(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095030
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】壁紙
(51)【国際特許分類】
D06N 7/00 20060101AFI20240703BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240703BHJP
E04F 13/07 20060101ALI20240703BHJP
E04F 13/18 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
D06N7/00
B32B27/20 Z
E04F13/07 B
E04F13/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212019
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】505462677
【氏名又は名称】株式会社グリーンテクノ21
(71)【出願人】
【識別番号】503044019
【氏名又は名称】下 浩史
(74)【代理人】
【識別番号】100195327
【弁理士】
【氏名又は名称】森 博
(74)【代理人】
【識別番号】100229389
【弁理士】
【氏名又は名称】香田 淳也
(72)【発明者】
【氏名】下 浩史
(72)【発明者】
【氏名】萬本 浩也
(72)【発明者】
【氏名】江頭 順也
【テーマコード(参考)】
2E110
4F055
4F100
【Fターム(参考)】
2E110AA47
2E110AA57
2E110AA70
2E110AB04
2E110AB23
2E110BA02
2E110BB04
2E110BB09
2E110BC02
2E110CA03
2E110CA04
2E110EA09
2E110GA32W
2E110GA32X
2E110GA43W
2E110GA43Z
2E110GB42X
2E110GB43W
2E110GB43Z
2E110GB44W
2E110GB44Z
2E110GB46W
2E110GB46Z
2E110GB48W
2E110GB48Z
2E110GB62X
2E110GB63X
2E110GB65W
2E110GB65Z
4F055AA17
4F055BA10
4F055BA12
4F055CA05
4F055FA08
4F055FA40
4F055GA02
4F055GA26
4F100AJ08B
4F100AK01B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100CA23B
4F100DJ00B
4F100GB08
4F100JK01
4F100JL16
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】廃棄物の有効利用に資する卵殻粉末を用いた壁紙を提供することにある。
【解決手段】下地材と、前記下地材に積層された樹脂層とからなり、前記樹脂層が、卵殻粉末(A)と樹脂(B)を含む樹脂組成物からなることを特徴とする壁紙。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地材と、前記下地材に積層された樹脂層とからなり、
前記樹脂層が、卵殻粉末(A)と樹脂(B)を含む樹脂組成物からなることを特徴とする壁紙。
【請求項2】
前記樹脂組成物が、発泡樹脂組成物である請求項1に記載の壁紙。
【請求項3】
樹脂(B)が、塩化ビニル系樹脂である請求項1に記載の壁紙。
【請求項4】
樹脂(B)100重量部に対して、卵殻粉末(A)が5重量部以上300重量部以下である請求項1に記載の壁紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵殻粉末を含む壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
下地材に樹脂層を積層して作製される壁紙において、樹脂層には一般に充填材が含まれる。充填材には有機系充填材や無機系充填材があり、その中にも様々な種類が存在し、壁紙の使用目的に応じて、適宜選択されて壁紙に用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1では、充填材として炭酸カルシウムを所定の配合割合で樹脂層に含みながら、壁紙の耐汚染性・耐傷性を高めている。特許文献2では、充填材として炭酸カルシウムを樹脂層に含んで、意匠性、表面強度等が良好な壁紙を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-188141号公報
【特許文献2】特開2020-165032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般には、壁紙で使用されている炭酸カルシウムは鉱物由来であり、代替材料が求められていた。
【0006】
かかる状況下、本発明の目的は、廃棄物の有効利用に資する壁紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、壁紙の樹脂層に配合する充填材として卵殻粉末を使用すると、軽量でありつつ、物理的強度が改善されることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 下地材と、前記下地材に積層された樹脂層とからなり、前記樹脂層が、卵殻粉末(A)と樹脂(B)を含む樹脂組成物からなることを特徴とする壁紙。
<2> 前記樹脂組成物が、発泡樹脂組成物である<1>に記載の壁紙。
