(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095015
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】圃場管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20240101AFI20240703BHJP
A01G 25/00 20060101ALI20240703BHJP
A01G 27/00 20060101ALI20240703BHJP
A01G 22/22 20180101ALI20240703BHJP
【FI】
G06Q50/02
A01G25/00 501Z
A01G27/00 504B
A01G22/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211990
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】井内 友昭
(72)【発明者】
【氏名】四元 友治
(72)【発明者】
【氏名】西沢 博貴
(72)【発明者】
【氏名】伊庭 弘貴
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC01
5L050CC01
(57)【要約】
【課題】圃場でメタンが生成され難い状態であるか否かを把握することが可能な圃場管理システムを提供する。
【解決手段】圃場Hの土中の水分量を計測する水分量計測部と、水分量計測部の計測結果に基づいて、メタン生成菌の活動の活発さの程度を示す生成菌活動度を推定する推定部17bと、を具備し、土中の水分量は、土中の湿度及び圃場Hの地下水位の少なくとも一方を含み、推定部17bは、中干しを行うために設定された設定期間において、生成菌活動度を推定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場の土中の水分量を計測する水分量計測部と、
前記水分量計測部の計測結果に基づいて、メタン生成菌の活動の活発さの程度を示す生成菌活動度を推定する推定部と、
を具備する、圃場管理システム。
【請求項2】
前記土中の水分量は、
前記土中の湿度及び前記圃場の地下水位の少なくとも一方を含む、請求項1に記載の圃場管理システム。
【請求項3】
前記推定部は、
中干しを行うために設定された設定期間において、前記生成菌活動度を推定する、請求項1に記載の圃場管理システム。
【請求項4】
前記水分量計測部の計測結果に基づいて、中干しの終了時期を算出する第1算出部をさらに具備する、請求項1に記載の圃場管理システム。
【請求項5】
圃場の土中の酸素量を計測する酸素量計測部と、
前記酸素量計測部の計測結果に基づいて、メタン生成菌の活動の活発さの程度を示す生成菌活動度を推定する推定部と、
を具備する、圃場管理システム。
【請求項6】
前記生成菌活動度の推定結果に基づいて、前記圃場からのメタン排出量、又は、所定の基準値に対する前記圃場でのメタン減少量の少なくとも一方を算出する第2算出部をさらに具備する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の圃場管理システム。
【請求項7】
前記第2算出部は、
前記メタン排出量又は前記メタン減少量の少なくとも一方の算出結果を、二酸化炭素の量に換算する、請求項6に記載の圃場管理システム。
【請求項8】
前記第2算出部の算出結果に関する報告書を作成する作成部をさらに具備する、請求項6に記載の圃場管理システム。
【請求項9】
前記圃場を撮影した画像データと、当該圃場を識別する識別情報とを互いに関連付けて記憶する情報処理装置をさらに具備する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の圃場管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場の水を管理するための圃場管理システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場の水を管理するための圃場管理システムの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の用水管理システムは、ファームポンドに貯留された水を圃場へ供給するためのものである。前記用水管理システムは、ファームポンドの水を汲み上げて圃場へ向けて送るポンプ、及びポンプからの水を各圃場へ流入させる経路を開閉する給水栓等を具備する。このような用水管理システムを用いることで、圃場の水位を適宜管理することができる。
【0004】
ここで、圃場の土中にはメタン生成菌が存在しており、当該メタン生成菌が生成するメタンによる地球温暖化の進行が懸念されている。このため、メタン生成菌の活動(圃場でメタンが生成され難い状態であるか否か)を把握できる技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の一態様は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、圃場でメタンが生成され難い状態であるか否かを把握することが可能な圃場管理システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
本開示の一態様においては、圃場の土中の水分量を計測する水分量計測部と、前記水分量計測部の計測結果に基づいて、メタン生成菌の活動の活発さの程度を示す生成菌活動度を推定する推定部と、を具備するものである。
本開示の一態様によれば、圃場でメタンが生成され難い状態であるか否かを把握することができる。
【0009】
