(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095017
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】液体噴出器
(51)【国際特許分類】
B05B 11/10 20230101AFI20240703BHJP
B65D 47/34 20060101ALI20240703BHJP
B05B 11/00 20230101ALI20240703BHJP
【FI】
B05B11/10 101G
B65D47/34 110
B05B11/00 101G
B05B11/00 101E
B05B11/10 101E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211992
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】坂田 耕太
(72)【発明者】
【氏名】當麻 徹
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA04
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB01
3E084BA02
3E084CA01
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB12
3E084DC03
3E084FB01
3E084GA04
3E084GB04
3E084HA03
3E084HB09
3E084HD01
3E084KA05
3E084KB01
3E084LD22
3E084LD26
(57)【要約】
【課題】容器本体内の内容液が外部に漏出することを抑制することができる液体噴出器を提供する。
【解決手段】本開示に係る液体噴出器100は、容器本体Cの口部C2に装着する装着部材3と、上部シリンダ1hと下部シリンダ1gとを有し外気導入孔1dが設けられているシリンダ1と、シリンダ1の内部から起立するプランジャ体11と、シリンダ1に対して上下動可能に設けられる筒状のステム9と、ステム9の下部に設けられたサブシリンダ7と、シリンダ1とステム9との隙間をシールする弁部材13と、ステム9の上部に押下可能に取り付けられたヘッド部30とを備え、プランジャ体11には、下部シリンダ1gの内面を摺動可能な第1ピストン11d及びサブシリンダ7の内面を摺動可能な第2ピストン11gが形成されており、サブシリンダ7は下部シリンダ1gよりも大きな内径を有することを特徴とする。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口部に装着する装着部材と、
前記装着部材から下方に垂下するシリンダであって、上部シリンダと、前記上部シリンダの下端部に連なり前記上部シリンダよりも小さな内径を有する下部シリンダとを有し、前記上部シリンダには、前記容器本体内に外気を導入する外気導入孔が設けられている、該シリンダと、
前記シリンダに対して上方付勢されるとともに上下動可能に設けられ、前記シリンダの内部から起立するプランジャ体と、
前記シリンダに対して上下動可能に設けられる筒状のステムと、
前記ステムの下部に設けられ、前記上部シリンダ内を上下方向に移動可能なサブシリンダと、
前記シリンダと前記ステムとの隙間をシールする弁部材であって、前記弁部材は、前記外気導入孔を通じた前記容器本体内への外気の導入を許容すると共に前記容器本体内から前記外気導入孔を通じた内容液の漏出を抑制する逆止弁である、該弁部材と、
前記ステムの上部に押下可能に取り付けられ、内容液を吐出するノズルを有するヘッド部と
を備え、
前記プランジャ体の下部には、前記下部シリンダの内面を摺動可能な第1ピストンが形成されると共に、前記第1ピストンの上方には、前記サブシリンダの内面を摺動可能な第2ピストンが形成されており、
前記サブシリンダは、前記下部シリンダよりも大きな内径を有する、液体噴出器。
【請求項2】
前記上部シリンダの内面と、前記サブシリンダの外面との間には、空隙が形成されている、請求項1に記載の液体噴出器。
【請求項3】