<3> 樹脂(B)が、塩化ビニル系樹脂である<1>または<2>に記載の壁紙。
<4> 樹脂(B)100重量部に対して、卵殻粉末(A)が5重量部以上300重量部以下とである<1>から<3>のいずれかに記載の壁紙。
【0009】
<2A> 前記樹脂組成物が、非発泡樹脂組成物である<1>に記載の壁紙。
【0010】
<1B> <1>から<4>のいずれかに記載された壁紙の製造方法であって、
前記卵殻粉末(A)と前記樹脂(B)と溶媒(分散媒)を混合しスラリーを得る工程(1)と、
前記スラリーを前記下地材に塗工する工程(2)と、
前記スラリーを塗工した前記下地材を加熱し、樹脂層を得る工程(3)と、
を有する製造方法。
<2B> 前記工程(3)が、前記スラリーを塗工した前記下地材を乾燥する過程と、前記スラリーを発泡させる過程からなる、<1B>の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、廃棄物の有効利用に資する壁紙が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例で使用した卵殻粉末の粒度分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
【0014】
また、本明細書において、「~」とはその前後の数値又は物理量を含む表現として用いるものとする。また、本明細書において、「A及び/又はB」という表現には、「Aのみ」、「Bのみ」、「A及びBの双方」が含まれる。
【0015】
<1.壁紙>
本発明は、下地材と、前記下地材に積層された樹脂層とからなり、前記樹脂層が、卵殻粉末(A)と樹脂(B)を含む樹脂組成物からなる壁紙(以下、「本発明の壁紙」と称す場合がある)に関する。
【0016】
[1-1.下地材]
本発明の壁紙に用いられる下地材は、本発明の目的を損なわない範囲で、特に制限はなく、紙、布、樹脂フィルム等を使用することができるが、典型的には紙が用いられる。下地材の厚さは、30~200μm程度とすることが適当である。
【0017】
[1-2.樹脂層]
本発明の壁紙に用いられる樹脂層は、前記下地材に積層された層であり、卵殻粉末(A)と樹脂(B)を含む樹脂組成物から構成される。
【0018】
本発明に係る樹脂組成物において、充填材として一般的に含まれる鉱物系の炭酸カルシウムなどの無機系充填材ではなく、卵殻粉末(A)を含むことを特徴とする。本発明に係る樹脂組成物に含まれる卵殻粉末(A)、樹脂(B)(及びその他の成分)について、以下説明する。
【0019】
[1-2-1.卵殻粉末(A)]
卵殻粉末(A)は、卵殻を粉砕した粉末である。
卵殻粉末(A)の原料となる卵殻は、鳥類の卵(以下、単に「卵」と略称する場合がある。)としては、任意の鳥類のものを特に制限なく用いることができるが、コストや入手の容易さの観点から鶏卵が好ましく用いられる。
【0020】
卵殻粉末(A)の粒径は、樹脂(B)の種類、その他の成分の種類、及びこれらの配合割合等に応じて選択され特に制限はないが、通常、0.1μm以上100μm以下の範囲である。卵殻粉末(A)の形状は特に制限はないが、好適には球状である。
【0021】
卵殻粉末(A)の製造方法は任意であるが、典型的には、割卵後内容物を除去して得られる卵殻から卵殻膜を除去処理し、必要に応じてさらなるタンパク質除去処理(焼成処理やアルカリ処理等)を行ってもよい。その後、卵殻を乾燥させて粉砕する。粉砕物をふるいにより目的とする粒径範囲となるように粉砕処理はハンマーミルやジェットミル等の公知の粉砕機が用いられる。また、粉砕後に必要に応じて他の処理を加えてもよい。
【0022】
一般的な無機系充填材を含む壁紙と比較して、卵殻粉末(A)を充填材として用いる本発明の壁紙は機械的強度に優れ、耐スクラッチ性及び耐摩耗性を有する。本発明の壁紙の性能向上は、卵殻粉末(A)が寄与していると考えられる。詳細な理由は明らかになっていないものの、卵殻粉末(A)は多孔質構造を有するため、樹脂(B)が卵殻粉末(A)の細孔に浸透して樹脂(B)と卵殻粉末(A)との結合力が向上していると推測される。結合力向上が、壁紙としての物理的強度、加えて耐スクラッチ性及び耐摩耗性の改善につながっていると推定される。
また、本発明の壁紙は、一般的な充填材を含む壁紙と比べて軽量化しやすい。これは、多孔質構造の卵殻粉末(A)は一般的な充填材よりも比重が軽いためだと考えられる。
【0023】
[1-2-2.樹脂(B)]
本発明に係る樹脂(B)は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリスチレンやアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)などのスチレン系樹脂;さらには、ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリ酢酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂;エチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体などの熱可塑性エラストマー;等を挙げることができるが、これらに制限されない。樹脂(B)は、上記樹脂から1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。好適には、塩化ビニル系樹脂を用いることができる。
【0024】
[1-2-3.配合割合]
本発明に係る樹脂組成物に含まれる卵殻粉末(A)及び樹脂(B)の配合割合は、本発明の目的を損なわない範囲で、任意に設定できる。卵殻粉末(A)と樹脂(B)の割合としては、樹脂(B)100重量部に対して、卵殻粉末(A)が5重量部以上300重量部以下とすることができる。
