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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095027
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】合成樹脂製容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20240703BHJP
   B65D 1/42 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B65D1/02 221
B65D1/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212011
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】栗原 吾郎
【テーマコード(参考)】
3E033
【Fターム(参考)】
3E033AA02
3E033BA16
3E033BA18
3E033CA02
3E033CA05
3E033DA04
3E033DB01
3E033DC03
3E033EA04
3E033EA06
3E033FA03
3E033GA02
(57)【要約】
【課題】胴部の座屈強度をより高めた合成樹脂製容器を提供することである。
【解決手段】口部2と、口部2に肩部3を介して連なる筒状の胴部4と、胴部4の下端を閉塞する底部5とを備えたボトル形状の合成樹脂製容器1であって、それぞれ径方向内側に向けて凹むとともに周方向に沿って延びて胴部4に設けられ、互いに上下方向に間隔を空けて配置された複数本の環状の溝部10と、それぞれ容器外方に向けて膨出する形状を有し、それぞれの溝部10の下向きの側壁11に周方向に等間隔に並べて設けられた複数の第1膨出部13と、それぞれ第1膨出部13の上下反転形状を有し、それぞれの溝部10の上向きの側壁12に周方向に等間隔に並ぶとともに隣り合う一対の第1膨出部13の周方向中央位置において一対の第1膨出部13に隣接して配置された第1膨出部13と同数の第2膨出部14とを有することを特徴とする合成樹脂製容器1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物の注出口となる口部と、前記口部に肩部を介して連なる筒状の胴部と、前記胴部の下端を閉塞する底部と、を備えたボトル形状の合成樹脂製容器であって、
それぞれ径方向内側に向けて凹むとともに周方向に沿って延びて前記胴部に設けられ、互いに上下方向に間隔を空けて配置された複数本の環状の溝部と、
それぞれ容器外方に向けて膨出する形状を有し、それぞれの前記溝部の下向きの側壁に周方向に等間隔に並べて設けられた複数の第1膨出部と、
それぞれ前記第1膨出部の上下反転形状を有し、それぞれの前記溝部の上向きの側壁に周方向に等間隔に並ぶとともに隣り合う一対の前記第1膨出部の周方向中央位置において一対の前記第1膨出部に隣接して配置された前記第1膨出部と同数の第2膨出部とを有することを特徴とする合成樹脂製容器。
【請求項2】
それぞれの前記溝部に、前記第1膨出部及び前記第2膨出部がそれぞれ10個または9個設けられている、請求項1に記載の合成樹脂製容器。
【請求項3】
前記胴部が、
円筒状のラベル装着部と、
前記ラベル装着部の下端に一体に連ねて設けられ、複数の減圧吸収パネルが設けられた減圧吸収部と、を有し、
複数本の前記溝部が前記ラベル装着部に設けられている、請求項1または2に記載の合成樹脂製容器。
【請求項4】
前記ラベル装着部に4本の前記溝部が設けられている、請求項3に記載の合成樹脂製容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物の注出口となる口部と、口部に肩部を介して連なる筒状の胴部と、胴部の下端を閉塞する底部と、を備えたボトル形状の合成樹脂製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン(PP)製のボトルやポリエチレンテレフタレート(PET)製のボトルに代表されるようなボトル形状の合成樹脂製容器は、軽量で取り扱いが容易であること、内容物の保存安定性に優れること、コスト的に安価であることから、飲料、食品、化粧料等の種々の内容物を収納する用途に使用されている。
