(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095014
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】圃場管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20240101AFI20240703BHJP
A01G 25/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
G06Q50/02
A01G25/00 501B
A01G25/00 501D
A01G25/00 501Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211989
(22)【出願日】2022-12-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年5月13日説明、WEB会議 令和4年5月16日メール送付、農林水産省(東京都千代田区霞が関1-2-1)及び農研機構(茨城県つくば市観音台3-1-3) 令和4年6月16日打ち合わせ、農林水産省(東京都千代田区霞が関1-2-1)
(71)【出願人】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】井内 友昭
(72)【発明者】
【氏名】四元 友治
(72)【発明者】
【氏名】西沢 博貴
(72)【発明者】
【氏名】伊庭 弘貴
(72)【発明者】
【氏名】末吉 康則
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC01
5L050CC01
(57)【要約】
【課題】中干状態を容易に把握することが可能な圃場管理システムを提供する。
【解決手段】圃場Hへの給水を行う給水栓を開閉する給水装置11と、給水栓の開度に関する情報を含む水管理情報を取得する取得部16aと、水管理情報、及び水管理情報に紐付けられた時間に関する時間情報に基づいて、圃場Hの中干状態を推定する推定部16bと、を具備し、推定部16bは、中干状態の推定において、圃場Hの水位がゼロの状態であるか否かを推定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場への給水を行う給水栓を開閉する給水装置と、
前記給水栓の開度に関する情報を含む水管理情報を取得する取得部と、
前記水管理情報、及び前記水管理情報に紐付けられた時間に関する時間情報に基づいて、前記圃場の中干状態を推定する推定部と、
を具備する圃場管理システム。
【請求項2】
前記推定部は、
前記中干状態の推定において、前記圃場の水位がゼロの状態であるか否かを推定する、請求項1に記載の圃場管理システム。
【請求項3】
前記推定部は、
中干しを行うために設定された設定期間において、前記圃場の中干状態を推定する、請求項1に記載の圃場管理システム。
【請求項4】
前記圃場の水を排水する排水栓を開閉する排水装置をさらに具備し、
前記水管理情報は、
前記排水栓の開度に関する情報をさらに含む、請求項1に記載の圃場管理システム。
【請求項5】
前記水管理情報は、
前記圃場の減水深に関する情報をさらに含む、請求項1に記載の圃場管理システム。
【請求項6】
前記水管理情報は、
前記圃場の水位に関する水位情報をさらに含む、請求項1に記載の圃場管理システム。
【請求項7】
前記水位情報は、
前記圃場に設けられた水位センサの計測結果、及び気象情報の少なくとも一方を含む、請求項6に記載の圃場管理システム。
【請求項8】
前記圃場を撮影した画像データと、当該圃場を識別する識別情報とを互いに関連付けて記憶する情報処理装置をさらに具備する、請求項1に記載の圃場管理システム。
【請求項9】
前記圃場の中干状態の推定結果に基づいて、前記圃場からのメタン排出量、又は、所定の基準値に対する前記圃場でのメタン減少量の少なくとも一方を算出する算出部をさらに具備する、請求項1に記載の圃場管理システム。
【請求項10】
前記算出部は、
前記メタン排出量又は前記メタン減少量の少なくとも一方の算出結果を、二酸化炭素の量に換算する、請求項9に記載の圃場管理システム。
【請求項11】
前記算出部の算出結果に関する報告書を作成する作成部をさらに具備する、請求項9に記載の圃場管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場の水を管理するための圃場管理システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場の水を管理するための圃場管理システムの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の用水管理システムは、ファームポンドに貯留された水を圃場へ供給するためのものである。前記用水管理システムは、ファームポンドの水を汲み上げて圃場へ向けて送るポンプ、及びポンプからの水を各圃場へ流入させる経路を開閉する給水栓等を具備する。このような用水管理システムを用いることで、圃場の水位を適宜管理することができる。例えば、圃場の中干しを行う場合には、圃場への給水を停止し、圃場を乾燥させることができる。
【0004】
ここで、一般的に圃場の中干しは水稲の適切な生育のために行われるものであるが、近年、圃場の中干しを行うことにより、圃場のメタン生成菌により生成されるメタンを抑制する効果も期待されている。そこで、中干しの期間を管理して水稲の生育やメタンの抑制に活用するために、中干状態を容易に把握できる技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の一態様は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、中干状態を容易に把握することが可能な圃場管理システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
本開示の一態様においては、圃場への給水を行う給水栓を開閉する給水装置と、前記給水栓の開度に関する情報を含む水管理情報を取得する取得部と、前記水管理情報、及び前記水管理情報に紐付けられた時間に関する時間情報に基づいて、前記圃場の中干状態を推定する推定部と、を具備するものである。
本開示の一態様によれば、中干状態を容易に把握することができる。