前記弁部材は、前記シリンダに嵌合するモジュール部材によって固定されている、請求項1又は2に記載の液体噴出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、容器本体の口部に装着され、容器本体内の内容液を外界に噴出させるための液体噴出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の液体噴出器としては、例えば、特許文献1に示すように、容器体の口部へ装着する装着筒部と、この装着筒部より下方へ垂下された主シリンダを含み、この主シリンダの下部内に第1弁体を形成したスプレー本体と、前記スプレー本体に対して上下動可能に設けられ、前記主シリンダの内部から起立するプランジャ体の上部に昇降可能に押下げヘッドを取り付けた作動部材と、を具備し、前記押下げヘッドの下側に前記主シリンダより大内径の副シリンダを設けるとともに、前記プランジャ体の下部に、前記主シリンダ内を摺動可能な下方ピストンを、プランジャ体の上部に、前記副シリンダ内を摺動可能な上方ピストンをそれぞれ形成し、前記主シリンダの下部内に第1弁体を、前記プランジャ体の上端と前記押下げヘッドとの間に第2弁体をそれぞれ設けたものが知られている。そして、前記主シリンダの側面に、容器体内に負圧が発生したときに外気を導入するための外気導入孔が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の液体噴出器では、例えば、容器体を倒立姿勢とした状態で内容液を吐出させようとした場合などに、上述の外気導入孔を通じて容器本体内の内容液が外部に逆流するおそれがあったため、この点において改善の余地があった。
【0005】
本開示の目的は、容器本体内の内容液が外部に漏出することを抑制することができる液体噴出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本開示の液体噴出器は、
[1]
容器本体の口部に装着する装着部材と、
前記装着部材から下方に垂下するシリンダであって、上部シリンダと、前記上部シリンダの下端部に連なり前記上部シリンダよりも小さな内径を有する下部シリンダとを有し、前記上部シリンダには、前記容器本体内に外気を導入する外気導入孔が設けられている、該シリンダと、
前記シリンダに対して上方付勢されるとともに上下動可能に設けられ、前記シリンダの内部から起立するプランジャ体と、
前記シリンダに対して上下動可能に設けられる筒状のステムと、
前記ステムの下部に設けられ、前記上部シリンダ内を上下方向に移動可能なサブシリンダと、
前記シリンダと前記ステムとの隙間をシールする弁部材であって、前記弁部材は、前記外気導入孔を通じた前記容器本体内への外気の導入を許容すると共に前記容器本体内から前記外気導入孔を通じた内容液の漏出を抑制する逆止弁である、該弁部材と、
前記ステムの上部に押下可能に取り付けられ、内容液を吐出するノズルを有するヘッド部と
を備え、
前記プランジャ体の下部には、前記下部シリンダの内面を摺動可能な第1ピストンが形成されると共に、前記第1ピストンの上方には、前記サブシリンダの内面を摺動可能な第2ピストンが形成されており、
前記サブシリンダは、前記下部シリンダよりも大きな内径を有することを特徴とする。
【0007】
また、本開示の液体噴出器は、
[2]
上記[1]に記載の構成において、前記上部シリンダの内面と、前記サブシリンダの外面との間には、空隙が形成されていることが好ましい。
【0008】
また、本開示の液体噴出器は、
[3]
上記[1]又は[2]に記載の構成において、前記弁部材は、前記シリンダに嵌合するモジュール部材によって固定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、容器本体内の内容液が外部に漏出することを抑制することができる液体噴出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本開示の一実施形態である液体噴出器の正面半面図である。
【
図1B】
図1Aにおける弁部材の領域を拡大した正面拡大断面図である。
【
図1C】
図1Aにおけるサブシリンダの領域を拡大した正面拡大断面図である。
【
図2】
