IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-児童支援システム及び児童支援方法 図1
  • 特開-児童支援システム及び児童支援方法 図2
  • 特開-児童支援システム及び児童支援方法 図3
  • 特開-児童支援システム及び児童支援方法 図4
  • 特開-児童支援システム及び児童支援方法 図5
  • 特開-児童支援システム及び児童支援方法 図6
  • 特開-児童支援システム及び児童支援方法 図7
  • 特開-児童支援システム及び児童支援方法 図8
  • 特開-児童支援システム及び児童支援方法 図9
  • 特開-児童支援システム及び児童支援方法 図10
  • 特開-児童支援システム及び児童支援方法 図11
  • 特開-児童支援システム及び児童支援方法 図12
  • 特開-児童支援システム及び児童支援方法 図13
  • 特開-児童支援システム及び児童支援方法 図14
  • 特開-児童支援システム及び児童支援方法 図15
  • 特開-児童支援システム及び児童支援方法 図16
  • 特開-児童支援システム及び児童支援方法 図17
  • 特開-児童支援システム及び児童支援方法 図18
  • 特開-児童支援システム及び児童支援方法 図19
  • 特開-児童支援システム及び児童支援方法 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095004
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】児童支援システム及び児童支援方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/20 20180101AFI20240703BHJP
   G06Q 50/22 20240101ALI20240703BHJP
【FI】
G16H50/20
G06Q50/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211972
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】川崎 晃
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 亮平
(72)【発明者】
【氏名】西山 大
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
5L099AA13
(57)【要約】
【課題】医師の診察を受けずとも、医師の知見を反映させて、児童の発達障害を精度よく検出することができる児童支援システム及び児童支援方法を提供する。
【解決手段】児童データベースDB1は、児童のLD情報INF1及びDCD情報INF2が格納される。情報送信部11は、LD情報INF1及びDCD情報INF2を送信する。検出部12は、LD情報INF1及びDCD情報INF2に基づいて、LD及びDCDのそれぞれの疑いが児童に有るかを検出し、検出結果D1を送信する。判定部13は、検出結果D1に基づいて、発達障害の種類についての専門家による判定結果D2を送信する。検査案内送信部14は、判定結果D2に応じて、児童が有すると疑われる種類の発達障害について検査を促すための検査案内EGを送信する。通信部16は、発達障害の疑いがある児童の代理人が判定結果D2及び検査案内EGを受け取るために設けられる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
児童の複数の種類の発達障害を検出するための児童に関する情報が格納された児童データベースと、
前記児童データベースから前記児童に関する情報を読み出し、読み出した前記児童に関する情報を送信する情報送信部と、
前記情報送信部から送信された前記児童に関する情報に基づいて、前記複数の種類の発達障害のそれぞれの疑いが児童に有るかを検出し、検出結果を送信する検出部と、
前記検出結果に基づいて、前記複数の種類の発達障害のうちから、児童が有すると疑われる発達障害の種類についての専門家による判定結果を送信する判定部と、
前記判定結果に応じて、前記児童が有すると疑われる種類の発達障害について検査を促すための検査案内を送信する検査案内送信部と、
前記発達障害の疑いがある児童の代理人が前記判定結果及び前記検査案内を受け取るための通信部と、を備える、
児童支援システム。
【請求項2】
前記検出部は、
前記児童に関する情報に含まれる、前記複数の種類の発達障害のそれぞれを検出するための複数のデータセットから、前記複数の種類の発達障害のそれぞれの疑いを示す複数の評価結果を出力する、複数の情報処理部と、
前記複数の情報処理部が出力した複数の前記評価結果に基づいて、前記複数の種類の発達障害のそれぞれの疑いを推定して複数の推定結果を出力する分析部と、
前記複数の推定結果のそれぞれに含まれる情報から、特定の種類の発達障害の疑いを示す情報を選択し、選択結果を出力する選択処理部と、
前記複数の推定結果と前記選択結果とを統合して、前記検出結果として送信する検出結果送信部と、を備える、
請求項1に記載の児童支援システム。
【請求項3】
前記分析部は、前記複数の情報処理部が出力した複数の前記評価結果が、前記複数の種類の発達障害のそれぞれの疑いを推定に用いるのに不十分である場合、前記児童に関する情報を再度送信するように、前記情報送信部に指令する、
請求項2に記載の児童支援システム。
【請求項4】
前記判定結果及び前記検査案内は、前記通信部に送信される、
請求項2又は3に記載の児童支援システム。
【請求項5】
受け取った情報を転送する情報転送部を更に備え、
前記判定結果及び前記検査案内は、前記情報転送部に送信され、
前記情報転送部は、受け取った前記判定結果及び前記検査案内を、前記通信部に転送する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の児童支援システム。
【請求項6】
発達障害が疑われる児童を支援するための支援情報が格納された支援情報データベースと、
前記検出結果に応じて、前記支援情報データベースから支援情報を読み出して、読み出した前記支援情報を送信する支援情報送信部と、を更に備える、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の児童支援システム。
【請求項7】
受け取った情報を転送する情報転送部を備え、
前記判定結果、前記検査案内及び前記支援情報は、前記情報転送部に送信され、
前記情報転送部は、受け取った前記判定結果、前記検査案内及び前記支援情報を、前記通信部に転送する、
請求項6に記載の児童支援システム。
【請求項8】
前記検出結果に応じて、前記支援情報データベースから支援情報を読み出して、読み出した前記支援情報を、前記通信部に送信する支援情報取得部を更に備え、
前記情報転送部は、前記支援情報取得部が読み出した支援情報を前記通信部に送信する、
請求項7に記載の児童支援システム。
【請求項9】
前記判定結果、前記検査案内及び前記支援情報は、前記通信部に送信される、
請求項6に記載の児童支援システム。
【請求項10】
児童の複数の種類の発達障害を検出するための児童に関する情報が格納された児童データベースから前記児童に関する情報を読み出し、読み出した前記児童に関する情報を送信し、