【0009】
本開示の一態様においては、前記推定部は、前記中干状態の推定において、前記圃場の水位がゼロの状態であるか否かを推定するものである。
本開示の一態様によれば、水管理情報及び時間情報に基づいて、圃場の水位がゼロの状態である期間を把握することができる。
【0010】
本開示の一態様においては、前記推定部は、中干しを行うために設定された設定期間において、前記圃場の中干状態を推定するものである。
本開示の一態様によれば、中干状態の推定結果に基づいて、設定期間中に実際に中干状態となった期間を把握することができる。
【0011】
本開示の一態様においては、前記圃場の水を排水する排水栓を開閉する排水装置をさらに具備し、前記水管理情報は、前記排水栓の開度に関する情報をさらに含むものである。
本開示の一態様によれば、圃場への給水に加えて圃場からの排水を考慮して圃場の中干状態を推定することによって、中干状態を精度よく推定することができる。
【0012】
本開示の一態様においては、前記水管理情報は、前記圃場の減水深に関する情報をさらに含むものである。
本開示の一態様によれば、圃場への給水に加えて圃場の減水深を考慮して圃場の中干状態を推定することによって、中干状態を精度よく推定することができる。
【0013】
本開示の一態様においては、前記水管理情報は、前記圃場の水位に関する水位情報をさらに含むものである。
本開示の一態様によれば、圃場への給水に加えて水位情報を考慮して圃場の中干状態を推定することによって、中干状態を精度よく推定することができる。
【0014】
本開示の一態様においては、前記水位情報は、前記圃場に設けられた水位センサの計測結果、及び気象情報の少なくとも一方を含むものである。
本開示の一態様によれば、水位センサの計測結果及び気象情報の少なくとも一方を考慮して、中干状態を精度よく推定することができる。
【0015】
本開示の一態様においては、前記圃場を撮影した画像データと、当該圃場を識別する識別情報とを互いに関連付けて記憶する情報処理装置をさらに具備するものである。
本開示の一態様によれば、画像データと識別情報とを関連付けることによって、画像データを圃場ごとに管理することができる。
【0016】
本開示の一態様においては、前記圃場の中干状態の推定結果に基づいて、前記圃場からのメタン排出量、又は、所定の基準値に対する前記圃場でのメタン減少量の少なくとも一方を算出する算出部をさらに具備するものである。
本開示の一態様によれば、算出部の処理によってメタン排出量又はメタン減少量の少なくとも一方を取得することができるため、利便性を向上することができる。
【0017】
本開示の一態様においては、前記算出部は、前記メタン排出量又は前記メタン減少量の少なくとも一方の算出結果を、二酸化炭素の量に換算するものである。
本開示の一態様によれば、算出部の処理によって二酸化炭素の量を取得することができるため、利便性を向上することができる。
【0018】
本開示の一態様においては、前記算出部の算出結果に関する報告書を作成する作成部をさらに具備するものである。
本開示の一態様によれば、利便性を向上することができる。例えば、作成部によってメタンの減少量を所轄機関等に報告するレポートを作成できるため、利便性を向上することができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示の一態様によれば、中干状態を容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】中干状態を推定する中干状態推定処理を示すフローチャート。
【
図5】中干状態に関するレポートを作成するレポート作成処理を示すフローチャート。
【
図6】レポート作成処理で作成されるレポートの一例を示す図。
【
図7】画像データを記憶するデータ記憶処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、本発明の一実施形態に係る圃場管理システム10について説明する。
【0022】
図1に示す圃場管理システム10は、圃場H(本実施形態では複数の圃場H)の水を管理するためのものである。圃場管理システム10は、給水装置11、水位水温センサ12、排水装置13、通信中継機14、作業者端末15、圃場管理サーバ16、画像管理サーバ17及びデータセンター18を具備する。
【0023】
給水装置11は、圃場Hへの給水を管理するためのものである。給水装置11は、各圃場Hに設けられる。給水装置11は、後述する通信中継機14と通信するための通信機器と、給水管Kと圃場Hとを接続する水路に設けられた給水栓と、を具備する(不図示)。給水装置11は、前記給水栓を開閉することで、圃場Hへ給水可能な状態と給水不能な状態とを切り替えることができる。また給水装置11は、給水栓の開度に応じて圃場Hへの給水量を調整することができる。加えて、給水装置11はカメラ等の撮像装置を有していてもよい。給水装置11は、撮像装置で撮影された画像データを、給水装置11を識別する情報と関連付けて記憶することができる。
【0024】
水位水温センサ12は、圃場Hの表面H1における水位(以下、「表面水位」と称する)及び水温を計測するためのものである。水位水温センサ12は、各圃場Hに設けられる。水位水温センサ12は、給水装置11と接続され、表面水位及び水温の計測結果を給水装置11へ送信することができる。
【0025】
排水装置13は、圃場Hの排水を管理するためのものである。排水装置13は、各圃場Hに設けられる。排水装置13は、通信中継機14と通信するための通信機器と、圃場Hの排水口に設けられた排水栓と、を具備する(不図示)。排水装置13は、通信機器を介して受信した信号に応じて、排水栓の仕切り体の高さを調整可能に構成される。例えば排水装置13は、表面水位よりも低い位置まで仕切り体を下げることで、圃場Hの水を排水路Cへ排出することができる。また排水装置13は、表面水位以上の高さまで仕切り体を上げることで、圃場Hからの排水を停止することができる。このようにして、圃場Hでは、仕切り体の高さ位置(上面の高さ位置)と同じ高さの水位まで、水を貯留することができる。また排水装置13は仕切り体の高さの調整により、圃場Hの排水(排水栓の開閉や排水量)を制御することができる。以下では、仕切り体の高さ位置(圃場Hに貯留可能な水位)を、「排水ゲート高さ」と称する。
【0026】
