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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095044
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】リードフレーム及び半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/48 20060101AFI20240703BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20240703BHJP
   H01L 23/50 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
H01L23/48 S
H01L21/56 R
H01L23/50 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212044
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】玉手 登志幸
【テーマコード(参考)】
5F061
5F067
【Fターム(参考)】
5F061AA01
5F061BA01
5F067AA04
5F067DA11
(57)【要約】
【課題】樹脂とリードフレームとの密着性が改善されたリードフレームを提供する。
【解決手段】 リードフレーム1は、ダイパッド10と、ダイパッド10の周囲に形成された第1溝50と、第1溝50の底部52に形成された第2溝61と、第2溝61に形成され半導体チップ20を封止する樹脂90の剥離を抑制する第1の係止構造60と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイパッドと、
前記ダイパッドの周囲に形成された第1溝と、
前記第1溝の底部に形成された第2溝と、
前記第2溝に形成され、半導体チップを封止する樹脂の剥離を抑制する第1の係止構造と、を備えること、を特徴とするリードフレーム。
【請求項2】
請求項1に記載のリードフレームであって、
前記第1の係止構造は、前記第2溝の一方の側面を構成する第1の側面と、前記第2溝の他方の側面を構成する第2の側面と、前記第2溝の第1の底面又は前記第2の側面から前記第2溝の開口に向かって突出し、前記第1の底面に対向する第1の対向面を有する第1の突壁と、を有し、前記第1の側面と前記第1の対向面との間の距離であって前記第1の底面からの高さが同じ位置における距離が前記第2溝の開口から前記第1の底面に向かうにしたがって大きくなっていること、を特徴とするリードフレーム。
【請求項3】
請求項1に記載のリードフレームであって、
前記第1溝は、前記ダイパッドの周囲に連続的に形成されていること、を特徴とするリードフレーム。
【請求項4】
請求項1に記載のリードフレームであって、
前記第1溝は、側壁を備え、前記側壁と前記ダイパッドの表面とがなす角度は、前記半導体チップの発熱により前記リードフレーム及び/又は前記樹脂が膨張したときに、前記樹脂が前記第1溝から剥離することが抑制される角度に設定されていること、を特徴とするリードフレーム。
【請求項5】
請求項1に記載のリードフレームであって、
前記リードフレームにおける前記ダイパッドから見て前記第1溝が形成された領域より遠い位置に形成された第3溝と、
前記第3溝に形成された第2の係止構造を、さらに備えること、を特徴とするリードフレーム。
【請求項6】
請求項5に記載のリードフレームであって、
前記第2の係止構造は、前記第3溝の一方の側面を構成する第3の側面と、前記第3溝の他方の側面を構成する第4の側面と、前記第3溝の第2の底面又は前記第4の側面から前記第3溝の開口に向かって突出し、前記第2の底面に対向する第2の対向面を有する第2の突壁と、を有し、前記第3の側面と前記第2の対向面との間の距離であって前記第2の底面からの高さが同じ位置における距離が前記第3溝の開口から前記第2の底面に向かうにしたがって大きくなっていること、を特徴とするリードフレーム。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のリードフレームであって、
前記第2溝の幅は、前記第3溝の幅より小さいこと、を特徴とするリードフレーム。
【請求項8】
半導体チップと、
リードフレームと、
前記半導体チップを封止する樹脂と、を備える半導体パッケージであって、
