IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 春日電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ネットコンベア用の連結棒 図1
  • 特開-ネットコンベア用の連結棒 図2
  • 特開-ネットコンベア用の連結棒 図3
  • 特開-ネットコンベア用の連結棒 図4
  • 特開-ネットコンベア用の連結棒 図5
  • 特開-ネットコンベア用の連結棒 図6
  • 特開-ネットコンベア用の連結棒 図7
  • 特開-ネットコンベア用の連結棒 図8
  • 特開-ネットコンベア用の連結棒 図9
  • 特開-ネットコンベア用の連結棒 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000095
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】ネットコンベア用の連結棒
(51)【国際特許分類】
   B65G 17/06 20060101AFI20231225BHJP
   B65G 21/06 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
B65G17/06 D
B65G21/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098648
(22)【出願日】2022-06-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 繋ぎバービン抜き取り作業の流れを示す写真
(71)【出願人】
【識別番号】000183738
【氏名又は名称】春日電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002446
【氏名又は名称】弁理士法人アイリンク国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶原 薫
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 政浩
(72)【発明者】
【氏名】稲村 達也
(72)【発明者】
【氏名】小出 涼
(72)【発明者】
【氏名】小川 博史
【テーマコード(参考)】
3F034
【Fターム(参考)】
3F034AA18
3F034AC03
3F034BB01
3F034CA02
3F034CB05
(57)【要約】
【課題】 搬送帯からの着脱作業が容易で、しかも不用意に部品が脱落してしまうことがない、ネットコンベア用の連結棒を提供すること。
【解決手段】 貫通孔10cの内径より大きな外径D1を有する大径部14aと、大径部14aの中心軸と一致して大径部14aの長さ方向両端に配置され、貫通孔10cに挿通可能な外径D2と長さとを有する一対の小径部14b,14cとを備え、一方の小径部14bが他方の小径部14cよりも長い棒本体14と、大径部14aを挿通可能にする筒孔15aと、一方の小径部14bの長さL1未満、他方の小径部14cの長さL2以上の軸方向長さL3とを備えた筒状の止め部材15とからなり、止め部材15に大径部14aを挿通した状態で小径部14b,14cを抜き差し可能にするとともに、段差14dとローラチェーン6との間に止め部材15を位置させることによって、棒本体14の軸方向の移動を規制する構成を備えた。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプロケット間に掛け渡され所定の間隔を保って対向配置される一対のローラチェーン間に掛け渡され、その両端が、上記ローラチェーンの進行方向に対して直交するように当該ローラチェーンのそれぞれに形成された各貫通孔を挿通して上記ローラチェーンのそれぞれを無端状に連結し、無端状の一対のローラチェーンを有する搬送帯を構成させるネットコンベア用の連結棒であって、
上記一対のローラチェーン間に掛け渡される棒状の棒本体と上記棒本体に取り付けられる筒状の止め部材とからなり、
上記棒本体は、
上記貫通孔の内径より大きな外径を有する大径部と、
その中心軸が上記大径部の中心軸と一致し上記大径部の長さ方向両端のそれぞれに配置され、上記貫通孔に挿通可能な外径と長さとを有する一対の小径部とを備え、
一方の小径部が他方の小径部よりも長く、
上記止め部材は、
上記大径部を挿通可能にする筒孔と、
