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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095049
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】ダイヤフラムバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 7/16 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
F16K7/16 F
F16K7/16 E
F16K7/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212049
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】與羽 大介
(57)【要約】
【課題】弁閉シールさせるために必要なダイヤフラムへの押圧力を抑えて操作トルクを軽減しながら弁閉操作可能であり、弁閉時には、弁座全体に強いシール力でダイヤフラムを均一に密着シールさせてシール性能を向上したダイヤフラムバルブを提供する。
【解決手段】弁座6を開閉するダイヤフラム15と、ダイヤフラムに積層したクッションゴム16と、クッションゴムを押圧するコンプレッサ17と、コンプレッサとダイヤフラム及びクッションゴムを昇降動させるステム12とを備えている。コンプレッサとクッションゴムとの間に位置する中央部の外方周囲面71には隙間Sを設け、クッションゴムとダイヤフラムとの間に位置する中央部の外方周囲面70にはクリアランスCを設け、弁閉操作の際に、隙間SとクリアランスCの相乗作用によりダイヤフラムの押圧応力が均一で、かつシール性能を向上させた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座を開閉するダイヤフラムと、このダイヤフラムに積層したクッションゴムと、このクッションゴムを押圧するコンプレッサと、このコンプレッサと前記ダイヤフラム及び前記クッションゴムを昇降動させるステムとを備えたダイヤフラムバルブであって、前記コンプレッサと前記クッションゴムとの間に位置する中央部の外方周囲面には隙間を設けると共に、前記クッションゴムと前記ダイヤフラムとの間に位置する中央部の外方周囲面にはクリアランスを設け、弁閉操作の際に、前記隙間と前記クリアランスの相乗作用により前記ダイヤフラムの押圧応力が均一で、かつシール性能を向上させたことを特徴とするダイヤフラムバルブ。
【請求項2】
前記隙間は、前記コンプレッサと前記クッションゴムの前記外方周囲面の外側から内側に向けて順次広幅に形成され、かつ前記クリアランスは、前記ダイヤフラムと前記クッションゴムの前記外方周囲面の外側から内側に向けて順次広幅に形成された請求項1に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項3】
前記ダイヤフラムと前記クッションゴムの中央部に設けたボス部を前記コンプレッサの中央部に設けた凹部に嵌合し、前記ボス部の側面下方側と前記ダイヤフラムの前記外方周囲面との交差位置に空隙を設けた請求項1又は2に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項4】
前記弁座は、流路方向に対して交差する方向に向けて突設形成した堰部である請求項1に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項5】
前記コンプレッサの押圧面には、前記堰部に対向する堰部対向面と前記ダイヤフラムの変形を防ぐダイヤフラム押圧面を有する請求項4に記載のダイヤフラムバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤフラムバルブに関し、特に、ダイヤフラムと、このダイヤフラムを押圧するコンプレッサとの間にクッションゴムを備えた構造のダイヤフラムバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ダイヤフラムバルブは、駆動側のステムと、このステムの下部側に設けられたダイヤフラム押さえであるコンプレッサと、流路開閉用のダイヤフラムとが備えられ、ステムの昇降動により、コンプレッサを介してダイヤフラムを動作させてボデー内の流路を開閉可能に設けられている。このようなダイヤフラム弁において、コンプレッサとダイヤフラムとの間にクッションゴムが設けられ、このクッションゴムを介してコンプレッサからの押圧力をダイヤフラムに伝達するようにしたものが知られている。
【0003】
この種のダイヤフラム弁として、例えば、特許文献1のダイヤフラム弁が開示されている。このダイヤフラム弁は、下部側ダイヤフラムと上部側ダイヤフラムとによるダイヤフラム部材と、このダイヤフラム部材の上面側のコンプレッサであるダイヤフラム押さえとが設けられている。下部側ダイヤフラムは、合成樹脂材料により形成され、一方、上部側ダイヤフラムは、合成ゴム材料によりクッションゴムの態様に設けられ、これら上部側ダイヤフラム(クッションゴム)と、下部側ダイヤフラムとが密着されて二層構造のダイヤフラム部材が設けられる。ダイヤフラム部材の中央部には、コンプレッサ側に向けて突出するボス部が設けられ、このボス部は、下広がりの円錐台形状に形成されている。