本開示の一態様においては、前記土中の水分量は、前記土中の湿度及び前記圃場の地下水位の少なくとも一方を含むものである。
本開示の一態様によれば、土中の湿度及び圃場の地下水位の少なくとも一方に基づいて、圃場でメタンが生成され難い状態であるか否かを把握することができる。
【0010】
本開示の一態様においては、前記推定部は、中干しを行うために設定された設定期間において、前記生成菌活動度を推定するものである。
本開示の一態様によれば、設定期間において、圃場でメタンが生成され難い状態であるか否かを把握することができる。
【0011】
本開示の一態様においては、前記水分量計測部の計測結果に基づいて、中干しの終了時期を算出する第1算出部をさらに具備するものである。
本開示の一態様によれば、第1算出部の算出結果に基づいて、適切な中干しの終了時期を把握することができる。
【0012】
本開示の一態様においては、圃場の土中の酸素量を計測する酸素量計測部と、前記酸素量計測部の計測結果に基づいて、メタン生成菌の活動の活発さの程度を示す生成菌活動度を推定する推定部と、を具備するものである。
本開示の一態様によれば、圃場でメタンが生成され難い状態であるか否かを把握することができる。
【0013】
本開示の一態様においては、前記生成菌活動度の推定結果に基づいて、前記圃場からのメタン排出量、又は、所定の基準値に対する前記圃場でのメタン減少量の少なくとも一方を算出する第2算出部をさらに具備するものである。
本開示の一態様によれば、第2算出部の処理によってメタン排出量又はメタン減少量の少なくとも一方を取得することができるため、利便性を向上することができる。
【0014】
本開示の一態様においては、前記第2算出部は、前記メタン排出量又は前記メタン減少量の少なくとも一方の算出結果を、二酸化炭素の量に換算するものである。
本開示の一態様によれば、第2算出部の処理によって二酸化炭素の量を取得することができるため、利便性を向上することができる。
【0015】
本開示の一態様においては、前記第2算出部の算出結果に関する報告書を作成する作成部をさらに具備するものである。
本開示の一態様によれば、利便性を向上することができる。例えば、作成部によってメタンの減少量を所轄機関等に報告するレポートを作成できるため、利便性を向上することができる。
【0016】
本開示の一態様においては、前記圃場を撮影した画像データと、当該圃場を識別する識別情報とを互いに関連付けて記憶する情報処理装置をさらに具備するものである。
本開示の一態様によれば、画像データと識別情報とを関連付けることによって、画像データを圃場ごとに管理することができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示の一態様によれば、圃場でメタンが生成され難い状態であるか否かを把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図3】生成菌活動度を推定する活動度推定処理を示すフローチャート。
【
図5】生成菌活動度に関するレポートを作成するレポート作成処理を示すフローチャート。
【
図6】レポート作成処理で作成されるレポートの一例を示す図。
【
図7】画像データを記憶するデータ記憶処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明の一実施形態に係る圃場管理システム10について説明する。
【0020】
図1に示す圃場管理システム10は、圃場H(本実施形態では複数の圃場H)の水を管理するためのものである。圃場管理システム10は、給水装置11、水位水温センサ12、湿度センサ13、排水装置14、通信中継機15、作業者端末16、圃場管理サーバ17、画像管理サーバ18及びデータセンター19を具備する。
【0021】
給水装置11は、圃場Hへの給水を管理するためのものである。給水装置11は、各圃場Hに設けられる。給水装置11は、後述する通信中継機15と通信するための通信機器と、給水管Kと圃場Hとを接続する水路に設けられた給水栓と、を具備する(不図示)。給水装置11は、前記給水栓を開閉することで、圃場Hへ給水可能な状態と給水不能な状態とを切り替えることができる。また給水装置11は、給水栓の開度に応じて圃場Hへの給水量を調整することができる。加えて、給水装置11はカメラ等の撮像装置を有していてもよい。給水装置11は、撮像装置で撮影された画像データを、給水装置11を識別する情報と関連付けて記憶することができる。
【0022】
水位水温センサ12は、圃場Hの表面H1における水位(以下、「表面水位」と称する)及び水温を計測するためのものである。水位水温センサ12は、各圃場Hに設けられる。水位水温センサ12は、給水装置11と接続され、表面水位及び水温の計測結果を給水装置11へ送信することができる。
【0023】
湿度センサ13は、圃場Hの土中の水分量、具体的には圃場Hの土中の湿度を計測するためのものである。湿度センサ13は、各圃場Hに設けられる。湿度センサ13は、給水装置11と接続され、湿度の計測結果を給水装置11へ送信することができる。
【0024】
排水装置14は、圃場Hの排水を管理するためのものである。排水装置14は、各圃場Hに設けられる。排水装置14は、通信中継機15と通信するための通信機器と、圃場Hの排水口に設けられた排水栓と、を具備する(不図示)。排水装置14は、通信機器を介して受信した信号に応じて、排水栓の仕切り体の高さを調整可能に構成される。例えば排水装置14は、表面水位よりも低い位置まで仕切り体を下げることで、圃場Hの水を排水路Cへ排出することができる。また排水装置14は、表面水位以上の高さまで仕切り体を上げることで、圃場Hからの排水を停止することができる。このようにして、圃場Hでは、仕切り体の高さ位置(上面の高さ位置)と同じ高さの水位まで、水を貯留することができる。また排水装置14は仕切り体の高さの調整により、圃場Hの排水(排水栓の開閉や排水量)を制御することができる。以下では、仕切り体の高さ位置(圃場Hに貯留可能な水位)を、「排水ゲート高さ」と称する。
