(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094999
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】防火用システム
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20240703BHJP
G08B 17/12 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
G08B17/00 C
G08B17/00 J
G08B17/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211967
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】喜名 大輔
(72)【発明者】
【氏名】西宮 立享
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸口 稔彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 研二
【テーマコード(参考)】
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
5C085AA12
5C085AB08
5C085AC16
5C085BA36
5C085CA04
5C085CA20
5G405AA01
5G405AB05
5G405AC06
5G405CA05
5G405CA06
5G405CA29
5G405EA41
(57)【要約】
【課題】火災が発生しそうな箇所について火災発生前の対応を可能にする防火用システムを提供する。
【解決手段】防火用システムは、監視対象物または監視対象物の周囲の空間をセンシングすることで得られる第1情報に基づき、前記監視対象物のなかで火災発生の予兆がある火元候補を検知する第1検知部と、前記第1検知部により検知された前記火元候補に関して前記第1情報と比べて詳しく取得された第2情報に基づき、前記火元候補が所定の防火対象であるか否かを検知する第2検知部と、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象物または前記監視対象物の周囲の空間をセンシングすることで得られる第1情報に基づき、前記監視対象物のなかで火災発生の予兆がある火元候補を検知する第1検知部と、
前記第1検知部により検知された前記火元候補に関して前記第1情報と比べて詳しく取得された第2情報に基づき、前記火元候補が所定の防火対象であるか否かを検知する第2検知部と、
を備えた防火用システム。
【請求項2】
前記監視対象物または前記監視対象物の周囲の空間を撮像することで前記センシングを行う撮像部と、
検知器と前記火元候補との間の距離を縮める移動装置と、
のうち少なくとも一方を更に備え、
前記第2情報は、前記移動装置、または前記撮像部の望遠機能を用いて取得される、
請求項1に記載の防火用システム。
【請求項3】
前記防火対象を防火処理する防火装置と、
前記第2検知部により前記火元候補が前記防火対象であると検知された場合に、前記防火装置に前記防火処理を実行させる制御装置と、
を更に備えた、
請求項1に記載の防火用システム。
【請求項4】
前記監視対象物または前記監視対象物の周囲の空間を撮像することで前記センシングを行う撮像部を更に備え、
前記第2情報は、前記撮像部による前記センシングの結果を拡大処理することにより取得される、
請求項3に記載の防火用システム。
【請求項5】
前記防火装置は、設置場所が異なる複数の防火装置を含み、
前記制御装置は、前記第2検知部の検出結果から得られる前記防火対象の状態に基づき、前記複数の防火装置のうちどの防火装置を用いて前記防火処理を行うかを選定する、
請求項3に記載の防火用システム。
【請求項6】
前記防火装置は、消火方法が異なる複数の防火装置を含み、
前記制御装置は、前記第2検知部の検出結果から得られる前記防火対象の状態に基づき、前記複数の防火装置のうちどの防火装置を用いて前記防火処理を行うかを選定する、
請求項3に記載の防火用システム。
【請求項7】
前記複数の防火装置は、除去消火法または窒息消火法を用いる第1防火装置と、散水消火法を用いる第2防火装置とを含む、
請求項6に記載の防火用システム。
【請求項8】
前記監視対象物を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置により搬送された前記監視対象物を受け入れるとともに、受け入れた前記監視対象物を防火処理する防火装置と、
前記第2検知部により前記搬送装置上の前記火元候補が前記防火対象であると検知された場合に、前記防火装置に向けて前記火元候補が移動するように前記搬送装置を制御する制御装置と、
を更に備えた、
請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載の防火用システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記第1検知部により前記火元候補が検知された場合に、前記搬送装置により搬送される前記火元候補に対する前記センシングを継続させる、
請求項8に記載の防火用システム。
【請求項10】
前記搬送装置は、各々が前記監視対象物を搬送する複数のコンベアを有し、
前記防火装置は、複数の防火装置を有し、前記複数の防火装置の各々は、前記複数のコンベアに含まれる1つ以上のコンベアにより搬送される前記監視対象物を受け入れ可能に配置されている、
請求項8に記載の防火用システム。
【請求項11】
前記制御装置は、前記第2検知部により前記搬送装置上の前記火元候補が前記防火対象であると検知された場合に、前記検知されたタイミングから前記火災発生のタイミングまでの時間を示すクライテリアに基づき、前記複数の防火装置のなかから前記防火対象を受け入れる防火装置を選定する、
請求項10に記載の防火用システム。
【請求項12】
前記制御装置は、前記火元候補に関して取得された前記第2情報と、前記監視対象物の種類ごとにあらかじめ取得された昇温プロファイルに基づいて予測された前記監視対象物の温度推移とに基づき、前記クライテリアを導出する、
請求項11に記載の防火用システム。
【請求項13】
前記制御装置は、前記火元候補に関して取得された前記第2情報が入力されると、前記クライテリアを出力するように学習された学習済みモデルを用いて、前記クライテリアを導出し、
前記学習済みモデルは、
前記監視対象物の種類ごとにあらかじめ予測された前記監視対象物の温度推移と、
前記監視対象物の種類ごとにあらかじめ取得された昇温プロファイルと、
の少なくとも一方を含む教師データセットが入力される学習ステップが繰り返し実行されたことで、前記入力に応じた前記クライテリアを出力するように学習されている、
請求項12に記載の防火用システム。
【請求項14】
前記制御装置は、
前記火元候補に関して時系列上の複数の時点の前記第2情報を取得する取得部と、
状況が異なる複数の着火源に関して実験またはシミュレーションにより求められた火災発生までの状態の時間変化を示す状態変化情報、または前記状態変化情報を用いて学習が行われた学習済みモデルと、前記取得部により取得された時系列上の複数の時点の前記第2情報とに基づき、前記火元候補に関する火災発生のタイミングまでの残り時間と、前記火元候補に対する防火処理の内容とのうち少なくとも一方を導出する情報処理部と、
を有する、
請求項3から請求項7のうちいずれか1項に記載の防火用システム。
【請求項15】
監視対象物または前記監視対象物の周囲の空間をセンシングすることで得られる情報に基づき、前記監視対象物のなかで火災発生の予兆がある火元候補を検知する検知部と、
少なくとも前記火元候補に関して取得された情報に基づき、前記火元候補が検知された後に前記火災発生のタイミングまでの残り時間を導出する導出部と、
を備えた防火用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、防火用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、廃棄物を破砕する破砕機、破砕された廃棄物を移送するコンベア、及び該コンベア下流からの廃棄物を次工程に導くシュートを備えた廃棄物処理設備が開示されている。当該廃棄物処理設備の防火装置は、前記コンベアに設けられた火災及び/又は爆発感知手段からの信号によりシュートの通路を遮断する遮断手段、及び遮断されたシュート内を水で充満させる散水手段を備えている。
【0003】
特許文献2には、赤外線カメラから出力される画像データをネットワーク上に接続された受信端末に伝送する監視システムが開示されている。当該受信端末は、伝送された前記画像データから火災を検知する火災検知手段と、該火災検知手段で検知した火災情報を表示する表示手段を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-6649号公報
【特許文献2】特開2009-100198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、廃棄物に火災が生じた場合、火災が生じた後からの対応では設備の復旧に時間がかかる場合がある。したがって、火災が発生しそうな箇所について火災発生前に対応する技術が期待されている。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、火災が発生しそうな箇所について火災発生前の対応を可能にする防火用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る防火用システムは、監視対象物または前記監視対象物の周囲の空間をセンシングすることで得られる第1情報に基づき、前記監視対象物のなかで火災発生の予兆がある火元候補を検知する第1検知部と、前記第1検知部により検知された前記火元候補に関して前記第1情報と比べて詳しく取得された第2情報に基づき、前記火元候補が所定の防火対象であるか否かを検知する第2検知部と、を備えている。
【0008】