送信された前記児童に関する情報に基づいて、前記複数の種類の発達障害のそれぞれの疑いが児童に有るかを検出し、検出結果を送信し、
前記検出結果に基づいて、前記複数の種類の発達障害のうちから、児童が有すると疑われる発達障害の種類についての専門家による判定結果を送信し、
前記判定結果に応じて、前記児童が有すると疑われる種類の発達障害について検査を促すための検査案内を送信し、
前記発達障害の疑いがある児童の代理人が前記判定結果及び前記検査案内を受け取る、
児童支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、児童支援システム及び児童支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder、以下DCDとする)とは、動作や手先の「不器用さ」や「運動技能のつたなさ」が、発達早期から極端に現れる発達障害の一種であり、定期検診や身体測定で発見することが難しいとされている。障害の程度は運動神経の軽度な欠陥程度のものから、日常生活にも大きな支障を来して専門医の治療やリハビリテーションを受けなければならない重度のものまである。リハビリの効果が期待できる期間にはある程度の目安があるため、運動機能の回復のためのリハビリはなるべく早い段階で行うことが重要とされている。既存の運動障害(麻痺)を発見する方法としては神経学的検査等があるが、専門知識を有する小児科医などの個別の介入が必要である。
【0003】
例えば、神経学的障害に関して個人を評価し、その個人に処置を提供するための手法が提案されている(特許文献1)。この手法では、個人から収集した情報から、コンピュータプログラム及び機械学習モデルを用いて、障害に応じたデジタル治療を提供することができる。
【0004】
また、発達障害者に関する各種情報を集約して、プライバシーを確保しつつ、関係者が情報を共有する手法(特許文献2)や、発達障害児の個人情報を活用して多面的な視野から分析を行える手法(特許文献3)も提案されている。
【0005】
他にも、個人情報にかかるデータを流通させる手法(特許文献4)、データ資産のプライバシーを確保する手法(特許文献5)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2022-527946号公報
【特許文献2】特開2022-101853号公報
【特許文献3】特開2020-87115号公報
【特許文献4】国際公開第2022/153885号
【特許文献5】特表2022-526948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、一般に、医師の知見がなければ、児童がいかなる種類の発達障害を有しているのかを適切に判定したり、発達障害の種類に応じて対象となる児童を効率的に支援する方法を決定することは難しい。一方で、発達障害の種類を判定するために、その都度、児童が医師の診察を受けなければならないとすると、そもそも発達障害の早期検出の妨げとなってしまう。
【0008】
このような問題に対して、上述の手法を適用しても、医師の知見が十分に反映されないため、発達障害の検出精度や、児童がいかなる種類の発達障害を有しているかを精度よく検出することが難しい。また、その結果、発達障害の種類に応じて児童を支援する方法の適切性や効率性の点で問題が有る。
【0009】
本開示は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、医師の診察を受けずとも、医師の知見を反映させて、児童の発達障害を精度よく検出することができる児童支援システム及び児童支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様である児童支援システムは、児童の複数の種類の発達障害を検出するための児童に関する情報が格納された児童データベースと、前記児童データベースから前記児童に関する情報を読み出し、読み出した前記児童に関する情報を送信する情報送信部と、前記情報送信部から送信された前記児童に関する情報に基づいて、前記複数の種類の発達障害のそれぞれの疑いが児童に有るかを検出し、検出結果を送信する検出部と、前記検出結果に基づいて、前記複数の種類の発達障害のうちから、児童が有すると疑われる発達障害の種類についての専門家による判定結果を送信する判定部と、前記判定結果に応じて、前記児童が有すると疑われる種類の発達障害について検査を促すための検査案内を送信する検査案内送信部と、前記発達障害の疑いがある児童の代理人が前記判定結果及び前記検査案内を受け取るための通信部と、を備えるものである。
【0011】
本開示の一態様である児童支援方法は、児童の複数の種類の発達障害を検出するための児童に関する情報が格納された児童データベースから前記児童に関する情報を読み出し、読み出した前記児童に関する情報を送信し、送信された前記児童に関する情報に基づいて、前記複数の種類の発達障害のそれぞれの疑いが児童に有るかを検出し、検出結果を送信し、前記検出結果に基づいて、前記複数の種類の発達障害のうちから、児童が有すると疑われる発達障害の種類についての専門家による判定結果を送信し、前記判定結果に応じて、前記児童が有すると疑われる種類の発達障害について検査を促すための検査案内を送信し、前記発達障害の疑いがある児童の代理人が前記判定結果及び前記検査案内を受け取るものである。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、医師の診察を受けずとも、医師の知見を反映させて、児童の発達障害を精度よく検出することができる児童支援システム及び児童支援方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1にかかる児童支援システムに含まれる主体を模式的に示す図である。
図2】実施の形態1にかかる児童支援システムに設けられる機能構成を模式的に示す図である。
図3】実施の形態1にかかる児童支援システムでの児童支援動作のフロー図である。
図4】実施の形態1にかかる児童支援システムでの児童支援動作のシーケンス図である。
図5】実施の形態1にかかる児童支援システムの構成を模式的に示す図である。
図6】実施の形態1にかかる検出部の構成を模式的に示す図である。
図7】実施の形態1にかかる検出部の動作のフロー図である。
図8】実施の形態1にかかる児童支援システムの変形例の構成を模式的に示す図である。
図9】実施の形態1にかかる児童支援システムの変形例における検出部の構成を模式的に示す図である。
図10】実施の形態1にかかる児童支援システムの変形例の動作のフロー図である。
図11】実施の形態2にかかる児童支援システムの構成を模式的に示す図である。
図12】実施の形態2にかかる児童支援システムの第1の転換例の構成を模式的に示す図である。
図13】実施の形態2にかかる児童支援システムの第2の転換例の構成を模式的に示す図である。
図14】実施の形態3にかかる児童支援システムの構成を模式的に示す図である。
図15】実施の形態3にかかる児童支援システムの第1の転換例の構成を模式的に示す図である。
図16】実施の形態4にかかる児童支援システムの構成を模式的に示す図である。