【0004】
コンプレッサは、下部側に開口した凹部が設けられ、この凹部に上記ダイヤフラム部材のボス部が嵌合した状態でこれらが組み合わせられ、コンプレッサの押圧前には、ボス部の周囲において、コンプレッサとダイヤフラム部材との間にはクリアランスが設けられる。コンプレッサによるダイヤフラム部材の押圧時には、その押圧力が凹部からボス部の上面に伝達され、続いて、下広がりの円錐台形状部分を通してボス部の周囲に伝達される。このようにして、コンプレッサによりダイヤフラム部材全体を均一に下方に押圧しようとするものである。
【0005】
一方、特許文献2のダイヤフラム弁においては、第1隔膜部材と第2隔膜部材とによるダイヤフラム部材と、このダイヤフラム部材の上面側に配置されるコンプレッサとを有している。
ダイヤフラム部材において、第1隔膜部材は、フッ素系樹脂により形成されたダイヤフラムであり、一方、第2隔膜部材は、ゴム材料により形成されたクッションゴムであり、第1隔膜部材が下側、第2隔膜部材が上側に配置されてこれらが積層されて形成された状態でダイヤフラム部材が構成される。ダイヤフラム部材の中央部には、コンプレッサ側に向けて突出する凸部(ボス部)が設けられている。
【0006】
コンプレッサは、円状の押圧中央部と、この押圧中央部の周縁に設けられる押圧周縁部とを有し、押圧中央部側に上記ダイヤフラム部材の凸部が挿入した状態でこれらコンプレッサとダイヤフラム部材とが組み合わせられる。コンプレッサの押圧前には、凸部の周囲において、ダイヤフラム部材とコンプレッサとの間には空間が設けられ、この空間の間隔は、中央側から外径側に向かって徐々に小さくなっている。これにより、コンプレッサによるダイヤフラム部材の押圧時には、その押圧力がダイヤフラム部材の外縁側から徐々に伝達され、ダイヤフラム部材全体に一度にトルクを掛けないように低いトルクで止水しようとするものである。
【0007】
上記のようなダイヤフラムバルブでは、積層したダイヤフラムとクッションゴムとをコンプレッサで一体に動作させて弁閉操作しようとするものであり、この場合、クッションゴム全体の変形に合わせてダイヤフラムが変形する。このようにクッションゴムによってダイヤフラムを変形させ、このダイヤフラムのボデー側の弁座に対向する面を弁座に当接シールさせて弁閉するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015-197119号公報
【特許文献2】特開2020-165477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1や特許文献2のように、積層されたダイヤフラムとクッションゴムとが、コンプレッサによる押圧時に一体に動作して弁閉する構造のダイヤフラム弁の場合、クッションゴムによりダイヤフラム全面を変形させてダイヤフラムのシール面を対向するボデーの弁座に当接シールさせる必要があり、この場合、クッションゴムとダイヤフラムの弾性力(可撓性)が異なり、これらの押圧力が加わるときには、クッションゴムよりも弾性力の低いダイヤフラムが、クッションゴムの変形に追随して変形しにくくなる。
【0010】
そのため、クッションゴムからダイヤフラム全体に所定の押圧力を伝達することが難しくなり、特に、コンプレッサとクッションゴム(ダイヤフラムの上部の層)との間に空間を設けた状態で、ダイヤフラムの外径側において中心側のボス部からの距離が遠くなっていることで、ボス部からの押圧力が伝達しにくくなり、コンプレッサからの押圧力をダイヤフラム全体に正確に伝えることが困難になる。その結果、ダイヤフラムを所定のシール形状に変形しにくくなり、弁座に密着シールできなくなるおそれがある。
【0011】
さらに、ダイヤフラムバルブを小型に設ける場合には、ダイヤフラムの外形も小さくなることから、ボス部付近を中心に、より一層ダイヤフラムがクッションゴムに追随して変形しにくくなるためにシール性が悪化しやすい。
【0012】
上記のことから、特許文献1や特許文献2の構造のダイヤフラムバルブにおいて、ダイヤフラムの弁座との対向位置の中央部から外径側まで均一の押圧応力を生じさせて、ダイヤフラムと弁座側とによるシール性を確実に発揮させるためには、コンプレッサ側からの押圧力を強くする必要がある。この場合、ステムの操作トルクを高めることになるため、操作性の低下につながる。さらに、操作トルクを上昇させた場合、ダイヤフラムや弁座の消耗も激しくなり、耐久性が悪化するという問題も生じる。
【0013】
本発明は、従来の課題を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、弁閉シールするために必要なダイヤフラムへの押圧力を抑えて操作トルクを軽減しながら弁閉操作可能であり、弁閉時には、弁座全体に強いシール力でダイヤフラムを均一に密着シールさせてシール性能を向上したダイヤフラムバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、弁座を開閉するダイヤフラムと、このダイヤフラムに積層したクッションゴムと、このクッションゴムを押圧するコンプレッサと、このコンプレッサとダイヤフラム及びクッションゴムを昇降動させるステムとを備えたダイヤフラムバルブであって、コンプレッサとクッションゴムとの間に位置する中央部の外方周囲面には隙間を設けると共に、クッションゴムとダイヤフラムとの間に位置する中央部の外方周囲面にはクリアランスを設け、弁閉操作の際に、隙間とクリアランスの相乗作用によりダイヤフラムの押圧応力が均一で、かつシール性能を向上させたダイヤフラムバルブである。