本開示に係る防火用システムは、監視対象物または監視対象物の周囲の空間をセンシングすることで得られた情報に基づき、前記監視対象物のなかで火災発生の予兆がある火元候補を検知する検知部と、少なくとも前記火元候補に関して取得された情報に基づき、前記火元候補が検知された後に前記火災発生のタイミングまでの残り時間を導出する導出部と、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、火災が発生しそうな箇所について火災発生前の対応が可能になる防火用システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る防火用システムの概略構成図である。
【
図2】本開示の第1実施形態に係る制御装置の機能ブロック図である。
【
図3】本開示の第1実施形態に係る制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図4】本開示の第2実施形態に係る防火用システムの概略構成図である。
【
図5】本開示の第2実施形態に係る搬送装置の一部およびシュート部を示した斜視図である。
【
図6】本開示の第2実施形態に係る制御装置の機能ブロック図である。
【
図7】本開示の第2実施形態に係る調整部による撮像部の追尾撮像の様子を説明するための図である。
【
図8】本開示の第2実施形態に係る撮像部の視野範囲と検知された監視対象物の温度との関係を示すグラフである。
【
図9】本開示の第2実施形態に係る火元候補の搬送先の防火装置をコンベア上の位置に対応付けて示した図である。
【
図10】本開示の第2実施形態に係る制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図11】本開示の第4実施形態に係る搬送装置上の監視対象物の様子を示す図である。
【
図12】本開示の第4実施形態に係る搬送装置上の監視対象物に着火源が含まれる場合の様子を模式的に示す図である。
【
図13】時間の経過に伴う火元候補の状態変化を着火源の位置ごとに説明するための図である。
【
図14】時間軸および表面温度の対応関係(a)、ならびに時間軸および発熱速度の対応関係(b)を、着火源を含む監視対象物の種類ごと(i~iii)に示す図である。
【
図15】本開示の第4実施形態に係る制御装置の機能ブロック図である。
【
図16】本開示の第4実施形態に係る制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図17】本開示のその他の実施形態に係る防火用システムの概略構成図である。
【
図18】本開示の実施形態に係るコンピュータの構成を示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら、防火用システム100を実施するための形態を説明する。
【0012】
<防火用システムの第1実施形態>
防火用システム100は、例えば、都市ごみや産業廃棄物などを処理対象物とする廃棄物処理プラント内で稼動するシステムである。防火用システム100は、廃棄物処理プラント内で処理される処理対象物から火災が発生することを未然に防止する。本明細書中の記載では、廃棄物処理プラント内で処理される処理対象物を「監視対象物T」と称する。
図1に示すように、防火用システム100は、例えば、撮像部1と、移動装置2と、検知器3と、防火装置4と、制御装置5とを備えている。
【0013】
(撮像部)
撮像部1は、所定の空間内に貯留された監視対象物Tの表面を鉛直方向Dvにおける上方側から全体的に撮像するカメラである。以下、監視対象物Tが貯留された所定の空間を「貯留空間R1」と称する。撮像部1は、貯留空間R1に貯留された監視対象物Tの表面の可視光画像を生成するとともに、生成した可視光画像を後述の制御装置5に送信する。なお、撮像部1は、可視光画像に代えて赤外線画像や紫外線画像を生成するカメラであってもよい。
【0014】
(移動装置)
移動装置2は、貯留空間R1内を移動可能な装置である。移動装置2は、監視対象物Tに向かって接近する動作、および監視対象物Tから離間する動作が可能である。移動装置2は、撮像部1よりも監視対象物Tに近い位置で貯留空間R1内を移動する。本実施形態では、移動装置2は、例えば貯留空間R1を画定する床面の上を走行可能である。移動装置2の移動動作は、制御装置5により制御されている。移動装置2は、作動対象装置Sの一例である。
【0015】
(検知器)
検知器3は、移動装置2に搭載されている。すなわち、検知器3は、移動装置2に設けられて移動装置2と共に移動する。本実施形態では、検知器3は、移動装置2が監視対象物Tに接近した際に、監視対象物Tの一部の表面を撮像するカメラである。検知器3は、監視対象物Tのなかで、撮像部1が撮像可能な領域よりも狭い領域の画像を撮像する。検知器3は、監視対象物Tの一部の表面の可視光画像を生成するとともに、生成した可視光画像を制御装置5に送信する。なお、検知器3は、可視光画像を生成するカメラに代えて、赤外線画像や紫外線画像を生成するカメラであってもよい。以下、撮像部1および検知器3が制御装置5に送信する可視光画像を単に「画像」と称する。当該画像は、監視対象物Tをセンシングすることで得られる第1情報の一例である。
【0016】
(防火装置)
防火装置4は、移動装置2に設けられており、監視対象物Tを防火処理する。本実施形態では、防火装置4は、制御装置5により制御されることで、不活性ガスを所定の方向(監視対象物Tが位置する方向)に向けて噴出可能である。すなわち、防火装置4は、除去消火法を用いて監視対象物Tを防火処理する。不活性ガスによる噴出は、上記防火処理の一例である。また、防火装置4は、作動対象装置Sの一例である。
【0017】
(制御装置)
制御装置5は、撮像部1および検知器3から受信した画像に基づき、移動装置2および防火装置4を遠隔制御する。
図2に示すように、制御装置5は、例えば、取得部50と、第1検知部51と、第2検知部52と、作動部53と、記憶部54とを有している。
【0018】
(取得部)
取得部50は、撮像部1から送信された画像を所定周期で取得するとともに撮像部1から取得した画像を第1検知部51に送り、検知器3から送信された画像を取得するとともに検知器3から取得した画像を第2検知部52に送る。所定周期は、例えば、撮像部1のフレームレート(fps:flames per second)などに基づき決定される。
【0019】
(第1検知部)
第1検知部51は、取得部50から受け付けた画像に基づき、当該画像に写る監視対象物Tのなかで火災発生の予兆がある火元候補T1を検知する。本明細書中に記載する「火災発生の予兆」は、将来火災が発生する可能性があることを意味する。また、「火元候補T1」は、画像に写る監視対象物Tのなかの一領域を意味しており、当該一領域が示す輝度値のすべては、一領域の周りの領域が示す輝度値よりも所定の第1しきい値以上大きい。本実施形態では、監視対象物Tの表面の温度が高くなるに伴って、画像中の監視対象物Tを撮像した領域の輝度値は大きくなる。つまり、画像中の火元候補T1は、画像に写る監視対象物Tのなかで温度が比較的高い領域を示している。第1しきい値は、例えば記憶部54によりあらかじめ記憶されている。第1検知部51は、第1しきい値を記憶部54から適時に参照することで上記の検知動作を行う。具体的には、第1検知部51は、画像中の輝度値を判定することで火元候補T1の位置(例えば火元候補T1の中心や外縁など)を検知する。第1検知部51が検知の対象とする画像中の各々の画素には、例えば貯留空間R1内の位置を表現した座標が関連付いている。第1検知部51は、火元候補T1の位置を作動部53に送る。
【0020】
(第2検知部)
第2検知部52は、取得部50から受け付けた画像に基づき、火元候補T1が所定の防火対象であるか否かを検知する。第2検知部52が検知に用いる当該画像は、第1情報と比べて詳しく取得された第2情報の一例である。本明細書中に記載の「所定の防火対象」は、将来火災が発生する箇所(火元)であり、防火装置4による防火処理が必要な箇所を意味する。第2検知部52は、画像に写る火元候補T1の輝度値が所定の第2しきい値を超えているか否かを判定し、輝度値が第2しきい値を超えている場合に火元候補T1のなかで第2しきい値を超えている箇所の位置を取得する。以下、火元候補T1のなかで第2しきい値を超えている箇所を「火元位置T2」と称する。第2しきい値は、例えば上記第1しきい値よりも大きい。第2しきい値は、例えば記憶部54によりあらかじめ記憶されている。第2検知部52は、第2しきい値を記憶部54から適時に参照することで上記の検知動作を行う。第2検知部52が検知の対象とする画像中の各々の画素には、例えば貯留空間R1内の位置を表現した座標が関連付いている。第2検知部52は、火元位置T2を作動部53に送る。
【0021】
(作動部)
作動部53は、第1検知部51から火元候補T1の位置を受け付けた場合、および第2検知部52から火元位置T2を受け付けた場合に、作動対象装置S(移動装置2および防火装置4)を作動する。作動部53は、第1作動部531と、第2作動部532とを有している。
【0022】
第1作動部531は、第1検知部51から火元候補T1の位置を受け付けた場合に、移動装置2を作動することで、移動装置2を火元候補T1に接近させる(
図1中の(a)および(b)参照)。具体的には、第1作動部531は、移動装置2を火元候補T1の位置付近に移動させるとともに、防火装置4により噴出される不活性ガスの噴出方向が火元候補T1を向くように移動装置2を作動する。
【0023】
第2作動部532は、第2検知部52から火元位置T2を受け付けた場合に、防火装置4を作動することで、火元位置T2に位置した監視対象物Tを防火処理する。具体的には、第2作動部532は、防火装置4に対して火元位置T2に向かう不活性ガス噴出の指示を送信することで、火元位置T2に位置した監視対象物Tに対して防火処理を行う。
【0024】
(制御装置の動作)
続いて、
図3を参照して本実施形態における制御装置5の動作の一例を説明する。ただし、以下に説明する処理の順番は、以下の例に限定されず、適宜入れ替えられてもよい。
【0025】
取得部50は、撮像部1から監視対象物Tの画像を取得する(ステップS100)。次いで、第1検知部51は、監視対象物Tのなかの火元候補T1を検知する(ステップS101)。次いで、作動部53は、移動装置2を作動する(ステップS102)。次いで、取得部50は、検知器3から監視対象物Tの画像を取得する(ステップS103)。次いで、第2検知部52は、火元候補T1が防火対象であるか否かを検知する(ステップS104)。次いで、作動部53は、防火装置4を作動する(ステップS105)。以上説明した制御装置5の動作は、廃棄物処理プラントの稼動中に繰り返し実行される。