【0025】
なお圃場管理システム10は、必ずしも遠隔操作可能な排水装置14を具備する必要はない。例えば圃場管理システム10は、排水装置14にかえて、遠隔操作不能な排水装置を具備してもよい。当該排水装置は、例えば操作具を操作することによって(手動で)排水ゲート高さを調整することができる。
【0026】
通信中継機15は、無線通信可能な機器である。通信中継機15は、無線通信により、給水装置11、排水装置14及び後述する圃場管理サーバ17との間で情報をやり取りすることができる。
【0027】
作業者端末16は、作業者が所有する端末である。作業者端末16は、演算処理を実行可能な演算装置、プログラム等が記憶された記憶装置、情報を入力可能な入力装置及び演算処理の結果等を表示可能な出力装置等を具備する。作業者端末16は、作業者が携帯可能な機器、例えばスマートフォンやタブレット端末等によって構成される。
【0028】
作業者端末16は、GPS衛星や携帯電話基地局からの信号を受信することによって、自身の位置情報(緯度及び経度)を検出することができる。また作業者端末16には、カメラが内蔵される。作業者端末16は、カメラで撮影された画像データに、自身の位置情報を関連付けて記憶することができる。これによって、画像データがどこで撮影されたのかを把握することができる。
【0029】
圃場管理サーバ17は、圃場Hの給排水に関する処理を行うためのものである。圃場管理サーバ17は、クラウドサーバ(厳密にはクラウドサーバ内に仮想的に構築されたサーバ)により構成される。圃場管理サーバ17は、通信中継機15を介して給水装置11または排水装置14との間で情報をやり取りすることができる。圃場管理サーバ17は、給水装置11または排水装置14から信号を受信することで、種々の情報を取得することができる。例えば圃場管理サーバ17は、給水装置11からの信号に基づいて、給水栓の開度や水位水温センサ12の計測結果や湿度センサ13の計測結果等を取得することができる。また圃場管理サーバ17は、排水装置14からの信号に基づいて現在の排水ゲート高さ等を取得することができる。
【0030】
また圃場管理サーバ17は、給水装置11または排水装置14へ信号を送信することで、圃場Hの給排水を制御することができる。例えば圃場管理サーバ17は、給水装置11へ信号を送信することで給水栓を開閉し、圃場Hへ給水可能な状態と給水不能な状態との切り替えや給水栓の開度を調整することができる。また圃場管理サーバ17は、排水装置14へ信号を送信することで、排水ゲート高さを調整することができる。なお圃場管理サーバ17は、給水装置11または排水装置14の少なくとも一方と信号を送受信するものであればよく、例えば給水装置11及び排水装置14の双方と信号を送受信することも可能である。圃場管理サーバ17は、このような給排水の制御によって、作物の生育ステージに応じた水位(設定水位)となるように、表面水位を調整することができる。以下、表面水位を調整する処理の一例について説明する。
【0031】
圃場管理サーバ17は、給水栓を開いて圃場Hの表面水位を設定水位まで上昇させる。その後圃場管理サーバ17は、給水栓を閉じて圃場Hへの給水を停止する。圃場Hの水は土に浸透したり乾燥したりするので、給水の停止によって圃場Hの表面水位は徐々に下がる。圃場管理サーバ17は、設定水位から所定の閾値以上表面水位が下がった場合に、圃場Hへの給水を再開して圃場Hの水位を設定水位に戻す。圃場管理サーバ17は、こうした給水及び給水停止を繰り返すことで、作物の生育ステージに適した水位となるように表面水位を調整する。なお、上述した表面水位の調整方法(制御方法)は一例であり、種々のパラメータに従って任意の方法で表面水位を調整することが可能である。また圃場Hに遠隔で操作可能な排水栓がない場合は、固定の排水ゲート高さを基準とし、排水栓がある場合は、調整した排水ゲート高さを基準として、前述する水位の調整を行うことが可能である。
【0032】
圃場管理サーバ17は、インターネット回線等を介して作業者端末16との間で相互に情報をやり取りすることができる。例えば、圃場管理サーバ17は、作業者端末16からの要求に応じて作業者端末16に信号を送信することで、所定の情報(表面水位等)を作業者端末16に通知することができる。また例えば圃場管理サーバ17は、作業者端末16からの要求に応じて給水装置11に信号を送信することで、作業者端末16の操作に応じて給水栓を開閉することができる。
【0033】
画像管理サーバ18は、作業者端末16で撮影された画像データに関する処理を行うためのものである。画像管理サーバ18は、例えば、クラウドサーバにより構成される。画像管理サーバ18は、インターネット回線等を介して作業者端末16及びデータセンター19の間で相互に情報をやり取りすることができる。
【0034】
データセンター19は、圃場Hや圃場管理システム10に関する種々の情報を記憶するための施設である。データセンター19には、情報を記憶するための記憶装置(例えば、大容量ストレージ)が設けられ、当該記憶装置に水位水温センサ12の計測結果や排水ゲート高さを変更した履歴等が記憶される。データセンター19では、圃場管理サーバ17及び画像管理サーバ18から送信された情報を前記記憶装置に記憶させることができる。またデータセンター19では、圃場管理サーバ17及び画像管理サーバ18から要求があった場合に、前記記憶装置に記憶された情報を圃場管理サーバ17及び画像管理サーバ18へ送信することができる。
【0035】
ここで、圃場Hで水稲を生育する場合、水稲の過剰な生育を抑制する等の目的で中干しが行われる。圃場管理システム10で中干しを行う場合、給水装置11による圃場Hへの給水が停止され、圃場Hが乾かされる。