【0015】
請求項2に係る発明は、隙間は、コンプレッサとクッションゴムの外方周囲面の外側から内側に向けて順次広幅に形成され、かつクリアランスは、ダイヤフラムとクッションゴムの外方周囲面の外側から内側に向けて順次広幅に形成されたダイヤフラムバルブである。
【0016】
請求項3に係る発明は、ダイヤフラムとクッションゴムの中央部に設けたボス部をコンプレッサの中央部に設けた凹部に嵌合し、ボス部の側面下方側とダイヤフラムの外方周囲面との交差位置に空隙を設けたダイヤフラムバルブである。
【0017】
請求項4に係る発明は、弁座は、流路方向に対して交差する方向に向けて突設形成した堰部であるダイヤフラムバルブである。
【0018】
請求項5に係る発明は、コンプレッサの押圧面には、堰部に対向する堰部対向面とダイヤフラムの変形を防ぐダイヤフラム押圧面を有するダイヤフラムバルブである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明によると、コンプレッサとクッションゴムとの間の中央部の外方周囲面に隙間、クッションゴムとダイヤフラムとの間の中央部の外方周囲面にクリアランスをそれぞれ設け、弁閉操作の際に、隙間とクリアランスの相乗効果によりダイヤフラムの押圧応力を均一にしていることで、弁閉シールさせるために必要なダイヤフラムへの押圧力を抑えて操作トルクを軽減しつつ弁閉操作可能となり、弁閉時には、ダイヤフラムの当接シール側を弁座全体に強いシール力で均一に密着シールさせてシール性能を向上させることが可能になる。
【0020】
請求項2に係る発明によると、隙間は、コンプレッサとクッションゴムの外方周囲面の外側から内側に向けて順次広幅に形成していることで、コンプレッサの押圧時には、その外縁部付近とクッションゴムの外縁部付近とが当接し、この状態からコンプレッサがクッションゴムを外縁部から中央部にかけて徐々に押圧することで、押圧されたクッションゴムをその中央部付近の隙間において圧縮し、ダイヤフラムの中央部を中心とした弁座との対向側に密着させた状態で均一に押圧できる。クリアランスは、ダイヤフラムとクッションゴムの外方周囲面の外側から内側に向けて順次広幅に形成していることで、クッションゴムにより押圧されたダイヤフラムは、外縁側から中央の弁座にかけて徐々に密着シールするように変形してこのシール部分に押圧力が集中することで、弁座の端部付近から中央部にかけて均一に密着シールさせることができ、このダイヤフラムに加える押圧力を抑えながら十分なシール力を発揮させて強固に弁閉して漏れを確実に阻止できる。隙間とクリアランスとを時間差によって埋めることで、その相乗作用によって操作トルクを抑えつつ、シール性を向上することができる。
【0021】
請求項3に係る発明によると、ダイヤフラムとクッションゴムの中央部のボス部をコンプレッサの中央部の凹部に嵌合し、ボス部の側面下方側とダイヤフラムの前方周囲面との交差位置に空隙を設けたことにより、この空隙を埋めながらダイヤフラムの中央部を弁座に沿って変形させることができる。これにより、ダイヤフラム中央部の押圧シール力を確保している。
【0022】
請求項4に係る発明によると、弁座は、流路方向に対して交差する方向に向けて突設形成した堰部であり、このような堰部タイプの場合であっても、操作トルクを軽減しながら弁閉操作可能であり、弁閉時には、堰部によって高い気密性を維持して流体への悪影響を抑え、安定したシール性能を発揮する。
【0023】
請求項5に係る発明によると、コンプレッサの押圧面には、堰部に対向する堰部対向面とダイヤフラムの変形を防ぐダイヤフラム押圧面を有しているので、ダイヤフラム押圧面によってダイヤフラム全体を均等に押圧しつつ、堰部対向面により堰部に対向するダイヤフラムを確実に押圧して高い密封シール性を確保する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明のダイヤフラムバルブの実施形態を示す縦断面図である。
図2図1の縦断面図である。
図3図2の要部拡大断面図である。
図4】本発明のダイヤフラムバルブの分離斜視図である。
図5】コンプレッサを示す斜視図である。
図6】ダイヤフラムを示す斜視図である。
図7図1のダイヤフラムバルブの弁閉状態を示す縦断面図である。
図8図7の縦断面図である。
図9】本発明のダイヤフラムバルブの弁開状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明におけるダイヤフラムバルブの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1においては、本発明のダイヤフラム弁の縦断面図であり、完全に弁閉状態になる前の状態を示している。図2は、図1の縦断面図、図4は、図1のダイヤフラムバルブの分離斜視図を示している。
【0026】
図1図4において、本実施形態におけるダイヤフラム弁(以下、バルブ本体1という)は、ボデーユニット2、駆動ユニット3、ダイヤフラムユニット4を備え、これらのユニットを組み合わせて一体化することで構成される。
ボデーユニット2は、ボデー5、ライニング部11を備え、駆動ユニット3は、ステム12、ハンドル13、ボンネット14を備えている。
【0027】