【0003】
このような合成樹脂製容器にあっては、ゴミの削減を図り自然環境を良好に維持する観点から、一本当たりの合成樹脂材料の使用量を減らすべく容器を薄肉化(軽量化)する要求が高まっているが、容器を薄肉化すると胴部の強度が低下するという問題が生じることになる。
【0004】
このような問題に対し、従来、合成樹脂製容器の胴部に、径方向内側に向けて凹む環状の溝部を設けることで胴部の径方向に向けた側面強度を高めつつ溝部の下向きの側壁と上向きの側壁とに、それぞれ容器外方に向けて膨出する形状を有する複数の膨出部を周方向に交互に且つ上下に互い違いに並べて設けることで、溝部が設けられることで低下した胴部の座屈強度を高めるようにした技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-179847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の合成樹脂製容器においても、胴部の座屈強度をさらに高めたいとの要望があり、この点で改善の余地があった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、胴部の座屈強度をより高めた合成樹脂製容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の合成樹脂製容器は、内容物の注出口となる口部と、前記口部に肩部を介して連なる筒状の胴部と、前記胴部の下端を閉塞する底部と、を備えたボトル形状の合成樹脂製容器であって、それぞれ径方向内側に向けて凹むとともに周方向に沿って延びて前記胴部に設けられ、互いに上下方向に間隔を空けて配置された複数本の環状の溝部と、それぞれ容器外方に向けて膨出する形状を有し、それぞれの前記溝部の下向きの側壁に周方向に等間隔に並べて設けられた複数の第1膨出部と、それぞれ前記第1膨出部の上下反転形状を有し、それぞれの前記溝部の上向きの側壁に周方向に等間隔に並ぶとともに隣り合う一対の前記第1膨出部の周方向中央位置において一対の前記第1膨出部に隣接して配置された前記第1膨出部と同数の第2膨出部とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明の合成樹脂製容器は、上記構成において、それぞれの前記溝部に、前記第1膨出部及び前記第2膨出部がそれぞれ10個または9個設けられているのが好ましい。
【0010】
本発明の合成樹脂製容器は、上記構成において、前記胴部が、円筒状のラベル装着部と、前記ラベル装着部の下端に一体に連ねて設けられ、複数の減圧吸収パネルが設けられた減圧吸収部と、を有し、複数本の前記溝部が前記ラベル装着部に設けられているのが好ましい。
【0011】
本発明の合成樹脂製容器は、上記構成において、前記ラベル装着部に4本の前記溝部が設けられているのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、胴部の座屈強度をより高めた合成樹脂製容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る合成樹脂製容器の正面図である。
図2図1に示す溝部の拡大図である。
図3】(a)は、図1におけるA-A線に沿う断面図であり、(b)は、図1におけるB-B線に沿う断面図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る合成樹脂製容器の正面図である。
図5】膨出部のパターン数と座屈荷重との関係を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明をより具体的に例示説明する。
【0015】
図1に示す本発明の一実施形態に係る合成樹脂製容器1は、例えば醤油、酢、たれ等の調味料、果汁飲料やお茶等の飲料などを内容物として収納する用途に用いることができるものである。
【0016】
なお、本明細書及び特許請求の範囲においては、合成樹脂製容器1の上下方向は、図1に示すように合成樹脂製容器1を正立姿勢とした状態における上下方向を意味するものとし、径方向は合成樹脂製容器1の軸線Oに垂直な方向を意味するものとし、周方向は軸線Oを中心とした周方向を意味するものとする。