【0036】
本実施形態では、中干しのために給水を停止する期間を、作業者端末16の操作に応じて設定可能に構成される。以下では、この期間を「設定期間」と称する。作業者は、例えば、給水を停止する日時と、給水を再開する日時とを作業者端末16に入力することで、設定期間を設定することができる。
【0037】
設定期間中は圃場Hへの給水が停止されるため、時間の経過に伴って圃場Hの表面水位が低下する。表面水位の低下によって圃場Hが乾かされる(中干しされた状態になる)と、水稲の分げつ等を抑制し、当該水稲の過剰な生育を抑制することができる。また、中干状態になると嫌気性細菌であるメタン生成菌の活動が抑制され、圃場Hから排出されるメタンの量を減らすことができる。
【0038】
水稲の生育のために推奨される中干しの期間は、地域や品種等に応じて予め設定されている。例えば「8日程度」など、圃場Hごとに適切と思われる中干しの期間が設定されている。ここで、メタンは温室効果ガスであるため、中干しを通常(上記推奨期間(8日程度))よりも延長することで、温室効果ガスの排出を抑制することができる。また作業者は、温室効果ガスの排出抑制についてのプロジェクト(例えば、Jクレジット)に参加して中干しを延長したことを証明することで、当該プロジェクトの規定に応じた報酬を受け取ることができる。中干しの延長を証明するためには、通常よりも長期間にわたって中干しされたことを示す証拠が必要となる。
【0039】
本実施形態の圃場管理システム10は、メタン生成菌の活動の活発さの程度を示す生成菌活動度を推定可能に構成される。また圃場管理システム10は、生成菌活動度に基づいて、圃場Hの中干状態を推定可能に構成される。そこで作業者は、当該中干状態の推定結果を証拠として用いることで、中干しの延長を証明することができる。以下では
図2を参照し、中干状態及び生成菌活動度の推定に関する構成について説明する。
【0040】
圃場管理サーバ17は、取得部17a及び推定部17bを具備する。取得部17aは、生成菌活動度の推定に必要な各種情報(後述する湿度情報19a等)をデータセンター19から取得するためのものである。推定部17bは、生成菌活動度を推定する計算処理を行うためのものである。
【0041】
画像管理サーバ18は、取得部18a、算出部18b及び作成部18cを具備する。取得部18aは、算出部18b及び作成部18cの処理に必要な各種情報(後述する圃場情報19b等)を作業者端末16またはデータセンター19から取得するためのものである。算出部18bは、中干しの延長によって抑制されたメタンの減少量を算出するためのものである。作成部18cは、中干状態に関するレポートR(
図6参照)を作成するためのものである。なお取得部18aは、作業者端末16またはデータセンター19の少なくとも一方から情報を取得するものであればよく、例えば作業者端末16及びデータセンター19の双方から情報を取得することも可能である。また、画像管理サーバ18は圃場管理サーバ17と一体のサーバであってもよいし、別々のサーバで構成されてもよい。
【0042】
データセンター19には、湿度情報19a、圃場情報19b、画像情報19c及び推定結果情報19dが記憶される。
【0043】
湿度情報19aは、土中の湿度の履歴である。湿度情報19aは、圃場Hごとに管理される。本実施形態の湿度情報19aは、例えば、圃場Hを識別する圃場識別情報、湿度センサ13を識別するセンサ識別情報、湿度センサ13による土中の湿度の計測結果、湿度を計測した日時等が互いに関連付けられた情報となっている。湿度情報19aは、湿度センサ13が湿度を計測するたびに作成され、データセンター19に記憶される。
【0044】
圃場情報19bは、圃場固有の情報である。圃場情報19bは、例えば、圃場識別情報、圃場Hの位置情報、圃場Hの面積、還元基準メタン発生量、酸化基準メタン発生量等が互いに関連付けられた情報となっている。還元基準メタン発生量は、圃場Hに水が張られて酸素が少ない還元状態における、圃場Hでの単位面積及び単位時間当たりのメタン発生量である。酸化基準メタン発生量は、圃場Hが乾燥して酸素が多い酸化状態における、圃場Hでの単位面積及び単位時間当たりのメタン発生量である。還元基準メタン発生量及び酸化基準メタン発生量は、例えば、圃場Hに関する情報(土壌の性質や状態、地域等)や実験等に基づいて設定することができる。圃場情報19bは、予めデータセンター19に記憶される。
【0045】
画像情報19cは、作業者端末16のカメラで圃場Hを撮影した画像データに関する情報である。画像情報19cは、圃場Hごとに管理される。画像情報19cは、例えば、圃場識別情報、圃場Hの位置情報、画像データ、画像データの撮影日時等が互いに関連付けられた情報となっている。画像情報19cは、画像管理サーバ18の処理によってデータセンター19に記憶される。
【0046】
推定結果情報19dは、中干状態及び生成菌活動度の推定結果を判断可能な情報である。推定結果情報19dは、圃場Hごとに管理される。推定結果情報19dは、例えば、圃場識別情報、中干状態の推定結果及び生成菌活動度の推定結果等が互いに関連付けられた情報となっている。
【0047】
圃場管理サーバ17は、給水栓の開度等に基づいて、異常を報知可能に構成される。具体的には圃場管理サーバ17は、給水栓の開度及び排水栓の開度に基づいて圃場Hの表面水位を推定する。圃場管理サーバ17は、当該推定結果が、水位水温センサ12の計測結果(計測された表面水位)と所定の閾値以上異なる場合に、表面水位についての異常を検知して作業者端末16等に通知する。これによって、圃場管理システム10の異常(例えば水位水温センサ12の位置ずれ、故障等)に速やかに対応することができる。
【0048】
以下では
図3及び