ダイヤフラムユニット4は、弁座6を押圧するダイヤフラム15と、このダイヤフラム15に積層したクッションゴム16と、このクッションゴム16を押圧するコンプレッサ17と、このコンプレッサ17とダイヤフラム15及びクッションゴム16を昇降動させるステム12と、連結部材19と、抜け止め用のピン20とを備えている。このダイヤフラムユニット4を駆動ユニット3で動作させることにより、バルブ本体1を開閉可能になっている。
【0028】
ボデーユニット2において、ボデー5の内部には流路7が形成され、この流路7は、一次側流路7a、二次側流路7bを有している。
ボデー5の流路7内には弁座6が形成され、この弁座6は、流路7方向に対して交差する方向に向けて流路中央部の下面から突設形成され、そのシール側が円弧状に形成された堰部よりなっている。本例における堰部(弁座)6は、ボデー5のフランジ面5aからやや低い位置まで形成され、このように堰部タイプの弁座6を備えたバルブ本体1は、いわゆるウェアー式(ウェアー型)とも呼ばれ、堰部6の上方よりダイヤフラム15を押し付けて流路7を閉止するようになっている。ウェアー式のダイヤフラムバルブの場合、気密性が高く、優れた弁座シール性能を発揮する。
【0029】
ボデー5における堰部6の上方側には開口部22が形成され、この開口部22の周囲と、流路7を含むボデー5の内部には、フッ素樹脂等の樹脂によるライニング加工によりライニング部11が設けられる。このライニング部11により、ボデー5におけるダイヤフラム15との当接側に前記堰部6が設けられる。
ボデー5における開口部22の周囲の4箇所には、固定用ボルト25が螺合可能な雌ネジ26が形成されている。開口部22の周囲にはフラット状のフランジ面5aが設けられ、このフランジ面5aに駆動ユニット3が載置されて一体化される。
【0030】
駆動ユニット3において、ステム12は、その中央部の外周面におねじ部30が形成され、このおねじ部30よりも上部には略角形状の角部31、おねじ部30よりも下部には外径方向に環状に突出する環状突出部32がそれぞれ形成されている。
【0031】
ハンドル13は、その中央に角部31を嵌合可能な角穴13aが形成され、これら角部31と角穴13aとの嵌合を通して、固着ナット33によりステム12上端に着脱自在に固定される。このハンドル13の手動操作により、ステム12が回動可能に設けられる。
【0032】
ボンネット14は、上部側に円筒部34、下部側にフランジ部35がそれぞれ設けられ、このフランジ部35がボデー5のフランジ面5aに取付けられる。円筒部34の内周面には、上記ステム12のおねじ部30と螺合するめねじ部36が形成される。上記のステム12は、これらおねじ部30とめねじ部36との螺合を介して、ボンネット14に対して昇降動可能に取付けられる。フランジ部35の四隅付近の所定位置には、固定用ボルト25が螺合する雌ネジ部37が形成されている。
【0033】
ダイヤフラムユニット4において、コンプレッサ17は、ダイヤフラム押さえからなっており、クッションゴム16を介してダイヤフラム15を弁座6に押圧可能に設けられる。
コンプレッサ17の底面側には押圧面40が設けられ、このコンプレッサ押圧面40は、堰部(弁座)6に対向する堰部対向面41と、ダイヤフラム15の変形を防ぐダイヤフラム押圧面42を有している。
【0034】
図5において、堰部対向面41は、弁座6の円弧部分と相似する略円弧形状により、コンプレッサ17の底面側から帯状に突出形成して設けられ、この堰部対向面41は、ダイヤフラム15の押圧時に、このダイヤフラム15を弁座6に沿って変形させて密着シールさせることが可能になっている。
【0035】
一方、ダイヤフラム押圧面42は、堰部対向面41から一段低い位置に緩やかな球面形状によって設けられ、弁閉時において、この堰部対向面41でダイヤフラム15を弁座6に押圧するときに、ダイヤフラム押圧面42がダイヤフラム15に当接しながらこのダイヤフラム15の変形を防ぐようになっている。
【0036】
コンプレッサ17の底面側の中央部には、略円形状で有底の凹部43が形成され、さらに、この凹部43に続けて穴部44が連通して形成され、この穴部44の直径方向には長穴部45も連通するように形成される。これら穴部44及び長穴部45の凹部43との反対側の周縁部には、ピン20が係止可能な図3の係止縁部46が設けられている。後述するように、コンプレッサ17は、穴部44、長穴部45を通してステム12の下部に取付けられる。
【0037】
図3において、コンプレッサ17の底面の外縁部付近には、その断面視において、互い違いのアール面、すなわち、曲面の凹凸方向の異なる2つのR面72、73が設けられ、これらのR面72、73の交点位置には変曲点Aが設けられる。これらのR面72、73、及び変曲点Aにより、このコンプレッサ17の底面とクッションゴム16の上面との間には、後述する隙間Sが設けられる。R面72、73を設ける場合、例えば、R面72の大きさ≦R面73の大きさの関係に設けることが望ましい。
本実施例における変曲点Aとは、コンプレッサ17の下面外周に形成された膨出部77の頂点に対し、クッションゴム16上面側外縁部からのなだらかなr面76とコンプレッサ17に対向するR面72との間にある変曲点が、対向し当接する点である。
【0038】