前記リードフレームは、前記半導体チップを載置するダイパッドと、前記ダイパッドの周囲に形成された第1溝と、前記第1溝の底部に形成された第2溝と、前記第2溝に形成され、前記樹脂の剥離を抑制する第1の係止構造と、を備えることを特徴とする半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リードフレーム及び半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体パッケージは、金属製リードフレームが備えるダイパッドに半導体チップを載置し、半導体チップ及びリードフレームを樹脂により封止したものが一般的である。ところが、このような半導体パッケージに対して、ヒートサイクル等の熱履歴を与えると、リードフレームと樹脂との材質の違いによる熱膨張係数や熱伝導率の違いにより、リードフレームから樹脂が剥離してしまうことがある。そこで、リードフレームから樹脂が剥離することを防ぐため、リードフレームのダイパッドの周囲に溝を形成し、溝に樹脂を係合させることで、リードフレームからの樹脂の剥離を抑制した半導体パッケージが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は、従来の半導体パッケージを説明するために示す図である。従来の半導体パッケージにおいては、図6に示すように、スペーサー板910(リードフレームに対応)から樹脂950が剥離することを防ぐため、スペーサー板910の半導体チップ920を載置する半導体チップ載置領域912(ダイパッドに対応)の周辺に溝914が形成されている。さらに、スペーサー板910に形成された溝914の中には、半導体チップ920を封止する樹脂950が充填されている。これにより、樹脂950とスペーサー板910との接合強度の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-96153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、従来の半導体パッケージにおいては、リードフレームのダイパッドの周囲に溝を形成し、溝に樹脂を充填することにより、樹脂とリードフレームとの接合強度の向上が図られている。しかし、半導体パッケージの信頼性を向上する観点から、さらなる接合強度の向上が求められている。
そこで、本発明は、樹脂とリードフレームとの密着性が改善されたリードフレームを提供すること、樹脂とリードフレームとの密着性が改善された半導体パッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のリードフレームは、ダイパッドと、前記ダイパッドの周囲に形成された第1溝と、前記第1溝の底部に形成された第2溝と、前記第2溝に形成され、半導体チップを封止する樹脂の剥離を抑制する第1の係止構造と、を備えること、を特徴とする。
【0007】
本発明の半導体パッケージは、半導体チップと、リードフレームと、前記半導体チップを封止する樹脂と、を備え、前記リードフレームは、前記半導体チップを載置するダイパッドと、前記ダイパッドの周囲に形成された第1溝と、前記第1溝の底部に形成された第2溝と、前記第2溝に形成され、前記樹脂の剥離を抑制する第1の係止構造と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のリードフレームは、ダイパッドと、ダイパッドの周囲に形成された第1溝と、第1溝の底部に形成された樹脂の剥離を抑制する第1の係止構造とを備える。本発明のリードフレームによれば、第1溝及び第1の係止構造により、樹脂とリードフレームとが強固に接合されるので、樹脂とリードフレームとの密着性が改善されたリードフレームを提供することができる。また、本発明の半導体パッケージによれば、樹脂とリードフレームとの密着性が改善されたリードフレームを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1に係るリードフレーム1のダイパッド10に半導体チップ20が実装された状態を示す図である。図1(a)は、半導体パッケージ2の平面図であり、図1(b)は、図1(a)のA-A矢視断面図である。
図2図1(b)における破線枠B内を拡大して示す図である。
図3図1(a)における破線枠C内を拡大して示す図である。
図4】第1の係止構造60において、第1の側面65と第1の対向面67との間の距離が、第1の底面62からの高さによりどのように変わるかを示す図である。
図5図5は、第1の突壁64を形成する工程を模式的に示す図である。図5(a)は、第1の突壁64が形成される前の第1溝50及び第2溝61の状態を示すための断面図であり、図5(b)は、パンチ80によるプレス加工によって第1の突壁64が形成される様子を示す図であり、図5(c)は第1の突壁64が形成された状態を示す図である。
図6】従来の半導体パッケージを説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のリードフレーム及び半導体パッケージについて、実施形態に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