上記一方の小径部の長さ未満で、他方の小径部の長さ以上の軸方向長さとを備え、
上記止め部材に上記大径部を挿通した状態で、上記小径部のそれぞれをローラチェーンのそれぞれの貫通孔に挿通させてから上記止め部材を上記一方の小径部に移動させ、上記大径部の端部と上記一方の小径部との境界で形成される段差と上記一方の小径部が前記貫通孔に挿通される一方のローラチェーンとの間に上記止め部材を位置させることによって、上記棒本体の軸方向の移動を規制し、
上記止め部材を上記大径部に移動させることによって、上記棒本体を上記一方のローラチェーン側へ軸方向に移動して上記他方の小径部を他方のローラチェーンの上記貫通孔から抜き取り、その後、上記一方の小径部を上記一方のローラチェーンの上記貫通孔から抜き取り可能にしたネットコンベア用の連結棒。
【請求項2】
上記止め部材は、上記筒孔の断面形状が非円形である請求項1に記載のネットコンベア用の連結棒。
【請求項3】
上記止め部材は、側壁の肉厚が不均一な筒体からなる請求項1又は2に記載のネットコンベア用の連結棒。
【請求項4】
上記止め部材は、コイル状の圧縮ばねからなり、
上記圧縮ばねは、
当該圧縮ばねの自然長の状態で上記大径部の外径より小さく、圧縮状態で上記大径部より大きくなる、上記筒孔であるコイルの内径と、
上記一方の小径部の長さ未満で、上記他方の小径部の長さ以上の自然長とを備え、
圧縮状態の上記圧縮ばねに上記大径部を挿通した状態で、上記両小径部をそれぞれ対向するローラチェーンの貫通孔に挿通させてから上記圧縮ばねを一方の小径部上に移動させ、一方の小径部と連続する一方の段差とこの段差と対向する一方のローラチェーンとの間に自然長の状態の上記圧縮ばねを位置させることによって、上記棒本体の軸方向の移動を規制し、
上記圧縮ばねを圧縮状態にして上記大径部に移動させることによって、上記棒本体を上記一方のローラチェーン側へ軸方向に移動して上記他方の小径部を上記他方のローラチェーンの上記貫通孔から抜き取り、その後、上記一方の小径部を上記一方のローラチェーンの上記貫通孔から抜き取り可能にした請求項1に記載のネットコンベア用の連結棒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一対のローラチェーン間に渡されてネットコンベアを構成する、ネットコンベア用の連結棒に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットコンベアは、例えば、食品工場などで、水洗後の製品の表面に付着した水滴を吹き飛ばす除水装置などに用いられていた(特許文献1)。
除水装置は、図示していないが、一対のフレーム間にネットコンベアを設け、このネットコンベア上に、除水対象物を載せて搬送し、その搬送過程で周囲から圧縮エアを吹き付けて除水対象物に付着している水滴を吹き飛ばすようにしている。
【0003】
ネットコンベアは図9の模式図に示すように、駆動軸1と従動軸2とが平行とされ離れて配置されている。駆動軸1、従動軸2にはそれぞれ、両端にスプロケット3,4が設けられている。ネットコンベアは、このスプロケット3,4間に架け渡された無端状の搬送帯5を備えている。上記搬送帯5は、上記スプロケット3,4間に掛け渡されて対向した一対のローラチェーン6,7と、両端が上記ローラチェーン6,7に連結された複数の連結棒8及び帯状ネット9とで構成されている。
上記駆動軸1及び従動軸2は、図示しないフレームに両端を支持され、駆動軸1を図示しないモータで回転させて上記搬送帯5を循環させるようにしている。
【0004】
図10は、上記搬送帯5の部分平面図である。搬送帯5の幅方向端部では、図示のように上記連結棒8が、ローラチェーン6の内リンク10及び外リンク11を貫通し、その突出端にスナップリング12が取り付けられている。
なお、上記内リンク10は、一対の内プレート10aと、2個のローラ10bと、ローラ10b内に挿入されたブッシュ10cとを組み合わせたもので、外リンク11は、一対の外プレート11aとこれらに圧入され、両端を加締めたピン11bとを組み合わせたものである。
【0005】
上記内リンク10を上記外リンク11で連続的につなぎ合わせたものがローラチェーン6となるが、無端状の搬送帯5を構成するために、上記外リンク11のピン11bの代わりに上記連結棒8を貫通させて、ローラチェーン6に帯状ネット9を連結している。
なお、上記連結棒8の抜け止め手段としてスナップリング12を用いたのは、必要に応じて帯状ネット9から連結棒8を抜き取って搬送帯5を展開可能にするためである。