【0026】
(作用・効果)
上述した防火用システム100では、監視対象物Tのなかで火災発生の予兆がある火元候補T1を検知し、検知器3を搭載した移動装置2を用いて火元候補T1に関して取得された情報に基づき、火元候補T1が所定の防火対象であるか否かを検知している。これにより、火災が発生しそうな箇所を火災発生前に高精度に検出することができる。また、上記防火用システム100では、火元候補T1が防火対象であると検知された場合に、防火装置4を作動することで防火対象である火元候補T1を防火処理している。したがって、監視対象物Tから火災が発生することを抑制できる。
【0027】
<防火用システムの第2実施形態>
次に、本開示に係る防火用システム100の第2実施形態について説明する。なお、以下に説明する第2実施形態では、上記の第1実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。
【0028】
図4に示すように、防火用システム100は、例えば、制御装置6と、搬送装置7と、シュート部8と、移送装置9と、撮像部10と、防火装置40とを備えている。はじめに、搬送装置7の構成について説明する。
【0029】
(搬送装置)
搬送装置7は、破砕機200により破砕された監視対象物Tを破砕機200から受けるとともに、監視対象物Tを目的の場所に向けて搬送する。本実施形態では、搬送装置7は、複数の壁面300により画定された空間内に配置されており、当該空間内で監視対象物Tを搬送する。壁面300は、例えば、廃棄物処理プラント内の設備の一部分である。以下、搬送装置7が配置され、当該搬送装置7により監視対象物Tが搬送される空間を「搬送空間R2」と称する。搬送装置7は、移動装置2の一例である。
【0030】
搬送装置7は、複数のコンベア70を有している。複数のコンベア70は、各々が監視対象物Tを搬送する。
図4中では、搬送空間R2が延びる方向で4つのコンベア70が一列に並んでいる場合を一例に示している。すなわち、一のコンベア70に搬送された監視対象物Tは、当該一のコンベア70に隣り合うコンベア70に落下し、当該隣り合うコンベア70により搬送される。以下、説明の便宜上、これら4つのコンベア70を破砕機200に近い側から順に「第1コンベア71」、「第2コンベア72」、「第3コンベア73」、「第4コンベア74」と称する。また、搬送空間R2内で破砕機200に近い側を「上流側」と称し、破砕機200から離れた目的の場所に近い側を「下流側」と称する場合がある。
【0031】
第1コンベア71は、破砕機200よりも鉛直方向Dvにおける下方側に配置されており、破砕機200により破砕された監視対象物Tを受ける。第1コンベア71は、破砕機200から供給された監視対象物Tを下流側に向けて搬送するとともに、搬送した監視対象物Tを落下させて第2コンベア72に供給する。第2コンベア72は、第1コンベア71よりも下流側に配置されている。第2コンベア72は、第1コンベア71から供給された監視対象物Tを下流側に向けて搬送するとともに、搬送した監視対象物Tを落下させて第3コンベア73に供給する。第3コンベア73は、第2コンベア72よりも下流側に配置されており、上流側の端部が鉛直方向Dvで第2コンベア72に重なっている。第3コンベア73は、第2コンベア72から供給された監視対象物Tを下流側に向けて搬送するとともに、搬送した監視対象物Tを落下させて第4コンベア74に供給する。第4コンベア74は、第3コンベア73よりも下流側に配置されており、上流側の端部が鉛直方向Dvで第3コンベア73に重なっている。第4コンベア74は、第3コンベア73から供給された監視対象物Tを下流側の目的の場所に向けて搬送する。
【0032】
第2コンベア72、第3コンベア73、および第4コンベア74の幅(
図5に示すW2)は、互いに等しい。以下、これら第2コンベア72、第3コンベア73および第4コンベア74をまとめて「他のコンベア70」と称する場合がある。ここでいう「幅」は、コンベア70の幅方向(鉛直方向Dvに対して交差し、かつ監視対象物Tを搬送する方向に対して垂直な方向)における寸法を意味する。一方、第1コンベア71の幅(
図5に示すW1)は、他のコンベア70の幅よりも大きい。第1コンベア71の幅は、例えば、他のコンベア70の幅の2倍以上である。なお、第1コンベア71の幅は、他のコンベア70の幅の1倍よりも大きく、2倍未満であってもよい。
【0033】
各々のコンベア70(第1コンベア71~第4コンベア74)の作動は、後述の制御装置6により制御されている。具体的には、制御装置6は、コンベア70の始動(作動の開始)、作動の維持、停止(作動の終了)などを制御する。制御装置6は、監視対象物Tが下流側に向かって搬送されるようにコンベア70を作動する順方向作動と、監視対象物Tが上流側に向かって搬送されるようにコンベア70を作動する逆方向作動との2通りを用いる。つまり、
図4中では、コンベア70が順方向作動された場合、コンベア70上の監視対象物Tは右側(下流側)に移動し、コンベア70が逆方向作動された場合、コンベア70上の監視対象物Tは左側(上流側)に移動する。第2コンベア72、第3コンベア73、および第4コンベア74の搬送速度は、互いに等しい。一方、第1コンベア71の搬送速度は、他のコンベア70の搬送速度よりも小さい。第1コンベア71の搬送速度は、例えば、他のコンベア70の搬送速度の0.5倍以下である。なお、第1コンベア71の搬送速度は、例えば、他のコンベア70の搬送速度の0.5倍よりも大きく、1倍未満であってもよい。以下、各々のコンベア70(第1コンベア71~第4コンベア74)が順方向作動された状態を「通常運転」と称し、逆方向作動された状態を「非通常運転」と称する場合がある。搬送装置7(第1コンベア71~第4コンベア74)は、作動対象装置Sの一例である。
【0034】
(シュート部)
シュート部8は、第1コンベア71から落下した監視対象物Tを一時的に受け溜めるとともに、受け溜めた監視対象物Tを鉛直方向Dvにおける上方側から第2コンベア72上に供給する。シュート部8は、第1コンベア71と第2コンベア72との間に配置されている。
【0035】
図5に示すように、シュート部8は、所定の箱形形状を成している。シュート部8は、中央部分に鉛直方向Dvから見て矩形状に形成された供給孔80hを有している。供給孔80hは、鉛直方向Dvにおける上方側に開口する第1開口80uと、鉛直方向Dvにおける下方側に開口する第2開口80dとを有している。第2開口80dは、第2コンベア72に向けて開口している。本実施形態では、供給孔80hの内面に区画された領域は、鉛直方向Dvで一様に形成されている。なお、供給孔80hは、第1開口80uから第2開口80dに向かうにしたがって縮小するように形成されてもよい。また、供給孔80hは、鉛直方向Dvから見て矩形状に形成されていなくてもよく、例えば円形や矩形以外の多角形に形成されてもよい。第2開口80dの幅は、例えば第2コンベア72の幅W2と等しく形成されている。なお、第2開口80dの幅は、第2コンベア72の幅W2よりも小さく形成されてもよい。
【0036】
また、シュート部8は、第1開口80uに接続されて、鉛直方向Dvにおける上方側に向かうにしたがって鉛直方向Dvに対して垂直な断面の領域が拡大する案内部8gを有している。本実施形態では、案内部8gは、4つの面8aにより構成されている。これら4つの面8aは、隣り合う面同士が互いに接続されることで、シュート部8のなかの最も上方側に受入開口8hを形成している。受入開口8hの幅は、例えば、第1コンベア71の幅W1と等しく形成されている。なお、受入開口8hの幅は、第1コンベア71の幅W1よりも大きく形成されてもよい。
【0037】
したがって、第1コンベア71により下流側に搬送された監視対象物Tは、シュート部8に落ち込み、シュート部8の案内部8g(4つの面8a)により下方側に向かって案内された後、供給孔80hを通じて、第2コンベア72に上方側から供給される。
【0038】
(撮像部)
図4に戻り、撮像部10は、搬送空間R2内で搬送される監視対象物Tの表面を上方から撮像するカメラである。撮像部10は、監視対象物Tの表面の可視光画像を生成するとともに、生成した画像を制御装置6に送信する。当該画像は、監視対象物Tをセンシングすることで得られる第1情報の一例である。なお、撮像部10は、可視光画像に代えて赤外線画像や紫外線画像を生成するカメラであってもよい。
【0039】
撮像部10は、複数が壁面300に設けられている。
図4中では、上流側から下流側にかけて3つの撮像部10が互いに間隔をあけて壁面300に設けられている場合を一例に示している。以下、説明の便宜上、これら3つの撮像部10を上流側(破砕機200に近い側)から順に「第1撮像部11」、「第2撮像部12」、「第3撮像部13」と称する。
【0040】
本実施形態では、第1撮像部11は、少なくとも第1コンベア71上で搬送される監視対象物Tの表面の全体を撮像する。第2撮像部12は、少なくとも、第2コンベア72上で搬送される監視対象物Tの表面の全体、および第3コンベア73の一部の上で搬送される監視対象物Tの表面の全体を撮像する。第3撮像部13は、少なくとも第2撮像部12の撮像範囲外である第3コンベア73上の残部の上で搬送される監視対象物Tの表面の全体を主として撮像する。なお、これら第1撮像部11、第2撮像部12、および第3撮像部13の撮像範囲は、互いに重なっていてもよい。以下、各々の上記領域を撮像する撮像部10(第1撮像部11、第2撮像部12、第3撮像部13)の設定を「初期設定」と称する。
【0041】
第1撮像部11、第2撮像部12、および第3撮像部13それぞれの設定は、制御装置6により調整されている。ここでいう撮像部10の設定には、例えば、撮像方向の角度の調整(撮像部10全体のチルト)、広角機能による画角の調整(画角内で被写体としての監視対象物Tを小さく捉えるズームアウト)、および望遠機能による画角の調整(画角内で被写体としての監視対象物Tを大きく捉えるズームイン)が含まれる。すなわち、各々の撮像部10は、広角機能によりコンベア70上にある監視対象物Tの全体を撮像することができ、望遠機能によりコンベア70上にある監視対象物Tの一部を拡大して撮像することができる。
【0042】
(防火装置)