なお圃場管理システム10は、必ずしも遠隔操作可能な排水装置13を具備する必要はない。例えば圃場管理システム10は、排水装置13にかえて、遠隔操作不能な排水装置を具備してもよい。当該排水装置は、例えば操作具を操作することによって(手動で)排水ゲート高さを調整することができる。
【0027】
通信中継機14は、無線通信可能な機器である。通信中継機14は、無線通信により、給水装置11、排水装置13及び後述する圃場管理サーバ16との間で情報をやり取りすることができる。
【0028】
作業者端末15は、作業者が所有する端末である。作業者端末15は、演算処理を実行可能な演算装置、プログラム等が記憶された記憶装置、情報を入力可能な入力装置及び演算処理の結果等を表示可能な出力装置等を具備する。作業者端末15は、作業者が携帯可能な機器、例えばスマートフォンやタブレット端末等によって構成される。
【0029】
作業者端末15は、GPS衛星や携帯電話基地局からの信号を受信することによって、自身の位置情報(緯度及び経度)を検出することができる。また作業者端末15には、カメラが内蔵される。作業者端末15は、カメラで撮影された画像データに、自身の位置情報を関連付けて記憶することができる。これによって、画像データがどこで撮影されたのかを把握することができる。
【0030】
圃場管理サーバ16は、圃場Hの給排水に関する処理を行うためのものである。圃場管理サーバ16は、クラウドサーバ(厳密にはクラウドサーバ内に仮想的に構築されたサーバ)により構成される。圃場管理サーバ16は、通信中継機14を介して給水装置11または排水装置13との間で情報をやり取りすることができる。圃場管理サーバ16は、給水装置11または排水装置13から信号を受信することで、種々の情報を取得することができる。例えば圃場管理サーバ16は、給水装置11からの信号に基づいて、給水栓の開度や水位水温センサ12の計測結果等を取得することができる。また圃場管理サーバ16は、排水装置13からの信号に基づいて現在の排水ゲート高さ等を取得することができる。
【0031】
また圃場管理サーバ16は、給水装置11または排水装置13へ信号を送信することで、圃場Hの給排水を制御することができる。例えば圃場管理サーバ16は、給水装置11へ信号を送信することで給水栓を開閉し、圃場Hへ給水可能な状態と給水不能な状態との切り替えや給水栓の開度を調整することができる。また圃場管理サーバ16は、排水装置13へ信号を送信することで、排水ゲート高さを調整することができる。なお圃場管理サーバ16は、給水装置11または排水装置13の少なくとも一方と信号を送受信するものであればよく、例えば給水装置11及び排水装置13の双方と信号を送受信することも可能である。圃場管理サーバ16は、このような給排水の制御によって、作物の生育ステージに応じた水位(設定水位)となるように、表面水位を調整することができる。以下、表面水位を調整する処理の一例について説明する。
【0032】
圃場管理サーバ16は、給水栓を開いて圃場Hの表面水位を設定水位まで上昇させる。その後圃場管理サーバ16は、給水栓を閉じて圃場Hへの給水を停止する。圃場Hの水は土に浸透したり乾燥したりするので、給水の停止によって圃場Hの表面水位は徐々に下がる。圃場管理サーバ16は、設定水位から所定の閾値以上表面水位が下がった場合に、圃場Hへの給水を再開して圃場Hの水位を設定水位に戻す。圃場管理サーバ16は、こうした給水及び給水停止を繰り返すことで、作物の生育ステージに適した水位となるように表面水位を調整する。なお、上述した表面水位の調整方法(制御方法)は一例であり、種々のパラメータに従って任意の方法で表面水位を調整することが可能である。また圃場Hに遠隔で操作可能な排水栓がない場合は、固定の排水ゲート高さを基準とし、排水栓がある場合は、調整した排水ゲート高さを基準として、前述する水位の調整を行うことが可能である。
【0033】
圃場管理サーバ16は、インターネット回線等を介して作業者端末15との間で相互に情報をやり取りすることができる。例えば、圃場管理サーバ16は、作業者端末15からの要求に応じて作業者端末15に信号を送信することで、所定の情報(表面水位等)を作業者端末15に通知することができる。また例えば圃場管理サーバ16は、作業者端末15からの要求に応じて給水装置11に信号を送信することで、作業者端末15の操作に応じて給水栓を開閉することができる。
【0034】
画像管理サーバ17は、作業者端末15で撮影された画像データに関する処理を行うためのものである。画像管理サーバ17は、例えば、クラウドサーバにより構成される。画像管理サーバ17は、インターネット回線等を介して作業者端末15及びデータセンター18の間で相互に情報をやり取りすることができる。
【0035】
データセンター18は、圃場Hや圃場管理システム10に関する種々の情報を記憶するための施設である。データセンター18には、情報を記憶するための記憶装置(例えば、大容量ストレージ)が設けられ、当該記憶装置に水位水温センサ12の計測結果や排水ゲート高さを変更した履歴等が記憶される。データセンター18では、圃場管理サーバ16及び画像管理サーバ17から送信された情報を前記記憶装置に記憶させることができる。またデータセンター18では、圃場管理サーバ16及び画像管理サーバ17から要求があった場合に、前記記憶装置に記憶された情報を圃場管理サーバ16及び画像管理サーバ17へ送信することができる。
【0036】
ここで、圃場Hで水稲を生育する場合、水稲の過剰な生育を抑制する等の目的で中干しが行われる。圃場管理システム10で中干しを行う場合、給水装置11による圃場Hへの給水が停止され、圃場Hが乾かされる。
【0037】
本実施形態では、中干しのために給水を停止する期間を、作業者端末15の操作に応じて設定可能に構成される。以下では、この期間を「設定期間」と称する。作業者は、例えば、給水を停止する日時と、給水を再開する日時とを作業者端末15に入力することで、設定期間を設定することができる。
【0038】
設定期間中は圃場Hへの給水が停止されるため、時間の経過に伴って圃場Hの表面水位が低下する。表面水位の低下によって圃場Hが乾かされる(中干しされた状態になる)と、水稲の分げつ等を抑制し、当該水稲の過剰な生育を抑制することができる。また、中干状態になると嫌気性細菌であるメタン生成菌の活動が抑制され、圃場Hから排出されるメタンの量を減らすことができる。
【0039】
