(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009505
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】溶接ワイヤリールカバー
(51)【国際特許分類】
B23K 9/133 20060101AFI20240116BHJP
B65H 75/38 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B23K9/133 503Z
B65H75/38 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111077
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 健一
【テーマコード(参考)】
3F068
【Fターム(参考)】
3F068AA11
3F068CA04
3F068DA02
3F068EA08
3F068HA03
3F068JB06
(57)【要約】
【課題】ワイヤリールから溶接ワイヤが引き出される位置の変位に対応しつつ、溶接ワイヤへの接触を抑制する。
【解決手段】溶接ワイヤリールカバーは、固定カバー部110と、円筒状の可動カバー部140とを備える。固定カバー部110は、巻き回された溶接ワイヤ2を支持する軸部11に固定されている。可動カバー部140は、軸部11の周方向に回動可能に固定カバー部110に接続され、固定カバー部110とともに溶接ワイヤ2を覆う。可動カバー部140の周面141に、溶接ワイヤ2を引き出すための開口部143が設けられている。可動カバー部140は、溶接ワイヤ2の引き出し位置の変位とともに開口部143が変位するように周方向に回動する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻き回された溶接ワイヤを支持する軸部に固定された固定カバー部と、
前記軸部の周方向に回動可能に前記固定カバー部に接続され、前記固定カバー部とともに前記溶接ワイヤを覆う円筒状の可動カバー部とを備え、
前記可動カバー部の周面に、前記溶接ワイヤを引き出すための開口部が設けられ、
前記可動カバー部は、前記溶接ワイヤの引き出し位置の変位とともに前記開口部が変位するように前記周方向に回動する、溶接ワイヤリールカバー。
【請求項2】
前記固定カバー部は、円筒状の周面を有し、
前記固定カバー部の周面は、前記可動カバー部の周面における前記開口部以外の少なくとも一部を覆っている、請求項1に記載の溶接ワイヤリールカバー。
【請求項3】
前記固定カバー部は、
前記軸部の軸方向の第1端に固定された第1カバー部と、
前記軸部の前記軸方向の前記第1端とは反対側に位置する第2端に配置され、前記軸部に着脱可能な第2カバー部とを含み、
前記可動カバー部は、前記軸方向において前記第1カバー部と前記第2カバー部との間に挟まれるように位置している、請求項1または請求項2に記載の溶接ワイヤリールカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接ワイヤリールカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤリール支持装置を開示した先行技術文献として、特開2014-234251号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載されたワイヤリール支持装置は、第1および第2のケース体を備える。第1および第2のケース体は、内部にワイヤリールを収容するための空間を有する上下2つ割の矩形箱状である。第1および第2のケース体は、互いに蝶番によって開閉可能に連結されている。第1および第2のケース体の一方には、溶接ワイヤを外部に導出するためのワイヤ導出孔が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶接時における溶接速度の変更または溶接の停止などによって、ワイヤリールに巻き回された溶接ワイヤの引き出される位置が変位する。特許文献1に記載されたワイヤリール支持装置のケース体においては、ワイヤリールから溶接ワイヤの引き出される位置が変位することにより、溶接ワイヤがケース体のワイヤ導出孔に引っ掛かることなどを抑制するために、ワイヤ導出孔の開口面積を大きくする場合がある。この場合、溶接ワイヤがケース体から露出する面積が増加するため、充電部である溶接ワイヤがケース体の外側から接触しやすい状態になる。