【0017】
合成樹脂製容器1は、内容物の注出口となる口部2と、口部2の下端に一体に連なる裁頭円錐筒状の肩部3と、口部2に肩部3を介して連なる筒状の胴部4と、胴部4の下端を閉塞する底部5とを備えたボトル形状となっている。なお、口部2、肩部3、胴部4及び底部5は、共通の軸線Oを有している。
【0018】
本実施形態では、合成樹脂製容器1は、ポリエチレンテレフタレート製のプリフォームを二軸延伸ブロー成形することにより所謂ペットボトルに構成されたブロー成形容器である。なお、合成樹脂製容器1は、ポリエチレンテレフタレートに限らず、例えば延伸ポリプロピレン(OPP)等の熱可塑性を有する他の合成樹脂材料からなるプリフォームを二軸延伸ブロー成形して形成されたものとすることもできる。また、合成樹脂製容器1は、プリフォームを二軸延伸ブロー成形する方法のみならず、例えば樹脂材料を押し出しブロー成形するなど、種々の製法で製造されたものとすることもできる。
【0019】
口部2は、軸線Oを中心とした円筒状であり、その外周面には円環状の突起2aが一体に設けられている。内容物が充填された後、図示しないキャップを口部2に打栓することにより口部2を閉塞することができる。なお、口部2の外周面に突起2aを設ける代わりに雄ねじを設け、雄ねじにキャップをねじ結合することにより口部2を閉塞する構成としてもよい。
【0020】
本実施形態では、胴部4は、ラベル装着部4aと、ラベル装着部4aの下方に設けられた減圧吸収部4bとを有している。
【0021】
ラベル装着部4aは、その外側に、シュリンクラベル、ロールラベル等のラベル(不図示)が装着される部分である。シュリンクラベルとは、ポリスチレン(PS)やポリエチレンテレフタレート(PET)等の熱収縮性フィルムによりラベル装着部4aよりも大径の筒状に形成され、ラベル装着部4aの外側に被せられた状態で熱風等により加熱されることで収縮してラベル装着部4aの外周面に密着した状態となって装着されるものである。ロールラベルは、帯状のものをラベル装着部4aに巻くようにして貼り付けられるものである。ラベル装着部4aは外径が一定の円筒形状となっており、肩部3の下端に一体に連なっている。
【0022】
減圧吸収部4bは、ラベル装着部4aよりも僅かに大径の円筒状となっている。本実施形態では、ラベル装着部4aと減圧吸収部4bとの間には径方向内側に向けて凹む円環状の凹み部6が設けられている。
【0023】
減圧吸収部4bには減圧吸収パネル7が設けられている。本実施形態では、減圧吸収部4bには、周方向に等しい間隔を空けて6枚の長方形状の減圧吸収パネル7が設けられている。減圧吸収パネル7は、合成樹脂製容器1の内部に減圧が生じたときに径方向内側に向けて凹むように弾性変形して当該減圧を吸収することができる。なお、減圧吸収パネル7の形状、枚数、配置は種々変更可能である。
【0024】
底部5は、減圧吸収部4bの下端に一体に連なって胴部4の下端を閉塞している。
【0025】
胴部4には複数本の溝部10が設けられている。本実施形態では、胴部4のラベル装着部4aに、上下方向に等しい間隔を空けて配置された4本の溝部10が設けられている。それぞれの溝部10は、径方向内側(容器内方)に向けて凹むとともに周方向に沿って胴部4の全周に亘って延びる環状となっている。図2に示すように、複数本の溝部10は、それぞれ下向きの側壁11と上向きの側壁12とを備え、その縦断面形状は略V字形となっている。ラベル装着部4aは、複数本の溝部10が設けられることで、径方向の剛性が高められ、外観形状を安定的に保持することができる。したがって、ラベル装着部4aは、シュリンクラベルが装着されても、シュリンクラベルから加えられる径方向内側への圧力によって変形することが抑制される。なお、複数本の溝部10は、それぞれ縦断面形状がU字形状でもよく、台形形状でもよい。
【0026】
図1図2に示すように、それぞれの溝部10には、複数の第1膨出部13と、第1膨出部13と同数の第2膨出部14とが設けられている。なお、図1においては、便宜上、1つの溝部10について1つの第1膨出部13及び第2膨出部14にのみ符号を付してある。
【0027】