水稲の生育のために推奨される中干しの期間は、地域や品種等に応じて予め設定されている。例えば「8日程度」など、圃場Hごとに適切と思われる中干しの期間が設定されている。ここで、メタンは温室効果ガスであるため、中干しを通常(上記推奨期間(8日程度))よりも延長することで、温室効果ガスの排出を抑制することができる。また作業者は、温室効果ガスの排出抑制についてのプロジェクト(例えば、Jクレジット)に参加して中干しを延長したことを証明することで、当該プロジェクトの規定に応じた報酬を受け取ることができる。中干しの延長を証明するためには、通常よりも長期間にわたって中干しされたことを示す証拠が必要となる。
【0040】
本実施形態の圃場管理システム10は、圃場Hの中干状態を推定可能に構成される。そこで作業者は、当該中干状態の推定結果を証拠として用いることで、中干しの延長を証明することができる。以下では
図2を参照し、中干状態の推定に関する構成について説明する。
【0041】
圃場管理サーバ16は、取得部16a及び推定部16bを具備する。取得部16aは、中干状態の推定に必要な各種情報(後述する給水栓開度情報18a等)をデータセンター18から取得するためのものである。推定部16bは、中干状態を推定する計算処理を行うためのものである。
【0042】
画像管理サーバ17は、取得部17a、算出部17b及び作成部17cを具備する。取得部17aは、算出部17b及び作成部17cの処理に必要な各種情報(後述する圃場情報18d等)を作業者端末15またはデータセンター18から取得するためのものである。算出部17bは、中干しの延長によって抑制されたメタンの減少量を算出するためのものである。作成部17cは、中干状態に関するレポートR(
図6参照)を作成するためのものである。なお取得部17aは、作業者端末15またはデータセンター18の少なくとも一方から情報を取得するものであればよく、例えば作業者端末15及びデータセンター18の双方から情報を取得することも可能である。また、画像管理サーバ17は圃場管理サーバ16と一体のサーバであってもよいし、別々のサーバで構成されてもよい。
【0043】
データセンター18には、給水栓開度情報18a、排水栓開度情報18b、水位情報18c、圃場情報18d、画像情報18e及び推定結果情報18fが記憶される。
【0044】
給水栓開度情報18aは、給水栓の開度の履歴である。給水栓の開度は、例えば、給水栓を閉じた状態を0%、完全に開いた状態を100%としたパーセンテージで示される。給水栓開度情報18aは、各圃場Hに設けられた給水栓ごとに管理される。給水栓開度情報18aは、例えば、圃場Hを識別する圃場識別情報、給水栓を識別する給水栓識別情報、給水栓の開度、給水栓の開度が変更された日時等が互いに関連付けられた情報となっている。給水栓開度情報18aは、給水栓の開度が変更されるたびに作成され、データセンター18に記憶される。
【0045】
排水栓開度情報18bは、排水栓の開度の履歴である。本実施形態では、排水栓の開度は、排水ゲート高さで示される。排水開度情報は、各圃場Hに設けられた排水栓ごとに管理される。排水栓開度情報18bは、例えば、圃場識別情報、排水栓を識別する排水栓識別情報、排水栓の開度、排水栓の開度が変更された日時等が互いに関連付けられた情報となっている。排水栓開度情報18bは、排水ゲート高さが変更されるたびに作成され、データセンター18に記憶される。なお、遠隔操作可能な排水装置13にかえて、手動で排水ゲート高さを調整する排水装置が圃場Hに設けられる場合には、手動で調整された排水ゲート高さを作業者端末15等より入力することでデータセンター18の排水栓開度情報18bに排水栓の開度を記憶することが可能である。
【0046】
水位情報18cは、圃場Hの表面水位の履歴である。水位情報18cは、圃場Hごとに管理される。本実施形態の水位情報18cは、例えば、圃場識別情報、水位水温センサ12を識別するセンサ識別情報、水位水温センサ12による表面水位の計測結果、表面水位を計測した日時等が互いに関連付けられた情報となっている。水位情報18cは、水位水温センサ12が表面水位を計測するたびに作成され、データセンター18に記憶される。
【0047】
圃場情報18dは、圃場固有の情報である。圃場情報18dは、例えば、圃場識別情報、圃場Hの位置情報、圃場Hの面積、還元基準メタン発生量、酸化基準メタン発生量等が互いに関連付けられた情報となっている。還元基準メタン発生量は、圃場Hに水が張られて酸素が少ない還元状態における、圃場Hでの単位面積及び単位時間当たりのメタン発生量である。酸化基準メタン発生量は、圃場Hが乾燥して酸素が多い酸化状態における、圃場Hでの単位面積及び単位時間当たりのメタン発生量である。還元基準メタン発生量及び酸化基準メタン発生量は、例えば、圃場Hに関する情報(土壌の性質や状態、地域等)や実験等に基づいて設定することができる。圃場情報18dは、予めデータセンター18に記憶される。
【0048】
画像情報18eは、作業者端末15のカメラで圃場Hを撮影した画像データに関する情報である。画像情報18eは、圃場Hごとに管理される。画像情報18eは、例えば、圃場識別情報、圃場Hの位置情報、画像データ、画像データの撮影日時等が互いに関連付けられた情報となっている。画像情報18eは、画像管理サーバ17の処理によってデータセンター18に記憶される。
【0049】
推定結果情報18fは、中干状態の推定結果を判断可能な情報である。推定結果情報18fは、圃場Hごとに管理される。推定結果情報18fは、例えば、圃場識別情報、中干状態の推定結果等が互いに関連付けられた情報となっている。
【0050】
圃場管理サーバ16は、データセンター18に記憶される情報に基づいて、異常を報知可能に構成される。具体的には圃場管理サーバ16は、給水栓開度情報18a及び排水栓開度情報18bに基づいて圃場Hの表面水位を推定する。圃場管理サーバ16は、当該推定結果が、水位水温センサ12の計測結果(計測された表面水位)と所定の閾値以上異なる場合に、表面水位についての異常を検知して作業者端末15等に通知する。これによって、圃場管理システム10の異常(例えば水位水温センサ12の位置ずれ、故障等)に速やかに対応することができる。
【0051】
以下では
図3及び
図4を参照し、圃場Hの中干状態を推定するための中干状態推定処理について説明する。中干状態推定処理は、例えば設定期間(給水が停止される期間)中に、圃場管理サーバ16によって実行される。
図3に示すように、圃場管理サーバ16は、中干状態推定処理が実行されると、ステップS10へ移行する。