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、ワイヤリールから溶接ワイヤが引き出される位置の変位に対応しつつ、溶接ワイヤへの接触を抑制することができる、溶接ワイヤリールカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に基づく溶接ワイヤリールカバーは、固定カバー部と、円筒状の可動カバー部とを備える。固定カバー部は、巻き回された溶接ワイヤを支持する軸部に固定されている。可動カバー部は、軸部の周方向に回動可能に固定カバー部に接続され、固定カバー部とともに溶接ワイヤを覆う。可動カバー部の周面に、溶接ワイヤを引き出すための開口部が設けられている。可動カバー部は、溶接ワイヤの引き出し位置の変位とともに開口部が変位するように上記周方向に回動する。
【0007】
この場合、溶接ワイヤを引き出すための開口部が設けられた可動カバー部が、固定カバー部に接続されつつ固定カバー部に対して周方向に回動可能に配置されることによって、可動カバー部が溶接ワイヤの引き出される位置の変位に合わせて固定カバー部に対して周方向に回動することができる。これにより、ワイヤリールから溶接ワイヤが引き出される位置の変位に対応しつつ、溶接ワイヤへの接触を抑制することができる。
【0008】
本発明の一形態においては、固定カバー部は、円筒状の周面を有する。固定カバー部の周面は、可動カバー部の周面における開口部以外の少なくとも一部を覆っている。
【0009】
この場合、外側に固定カバー部を配置し、内側に可動カバー部を配置することにより、二重に溶接ワイヤを覆うことができるため、強固に溶接ワイヤを保護することができる。
【0010】
本発明の一形態においては、固定カバー部は、第1カバー部と、第2カバー部とを含む。第1カバー部は、軸部の軸方向の第1端に固定されている。第2カバー部は、軸部の軸方向の第1端とは反対側に位置する第2端に配置され、軸部に着脱可能である。可動カバー部は、上記軸方向において第1カバー部と第2カバー部との間に挟まれるように位置している。
【0011】
これにより、溶接ワイヤをワイヤリールに着脱する際に第2カバー部を取り外すことができるため、軸部に溶接ワイヤを容易に着脱することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ワイヤリールから溶接ワイヤが引き出される位置の変位に対応しつつ、溶接ワイヤへの接触を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る溶接装置の構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る溶接ワイヤリールカバーの構成を示す斜視図である。
【
図3】
図2の溶接ワイヤリールカバーをIII-III線矢印方向から見た断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態1に係る溶接ワイヤリールカバーが備える固定カバー部における第1カバー部と可動カバー部との構成を示す正面図である。
【
図5】
図3におけるV部を拡大して溶接ワイヤリールカバーが備える固定カバー部における第1カバー部と可動カバー部との接続の構成を示す断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態2に係る溶接ワイヤリールカバーの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の各実施の形態に係る溶接ワイヤリールカバーについて図面を参照して説明する。以下の実施の形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る溶接装置の構成を示す模式図である。
図1に示すように、本実施の形態における溶接装置1は、サブマージアーク自動溶接を行なうための装置である。
【0016】
本発明の実施の形態1に係る溶接装置1は、ワイヤリール10と、ワイヤ供給部20と、トーチ部30と、ホッパ部40と、台車部50とを備える。
【0017】
ワイヤリール10は、溶接ワイヤ2を保持する部分である。ワイヤリール10は、軸部11を含む。軸部11は、軸部11の周面に巻き回された溶接ワイヤ2を支持している。溶接ワイヤ2は、軸部11に対して周方向に回転しながら一端がワイヤ供給部20へ引き出される。
【0018】
なお、ワイヤリール10には、軸部11の周面に図示しない複数のローラが設けられていてもよい。この場合、複数のローラは、軸部11の周方向に回転可能である。溶接ワイヤ2は、複数のローラを間に挟んで軸部11の周面に巻き回される。溶接ワイヤ2は、複数のローラの回転によって転動するため、引き出されやすくなる。