防火装置40は、搬送空間R2内に配置されており、監視対象物Tに対して防火処理をする。詳細な図示は省略するが、防火装置40は、例えば、所定の箱形形状を成している。防火装置40は、各々のコンベア70に搬送された監視対象物Tを受け入れ可能に複数配置されている。言い換えれば、防火装置40は、設置場所が異なる複数の防火装置40を含んでいる。
図4中では、3つの防火装置40が搬送空間R2内で互いに間隔をあけて配置されている場合を一例に示している。以下、説明の便宜上、これら3つの防火装置40を上流側(破砕機200に近い側)から順に「第1防火装置41」、「第2防火装置42」、「第3防火装置43」と称する。
【0043】
第1防火装置41は、第1コンベア71よりも上流側かつ第1コンベア71よりも鉛直方向Dvにおける下方側に配置されている。より具体的には、第1防火装置41は、第1コンベア71における上流側の端部の下方に位置している。第2防火装置42は、第3コンベア73よりも上流側かつ第3コンベア73よりも鉛直方向Dvにおける下方側に配置されている。より具体的には、第2防火装置42は、第3コンベア73における上流側の端部の下方に位置している。同時に、第2防火装置42は、第2コンベア72における下流側の端部の下方に位置している。第3防火装置43は、第4コンベア74よりも上流側かつ第4コンベア74よりも鉛直方向Dvにおける下方側に配置されている。より具体的には、第3防火装置43は、第4コンベア74における上流側の端部の下方に位置している。同時に、第3防火装置43は、第3コンベア73における下流側の端部の下方に位置している。つまり、防火装置40は、複数の防火装置40(第1防火装置41、第2防火装置42、第3防火装置43)を有し、複数の防火装置40の各々は、複数のコンベア70に含まれる1つ以上のコンベア70により搬送される監視対象物Tを受け入れ可能に配置されている。
【0044】
すなわち、第1コンベア71が逆方向作動された場合、第1コンベア71上の監視対象物Tは、第1防火装置41内に落下する。第2コンベア72が順方向作動されて第3コンベア73が逆方向作動された場合、第2コンベア72上の監視対象物Tおよび第3コンベア73上の監視対象物Tは、第2防火装置42内に落下する。第3コンベア73が順方向作動されて第4コンベア74が逆方向作動された場合、第3コンベア73上の監視対象物Tおよび第4コンベア74上の監視対象物Tは、第3防火装置43内に落下する。
【0045】
防火装置40(第1防火装置41~第3防火装置43)は、監視対象物Tを内部に受け入れた際、制御装置6により作動されることで、当該防火装置40の内部を外部と気密に隔離された閉空間(密室)にする。防火装置40は、例えば上方側から蓋をして内部を閉空間にすることで、受け入れた監視対象物Tに対して防火処理する。すなわち、防火装置40は、窒息消火法を用いて監視対象物Tを防火処理する。なお、防火装置40は、内部を閉空間にすることで受け入れた監視対象物Tに対して防火処理する構成に代えて、例えば、内部に不活性ガスを噴出して監視対象物Tを防火処理してもよい。すなわち、防火装置40は、除去消火法を用いて監視対象物Tを防火処理してもよい。
【0046】
本実施形態では、防火装置40は、内部に受け入れた監視対象物Tの温度を検出可能なセンサ40aを有している。センサ40aは、例えば防火装置40の内部に配置されている温度センサである。センサ40aは、検出結果を制御装置6に送信する。なお、防火装置40が有するセンサ40aは、監視対象物Tの温度を検出可能な構成に限定されることはなく、例えば煙センサやカメラなどであってもよい。
【0047】
(移送装置)
移送装置9は、制御装置6により作動されることで、各々の防火装置40に貯留された監視対象物Tをピットなどに移送する。移送装置9は、各々の防火装置40とピットとを接続している。移送装置9は、作動対象装置Sの一例である。
【0048】
(制御装置)
制御装置6は、撮像部10から受信した画像、およびセンサ40aから受信した検出結果に基づき、作動対象装置S(搬送装置7、防火装置40、移送装置9)を遠隔制御する。
図6に示すように、制御装置6は、例えば、第1取得部55と、第1検知部56(検知部)と、調整部57と、第2検知部58と、第2取得部59と、作動部60と、クライテリア導出部61(導出部)と、選定部62と、判定部63と、防火処理部64と、記憶部65とを有している。
【0049】
(第1取得部)
第1取得部55は、撮像部10から送信された画像を所定周期で取得するとともに、取得した画像を第1検知部56、第2検知部58、第2取得部59、および判定部63に送る。所定周期は、例えば、撮像部10のフレームレートなどに基づき決定される。また、第1取得部55は、防火装置40のセンサ40aから送信された検出結果を取得するとともに、取得した検出結果を判定部63に送る。
【0050】
(第1検知部)
第1検知部56(検知部)は、第1取得部55から受け付けた画像に基づき、当該画像に写る監視対象物Tのなかで火災発生の予兆がある火元候補T1を検知する。具体的には、第1検知部56は、画像に写る監視対象物Tの輝度値に基づき、監視対象物Tのなかに火元候補T1があるか否かを判定することで火元候補T1の位置を検知する。第1検知部56は、監視対象物Tのなかに火元候補T1があると判定した場合に、検知した火元候補T1の位置を調整部57、作動部60および判定部63に送る。
【0051】
(調整部)
調整部57は、第1検知部56から火元候補T1を検知した旨を受け付けた場合に、撮像部10の設定を調整する。具体的には、調整部57は、撮像部10が第1検知部56により検知された火元候補T1を主として撮像することができるように撮像部10の設定を調整する。例えば、
図4および
図7に示すように、第3撮像部13の撮像範囲にある第3コンベア73上で火元候補T1が検知された場合を一例に説明する。調整部57は、撮像部10の撮像方向が火元候補T1の位置を向くように逐次調整し、撮像部10の画角(視野範囲)内の大部分が火元候補T1となるように撮像部10の望遠機能を逐次調整する。すなわち、調整部57は、撮像部10がコンベア70により搬送される火元候補T1を連続的に撮像するように撮像部10に火元候補T1を追尾させる。言い換えれば、制御装置6は、第1検知部56により火元候補T1が検知された場合に、コンベア70により搬送される火元候補T1に対するセンシングを継続させる。以下、説明の便宜上、撮像部10がコンベア70により搬送される火元候補T1を連続的に撮像することを「追尾撮像」と称する。調整部57は、撮像部10が追尾撮像している旨を第2検知部58に送る。
【0052】
また、調整部57は、後述の判定部63から受け付けた判定(第1判定)の結果が、火元候補T1が画像中にあることを示す場合、撮像部10が追尾撮像するように撮像部10の設定を調整する。また、調整部57は、後述の作動部60から通常運転に切り替えた旨を受け付けた場合、もしくは、後述の防火処理部64から再発火のリスクがない旨を受け付けた場合、撮像部10の設定を上記初期設定に調整する。
【0053】
(第2検知部)
第2検知部58は、調整部57から撮像部10が追尾撮像している旨を受け付けた場合に、第1取得部55から受け付けた画像に基づき、火元候補T1が所定の防火対象であるか否かを判定する。第2検知部58が検知に用いる当該画像は、第1情報と比べて詳しく取得された第2情報の一例である。本実施形態では、第2検知部58は、画像に写る火元候補T1の輝度値に基づく異物判定指数が所定の異物判定しきい値を超えているか否かの判定で火元候補T1が防火対象であるか否かを検知する。異物判定指数は、例えば、画像に写る火元候補T1の輝度値の最大値(すなわち、火元候補T1の温度の最大値)、画像に写る火元候補T1の輝度値の最大値の変化速度(すなわち、火元候補T1の温度の最大値の変化速度)、画像に写る火元候補T1の面積、および画像に写る火元候補T1の面積の変化速度などに基づき算出される。第2検知部58は、例えば、火元候補T1の輝度値の最大値、火元候補T1の輝度値の最大値の変化速度、火元候補T1の面積、および火元候補T1の面積の変化速度を所定の計算式(例えば関数)に代入することで、上記異物判定指数を算出する。所定の計算式および異物判定しきい値は、例えば記憶部65によりあらかじめ記憶されている。第2検知部58は、所定の計算式および異物判定しきい値を記憶部65から適時に参照することで上記の検知動作を行う。第2検知部58は、火元候補T1が防火対象である旨を作動部60に送る。
【0054】
図8は、撮像部10の視野範囲と、検知された火元候補T1(監視対象物T)の温度との関係を示すグラフである。ここでいう「撮像部10の視野範囲」は、横方向における画像のピクセル数(例えば640pixel)などに対応した長さ(m)である。
図8に示すように、撮像部10の視野範囲が広がるにつれて検知された火元候補T1の温度と周囲温度(火元候補T1の周囲にある監視対象物Tの温度)との差が小さくなり、視野範囲があるところ(
図8中のA)まで狭まるにつれて検知された火元候補T1の温度と周囲温度との差が大きくなる。また、撮像装置の視野範囲があるところ(A)よりも狭まっても、検知された火元候補T1の温度と周囲温度との差は一定となる。発明者らは、火元候補T1の実際の温度(実温度)を測定することで、撮像部10の望遠機能により視野範囲をあるところ(A)以下まで狭めた場合、検知された火元候補T1の輝度値に基づく温度と、火元候補T1の実温度とが一致することを見出した。
【0055】
(第2取得部)
第2取得部59は、第2検知部58から火元候補T1が防火対象である旨を受け付けた場合に、第1取得部55から受け付けた画像に基づき火元候補T1に関する情報を取得する。具体的には、第2取得部59は、画像中の火元候補T1の温度を取得する。第2取得部59は、取得した火元候補T1の温度をクライテリア導出部61に送る。第2取得部59は、取得部50の一例である。
【0056】
(クライテリア導出部)