【0052】
ステップS10において、圃場管理サーバ16の取得部16aは、中干状態の推定に必要な情報をデータセンター18から取得する。本実施形態では、取得部16aは、設定期間における給水栓の開度の履歴(開度、開度の変更時間)をデータセンター18の給水栓開度情報18aから取得する。ステップS10の処理が終了すると、圃場管理サーバ16は、ステップS20へ移行する。
【0053】
ステップS20において、圃場管理サーバ16の推定部16bは、ステップS10で取得された給水栓の開度の履歴に基づいて、圃場Hの中干状態を推定する。この際推定部16bは、設定期間中の中干状態を推定する。圃場Hの表面水位がゼロになると中干しの効果が得られると考えられるため、本実施形態の推定部16bは、ステップS20において、圃場Hの表面水位がゼロの状態であるか否かを推定する。以下、
図4を用いてステップS20の処理の一例について説明する。
【0054】
上述の如く、設定期間中は圃場Hへの給水が停止されるため、時間の経過に伴って圃場Hの表面水位が下がる。そこで推定部16bは、まずステップS10で取得した給水栓の開度の履歴に基づいて、設定期間の中で圃場Hへの給水が停止された(給水栓の開度が0%になった)給水停止時期を特定する。なお本実施形態では設定期間になると圃場管理サーバ16の処理によって給水栓が閉じられるため、給水停止時期は、設定期間の開始時期と一致する。
【0055】
推定部16bは、給水停止時期を特定すると、当該給水停止時期から、予め設定された移行期間が経過した時点で圃場Hの表面水位がゼロになったと判断し、その時点を中干開始時期とする。また推定部16bは、当該中干開始時期以降は、圃場Hの表面水位がゼロの状態であると推定する。なお前記移行期間は、圃場Hへの給水が停止されてから中干状態に移行するまでの期間を示すものであり、例えば中干しの直前(分げつ期)における設定水位等に基づいて設定される。
【0056】
設定期間が終了すると、圃場管理サーバ16によって自動的に圃場Hへの給水が再開される。このため推定部16bは、中干開始時期から給水が再開されるまでの期間を中干期間であると推定する。なお、給水栓は作業者端末15の操作に応じて開閉可能であることから、設定期間の途中で作業者端末15の操作(手動)によって圃場Hへの給水が再開される可能性もある。この場合、推定部16bは、中干開始時期から圃場Hへの給水が手動で再開されるまでの期間を中干期間とする。
図3に示すように、ステップS20の処理が終了すると、圃場管理サーバ16は、ステップS30へ移行する。
【0057】
ステップS30において、推定部16bは、ステップS20での中干状態(中干期間)の推定結果を作業者端末15に送信する。これにより、作業者端末15に中干状態の推定結果が通知される。ステップS30の処理が終了すると、圃場管理サーバ16は、中干状態推定処理を終了する。
【0058】
上述のステップS10からステップS30までの処理は、設定期間においてリアルタイムに実行することができる。例えば上述の処理を所定の時間間隔(数時間ごと等)で実行することができる。これによって、例えば作業者は所望のタイミングで現在の圃場Hの状態を、作業者端末15を用いて確認することができる。また、上記ステップS10からステップS30までの処理を一括して行うこともできる。例えば設定期間が終了した後に、各種情報(給水栓の開度等)の履歴を用いて、終了した設定期間における中干状態(中干期間)を推定することができる。なお中干状態の推定結果は、適宜のタイミング、例えばステップS30の際等に、圃場Hの識別情報と関連付けられてデータセンター18の推定結果情報18fに記憶される。
【0059】
本実施形態では、中干状態推定処理を行うことで、作業者が設定期間中に圃場Hに何度も足を運ぶことなく、中干状態を容易に把握することができる。これによって、作業者の負担を低減することができる。
【0060】
また、中干しを延長すると中干期間の推定結果が通常(8日程度)の中干期間よりも長くなる。この延長された中干期間は、中干期間の推定結果にも反映されるため、推定結果を用いて中干しの延長を証明することができる。
【0061】
また給水栓の開度は、比較的外的要因(地震等)の影響を受けて変動し難いため、給水栓の開度に基づいて中干状態を推定することで、中干状態を精度よく推定することができる。
【0062】
なお、ステップS20において推定部16bは、給水栓の開度に加えて、その他の情報を用いて中干状態を推定可能である。例えば推定部16bは、給水栓の開度に加えて、排水ゲート高さ、減水深、気象情報及び表面水位の少なくとも1つを用いて中干状態を推定可能である。以下、具体的に説明する。
【0063】
まず、排水ゲート高さを用いた中干状態の推定の一例について説明する。排水ゲート高さが表面水位よりも低い位置まで下げられると、圃場Hの水が排出される。こうして設定期間中に圃場Hで排水が行われることにより、圃場Hの表面水位を速い速度で下げることができるため、圃場Hを早く乾かす(中干開始時期を早める)ことができる。
【0064】
そこで推定部16bは、排水ゲート高さの履歴(排水栓開度情報18b)に基づいて、ステップS20で中干開始時期の特定に用いられる移行期間(
図4参照)を補正する。例えば推定部16bは、排水ゲート高さの下降量に応じて移行期間を短くする。これによって推定部16bは、圃場Hの排水の状況に応じて中干開始時期を精度よく推定することができる。
【0065】
次に、減水深を用いた中干状態の推定の一例について説明する。減水深とは、単位時間当たりにどの程度水位が減少するかを示す指標である。減水深は、圃場Hごとに異なるため、例えばデータセンター18の圃場情報18dに予め記憶されている。減水深が大きい場合、給水を停止すると圃場Hの表面水位が速い速度で下がるため、圃場Hが速く乾くこととなる。一方、減水深が小さい場合、給水を停止しても圃場Hの表面水位が下がる速度が遅いため、圃場Hが速く乾かず、中干開始時期が比較的遅いものとなる。
【0066】
推定部16bは、ステップS20において、各圃場Hで共通の期間(移行期間)を用いるのではなく、各圃場Hの減水深に基づいて中干開始時期を推定する。これによって、減水深に基づいて、中干開始時期を精度よく推定することができる。
【0067】