【0019】
ワイヤリール10から引き出された溶接ワイヤ2の一端は、ワイヤ供給部20の内部を挿通する。ワイヤ供給部20は、溶接ワイヤ2をトーチ部30へ供給する。なお、溶接ワイヤ2は、ワイヤリール10から引き出されてワイヤ供給部20に供給されるまでの間において、その周囲をコンジットにより被覆されることによって保護されていてもよい。
【0020】
トーチ部30は、溶接ワイヤ2が先端から被溶接物3へ向かって突出する。溶接ワイヤ2および被溶接物3に電流を流すことにより、溶接ワイヤ2と被溶接物3との間にアークを発生させることによって、被溶接物3が溶接される。
【0021】
ホッパ部40は、フラックス4を収容する。フラックス4は、ホース41を通じて、溶接ワイヤ2および被溶接物3の周囲に供給される。フラックス4がアークおよび溶融金属を覆うことによって、溶接箇所への大気の侵入が抑制される。
【0022】
台車部50は、溶接装置1のうちの下方側に位置している。台車部50は、たとえば、図示しないレールに載置される。溶接装置1は、台車部50が駆動することによって、溶接時にレール上を走行する。
【0023】
台車部50は、アーム51を含む。アーム51は、ワイヤリール10などの他の構成を支持している。アーム51は、台車部50上に設けられた回転軸を中心として、台車部50上を旋回することが可能である。アーム51が旋回することによって、ワイヤリール10などの向きを変更することができる。本実施の形態においては、たとえば、軸部11に取り付けられた取っ手12を把持してワイヤリール10を旋回させることによって、ワイヤリール10などの向きを変更することができる。
【0024】
図2は、本発明の実施の形態1に係る溶接ワイヤリールカバーの構成を示す斜視図である。
図3は、
図2の溶接ワイヤリールカバーをIII-III線矢印方向から見た断面図である。
【0025】
図2および
図3に示すように、ワイヤリール10およびワイヤリール10に巻き回された溶接ワイヤ2は、溶接ワイヤリールカバー100によって覆われている。溶接ワイヤリールカバー100は、溶接時の充電部となる溶接ワイヤ2と人との接触を防止する、または、回転する溶接ワイヤ2への人の巻き込みを防止するために設けられている。
【0026】
本実施の形態に係る溶接ワイヤリールカバー100は、固定カバー部110と、可動カバー部140とを含む。
【0027】
固定カバー部110は、軸部11に固定されつつ溶接ワイヤ2を覆う。固定カバー部110は、円筒状の周面111を有する。本実施の形態においては、固定カバー部110の周面111は、後述する第1周面122および第2周面132により構成されている。
【0028】
本実施の形態に係る固定カバー部110は、第1カバー部120と、第2カバー部130とを有する。
【0029】
図3に示すように、第1カバー部120は、軸部11の軸方向の第1端13に固定されている。第1カバー部120は、溶接ワイヤ2の軸方向における第1端13側を覆っている。
【0030】
第1カバー部120は、第1主面部121と、第1周面122と、係合部123とを有する。
【0031】
第1主面部121は、軸部11の軸方向に直交する方向に延在する面である。第1主面部121は、軸部11の第1端13とアーム51の先端に位置する取付支持部52とに挟持され、ボルト締結などの公知の接続方法によって軸部11に接続されている。
【0032】
第1主面部121は、周方向に沿って、その一部が湾曲した湾曲部124を有する。これにより、第1主面部121は、平面形状で構成される場合と比較して強度が向上する。
【0033】
第1周面122は、第1主面部121の縁から軸方向における第2カバー部130に向かって延在する面である。
【0034】
係合部123は、軸方向において可動カバー部140に向かって突出するように第1主面部121に設けられている。本実施の形態における係合部123は、たとえばピンである。係合部123は、ピンが第1主面部121に設けられる図示しない孔に嵌入されることにより第1主面部121に固定されることによって構成されている。係合部123は、周方向において複数設けられている。
【0035】
第2カバー部130は、軸部11の軸方向の第1端13とは反対側に位置する第2端14に配置されている。第2カバー部130は、溶接ワイヤ2の軸方向における第2端14側を覆っている。
【0036】
第2カバー部130は、第2主面部131と、第2周面132とを有する。第2主面部131は、軸方向に直交する方向に延在する面である。