クライテリア導出部61(導出部)は、第2取得部59から受け付けた時系列上の複数の火元候補T1の温度と、監視対象物Tの種類ごとにあらかじめ取得された昇温プロファイル(実データ)に基づき予測された監視対象物Tの温度推移とに基づき、クライテリアを導出する。具体的には、クライテリア導出部61は、燃焼試験などによりあらかじめ取得された監視対象物Tの種類ごとの昇温プロファイルに基づく複数のシミュレーション結果(監視対象物Tの温度推移を示す温度予測カーブ)のうち、第2取得部59から受け付けた時系列上の複数の火元候補T1の温度に対して最もあてはまりの良いシミュレーション結果を1つ選択する。クライテリア導出部61は、選択したシミュレーション結果から、クライテリアを導出する。クライテリア導出部61は、例えば、選択したシミュレーション結果に示された火元候補T1の温度から、シミュレーション結果に示された監視対象物Tが発火する温度に至るまでの時間(火災発生のタイミングまでの残り時間)を上記クライテリアとして導出する。したがって、クライテリアは、火元候補T1が防火対象であると検知されたタイミングから火災発生のタイミングまでの時間を示す。複数のシミュレーション結果は、例えば記憶部65にあらかじめ記憶されている。クライテリア導出部61は、複数のシミュレーション結果を記憶部65から適時に参照することで上記の導出動作を行う。クライテリア導出部61は、導出したクライテリアを選定部62に送る。なお、クライテリア導出部61は、第2取得部59から受け付けた1つの火元候補T1の温度と、監視対象物Tの種類ごとにあらかじめ取得された昇温プロファイル(実データ)に基づき予測された監視対象物Tの温度推移とに基づき、クライテリアを導出してもよい。
【0057】
(選定部)
選定部62は、クライテリア導出部61から受け付けたクライテリアに基づき、火元候補T1を受け入れる防火装置40を選定する。選定部62は、火元候補T1の位置から防火装置40まで搬送し終えるのにかかる時間を所定の対応関係情報から取得する。以下、火元候補T1の位置から防火装置40まで搬送し終えるのにかかる時間を「搬送時間」と称する。対応関係情報は、例えば、コンベア70上の位置と、当該コンベア70上の位置から監視対象物Tを搬送可能な防火装置40まで監視対象物Tを搬送し終えるのにかかる時間(搬送時間)とが互いに関連付いたテーブルである。例えば、第1コンベア71上に火元候補T1が位置した場合、当該火元候補T1の搬送先となる防火装置40は、第1防火装置41、第2防火装置42、または第3防火装置43である。また、第2コンベア72上または第3コンベア73上に火元候補T1が位置した場合、当該火元候補T1の搬送先となる防火装置40は、第2防火装置42または第3防火装置43である。また、第4コンベア74上に火元候補T1が位置した場合、火元候補T1の搬送先となる防火装置40は、第3防火装置43である。対応関係情報は、例えば記憶部65によりあらかじめ記憶されている。選定部62は、対応関係情報を記憶部65から適時に参照することで上記の選定動作を行う。つまり、選定部62は、第2検知部58の検出結果から得られる防火対象の状態に基づき、複数の防火装置40のうちどの防火装置40を用いて防火処理を行うかを選定している。
【0058】
具体的には、選定部62は、搬送時間が所定条件を満たす防火装置40を選定する。ここでいう「所定条件を満たす」は、例えば、搬送時間がクライテリア未満であることを意味する。選定部62は、例えば火元候補T1が第3コンベア73上に位置した場合、第2防火装置42と第3防火装置43とのうち、搬送時間がクライテリア未満である防火装置40を選定する。コンベア70上における火元候補T1の位置と、当該火元候補T1の搬送先となる防火装置40との関係の一例を
図9に示す。選定部62は、選定した防火装置40を作動部60および防火処理部64に送る。
【0059】
(作動部)
作動部60は、第1検知部56から受け付けたコンベア70上の火元候補T1の位置と、選定部62から受け付けた防火装置40とに基づき、防火装置40に向けて火元候補T1が移動するように搬送装置7を作動する。例えば、作動部60は、第1検知部56から受け付けた火元候補T1の位置が第1コンベア71上を示し、選定部62から受け付けた防火装置40が第1防火装置41を示す場合、第1コンベア71を逆方向作動する。また、作動部60は、第1検知部56から受け付けた火元候補T1の位置が第2コンベア72上を示し、選定部62から受け付けた防火装置40が第2防火装置42を示す場合、第2コンベア72を順方向作動する。また、作動部60は、第1検知部56から受け付けた火元候補T1の位置が第3コンベア73上を示し、選定部62から受け付けた防火装置40が第2防火装置42を示す場合、第3コンベア73を逆方向作動し、火元候補T1の位置が第3コンベア73上を示し、受け付けた防火装置40が第3防火装置43を示す場合、第3コンベア73を順方向作動し、第4コンベア74を逆方向作動する。
【0060】
また、作動部60は、後述の判定部63から受け付けた判定(第1判定)の結果が、火元候補T1が画像中にないことを示す場合、各々のコンベア70を通常運転の状態に切り替える。作動部60は、通常運転の状態に切り替えた旨を調整部57に送る。
【0061】
(判定部)
判定部63は、第1取得部55から受け付けた画像に基づき、火元候補T1が画像のなかにあるか否かを判定する。具体的には、判定部63は、画像中の輝度値を判定することで火元候補T1が画像のなかにあるか否かを判定する。以下、当該判定の結果を「第1判定」と称する。判定部63は、第1判定の結果を作動部60および防火処理部64に送る。
【0062】
また、判定部63は、第1取得部55から受け付けたセンサ40aの検出結果に基づき、防火装置40内の監視対象物Tが再発火するリスクがあるか否かを判定する。ここでいう「再発火」は、監視対象物Tに将来火災が発生することを意味する。具体的には、判定部63は、センサ40aの検出結果が所定の第3しきい値以上であるか否かを判定する。判定部63は、センサ40aの検出結果が第3しきい値以上である場合に、再発火のリスクがあると判定する。一方、判定部63は、センサ40aの検出結果が第3しきい値未満である場合に、再発火のリスクがないと判定する。以下、当該判定の結果を「第2判定」と称する。第3しきい値は、例えば記憶部65によりあらかじめ記憶されている。判定部63は、第3しきい値を記憶部65から適時に参照することで上記第2判定の動作を行う。判定部63は、第2判定の結果を防火処理部64に送る。
【0063】
(防火処理部)
防火処理部64は、判定部63から受け付けた第1判定の結果が、火元候補T1が画像中にないことを示す場合に、選定部62から受け付けた防火装置40を作動する。すなわち、防火処理部64は、選定部62から受け付けた防火装置40を作動することで、当該防火装置40に受け入れられた監視対象物Tを防火処理する。
【0064】
また、防火処理部64は、判定部63から受け付けた第2判定の結果が、再発火のリスクがあることを示す場合に、防火装置40の作動を継続する。また、防火処理部64は、判定部63から受け付けた第2判定の結果が、再発火のリスクがないことを示す場合に、移送装置9を作動する。すなわち、防火処理部64は、移送装置9を作動することで、防火装置40に貯留された監視対象物Tをピットなどに移送する。また、防火処理部64は、再発火のリスクがない旨を調整部57に送る。
【0065】
(制御装置の動作)
続いて、
図10を参照して本実施形態における制御装置6の動作の一例を説明する。ただし、以下に説明する処理の順番は、以下の例に限定されず、適宜入れ替えられてもよい。
【0066】
調整部57は、撮像部10の設定を初期設定に調整する(ステップS1)。次いで、第1取得部55は、撮像部10から送信された画像を所定周期で取得する(ステップS2)。次いで、第1検知部56は、画像に写る監視対象物Tのなかに火元候補T1があるか否かを判定することで火元候補T1を検知する(ステップS3)。監視対象物Tのなかに火元候補T1がない場合(ステップS3:NO)、ステップS2の処理に戻る。一方、監視対象物Tのなかに火元候補T1がある場合(ステップS4:YES)、調整部57は、撮像部10の設定を調整する(ステップS4)。次いで、第1取得部55は、撮像部10から送信された画像を所定周期で取得する(ステップS5)。次いで、第2検知部58は、画像に基づき火元候補T1が防火対象であるか否かを判定することで防火対象を検知する(ステップS6)。火元候補T1が防火対象でない場合(ステップS6:NO)、ステップS4の処理に戻る。一方、火元候補T1が防火対象である場合(ステップS6:YES)、クライテリア導出部61は、時系列上の複数の火元候補T1の温度と、予測された監視対象物Tの温度推移とに基づき、クライテリアを導出する(ステップS7)。次いで、選定部62は、クライテリアに基づき、火元候補T1を受け入れる防火装置40を選定する(ステップS8)。次いで、作動部60は、火元候補T1を受け入れる防火装置40に向けて火元候補T1が移動するように搬送装置7を作動する(ステップS9)。次いで、調整部57は、撮像部10が搬送される火元候補T1を連続的に撮像するように撮像部10の設定を調整する(ステップS10)。次いで、第1取得部55は、撮像部10から送信された画像を所定周期で取得する(ステップS11)。次いで、判定部63は、火元候補T1が画像のなかにあるか否かを判定する(ステップS12)。火元候補T1が画像のなかにある場合(ステップS12:YES)、ステップS10の処理に戻る。一方、火元候補T1が画像のなかにない場合(ステップS12:NO)、防火処理部64は、防火装置40を作動することで当該防火装置40に受け入れられた監視対象物Tを防火処理し(ステップS13)、作動部60は、各々のコンベア70を通常運転の状態に切り替える(ステップS15)。ステップS15の処理を終えた場合、ステップS1の処理に戻る。ステップS13の処理に次いで、判定部63は、防火装置40内の監視対象物Tが再発火するリスクがあるか否かを判定する(ステップS14)。監視対象物Tが再発火するリスクがある場合(ステップS14:YES)、ステップS13の処理に戻る。一方、監視対象物Tが再発火するリスクがない場合(ステップS14:NO)、防火処理部64は、移送装置9を作動することで、防火装置40に貯留された監視対象物Tをピットなどに移送する(ステップS16)。以上説明した制御装置6の動作は、廃棄物処理プラントの稼動中に繰り返し実行される。
【0067】
(作用・効果)