【0006】
帯状ネット9は捲き方向を反対にした一対のスパイラル部材9a,9bを、連結棒8で結合して構成されている。したがって、スナップリング12を外して連結棒8を抜き取ることで、上記スパイラル部材9a,9bが分離する。
また、上記ローラチェーン6,7は、ピン11bの代わりに貫通している連結棒8を抜き取ることで両端の連結が解消され、搬送帯5を展開状態にすることができる。
【0007】
図10では、上記帯状ネット9の幅方向における一方の端部側で、ローラチェーン6が連結された状態を示しているが、他方の端部側では上記ローラチェーン6と同構造のローラチェーン7が、上記と同様にして連結棒8によって帯状ネット9と連結され、ローラ10b内のブッシュ10cを貫通した連結棒8の貫通端にスナップリング12が取り付けられている。
なお、図中の符号9cは溶接部である。
【0008】
このようなネットコンベアの搬送帯5を展開する際には、以下のようにする。
まず、上記駆動軸1または従動軸2を両軸の間隔が短くなるよう移動し、搬送帯5の張力を緩め弛緩状態にする。搬送帯5が弛緩すれば、搬送帯5をスプロケット3,3、4,4から引き上げることができるので、その状態でいずれかの連結棒8の両端のスナップリング12を外して連結棒8を抜き取れば、その部分で搬送帯5が分断される。
搬送帯5が分断されれば、搬送帯5を展開状態にして、フレーム内から引き出すことができる。搬送帯5を引き出せば、搬送帯5を洗浄することができるし、フレームの内側の清掃作業も簡単にできるようになる。
【0009】
上記のような除水装置は、水洗した製品を完全に除水しなければならないような、食品製造現場などに設けられることが多い。このような現場で清掃を怠れば、吹き飛ばされた水滴にほこりなどが付着したり、水道水のカルキの結晶などが装置のあちこちに付着したりしてしまう。水滴で固まったほこりや、カルキの結晶などは、製品内に入り込むことはもちろん許されないが、製品のパッケージの外側に付着しただけでも、製品価値は落ちてしまう。ときには、不良品となってしまう。
そこで、上記連結棒8を抜き取って、搬送帯5の洗浄や装置内の清掃を容易にできるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006-151663号公報
【特許文献2】特許第6872240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記したようなネットコンベアでは、搬送帯5を構成する連結棒8の両端にスナップリング12,12が取り付けられていて、これらを取り外して搬送帯5を展開することができる。
しかし、スナップリング12,12は小さくて、その着脱作業は容易ではない。
また、スナップリング12を取り外した際には、外したスナップリング12を見失わないように管理しなければならない。さらに、着脱を繰り返したスナップリングは、ばね力が低下して、装置の運転中に脱落してしまう可能性もある。脱落したスナップリング12が製品に混入してしまえば、大問題である。
【0012】
この発明の目的は、搬送帯からの着脱作業が容易で、しかも不用意に部品が脱落してしまうことがない、ネットコンベア用の連結棒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の発明は、スプロケット間に掛け渡され所定の間隔を保って対向配置される一対のローラチェーン間に掛け渡され、その両端が、上記ローラチェーンの進行方向に対して直交するように当該ローラチェーンのそれぞれに形成された各貫通孔を挿通して上記ローラチェーンのそれぞれを無端状に連結し、無端状の一対のローラチェーンを有する搬送帯を構成させるネットコンベア用の連結棒であって、上記一対のローラチェーン間に掛け渡される棒状の棒本体と上記棒本体に取り付けられる筒状の止め部材とからなり、上記棒本体は、上記貫通孔の内径より大きな外径を有する大径部と、その中心軸が上記大径部の中心軸と一致し上記大径部の長さ方向両端のそれぞれに配置され、上記貫通孔に挿通可能な外径と長さとを有する一対の小径部とを備え、一方の小径部が他方の小径部よりも長く、上記止め部材は、上記大径部を挿通可能にする筒孔と、上記一方の小径部の長さ未満で、他方の小径部の長さ以上の軸方向長さとを備え、上記止め部材に上記大径部を挿通した状態で、上記小径部のそれぞれをローラチェーンのそれぞれの貫通孔に挿通させてから上記止め部材を上記一方の小径部に移動させ、上記大径部の端部と上記一方の小径部との境界で形成される段差と上記一方の小径部が前記貫通孔に挿通される一方のローラチェーンとの間に上記止め部材を位置させることによって、上記棒本体の軸方向の移動を規制し、上記止め部材を上記大径部に移動させることによって、上記棒本体を上記一方のローラチェーン側へ軸方向に移動して上記他方の小径部を他方のローラチェーンの上記貫通孔から抜き取り、その後、上記一方の小径部を上記一方のローラチェーンの上記貫通孔から抜き取り可能にした。