図2に示すように、第2カバー部130は、第2主面部131が軸部11に設けられた取っ手12に係合することによってワイヤリール10に固定されている。
【0037】
第2主面部131には、軸方向に直交する方向の中央から放射状に径方向に延在する複数の長孔133が設けられている。複数の長孔133から溶接ワイヤリールカバー100の内部が視認可能となることによって、溶接ワイヤリールカバー100をワイヤリール10に装着した状態で溶接ワイヤ2の残量を確認することができる。
【0038】
第2周面132は、第2主面部131の縁から軸方向における第1カバー部120に向かって延在する面である。
【0039】
第2カバー部130は、軸部11に着脱可能である。本実施の形態における第2カバー部130は、取っ手12から第2主面部131を引き抜くことにより軸部11に着脱することができる。なお、第2カバー部130を軸部11に接続する方法は、この構成に限定されず、第2カバー部130がボルト締結などの公知の接続方法によって軸部11に接続されていてもよい。
【0040】
可動カバー部140は、固定カバー部110とともに溶接ワイヤ2を覆う。可動カバー部140は、軸方向において第1カバー部120と第2カバー部130との間に挟まれるように位置している。
【0041】
可動カバー部140は、円筒状を有している。本実施の形態における可動カバー部140は、有底円筒状を有している。可動カバー部140は、第3周面141と、対向面部142とを有している。第3周面141は、軸方向に延在する円筒状を有する面である。
【0042】
可動カバー部140の第3周面141に、溶接ワイヤ2を引き出すための開口部143が設けられている。開口部143には、溶接ワイヤ2が挿通している。開口部143は、第3周面141の周方向の長さのうちの約8分の1を占めている。
【0043】
可動カバー部140の外周側から見て、開口部143は、略円形である。開口部が矩形状である場合と比較して、開口部143に角部が設けられないため、開口部143には角部に起こりやすい応力集中の発生が抑制されている。これにより、可動カバー部140に開口部143を設けたとしても可動カバー部140の強度を確保することができる。
【0044】
図3に示すように、対向面部142は、第1主面部121に対向する面である。対向面部142は、溶接ワイヤ2の軸方向における第1端13側の一部を覆っている。対向面部142は、第1カバー部120が対向面部142を間に挟んで軸部11に接続されるため、その中央が開口している。
【0045】
固定カバー部110の周面111は、可動カバー部140の第3周面141における開口部143以外の少なくとも一部を覆っている。これにより、外側に固定カバー部110を配置し、内側に可動カバー部140を配置することによって、二重に溶接ワイヤ2を覆っている。
【0046】
図4は、本発明の実施の形態1に係る溶接ワイヤリールカバーが備える固定カバー部における第1カバー部と可動カバー部との構成を示す正面図である。
図5は、
図3におけるV部を拡大して溶接ワイヤリールカバーが備える固定カバー部における第1カバー部と可動カバー部との接続の構成を示す断面図である。
【0047】
図4および
図5に示すように、可動カバー部140は、軸部11の周方向に回動可能に固定カバー部110に接続されている。本実施の形態においては、可動カバー部140は、第1カバー部120に接続されている。
【0048】
具体的には、対向面部142には、周方向に沿って延在する貫通孔144が設けられている。本実施の形態においては、対向面部142に貫通孔144が複数設けられている。複数の貫通孔144の各々は、周方向に沿って互いに間隔をあけて円周上に設けられている。複数の貫通孔144の各々は、係合部123と係合している。
【0049】
複数の貫通孔144は、係合部123に対して周方向に長い。また、貫通孔144に対して係合部123の突出部125が隙間をあけて設けられている。これにより、可動カバー部140は、係合部123が貫通孔144内で周方向に移動可能に貫通孔144と係合することにより周方向に回動可能である。
【0050】
ここで、溶接装置1によって溶接が行なわれる際の溶接ワイヤリールカバー100の動きについて説明する。
【0051】
溶接装置1は、溶接時における溶接速度の変更または溶接の停止などによって、ワイヤ供給部20における溶接ワイヤ2の引き出される量が変位するため、ワイヤリール10の軸部11に巻き回された溶接ワイヤ2の引き出される位置が変位する。具体的には、
図2中の矢印方向A1に示すように、ワイヤリール10における溶接ワイヤ2の引き出される位置は、周方向に変位する。
【0052】