図1Aの状態からカバー部材を取り外して内容液を噴出可能とした状態を示す正面断面図である。
【
図3】
図2の状態から押圧部材を押圧した状態を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面(
図1Aから
図3)を参照して、本開示の一実施形態に係る液体噴出器100を詳細に説明する。
【0012】
図1Aにおいて、符号1は、容器本体Cにおける口部C2の上端部にパッキンPKを介して配置されるフランジ2を有し、後述する装着部材3より容器本体Cの口部C2の内側を通って下方に垂下するシリンダである。シリンダ1は、有底筒状のシリンダ本体1aと、シリンダ本体1aの中央高さよりも下方の高さ位置において内面が径方向外側に拡径する圧力逃し部1bと、下方に向けて縮径する円錐台側面形状を有し、吸入弁10が着座する弁座1eと、容器本体C内の内容液をシリンダ1内に導くパイプPを嵌合固定する嵌合筒部1fと、シリンダ本体1aの上下2箇所に並んで設けられる外気導入孔1d及び圧力開放孔1cとを備えている。また、シリンダ本体1aは、上部に配置される上部シリンダ1hと、上部シリンダ1hの下端部に連なり第1ピストン11dが摺動するとともに上部シリンダ1hよりも内径が小さい下部シリンダ1gとを備えている。圧力逃し部1bは、周方向の複数箇所に形成されており、内容液の噴出が終了したときにシリンダ1内の液圧を圧力逃し部1b及び圧力開放孔1c経由で逃がすことで、内容液の噴出が終了したときにノズルにおける液切れを改善するために設けられている。また、圧力逃し部1bを設けることにより、プライミング時にシリンダ1内の空気を容器本体C内に回収可能となり、適切にプライミングを行うことができる。本実施形態において、外気導入孔1dは上部シリンダ1hに設けられ、容器本体C内に外気を取り込むために設けられている。すなわち、容器本体C内が負圧状態になると、外気導入孔1dから外気が取り込まれる。
【0013】
なお、本明細書、特許請求の範囲、及び図面においては、上下方向は、
図1Aに示すように液体噴出器100を容器本体Cに装着し正立姿勢とした状態における上方、下方を意味するものとする。また、径方向外側とは、
図1Aにおける液体噴出器100の中心軸線Oを通り中心軸線Oに垂直な直線に沿って中心軸線Oから離れる方向であり、径方向内側とは、当該直線に沿って中心軸線Oに向かう方向を意味するものとする。
【0014】
本実施形態において容器本体Cは、合成樹脂素材の押出しブロー成形を行うことによって形作っている。また、容器本体Cにはガラス容器などを用いることもできる。
【0015】
符号3は、筒状の周壁3aを有すると共に口部C2との間でフランジ2を固定する天壁5bを有し、当該天壁5bの上面から起立する内周壁5及びその径方向外側に外周壁5aが一体に設けられた装着部材である。天壁5bには、下方に延びてフランジ2を上方から押圧する固定筒4が形成されている。装着部材3は、周壁3aの内側にねじ部3Sを有し、容器本体Cの口部C2に着脱可能に装着されている。なお、ねじ部3Sに代えて周壁3aから径方向内側に突出する係合突部を設けて打栓により容器本体Cに装着可能に構成してもよい。
【0016】
本実施形態に係る液体噴出器100のヘッド部30は、押圧部材8及びノズルチップ12を備えており、押圧部材8の押下によって、シリンダ1内に蓄えられた内容液がヘッド部30に圧送される。
【0017】
押圧部材8は、外周壁8dと、外周壁8dの径方向内側に設けられ凹部8aを形成すると共にステム9の内面に嵌合する内周壁8eと、ノズルチップ12を内部に収容するノズル収容部8cとを備えている。押圧部材8は、凹部8a内に空間C1を区画形成し、空間C1を通して内容液が圧送される。
【0018】
符号9は、押圧部材8の下方への押圧によってプランジャ体11とともに下方に変位するステムである。ステム9は、押圧部材8の押し下げ及び復帰の繰り返しに応じて上下方向に移動し、ステム9の下部に一体に設けたサブシリンダ7が上部シリンダ1hの内側を移動する。また、プランジャ体11の上端部には、排出口A2が形成されている。後述するように、押圧部材8の押し下げによるステム9及びこれに続くプランジャ体11の下降によってシリンダ1内の圧力が上昇し、プランジャ体11の第1ピストン11dよりも第2ピストン11gの方が圧力を受ける面積が大きく、この受圧面積の差によってプランジャ体11がステム9に対してさらに下方に移動する。これによってステム9の当接部9bとプランジャ体11の傾斜部11bからなる排出弁15が開放されて、シリンダ1内から圧送された内容液が排出弁15、排出口A2及び吐出孔12aを経由して外部に吐出される。