図17】実施の形態3にかかる児童支援システムの第1の転換例の構成を模式的に示す図である。
図18】実施の形態5にかかる児童支援システムの構成を模式的に示す図である。
図19】実施の形態6にかかる児童支援システムの構成を模式的に示す図である。
図20】端末装置を実現するためのハードウェア構成の一例であるコンピュータの構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各図面においては、同一要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略される。
【0015】
実施の形態1
実施の形態1にかかる児童支援システムについて説明する。図1に、実施の形態1にかかる児童支援システム100に含まれる主体を模式的に示す。児童支援システム100は、家庭1、調査実施機関2、医療機関3及びサービス提供者4の4つの主体が、互いに情報のやり取りを行うものとして構成される。この例では、家庭1、調査実施機関2、医療機関3及びサービス提供者4は、情報処理、情報の入力や出力及び情報通信を行うために、それぞれパーソナルコンピュータなどの端末装置T1~T4を有している。
【0016】
家庭1、調査実施機関2、医療機関3及びサービス提供者4、すなわち端末装置は、無線及び有線の各種の通信手段で双方向の通信が可能である。ここでは、児童支援システム100を理解するために必要な通信経路のみを表示するが、通信経路はここで説明するもの及び図に表示したものに限られるものではない。
【0017】
家庭1は、親及び児童で構成される一般的な家庭のみならず、親以外の保護者又は定められた代理人と児童とで構成される家庭や、児童養護施設などの、児童が居住する各種の環境を含むものとする。以下では、家庭1において、親や親以外の保護者や定められた代理人などを、単に代理人と総称するものとする。
【0018】
調査実施機関2は、児童が教育を受ける各種の学校、幼稚園や保育園、乳幼児の健診データを管理する機関などであり、児童の各種の発達障害を検出するための情報を提供可能な機関である。調査実施機関2は、複数の種類に分類される発達障害について、2つ以上の種類の発達障害の検出するための情報がデータセットとして格納された児童データベースDB1を有する。以下では、説明の簡略化のため、児童データベースDB1には、複数の種類に分類される発達障害のうち、学習障害(Learning Disability、以下LDとする)を検出するための情報からなるデータセットと、発達性協調運動障害(以下DCDとする)を検出するための情報からなるデータセットと、が格納されているものとして説明する。但し、児童データベースDB1に格納される情報はこれに限られるものではなく、3種類以上の発達障害を検出するための情報にかかる3つ以上のデータセットが格納されてもよいし、LD及びDCD以外の種類の発達障害を検出するための情報にかかるデータセットが格納されてもよい。
【0019】
LDを検出するための情報としては、学校における学習の成績や、LDを検出するための各種のテスト及びチェック、LDスクリーニングテストなどが有る。また、DCDを検出するための情報としては、学校における運動科目の成績や、DCDを検出するための各種のテスト及びチェック、DCDスクリーニングテストなどが有る。但し、これらについては例示に過ぎず、LDやDCDの検出に利用できる他の各種の手法を排除するものではない。また、LD及びDCDを検出するための情報としては、上記したものだけでなく、乳幼児の健診データなどの児童の健診情報を含んでもよい。
【0020】
医療機関3は、児童にLD及びDCDの疑いが有るか否かを各種の情報から診断することができる診療所、医院、病院、成育医療研究機関などの各種の機関を指す。ここでいう医療機関3は、必ずしも単一の医療機関を指すわけではなく、複数の医療機関の協同体であってもよい。
【0021】
サービス提供者4は、調査実施機関2から提供された情報に応じて、LD及びDCDの疑いの有る児童を検出し、その検出結果を医療機関3に送信する機関である。サービス提供者4は、民間の機関であってもよいし、公的な機関であってもよい。
【0022】
児童支援システム100では、調査実施機関2に蓄積された児童データベースDB1を用いてLD及びDCDの疑いのある児童を検出し、その検出結果に応じて必要な措置をとるために、各種の機能を有する構成要素が設けられる。図2に、実施の形態1にかかる児童支援システム100に設けられる機能構成を模式的に示す。児童支援システム100には、機能構成として、情報送信部11、検出部12、判定部13、検査案内送信部14及び通信部16が少なくとも設けられる。
【0023】
また、図3に、図2の児童支援システム100での児童支援動作のフロー図を示す。図4に、図2の児童支援システム100での児童支援動作のシーケンス図を示す。
【0024】
本実施の形態では、これらの構成要素が、家庭1、調査実施機関2、医療機関3及びサービス提供者4に配置されている。図5に、実施の形態1にかかる児童支援システム100の構成を模式的に示す。児童支援システム100においては、家庭1には、通信部16が設けられる。調査実施機関2には、情報送信部11及び情報転送部15が設けられる。サービス提供者4には、検出部12が設けられる。医療機関3には、判定部13及び検査案内送信部14が設けられる。
【0025】
ステップS1
調査実施機関2では、情報送信部11が、児童データベースDB1から各児童のLDを検出するためのLD情報INF1と、DCDを検出するためのDCD情報INF2と、を読み出す。LD情報INF1は、児童のLDの疑いを検出可能に構成されたデータセットであり、例えば、学校における科目や単元、チェック項目などの項目に分類整理され、分類された項目ごとに点数などの評価結果を示す情報が付与されていることが望ましい。同様に、DCD情報INF2は、児童のDCDの疑いを検出可能に構成されたデータセットであり、例えば、動作や手や足を使った作業などの運動の種類を示す項目に分類整理され、分類された項目ごとに点数などの評価結果を示す情報が付与されていることが望ましい。
【0026】
ステップS2
情報送信部11は、読み出したLD情報INF1及びDCD情報INF2を、サービス提供者4の検出部12へ送信する。
【0027】
情報送信部11は、自発的に又は検出部12からの要求に応じて、任意のタイミングで、図3のステップS1及びS2に示すLD情報INF1及びDCD情報INF2の読み出し及び送信を行うことができる。
【0028】
LD情報INF1及びDCD情報INF2には、各児童を識別するための識別情報が含まれるが、対象となる児童が特定されてもよい場合には、識別情報は児童の氏名などの情報でもよい。また、調査実施機関2の外に対して個人情報の秘匿が求められる場合には、児童IDなどの児童の特定が不可能な情報を識別情報として用いてもよい。この場合には、調査実施機関2が、児童と児童IDとの対応関係を示す情報を保有しておくことで、後述するように、医療機関3から送信される情報がいずれの児童に対してのものであるかを、調査実施機関2において判別することができる。
【0029】
ステップS3