溶接ワイヤ2の引き出される位置が周方向において変位した場合、溶接ワイヤ2は溶接ワイヤリールカバー100における可動カバー部140の開口部143を挿通しているため、開口部143に接触する。
【0053】
仮に、溶接ワイヤリールカバーがワイヤリール10に対して固定されている場合、溶接ワイヤ2の引き出される位置が変位すると、溶接ワイヤ2が挿通する開口部に強く接触した状態で引き出される場合がある。この場合、溶接ワイヤ2の引き出す際の抵抗になって、溶接ワイヤ2がワイヤ供給部20へ正常に供給されにくい。
【0054】
一方、本実施の形態の溶接ワイヤリールカバー100においては、可動カバー部140が溶接ワイヤ2の引き出し位置の変位とともに開口部143が変位するように周方向に回動する。具体的には、溶接ワイヤ2の引き出し位置の変位により溶接ワイヤ2が開口部143に周方向から接触する。可動カバー部140は、溶接ワイヤ2の接触によって周方向に回動する力を受けて、
図2中の矢印方向A2に示すように、周方向における溶接ワイヤ2から離れる方向に回動する。これにより、可動カバー部140は、溶接ワイヤ2の引き出される際に接触して抵抗になることが抑制される。
【0055】
また、仮に、溶接ワイヤリールカバーがワイヤリール10に対して固定されている場合、溶接ワイヤ2が開口部に接触して抵抗にならないように、溶接ワイヤ2の引き出される位置の変位する範囲以上に開口部の開口面積を大きくする必要がある。
【0056】
一方、本実施の形態の溶接ワイヤリールカバー100においては、可動カバー部140が第1カバー部120に対して回動可能であることによって、溶接ワイヤ2の開口部143への接触により、可動カバー部140が周方向に回動するため、開口部143の開口面積を大きくする必要がない。これにより、開口部143の開口面積を小さくして、溶接ワイヤリールカバー100によって溶接ワイヤ2を覆う面積を大きくすることができる。その結果、溶接ワイヤリールカバー100の外側から溶接ワイヤへの接触を抑制することができる。
【0057】
なお、本実施の形態における固定カバー部110は、第1カバー部120と第2カバー部130とが蝶番などによって接続され開閉可能に設けられていてもよい。また、固定カバー部110は、1つの部材から構成されていてもよい。これらの場合、固定カバー部は可動カバー部140を覆い、かつ、固定カバー部には溶接ワイヤ2が引き出される位置の変位する範囲以上の開口面積を有する開口部が設けられることが望ましい。
【0058】
また、本実施の形態における固定カバー部110に対して可動カバー部140が周方向に回動する方法は、係合部123および貫通孔144の構成による回動に限定されない。可動カバー部140が周方向に回動する方法は、たとえば、周面111および第3周面141との間に、軸部11の周方向に回転可能な複数のローラを設け、複数のローラに可動カバー部140を接触させて可動カバー部140が回動する方法であってもよい。
【0059】
本発明の実施の形態1に係る溶接ワイヤリールカバー100においては、溶接ワイヤ2を引き出すための開口部143が設けられた可動カバー部140が、固定カバー部110に接続されつつ固定カバー部110に対して周方向に回動可能に配置されることによって、可動カバー部140が溶接ワイヤ2の引き出される位置の変位に合わせて固定カバー部110に対して周方向に回動することができる。これにより、ワイヤリール10から溶接ワイヤ2が引き出される位置の変位に対応しつつ、溶接ワイヤ2への接触を抑制することができる。
【0060】
本発明の実施の形態1に係る溶接ワイヤリールカバー100においては、外側に固定カバー部110を配置し、内側に可動カバー部140を配置することによって、二重に溶接ワイヤ2を覆うことができるため、強固に溶接ワイヤ2を保護することができる。
【0061】
本発明の実施の形態1に係る溶接ワイヤリールカバー100においては、固定カバー部110において軸部11に着脱可能な第2カバー部130を設けることによって、溶接ワイヤ2をワイヤリール10に着脱する際に第2カバー部130を取り外すことができるため、軸部11に溶接ワイヤ2を容易に着脱することができる。
【0062】
本発明の実施の形態1に係る溶接ワイヤリールカバー100においては、第1カバー部120の係合部123が可動カバー部140の貫通孔144と係合することによって、第1カバー部120に対して可動カバー部140が接続されつつ、第1カバー部120に対して可動カバー部140を周方向に回動させることができる。
【0063】