【0019】
なお、本実施形態では、ステム9の下部にサブシリンダ7を一体成形しているが、この態様には限定されない。ステム9とサブシリンダ7とを別体で成形した後に一体に組み付けるようにしてもよい。
【0020】
ステム9は、プランジャ体11の上部よりも径方向外側に配置されるとともに上下動可能に設けられ、プランジャ体11との間に上述の排出弁15を形成する筒状の部材である。ステム9の下端部の内周面には、当接部9bが設けられており、当接部9bがプランジャ体11の外周面に形成された傾斜部11bに当接することで内容液の排出を制限する排出弁15を形成している。排出弁15は、ステム9に対するプランジャ体11の下方への相対変位によりシリンダ1内とノズルとの連通を許容する。
【0021】
上記排出弁15の上方におけるステム9の内周面には、周方向に間欠的に配置され径方向内側に突出する係合リブ9dが形成されている。係合リブ9dは、プランジャ体11の外周面から径方向外側に突出する係合突部11aと係合し、ステム9に対するプランジャ体11の下方への過度の相対変位を規制している。
【0022】
ステム9の上端部は、その内周面に押圧部材8の内周壁8eの外周面が嵌合し押圧部材8に固定されている。
【0023】
ステム9の下部には、上部シリンダ1h内を上下方向に移動可能なサブシリンダ7がステム9と一体形成されている。サブシリンダ7は、
図1A及び
図1Cに示すように、筒状部7aと、筒状部7aの上端部を閉塞すると共にステム9の下部に連なる上壁7cと、上壁7cの径方向外側縁から上方に突出し、後述する弁部材13をモジュール部材6との間で挟持する環状押圧部7c1とを備えている。ステム9の下端部と上壁7cとが連結される領域には、排出弁15を構成する当接部9bが設けられている。筒状部7aの外周面には、
図1Cに示すように、上下方向に延びる縦リブ7a1が周方向に間欠的に設けられている。また、本実施形態では、この縦リブ7a1の外面と上部シリンダ1hの内面との間に僅かに隙間が設けられている。この構成によって、筒状部7aにおける上部シリンダ1hとの対向面の面積を減らすと共に上部シリンダ1hとの間に径方向にも隙間を設けているので、押圧部材8を押下してステム9を下方に変位させたときのサブシリンダ7とシリンダ1との間の摺動抵抗を減少させることができる。なお、縦リブ7a1の外面が上部シリンダ1hの内面と摺動する構成であってもよい。
【0024】
プランジャ体11は、
図1Aに示すようにシリンダ1内で上下方向に延在する部材であり、上部に設けられた筒状部11jと、筒状部11jの下端部に連なる柱状部11hとを備えている。筒状部11jの上端部にはステム9の係合リブ9dに係合して一対の係合部17を形成する係合突部11aが設けられている。また、係合突部11aの下方には、筒状部11jの内部と外部を連通する連通孔11eが設けられている。そして、連通孔11eの下方には、下方に向かって径方向外側に傾斜し排出弁15の弁座を形成する傾斜部11bが設けられている。
【0025】
筒状部11jの下端部には、下方に垂下する柱状部11hが一体形成されている。また、柱状部11hの径方向外側には、ピストン筒11kが設けられている。ピストン筒11kの上端部には第2ピストン11gが設けられると共に、ピストン筒11kの下端部には第1ピストン11dが設けられている。柱状部11hとピストン筒11kとは、各々の上部において連結されており、当該連結箇所においてピストン筒11kの内側と外側を連通させる第2連通孔11fが周方向に間欠的に設けられている。プランジャ体11は、シリンダ1に対してスプリングSによって上方付勢されるとともに上下動可能に設けられており、シリンダ1の内部から上方に起立している。
【0026】