サービス提供者4の検出部12は、受け取ったLD情報INF1及びDCD情報INF2を参照し、予め定められたルールに基づいて、LD及びDCDが疑われる児童を検出する。そして、検出部12は、LD又はDCDが疑われる児童の検出結果D1を、医療機関3へ送信する。
【0030】
以下、検出部12の処理について具体的に説明する。図6に、実施の形態1にかかる検出部12の構成を模式的に示す。図7に、実施の形態1にかかる検出部12の動作のフロー図を示す。検出部12は、LD情報処理部121、DCD情報処理部122、分析部123、項目選択部124及び検出結果送信部125を有する。
【0031】
ステップS11
LD情報処理部121は、LD情報INF1に基づいて、LDの疑いのある児童を示す情報を検出し、検出結果D11を分析部123へ出力する。具体的には、LD情報処理部121は、LD情報INF1の各項目の点数を予め定められた閾値と比較し、LDの兆候を示す項目を検出し、検出結果D11を分析部123へ出力する。
【0032】
ステップS12
DCD情報処理部122は、DCD情報INF2に基づいて、DCDの疑いのある児童を示す情報を検出し、検出結果D12を分析部123へ出力する。具体的には、DCD情報処理部122は、DCD情報INF2の各項目の点数を予め定められた閾値と比較し、DCDの兆候を示す項目を検出し、検出結果D12を分析部123へ出力する。
【0033】
ステップS13
分析部123は、検出結果D11及びD12に基づいて、各児童にLD又はDCDの疑いが有るか否かを推定する。具体的には、分析部123は、検出結果D11に基づいて、各児童にLDの疑いが有るか否かを推定し、推定結果E1を項目選択部124及び検出結果送信部125へ出力する。また、分析部123は、検出結果D12に基づいて、各児童にDCDの疑いが有るか否かを推定し、推定結果E2を項目選択部124及び検出結果送信部125へ出力する。各児童にLD又はDCDの疑いが有るか否かの推定は、予め定められたルールに基づいて行ってもよいし、事前の機械学習によって予め構築された学習済みモデルに検出結果D11又はD12を入力することで行ってもよい。ここで出力される推定結果E1及びE2は、含まれる各項目についてLD又はDCDの疑いが有るか否か(YES/NO)を示す情報であり、例えば、各項目について疑いありの場合に「1」、疑い無しの場合に「0」が割り振られるものとして構成される。
【0034】
ステップS14
項目選択部124は、推定結果E1及びE2のそれぞれに含まれる項目のうち、LD又はDCDの兆候を示すものとして特に疑わしいものを選択し、選択した結果を示す項目選択結果E3を検出結果送信部125へ出力する。例えば、項目選択部124は、予め定められたルールに基づいて、又は、事前の機械学習によって予め構築された学習済みモデルに推定結果E1及びE2を入力することで、項目選択結果E3を取得してもよい。項目選択結果E3は、LD又はDCDの疑いを特に示す項目だけでなく、LD又はDCDの疑いの程度や、LDの疑いとDCDの疑いの比など、発達障害の判定に有用な、推定結果E1及びE2よりも粒度の細かい情報を含んでいてもよい。なお、項目選択部は、単に選択処理部とも称する。
【0035】
ステップS15
検出結果送信部125は、受け取った推定結果E1及びE2と項目選択結果E3とを統合して、検出結果D1として、医療機関3へ送信する。
【0036】
ここでは、説明の簡略化のため、検出対象とする発達障害の種類をLD及びDCDの2種類とした。これに応じて、検出部には、2つの情報処理部、すなわち、LD情報処理部121及びDCD情報処理部122が設けられている。しかし、これは例示に過ぎず、本実施の形態及び以降の実施の形態においても、検出対象とする発達障害の種類を3つ以上としてもよい。この場合、検出対象となる2つ以上の種類の発達障害に応じて、各種類の発達障害の検出ためのデータセットを処理する3つ以上の情報処理部が設けられていてもよい。
【0037】
ステップS4
医療機関3では、判定部13が検出結果D1を受け取り、LD又はDCDの疑いがある児童について、推定結果E1及びE2と、項目選択結果E3と、を表示する。医療機関3において医療行為に従事する専門家、例えば医師は、判定部13に表示された検出結果D1を参照し、対象児童について、LD又はDCDの疑いが有るか否かを判定する。このとき、医師は、検出部12によって検出、通知された項目選択結果E3が示す項目に特に着目して、LD又はDCDの疑いを判定することができる。但し、医師は、あくまで項目選択結果E3を判定の参考として用いるに過ぎず、医師の判定は項目選択結果E3に拘束されるものではない。
【0038】
以下、医療機関3において、検出結果D1の是非を判定する専門家は、医師であるものとして説明する。本構成によれば、医師は、複数の種類、この例では、LD及びDCDの2種類の発達障害の疑いを示す情報を参照して、児童がいずれかの発達障害を有しているか否かを総合的に判定することができる。
【0039】
発達障害においては、ある項目の検出結果に、複数の種類の発達障害の兆候が出ることがある。例えば、LDについての推定結果E1に含まれている項目である「書字困難」が、LDの兆候を示すものとして特に疑わしいものとして項目選択結果E3に含まれている場合を想定する。「書字困難」は、一般に、LDの疑いが有る児童において認められる所見であるので、LDの有無だけを判定する場合には、対象児童がLDを有するもとして判定することとなる。しかし、「書字困難」は、他の種類の発達障害、例えばDCDの場合にも認められることが知られている。例えば、DCDを有する児童について、手先の動作が困難であると、そのために「書字困難」の所見が現れる。この場合には、対象児童が有する発達障害はLDではなく、正しくはDCDであると考えられる。
【0040】
つまり、単一の種類の学習障害の疑いを示す推定結果だけを参照した場合、対象児童が、実際に有している発達障害とは異なる種類の発達障害を有するものと誤って判定してしまうおそれが有る。これに対し、本構成によれば、例えばLDの推定結果E1及びDCDの推定結果E2の両方を参照することで、対象児童がいずれの発達障害に該当するかを、正しく判定することができる。
【0041】
その後、医師は、判定部13を操作することで、対象児童がいずれの種類の学習障害の疑いを有するかを示す判定結果D2を入力し、判定結果D2は調査実施機関2へ送信される。
【0042】
ステップS5
また、医師は、判定結果D2に基づいて、検査案内送信部14を操作し、疑いのある学習障害についての検査を促すため、検査案内EGを調査実施機関2へ送信する。
【0043】
調査実施機関2の情報転送部15は、医療機関3から送信された判定結果D2と検査案内EGとを受け取る。これにより、調査実施機関2において、例えば、対象児童の指導を担当する者、例えば学校における教師、幼稚園の教員や保育士などは、対象児童にLD又はDCDの疑いが有ることを認識することができる。また、情報転送部15は、判定結果D2及び検査案内EGを、家庭1へ転送してもよい。
【0044】
家庭1では、転送された判定結果D2によって、代理人は、代理人が管理する児童にLD又はDCDの疑いが有ることを認識できる。また、代理人は、判定結果D2が示す発達障害、すなわちLD又はDCDの有無についてより詳しい検査を受けることを促す検査案内EGを受けとることができる。これにより、代理人は、検査案内EGに応じて、児童を専門的な病院に受診させるなど、各種の措置を講じることができる。