1.リードフレーム、及び、半導体パッケージ
図1は、実施形態に係るリードフレーム1のダイパッド10に、半導体チップ20が実装された状態を示す図である。なお、図1(a)は、半導体パッケージ2の平面図であり、図1(b)は、図1(a)のA-A矢視断面図である。また、図1においては、半導体パッケージ2の内部構造を示すため、樹脂90は、外形形状のみを示している。
図2は、図1(b)における破線枠B内を拡大して示す図である。
図3は、図1(a)における破線枠C内を拡大して示す図である。
図4は、第1の係止構造60において、第1の側面65と第1の対向面67との間の距離が、第1の底面62からの高さによりどのように変わるかを示す図である。
【0012】
リードフレーム1は、図1に示すように、半導体チップ20を載置するためのダイパッド10を備える。リードフレーム1のダイパッド10の周囲には、第1溝50が形成されている。ここで、リードフレーム1のダイパッド10の周囲とは、リードフレーム1を平面視したときに、半導体チップ20が載置されるダイパッド10の外側の領域という意味である。半導体チップ20が、はんだ92によりダイパッド10に固定される場合には、第1溝50は、はんだ92がぬれ広がる領域の外側に形成されることが好ましい。なお、半導体チップ20をダイパッド10に固定する際は、はんだ92に限らず、適宜の導電性接合材を用いてもよい。
【0013】
第1溝50の底部52には、図2に示すように、半導体チップ20を封止する樹脂90(図1参照)がリードフレーム1から剥離することを抑制する第1の係止構造60が形成されている。第1の係止構造60は、第2溝61の内部に形成されている。また、リードフレーム1を平面視したときに、第1溝50が形成された領域の外側の領域には、樹脂90がリードフレーム1から剥離することを抑制する第2の係止構造70が形成されている。第2の係止構造70は、第3溝71の内部に形成されている。第1の係止構造60及び第2の係止構造70については、後述する。
【0014】
以下、実施形態に係るリードフレーム1、及び、半導体パッケージ2について、詳細に説明する。
半導体チップ20は、ダイパッド10に載置されている。半導体チップ20は、一方の面に設けられている第1電極21が、ダイパッド10を介してリード端子41に電気的に接続され、半導体チップ20の他方の面に設けられた第2電極22が、接続子30を介してリード端子40に接続されている。
【0015】
1.1.第1溝
第1溝50は、図2に示すように、第1溝50の底面を構成する底部52と、側面を構成する側壁54と、を備える。
底部52は、第1の係止構造60が形成される領域である。底部52の形状は、第1の係止構造60を形成することができる限りにおいて特に制限はなく、平面、曲面であってもよく、凹凸があっても構わない。
【0016】
側壁54は、リードフレーム1の表面と底部52とを連結する面である。第1溝50が側壁54を備えることにより、リードフレーム1と樹脂90の熱膨張係数の違いが原因で、リードフレーム1に対して樹脂90が相対的に移動しようとした場合であっても、第1溝50の中における樹脂90の動きが制限される。この結果、第1溝50自体がモールドロックとして機能するとともに、底部52に形成された第1の係止構造60のモールドロック機能をより有効に発揮させることができる。
【0017】
具体的には、半導体チップ20が発熱した場合等には、リードフレーム1及び樹脂90が熱膨張する。このとき、側壁54と樹脂90との接合部分において、膨張したリードフレーム1と樹脂90との間に、押しあう向きの力が働き、第1溝50に充填された樹脂90の動きが規制される。
【0018】
側壁54とリードフレーム1の表面とがなす角度θ1(図4参照)は、リードフレーム1及び/又は樹脂90の温度変化により、リードフレーム1及び/又は樹脂90が膨張又は収縮したときに、樹脂90が第1溝50から剥離することが抑制される角度に設定されている。
【0019】
リードフレーム1の表面と側壁54とのなす角度θ1が90度の場合は、リードフレーム1の側壁54と樹脂90との間に働く力は、相互に打ち消しあい、第1溝50に充填された樹脂90の動きは規制される。また、リードフレーム1の表面と側壁54とのなす角度θ1が90度より小さい角度である場合には、リードフレーム1の側壁54と樹脂90との間に働く力の合力は、樹脂90をリードフレーム1の底部52に押す向きに働くため、樹脂90がリードフレーム1から剥離しにくくなる。
【0020】
一方、ダイパッド10の表面と側壁54とがなす角度θ1が、90度より大きい場合には、リードフレーム1と樹脂90との間に働く力は、第1溝50から樹脂90を押し出す方向に作用する。この結果、第1溝50から樹脂90を押し出す力が、リードフレーム1と樹脂90との間の接合力を越えた場合には、リードフレーム1から樹脂90が剥離する。