なお、本実施形態では、係合部17として、ステム9及びプランジャ体11の双方に係合リブ9d及び係合突部11aを設けるように構成したが、この態様には限定されない。ステム9に対するプランジャ体11の下方への相対変位が規制できればよく、突部は、ステム9及びプランジャ体11の一方のみに設けられていてもよい。
【0027】
また、プランジャ体11における柱状部11hとピストン筒11kの間の空間及びステム9の内側の空間は、圧送される内容液が通る液体流路Lとして機能する。液体流路Lは、シリンダ1下部の圧縮空間PSから柱状部11hとピストン筒11kの間の空間及び第2連通孔11fを通り、排出弁15を経由した後、連通孔11e及びステム9の内側を通って排出口A2から押圧部材8の空間C1に至る流路である。後述するように、圧縮されたシリンダ1の圧縮空間PS内の内容液が上方に圧送され、この液体流路Lを通って吐出孔12aに送られる。
【0028】
プランジャ体11のピストン筒11kの上部には、サブシリンダ7の内面に摺動する第2ピストン11gが設けられている。また、ピストン筒11kの下部には、シリンダ1の下部シリンダ1gの内面に摺動する第1ピストン11dが設けられている。本実施形態では、第1ピストン11dと第2ピストン11gは、一体形成されている。
【0029】
本実施形態では、
図1Aに示すように、サブシリンダ7の内径は、下部シリンダ1gの内径よりも大きく形成されている。この構成によって、押圧部材8の押下によってシリンダ1内の圧力が上昇すると、第2ピストン11gが受ける圧力の受圧面積の方が第1ピストン11dが受ける圧力の受圧面積よりも大きいため、プランジャ体11は、第2ピストン11gが受ける下方向の圧力によって下方に移動する。
【0030】
なお、第2ピストン11gの上方の空間と第1ピストン11dの下方の空間とは、
図1Aに示すように第2連通孔11fにより連通している。これによって、シリンダ1内の圧力は概ね等しく維持されるとともに、シリンダ1内で圧縮された内容液は、上述の液体流路L経由で吐出孔12aから吐出される。
【0031】
符号13は、容器本体C内から外気導入孔1dを通じた内容液の漏出を抑制する逆止弁として機能する、弁部材である。弁部材13は、ステム9の外周面に当接し、
図1Aに示すモジュール部材6の筒壁部6aに当接した状態から下方に弾性変形することで弁開放可能な弁体部13aと、弁体部13aの径方向外側端から上方に立設された環状壁13bと、環状壁13bの上端部から径方向外側へと更に延びる弁フランジ13cとを備えている(
図1B参照)。
【0032】
図1Bに示すように、環状壁13bがシリンダ1と後述するモジュール部材6の弁固定リング6dとの間に挟持されると共に弁フランジ13cがフランジ2と弁固定フランジ6bとの間で挟持されることによって、弁部材13は、シリンダ1に対して固定されている。
【0033】
モジュール部材6は、
図1Bに示すように、ステム9を径方向外側から囲む筒壁部6aと、筒壁部6aの中央高さよりも下方から径方向外側に延びる弁固定フランジ6bと、弁固定フランジ6bの径方向外側端から下方に垂下する嵌合周壁6cと、筒壁部6aと嵌合周壁6cの間の径方向位置において弁固定フランジ6bから下方に垂下する弁固定リング6dとを備えている。モジュール部材6は、
図1Bに示すように、嵌合周壁6cがフランジ2に立設された嵌合筒部2aの内面にアンダーカット係合により嵌合することによって、弁固定フランジ6bがフランジ2との間で弁部材13を挟持した状態でフランジ2、すなわちシリンダ1に固定されている。
【0034】
図1Bに示すように、弁部材13は、弁体部13aの径方向外側端が環状押圧部7c1と弁固定リング6dとの間に挟持されている一方、弁体部13aの径方向内側端は、ステム9に当接しているものの筒壁部6aの下端部に当接した初期状態から下方に変位可能とされている。この構成によって、容器本体C内に負圧が発生すると、外気導入孔1d及び縦リブ7a1の間の空間を介して弁部材13の下方領域も負圧となり、弁体部13aは径方向内側端が下方に変位してステム9との間に隙間を生じさせるため、外部から外気導入孔1dを通じて容器本体Cの内部に外気が導入される。
【0035】