【0045】
以上、本構成によれば、調査実施機関2の児童データベースDB1に蓄積された児童の発達障害を検出するための情報を活用することで、児童が直接に医師の受診を受けなくとも、判断過程に医師を介在させつつ、児童に学習障害の疑いが有るか否かを判定することができる。そして、判定結果を調査実施機関2及び家庭1に通知することで、調査実施機関2及び家庭1において、対象児童に発達障害の疑いが有ることを早期に認識し、また、児童の指導方針の策定、経過観察、及び、専門医の受診などの適切な措置を早期に講じることができる。
【0046】
なお、検出部は、情報送信部11から受け取ったLD情報INF1及びDCD情報INF2に基づいて、LD及びDCDを検出するのに充分な情報が含まれているか否かを判定してもよい。図8に、児童支援システム100の変形例である児童支援システム101の構成を模式的に示す。児童支援システム101は、児童支援システム100の検出部12を、検出部17に置き換えた構成を有する。
【0047】
図9に、児童支援システム101における検出部17の構成を模式的に示す。検出部17は、検出部12と異なり、検出結果D11及びD12がそれぞれLD及びDCDの疑いを検出するのに充分な情報を含んでいるかを、分析部123が判定する。
【0048】
図10に、検出部17の動作のフロー図を示す。ステップS11~S15については、図7と同様であるので、重複する説明については省略する。図10では、図7のステップS12とステップS13との間に、ステップS16及びS17が挿入される。
【0049】
ステップS16
分析部123は、検出結果D11及びD12が、それぞれLD及びDCDの疑いを検出するのに充分な情報を含んでいるかを判定する。検出結果D11及びD12に充分な情報が含まれている場合、処理をステップS13へ進める。
【0050】
ステップS17
検出結果D11及びD12に充分な情報が含まれていない場合、不足している情報を要求するための要求指令REQを、調査実施機関2へ送信する。
【0051】
要求指令REQを受け取った場合、調査実施機関2の情報送信部11は、要求指令REQに基づいて、不足している情報を補ってから、LD情報INF1及びDCD情報INF2を検出部17へ再送する。
【0052】
これにより、検出部17は、LD又はDCDの疑いのある児童を検出するために、適切な情報を情報送信部11から取得することができる。これにより、児童支援システム100と同様に、調査実施機関2の児童データベースDB1に蓄積された児童の発達障害を検出するための情報を活用することで、児童が直接に医師の受診を受けなくとも、判断過程に医師を介在させつつ、児童に学習障害の疑いが有るか否かを判定することができる。
【0053】
実施の形態2
実施の形態1では、検査案内EGが医療機関3から送付されるものとして説明したが、検査案内EGの送付方法はこれに限られるものではない。本実施の形態では、児童支援システム100の変形例として、検査案内EGがサービス提供者4から送付される構成について説明する。
【0054】
図11に、実施の形態2にかかる児童支援システム200の構成を模式的に示す。図11では、検査案内送信部14は、医療機関3ではなく、サービス提供者4に設けられ、医療機関3は判定結果D2をサービス提供者4へ送信する。検査案内送信部14は、判定結果D2に応じて、調査実施機関2に検査案内EGを送信する。
【0055】
本構成においても、実施の形態1と同様に、家庭1及び調査実施機関2に、判定結果D2及び検査案内EGを送信することができる。なお、この場合でも、調査実施機関2が把握していた方がよい場合も想定されるため、判定結果D2については、サービス提供者4から調査実施機関2に送信されることが望ましい。
【0056】
また、図示しないが、児童支援システム200において、判定結果D2及び検査案内EGを、調査実施機関2を介することなく、家庭1の通信部16へ送信してもよい。
【0057】
また、家庭1から、LD情報INF3及びDCD情報INF4を、調査実施機関2やサービス提供者4に提供してもよい。図12に、実施の形態2にかかる児童支援システム200の第1の転換例である児童支援システム201の構成を模式的に示す。図12では、家庭1は、経路P1を通じて、調査実施機関2に家庭1で取得したLD情報INF3及びDCD情報INF4を送信する。調査実施機関2は、LD情報INF3及びDCD情報INF4を、それぞれLD情報INF1及びDCD情報INF2に組み込んで、サービス提供者4に送信してもよい。これにより、サービス提供者4の検出部は、より多くの情報を含んだLD情報及びDCD情報に基づいて、児童の発達障害の疑いを検出することが可能になる。
【0058】
なお、図示しないが、LD情報INF3及びDCD情報INF4をLD情報INF1及びDCD情報INF2に組み込みこまずに、LD情報INF1及びDCD情報INF2とともに、調査実施機関2からサービス提供者4に送信してもよい。この場合でも、サービス提供者4は、より多くのLD情報及びDCD情報に基づいて、発達障害が疑われる児童を検出することが可能になる。
【0059】
また家庭1は、経路P2を通じて、LD情報INF3及びDCD情報INF4をサービス提供者4に送信してもよい。この場合でも、サービス提供者4は、より多くのLD情報及びDCDに基づいて、発達障害が疑われる児童を検出できる。
【0060】
さらに、判定結果D2及び検査案内EGは、調査実施機関2から、他者を介することなく、家庭1へ送信してもよい。図13に、実施の形態2にかかる児童支援システム200の第2の転換例である児童支援システム202の構成を模式的に示す。この例では、必要に応じて、家庭1は、例えば調査実施機関2を介さずに、医師から直接的に判定結果D2及び検査案内EGを受け取ることができる。この場合、家庭1の児童のプライバシーを調査実施機関2に対しても秘匿することができる。なお、この場合でも、調査実施機関2が把握していた方がよい場合も想定されるため、判定結果D2については、医療機関3から調査実施機関2に送信されることが望ましい。
【0061】
また判定結果D2及び検査案内EGの送信経路に調査実施機関2を介在させるかは、適宜選択可能であることが望ましい。例えば、家庭1の代理人が、通信部16を通じて、判定結果D2及び検査案内EGの送信経路の選択指令をサービス提供者4に送信することができる。サービス提供者4は、受け取った選択指令を医療機関3へ転送することで、医師は、家庭1に判定結果D2及び検査案内EGを送信するか否かを切り替えることができる。
【0062】
実施の形態3
実施の形態1では、家庭1又は調査実施機関2に判定結果D2及び検査案内EGが送信される例について説明した。これに対して、実施の形態2では、さらに、発達障害が疑われる児童の学習を支援するための支援情報を送信する構成について説明する。
【0063】
図14に、実施の形態3にかかる児童支援システム300の構成を模式的に示す。児童支援システム300は、実施の形態1にかかる児童支援システム100に、支援情報送信部18を追加した構成を有する。
【0064】