図4を参照し、圃場Hの中干状態及び生成菌活動度を推定するための活動度推定処理について説明する。活動度推定処理は、例えば、設定期間(給水が停止される期間)中に、圃場管理サーバ17によって実行される。
図3に示すように、圃場管理サーバ17は、活動度推定処理が実行されると、ステップS10へ移行する。
【0049】
ステップS10において、圃場管理サーバ17の取得部17aは、生成菌活動度の推定に必要な情報をデータセンター19から取得する。本実施形態では、取得部17aは、設定期間における土中の湿度の履歴をデータセンター19の湿度情報19aから取得する。ステップS10の処理が終了すると、圃場管理サーバ17は、ステップS20へ移行する。
【0050】
ステップS20において、圃場管理サーバ17の推定部17bは、ステップS10で取得された土中の湿度の履歴に基づいて、生成菌活動度を推定する。上述の如く、メタン生成菌は嫌気性細菌であるため、土中の湿度が高い(土中の酸素が少ない)ほど活発に活動する。したがって土中の湿度が高いほど、メタンの発生量が増加する。このように、土中の湿度とメタン生成菌の活動度合いとの間には相関関係がある。本実施形態では、上記相関関係について予め実験等を行うことによって、土中の湿度とメタンの発生量との関係が求められている。
【0051】
ステップS20において推定部17bは、ステップS10で取得した土中の湿度の履歴と、上記関係とに基づいて、湿度に応じたメタン発生量を算出する。こうしてメタン発生量を算出することで、推定部17bは、メタン生成菌がどの程度活発に活動しているのか(生成菌活動度)を推定することができる。ステップS20の処理が終了すると、圃場管理サーバ17は、ステップS30へ移行する。
【0052】
ステップS30において、圃場管理サーバ17の推定部17bは、ステップS10で推定した生成菌活動度に基づいて、圃場Hの中干状態を推定する。以下、
図4を用いてステップS20の処理の一例について説明する。
【0053】
上述の如く、設定期間中は圃場Hへの給水が停止されるため、時間の経過に伴って圃場Hの表面水位が下がり、中干状態へと移行する。中干状態では、土中に酸素が多く含まれるため、メタン生成菌の活動が抑制される。本実施形態では、こうした中干状態におけるメタン発生量(基準生成菌活動度)が実験等で予め求められている。推定部17bは、当該基準生成菌活動度と、ステップS20で推定された生成菌活動度とを比較することで、給水を停止して中干状態へと移行した時期(以下、「中干開始時期」と称する)を特定する。
【0054】
なお、設定期間が終了するまでは、圃場管理サーバ17により自動的に圃場Hへの給水が停止されるため、推定部17bは、中干開始時期から給水が再開されるまでの期間を中干期間であると推定する。なお、給水栓は作業者端末16の操作に応じて開閉可能であることから、設定期間の途中で作業者端末16の操作(手動)によって圃場Hへの給水が再開される可能性もある。この場合、圃場Hの土中の湿度が高くなり、生成菌活動度の推定結果が基準生成菌活動度よりも高くなる。この場合、推定部17bは、中干開始時期から、生成菌活動度の推定結果が基準生成菌活動度よりも高くなった時期までを中干期間とする。ステップS30の処理が終了すると、圃場管理サーバ17は、ステップS30へ移行する。
【0055】
ステップS30において、推定部17bは、ステップS20・S30での生成菌活動度及び中干状態の推定結果を作業者端末16に送信する。これにより、作業者端末16に生成菌活動度及び中干状態の推定結果が通知される。ステップS40の処理が終了すると、圃場管理サーバ17は、中干状態推定処理を終了する。
【0056】
上述のステップS10からステップS40までの処理は、設定期間においてリアルタイムに実行することができる。例えば上述の処理を所定の時間間隔(数時間ごと等)で実行することができる。これによって、例えば作業者は所望のタイミングで現在の圃場Hの状態を、作業者端末16を用いて確認することができる。また、上記ステップS10からステップS40までの処理を一括して行うこともできる。例えば設定期間が終了した後に、各種情報(土中の湿度及び給水栓の開度等)の履歴を用いて、終了した設定期間における生成菌活動状態及び中干状態(中干期間)を推定することができる。こうして推定された生成菌活動状態及び中干状態は、圃場識別情報と関連付けられてデータセンター19の推定結果情報18fに記憶される。
【0057】
本実施形態では、活動度推定処理を行うことで、作業者が設定期間中に圃場Hに何度も足を運ぶことなく、中干状態を容易に把握することができる。これによって、圃場Hでメタンが生成され難い状態であるか否かを容易に把握することができ、作業者の負担を低減することができる。
【0058】
また、中干しを延長すると中干期間の推定結果が通常(8日程度)の中干期間よりも長くなる。この延長された中干期間は、中干期間の推定結果にも反映されるため、推定結果を用いて中干しの延長を証明することができる。
【0059】
なお、ステップS20において推定部17bは、土中の湿度に基づいて生成菌活動度を推定するものとしたが、メタン生成菌の活動の活発さと相関関係があるその他の情報に基づいて、生成菌活動度を推定することも可能である。例えば推定部17bは、圃場Hの地下水位(圃場Hの表面H1から地下の水面までの深さ)、土中の酸素量の少なくとも1つを用いて生成菌活動度を推定可能である。以下、具体的に説明する。
【0060】
まず、地下水位を用いた生成菌活動度の推定の一例について説明する。圃場Hの地下水位が低下すると、土中に含まれる酸素の量が増加してメタン生成菌の活動が抑制される。このように、圃場Hの地下水位は、メタン生成菌の活動と相関関係がある。
【0061】