ここで、減水深は、圃場Hの土の乾き具合に応じて変化する。例えば圃場Hの土が比較的乾いている場合、圃場Hに貯留される水が比較的速い速度で浸透するため、減水深が大きくなる。上述の如く、減水深が大きいと圃場Hが速く乾くこととなるため、中干開始時期が比較的早いものとなる。そこで推定部16bは、設定期間直前の減水深に基づいて、中干開始時期を推定することも可能である。以下、その一例について説明する。
【0068】
上述の如く、圃場管理サーバ16は、圃場Hへの給水及び給水停止を繰り返すことで、圃場Hの表面水位を調整している。そこで推定部16bは、設定期間の直前に圃場Hへの給水を停止してからの表面水位の低下の履歴(水位情報18c)に基づいて、設定期間直前の減水深を算出する。推定部16bは、当該設定期間直前の減水深を用いて中干開始時期を推定することで、圃場Hの土の乾き具合を考慮して、中干開始時期を精度よく推定することができる。
【0069】
次に、気象情報を用いた中干状態の推定の一例について説明する。設定期間において圃場Hの表面水位がゼロになったとしても、雨等によって一時的に圃場Hに水が溜まる場合がある。そこで推定部16bは、圃場Hを含むエリアの時間帯ごとの降水量に基づいて、圃場Hに水が溜まったと考えられる期間を抽出する。推定部16bは、当該抽出期間については、中干状態でないと推定する。また推定部16bは、当該推定期間を除外して中干期間を推定することで、雨等の影響を考慮して中干期間を精度よく推定することができる。
【0070】
また気象条件(例えば、晴天、高温、湿度が低い等)によって圃場Hが乾き易い(中干開始時期が早まる)ため、推定部16bは、圃場Hを含むエリアの天気に応じて、ステップS20において中干開始時期の特定に用いられる移行期間(
図4参照)を補正することも可能である。これによって推定部16bは、天気に応じて中干開始時期を精度よく推定することができる。
【0071】
次に、表面水位を用いた中干状態の推定の一例について説明する。上述の如く、設定期間において圃場Hの表面水位がゼロになったとしても、給水以外の要因、例えば雨等によって一時的に圃場Hに水が溜まる場合がある。そこで推定部16bは、水位水温センサ12の計測結果に基づいて、一時的に圃場Hに水が溜まったと考えられる期間を抽出する。推定部16bは、当該抽出期間については、中干状態でないと推定する。推定部16bは、当該抽出期間を除外して中干期間を推定することで、雨等の影響を考慮して中干期間を精度よく推定することができる。なお、表面水位を用いて中干状態を推定する場合、雨以外の要因で圃場Hに水が溜まった期間も抽出することができるため、当該期間に基づいて中干期間を精度よく推定することができる。
【0072】
また推定部16bは、上述した排水ゲート高さ、減水深、気象情報及び表面水位を組み合わせて、中干状態を推定することも可能である。例えば推定部16bは、減水深に基づいて中干開始時期を特定する。そして推定部16bは、表面水位に基づいて圃場Hに一時的に雨が溜まった期間を抽出し、当該抽出期間を除外して中干期間を推定する。こうして推定部16bは、減水深及び表面水位を組み合わせて中干状態を推定することができる。
【0073】
以下では
図5及び
図6を参照し、中干状態に関するレポートRを作成するレポート作成処理について説明する。本実施形態のレポートRは、例えば中干しを延長したことを証明する用途に用いられる。
【0074】
レポート作成処理は、中干状態推定処理が終了した後で画像管理サーバ17によって適宜実行される。例えば、作業者端末15から画像管理サーバ17に対してレポート作成処理の実行が要求された場合に実行される。
図5に示すように、画像管理サーバ17は、レポート作成処理が実行されると、ステップS110へ移行する。
【0075】
ステップS110において、画像管理サーバ17の取得部17aは、中干状態推定処理で求められた中干状態の推定結果をデータセンター18の推定結果情報18fから取得する。ステップS110の処理が終了すると、画像管理サーバ17は、ステップS120へ移行する。
【0076】
ステップS120において、画像管理サーバ17の取得部17aは、レポートRの作成に必要な圃場固有の情報を、データセンター18の圃場情報18dから取得する。本実施形態では、圃場Hの面積、還元基準メタン発生量及び酸化基準メタン発生量を取得する。ステップS120の処理が終了すると、画像管理サーバ17は、ステップS130へ移行する。
【0077】
ステップS130において、画像管理サーバ17の算出部17bは、ステップS110・S120の取得結果に基づいて、設定期間における圃場Hでのメタン減少量を算出する。上述の如く、中干しを通常(8日程度)よりも延長することで、メタンの排出を抑制することができる。ステップS130で算出されるメタン減少量は、中干しを通常よりも延長することで、通常よりもどの程度メタンの排出を抑制できたのかを示す値である。以下、メタン減少量を算出するステップS130の処理の一例を説明する。
【0078】
まず算出部17bは、通常の中干しで想定される中干状態の期間を取得する。この通常の中干期間は、例えば、前述のように、圃場Hごとに設定された適切な中干しの期間(8日程度など)を用いることができる。算出部17bは、当該通常の中干期間と、ステップS110で取得された中干期間との差、すなわち中干しの延長によって中干状態が延びた期間(延長期間)を算出する。
【0079】
そして算出部17bは、延長期間、ステップS120で取得された還元メタン発生量、圃場Hの面積を乗算することで、中干しを延長した場合の延長期間におけるメタン発生量を算出する。また算出部17bは、ステップS120で取得された酸化メタン発生量を用いて、通常の中干しを行う場合における延長期間のメタン発生量を算出する。算出部17bは、これらメタン発生量の差を算出することで、設定期間の延長によるメタン減少量を算出する。ステップS130の処理が終了すると、画像管理サーバ17は、ステップS140へ移行する。
【0080】
ステップS140において、画像管理サーバ17の算出部17bは、ステップS130で算出したメタン減少量を、二酸化炭素の減少量に換算する。本実施形態では、算出部17bは、地球温暖化係数に基づいてメタン減少量を二酸化炭素の減少量に換算する。
【0081】
地球温暖化係数とは、二酸化炭素の発生による温室効果の強さを基準として、他の温室効果ガスの温室効果の強さがどの程度のものであるかを示すものである。メタンの地球温暖化係数は、25とされている。算出部17bは、ステップS130で算出したメタン減少量とメタンの地球温暖化係数(25)とを乗算することで、メタン減少量を二酸化炭素の減少量に換算する。ステップS140の処理が終了すると、画像管理サーバ17は、ステップS150へ移行する。