図1図3図4におけるコンプレッサ17の上部には凹状の係合部47が形成され、この係合部47にはステム12の環状突出部32が側方から装入されて係合される。これら係合部47と環状突出部32との係合により、コンプレッサ17は、ステム12の下部に取付けられ、ステム12と共にこのコンプレッサ17を昇降動させてダイヤフラム15を開閉させるようになっている。コンプレッサ17における環状突出部32と係合部47との対向面側にはスラストベアリング48が装着され、このスラストベアリング48を通してステム12がコンプレッサ17に対して空転可能に設けられている。
【0039】
連結部材19は、ダイヤフラム15を、クッションゴム16を介してコンプレッサ17に連結するために設けられ、棒状部50と、鍔部51と、貫通孔52とを有している。棒状部50は、コンプレッサ17への連結側に略円柱形状に形成され、この棒状部50の上部付近には、直径方向に貫通孔52が形成され、この貫通孔52にピン20が圧入可能に設けられる。連結部材19は、ピン20を介してその上部がコンプレッサ17に連結される。
【0040】
鍔部51は、連結部材19のダイヤフラム15との固定(埋設)側となる棒状部50の下端に形成され、本例において、この鍔部51は、棒状部50よりやや大きい略円板形状に形成されていることで、連結部材19の小型化にも対応している。
【0041】
連結部材19は、例えば、インサート成形等の手段により、ダイヤフラム15に固定される。この場合、連結部材19における鍔部51と棒状部50の一部が、ダイヤフラム15の後述する中央部55に設けられたボス部56に埋設され、これらダイヤフラム15と連結部材19とが一体化される。
【0042】
図4図6に示したダイヤフラム15は、例えば、PTFE等のフッ素樹脂により設けられ、図9に示す弁開時には、堰部(弁座)6への当接側である中央部55が上部方向に凸形状となり、図7に示す弁閉時には、中央部55が下部方向に凸形状に弾性変形するようになっている。
【0043】
ダイヤフラム15の中央部55の上面には、ボス部56が凸状に形成され、一方、ダイヤフラム15の中央部55の底面には、リブ部60が直線状に形成され、弁閉時には、このリブ部60が堰部6に当接してシール可能に設けられている。リブ部60の外周囲には、このリブ部60と連続するように環状リブ61が形成されている。
【0044】
リブ部60は、堰部6との対向側に、この堰部6に当接シールな所定高さによって設けられ、環状リブ61は、堰部6の外周側に形成される外周シール面23との対向側にシール可能な所定高さにより設けられる。これらリブ部60と環状リブ61は、略同じ高さに形成され、リブ部60が堰部6に当接したときに一次側流路7aと二次側流路7bとを遮断するように設けられる。
また、ダイヤフラム15の四隅付近には、固定用ボルト25が挿通可能な挿通穴62が形成されている。
【0045】
図3において、クッションゴム16は、ダイヤフラム15の外形と略同形状により、ステム12側からの押圧時の圧力を吸収可能な適宜の厚さに形成される。クッションゴム16の中央部63には、凸状のボス部64が形成され、このボス部64の反対面側には凹状部65が形成される。さらに、クッションゴム16の中央には、連結部材19を挿通可能な連通穴66が形成され、クッションゴム16の四隅付近には、ダイヤフラム15の場合と同様に、固定用ボルト25が挿通可能な図4の挿通穴部67が形成されている。
【0046】
クッションゴム16の底面には、その断面視において、互い違いのアール面、すなわち、曲面の凹凸方向の異なる2つのR面74、75が設けられ、これらのR面74、75の交点位置には変曲点Bが設けられる。これらのR面74、75、及び変曲点Bにより、このクッションゴム16の底面とダイヤフラム15の上面との間には、後述するクリアランスCが設けられる。R面74、75を設ける場合、例えば、R面74の大きさ<R面75の大きさの関係に設けることが望ましい。
本実施例における変曲点Bとは、クッションゴム16下面外縁部からのなだらかなr面78に連接するダイヤフラム対向R面75との境界部位に対して、ダイヤフラム15上面外縁部からのなだらかなr面79と、このr面79に接続するクッションゴム対向R面74との境界部位が、対向して当接する点である。
【0047】
図3に示した、弁体(ダイヤフラム15)の中心を流路と直交するように切断した断面図において、変曲点Bは、前述したコンプレッサ17の底面に設けられた変曲点Aよりも、弁体(ダイヤフラム15)の中心に近い内側に配置されるように、クッションゴム16のR面74、75、及び前述したコンプレッサ17のR面72、73がそれぞれ設定される。図において、変曲点Bは、変曲点Aよりも、水平方向の距離ΔTの分だけ、ダイヤフラム15の中心に近い内側に配置されている。
【0048】
図1図4において、ダイヤフラムユニット4を構成する場合には、先ず、連結部材19を一体化したダイヤフラム15に対し、連通穴66に連結部材19を挿通させつつクッションゴム16を重ねた状態にする。
続いて、連結部材19の貫通孔52にピン20を圧入してダイヤフラム15からのクッションゴム16の抜け出しを防止し、これらダイヤフラム15とクッションゴム16とを離脱不能に一体化する。
【0049】
最後に、ダイヤフラム15の挿通穴62とクッションゴム16の挿通穴部67の位置を合わせた状態で、ピン20を圧入した連結部材19の上部先端側をコンプレッサ17の穴部44、長穴部45から挿入した後に、コンプレッサ17をクッションゴム16(ダイヤフラム15)に対して略90°回転させることで、ピン20を係止縁部46に係止させる。これにより、ダイヤフラム15、クッションゴム16とコンプレッサ17とを連結してダイヤフラムユニット4を構成し、その離脱を防ぐことが可能になる。このとき、コンプレッサ17の底面によりクッションゴム16の中央部63が上方からやや押圧され、これらコンプレッサ17とクッションゴム16との相互の回転が防がれる。