【0021】
以上を考慮して、側壁54とリードフレーム1の表面とがなす角度θ1を設定することが好ましい。なお、ダイパッド10の表面と側壁54とがなす角度θ1の好ましい数値範囲は、側壁54の深さや表面状態、半導体チップ20を封止するために使用する樹脂90の種類、リードフレーム1を樹脂90で封止するときの封止条件、リードフレーム1を樹脂90で封止するときの第1溝50に対する樹脂90の流入性、等を考慮して、適宜設定することができる。
【0022】
側壁54とダイパッド10の表面とがなす角度θ1を、上記した数値範囲に設定することにより、リードフレーム1に対する樹脂90の密着性を改善することができ、ひいては、半導体パッケージ2の信頼性を高めることができる。
【0023】
1.2.第1の係止構造
第1の係止構造60は、図2に示すように、第1溝50の底部52に形成された第2溝61の内部に形成されている。第2溝61は、第2溝61の底面を構成する第1の底面62と、第2溝61の一方の側面を構成する第1の側面65と、第2溝61の他方の側面を構成する第2の側面66と、を有する。第2溝61には、第2の側面66又は第1の底面62から、第2溝の開口63に向かって突出する第1の突壁64が形成されている。また、第1の突壁64は、第1の底面62に対向する第1の対向面67を備える。
【0024】
第1の実施形態に係るリードフレーム1、又は、半導体パッケージ2においては、第1の側面65及び第2の側面66は、リードフレームの表面に対して略垂直な面として構成されている。第1の側面65をリードフレームの表面に対して略垂直な面として構成した場合には、一度のスタンピング動作で第1の側面65を形成することができるという効果を奏する。
【0025】
一方、第1の側面65及び第2の側面66を、リードフレームの表面に対して傾斜したテーパー面として構成してもよい。第1の側面65及び第2の側面66をテーパー面として構成することにより、第1の係止構造60への樹脂90への充填性が良好になるという効果を奏する。
【0026】
また、第1の側面65と第1の対向面67との間の距離であって、第1の底面62からの高さが同じ位置における距離は、第2溝の開口63から第1の底面62に向かうにしたがって大きくなっている。すなわち、図4に示すように、第2溝の開口63に近い位置における第1の側面65と第1の対向面67との間の距離W1は、第2溝61の第1の底面62に近い位置における第1の側面65と第1の対向面67との間の距離W2より小さくなるように構成されている。
【0027】
これにより、第1の側面65、第1の対向面67、及び、第1の底面62で区画される領域に、樹脂90が流入して固化することにより、第1の係止構造60と樹脂90とが噛み合うことになり、リードフレーム1から樹脂90が剥離することを抑制する、モールドロックとしての機能が効果的に発揮されることになる。
【0028】
さらに、第1の係止構造60は、第1溝50の底部52に形成されている。第1溝50に充填された樹脂90は、第1溝50により流動が規制されることから、第1溝50の底部に設けられた第1の係止構造60の部分に充填された樹脂90の流動も規制される。この結果、第1の係止構造60のモールドロックとしての機能をより効果的に発揮させることになり、リードフレーム1から樹脂90が剥離することを防止することができる。
【0029】
さらに、第1の突壁64の第1の対向面67とは反対側の第1の壁面68と第2の側面66との間には、第1のV字溝69が形成されている。第1のV字溝69にも溶融した樹脂90が流入して硬化することにより、硬化した樹脂90が第1のV字溝69に係合する。これにより、第1のV字溝69もモールドロックとしての機能を有するものとなる。
【0030】
第1溝50及び第1の係止構造60は、ダイパッド10の周囲に、ダイパッド10を囲むように形成されている。また、第1溝50は、ダイパッド10の周囲に、連続的に形成されていることが好ましい。これにより、長い距離に渡って、第1溝50と樹脂90、及び、第1の係止構造60と樹脂90とを接合させることが可能になり、モールドロックとしての機能を有効に発揮させることができる。この結果、半導体パッケージ2の信頼性を高めることができる。
【0031】
第1溝50及び第1の係止構造60を、ダイパッド10の周囲に連続的に形成する場合で、一の方向に延在する第1溝50及び第1の係止構造60と、一の方向とは異なる他の方向に延在する第1溝50及び第1の係止構造60とが交差する場合の交差部分は、例えば、図3に示すような構造とすることができる。
【0032】
図3は、矩形形状のダイパッド10の周囲に、ダイパッド10の一辺に沿って延在する第1溝50a及び第1の係止構造60aと、ダイパッド10の他の一辺に沿って延在する第1溝50b及び第1の係止構造60bとを配置したときの、交差部分の構造の一例を示す図である。