【0082】
ステップS150において、画像管理サーバ17の作成部17cは、中干状態に関するレポートRを作成する。この際作成部17cは、例えば、所定の機関に提出する書類の様式に合うようなレポートRを作成する。例えば、メタン減少量に応じた報酬を受け取るために、温室効果ガスの排出抑制についてのプロジェクト(例えば、Jクレジット)で用意された書類のテンプレートの空欄に各種情報を自動入力することで、レポートRを作成する。
【0083】
図6に一例で示すように、作成部17cは、圃場Hの名称や、ステップS130で算出されたメタンの減少量や、ステップS140で算出された二酸化炭素の減少量や、中干状態推定処理で推定された中干期間等を含むレポートRを作成する。作成部17cは、作成されたレポートRを作業者端末15に送信する。ステップS150の処理が終了すると、画像管理サーバ17は、レポート作成処理を終了する。
【0084】
レポート作成処理によって、作業者がレポートRを作成する手間を省くことができるため、利便性を向上することができる。なお、画像管理サーバ17は、レポート作成処理で作成されたレポートRのデータを、所定の機関に送信することも可能である。これにより、作業者がレポートRを提出する手間を省くことができるため、利便性をさらに向上することができる。
【0085】
ここで、所定の機関に提出するためのレポートRには、設定期間を延長したことを証明するために、圃場Hの表面H1や給水栓を撮影した画像データが貼り付けられることも想定される。しかしながらスマートフォンやタブレット端末のカメラで撮影が行われると、一般的に画像データは、1つのフォルダに格納されることから、複数の圃場Hを1つの作業者端末15のカメラで撮影すると、画像データの管理が煩雑になってしまう。
【0086】
そこで本実施形態では、画像管理サーバ17のデータ記憶処理により、データセンター18で圃場Hごとに画像データを管理可能に構成されている。
【0087】
以下では
図2及び
図7を参照し、データ記憶処理について説明する。データ記憶処理は、データセンター18の記憶装置に画像データを記憶させるための処理である。データ記憶処理は、例えば、作業者端末15のカメラによって圃場Hが撮影された後で、画像管理サーバ17によって適宜実行される。例えば、作業者端末15から画像管理サーバ17に対してデータ記憶処理の実行が要求された場合に実行される。
図7に示すように、画像管理サーバ17は、データ記憶処理が実行されると、ステップS210へ移行する。
【0088】
ステップS210において、画像管理サーバ17の取得部17aは、作業者端末15から画像データを取得する。当該画像データには、撮影日時及び撮影場所の情報(撮影時の作業者端末15の位置情報)が関連付けられている。ステップS210の処理が終了すると、画像管理サーバ17は、ステップS220へ移行する。
【0089】
ステップS220において、画像管理サーバ17の取得部17aは、ステップS210で取得した画像データと、圃場識別情報とを関連付けた情報をデータセンター18に送信する。以下、ステップS220の処理の一例を説明する。
【0090】
まず取得部17aは、各圃場Hの位置情報及び圃場識別情報を、データセンター18の圃場情報18dから取得する。そして取得部17aは、ステップS210で取得した画像データに関連付けられた撮影場所の情報、及び各圃場Hの位置情報の取得結果に基づいて、画像データがどの圃場Hを撮影したものであるかを特定する。その後取得部17aは、特定した圃場Hの識別情報を、ステップS210で取得した画像データ、撮影時間等に関連付けた情報をデータセンター18に送信する。ステップS220の処理が終了すると、画像管理サーバ17は、データ記憶処理を終了する。
【0091】
データ記憶処理によって、画像管理サーバ17から送信された情報が
図2に示すデータセンター18の画像情報18eとして記憶され、データセンター18で圃場Hごとに画像データを管理することができる。
【0092】
こうして画像データが圃場Hごとに管理されることにより、利便性を向上させることができる。例えば、各圃場Hのうち、作業者が選択した一部の圃場Hを撮影した画像データのみを作業者端末15に表示させることができる。また、撮影日時の順に画像データを並べることもできる。また作業者端末15の操作に応じて、並べられた画像データをレポートRに貼り付けることもできる。これによって、画像データを用いたレポートRの作成を容易に行うことができ、利便性を向上させることができる。
【0093】
本実施形態では、上述したような画像データを管理するサーバ(画像管理サーバ17)を、圃場Hの給排水を管理するサーバ(圃場管理サーバ16)とは別に構築している。こうしてサーバを分けることにより、一方のサーバに障害が発生した場合でも、他方のサーバは継続して稼働するため、障害に対するリスクを分散することができる。
【0094】
なお、給水装置11は、配水池に貯留される水をそのまま圃場Hに供給するのではなく、水に空気を含ませて圃場Hに供給することも可能である。例えば、給水装置11の近傍に泡発生装置を設置して、直径が1μm以上かつ100μm未満の泡(マイクロバブル)、直径が1μm未満の泡(ウルトラファインバブル)等を含む水を圃場Hに供給することも可能である。これによって、圃場Hに水を張る場合に、圃場Hの水に多くの空気を含ませることができる。上述の如く、メタン生成菌は嫌気性細菌であるため、圃場Hの水に多くの空気を含ませることで、中干しとは異なる時期においてもメタン生成菌の活動を抑制し、圃場Hからのメタンの排出量を減少させることができる。
【0095】
以上の如く、本実施形態に係る圃場管理システム10は、圃場Hへの給水を行う給水栓を開閉する給水装置11と、前記給水栓の開度に関する情報を含む水管理情報(本実施形態では、給水栓開度情報18aに記憶される開度)を取得する取得部16aと、前記水管理情報、及び前記水管理情報に紐付けられた時間に関する時間情報(本実施形態では、給水栓開度情報18aに記憶される開度の変更時間)に基づいて、前記圃場Hの中干状態を推定する推定部16bと、を具備するものである。
【0096】
このように構成することにより、中干状態を容易に把握することができる。
【0097】