【0014】
第2の発明は、上記止め部材が、上記筒孔の断面形状が非円形である。
【0015】
第3の発明は、上記止め部材が、側壁の肉厚が不均一な筒体からなる。
【0016】
第4の発明は、上記止め部材が、コイル状の圧縮ばねからなり、上記圧縮ばねは、当該圧縮ばねの自然長の状態で上記大径部の外径より小さく、圧縮状態で上記大径部より大きくなる、上記筒孔であるコイルの内径と、上記一方の小径部の長さ未満で、上記他方の小径部の長さ以上の自然長とを備え、圧縮状態の上記圧縮ばねに上記大径部を挿通した状態で、上記両小径部をそれぞれ対向するローラチェーンの貫通孔に挿通させてから上記圧縮ばねを一方の小径部上に移動させ、一方の小径部と連続する一方の段差とこの段差と対向する一方のローラチェーンとの間に自然長の状態の上記圧縮ばねを位置させることによって、上記棒本体の軸方向の移動を規制し、上記圧縮ばねを圧縮状態にして上記大径部に移動させることによって、上記棒本体を上記一方のローラチェーン側へ軸方向に移動して上記他方の小径部を上記他方のローラチェーンの上記貫通孔から抜き取り、その後、上記一方の小径部を上記一方のローラチェーンの上記貫通孔から抜き取り可能にした。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明によれば、筒状の止め部材を小径部に位置させることで、棒本体の軸方向の移動を規制でき、止め部材を大径部側へ移動させることで、小径部をローラチェーンの貫通孔から抜き差しできる。
上記止め部材の移動はスナップリングの着脱と比べて容易なので、連結棒の抜き取りの作業性が向上する。また、止め部材を大径部に装着したままで、連結棒の着脱作業時ができるので、止め部材を紛失してしまう可能性も低くなる。
【0018】
第2の発明によれば、小径部に位置させた止め部材が移動しにくくなるので、ネットコンベアの運転中などに、止め部材が不用意に大径部に移動してしまうようなことがなく、棒本体の軸方向の移動をより確実に規制できる。
【0019】
第3の発明によれば、重力によって、止め部材を構成する筒体の厚肉部分が下方に位置し、止め部材が小径部で回りにくくなる。止め部材が小径部で安定すれば、ネットコンベアの運転中に止め部材が不用意に大径部側へ移動してしまうようなことがなく、棒本体の軸方向の移動をより確実に規制できる。
止め部材が不用意に大径部へ移動してしまうと、ローラチェーンから連結棒が脱落してしまうことがあるが、第2,3の発明では、そのようなことが特に起こりにくい。
【0020】
第4の発明によれば、コイル状の圧縮ばねが止め部材として機能し、圧縮ばねを棒本体上で移動させることによって連結棒の着脱作業ができる。圧縮ばねの移動は、小さなスナップリングの着脱作業と比べて、作業性が良い。
特に、圧縮ばねに外力を加えていないときには、その筒孔である内径が大径部の外径より小さくなるため、通常のネットコンベアの運転中に圧縮ばねが大径部側へ移動してしまうことがない。したがって、連結部材が不用意に脱落してしまうことを、より確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、第1実施形態の連結棒の側面図である。
図2図2は、第1実施形態の連結棒が搬送帯を構成しているときの側面図である。
図3図3は、図2のIII-III線断面図である。
図4図4は、第2実施形態の止め部材の側面図である。
図5図5は、小径部を挿通した第3実施形態の止め部材の断面図である。
図6図6は、小径部を挿通した第4実施形態の止め部材の断面図である。
図7図7は、第5実施形態の止め部材の側面図で、コイルばねの自然長状態を示している。
図8図8は、第5実施形態の止め部材の側面図で、コイルばねの圧縮状態を示している。
図9図9は、ネットコンベアの模式図である。
図10図10は、従来のネットコンベアの部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