複数の第1膨出部13は、それぞれ容器外方に向けて膨出する形状を有し、それぞれの溝部10の下向きの側壁11に周方向に等間隔に並べて設けられている。より具体的には、複数の第1膨出部13の形状は、それぞれ上下方向の長さよりも周方向の長さが長く、周方向の両端が尖った横長の形状である。なお、複数の第1膨出部13は、何れも溝部10の内部に収まる大きさとなっており、互いに同じ形状であるとともに同じ大きさである。
【0028】
第2膨出部14は、第1膨出部13の上下反転形状すなわち第1膨出部13を上下反転させた形状を有している。第2膨出部14は、それぞれの溝部10の上向きの側壁12に周方向に等間隔に並ぶとともに隣り合う一対の第1膨出部13の周方向中央位置において一対の第1膨出部13に隣接して配置されている。すなわち、複数の第2膨出部14は、それぞれ周方向中央が上方に位置する隣り合う一対の第1膨出部13の周方向中央位置に一致するように第1膨出部13に対して周方向にずれて配置されている。なお、複数の第2膨出部14も、互いに同じ形状であるとともに同じ大きさである。
【0029】
このように、それぞれの溝部10の内部には、複数の第1膨出部13と、第1膨出部13と同数の第2膨出部14とが、周方向に交互に且つ上下に互い違いに配置された構成となっている。
【0030】
なお、4本の溝部10における複数の第1膨出部13及び複数の第2膨出部14の配置は全て同一である。また、4本の溝部10において、複数の第1膨出部13の周方向位置は、他の溝部10における複数の第1膨出部13の周方向位置と一致し、複数の第2膨出部14の周方向位置は、他の溝部10における複数の第2膨出部14の周方向位置と一致している。すなわち、第1膨出部13と第2膨出部14とを含めた4本の溝部10の形状ないし構成は全て同一である。
【0031】
図2に示すように、隣り合う第1膨出部13と第2膨出部14とは互いに僅かに間隔を空けて隣接しており、その隣接部15は周方向に対して傾斜している。また、第1膨出部13の第2膨出部14と隣接していない下側辺部16及び第2膨出部14の第1膨出部13と隣接していない上側辺部17は、それぞれ周方向に略平行となっている。なお、下側辺部16、上側辺部17は、曲線状に湾曲した形状であってもよい。さらに、隣り合う第1膨出部13の周方向端は、第2膨出部14の上側辺部17を介して接続されており、隣接する第2膨出部14の周方向端は、第1膨出部13の下側辺部16を介して接続されている。なお、複数本の溝部10の形状を互いに異ならせた構成としてもよく、複数本の溝部10における第1膨出部13ないし第2膨出部14の周方向位置(位相)を互いに異ならせてもよい。
【0032】
図3に示すように、本実施形態では、それぞれの溝部10には、10個の第1膨出部13が互いに周方向に36度ずつずれて設けられるとともに、第1膨出部13と同数の10個の第2膨出部14が互いに周方向に36度ずつずれるとともに隣接する第1膨出部13に対して18度ずれて設けられている。すなわち、それぞれの溝部10には、1つの第1膨出部13と、この第1膨出部13に隣接する1つの第2膨出部14とからなる膨出部のパターンが、周方向に36度ずつずれて10個隣接して設けられている。すなわち、図1に示す合成樹脂製容器1の膨出部のパターン数は10である。
【0033】
図1に示す実施形態においては、合成樹脂製容器1は、胴部4に設けられた4本の溝部10に、それぞれ10個の第1膨出部13と10個の第2膨出部14とが周方向に交互に且つ上下に互い違いに配置された構成すなわち膨出部のパターン数が10となる構成とされているが、図4に他の実施形態として示すように、合成樹脂製容器1は、胴部4に設けられた4本の溝部10に、それぞれ9個の第1膨出部13と9個の第2膨出部14とが周方向に交互に且つ上下に互い違いに配置された構成すなわち膨出部のパターン数が9となる構成とすることもできる。図4に示す他の実施形態に係る合成樹脂製容器1の、第1膨出部13と第2膨出部14とを含めた4本の溝部10以外の構成は、図1に示す合成樹脂製容器1と同一である。なお、図4には、前述した部材に対応する部材に同一の符号を付してある。
【0034】