上述した防火用システム100では、監視対象物Tのなかで火災発生の予兆がある火元候補T1を検知し、撮像部10の望遠機能を用いて火元候補T1に関して取得された情報に基づき、火元候補T1が所定の防火対象であるか否かを検知している。これにより、火災が発生しそうな箇所を火災発生前に高精度に検出することができる。また、上記防火用システム100では、監視対象物Tを搬送する搬送装置7上の火元候補T1が防火対象であると検知された場合に、防火装置40に向けて火元候補T1が移動するように搬送装置7を作動している。つまり、搬送装置7の機能を用いて、火元候補T1が防火処理される。したがって、例えば、火元候補T1を移動させるための装置などを用いる必要がない。また、上記防火用システム100では、搬送装置7が複数のコンベア70を有しており、防火装置40は各々のコンベア70に搬送された火元候補T1を受け入れ可能に複数配置されている。したがって、火元候補T1をより迅速に防火装置40に移動させることができる。また、コンベア70上の火元候補T1が防火対象であると検知されたタイミングから火災発生のタイミングまでの時間を示すクライテリアに基づき、火元候補T1を受け入れる防火装置40が選定され、選定された防火装置40に向けて火元候補T1が搬送されている。したがって、火元候補T1を防火装置40に搬送している最中に火元候補T1から火災が発生することを抑制できる。また、クライテリアは、時系列上の複数の火元候補T1の温度と、監視対象物Tの種類ごとにあらかじめ取得された昇温プロファイルに基づいて予測された監視対象物Tの温度推移とに基づき導出されている。したがって、火元候補T1が検知されたタイミングから実際の火災発生に至るまでにかかる時間にクライテリアを近づけることができる。つまり、クライテリアをより適正化することができる。また、防火装置40は、窒息消火法を用いて火元候補T1を防火処理している。これにより、例えば水などを用いる散水消火法(冷却消火法)と比較して、監視対象物Tに水分が付着しない。したがって、例えば監視対象物Tからの漏電などの水分に起因する事象が生じにくい。
【0068】
<防火用システムの第3実施形態>
次に、本開示に係る防火用システム100の第3実施形態について説明する。なお、以下に説明する第3実施形態のクライテリア導出部61は、上記の第2実施形態で説明したクライテリア導出部61と一部異なる。共通する構成については、その説明を省略する。
【0069】
(第1取得部)
本実施形態では、第1取得部55は、撮像部10から送信された画像を所定周期で取得するとともに、取得した画像をクライテリア導出部61に送る。第1取得部55は、取得部50の一例である。
【0070】
(クライテリア導出部)
本実施形態では、クライテリア導出部61は、第1取得部55から受け付けた時系列上の複数の画像(すなわち、火元候補T1に関して取得された情報)が入力されると、クライテリアを出力するように学習された学習済みモデル650(
図6参照)を用いて、クライテリアを導出する。学習済みモデル650は、例えば記憶部65にあらかじめ記憶されている。クライテリア導出部61は、記憶部65に記憶されている学習済みモデル650に、第1取得部55から受け付けた時系列上の複数の画像を入力することで、出力されたクライテリアを取得する。学習済みモデル650は、例えば、ディープニューラルネットワーク(DNN)などの深層学習モデル(教師あり学習モデル)である。学習済みモデル650は、監視対象物Tの種類ごとにあらかじめ予測された監視対象物Tの温度推移と、監視対象物Tの種類ごとにあらかじめ取得された昇温プロファイルとを含む教師データセットが入力される学習ステップが繰り返し実行されたことで、上記の入力に応じたクライテリアを出力するように学習されている。あらかじめ予測された監視対象物Tの温度推移は、燃焼試験などによりあらかじめ取得された監視対象物Tの種類ごとの昇温プロファイル(実データ)に基づくミュレーション結果(監視対象物Tの温度推移を示す温度予測カーブ)である。なお、学習済みモデル650には、例えば、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)や回帰型ニューラルネットワーク(RNN)などの深層学習モデルが用いられてよい。クライテリア導出部61は、導出したクライテリアを選定部62に送る。なお、クライテリア導出部61は、第1取得部55から受け付けた1つの画像が入力されると、クライテリアを出力するように学習された学習済みモデル650を用いて、クライテリアを導出してもよい。
【0071】
(作用・効果)
これにより、火元候補T1が検知されたタイミングから火災発生に至るまでにかかる実際の時間にクライテリアをより近づけることができる。
【0072】
<防火用システムの第4実施形態>
次に、本開示に係る防火用システム100の第4実施形態について説明する。
【0073】
はじめに、
図11は、上述したコンベア70により搬送される当該コンベア70上の監視対象物Tの様子を示す図である。
図11に示すように、コンベア70は、例えば、監視対象物Tを搬送する方向に延びる第1部分70aと、当該第1部分70aに設けられて、各々が第1部分70aと共に監視対象物Tを保持する複数の第2部分70bとを有している。第1部分70aには、例えばコンベアベルトが設けられており、当該コンベアベルトが順方向または逆方向に周回可能に構成されている。したがって、撮像部10は、当該第1部分70aおよび第2部分70bにより保持されて搬送される監視対象物Tの表面を撮像する。
図12は、
図11中に示したコンベア70により搬送される監視対象物Tを複数の丸(〇)に分解して模式的に示した図であり、監視対象物Tのなかに着火源が含まれている状態を示している。着火源は、例えば、破砕機200内で衝撃を受けて構造破壊で短絡したリチウムイオン電池(LIB:Lithium-Ion Battery)や破砕機200内での摩擦により加熱された金属片などである、なお、
図12中に示す「周囲ごみ」は、コンベア70上で上記着火源の周囲に位置する(着火源を取り囲む)監視対象物Tを意味する。
【0074】
図13は、時間の経過に伴って、コンベア70により搬送される監視対象物T(火元候補T1)の状態変化を、監視対象物Tのなかの着火源の位置ごとに説明するための図である。なお、
図13中では、コンベア70の図示は省略している。
図13中に示すt
dは、上述した第1検知部51により監視対象物Tのなかで火元候補T1が検知された時刻を示している。
図13に示すように、監視対象物Tのなかに着火源がある場合に、時間の経過に伴って、火元候補T1の表面あるいは内部の温度が全体的に上昇していることが把握される。また、
図13中に示す「ガス発生量」は、監視対象物T(火元候補T1)から発生した特定のガスの発生量を意味する。Vu
1~Vu
4、Vm
1~Vm
5、およびVd
1~Vd
7のそれぞれは、ガス発生量を示しており、これらVu
1~Vu
4、Vm
1~Vm
5、およびVd
1~Vd
7の大小関係は、Vu
1<Vu
2<Vu
3<Vu
4、Vm
1<Vm
2<Vm
3<Vm
4、およびVd
1<Vd
2<Vd
3<Vd
4である。また、Vu
1<Vm
2<Vd
4である。したがって、着火源の位置が監視対象物T(火元候補T1)のなかで比較的下層にあるほど、ガスの発生量が大きい。また、「ガス濃度」は、監視対象物T(または火元候補T1)から発生した上記特定のガスの濃度を意味する。Cu
1~Cu
4、Cm
1~Cm
5、およびCd
1~Cd
7のそれぞれは、ガスの濃度値を示しており、これらCu
1~Cu
4、Cm
1~Cm
5、およびCd
1~Cd
7の大小関係は、Cu
1<Cu
2<Cu
3<Cu
4、Cm
1<Cm
2<Cm
3<Cm
4、およびCd
1<Cd
2<Cd
3<Cd
4である。また、Cu
1<Cm
2<Cd
4である。したがって、着火源の位置が監視対象物T(火元候補T1)のなかで比較的下層にあるほど、監視対象物Tから発生するガスの濃度が高い。すなわち、着火源の状況が異なることで、ガスの発生量およびガスの濃度などが異なり、火元候補T1の表面の状態も異なる。
【0075】
図14は、時間軸および監視対象物Tの表面温度の対応関係、ならびに時間軸および監視対象物Tの発熱速度の対応関係を、着火源を含む監視対象物Tの種類ごとに示す図である。
図14中に示される対応関係は、例えば燃焼試験などによりあらかじめ取得された監視対象物Tの種類ごとの昇温プロファイル(実データ)である。
図14中の(a)に示される曲線(i)、(ii)、および(iii)は、互いに種類が異なる監視対象物Tの時間の経過に伴う表面温度の変化(状態変化情報)を示している。すなわち、監視対象物Tの種類に応じて、時間の経過に伴う監視対象物Tの表面温度の上昇の仕方が異なることが把握される。また、
図14中の(b)に示される曲線(i)、(ii)、および(iii)は、互いに種類が異なる監視対象物Tの時間の経過に伴う発熱速度の変化(状態変化情報)を示している。なお、
図14中に示される曲線(i)、(ii)、(iii)は、同一の種類の監視対象物Tから得られた対応関係である。また、t
d1は、上述した第1検知部51により曲線(i)に対応する監視対象物Tのなかで火元候補T1が検知された時刻を示している。t
d2は、上述した第1検知部51により曲線(ii)に対応する監視対象物Tのなかで火元候補T1が検知された時刻を示している。t
d3は、上述した第1検知部51により曲線(iii)に対応する監視対象物Tのなかで火元候補T1が検知された時刻を示している。
図14中に示されるT
dは、第1検知部51が検知した火元候補T1の温度を示しており、T
iは、火元候補T1が着火する時の火元候補T1の温度を示している。したがって、第2実施形態および第3実施形態で説明したクライテリア導出部61は、本実施形態で説明した監視対象物Tの種類ごとの昇温プロファイルに基づいてクライテリアを導出する。クライテリア導出部61は、情報処理部の一例である。
【0076】
(制御装置)
図15に示すように、本実施形態では、制御装置6は、データ格納部91と、抽出部92と、推定部93と、予測部94と、決定部95と、データ処理部96とを更に有している。上述した第1取得部55は、撮像部10から取得した画像をデータ格納部91に送る。
【0077】
(データ格納部)
データ格納部91は、火元候補T1に関して取得された時系列上の複数の時点の情報を取得する。具体的には、データ格納部91は、撮像部1から監視対象物Tの時系列上の複数の画像を取得するとともに、取得した複数の画像を例えば記憶部65に記憶させる。また、データ格納部91は、取得した時系列上の複数の画像を抽出部92に送る。データ格納部91は、取得部の一例である。
【0078】
(抽出部)