そこで、地下水位に基づいて生成菌活動度を推定する場合、圃場Hの地下水位を計測する地下水位センサを圃場Hに設置する。また、圃場Hの地下水位とメタンの発生量との関係を予め実験等によって取得する。推定部17bは、ステップS20において、圃場Hの地下水位の履歴と上記関係とに基づいて、地下水位に応じたメタン発生量を算出する。これによって、地下水位に基づいて生成菌活動度を推定することができる。
【0062】
次に、土中の酸素量を用いた生成菌活動度の推定の一例について説明する。上述の如く、土中に含まれる酸素の量が増加すると、メタン生成菌の活動が抑制される。このように、土中の酸素量は、メタン生成菌の活動と相関関係がある。
【0063】
そこで、土中の酸素量に基づいて生成菌活動度を推定する場合、圃場Hの酸素量を計測する酸素量センサを圃場Hに設置する。また、圃場Hの土中の酸素量とメタンの発生量との関係を予め実験等によって取得する。推定部17bは、ステップS20において、圃場Hの土中の酸素量の履歴と上記関係とに基づいて、土中の酸素量に応じたメタン発生量を算出する。これによって、土中の酸素量に基づいて生成菌活動度を推定することができる。
【0064】
また推定部17bは、地下水位、土中の湿度及び土中の酸素量を組み合わせることで、生成菌活動度を推定することも可能である。例えば推定部17bは、地下水位に応じたメタン発生量と土中の酸素量に応じたメタン発生量との平均値を求めることで、地下水位及び土中の湿度を組み合わせて生成菌活動度を推定することができる。
【0065】
以下では
図5及び
図6を参照し、中干状態に関するレポートRを作成するレポート作成処理について説明する。本実施形態のレポートRは、例えば中干しを延長したことを証明する用途に用いられる。
【0066】
レポート作成処理は、活動度推定処理が終了した後で画像管理サーバ18によって適宜実行される。例えば、作業者端末16から画像管理サーバ18に対してレポート作成処理の実行が要求された場合に実行される。
図5に示すように、画像管理サーバ18は、レポート作成処理が実行されると、ステップS110へ移行する。
【0067】
ステップS110において、画像管理サーバ18の取得部18aは、活動度推定処理で求められた中干状態の推定結果をデータセンター19の推定結果情報19dから取得する。ステップS110の処理が終了すると、画像管理サーバ18は、ステップS120へ移行する。
【0068】
ステップS120において、画像管理サーバ18の取得部18aは、レポートRの作成に必要な圃場固有の情報を、データセンター19の圃場情報19bから取得する。本実施形態では、圃場Hの面積、還元基準メタン発生量及び酸化基準メタン発生量を取得する。ステップS120の処理が終了すると、画像管理サーバ18は、ステップS130へ移行する。
【0069】
ステップS130において、画像管理サーバ18の算出部18bは、ステップS110・S120の取得結果に基づいて、設定期間における圃場Hでのメタン減少量を算出する。上述の如く、中干しを通常(8日程度)よりも延長することで、メタンの排出を抑制することができる。ステップS130で算出されるメタン減少量は、中干しを通常よりも延長することで、通常よりもどの程度メタンの排出を抑制できたのかを示す値である。以下、メタン減少量を算出するステップS130の処理の一例を説明する。
【0070】
まず算出部18bは、通常の中干しで想定される中干状態の期間を取得する。この通常の中干期間は、例えば、前述のように、圃場Hごとに設定された適切な中干しの期間(8日程度など)を用いることができる。算出部18bは、当該通常の中干期間と、ステップS110で取得された中干期間との差、すなわち中干しの延長によって中干状態が延びた期間(延長期間)を算出する。
【0071】
そして算出部18bは、延長期間、ステップS120で取得された還元メタン発生量、圃場Hの面積を乗算することで、中干しを延長した場合の延長期間におけるメタン発生量を算出する。また算出部18bは、ステップS120で取得された酸化メタン発生量を用いて、通常の中干しを行う場合における延長期間のメタン発生量を算出する。算出部18bは、これらメタン発生量の差を算出することで、設定期間の延長によるメタン減少量を算出する。ステップS130の処理が終了すると、画像管理サーバ18は、ステップS140へ移行する。
【0072】
ステップS140において、画像管理サーバ18の算出部18bは、ステップS130で算出したメタン減少量を、二酸化炭素の減少量に換算する。本実施形態では、算出部18bは、地球温暖化係数に基づいてメタン減少量を二酸化炭素の減少量に換算する。
【0073】
地球温暖化係数とは、二酸化炭素の発生による温室効果の強さを基準として、他の温室効果ガスの温室効果の強さがどの程度のものであるかを示すものである。メタンの地球温暖化係数は、25とされている。算出部18bは、ステップS130で算出したメタン減少量とメタンの地球温暖化係数(25)とを乗算することで、メタン減少量を二酸化炭素の減少量に換算する。ステップS140の処理が終了すると、画像管理サーバ18は、ステップS150へ移行する。
【0074】
ステップS150において、画像管理サーバ18の作成部18cは、中干状態に関するレポートRを作成する。この際作成部18cは、例えば、所定の機関に提出する書類の様式に合うようなレポートRを作成する。例えば、メタン減少量に応じた報酬を受け取るために、温室効果ガスの排出抑制についてのプロジェクト(例えば、Jクレジット)で用意された書類のテンプレートの空欄に必要な項目を自動入力することで、レポートRを作成する。
【0075】
図6に一例で示すように、作成部18cは、圃場Hの名称や、ステップS130で算出されたメタンの減少量や、ステップS140で算出された二酸化炭素の減少量や、活動度推定処理で推定された中干期間等を含むレポートRを作成する。作成部18cは、作成されたレポートRを作業者端末16に送信する。ステップS150の処理が終了すると、画像管理サーバ18は、レポート作成処理を終了する。