【0033】
図3に示す交差部分の構造は、x軸方向に延びる第1溝50a及び第1の係止構造60aは、各々の構造を維持したまま端部まで延在している。一方、y軸方向に延びる第1溝50b及び第1の係止構造60bは、x軸方向に延びる第1溝50a及び第1の係止構造60aと交差する部分の手前で終端する。
【0034】
上記した交差構造を採用することにより、第1溝50及び第1の係止構造60を、ダイパッド10の周囲に連続的に形成した構造体とすることができる。これにより、樹脂90とリードフレーム1とを、ダイパッド10の周囲において、継ぎ目なく接合することが可能になり、リードフレーム1から樹脂90が剥離することを、より効果的に抑制することができる。
【0035】
また、これまでの説明では、第1の突壁64は、図2に示すように、第2溝61のダイパッド10に近い第2の側面66から突出する場合について説明した。しかし、第1の突壁64は、ダイパッド10に近い第2の側面66から突出する場合に限られない。第1の突壁64は、ダイパッド10からは遠い側面から突出してもよい。さらに、第1の突壁64は、第2溝61のダイパッド10に近い側面と遠い側面の双方から突出していてもよい。
【0036】
第1の突壁64は、第2溝61におけるダイパッド10に近い側面から突出する場合であっても、又は、ダイパッド10から遠い側面から突出する場合であっても、第1の係止構造60を構成する要素として有効に機能し、リードフレーム1から樹脂90が剥離することを有効に抑制することができる。
【0037】
1.3.第1の係止構造の製造方法
次に、図5を参照して、第1の突壁64を形成する工程の一例を説明する。
図5は、第1の突壁64を形成する工程を模式的に示す図である。図5(a)は、第1の突壁64が形成される前の第1溝50及び第2溝61の状態を示すための断面図であり、図5(b)は、パンチ80によるプレス加工によって第1の突壁64が形成される様子を示す図であり、図5(c)は第1の突壁64が形成された状態を示す図である。
【0038】
なお、図5においても、図1乃至図3と同一箇所には同一符号を付している。ここで、第1の突壁64を形成する前の段階においては、将来、第1の係止構造60の第1の対向面67となる面67aと第2溝61の第1の底面62とがなす角度θ2は、90度であるものとする。
【0039】
図5(a)及び図5(b)に示すように、まず、第1溝50の底部52であって、第2溝61の縁から距離t1の位置(将来の第1の対向面67となる面67aから第2溝61の外方向の所定位置)をパンチ位置Pとし、当該パンチ位置Pにパンチ80の先端部80aが当接するようにプレス加工する。これによって、第1溝50の底部52に、リードフレーム1の厚み方向に所定の深さd1まで、断面形状がV字形状をなす第1のV字溝69を形成する。第1のV字溝69の深さd1は、図5の例では、第2溝61の深さd2の、例えば2/3としているが、これに限られるものではない。第2溝61の深さd2の2/3より深くてもよく、又は、浅くてもよい。
【0040】
ここで、パンチ80においては、図5に示すx軸に沿った断面(第2溝61を横切る方向に沿った断面)がV字形状をなしている。なお、V字形状というのは、両面がテーパー面となっている形状に限られるものではなく、図5(b)に示すように、一方の面80bのみがテーパー面となっている形状もV字形状に含むものとする。
【0041】
そして、パンチ80の一方の面80b(以下、「テーパー面80b」と記す。)が第2溝61の側を向くようにしてプレス加工すると、第1溝50の底部52には、第2溝61を横切る方向の断面形状がV字形状をなす第1のV字溝69が形成される。なお、「第2溝61を横切る方向」というのは、第2溝61の幅方向(図5(a)参照)である。このようにして第1のV字溝69が形成される際には、パンチ80のテーパー面80bがパンチ位置Pと第2溝61の第2の側面66との間のリードフレーム1を第2溝61側に押圧することとなるため、第1の底面62と対向する第1の対向面67が形成される。
【0042】
ここで、第2溝61の第1の底面62に対する第1の対向面67の傾斜角度θ3は、第1の底面62を構成する面(又は、リードフレーム1の表面と言ってもよい。)に直交する直線(z軸に沿った直線)に対するテーパー面80bの傾斜角度θ4に依存するものとなる。これにより、例えば、パンチ80のテーパー面80bの傾斜角度θ4が仮に30度であるとすれば、第1の突壁64の第1の対向面67も、z軸に沿った直線に対してほぼ30度で傾斜するため、第1の突壁64と第2溝61の第1の底面62との間の傾斜角度θ3はほぼ60度ということができる。
【0043】
このように、第1の対向面67は、第2溝61の第1の底面62に対して90度未満の角度(鋭角)で傾斜することとなる。