本発明の実施の形態1に係る溶接ワイヤリールカバー100においては、開口部143を略円形状にすることによって、矩形状に開口部143を設ける場合と比較して開口部143に角部がないため、開口部143の割れを抑制することにより可動カバー部140の強度を向上させることができる。
【0064】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2に係る溶接ワイヤリールカバーについて図を参照して説明する。本発明の実施の形態2に係る溶接ワイヤリールカバーは、固定カバー部110および可動カバー部140の構成が本発明の実施の形態1に係る溶接ワイヤリールカバー100と異なるため、本発明の実施の形態1に係る溶接ワイヤリールカバー100と同様である構成については説明を繰り返さない。
【0065】
図6は、本発明の実施の形態2に係る溶接ワイヤリールカバーの構成を示す断面図である。
図6に示すように、本発明の実施の形態2に係る溶接ワイヤリールカバー200は、固定カバー部210と、可動カバー部240とを含む。
【0066】
本実施の形態における固定カバー部210は、1つの部材で構成されている。固定カバー部210は、軸部11の軸方向の第1端13に固定されている。固定カバー部210は、溶接ワイヤ2の軸方向における第1端13側を覆っている。
【0067】
固定カバー部210は、第1主面部221と、係合部223とを有する。係合部223は、軸方向において可動カバー部240に向かって突出するように第1主面部221に設けられている。
【0068】
可動カバー部240は、有底円筒状を有している。可動カバー部240は、溶接ワイヤ2の周面および軸方向における第2端14側を覆っている。
【0069】
可動カバー部240は、第2主面部241と、第2周面242と、フランジ部245とを有する。第2主面部241は、軸方向に直交する方向に延在する面である。第2周面242は、第2主面部241の縁に接続され、軸方向に延在する円筒状を有する面である。
【0070】
可動カバー部240の第2周面242に、溶接ワイヤ2を引き出すための開口部243が設けられている。開口部243には、溶接ワイヤ2が挿通している。
【0071】
フランジ部245は、第2周面242の固定カバー部210側の縁に接続され、軸方向に直交する方向に延在する面である。フランジ部245は、第1主面部221に対向する部分である。フランジ部245には、周方向に沿って延在する貫通孔244が設けられている。貫通孔244の各々は、係合部223と係合している。
【0072】
可動カバー部240は、軸部11の周方向に回動可能に固定カバー部210に接続されている。可動カバー部240は、係合部223が貫通孔244内で周方向に移動可能に貫通孔244と係合することにより周方向に回動可能である。これにより、可動カバー部240が溶接ワイヤ2の引き出し位置の変位とともに開口部243が変位するように周方向に回動する。
【0073】
本発明の実施の形態2に係る溶接ワイヤリールカバー200においては、溶接ワイヤ2を引き出すための開口部243が設けられた可動カバー部240が、固定カバー部210に接続されつつ固定カバー部210に対して周方向に回動可能に配置されることによって、可動カバー部240が溶接ワイヤ2の引き出される位置の変位に合わせて固定カバー部210に対して周方向に回動することができる。これにより、ワイヤリール10から溶接ワイヤ2が引き出される位置の変位に対応しつつ、溶接ワイヤ2への接触を抑制することができる。
【0074】
本発明の実施の形態2に係る溶接ワイヤリールカバー200においては、固定カバー部210を1つの部品で構成することによって、実施の形態1と比較して部品点数を少なくしつつ溶接ワイヤ2を保護することができる。
【0075】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではない。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。上述した実施の形態の説明において、組み合わせ可能な構成を相互に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0076】
2 溶接ワイヤ、11 軸部、13 第1端、14 第2端、100,200 溶接ワイヤリールカバー、110,210 固定カバー部、111 周面、120 第1カバー部、121,221 第1主面部、122 第1周面、123,223 係合部、130 第2カバー部、131,241 第2主面部、132,242 第2周面、140,240 可動カバー部、141 第3周面、142 対向面部、143,243 開口部、144,244 貫通孔。