【0076】
レポート作成処理によって、作業者がレポートRを作成する手間を省くことができるため、利便性を向上することができる。なお、画像管理サーバ18は、レポート作成処理で作成されたレポートRのデータを、所定の機関に送信することも可能である。これにより、作業者がレポートRを提出する手間を省くことができるため、利便性をさらに向上することができる。
【0077】
ここで、所定の機関に提出するためのレポートRには、設定期間を延長したことを証明するために、圃場Hの表面H1や給水栓を撮影した画像データが貼り付けられることも想定される。しかしながらスマートフォンやタブレット端末のカメラで撮影が行われると、一般的に画像データは、1つのフォルダに格納されることから、複数の圃場Hを1つの作業者端末16のカメラで撮影すると、画像データの管理が煩雑になってしまう。
【0078】
そこで本実施形態では、画像管理サーバ18のデータ記憶処理により、データセンター19で圃場Hごとに画像データを管理可能に構成されている。
【0079】
以下では
図2及び
図7を参照し、データ記憶処理について説明する。データ記憶処理は、データセンター19の記憶装置に画像データを記憶させるための処理である。データ記憶処理は、例えば、作業者端末16のカメラによって圃場Hが撮影された後で、画像管理サーバ18によって適宜実行される。例えば、作業者端末16から画像管理サーバ18に対してデータ記憶処理の実行が要求された場合に実行される。
図7に示すように、画像管理サーバ18は、データ記憶処理が実行されると、ステップS210へ移行する。
【0080】
ステップS210において、画像管理サーバ18の取得部18aは、作業者端末16から画像データを取得する。当該画像データには、撮影日時及び撮影場所の情報(撮影時の作業者端末16の位置情報)が関連付けられている。ステップS210の処理が終了すると、画像管理サーバ18は、ステップS220へ移行する。
【0081】
ステップS220において、画像管理サーバ18の取得部18aは、ステップS210で取得した画像データと、圃場識別情報とを関連付けた情報をデータセンター19に送信する。以下、ステップS220の処理の一例を説明する。
【0082】
まず取得部18aは、各圃場Hの位置情報及び圃場識別情報を、データセンター19の圃場情報19bから取得する。そして取得部18aは、ステップS210で取得した画像データに関連付けられた撮影場所の情報、及び各圃場Hの位置情報の取得結果に基づいて、画像データがどの圃場Hを撮影したものであるかを特定する。その後取得部18aは、特定した圃場Hの識別情報を、ステップS210で取得した画像データ、撮影時間等を関連付けた情報をデータセンター19に送信する。ステップS220の処理が終了すると、画像管理サーバ18は、データ記憶処理を終了する。
【0083】
データ記憶処理によって、画像管理サーバ18から送信された情報が
図2に示すデータセンター19の画像情報19cとして記憶され、データセンター19で圃場Hごとに画像データを管理することができる。
【0084】
こうして画像データが圃場Hごとに管理されることにより、利便性を向上させることができる。例えば、各圃場Hのうち、作業者が選択した一部の圃場Hを撮影した画像データのみを作業者端末16に表示させることができる。また、撮影日時の順に画像データを並べることもできる。また作業者端末16の操作に応じて、並べられた画像データをレポートRに貼り付けることもできる。これによって、画像データを用いたレポートRの作成を容易に行うことができ、利便性を向上させることができる。
【0085】
本実施形態では、上述したような画像データを管理するサーバ(画像管理サーバ18)を、圃場Hの給排水を管理するサーバ(圃場管理サーバ17)とは別に構築している。こうしてサーバを分けることにより、一方のサーバに障害が発生した場合でも、他方のサーバは継続して稼働するため、障害に対するリスクを分散することができる。
【0086】
なお、給水装置11は、配水池に貯留される水をそのまま圃場Hに供給するのではなく、水に空気を含ませて圃場Hに供給することも可能である。例えば、給水装置11の近傍に泡発生装置を設置して、直径が1μm以上かつ100μm未満の泡(マイクロバブル)、直径が1μm未満の泡(ウルトラファインバブル)等を含む水を圃場Hに供給することも可能である。これによって、圃場Hに水を張る場合に、圃場Hの水に多くの空気を含ませることができる。上述の如く、メタン生成菌は嫌気性細菌であるため、圃場Hの水に多くの空気を含ませることで、中干しとは異なる時期においてもメタン生成菌の活動を抑制し、圃場Hからのメタンの排出量を減少させることができる。
【0087】
以上の如く、本実施形態に係る圃場管理システム10は、圃場Hの土中の水分量を計測する水分量計測部(湿度センサ13)と、前記水分量計測部の計測結果に基づいて、メタン生成菌の活動の活発さの程度を示す生成菌活動度を推定する推定部17bと、を具備するものである。
【0088】
このように構成することにより、圃場Hでメタンが生成され難い状態であるか否かを把握することができる。
【0089】
また、前記土中の水分量は、前記土中の湿度及び前記圃場Hの地下水位の少なくとも一方を含むものである。
【0090】
このように構成することにより、土中の湿度及び圃場Hの地下水位の少なくとも一方に基づいて、圃場Hでメタンが生成され難い状態であるか否かを把握することができる。
【0091】
また、前記推定部17bは、中干しを行うために設定された設定期間において、前記生成菌活動度を推定するものである(ステップS20)。
【0092】
このように構成することにより、設定期間において、圃場Hでメタンが生成され難い状態であるか否かを把握することができる。