他方、例えば従来技術(特開2022- 27265号)等のように、正倒立アダプタ等を使用し、容器本体Cを倒立姿勢とした状態で内容液を吐出させている場合、外気導入孔1dを通じて容器本体C内の内容液が外部に漏れ出す可能性がある。しかし、本実施形態では、上述のように容器本体C内を外部に対してシールする弁部材13をモジュール部材6によってシリンダ1に固定するように構成している。この構成によって、容器本体Cを倒立姿勢とした状態で押圧部材8を押圧して内容液を吐出させているとき、弁体部13aがステム9の外面に当接して容器本体C内を外部に対してシールすると共に、筒壁部6aの下端部に当接する。弁部材13がこのように動作することによって、容器本体Cの内部は外部に対してシールされた状態となるため、容器本体C内の内容液が外気導入孔1d経由で外部に漏れ出すことを抑制している。
【0036】
符号10は、ステム9の上下動に応動してシリンダ1の下端に形成した吸入口A1を開閉する吸入弁である。本実施形態では、吸入弁10をボール弁で構成している。
【0037】
プランジャ体11は、スプリングSによりシリンダ1に対して上方付勢されている。また、プランジャ体11は、シリンダ1に対して上下動可能とされている。プランジャ体11の上方に取り付けられたヘッド部30の押圧部材8を押下することで、ステム9及びプランジャ体11が下方に移動し、次にプランジャ体11が上述の第1ピストン11dと第2ピストン11gの受圧面積の差に起因して下方に移動する。プランジャ体11が下方に移動すると、シリンダ1内における第1ピストン11dより下方の空間(圧縮空間PS)を圧縮してシリンダ1内の圧力を高める。
【0038】
押圧部材8には、ノズルチップ12(ノズル)が嵌合している。ノズルチップ12には、内容液を噴出させる吐出孔12aが形成されている。この吐出孔12aは、大径部と小径部からなり、圧送された内容液の流速を高めて外部に噴出させることができる。
【0039】
本実施形態において、液体噴出器100は、
図1Aに示すように、ヘッド部30を上方及び径方向外側から囲むカバー部材50を備えている。カバー部材50は、筒状の周壁51と、周壁51の上端部を閉塞する頂壁53とを備えており、有頂筒状に形成されている。周壁51の下端部内面に装着部材3の外周壁5aの外面に設けられた係合突起5a1が嵌合することによってカバー部材50は、装着部材3に対して着脱可能に装着されている。
【0040】
なお、液体噴出器100を構成する各部材は、例えば合成樹脂材や金属などで形成することができる。
【0041】
図1Aの構成を有する液体噴出器100において、利用者が内容液を利用するに際しては、まず、
図1Aにおいて容器本体Cの胴部を一方の手で把持し、カバー部材50の周壁51をもう一方の手で把持してカバー部材50を上方に引き上げる。これによって、
図2に示すようにヘッド部30が露出し、内容液の吐出が可能な状態となる。
【0042】
次に利用者は、
図2に示すカバー部材50を取り外した状態からヘッド部30の押圧部材8を下方に押下する。押圧部材8が押下されると、押圧部材8の内周壁8eが嵌合しているステム9の上端部が押し下げられ、プランジャ体11も下方に押し下げられて、シリンダ1の圧縮空間PS内の圧力が高められる。すると第1ピストン11d及び第2ピストン11gの受圧面積の差によりプランジャ体11に作用する下からの押圧力と上からの押圧力の差によってプランジャ体11がステム9に対してさらに下方に移動し、当接部9bと傾斜部11bからなる排出弁15が開放される。すなわち、サブシリンダ7の内径は、下部シリンダ1gの内径よりも大きく形成されている。この構成によって、シリンダ1内の圧力が上昇すると、第2ピストン11gが受ける下向きの圧力の受圧面積の方が第1ピストン11dが受ける上向きの圧力の受圧面積よりも大きいため、プランジャ体11は、第2ピストン11gが受ける下方向の圧力によって下方に移動する。これによって、第1ピストン11dより下方の空間(圧縮空間PS)が圧縮されて圧力が高められたシリンダ1内の内容液は、第2連通孔11f、排出弁15及び連通孔11e等の液体流路Lを通過して、吐出孔12aから吐出される。
【0043】
利用者が更に押圧部材8を押下すると、排出弁15が開いたままでプランジャ体11は、ステム9に対して下がり続ける。やがてプランジャ体11に設けた係合突部11aがステム9の係合リブ9dに当接し係合する(