【0044】
また、第1の突壁64の厚さt2(図5(c)参照。)は、パンチ80による第1溝50の底部52におけるパンチ位置Pと第1の突壁64となる前の第1の対向面67(図5(b)参照。)との間の距離t1に対応する。なお、図5の例では、第1の突壁64の頂部は平坦である場合が示されているが尖っていてもよい。この場合、パンチ位置Pを底部52において第2溝61の第1の突壁64となる前の第1の対向面67に限りなく近い位置とすればよい。
【0045】
図5に示すような加工を行うことにより、第2溝61には、第1の底面62と対向する第1の対向面67を有する第1の突壁64が形成される。このように形成された第1の突壁64の第1の対向面67は、第1の側面65と対向する第2溝61の側面と考えることもできる。また、このように、第1の突壁64は第2溝61に一体的に形成されているといえる。換言すれば、第2溝61と第1の突壁64とは一体的な構造として形成されているといえる。
【0046】
なお、第1の突壁64を形成する際は、ダイパッド10を平面視したときの横方向(x軸に沿った方向)に延在する第2溝61及び縦方向(y軸に沿った方向)に延在する第2溝61のうち、一方の第2溝61を優先して第1の突壁64を形成することができる。一例を挙げて説明すると、図1(a)に示すように、横方向に延在する第1の突壁64の左端部から右端部までの間に第1の突壁(第1の突壁64aとする。)を形成し、そのあと、縦方向に延在する第2溝61に第1の突壁(第1の突壁64bとする。)を形成する。なお、ここでは、横方向に延在する第2溝61を優先して第1の突壁64aを形成し、そのあとで縦方向に延在する第2溝61に第1の突壁64bを形成する場合を例示したが、その逆であってもよい。
【0047】
1.4.第2の係止構造
第2の係止構造70は、図2に示すように、リードフレーム1の、ダイパッド10から見て第1溝50が形成された領域の外側の位置に形成された第3溝71の内部に形成されている。第2の係止構造70は、第3溝71の底面を構成する第2の底面72と、第3溝71の一方の側面を構成する第3の側面75と、第3溝71の他方の側面を構成する第4の側面76と、を有する。第3溝71には、第4の側面76又は第2の底面72から、第3溝の開口73に向けて突出する第2の突壁74が形成されている。また、第2の突壁74は、第2の底面72に対向する第2の対向面77を備える。
【0048】
第1の実施形態に係るリードフレーム1、又は、半導体パッケージ2においては、第3の側面75及び第4の側面76は、リードフレームの表面に対して略垂直な面として構成されている。第3の側面75をリードフレームの表面に対して略垂直な面として構成した場合には、一度のスタンピング動作で第3の側面75を形成することができるという効果を奏する。
【0049】
一方、第3の側面75及び第4の側面76を、リードフレームの表面に対して傾斜したテーパー面として構成してもよい。第3の側面75及び第4の側面76をテーパー面として構成することにより、第2の係止構造70への樹脂90への充填性が良好になるという効果を奏する。
【0050】
また、図示は省略するが、第3の側面75と第2の対向面77との間の距離であって、第3溝71の第2の底面72から同じ深さ位置における距離は、第3溝の開口73から第2の底面72に向かうにしたがって大きくなっている。これにより、樹脂90がリードフレーム1から剥離することを抑制することができる。
【0051】
これにより、第3の側面75、第2の対向面77、及び、第2の底面72で区画される領域に、樹脂90が流入して固化することにより、第2の係止構造70と樹脂90とが噛み合うことになり、リードフレーム1から樹脂90が剥離することを抑制する、モールドロックとしての機能が効果的に発揮されることになる。
【0052】
さらに、第2の突壁74の第2の対向面77とは反対側の第2の壁面78と第4の側面76との間には、第2のV字溝79が形成されている。第2のV字溝79に溶融した樹脂90が流入して硬化することにより、硬化した樹脂90が第2のV字溝79に係合する。これにより、第2のV字溝79もモールドロックとしての機能を有するものとなる。
【0053】
第2の突壁74は、上記した第1の係止構造60における第1の突壁64と同様の方法により、形成することができる。
【0054】
なお、上記説明では、第2の突壁74は、第3溝71のダイパッド10に近い第4の側面76から突出する場合について説明したが、第2の突壁74は、ダイパッド10に近い第4の側面76から突出する場合に限られない。第2の突壁74は、ダイパッド10からは遠い側面から突出してもよい。さらに、第2の突壁74は、第3溝71のダイパッド10に近い側面と遠い側面の双方から突出していてもよい。
【0055】