図1~3を用いて本発明の第1実施形態を説明する。図1は、第1実施形態の連結棒の側面図、図2は第1実施形態の連結棒が搬送帯を構成しているときの側面図、図3図2のIII-III線断面図である。
【0023】
第1実施形態の連結棒13は、図1に示すように棒本体14と、筒状の止め部材である筒体15とからなる。
棒本体14は金属製の円柱からなり、ネットコンベアの搬送帯を構成するため、図10に示す従来の連結棒8のいずれかに替え、一対のローラチェーン6,7間に渡して用いられるものである。なお、以下では一方のローラチェーン6を第1のローラチェーン6、他方のローラチェーン7を第2のローラチェーン7ということにする。
この第1実施形態において、連結棒13以外の構成は、上記した従来例と同様である。したがって、以下の説明でも、従来と同じ構成要素には、図9,10と同じ符号を用いるものとする。
【0024】
棒本体14は、中央部分の大径部14aと、その両端側に設けられた大径部14aよりも直径が小さい一対の第1,2の小径部14b,14cとからなる。これら第1,2の小径部14b,14cは、その中心軸が大径部14aの中心軸と同軸上に設けられ、境界となる第1,2の段差14d,14eを介して大径部14aと連続して設けられている。なお、上記第1の小径部14bが一方の小径部であり、第2の小径部14cが他方の小径部である。
【0025】
大径部14aは、上記第1,2のローラチェーン6,7のローラ10bを貫通するブッシュ10cの内径より大きな外径D1を備え、第1,2の小径部14b,14cは上記ブッシュ10cの内径より小さい、すなわちブッシュ10cに挿通可能な外径D2を備えている。
なお、この実施形態では上記両ブッシュ10c,10cが、一対のローラチェーン6,7のそれぞれに形成された貫通孔を構成している。
【0026】
また、第1の小径部14bの軸方向長さL1は、第2の小径部14cの軸方向長さL2よりも長く、筒体15の軸方向長さL3と第1のローラチェーン6の幅L4との和と同等もしくはそれに近い長さにしている。
第2の小径部14cの軸方向長さL4は第2のローラチェーン7の幅L4と同等もしくはそれに近い長さに設定されている。
そして、上記大径部14aと第1,2小径部14b,14cとの合計長さは、ネットコンベアを構成した時の、上記第1のローラチェーン6と第2のローラチェーン7との距離に対応させている。
【0027】
一方、止め部材である筒体15は、棒本体14と同様の材質からなる円筒で、当該筒体15の軸心と同心の筒孔15aを備えている。すなわち、筒体15は、肉厚が均一な円筒である。この筒孔15aの内径D3を棒本体14の大径部14aの外径D1より大きくし、筒孔15aに大径部14aを挿通可能にしている。
また、筒体15の軸方向長さL3は、第1の小径部14bの長さL1未満で、第2の小径部14cの長さL2以上の長さである。
【0028】
[作用・効果等]
上記連結棒13を、第1,2のローラチェーン6,7間に装着する手順は次のとおりである。
棒本体14を筒体15の筒孔15aに挿通し、筒体15を大径部14aに位置させる。例えば、筒体15を図1の二点鎖線で示した位置に維持してから、第1,2の小径部14b,14cを第1,2ローラチェーン6,7のブッシュ10c,10cに挿通させる。このとき、まず第1の小径部14b側から第1のローラチェーン6のブッシュ10cに挿通させる。
【0029】
その後、第1の小径部14bを一方のブッシュ10cに挿通したら、第1のローラチェーン6に対向する第1の段差14dが第1のローラチェーン6に接触するまで棒本体14を第1のローラチェーン6側へ移動させる。棒本体14を第1のローラチェーン6の方へ移動させたら、第2の小径部14cを第2のローラチェーン7のブッシュ10cに挿通し、第2のローラチェーン7に対向する第2の段差14eが第2のローラチェーン7に接触するまで棒本体14を移動させる。
第2の小径部14cを第2のローラチェーン7のブッシュ10cに挿通させ、棒本体14を第2のローラチェーン7側へ移動させると、第1の小径部14bの一部が第1のローラチェーン6と第1の段差14dとの間に露出する。
【0030】
次に、筒体15を、大径部14aから第1の小径部14bの上記露出部分まで移動させ、図2に示すように、第1の段差14dと第1のローラチェーン6との間に位置させる。