抽出部92は、データ格納部91から受け付けた時系列上の複数の画像に基づき、特徴量を抽出する。具体的には、抽出部92は、時系列上の複数の画像から、監視対象物Tの表面温度分布の広がり速度や監視対象物Tの表面最高温度の変化率などを上記特徴量として抽出する。抽出部92は、抽出した特徴量を推定部93に送るとともに、当該特徴量を記憶部65に記憶させる。
【0079】
(推定部)
推定部93は、抽出部92から受け付けた特徴量に基づき、火元候補T1の温度分布を推定する。具体的には、推定部93は、あらかじめ取得された監視対象物Tの流体解析結果であるCFDデータ(Computational Fluid Dynamics)と、記憶部65に記憶されている過去に取得された時系列上の複数の画像とに基づき、火元候補T1の着火源に関する情報、および火元候補T1の温度分布などを推定する。ここでいう「火元候補T1の着火源に関する情報」は、例えば、火元候補T1のなかにある着火源の位置、着火源の発熱量などを意味する。上記CFDデータは、例えば記憶部65にあらかじめ記憶されている。推定部93は、推定した火元候補T1の着火源に関する情報、および火元候補T1の温度分布を予測部94に送る。
【0080】
(予測部)
予測部94は、推定部93から受け付けた火元候補T1の着火源に関する情報および火元候補T1の温度分布と、記憶部65に記憶されている正解率(後述)およびCFDデータとに基づき、例えば、火元候補T1が防火対象であると第2検知部58により検知されたタイミングから上記クライテリア経過後のタイミング(時刻)における火災発生の規模および火元候補T1の状態を予測する。予測部94は、予測した火災発生の規模および火元候補T1の状態を決定部に送る。
【0081】
(決定部)
決定部95は、予測部94から受け付けた火災発生の規模および火元候補T1の状態に基づき、火元候補T1に対する防火処理の内容(消火方法)を決定する。決定部95は、例えば、除去消火法、窒息消火法、および散水消火法(冷却消火法)などの複数の消火方法のうち、1つの消火方法を決定する。決定部95は、決定した消火方法を作動部60に送る。決定部は、情報処理部の一例である。
【0082】
本実施形態では、作動部60は、決定部95から受け付けた消火方法に基づき、作動対象装置Sを作動する。具体的には、消火方法が例えば窒息消火法を示す場合に、作動部60は、コンベア70を作動して火元候補T1を防火装置40に移動させるとともに、防火装置40を作動して当該防火装置40に導入された火元候補T1を防火処理する。作動部60は、制御部の一例である。
【0083】
(データ処理部)
データ処理部96は、データ格納部91により記憶部65に記憶された時系列上の複数の画像に基づき、火元候補T1の表面の状態予測の正解率を算出する。正解率は、例えば、火元候補T1が防火対象であると第2検知部58により検知されたタイミングから上記クライテリア経過後の時刻で実際に取得された火元候補T1の画像と、予測された火元候補T1の状態との間における一致の度合いを割合などで示した結果である。データ処理部96は、算出した正解率を記憶部65に記憶させる。
【0084】
なお、上述した各処理部(データ格納部91、抽出部92、推定部93、予測部94、決定部95、データ処理部96)の動作は、例えば人工知能(AI:Artificial Intelligence)により実現されてもよい。この場合、例えば、線形回帰、一般化線形モデル、サポートベクター回帰、ガウス過程回帰、アンサンブル法、ニューラルネットワーク、ランダムフォレスト、サポートベクターマシン、判別分析、単純ベイズ、最近傍法などのアルゴリズムが実装されたAI(学習済みモデル)を採用すればよい。
【0085】
(制御装置の動作)
続いて、
図16を参照して本実施形態における制御装置6の動作の一例を説明する。データ格納部91は、取得した時系列上の複数の画像を取得する(ステップS20)。次いで、抽出部92は、時系列上の複数の画像に基づき、特徴量を抽出する(ステップS21)。次いで、推定部93は、特徴量から火元候補T1の温度分布を推定する(ステップS22)。次いで、予測部94は、火元候補T1の着火源に関する情報および火元候補T1の温度分布と、正解率およびCFDデータとに基づき、火元候補T1が防火対象であると第2検知部58により検知されたタイミングから上記クライテリア経過後の時刻における火災発生の規模および火元候補T1の状態を予測する(ステップS23)。次いで、決定部95は、火災発生の規模および火元候補T1の状態に基づき、火元候補T1に対する消火方法を決定する(ステップS24)。次いで、作動部60は、消火方法に基づき、作動対象装置Sを作動する(ステップS25)。以上説明した制御装置6の動作は、廃棄物処理プラントの稼動中に繰り返し実行される。
【0086】
(作用・効果)
上記によれば、火元候補T1の状態に応じた適切な消火動作を実現することができる。
【0087】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成は各実施形態の構成に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内での構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
【0088】
なお、第1実施形態で説明した防火用システム100は、撮像部1に代えて、検知部30を備えていてもよい。
図17に示すように、検知部30は、貯留空間R1を画定する壁面のうち、監視対象物Tが乗る壁面(例えば床面)に複数設けられている。検知部30は、火元候補T1における炎および温度を同時に検知可能な複合センサであり、火元候補T1における炎および温度の検知結果を制御装置5に送信する。この場合、制御装置5の第1検知部51は、検知部30の検知結果に基づき、監視対象物Tのなかで火災発生の予兆がある火元候補T1を検知すればよい。また、検知部30は、撮像部1,10や上記複合センサに限定されることはなく、例えば、監視対象物Tの温度を検知可能な温度センサ、監視対象物Tからの発光を検知可能な光電センサ、監視対象物Tから発生する特定のガスの濃度、すなわち監視対象物Tの周囲の空間に存在する特定のガスの濃度を検知可能なガスセンサ、監視対象物Tに反射するマイクロ波・X線・テラヘルツ波を検知可能なセンサ、またはこれらセンサの組み合わせなどであってもよい。当該検知部30の検知結果は、監視対象物Tまたは監視対象物Tの周囲の空間をセンシングすること得られる第1情報の一例である。また、検知器3は、カメラに代えて、例えば一酸化炭素センサ(COセンサ)や、熱電対、ならびに、炎および温度を検知可能な複合センサであってもよい。
【0089】
また、第1実施形態で説明した防火装置4は、不活性ガスを噴出する構成に代えて、例えば箱形形状を成した隔壁などを有し、当該隔壁で火元候補T1を外側から覆うことにより、防火対象としての火元候補T1を防火処理(窒息消火法)してもよい。また、防火装置4は、監視対象物Tのなかから火元候補T1のみを取り出し、取り出した火元候補T1を貯留空間R1から移送する構成であってもよい。隔壁で火元候補T1を外側から覆うことや、火元候補T1を移送することは、防火処理の一例である。
【0090】
また、第1実施形態で説明した第1検知部51は、画像に写る煙の発生を検知することで、画像に写る監視対象物Tのなかで火災発生の予兆がある火元候補T1を検知してもよい。この場合、火元候補T1は、例えば、画像に写る監視対象物Tのなかで煙が発生し始めている箇所である。
【0091】
また、第1実施形態で説明した移動装置2は、貯留空間R1内で自身が移動する構成に代えて、監視対象物Tを移動させる装置であってもよい。この場合、例えば、検知器3は、移動装置2に設けられず、所定の場所に設けられており、移動装置2(例えば搬送装置)が監視対象物Tを検知器3に近づけるように監視対象物Tを移動させることで、火元候補T1の火元位置T2を検知してもよい。
【0092】
また、第1実施形態および第2実施形態で説明した防火装置4,40は、除去消火法または窒息消火法を用いる第1防火装置と、散水消火法(冷却消火法)を用いる第2防火装置とを含んでもよい。この場合、制御装置5,6(第2実施形態の場合、例えば選定部62)は、第2検知部58の検出結果から得られる防火対象の状態に基づき、複数の防火装置40のうちどの防火装置40を用いて防火処置を行うかを選定してもよい。すなわち、制御装置5,6は、消火方法が異なる複数の防火装置40のなかから適切な消火方法を実行することができる防火装置40を選定すればよい。
【0093】
また、第1実施形態および第2実施形態で説明した第2情報(第2検知部52,58が検知に用いる画像)は、撮像部1,10によるセンシングの結果を拡大処理することにより取得されてもよい。具体的には、制御装置5,6は、撮像部1,10が撮像した画像を拡大処理することにより、第1情報と比べて詳しい第2情報を取得してよい。制御装置5,6は、貯留空間R1または搬送空間R2における空間・時間解像度が悪い場合に、例えばデータ間を補間関数で内挿するなどの方法により上述の拡大処理を実現してよい。すなわち、制御装置5,6は、第1検知部51,56により火元候補T1が検知された場合に、当該火元候補T1が写る画像に対してソフトウェア的に画角(視野)を狭める画像処理(補正)を施して解像度を高めることにより、上述の拡大処理を実現してよい。
【0094】
(コンピュータの構成)
また、
図18は、本実施形態に係るコンピュータ1100の構成を示すハードウェア構成図である。コンピュータ1100は、プロセッサ1110と、メインメモリ1120と、ストレージ1130と、インターフェース1140とを備えている。
【0095】
上述の制御装置5,6は、1以上のコンピュータ1100に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ1130に記憶されている。プロセッサ1110は、プログラムをストレージ1130から読み出してメインメモリ1120に展開し、当該プログラムにしたがって上記処理を実行する。また、プロセッサ1110は、プログラムにしたがって、上述した記憶部54,65に対応する記憶領域をメインメモリ1120に確保する。プログラムは、コンピュータ1100に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージ1130に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。また、コンピュータ1100は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ1110によって実現される機能の一部またはすべてが当該集積回路によって実現されてよい。