上記構成を有する図1に示す本実施形態に係る合成樹脂製容器1及び図4に示す他の実施形態に係る合成樹脂製容器1では、胴部4に、それぞれ複数の第1膨出部13と、第1膨出部13と同数の第2膨出部14とが、周方向に交互に且つ上下に互い違いに配置された構成の複数本の溝部10を設けるようにしたので、胴部4に1本のみの溝部10が設けられる合成樹脂製容器に比べて座屈強度を高めることができる。
【0035】
ここで、発明者らは、図1及び図4に示す合成樹脂製容器1において、複数本の溝部10に設ける膨出部のパターン数が合成樹脂製容器1の座屈強度に与える影響を調べるために、上記した合成樹脂製容器1と同一のボトル形状を有し、内容積が1050ml(内容量1000ml用)、重量が29gのポリエチレンテレフタレート製の合成樹脂製容器であって、4本の溝部10に設ける膨出部のパターン数を5(隣り合うパターンの間隔72度)とした比較例1の合成樹脂製容器、4本の溝部10に設ける膨出部のパターン数を6(隣り合うパターンの間隔60度)とした比較例2の合成樹脂製容器、4本の溝部10に設ける膨出部のパターン数を7(隣り合うパターンの間隔51.4度)とした比較例3の合成樹脂製容器、4本の溝部10に設ける膨出部のパターン数を8(隣り合うパターンの間隔45度)とした比較例4の合成樹脂製容器、4本の溝部10に設ける膨出部のパターン数を11(隣り合うパターンの間隔32.7度)とした比較例5の合成樹脂製容器、4本の溝部10に設ける膨出部のパターン数を12(隣り合うパターンの間隔30度)とした比較例6の合成樹脂製容器、4本の溝部10に設ける膨出部のパターン数を13(隣り合うパターンの間隔27.7度)とした比較例7の合成樹脂製容器と、4本の溝部10に設ける膨出部のパターン数を9(隣り合うパターンの間隔40度)とした実施例1の合成樹脂製容器及び4本の溝部10に設ける膨出部のパターン数を10(隣り合うパターンの間隔36度)とした実施例2の合成樹脂製容器を用意し、これらの合成樹脂製容器のそれぞれについて、内容物を満量充填し、口部をキャップで閉じた状態における座屈強度の解析を行った。その結果を表1及び図5に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
表1及び図5の結果から、合成樹脂製容器の胴部の溝部に設ける膨出部のパターン数が増加すると、全体的に座屈強度も緩やかに上昇するが、膨出部のパターン数が9及び10のときには、他のパターン数の場合よりも顕著に座屈強度が高められることが解った。特に、膨出部のパターン数が10のときには、より顕著に座屈強度が高められることが解った。
【0038】
ここで、ラベル装着部の溝部が設けられている部分は、周方向に対して傾斜した形状を有する第1膨出部と第2膨出部との隣接部(図2における隣接部15)において、周方向に平行な形状の下側辺部及び上側辺部の部分よりも上下方向の変形がし難くなっている。
【0039】
一方、座屈解析において、膨出部のパターン数が10の実施例2の合成樹脂製容器に高い座屈荷重が加えられると、少なくとも1つの溝部において、第1膨出部と第2膨出部とが隣接する20個の隣接部(図2における隣接部15)のうち周方向に90度ずつずれた4か所の隣接部がそれぞれ径方向外側に向けて突出して軸線に垂直な横断面が略四角形となるように変形する。したがって、当該溝部が設けられる部分は、略四角形に変形した横断面形状の4つの頂点にそれぞれ隣接部が配置されるため上下方向の変形がし難くなっているものと考えられる。
【0040】
このように、膨出部のパターン数が10の実施例2の合成樹脂製容器では、上下方向の変形がし難い溝部が設けられる部分により、他の溝部が設けられる部分における座屈強度の低下を抑制して、高い座屈荷重に耐える容器を得ることができる。
【0041】
次に、座屈解析において、膨出部のパターン数が9の実施例1の合成樹脂製容器に高い座屈荷重が加えられると、それぞれの溝部において、互いに対角線上に配置される一対の隣接部と、これらの隣接部の間において互いに対角線上に配置される上側辺部分及び下側辺部とを頂点とする四角形状に変形する。したがって、隣接する2つの溝部の間では、略四角形の頂点が互いに周方向に45度ずれた状態で、略同等の頂点が形成されることになり、これによりそれぞれ2つの隣接部が設けられる頂点において上下方向の変形がし難くなっているものと考えられる。
【0042】