筒体15の筒孔15aの内径D3は、第1の小径部14bの外径D2よりも十分に大きいので、筒体15は、図2,3に示すように、第1の小径部14bにぶら下がったようになって棒本体14に対して偏心した状態になる。そのため、棒本体14が第1のローラチェーン6側へ移動しようとすると第1の段差14dが筒体15の端面に当接し、棒本体14の軸方向移動が規制される。なお、第2のローラチェーン7側への棒本体14の移動は、第2の段差14eと第2のローラチェーン7との当接によって規制される。
【0031】
これに対し、第1,2のローラチェーン6,7を展開する際には、上記手順と反対にする。
まず、第1の小径部14bに対して偏心している筒体15を直径方向(上方向)にずらし、棒本体14と同心にしてから、筒体15を大径部14aまで移動させる。筒体15が大径部14aに位置すれば、第1の小径部14bが露出するので、その分、棒本体14を第1のローラチェーン6側へ移動させることができる。
【0032】
棒本体14を第1のローラチェーン6側へ移動すれば、第2の小径部14cを第2のローラチェーン7のブッシュ10cから抜き取ることができる。第2の小径部14cを第2のローラチェーン7のブッシュ10cから抜き取ってから、棒本体14を第2のローラチェーン7側へ戻せば、第1の小径部14bを第1のローラチェーン6のブッシュ10cから抜き取ることができ、第1,2のローラチェーン6,7を展開することができる。
【0033】
上記したように、第1実施形態の連結棒13は、装着時には軸方向移動が規制され、脱落してしまうことがなく、搬送帯5を展開する際には、止め部材である筒体15を棒本体14の大径部14aに移動させて簡単に棒本体14を抜き取ることができる。
筒体15がある程度の長さを確保でき持ちやすいため、上記筒体15の移動は、従来のように小さいスナップリング12を着脱する場合と比べて作業性がよい。また、棒本体14を取り外した状態では、筒体15を大径部14aにはめておくことができるので、筒体15を紛失してしまう心配もない。
さらに、スナップリング12を着脱することもないので、着脱作業を繰り返して、スナップリング12が劣化してしまうという問題も発生しない。
【0034】
[第2実施形態]
第2実施形態は、第1実施形態の筒体15に替えてコイルばね16を筒状の止め部材とするものである。図4は、コイルばね16の側面図である。
この第2実施形態では、図1に示す上記棒本体14と図4に示すコイルばね16とで連結棒13を構成している。
【0035】
上記コイルばね16はコイル状の圧縮ばねで、自然長L5が止め部材の軸方向長さである。この自然長L5は、図1に示す筒体15の軸方向長さL3と同等あるいは長さL3よりわずかに長く設定されている。
また、コイルばね16の内径部16aが筒孔に相当し、自然長L5のときの、コイルの内径を、上記大径部14aの外径D1より大きい、上記筒体15の内径D3と同等にしている。したがって、自然長の状態でのコイルばね16の内径部16aには、大径部14aを挿通させることができる。
【0036】
[作用・効果等]
この第2実施形態でも、止め部材であるコイルばね16に大径部14aを挿通させた状態で、棒本体14の第1,2の小径部14b,14cを第1,2のローラチェーン6,7のブッシュ10c,10cから抜き取ることができる。
また、第1,2の小径部14b,14cを第1,2のローラチェーン6,7のブッシュ10c,10cに挿通させた状態で、上記コイルばね16を第1の小径部14b側の第1の段差14dと第1のローラチェーン6との間に位置させれば、第1実施形態と同様に棒本体14の軸方向移動を規制することができる。
【0037】
この第2実施形態のコイルばね16は、第1の段差14dと第1のローラチェーン6との間で第1の小径部14bにぶら下がった状態で位置しているとき、わずかに撓んで弾性力を発揮し、第2の小径部14c側の第2の段差14eを第2のローラチェーン7に押し付けるとともに、当該コイルばね16の両端面が第1の段差14dと第1のローラチェーン6とに押し付けられるようにして、棒本体14の軸方向の移動を規制する。
そして、コイルばね16には、ネットコンベアの運転による通常の振動などを受けても、上記の押し付け状態が保たれる程度の弾性を設定している。
【0038】
上記コイルばね16の移動は、従来のスナップリング12の着脱よりも容易で、この第2実施形態においても、従来と比べて搬送帯5の展開の作業性が向上する。
また、筒状の止め部材をコイルばね16で構成することによって、止め部材の軸方向長さを多少変化させることが可能になるので、止め部材や小径部14b,14cの軸方向長さの寸法管理を厳密にせず、多少ラフにしても、棒本体14の軸方向の移動を確実に規制できる。
【0039】
[第3実施形態]