【0096】
ストレージ1130の例としては、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリなどが挙げられる。ストレージ1130は、コンピュータ1100のバスに直接的に接続された内部メディアであってもよいし、インターフェース1140または通信回線を介してコンピュータ1100に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ1100に配信される場合、配信を受けたコンピュータ1100が当該プログラムをメインメモリ1120に展開し、上記処理を実行してもよい。上記実施形態では、ストレージ1130は、一時的でない有形の記憶媒体である。また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能をストレージ1130に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0097】
<付記>
各実施形態に記載の防火用システム100は、例えば以下のように把握される。
【0098】
(1)第1態様に係る防火用システム100は、監視対象物Tまたは前記監視対象物Tの周囲の空間をセンシングすることで得られる第1情報に基づき、前記監視対象物Tのなかで火災発生の予兆がある火元候補T1を検知する第1検知部51,56と、前記第1検知部51,56により検知された前記火元候補T1に関して前記第1情報と比べて詳しく取得された第2情報に基づき、前記火元候補T1が所定の防火対象であるか否かを検知する第2検知部52,58と、を備えている。
【0099】
これにより、火災が発生しそうな箇所を火災発生前に高精度に検出することができる。
【0100】
(2)第2態様に係る防火用システム100は、(1)の防火用システム100であって、前記監視対象物Tまたは前記監視対象物Tの周囲の空間を撮像することで前記センシングを行う撮像部1,10と、検知器3と前記火元候補T1との間の距離を縮める移動装置2と、のうち少なくとも一方を更に備え、前記第2情報は、前記移動装置2、または前記撮像部1,10の望遠機能を用いて取得されてよい。
【0101】
(3)第3態様に係る防火用システム100は、(1)または(2)の防火用システム100であって、前記防火対象を防火処理する防火装置4と、前記第2検知部52,58により前記火元候補T1が前記防火対象であると検知された場合に、前記防火装置4に防火処理を実行させる制御装置5,6と、を更に備えてもよい。
【0102】
これにより、監視対象物Tから火災が発生することを抑制できる。
【0103】
(4)第4態様に係る防火用システム100は、(1)から(3)のうちいずれか1つの防火用システム100であって、前記監視対象物Tまたは前記監視対象物Tの周囲の空間を撮像することで前記センシングを行う撮像部1,10を更に備え、前記第2情報は、前記撮像部1,10による前記センシングの結果を拡大処理することにより取得されてもよい。
【0104】
(5)第5態様に係る防火用システム100は、(3)の防火用システム100であって、前記防火装置40は、設置場所が異なる複数の防火装置40を含み、前記制御装置6は、前記第2検知部52,58の検出結果から得られる前記防火対象の状態に基づき、前記複数の防火装置40のうちどの防火装置40を用いて前記防火処理を行うかを選定してもよい。
【0105】
(6)第6態様に係る防火用システム100は、(3)の防火用システム100であって、前記防火装置40は、消火方法が異なる複数の防火装置40を含み、前記制御装置6は、前記第2検知部52,58の検出結果から得られる前記防火対象の状態に基づき、前記複数の防火装置40のうちどの防火装置40を用いて前記防火処理を行うかを選定してもよい。
【0106】
(7)第7態様に係る防火用システム100は、(6)の防火用システム100であって、前記複数の防火装置40は、除去消火法または窒息消火法を用いる第1防火装置と、散水消火法を用いる第2防火装置とを含んでもよい。
【0107】
(8)第8態様に係る防火用システム100は、(1)から(7)のうちいずれか1つの防火用システム100であって、前記監視対象物Tを搬送する搬送装置7と、前記搬送装置7により搬送された前記監視対象物Tを受け入れるとともに、受け入れた前記監視対象物Tを防火処理する防火装置40と、前記第2検知部58により前記搬送装置7上の前記火元候補T1が前記防火対象であると検知された場合に、前記防火装置40に向けて前記火元候補T1が移動するように前記搬送装置7を制御する制御装置6と、を更に備えてもよい。
【0108】
これにより、監視対象物Tを搬送する搬送装置7の機能を用いて、火元候補T1が防火処理されるため、例えば、火元候補T1を移動させるための装置などを用いる必要がない。
【0109】
(9)第9態様に係る防火用システム100は、(8)の防火用システム100であって、前記制御装置6は、前記第1検知部56により前記火元候補T1が検知された場合に、前記搬送装置7により搬送される前記火元候補T1に対する前記センシングを継続させてもよい。
【0110】
(10)第10態様に係る防火用システム100は、(8)の防火用システム100であって、前記搬送装置7は、各々が前記監視対象物Tを搬送する複数のコンベア70を有し、前記防火装置40は、複数の防火装置40を有し、前記複数の防火装置40の各々は、前記複数のコンベア70に含まれる1つ以上のコンベア70により搬送される前記監視対象物Tを受け入れ可能に配置されてもよい。
【0111】
これにより、火元候補T1をより迅速に防火装置40に移動させることができる。
【0112】
(11)第11態様に係る防火用システム100は、(10)の防火用システム100であって、前記制御装置6は、前記第2検知部58により前記搬送装置7上の前記火元候補T1が前記防火対象であると検知された場合に、前記検知されたタイミングから前記火災発生のタイミングまでの時間を示すクライテリアに基づき、前記複数の防火装置40のなかから前記防火対象を受け入れる防火装置40を選定してもよい。
【0113】
これにより、火元候補T1を防火装置40に搬送している最中に火元候補T1から火災が発生することを抑制できる。
【0114】
(12)第12態様に係る防火用システム100は、(11)の防火用システム100であって、前記制御装置6は、前記火元候補T1に関して取得された前記第2情報と、前記監視対象物Tの種類ごとにあらかじめ取得された昇温プロファイルに基づいて予測された前記監視対象物Tの温度推移とに基づき、前記クライテリアを導出してもよい。
【0115】
これにより、火元候補T1が検知されたタイミングから実際の火災発生に至るまでにかかる時間にクライテリアを近づけることができる。
【0116】
(13)第13態様に係る防火用システム100は、(12)の防火用システム100であって、前記制御装置6は、前記火元候補T1に関して取得された前記第2情報が入力されると、前記クライテリアを出力するように学習された学習済みモデル650を用いて、前記クライテリアを導出し、前記学習済みモデル650は、前記監視対象物Tの種類ごとにあらかじめ予測された前記監視対象物Tの温度推移と、前記監視対象物Tの種類ごとにあらかじめ取得された昇温プロファイルと、の少なくとも一方を含む教師データセットが入力される学習ステップが繰り返し実行されたことで、前記入力に応じた前記クライテリアを出力するように学習されてもよい。
【0117】
これにより、火元候補T1が検知されたタイミングから実際の火災発生に至るまでにかかる時間にクライテリアをより近づけることができる。
【0118】
(14)第14態様に係る防火用システム100は、(3)から(13)のうちいずれか1つの防火用システム100であって、前記制御装置6は、前記火元候補T1に関して取得された時系列上の複数の時点の前記第2情報を取得する取得部と、状況が異なる複数の着火源に関して実験またはシミュレーションにより求められた火災発生までの状態の時間変化を示す状態変化情報、または前記状態変化情報を用いて学習が行われた学習済みモデルと、前記取得部により取得された時系列上の複数の時点の前記第2情報とに基づき、前記火元候補に関する火災発生のタイミングまでの残り時間と、前記火元候補に対する防火処理の内容とのうち少なくとも一方を導出する情報処理部と、を有してもよい。
【0119】
(15)第15態様に係る防火用システム100は、監視対象物Tまたは前記監視対象物Tの周囲の空間をセンシングした結果に基づき、前記監視対象物Tのなかで火災発生の予兆がある火元候補T1を検知する検知部と、少なくとも前記火元候補T1に関して取得された情報に基づき、前記火元候補T1が検知されたタイミングから前記火災発生のタイミングまでの時間を導出する導出部と、を備えている。
【符号の説明】
【0120】
1,10…撮像部 2…移動装置 3…検知器 4,40…防火装置 5,6…制御装置 7…搬送装置 8…シュート部 8a…面 8g…案内部 8h…受入開口 9…移送装置 11…第1撮像部 12…第2撮像部 13…第3撮像部 30…検知部 40a…センサ 41…第1防火装置 42…第2防火装置 43…第3防火装置 50…取得部 51,56…第1検知部 52,58…第2検知部 53,60…作動部 54,65…記憶部 55…第1取得部 57…調整部 59…第2取得部 61…クライテリア導出部 62…選定部 63…判定部 64…防火処理部 70…コンベア 70a…第1部分 70b…第2部分 71…第1コンベア 72…第2コンベア 73…第3コンベア 74…第4コンベア 80d…第2開口 80h…供給孔 80u…第1開口 91…データ格納部 92…抽出部 93…推定部 94…予測部 95…決定部 96…データ処理部 100…防火用システム 200…破砕機 300…壁面 531…第1作動部 532…第2作動部 650…学習済みモデル 651…第1判定部 652…第2判定部 653…第3判定部 654…第4判定部 1100…コンピュータ 1110…プロセッサ 1120…メインメモリ 1130…ストレージ 1140…インターフェース Dv…鉛直方向 R1…貯留空間 R2…搬送空間 S…作動対象装置 T…監視対象物 T1…火元候補 T2…火元位置 W1,W2…幅