1.5.第1の係止構造と第2の係止構造
上記したように、第1の係止構造60は、第1溝50の底部52に形成された第2溝61に形成される。一方、第2の係止構造70は、第1溝50の外側に形成された第3溝71に形成される。すなわち、第1の係止構造60と第2の係止構造70とは、リードフレーム1の厚さ方向における、異なる高さ位置に配置されている。第1の係止構造60と第2の係止構造70とは、異なる高さ位置において、樹脂90とリードフレーム1とを接合することになるので、熱膨張などによる内部応力や、捻じれなどによる外部応力に対しても、樹脂90がリードフレーム1から剥離することを抑制することができる。
【0056】
第1の係止構造60は、第1溝50の底部52に形成される。第1溝50に充填された樹脂90は、第1溝50により動きが規制されることから、第1の係止構造60をリードフレーム1の表面に形成した場合よりも、第1の係止構造60のモールドロックとしての機能は、より効果的に発揮される。さらに、第1の係止構造60を第1溝50の底部52に設けることにより、樹脂90とリードフレーム1との縁面距離を増やすことができるので、密着性をより向上させることができる。このため、第1溝50と第1の係止構造60の全体を一つのモールドロック(以下、「内側のモールドロック」と記すことがある。)としてみたとき、強いロック強度を実現することができる。
【0057】
一方、第2の係止構造70(以下、「外側のモールドロック」と記すことがある。)は、リードフレーム1の表面に形成されている。外側のモールドロックは、内側のモールドロックのように、モールドロックの機能を補助又は強化する第1溝50のような構造を持たないことから、第2の係止構造70のみによってモールドロックとしての機能を実現する必要がある。このため、外側のモールドロックが、内側のモールドロックと同等のロック強度を発揮するためには、第2の係止構造70は、第1の係止構造60に比べて大きく構成することが好ましい。
【0058】
なお、第1の係止構造60の大きさ、及び、第2の係止構造70の大きさは、設計により適宜決定することができる。具体的には、必要とされる外側のモールドロックのロック強度、及び、内側のモールドロックのロック強度の値から、シミュレーション等により、第1の係止構造60における第2溝61の幅、及び、第2の係止構造70における第3溝71の幅を逆計算すればよい。
【0059】
また、内側のモールドロックと外側のモールドロックとで、ロック強度に違いを設けてもよい。例えば、内側のモールドロックのロック強度に比べ、外側のモールドロックのロック強度を弱くすることで、内側のモールドロックと外側のモールドロックとが同時に外れることを抑制することができる。
【0060】
なお、第1の係止構造60と、第2の係止構造70は、上記した条件を満たす限り、同じ構造であってもよく、異なる構造であってもよい。
【0061】
例えば、第1の対向面67と第1の底面62とのなす角度、第2の対向面77と第74は、同じ角度であってもよく、異なる角度であってもよい。
【0062】
また、第1の係止構造60に設けられる第1の突壁64の位置と第2の係止構造70に設けられる第2の突壁74の位置は、任意の組み合わせとすることができる。実施形態として記載したリードフレーム1は、第1の突壁64はダイパッド10に近い第2の側面66から突出し、第2の突壁74はダイパッド10に近い第4の側面76から突出している。しかし、上記した形態に限られるものではない。第1の突壁64と第2の突壁74のいずれか一方が、ダイパッド10に近い第2の側面66又は第4の側面76から突出し、他方がダイパッド10から遠い側面から突出していてもよい。さらに、第1の突壁64と第2の突壁74の両方が、ダイパッド10から遠い側面から突出していてもよい。
【0063】
また、第1の係止構造60の大きさに対する第2の係止構造70の大きさは、適宜定めることができる。すなわち、第1の係止構造60を第2の係止構造70より大きく形成してもよく、又は、第2の係止構造70を第1の係止構造60より大きく形成してもよい。また、第1の係止構造60の大きさと第2の係止構造の大きさを同じ大きさに形成してもよい。
【0064】
以上説明したように、実施形態に係るリードフレーム1は、ダイパッド10を備えるリードフレーム1であって、ダイパッド10の周囲に形成された第1溝50と、第1溝50の底面42に形成された第1の係止構造60とを備える。実施形態に係るリードフレーム1によれば、第1の係止構造60は、リードフレーム1の表面より低い表面位置となる第1溝50の第1溝50の底部52に形成されていることから、第1溝50に充填される樹脂90の動きが制限され、熱膨張などによる内部応力や、捻じれなどの外部応力によりリードフレーム1から樹脂90が剥離することを抑制することができる。
【0065】