【0050】
さらに、上記ボデーユニット2、駆動ユニット3、ダイヤフラムユニット4を組み合わせて一体化する場合には、先ず、駆動ユニット3において、ボンネット14に対してステム12を回転して下降させ、このステム12の環状突出部32をフランジ部35の底面よりも突出させた状態とする。
【0051】
次いで、コンプレッサ17の係合部47にステム12の環状突出部32を側方から装入して係合させることにより、駆動ユニット3とダイヤフラムユニット4とを接続する。接続後には、ボンネット14に対してステム12を回転させ、ダイヤフラム15の外枠側がボンネット14のフランジ部35底面に当接する程度まで上昇させるようにする。
【0052】
最後に、一体化した駆動ユニット3とダイヤフラムユニット4とを、挿通穴62、挿通穴部67を4箇所の雌ネジ26に合わせつつフランジ面5aに載置し、雌ネジ26、雌ネジ部37に固定用ボルト25を螺合させ、この固定用ボルト25に固定用ナット68を螺合してこれらを固定することにより、ボデーユニット2、駆動ユニット3、ダイヤフラムユニット4を一体化させる。
バルブ本体1は、これらボデーユニット2、駆動ユニット3、ダイヤフラムユニット4に分離可能に設けていることで、簡便に組み立てでき、修理やメンテンナンスも容易になる。
【0053】
バルブ本体1の構成後には、クッションゴム16の中央部63に設けたボス部64がコンプレッサ17の中央部に設けた凹部43に嵌合され、ダイヤフラム15の中央部55に設けたボス部56がクッションゴム16の中央部63に設けた凹状部65に嵌合され、これらにより、ダイヤフラム15とクッションゴム16のボス部56、64をコンプレッサ17の凹部43に嵌合した状態で、ダイヤフラム15、クッションゴム16、コンプレッサ17が組み合わせられる。
【0054】
図1図2に示したバルブ本体1が完全に弁閉状態になる前の状態においては、ダイヤフラム15の中央部55付近が下部方向(下向き)に凸形状の状態となり、リブ部60が堰部(弁座)6に当接しつつ、一次側流路7aと二次側流路7bとを遮断する前の状態となる。
【0055】
この場合、ステム12をやや下降させていることにより、コンプレッサ17の外周側がクッションゴム16に当接した状態となっており、このようなコンプレッサ17が非圧縮の弁閉状態において、コンプレッサ17の凹部43下面とクッションゴム16のボス部64上面、クッションゴム16の凹状部65とダイヤフラム15のボス部56上面とがそれぞれ当接する。さらに、ダイヤフラム15のボス部56の側面下方側とこのダイヤフラム15の外方周囲面70との交差位置には、空隙Gが設けられた状態になっている。
【0056】
コンプレッサ17とクッションゴム16との間に位置するクッションゴム16の中央部63の外方周囲面71には、隙間Sが設けられ、ダイヤフラム15とクッションゴム16との間に位置する外方周囲面71にはクリアランスCが設けられる。
【0057】
このとき、隙間Sは、コンプレッサ17とクッションゴム16の外方周囲面71の外側から内側に向けて順次広幅になるように形成され、かつ、クリアランスCは、ダイヤフラム15とクッションゴム16の外方周囲面70の外側から内側に向けて順次広幅になるように形成されている。
【0058】
この状態からコンプレッサ17により圧縮力を加えて弁閉操作する際には、これら隙間SとクリアランスCとの相乗効果により、ダイヤフラム15の押圧応力が均一で、かつシール性能を向上させるようにしている。
【0059】
バルブ本体1を操作する場合、図1図2の状態からハンドル13を弁閉方向に回転すると、おねじ部30とめねじ部36との螺合を介してステム12が下降し、このステム12の環状突出部32がスラストベアリング48を介して空転しながらコンプレッサ17を下方に押圧する。これによりコンプレッサ17が下降してクッションゴム16を押し潰し、その押圧力がダイヤフラム15の中央部55近傍に伝達されて下方に向けて変形し、リブ部60が堰部(弁座)6に密着シールして図7図8に示した弁閉シール状態となる。この弁閉時には、ダイヤフラム中央部55が下部方向に凸形状となる。
【0060】
一方、図7図8の弁閉状態からハンドル13を弁開方向に回転すると、ステム12が上昇し、環状突出部32とコンプレッサ17の係合部47とが空転しつつ、コンプレッサ17がステム12に引き上げられて上昇する。このコンプレッサ17の上昇により、ピン20を介してコンプレッサ17に一体化された連結部材19も上昇し、この連結部材19と固定されたダイヤフラム15が、クッションゴム16を押圧しながら上方に向けて変形して弁開方向に動作する。
【0061】
図9に示した弁開状態では、ダイヤフラム中央部55が、上部方向(上向き)に凸形状の状態となり、リブ部60が堰部(弁座)6から離間した状態となる。これにより、一次側流路7aと二次側流路7bとが連通して弁開状態となる。
【0062】
なお、上記実施形態のバルブ本体1は、例えば、口径サイズ15Aや20Aなどの小型(小口径)サイズに適しているが、これ以外にも、口径サイズが50Aや80Aなどのより大きい口径サイズにも適用でき、さらには、大口径バルブと呼ばれるサイズの一層大きい大型バルブにも適用可能である。
