4-シクロヘキサンジメタノール(Eastman chemical社製)
・1,5-ヘキサンジオール(Sigma-Aldrich社製)
[有機溶剤(D)]
・PG:1,2-プロパンジオール(表面張力:38.6mN/m、沸点:184℃、富士フイルム和光純薬株式会社製)
・1,2-ヘキサンジオール(東京化成工業株式会社製)
・1,4-ブタンジオール(東京化成工業株式会社製)
[凝集剤(C)]
〔多価金属塩〕
・硝酸カルシウム4水和物(東京化成工業株式会社製)
・硝酸アルミニウム9水和物(東京化成工業株式会社製)
〔有機酸塩〕
・40質量%乳酸アンモニウム溶液(富士フイルム和光純薬株式会社製)
〔カチオン性樹脂〕
・スーパーフレックス650(カチオン性ウレタン樹脂の水分散液(固形分26質量%)、第一工業製薬株式会社製、商品名、カチオン度:0.8meq/g)
・DK6810(変性ポリアミン系樹脂の水溶液(固形分55質量%)、星光PMC株式会社製、商品名、カチオン度:4.1meq/g)
・カチオマスターPD-7(アミン・エピクロリドン縮合型ポリマーの水溶液(固形分52.5質量%)、四日市合成株式会社製、商品名、カチオン度:7.3meq/g)
【0096】
<評価>
【0097】
(1)低浸透性記録媒体を用いた印刷におけるドット拡張性の評価
表面処理された低浸透性記録媒体に、インクジェット記録用ブラックインク1を用いて、以下のインクジェット記録方式により画像を作成した。
(インクジェット記録方式による印刷)
温度25±1℃、相対湿度30±5%の環境で、インクジェットヘッド「KJ4B-HD06MHG-STDV」(京セラ株式会社製、ピエゾ式)を装備した印刷評価装置(株式会社トライテック製)にインクジェット記録用ブラックインク1を充填した。
ヘッド電圧26V、周波数20kHz、吐出液適量12pL、ヘッド温度32℃、解像度600dpi、負圧-4.0kPaを設定し、表面処理された低浸透性記録媒体の長手方向と搬送方向が同じになる向きに、表面処理された低浸透性記録媒体を搬送台に減圧で固定した。前記印刷評価装置に印刷命令を転送し、Duty100%で5ドット分の幅の線を印刷した。得られた印刷物を光学顕微鏡にて観察し、線の幅(単位:μm)を測定した。線の幅が広いほどドット拡張性に優れ、画質が良好であることを示す。
【0098】
(2)低浸透性記録媒体を用いた印刷におけるベタ画像均一性の評価
表面処理された低浸透性記録媒体に、インクジェット記録用ブラックインク1を用いて、以下のインクジェット記録方式により画像を作成した。
(インクジェット記録方式による印刷)
温度25±1℃、相対湿度30±5%の環境で、インクジェットヘッド「KJ4B-HD06MHG-STDV」(京セラ株式会社製、ピエゾ式)を装備した印刷評価装置(株式会社トライテック製)にインクジェット記録用ブラックインク1を充填した。
ヘッド電圧26V、周波数20kHz、吐出液適量12pL、ヘッド温度32℃、解像度600dpi、負圧-4.0kPaを設定し、表面処理された低浸透性記録媒体の長手方向と搬送方向が同じになる向きに、表面処理された低浸透性記録媒体を搬送台に減圧で固定した。前記印刷評価装置に印刷命令を転送し、Duty100%から5%まで5%ごとの1.5cm×1.5cm四方の画像を印刷した。クオリティ・エンジニアリング・アソシエイツ(QEA)社製のハンディ型画像評価システム「PIAS(登録商標)-II」を用いて任意の9箇所のL*値を測定して、L*値が20以上22以下となる印刷濃度を特定した。次いで、規定のL*値を満たす印刷濃度においてL*値の標準偏差値を測定し、このL*値の標準偏差値をベタ画像均一性の評価に用いた。L*値の標準偏差値が小さいほどベタ画像均一性に優れる。
【0099】
(3)高浸透性記録媒体を用いた印刷における画像濃度の評価
表面処理された高浸透性記録媒体に、インクジェット記録用ブラックインク1を用いて、以下のインクジェット記録方式により画像を作成した。
(インクジェット記録方式による印刷)
温度25±1℃、相対湿度30±5%の環境で、インクジェットヘッド「KJ4B-HD06MHG-STDV」(京セラ株式会社製、ピエゾ式)を装備した印刷評価装置(株式会社トライテック製)にインクジェット記録用ブラックインク1を充填した。
ヘッド電圧26V、周波数20kHz、吐出液適量12pL、ヘッド温度32℃、解像度600dpi、負圧-4.0kPaを設定し、表面処理された高浸透性記録媒体の長手方向と搬送方向が同じになる向きに、表面処理された高浸透性記録媒体を搬送台に減圧で固定した。前記印刷評価装置に印刷命令を転送し、Duty100%の画像を印刷し、1日放置後、X―rite社製「Rite―eXact」を用いて任意の5箇所の画像濃度を、光源D50、視野角2°、CIE表色系、フィルターTの条件で測定した。そして得られた任意の5箇所の画像濃度の平均値を算出することで、画像濃度の評価を行った。数値が大きいほど画像濃度が高いことを示す。
【0100】
【0101】
表1から、本発明の実施例1~24の処理液は、比較例1~3の処理液に比べて、低浸透性の記録媒体を用いる際に良好なドット拡張性とベタ画像均一性が共に優れる高画質の印刷物を得ることができ、高浸透性の記録媒体を用いる際に高い画像濃度を有する印刷物を得ることができることが分かる。