本構成では、支援情報送信部18は、医療機関3に設けられる。また、医療機関3は、発達障害を有する児童へ提供するための支援情報が格納された支援情報データベースDB2を有する。医師は、検出結果D1が妥当であると判定した場合、判定結果D2だけでなく、支援情報データベースDB2の中から必要と判断した支援情報を参照し、発達障害を有する児童向けの指導を支援するために情報や経過観察を行うために用いる情報を、支援情報SUPとして調査実施機関2へ送信する。
【0065】
調査実施機関2では、情報転送部15が支援情報SUPを受け取る。これにより、調査実施機関2において児童の指導を担当する者が支援情報SUPを参照し、発達障害が疑われる児童への指導や経過観察を行うために、医療機関3から提供された支援情報SUPを活用することができる。
【0066】
児童支援システム300のその他の構成及び動作は、児童支援システム100と同様であるので、説明を省略する。
【0067】
また、支援情報SUPは、家庭1に転送されてもよい。図15に、実施の形態3にかかる児童支援システム300の第1の転換例である児童支援システム301の構成を模式的に示す。図15のように、支援情報SUPは、調査実施機関2のみでの活用だけではなく、情報転送部15が支援情報SUPの一部又は全部を家庭1へ転送してもよい。これにより、発達障害が疑われる児童の代理人が、提供された支援情報SUPを、児童への指導や経過観察に活用することができる。
【0068】
なお、児童支援システム100だけでなく、実施の形態1及び2で説明した他の児童支援システムの構成においても、本実施の形態にかかる児童支援システムと同様に、医療機関3に支援情報送信部18及び支援情報データベースDB2を設けてもよいことは言うまでもない。この場合、各構成において、児童支援システム300と同様に、医療機関3から支援情報SUPを、調査実施機関2や家庭1へ送信することができる。
【0069】
実施の形態4
実施の形態3では、医療機関3に支援情報送信部18及び支援情報データベースDB2が設けられる構成について説明した。これに対し、本実施の形態では、調査実施機関2に支援情報取得部及び支援情報データベースが設けられる児童支援システムについて説明する。
【0070】
図16に、実施の形態4にかかる児童支援システム400の構成を模式的に示す。児童支援システム400は、実施の形態1にかかる児童支援システム100に、支援情報取得部19及び支援情報データベースDB2を追加した構成を有する。
【0071】
本構成では、支援情報取得部19及び支援情報データベースDB2は、調査実施機関2に設けられる。支援情報取得部19は、判定結果D2に応じて、支援情報データベースDB2の中から必要と判断した支援情報を参照し、発達障害を有する児童向けの指導を支援するために情報や経過観察を行うために必要な支援情報SUPを取得する。これにより、調査実施機関2において児童の指導を担当する者は、実施の形態3と同様に、支援情報SUPを参照し、発達障害が疑われる児童への指導や経過観察を行うために支援情報SUPを活用することができる。
【0072】
児童支援システム400のその他の構成及び動作は、児童支援システム100と同様であるので、説明を省略する。
【0073】
また、実施の形態3と同様に、支援情報SUPは、家庭1に転送されてもよい。図17に、実施の形態3にかかる児童支援システム400の第1の転換例である児童支援システム401の構成を模式的に示す。図17のように、支援情報SUPは、調査実施機関2のみでの活用だけではなく、情報転送部15が支援情報SUPの一部又は全部を家庭1へ転送してもよい。これにより、発達障害が疑われる児童の代理人が、提供された支援情報SUPを、児童の指導や経過観察に活用することができる。
【0074】
なお、児童支援システム100だけでなく、実施の形態1~3で説明した児童支援システムの転換例のそれぞれにおいても、本実施の形態にかかる児童支援システムと同様に、調査実施機関2に支援情報取得部19及び支援情報データベースDB2を設けてもよいことは言うまでも無い。この場合、各構成において、児童支援システム400と同様に、調査実施機関2が支援情報SUPを取得し、家庭1へ支援情報SUPを送信することができる。
【0075】
実施の形態5
実施の形態5にかかる児童支援システムは、上述の実施の形態にかかる児童支援システムの変形例であり、医療機関3として、診療所、医院及び病院等の一般的な医療機関だけでなく、発達障害を専門的に研究する成育医療研究機関が関与する構成について説明する。
【0076】
図18に、実施の形態5にかかる児童支援システム500の構成を模式的に示す。児童支援システム500は、実施の形態1にかかる児童支援システム100の変形例として表されており、医療機関3の構成が異なっている。ここでは、児童支援システム500では、医療機関3は、病院3Aと成育医療研究機関3Bとの協同体であるものとする。なお、図18では、便宜上、病院3Aと成育医療研究機関3Bとを医療機関3として一括りにしているが、病院3Aと成育医療研究機関3Bとは、それぞれ別個の医療機関であってもよい。
【0077】
病院3Aは、児童支援システム100における医療機関3と同様に、判定部13及び検査案内送信部14を有する。よって、病院3Aは、少なくとも、児童支援システム100における医療機関3と同様の機能を有する。
【0078】
成育医療研究機関3Bは、児童の発達障害を専門的に研究する医師や研究者が従事する医療機関であり、児童の発達障害について、医院及び病院等の一般的な医療機関よりも高度な知識を有している。
【0079】
成育医療研究機関3Bは、評価部20を有する。成育医療研究機関3Bは、調査実施機関2からLD情報INF1及びDCD情報INF2を収集可能であり、かつ、検出部12から検出結果D1を受け取ることが可能である。
【0080】
成育医療研究機関3Bの医師は、必要に応じて、LD情報INF1、DCD情報INF2及び検出結果D1の一部又は全部を参照して、所望のデータを発達障害の検出の研究に用い、又は、発達障害の疑いのある児童を検出することができる。
【0081】
病院3Aの医師は、検出結果D1を用いて、各児童について発達障害の有無を判定するが、医師の知識量や検出結果D1の内容によっては、適切な判定を下すことが難しい場合が有り得る。そこで、本構成では、病院3Aの医師が、判定について成育医療研究機関3Bの医師に助言を求めるため、問い合わせINQを評価部20に送信することができる。
【0082】
問い合わせINQは、対象となる児童の識別情報を少なくとも含んでおり、これにより、評価部20は、対象となる児童の学習障害の疑いを評価するために、LD情報INF1、DCD情報INF2及び検出結果D1から必要な情報を読み込むことができる。成育医療研究機関3Bの医師は、読み込んだ情報を参照して、発達障害に関連する専門的な医学的知見に基づいて、児童の学習障害の疑いの有無を判断し、判断結果を示す回答REPを、評価部20を操作して入力する。
【0083】
問い合わせINQは、対象となる児童の識別情報と、病院3Aが受け取った検出結果D1とを含んでいてもよい。この場合、成育医療研究機関3Bの医師は、検出結果D1及び独自に収集したLD情報INF1及びDCD情報INF2の一部又は全部を参照して、回答REPを作成してもよい。
【0084】