図3参照)。これによって、ステム9に対するプランジャ体11の更なる下方への相対移動が規制される。したがって、押圧部材8の押圧によってプランジャ体11に下向きの押し下げ力が作用しても、
図3に示すように係合突部11aと係合リブ9dとが係合しプランジャ体11が過度に下方に変位することがない。このため、押圧部材8を勢いよく押し下げた場合であっても、通常の速度で押し下げた場合と比べてプランジャ体11が圧力逃し部1bに早く到達して噴出量が大きく減少するという不都合を抑制することができる。
【0044】
押圧部材8を可動範囲の下限まで押し下げると、プランジャ体11の第1ピストン11dがシリンダ1の圧力逃し部1bを覆う位置まで到達する。これによって、シリンダ1の内部の液圧は圧力逃し部1b及び圧力開放孔1cを経由して解放される。シリンダ1の内部の液圧の解放によって、プランジャ体11に作用していた下向きの押し下げ力も解放され、プランジャ体11はスプリングSの付勢力により上方に変位して当接部9bが傾斜部11bに着座し排出弁15は閉塞される。これによって、ノズルチップ12の吐出孔12aからの内容液の噴出は停止される。また、シリンダ1内の液圧が急激に開放されるため、液切れよく内容液の噴出を終了させることができる。
【0045】
利用者が内容液の利用を終了し、押圧部材8の押圧を停止すると、シリンダ1内において下方まで変位していたプランジャ体11は、スプリングSの復元力によって上方に付勢され、
図2に示す位置まで上昇する。プランジャ体11の上昇によって、シリンダ1内は体積が増加して負圧となり、弁座1eに着座していた吸入弁10が上昇して弁開放されるとともにパイプPから容器本体C内の内容液が吸入口A1経由でシリンダ1内に導入される。この導入された内容液は、次回の押圧部材8の押圧によりシリンダ1の圧縮空間PS内で加圧され、第2連通孔11f、排出弁15及び連通孔11e等の液体流路Lを経由して吐出孔12aから吐出される。
【0046】
パイプPを通じて容器本体C内の内容液がシリンダ1内へ導入されるため、容器本体C内が負圧に転じるが、上述のように外気導入孔1d、及び縦リブ7a1の間の空間を介して弁部材13の下方領域も負圧になる。この負圧化によって弁体部13aの径方向内側端が下方に変位してステム9との間に隙間を生じるため、弁が開放されて外気が弁部材13、縦リブ7a1の間の空間及び外気導入孔1dを経由して容器本体C内に導入される。
【0047】
以上述べたように、本実施形態は、容器本体Cの口部C2に装着する装着部材3と、装着部材3から下方に垂下するシリンダ1であって、上部シリンダ1hと、上部シリンダ1hの下端部に連なり上部シリンダ1hよりも小さな内径を有する下部シリンダ1gとを有し、上部シリンダ1hには、容器本体C内に外気を導入する外気導入孔1dが設けられている、シリンダ1と、シリンダ1に対して上方付勢されるとともに上下動可能に設けられ、シリンダ1の内部から起立するプランジャ体11と、シリンダ1に対して上下動可能に設けられる筒状のステム9と、ステム9の下部に一体に設けられ、上部シリンダ1h内を上下方向に移動可能なサブシリンダ7と、シリンダ1とステム9との隙間をシールする弁部材13であって、弁部材13は、外気導入孔1dを通じた容器本体C内への外気の導入を許容すると共に容器本体C内から外気導入孔1dを通じた内容液の漏出を抑制する逆止弁である、弁部材13と、ステム9の上部に押下可能に取り付けられ、内容液を吐出するノズル(ノズルチップ12)を有するヘッド部30とを備え、プランジャ体11の下部には、下部シリンダ1gの内面を摺動可能な第1ピストン11dが形成されると共に、第1ピストン11dの上方には、サブシリンダ7の内面を摺動可能な第2ピストン11gが形成されており、サブシリンダ7は、下部シリンダ1gよりも大きな内径を有するように構成した。このような構成の採用によって、容器本体C内に負圧が発生すると、外気導入孔1dを介して弁部材13の下方領域も負圧となって弁が開放されるため、外部から外気導入孔1dを通じて容器本体Cの内部に外気を導入することができる。また、弁部材13は逆止弁として機能するため、容器本体C内の内容液が外部に漏出することを抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態では、上部シリンダ1hの内面と、サブシリンダ7の外面との間には、空隙が形成されるように構成した。このような構成の採用によって、押圧部材8を下方に押圧したときに、ステム9と一体形成されたサブシリンダ7がシリンダ1内面と摺動しないため、摺動抵抗が低減される。従って、押下操作が重くなることを回避することができる。