【0093】
また、本実施形態に係る圃場管理システム10は、圃場Hの土中の酸素量を計測する酸素量計測部と、前記酸素量計測部の計測結果に基づいて、メタン生成菌の活動の活発さの程度を示す生成菌活動度を推定する推定部17bと、を具備するものである。
【0094】
このように構成することにより、圃場Hでメタンが生成され難い状態であるか否かを把握することができる。
【0095】
また、前記圃場管理システム10は、前記生成菌活動度の推定結果に基づいて、前記圃場Hからのメタン排出量、又は、所定の基準値に対する前記圃場Hでのメタン減少量の少なくとも一方を算出する算出部18b(第2算出部)をさらに具備するものである。
【0096】
このように構成することにより、算出部18bの処理によってメタン排出量又はメタン減少量の少なくとも一方を取得することができるため、利便性を向上することができる。
【0097】
また、前記算出部18bは、前記メタン排出量又は前記メタン減少量の少なくとも一方の算出結果を、二酸化炭素の量に換算するものである(ステップS140)。
【0098】
このように構成することにより、算出部18bの処理によって二酸化炭素の量を取得することができるため、利便性を向上することができる。
【0099】
また、前記圃場管理システム10は、前記算出部18bの算出結果に関するレポートR(報告書)を作成する作成部18cをさらに具備するものである。
【0100】
このように構成することにより、利便性を向上することができる。例えば、作成部18cによってメタンの減少量を所轄機関等に報告するレポートRを作成できるため、利便性を向上することができる。
【0101】
また、前記圃場管理システム10は、前記圃場Hを撮影した画像データと、当該圃場Hを識別する識別情報とを互いに関連付けて記憶する画像管理サーバ18(情報処理装置)をさらに具備するものである。
【0102】
このように構成することにより、画像データを圃場Hごとに管理することができる。
【0103】
なお、本実施形態に係る湿度センサ13は、本発明に係る水分量計測部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る算出部18bは、本発明に係る第2算出部の実施の一形態である。
また、画像管理サーバ18は、本発明に係る情報処理装置の実施の一形態である。
【0104】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0105】
例えば、本実施形態では、生成菌活動度の推定対象となる時期が中干しのための設定期間であるものとしたが、推定部16bは、設定期間に限らず任意の時期において、生成菌活動度を推定可能である。
【0106】
また推定部17bは、生成菌活動度の推定に加えて、土中の水分量(湿度、地下水位)を用いたその他の計算処理を実行することも可能である。例えば推定部17bは、土中の水分量を用いて、中干しの終了推奨時期を算出することも可能である。
【0107】
具体的には、圃場Hが長期間乾燥すると水稲の根が傷み、収量が減少するおそれがある。一方、圃場Hの乾燥期間が短いと、温室効果ガス(メタン)の排出抑制効果が不十分となるおそれがある。そこで推定部17bは、設定期間の最中に土中の水分量(湿度、地下水位)を監視し、当該監視結果に基づいて中干しの終了推奨時期を算出する。例えば推定部17bは、土中の湿度が所定の閾値以下となる時期を土中の湿度の履歴から予測し、当該予測結果を中干の終了推奨時期として算出する。なお所定の閾値は、圃場Hに関する情報(土壌の性質や状態、地域等)や当該圃場Hで生育される水稲の種類等に応じて適宜設定される。より詳細には、所定の閾値は、中干しの延長によるメタンの排出抑制の効果を奏すると共に、収量の減少の影響が小さい値が設定される。中干しの終了推奨時期の算出結果が作業者端末16に報知されることで、作業者は、設定期間の延長によってメタンの排出を抑制しながらも、収量に与える影響を小さくすることができる中干しの終了時期を把握することができる。
【0108】
また圃場管理サーバ17は、設定期間ではなく、上述した中干しの終了推奨時期の算出結果に基づいて、中干しを自動的に終了してもよい。これによって中干しを適切なタイミングで自動的に終了することができる。
【0109】
以上の如く、前記圃場管理システム10は、前記水分量計測部(湿度センサ13)の計測結果に基づいて、中干しの終了時期(終了推奨時期)を算出する第1算出部(推定部17b)をさらに具備するものである。
【0110】
このように構成することにより、第1算出部の算出結果に基づいて、適切な中干しの終了時期を把握することができる。
【0111】
また本実施形態では、データセンター19の記憶装置に画像データ等の各種情報が記憶されるものとしたが、各種情報が記憶される機器は、特に限定されない。例えば圃場管理サーバ17、画像管理サーバ18等に各種情報が記憶されてもよい。また各種情報が複数のサーバに分散して記憶されてもよい。
【0112】
また本実施形態では、画像データを管理するサーバ(画像管理サーバ18)を、圃場Hの給排水を管理するサーバ(圃場管理サーバ17)とは別に構築するものとしたが、圃場管理システム10におけるサーバ構成は特に限定されない。例えば、画像データの管理及び圃場Hの給排水の管理を、共通のサーバで行うものとしてもよい。
【0113】
また算出部18bは、ステップS130において設定期間の延長によるメタンの減少量を算出するものとしたが、設定期間の延長によってどの程度メタンの発生が抑制されたのかを判断可能なその他の情報を算出してもよい。例えば算出部18bは、設定期間中の圃場Hからのメタン排出量を算出してもよい。
【符号の説明】
【0114】
10 圃場管理システム
13 湿度センサ
17b 推定部
H 圃場