【0063】
バルブ本体1は、前述した堰部タイプ(ウェアー式)以外にも、流路内の底面側を弁座としたストレート状タイプ、いわゆるストレート式(ストレート型)と呼ばれる構成であってもよい。この場合、例えば、粘性が高く流れにくい流体などに適しており、圧力損失や液溜まりも少なくなる。さらに、バルブ本体1をストレート状タイプに設ける場合などには、ダイヤフラム15を、通常時にその中央部55付近が下部方向(弁閉方向)に凸形状となるように成形してもよい。また、バルブ本体1を堰部タイプやストレート状タイプ以外の構造に設けるようにしてもよい。
【0064】
バルブ本体1の堰部(弁座)6は、一、二次側流路7a、7bに対して必ずしも直交方向に設ける必要はなく、その場合にも、堰部6の向きに対向するようにダイヤフラム15のリブ部60を成形すればよい。
【0065】
ライニング部11は、必ずしもボデー5の内周全体に設ける必要はなく、ダイヤフラム15が当接する堰部6(弁座)側のみに設けるようにしてもよい。さらには、ボデー5の堰部6側にダイヤフラム15が当接したときに、例えば樹脂のダイヤフラム15と金属のボデー5の組合せのように、シール性を確保できれば、ライニング部11を省略することも可能である。
【0066】
ダイヤフラム15は、例えばゴム材料などのフッ素樹脂以外の材料により形成することもでき、さらに、ダイヤフラム15を構成する材料の弾性力などの性質に応じて、連結部材19の棒状部50、鍔部51の外径や太さなども任意に変更できる。
【0067】
連結部材19は、少なくとも鍔部51がダイヤフラム15に固定されていれば、上部付近までインサート成形されていてもよい。さらに、これら連結部材19とダイヤフラム15とは、インサート成形以外の手段により一体化されてもよい。連結部材19の鍔部51は、棒状部50と同径に形成してもよく、さらには、連結部材19の形状を、前述した実施形態の態様以外に設けてもよい。
【0068】
バルブ本体1を操作するために手動用のハンドル13を設けているが、バルブ本体1は手動に限らず、図示しない電動アクチュエータ等を接続して自動操作することも可能である。
【0069】
続いて、本発明におけるダイヤフラム弁の上記実施形態における動作並びに作用を説明する。
図1図2に示すバルブ本体1のコンプレッサ17の外周がクッションゴム16に当接した弁閉シール前の状態から、ハンドル13でステム12を弁閉方向に回転させて弁閉操作すると、ステム12は、おねじ部30とめねじ部36との螺合を通して下方へ移動し(下降動作し)、スラストベアリング48を介してコンプレッサ17を押圧する。
【0070】
この場合、コンプレッサ17の凹部43下面とクッションゴム16のボス部64上面とが当接し、クッションゴム16の凹状部65下面とダイヤフラム15のボス部56上面とが当接し、これら二ヶ所の領域を通してコンプレッサ17、クッションゴム16、ダイヤフラム15が接触した状態となる。そのため、コンプレッサ17からの押圧力は、クッションゴム16のボス部64に伝達され、続いて、この押圧力がクッションゴム16からダイヤフラム15に伝達される。
【0071】
しかも、コンプレッサ17からの押圧力は、ボス部64中央付近を通してクッションゴム16からダイヤフラム15に伝わり、このダイヤフラム15のリブ部60とボデー5の堰部6上面(弁座)との間に集中してかかる。そのため、ステム12からコンプレッサ17を通して働く押圧力が、ダイヤフラム15のシール部分であるリブ部60に集中して加わるようになる。これにより、弁閉動作時に、堰部6(弁座)とリブ部60とのシール面圧を高めてシール性能を向上させることが可能になる。
【0072】
図7においては、図1の状態からさらにステム12を下降させてコンプレッサ17により押圧力を加えた弁閉状態を示している。
図1図2)の状態から図7の状態までコンプレッサ17により押圧力を加えるときには、前述したように、図2の状態でコンプレッサ17とクッションゴム16との間に隙間Sを設けていると共に、クッションゴム16とダイヤフラム15との間にクリアランスCを設けている。
【0073】
上記の隙間Sは、コンプレッサ17とクッションゴム16の外方周囲面71の外側から内側に向けて順次広幅に形成されているので、弁閉操作時のコンプレッサ17の押圧時には、その外縁部がクッションゴム16の外縁部に当接した状態で、コンプレッサ17が隙間Sを介してクッションゴム16を外縁部から中央部へ向けて徐々に押圧することになる。
【0074】
この場合、ステム12がコンプレッサ17を押し下げると、コンプレッサ17下部の外縁部に設けられた変曲点Aが、クッションゴム16の外縁部付近の上面に当接し、コンプレッサ17下部が、クッションゴム16上部を外縁部から中心部にかけて徐々に押し下げ始める。このように、コンプレッサ17下部がクッションゴム16上部を押し下げることで、隙間Sが外縁部から中心部へ埋まり始め、一定時間経過後にクッションゴム16下部に設けられた変曲点Bが、ダイヤフラム15上部を外縁部から中心部にかけて徐々に押し下げ始める。
【0075】
このクッションゴム16の変形により、クリアランスCも外縁部から中心部へ次第に埋まっていくようになる。この時、変曲点A、Bは、弁体(ダイヤフラム15)の中心を流路と直交するように切断した面の断面図において、変曲点Bが変曲点Aよりも弁体の中心に近い内側に配置されるように、距離ΔTを設けているため、変曲点Aが押し下げられてから隙間Sが埋まり始めるまでと、変曲点Bに力が伝わりクリアランスCが埋まり始めるまでの間に、距離ΔTにより時間差が生じる。