また、前記推定部16bは、前記中干状態の推定において、前記圃場の水位がゼロの状態であるか否かを推定するものである。
【0098】
このように構成することにより、圃場Hの水位がゼロの状態である期間(中干期間)を把握することができる。
【0099】
また、前記推定部16bは、中干しを行うために設定された設定期間において、前記圃場Hの中干状態を推定するものである(ステップS20)。
【0100】
このように構成することにより、中干状態の推定結果に基づいて、設定期間中に実際に中干状態となった期間(中干期間)を把握することができる。
【0101】
また、前記圃場管理システム10は、前記圃場Hの水を排水する排水栓を開閉する排水装置13をさらに具備し、前記水管理情報は、前記排水栓の開度に関する情報をさらに含むものである。
【0102】
このように構成することにより、圃場Hからの排水を考慮して、中干状態を精度よく推定することができる。
【0103】
また、前記水管理情報は、前記圃場Hの減水深に関する情報をさらに含むものである。
【0104】
このように構成することにより、圃場Hの減水深を考慮して、中干状態を精度よく推定することができる。
【0105】
また、前記水管理情報は、前記圃場Hの水位に関する水位情報をさらに含むものである。
【0106】
このように構成することにより、水位情報を考慮して中干状態を精度よく推定することができる。
【0107】
また、前記水位情報は、前記圃場Hに設けられた水位水温センサ12(水位センサ)の計測結果、及び気象情報の少なくとも一方を含むものである。
【0108】
このように構成することにより、水位水温センサ12の計測結果及び気象情報の少なくとも一方を考慮して、中干状態を精度よく推定することができる。
【0109】
また、前記圃場管理システム10は、前記圃場Hを撮影した画像データと、当該圃場Hを識別する識別情報(圃場識別情報)とを互いに関連付けて記憶する画像管理サーバ17(情報処理装置)をさらに具備するものである。
【0110】
このように構成することにより、画像データを圃場Hごとに管理することができる。
【0111】
また、前記圃場管理システム10は、前記圃場Hの中干状態の推定結果に基づいて、前記圃場Hからのメタン排出量、又は、所定の基準値(通常の中干しを行う場合のメタン減少量)に対する前記圃場Hでのメタン減少量の少なくとも一方を算出する算出部17bをさらに具備するものである。
【0112】
このように構成することにより、算出部17bの処理によってメタン排出量又はメタン減少量の少なくとも一方を取得することができるため、利便性を向上することができる。
【0113】
また、前記算出部17bは、前記メタン排出量又は前記メタン減少量の少なくとも一方の算出結果を、二酸化炭素の量に換算するものである(ステップS140)。
【0114】
このように構成することにより、算出部17bの処理によって二酸化炭素の量を取得することができるため、利便性を向上することができる。
【0115】
また、前記圃場管理システム10は、前記算出部17bの算出結果に関するレポートR(報告書)を作成する作成部17cをさらに具備するものである。
【0116】
このように構成することにより、利便性を向上することができる。例えば、作成部17cによってメタンの減少量を所轄機関等に報告するレポートRを作成できるため、利便性を向上することができる。
【0117】
なお、本実施形態に係る水位水温センサ12は、本発明に係る水位センサの実施の一形態である。
また、画像管理サーバ17は、本発明に係る情報処理装置の実施の一形態である。
【0118】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0119】
例えば、本実施形態では、中干状態の推定対象となる時期が中干しのための設定期間であるものとしたが、設定期間に限らず任意の時期において、中干状態を推定可能である。
【0120】
また推定部16bは、中干状態の推定に加えて、中干しに関するその他の計算処理を実行することも可能である。例えば推定部16bは、設定期間中の中干状態に応じて、中干しの終了推奨時期を算出することも可能である。
【0121】
具体的には、圃場Hが長期間乾燥すると水稲の根が傷み、収量が減少するおそれがある。一方、圃場Hの乾燥期間が短いと、温室効果ガス(メタン)の排出抑制効果が不十分となるおそれがある。そこで推定部16bは、設定期間の最中に中干開始時期を特定し、当該中干開始時期から所定期間後の時点を、中干しの終了推奨時期として算出する。なお所定期間は、圃場Hに関する情報(土壌の性質や状態、地域等)や当該圃場Hで生育される水稲の種類等に応じて適宜設定される。より詳細には、所定期間は、中干しの延長によるメタンの排出抑制の効果を奏すると共に、収量の減少の影響が小さい期間が設定される。中干しの終了推奨時期の算出結果が作業者端末15に報知されることで、作業者は、設定期間の延長によってメタンの排出を抑制しながらも、収量に与える影響を小さくすることができる中干しの終了時期を把握することができる。
【0122】
また圃場管理サーバ16は、設定期間ではなく、上述した中干しの終了推奨時期の算出結果に基づいて、中干しを自動的に終了してもよい。これによって中干しを適切なタイミングで自動的に終了することができる。
【0123】
また本実施形態では、データセンター18の記憶装置に画像データ等の各種情報が記憶されるものとしたが、各種情報が記憶される機器は、特に限定されない。例えば圃場管理サーバ16、画像管理サーバ17等に各種情報が記憶されてもよい。また各種情報が複数のサーバに分散して記憶されてもよい。
【0124】
また本実施形態では、画像データを管理するサーバ(画像管理サーバ17)を、圃場Hの給排水を管理するサーバ(圃場管理サーバ16)とは別に構築するものとしたが、圃場管理システム10におけるサーバ構成は特に限定されない。例えば、画像データの管理及び圃場Hの給排水の管理を、共通のサーバで行うものとしてもよい。
【0125】
また算出部17bは、ステップS130において設定期間の延長によるメタンの減少量を算出するものとしたが、設定期間の延長によってどの程度メタンの発生が抑制されたのかを判断可能なその他の情報を算出してもよい。例えば算出部17bは、設定期間中の圃場Hからのメタン排出量を算出してもよい。
【符号の説明】
【0126】
10 圃場管理システム
11 給水装置
16a 取得部
16b 推定部
H 圃場