【0049】
また、本実施形態では、弁部材13は、シリンダ1に嵌合するモジュール部材6によって固定されるように構成した。このような構成の採用によって、モジュール部材6が弁部材13をシリンダ1から離脱するのを抑制することができるので、ポンプ機構をモジュール化することができる。従って、ポンプ機構をモジュール化することで複数の外観デザインへの対応がし易くなると共に、吐出量が異なるバリエーション化についても、設備側への負担を増加させることなく対応することができる。
【0050】
また、本実施形態では、サブシリンダ7の外面には、上下方向に延びる縦リブ7a1が周方向に間欠的に設けられるように構成した。このような構成の採用によって、サブシリンダ7とシリンダ1の内面とが摺動する構成であったとしても、両者の接触面積を削減するとともに、サブシリンダ7がシリンダ1の内面との間で完全なシール状態を形成することを回避することができる。このように、直径の大きな摺動部の接触面積を低減することによって摺動抵抗を減らし、押圧部材8を押下した際に押下操作が重くなることを回避することができる。
【0051】
上述したところは、本開示の一形態を示したに過ぎず、特許請求の範囲内において、種々の変更を加えることができる。例えば、上述の形態では、予め液体噴出器100がユニット化されているが、本開示に従えば、ユニットさせることなく、容器本体Cに対して個々のパーツを組み付けるものとすることもできる。
【0052】
また、本実施形態では、第1ピストン11dと第2ピストン11gとは、一体形成されるように構成したが、この態様に限定されず、第1ピストン11dと第2ピストン11gとが別部品に含まれるように構成してもよい。
【0053】
また、本実施形態では、係合部17を構成する係合リブ9dのみを周方向に間欠的に設けるように構成したが、この態様には限定されず、係合突部11a及び係合リブ9dの双方を周方向に間欠的に設けてもよい。また、係合突部11aのみを周方向に間欠的に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本開示は、例えば、化粧水、整髪料等の化粧品、虫除け等の医薬品及び、美容・健康用品の分野に係る液体噴出器100として採用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 シリンダ
1a シリンダ本体
1b 圧力逃し部
1c 圧力開放孔
1d 外気導入孔
1e 弁座
1f 嵌合筒部
1g 下部シリンダ
1h 上部シリンダ
2 フランジ
2a 嵌合筒部
3 装着部材
3a 周壁
3S ねじ部
4 固定筒
5 内周壁
5a 外周壁
5a1 係合突起
5b 天壁
6 モジュール部材
6a 筒壁部
6b 弁固定フランジ
6c 嵌合周壁
6d 弁固定リング
7 サブシリンダ
7a 筒状部
7a1 縦リブ
7c 上壁
7c1 環状押圧部
8 押圧部材
8a 凹部
8c ノズル収容部
8d 外周壁
8e 内周壁
9 ステム
9b 当接部
9d 係合リブ
10 吸入弁
11 プランジャ体
11a 係合突部
11b 傾斜部(弁座)
11d 第1ピストン
11e 連通孔
11f 第2連通孔
11g 第2ピストン
11h 柱状部
11j 筒状部
11k ピストン筒
12 ノズルチップ(ノズル)
12a 吐出孔
13 弁部材
13a 弁体部
13b 環状壁
13c 弁フランジ
15 排出弁
17 係合部
30 ヘッド部
40 プランジャ体
50 カバー部材
51 周壁
53 頂壁
100 液体噴出器
A1 吸入口
A2 排出口
C 容器本体
C1 空間
C2 口部
L 液体流路
O 中心軸線
P パイプ
PK パッキン
PS 圧縮空間
S スプリング