評価部20は、成育医療研究機関3Bの医師が作成した回答REPを、病院3Aへ送信する。病院3Aの医師は、検出結果D1に加えて、成育医療研究機関3Bから受け取った回答REPも参照して、児童の発達障害の疑いの有無を判定することができる。
【0085】
以上、本構成によれば、医療機関3では、発達障害について高度な専門的知識を有する成育医療研究機関3Bの医師の知識を、児童の発達障害の有無の判定に反映させることができる。これにより、児童の発達障害の有無の判定を、より高い精度にて行うことが可能となる。
【0086】
児童支援システム100の他にも、上述の実施の形態において説明した児童支援システムのそれぞれにおいて、本実施の形態にかかる構成を適用してもよい。すなわち、これらにおいても、医療機関3として病院3Aと成育医療研究機関3Bを設け、児童支援システム500と同様の動作を行わせてもよい。
【0087】
なお、実施の形態3及び4などと同様に、支援情報送信部及び支援情報データベースを設ける場合には、これらを成育医療研究機関3Bに設けてもよい。この場合、成育医療研究機関3Bの高度な知識に基づいて、支援情報データベースDB2により優れた支援情報を蓄積することができるので、家庭1や調査実施機関2に対して、より高品質の支援情報を提供することが可能となる。また、病院3Aに支援情報送信部を設け、成育医療研究機関3Bに支援情報データベースDB2を設けてもよい。この場合には、適宜、支援情報送信部が支援情報データベースDB2にアクセスすることで、同様に、より高品質の支援情報を家庭1や調査実施機関2に提供することができる。
【0088】
実施の形態6
本実施の形態では、家庭1の通信部16の機能について説明する。図19に、実施の形態6にかかる児童支援システム600の構成を模式的に示す。通信部16は、サービス提供者4の検出部12に対し、動作を制御するための指令INSを送信することができる。
【0089】
指令INSによって、例えば、児童の識別情報を匿名化するか否かを、検出部12に指令することができる。上述したように、LD情報INF1及びDCD情報INF2には各児童を識別するための識別情報が含まれるが、氏名などの各児童を特定できる情報が識別情報として、検出部12に提供される場合が有る。調査実施機関2の外に対して個人情報の秘匿が求められる場合には、氏名を識別情報として用いることは望ましくないので、検出部12は、児童の氏名を児童IDなどの児童の特定が不可能な情報に置き換える。これにより、検出結果D1に含まれる識別情報からは児童を特定できなくなり、情報を匿名化できる。
【0090】
なお、指令INSによって検出部12が匿名化を行った場合には、例えば、児童の氏名と児童IDとの対応関係を示す対応情報CRSを調査実施機関2に送信することで、調査実施機関2は、判定結果D2及び検査案内EGがいずれの児童のものであるかを判別することができる。
【0091】
また、指令INSによって、例えば、各児童について、学習障害の検出対象として許可する否かを、検出部12に指令することができる。これは、家庭1の代理人によっては、学習障害の疑いについて、検出を望まない場合も考えられるためである。検出部12は、指令INSによって許可された児童のみを、学習障害の疑いの検出とすることとなる。これにより、ニーズに応じた学習障害の検出が可能となる。
【0092】
なお、言うまでもないが、指令INSによる、匿名化の是非及び学習障害の検出許可については、上述の実施の形態にかかる児童支援システム及び各種の転換例に適用可能である。
【0093】
その他の実施の形態
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、端末装置T1~T4は、パーソナルコンピュータであるものとして説明したが、各種のコンピュータであってもよい。
【0094】
図20に、端末装置T1~T4を実現するためのハードウェア構成の一例であるコンピュータ1000の構成を模式的に示す。コンピュータ1000は、専用コンピュータ、パーソナルコンピュータ(PC)などの各種のコンピュータとして構成される。但し、コンピュータは、物理的に単一である必要はなく、分散処理を実行する場合には、複数であってもよい。コンピュータ1000は、CPU(Central Processing Unit)1001、ROM(Read Only Memory)1002及びRAM(Random Access Memory)1003を有し、これらがバス1004を介して相互に接続されている。尚、コンピュータを動作させるためのOSソフトなどは、説明を省略するが、このコンピュータも当然有しているものとする。
【0095】
バス1004には、入出力インターフェイス1005が接続されている。入出力インターフェイス1005には、入力部1006、出力部1007、通信部1008及び記憶部1009が接続される。
【0096】
入力部1006は、例えば、キーボード、マウス、センサなどより構成される。出力部1007は、例えば、LCDなどのディスプレイ装置やヘッドフォン及びスピーカなどの音声出力装置により構成される。通信部1008は、例えば、ルータやターミナルアダプタなどにより構成される。記憶部1009は、ハードディスク、フラッシュメモリなどの記憶装置により構成される。
【0097】
CPU1001は、ROM1002に記憶されている各種プログラム、又は記憶部1009からRAM1003にロードされた各種プログラムに従って各種の処理を行うことが可能である。本実施の形態においては、CPU1001は、例えば端末装置T1~T4が行う処理を実行する。CPU1001とは別にGPU(Graphics Processing Unit)を設け、CPU1001と同様に、ROM1002に記憶されている各種プログラム、又は記憶部1009からRAM1003にロードされた各種プログラムに従って各種の処理、本実施の形態においては、例えば端末装置T1~T4が行う処理を実行してもよい。なお、GPUは、定型的な処理を並列的に行う用途に適しており、後述するニューラルネットワークにおける処理などに適用することで、CPU1001に比べて処理速度を向上させることも可能である。RAM1003には又、CPU1001及びGPUが各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0098】
通信部1008は、ネットワーク1020を介して、サーバ1030と双方向の通信を行うことが可能である。通信部1008は、CPU1001から提供されたデータをサーバ1030へ送信したり、サーバ1030から受信したデータをCPU1001、RAM1003及び記憶部1009などへ出力することができる。通信部1008は、他の装置との間で、アナログ信号又はディジタル信号による通信を行ってもよい。記憶部1009はCPU1001との間でデータのやり取りが可能であり、情報の保存及び消去を行う。
【0099】
入出力インターフェイス1005には、必要に応じてドライブ1010が接続されてもよい。ドライブ1010には、例えば、磁気ディスク1011、光ディスク1012、フレキシブルディスク1013又は半導体メモリ1014などの記憶媒体が適宜装着可能である。各記憶媒体から読み出されたコンピュータプログラムは、必要に応じて記憶部1009にインストールされてもよい。また、必要に応じて、CPU1001が各種の処理を実行する上において必要なデータや、CPU1001の処理の結果として得られたデータなどを各記憶媒体に記憶してもよい。