また、卵殻粉末(A)の割合が少なすぎると卵殻粉末(A)による壁紙の強度向上作用が不十分となり、多すぎると相対的に樹脂(B)の量が少なく、樹脂(B)と卵殻粉末(A)との結合が弱くなる場合がある。そのため、本発明における卵殻粉末(A)及び樹脂(B)の配合割合は、樹脂(B)100重量部に対して、卵殻粉末(A)10重量部以上150重量部以下が好ましい。
また、卵殻粉末(A)は炭酸カルシウムが主成分であり難燃性であるため、本発明の防火性を考慮すると、樹脂(B)100重量部に対して、卵殻粉末(A)50重量部以上150重量部以下がより好ましい。
【0025】
[1-2-4.樹脂層の厚さ]
本発明に係る下地材に積層される樹脂層の厚みは、本発明の効果を有する範囲で、適宜設定することができる。樹脂層の厚みを厚くすると、壁紙自体の強度は向上するものの、軽量化が損なわれる場合があるため、樹脂層の厚みとして、例えば、50~300μmとすることができる。好適には、70~200μmとすることができる。
【0026】
[1-2-5.添加剤]
本発明に係る樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、発泡剤、熱安定剤、加工助剤、滑剤、衝撃改質剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料等の添加剤を適宜添加してもよい。
【0027】
[1-3.中間層]
本発明の壁紙は、下地材と、前記下地材に積層された樹脂層とを有するが、本発明の目的を損なわない範囲で、本発明の壁紙は下地材と樹脂層の間に中間層を有してもよい。中間層は、例えば、接着層が挙げられる。
【0028】
なお、本発明の壁紙における樹脂層は、発泡樹脂組成物でもよく、また、非発泡樹脂組成物でもよいが、好適には発泡樹脂組成物を選択することができる。
【0029】
<2.壁紙の製造方法>
上述した本発明の壁紙は、以下に説明する製造方法によって好適に製造することができる。
すなわち、本発明の壁紙の製造方法は、前記卵殻粉末(A)と前記樹脂(B)と溶媒(分散媒)を混合しスラリーを得る工程(1)と、前記スラリーを前記下地材に塗工する工程(2)と、前記スラリーを塗工した前記下地材を加熱し、樹脂層を得る工程(3)と、を有する。
【0030】
以下、各工程を説明する。なお、卵殻粉末(A)、樹脂(B)及び下地材等の詳細については上述したとおりであるため、説明を省略する。
【0031】
[2-1.工程(1)]
工程(1)では、卵殻粉末(A)と樹脂(B)に溶媒(分散媒)を加えて混合し、スラリーを得る。樹脂(B)は粉末であることが好ましい。溶媒(分散媒)は、卵殻粉末(A)及び樹脂(B)が良好に分散できるものが用いられ、例えば、ミネラルターペンが挙げられる。「ミネラルターペン」は、ミネラルスピリット、石油スピリット、工業ガソリン4号等とも呼ばれる溶剤である。
【0032】
スラリーには、本発明の目的を損なわない範囲で、卵殻粉末(A)、樹脂(B)及び溶媒(分散媒)以外のもの、例えば、上述した添加剤等を混合してもよい。また、樹脂層を発泡させる場合には、添加剤として発泡剤を添加すればよい。
【0033】
[2-2.工程(2)]
工程(2)では、前記下地材に前記スラリーを塗工する。
スラリーを塗工する方法は、本発明の目的を損なわない範囲で特に制限はないが、例えば、ナイフコーター、コンマコーター、リバースコーター、グラビアコーター、ロータリースクリーン等を用いて塗工することができる。
【0034】
下地材へ塗工するスラリーの厚さは、下地材の厚さ及び目的とする壁紙の厚さに応じて適宜設定すればよく、例えば、50μm以上150μm以下であってもよく、80μm以上120μmであってもよい。
【0035】
[2-3.工程(3)]
工程(3)は、前記スラリーを塗工した前記下地材を加熱し、樹脂層を得る工程である。
工程(3)での加熱温度や雰囲気は、本発明の目的を損なわない範囲で、適宜設定することができる。
例えば、乾燥する過程では、100℃以上200℃以下であることが好ましく、130℃以上170℃以下であることがより好ましい。
例えば、発泡させる過程では、200℃以上300℃以下であることが好ましく、230℃以上270℃以下であることがより好ましい。
【実施例0036】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
以下の原料を混合容器に投入して混合し、スラリーを得た(工程(1))。
卵殻粉末(A):卵殻粉末(株式会社グリーンテクノ21製、GT-29、メジアン径11.8μm)50重量部
樹脂(B):塩化ビニル粉末100重量部
溶媒(分散媒):ミネラルターペン
添加剤:発泡剤を含む添加剤
【0038】
なお、実施例に用いた上記卵殻粉末の粒度分布を、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、型番:LA-300)を用いて測定した結果を
図1に示す。
【0039】
下地材として壁紙用原紙を使用し、ナイフコーターを用いて、該下地材上にスラリーを厚さ100μmとなるよう塗工した(工程(2))。
【0040】
次いでスラリーを塗工した下地材を空気雰囲気下150℃にて十分乾燥させた後、空気雰囲気下250℃にて下地材に塗工したスラリーの発泡が完了するまで加熱した(工程(3))。
スラリーを塗工した下地材の加熱処理が完了することにより、実施例の壁紙を得た。
図2に作製した卵殻粉末(A)を含んだ壁紙の実施例の断面写真を示す。
実施例の壁紙は、優れた機械的強度を有し、壁紙として使用できることが確認された。