このように、距離ΔTを設けていることで、隙間SとクリアランスCとが、時間差によって埋まるようになり、その相乗作用により、コンプレッサ17の押下に伴って弁閉操作に必要な力が極端に上昇することを防ぎつつ、中央に向かってダイヤフラム15を徐々に押圧して、均一なシールを得ることが可能となる。
【0076】
上記のようにして、クッションゴム16は、コンプレッサ17の堰部対向面41とダイヤフラム押圧面42とにより押圧される。そのため、クッションゴム16は、堰部対向面41とダイヤフラム15のシール部であるリブ部60付近との間に圧縮され、このリブ部60に沿うようにして偏りなく均一に圧縮される。このクッションゴム16の圧縮部分は、コンプレッサ17の堰部対向面41に沿って外縁部から中央部にかけて次第に押圧されることで、その押圧部分が徐々に中央部63に移動するように変形する。
一方、ダイヤフラム押圧面42に対向するクッションゴム16の部分は、このダイヤフラム対向面42より押圧されて、その球面形状に沿って略均等に圧縮されようとする。
【0077】
クッションゴム16からダイヤフラム15に力が加わるときには、クッションゴム16とダイヤフラム15との間に位置する中央部63の外方周囲面70に、この外方周囲面70の外側から内側に向けて順次広幅となるクリアランスCを形成しているので、クッションゴム16の外縁部がダイヤフラム15の外縁部に当接した状態で、クッションゴム16が、クリアランスCを介してダイヤフラム15を外縁部から中央部55に向けて徐々に押圧する。
【0078】
この場合、ダイヤフラム15における堰部対向面41が対応する位置、すなわち、リブ部60が設けられた位置では、堰部対向面41によって圧縮されたクッションゴム16によって押圧される。このとき、クッションゴム16がクリアランスCを外縁部から徐々に埋めるように弾性変形しながらダイヤフラム15を押圧することで、このダイヤフラム15のリブ部60の形成位置付近では、堰部6に沿って外縁部から中央部55にかけて次第に変形し、リブ部60が堰部6に密着シールする。
【0079】
さらに、ダイヤフラム15の中央部55に設けたボス部56、クッションゴム16の中央部63に設けたボス部64を、コンプレッサ17の中央部に設けた凹部43に嵌合した状態とし、ボス部56の側面下方側と外方周囲面70との交差位置に空隙Gを設けていることにより、中央部63付近まで変形したクッションゴム16がこの空隙Gを埋めるように変形し、ダイヤフラム15のボス部56の根元回りまでクッションゴム16側からの押圧力が伝達される。そのため、クッションゴム16を通して帯状の堰部対向面41の全面に渡って均一に押圧力を伝達できる。
【0080】
上述したように、コンプレッサ17の堰部対向面41と、この堰部対向面41に対応するダイヤフラム15のリブ部60との間に位置するクッションゴム16とを、外縁部から中央部に押圧して均一な密着度合とし、この均一に圧縮されたクッションゴム16を介してダイヤフラム15のリブ部60付近をその外縁部から中央部55にかけて押圧していることにより、堰部6上面に密着したリブ部60のみにダイヤフラム15からの押圧力を集中して加えることができ、さらに、ダイヤフラム15の中央部55におけるボス部56に空隙Gを介して押圧力を伝えることができるため、堰部6に対してリブ部60を強い圧接力で均等にシールできる。
【0081】
コンプレッサ17からの押圧力でダイヤフラム15全体をクッションゴム16全体の変形に追随させて所定のシール形状に変形させる必要がなく、ダイヤフラム15のうちの堰部6と対向するリブ部60付近のみを変形させることで密着シール状態に弁閉操作できるので、弁閉時の操作トルクを軽減しながら確実にシール性を発揮でき、ダイヤフラム15や堰部6の消耗も抑えて耐久性も向上する。
【0082】
そのため、弁閉時にリブ部60と堰部6とが密着シールするようにすれば、図7において、ダイヤフラム15のリブ部60以外の部分において、このダイヤフラム15のボス部56の根元回りよりも外周側とクッションゴム16の外方周囲面70との間にクリアランスCが残っていてもよい。
【0083】
上述したように、バルブ本体1は、弁閉操作の際には、隙間SとクリアランスCの相乗効果により、ダイヤフラム15の押圧応力が均一で、かつシール性能を向上させるようにしていることから、操作トルクを増加することなく、リブ部60と堰部(弁座)6とを均一かつ封止性を高めた状態で弁閉シールし、流体漏れを確実に防ぐことができる。
【0084】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、前記実施形態の記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。
【符号の説明】
【0085】
1 バルブ本体
6 堰部(弁座)
12 ステム
15 ダイヤフラム
16 クッションゴム
17 コンプレッサ
40 コンプレッサの押圧面
41 堰部対向面
42 ダイヤフラム押圧面
43 コンプレッサの凹部
55 ダイヤフラムの中央部
63 クッションゴムの中央部
64 クッションゴムのボス部
70 ダイヤフラムの外方周囲面
71 クッションゴムの外方周囲面
C クリアランス
G 空隙
S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9