さらに、実施形態に係るリードフレーム1は、第2の係止構造70を備えることができる。第1の係止構造60と第2の係止構造70とは、モールドロックのロック面が異なる高さ位置に形成されることから、熱膨張などによる内部応力や、捻じれなどの外部応力によりリードフレーム1から樹脂90が剥離することを、よりいっそう効果的に抑制することができる。
【0066】
2.半導体パッケージ
図1は、実施形態に係る半導体パッケージ2を示す。半導体パッケージ2は、実施形態に係るリードフレーム1を図示しない所定の金型内にセットし、溶融した樹脂を金型内に充填して硬化させることにより製造することができる。このようにして製造された半導体パッケージ2においては、リードフレーム1に形成した、第1溝50、第1の係止構造60に形成された隙間、及び、第2の係止構造70に形成された隙間に樹脂90が入り込み、リードフレーム1と樹脂90とを強固に接合する。
【0067】
これにより、半導体パッケージ2は、リードフレーム1から樹脂90が剥離することを効果的に抑制することができる。この結果、耐久性に優れ、信頼性の高い高品質な半導体パッケージ2となる。
【0068】
なお、本発明は上記した実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能となるものである。たとえば、下記に示すような変形実施も可能である。
【0069】
(1)上記した実施形態においては、第1溝50、第1の係止構造60、及び、第2の係止構造70は、ダイパッド10の周りの全周に渡って連続的に形成されている場合を例示したが、第1の係止構造60、及び、第2の係止構造70は、連続的に形成されていなくてもよい。所定の長さを有する第1溝50、第1の係止構造60、及び、第2の係止構造70が、ダイパッド10の周囲に、断続的に形成されていてもよい。
【0070】
所定の長さを有する第1溝50と第1の係止構造60と第2の係止構造70がダイパッド10の周囲に断続的に形成される場合の、第1溝50、第1の係止構造60、及び、第2の係止構造70の長さは、モールドロックとしての機能を果たす限りにおいて、任意の長さに設定することができる。
【0071】
また、第1溝50、第1の係止構造60、及び、第2の係止構造70は、ダイパッド10の周りの全周に渡って形成されていなくてもよい。ダイパッド10の周りの一部の領域、例えば、リードフレーム1において半導体パッケージ2のリード端子40が設けられた側の領域のみに形成されていてもよく、あるいは、リード端子40が設けられた側とは反対側の領域のみに形成されていてもよい。
【0072】
上記したように、このように、第1溝50、第1の係止構造60、及び、第2の係止構造70を、ダイパッド10の周囲に断続的に配置した場合や、ダイパッド10の周囲の一部の領域のみに配置した場合においても、リードフレーム1と樹脂90との剥離を抑制できる効果を有する。また、このようなリードフレーム1を用いて製造した半導体パッケージ2においても、樹脂が剥離しにくく耐久性に優れ、信頼性の高い高品質な半導体パッケージ2とすることができる。
【0073】
さらに、第2の係止構造70は必ず必要ということではない。第1溝50と第1の係止構造60とだけがダイパッド10の周りの全周に渡って、又は、ダイパッド10の周りの一部の領域に、連続的に又は断続的に形成されていてもよい。
【0074】
(2)上記した実施形態においては、ダイパッド10に載置されている半導体チップ20は、一方の面及び他方の面にそれぞれ1つの電極を有する半導体チップを例示したが、このような半導体チップに限られるものではない。例えば、一方の面に1個、他方の面に2個の電極を有する半導体チップであってもよく、また、それぞれの面に複数の電極を有する半導体チップであってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…リードフレーム、2…半導体パッケージ、10…ダイパッド、20…半導体チップ、21…第1電極、22…第2電極、30…接続子、40…リード端子、50…第1溝、52…底部、60…第1の係止構造、61…第2溝、62…第1の底面、63…第2溝の開口、64…第1の突壁、65…第1の側面、66…第2の側面、67…第1の対向面、68…第1の壁面、69…第1のV字溝、70…第2の係止構造、71…第3溝、72…第2の底面、73…第3溝の開口、74…第2の突壁、75…第3の側面、76…第4の側面、77…第2の対向面、78…第2の壁面、79…第2のV字溝、80…パンチ、80a…パンチの先端部、80b…パンチのテーパー面、90…樹脂、92・・・はんだ、910…スペーサー板(リードフレーム)912…半導体チップ載置領域(ダイパッド)、914…溝、920…半導体チップ、950…樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6