このように、膨出部のパターン数が9の実施例1の合成樹脂製容器では、隣接関係にある溝部が設けられる部分は、何れも2つの隣接部が設けられる頂点において上下方向の変形がし難くなっているので、高い座屈荷重に耐える容器を得ることができる。
【0043】
上記した実施例1、2に対し、膨出部のパターン数が8の比較例4の合成樹脂製容器では、高い座屈荷重が加えられると、溝部が設けられる部分は、何れも、上下方向に変形し易い下側辺部ないし上側辺部が4つの頂点となる略四角形状の横断面となるように変形する。そのため、比較例4の合成樹脂製容器の構成では、実施例1、2のような顕著に高い座屈荷重を得ることができない。
【0044】
また、膨出部のパターン数が11の比較例5の合成樹脂製容器では、高い座屈荷重が加えられると、少なくとも1つの溝部が設けられる部分は、上下方向に変形し易い下側辺部ないし上側辺部が4つの頂点となる略四角形状の横断面となるように変形する。しかし、当該溝部に隣接する溝部が設けられる部分は、隣接部が4つの頂点となるより座屈に強い略四角形状の横断面となるような変形を生じないため、比較例5の合成樹脂製容器の構成では、実施例1、2のような顕著に高い座屈荷重を得ることができない。
【0045】
以上の結果が示すように、図1に示す本実施形態の合成樹脂製容器1ないし図4に示す他の実施形態の合成樹脂製容器1では、胴部4の複数本の溝部10に設ける膨出部のパターン数を9または10とし、すなわち複数本の溝部10に9個または10個の第1膨出部13及び第2膨出部14を周方向に交互に且つ上下に互い違いに配置する構成としたので、合成樹脂製容器1の座屈強度を顕著に高めることができる。
【0046】
また、図1に示す本実施形態の合成樹脂製容器1では、膨出部のパターン数を10とし、すなわち複数本の溝部10に10個の第1膨出部13及び第2膨出部14を周方向に交互に且つ上下に互い違いに配置する構成としたので、合成樹脂製容器1の座屈強度をより顕著に高めることができる。
【0047】
さらに、本実施形態の合成樹脂製容器1では、胴部4を、円筒状のラベル装着部4aと、ラベル装着部4aの下端に一体に連ねて設けられるとともに複数の減圧吸収パネル7が設けられた減圧吸収部4bと、を有する構成とし、複数本の溝部10をラベル装着部4aに設けるようにしたので、複数本の溝部10によってラベル装着部4aがシュリンクラベルから加えられる径方向内側への圧力によって変形することを抑制しつつ、複数本の溝部10が設けられることによる胴部4の座屈強度の低下を抑制して合成樹脂製容器1を高い座屈強度を有するものとすることができる。
【0048】
さらに、本実施形態の合成樹脂製容器1では、ラベル装着部4aに4本の溝部10を設けるようにしたので、外力による径方向内側への変形をより効果的に抑制しつつ複数本の溝部10が設けられることによる胴部4の座屈強度の低下を抑制して合成樹脂製容器1を高い座屈強度を有するものとすることができる。
【0049】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0050】
例えば、合成樹脂製容器1に充填される内容物は、醤油、酢、たれ等の調味料、果汁飲料やお茶等の飲料などに限らず、食品や化粧料等の他の内容物であってもよい。
【0051】
また、胴部4は、筒状の部分を有していれば、ラベル装着部4a及び減圧吸収部4bを備えていない構成であってもよく、ラベル装着部4a及び減圧吸収部4bの何れか一方のみを備えた構成であってもよい。
【0052】
さらに、溝部10に設ける第1膨出部13及び第2膨出部14の形状は、容器外方に向けて膨出する形状であれば種々変更可能である。
【0053】
さらに、前記実施形態では、溝部10に設ける膨出部のパターン数ないし第1膨出部13、第2膨出部14の数を9または10としているが、これに限らず、複数であれば、種々パターン数ないし個数に変更可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 合成樹脂製容器
2 口部
2a 突起
3 肩部
4 胴部
4a ラベル装着部
4b 減圧吸収部
5 底部
6 凹み部
7 減圧吸収パネル
10 溝部
11 下向きの側壁
12 上向きの側壁
13 第1膨出部
14 第2膨出部
15 隣接部
16 下側辺部
17 上側辺部
O 軸線
図1
図2
図3
図4
図5