【0100】
例えば、上述の実施の形態にかかる児童支援システムが実行する処理は、端末装置T1~T4にプログラムを実行させることによって実現されてもよい。具体的には、これらの送信信号処理又は受信信号処理に関するアルゴリズムをコンピュータシステムに行わせるための命令群を含む1又は複数のプログラムを作成し、当該プログラムを端末装置T1~T4に供給すればよい。
【0101】
これらのプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0102】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0103】
(付記1)児童の複数の種類の発達障害を検出するための児童に関する情報が格納された児童データベースと、前記児童データベースから前記児童に関する情報を読み出し、読み出した前記児童に関する情報を送信する情報送信部と、前記情報送信部から送信された前記児童に関する情報に基づいて、前記複数の種類の発達障害のそれぞれの疑いが児童に有るかを検出し、検出結果を送信する検出部と、前記検出結果に基づいて、前記複数の種類の発達障害のうちから、児童が有すると疑われる発達障害の種類についての専門家による判定結果を送信する判定部と、前記判定結果に応じて、前記児童が有すると疑われる種類の発達障害について検査を促すための検査案内を送信する検査案内送信部と、前記発達障害の疑いがある児童の代理人が前記判定結果及び前記検査案内を受け取るための通信部と、を備える、児童支援システム。
【0104】
(付記2)前記検出部は、前記児童に関する情報に含まれる、前記複数の種類の発達障害のそれぞれを検出するための複数のデータセットから、前記複数の種類の発達障害のそれぞれの疑いを示す複数の評価結果を出力する、複数の情報処理部と、前記複数の情報処理部が出力した複数の前記評価結果に基づいて、前記複数の種類の発達障害のそれぞれの疑いを推定して複数の推定結果を出力する分析部と、前記複数の推定結果のそれぞれに含まれる情報から、特定の種類の発達障害の疑いを示す情報を選択し、選択結果を出力する選択処理部と、前記複数の推定結果と前記選択結果とを統合して、前記検出結果として送信する検出結果送信部と、を備える、付記1に記載の児童支援システム。
【0105】
(付記3)前記分析部は、前記複数の情報処理部が出力した複数の前記評価結果が、前記複数の種類の発達障害のそれぞれの疑いを推定に用いるのに不十分である場合、前記児童に関する情報を再度送信するように、前記情報送信部に指令する、付記2に記載の児童支援システム。
【0106】
(付記4)前記判定結果及び前記検査案内は、前記通信部に送信される、付記2又は3に記載の児童支援システム。
【0107】
(付記5)受け取った情報を転送する情報転送部を更に備え、前記判定結果及び前記検査案内は、前記情報転送部に送信され、前記情報転送部は、受け取った前記判定結果及び前記検査案内を、前記通信部に転送する、付記1乃至4のいずれか一つに記載の児童支援システム。
【0108】
(付記6)発達障害が疑われる児童を支援するための支援情報が格納された支援情報データベースと、前記検出結果に応じて、前記支援情報データベースから支援情報を読み出して、読み出した前記支援情報を送信する支援情報送信部と、を更に備える、付記1乃至5のいずれか一つに記載の児童支援システム。
【0109】
(付記7)受け取った情報を転送する情報転送部を備え、前記判定結果、前記検査案内及び前記支援情報は、前記情報転送部に送信され、前記情報転送部は、受け取った前記判定結果、前記検査案内及び前記支援情報を、前記通信部に転送する、付記6に記載の児童支援システム。
【0110】
(付記8)前記検出結果に応じて、前記支援情報データベースから支援情報を読み出して、読み出した前記支援情報を、前記通信部に送信する支援情報取得部を更に備え、前記情報転送部は、前記支援情報取得部が読み出した支援情報を前記通信部に送信する、付記7に記載の児童支援システム。
【0111】
(付記9)前記判定結果、前記検査案内及び前記支援情報は、前記通信部に送信される、付記6に記載の児童支援システム。
【0112】
(付記10)前記通信部は、前記検出結果において前記児童を識別するための情報について、前記児童を特定できる情報を用いるか否かの指令を、前記検出部に送信し、前記検出部は、前記指令に応じて、前記児童を識別するための情報として、前記児童を特定できる情報、又は、前記児童を特定できない情報を用いる、付記1乃至9のいずれか一つに記載の児童支援システム。
【0113】
(付記11)前記通信部は、前記検出部が、前記代理人にかかる前記児童に関する情報を用いることを許可するか否かの指令を、前記検出部に送信し、前記検出部は、前記指令によって許可された場合のみ、許可された前記児童に関する情報に基づいて、発達障害の疑いを検出する、付記1乃至10のいずれか一つに記載の児童支援システム。
【0114】
(付記12)児童の複数の種類の発達障害を検出するための児童に関する情報が格納された児童データベースから前記児童に関する情報を読み出し、読み出した前記児童に関する情報を送信し、送信された前記児童に関する情報に基づいて、前記複数の種類の発達障害のそれぞれの疑いが児童に有るかを検出し、検出結果を送信し、前記検出結果に基づいて、前記複数の種類の発達障害のうちから、児童が有すると疑われる発達障害の種類についての専門家による判定結果を送信し、前記判定結果に応じて、前記児童が有すると疑われる種類の発達障害について検査を促すための検査案内を送信し、前記発達障害の疑いがある児童の代理人が前記判定結果及び前記検査案内を受け取る、児童支援方法。
【符号の説明】
【0115】
1 家庭
2 調査実施機関
3 医療機関
3A 病院
3B 成育医療研究機関
4 サービス提供者
11 情報送信部
12 検出部
13 判定部
14 検査案内送信部
15 情報転送部
16 通信部
17 検出部
18 支援情報送信部
19 支援情報取得部
20 評価部
100、101、200、201、202、300、301、400、401、500、600 児童支援システム
121 LD情報処理部
122 DCD情報処理部
123 分析部
124 項目選択部
125 検出結果送信部
1001 CPU
1002 ROM
1003 RAM
1004 バス
1005 入出力インターフェイス
1006 入力部
1007 出力部
1008 通信部
1009 記憶部
1010 ドライブ
1011 磁気ディスク
1012 光ディスク
1013 フレキシブルディスク
1014 半導体メモリ
1020 ネットワーク
1030 サーバ
1000 コンピュータ
D1 検出結果
D2 判定結果
D11、D12 検出結果
DB1 児童データベース
DB2 支援情報データベース
E1、E2 推定結果
E3 項目選択結果
EG 検査案内
INF1、INF3 LD情報
INF2、INF4 DCD情報
INS 指令
REP 回答
REQ 要求
SUP 支援情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20