図5に示す第3実施形態は、第1実施形態の筒体15に替えて筒体17を止め部材として用いている。その他の構成は、上記第1実施形態と同じである。図5は、第1の小径部14bを挿通した第3実施形態の止め部材である筒体17の断面図である。
第3実施形態の連結棒13は、図1に示す棒本体14と図5に示す筒体17とで構成されている。
【0040】
第3実施形態の止め部材である筒体17は、外観は円筒状であるが、図5に示すように筒孔17aが外形の円に対して偏心している。その結果、筒体17の側壁は厚さが不均一になって、厚肉部と薄肉部とが形成される。
そして、筒体17の軸方向長さは、第1実施形態の筒体15と同じ長さL3である。また、筒孔17aの内径は、第1実施形態の筒孔15aと同じ内径D3で、大径部14aを挿通可能にしている。
【0041】
[作用・効果等]
この第3実施形態でも、筒体17の筒孔17aに棒本体14の大径部14aを挿通した状態で、第1,2の小径部14b,14cを第1,2のローラチェーン6,7のブッシュ10c,10cに挿通したり、抜きとったりでできる。
また、第1,2の小径部14b,14cを第1,2のローラチェーン6,7のブッシュ10c,10cに挿通した状態で、第1の小径部14bに移動させた筒体17を、第1の段差14dと第1のローラチェーン6との間にはめ込めば、棒本体14の軸方向移動を規制できる。
筒体17の移動は従来のスナップリング12の着脱より容易で、搬送帯5の展開の作業性が向上する。
【0042】
さらに、筒体17は、第1の小径部14bにおいて第1の段差14dと第1のローラチェーン6との間に位置しているときには、重力によって図5に示すように側壁の厚肉部分が下方に位置しやすい。したがって、第1の小径部14bに対する筒体17の位置が安定する。例えば、筒体17は、第1の小径部14bに対して回転してしまうようなことが抑制されて、上下動するようなことが抑制される。その結果、仮に外部から衝撃を受けても、筒体17が不用意に大径部14a側へ移動してしまうようなことがない。そのため、棒本体14の軸方向の移動を、より安定して規制できる。
【0043】
[第4実施形態]
図6は、第4実施形態の止め部材の断面図である。
第4実施形態は、止め部材として、上記筒体15に替えて図6に示す筒体18を用いた点が上記第1実施形態と異なるが、その他の構成は第1実施形態と同じである。
第4実施形態の連結棒13は、上記棒本体14と図6に示す筒体18とで構成されている。
【0044】
筒体18は、外形及び筒孔18aの断面形状が非円形である長円の筒部材である。
筒体18の軸方向長さは、上記筒体15と同じ長さL3である。
また、筒孔18aの断面は、上記大径部14aの外径D1よりわずかに大きい、上記筒体15の内径D3と同じ径の半円が間隔を保って対向配置された長円で、外径D1の大径部14aが挿通可能にされている。
【0045】
[作用・効果等]
この第4実施形態においても、筒体18の筒孔18aに棒本体14の大径部14aを挿通した状態で、両端の小径部14b,14cを第1,2のローラチェーン6,7のブッシュ10c,10cに挿通したり、抜き取ったりできる。
また、第1,2の小径部14b,14cを第1,2のローラチェーン6,7のブッシュ10c,10cに挿通した状態で、第1の小径部14bに移動させた筒体18を第1の段差14dと第1のローラチェーン6との間にはめ込めば、棒本体14の軸方向移動を規制できる。
筒体18の移動は従来のスナップリング12の着脱より容易で、搬送帯5の展開の作業性は向上する。
【0046】
さらに、第1の小径部14bにおいて第1の段差14dと第1のローラチェーン6との間に筒体18が位置しているときには、図6に示すように、長円の長径が重力方向と一致しやすいため、第1の小径部14bに対する筒体18の位置が安定する。したがって、筒体18が不用意に大径部14a側へ移動してしまうようなことがなく、棒本体14の軸方向の移動を、より安定して規制できる。
【0047】
なお、第4実施形態では、止め部材の外形及び筒孔の断面形状を長円にしているが、第1の小径部14bを挿通した状態で止め部材の向きが安定するような形状なら長円に限らない。例えば、断面形状は多角形などの非円形にすることが考えられる。また、筒体の外形状、筒孔の形状、及び筒孔の位置の組み合わせによって、側壁の肉厚を不均一にすることもでき、筒体を、さらに位置ずれしにくくする構成を実現することもできる。
【0048】
[第5実施形態]
図7,8は、第5実施形態の止め部材の側面図である。
第5実施形態は、図7に示すコイルばね19を筒状の止め部材としている。その他の構成は、上記他の実施形態と同じである。
このコイルばね19と図1に示す上記棒本体14とで第5実施形態の連結棒13が構成される。
【0049】
第5実施形態のコイルばね19は、コイル状の圧縮ばねで、軸方向長さである自然長を第2実施形態のコイルばね16と同じL5にしている。
ただし、コイルの直径が上記コイルばね16とは異なり、筒孔である内径部19aの内径D4が、第1の小径部14bの外径D2より大きく、大径部14aの外径D1より小さく設定されている。つまり、自然長のコイルばね19の内径部19aには、第1の小径部14bは挿通可能であるが、大径部14aは挿通できない。
【0050】
ただし、コイルばね19を軸方向に圧縮して、自然長から図8のように圧縮状態にした場合には、コイルの内径部19aが拡径し、棒本体14の大径部14aの外径D1より大きい内径D3になるようにしている。
【0051】
[作用・効果等]
この第5実施形態では、上記コイルばね19をつまんで圧縮し、図8の圧縮状態にし、内径部19aを内径D3にしてから、内径部19aに棒本体14の大径部14aを挿通する。その状態で、第1の小径部14bを、第1のローラチェーン6のブッシュ10cに挿通し、次に第2の小径部14cを第2のローラチェーン7のブッシュ10cに挿通する。
その後、大径部14aからコイルばね19を第1の小径部14bへ移動させる。このときには、コイルばね19を圧縮状態にして内径D3を維持しなければならない。
【0052】
コイルばね19を第1の小径部14bまで移動させて圧縮力を解放すれば、コイルばね19の軸方向長さが自然長L5まで回復し、第1の段差14dと第1のローラチェーン6との間で、弾性力を発揮する。そして、コイルばね19が、棒本体14の軸方向移動を規制する止め部材として機能する。
【0053】
また、コイルばね19は、大径部14aを挿通させたときに圧縮力を開放すれば、自然長L5に復帰する方向、すなわち縮径方向に変形する。そのため、コイルばね19が大径部14aを締め付けて棒本体14からのコイルばね19の脱落を防止できる。
また、第1の小径部14bにおいても、内径D4が大径部14aの外径D1よりも小さいため、コイルばね19が大径部14a側へ移動することがなく、コイルばね19は、止め部材としての機能を維持する。
【0054】
この第5実施形態においても、従来のスナップリング12を着脱するよりも作業性良く、搬送帯5を展開したり連結したりすることができる。
また、棒本体14の着脱作業時に、棒本体14からのコイルばね19の脱落を確実に防止でき、コイルばね19が、製品に混入するようなこともない。
【0055】
なお、上記実施形態では、ネットコンベアの搬送面を構成する帯状ネット9について説明を省略しているが、帯状ネット9を用いた場合には、棒本体14で帯状ネットを連結してから、上記のようにして、棒本体14を第1,2のローラチェーン6,7のブッシュ10c,10cに挿通したり、棒本体14を抜きとって帯状ネット9を展開したりできる。搬送面を構成する帯状ネットは、棒本体14を引き抜くことによって展開可能にしたものであればどのようなものでもよく、図示した構成に限定されない。
【0056】
また、特に帯状ネットを設けずに、搬送方向に所定間隔で配置された連結棒13のみで搬送面を構成してもかまわない。
さらに、上記連結棒13以外の従来の連結棒8は、抜き差しする必要がないのでスナップリング12の代わりに溶接や加締めによって固定してあってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
食品を扱う現場で用いる搬送装置に適用することで、ネットコンベアを清浄に保つことが容易になる。
【符号の説明】
【0058】
5 搬送帯
6,7 第1,2のローラチェーン
10c (貫通孔)ブッシュ
13 連結棒
14 棒本体
14a 大径部
14b,14c 第1,2の小径部
14d,14e 第1,2の段差
15,17,18 (止め部材)筒体
15a,17a,18a 筒孔
16,19 (止め部材)コイルばね
16a,19a (筒孔)内径部
D1 大径部の外径
D2 小径部の外径
D3,D4 (筒孔の)内径
D4 (コイルばねの)内径
L1 一方の小径部の長さ
L2 他方の小径部の長さ
L3 (止め部材の)軸方向長さ
L5 (コイルばねの)自然長
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10