特開 2024-95059 車両用灯具

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024095059

(43)【公開日】2024-07-10

(54)【発明の名称】車両用灯具

(51)【国際特許分類】

   F21S 45/33 20180101AFI20240703BHJP

   F21W 102/13 20180101ALN20240703BHJP

【ＦＩ】

F21S45/33

F21W102:13

【審査請求】未請求

【請求項の数】5

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022212060

(22)【出願日】2022-12-28

(71)【出願人】

【識別番号】000001133

【氏名又は名称】株式会社小糸製作所

(74)【代理人】

【識別番号】110004060

【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所

(74)【代理人】

【識別番号】100139745

【弁理士】

【氏名又は名称】丹波 真也

(74)【代理人】

【識別番号】100077986

【弁理士】

【氏名又は名称】千葉 太一

(74)【代理人】

【識別番号】100168088

【弁理士】

【氏名又は名称】太田 悠

(74)【代理人】

【識別番号】100187182

【弁理士】

【氏名又は名称】川野 由希

(74)【代理人】

【識別番号】100207642

【弁理士】

【氏名又は名称】簾内 里子

(72)【発明者】

【氏名】戸塚 貴丈

(72)【発明者】

【氏名】薦田 良

(72)【発明者】

【氏名】鈴木 隆一

(72)【発明者】

【氏名】瀧澤 葵

(57)【要約】

【課題】薄肉軽量であっても十分な強度を備えたブラケットをランプボディに有する車両用灯具の提供。
【解決手段】開口部３を有するランプボディ２と、ランプボディ２の開口部２に取り付けられ、ランプボディ２との内側に灯室Ｓを形成する前面カバー４と、車体への取付部としてランプボディ２に設けられたブラケット５と、を有する車両用灯具１において、ブラケット５は、ランプボディ２に連結される本体部６と、車体に係合される取付部７と、を有し、本体部６は、湾曲部を少なくとも一部に含む、横断面半筒形状を有する半筒部８ａ，８ｂ，９から構成され、半筒部８ａ，８ｂ，９の基端部８ａ３，８ｂ３、９ｂが、ランプボディ２の曲面２ａに一体形成されるようにした。
【選択図】図４

【特許請求の範囲】

【請求項1】

前端開口部を有するランプボディと、前記ランプボディの前端開口部に取り付けられ、ランプボディとの内側に灯室を形成する前面カバーと、車体への取付部として前記ランプボディに設けられたブラケットと、を有する車両用灯具において、
前記ブラケットは、ランプボディに連結される本体部と、車体に係合される取付部と、を有し、
前記本体部は、湾曲部を少なくとも一部に含む、横断面半筒形状を有する半筒部から構成され、
前記半筒部の基端部が、前記ランプボディの曲面に一体形成されたことを特徴とする車両用灯具。

【請求項2】

前記ランプボディの前端開口部には、シール部が設けられ、
前記半筒部が、前記シール部に一体に形成されたことを特徴とする、請求項１に記載の車両用灯具。

【請求項3】

前記半筒部は、凸型半筒部と、凹型半筒部を交互に連続形成した複数の連続半筒部として構成され、
前記凹型半筒部の前端部が、前記シール部に一体に形成されたことを特徴とする、請求項１または２に記載の車両用灯具。

【請求項4】

前記凹型半筒部の基端部に水抜孔を有することを特徴とする、請求項３に記載の車両用灯具。

【請求項5】

前記凹型半筒部の基端部が、前記ランプボディの傾斜曲面に一体形成され、
前記水抜孔が、前記傾斜曲面の最下部に連続するよう形成されたことを特徴とする、請求項４に記載の車両用灯具。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

薄肉軽量で十分な強度を備えたブラケットをランプボディに有する車両用灯具に関する技術。

【背景技術】

【0002】

近年においては、カーボンニュートラルの観点から車両用灯具の軽量化が求められていることに伴い、部品を搭載するランプボディ各所の軽量化が求められている。一方で、近年の車両用灯具においては、安全性向上等の観点から設置されるセンサ類等、ランプボディに搭載される部品の点数が増大しており、特に車体への取付部であるブラケットの剛性強化が求められている。

【0003】

特許文献１の図４，図５には、リブを追加することで剛性を強化した車体取付部（ブラケット）を有するランプボディが開示されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開２０１０－１２３２９２号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

各車体取付部（ブラケット）へのリブの追加はブラケットの剛性を増加する反面、ランプボディの自重を増加させる点で軽量化の要請に反する。また、ブラケットの単なる薄肉化は、軽量化を促進する反面、ブラケットの強度を低下させる点で望ましくない。

【0006】

本願は、上記課題に鑑みて、薄肉軽量であっても十分な強度を備えたブラケットをランプボディに設けることで軽量化を実現した車両用灯具を提供するものである。

【課題を解決するための手段】

【0007】

前端開口部を有するランプボディと、前記ランプボディの前端開口部に取り付けられ、ランプボディとの内側に灯室を形成する前面カバーと、車体への取付部として前記ランプボディに設けられたブラケットと、を有する車両用灯具において、前記ブラケットは、ランプボディに連結される本体部と、車体に係合される取付部と、を有し、前記本体部は、湾曲部を少なくとも一部に含む、横断面半筒形状を有する半筒部から構成され、前記半筒部の基端部が、前記ランプボディの曲面に一体形成されるようにした。

【0008】

（作用）ランプボディに一体化される部位であるブラケットの本体部を半筒部から構成することで、ブラケットが、平板状に形成された本体部に比べて大きな断面二次モーメントを備え、曲げに対する高い剛性を有するようになる。

【0009】

また、前記ランプボディの前端開口部には、シール部が設けられ、前記半筒部が、前記シール部に一体に形成されることが望ましい。

【0010】

（作用）ブラケットの半筒部がランプボディのシール部に一体に形成される事で、ブラケットに生じる曲げ応力は、ブラケットのみならずシール部を介してランプボディにも作用する。

【0011】

また、前記半筒部は、凸型半筒部と、凹型半筒部を交互に連続形成した複数の連続半筒部として構成され、前記凹型半筒部の前端部が、前記シール部に一体に形成されることが望ましい。

【0012】

（作用）前記凹型半筒部、前記シール部及び前記ランプボディの曲面に囲まれた領域に有底箱状の箱部が形成されることにより、箱部を介してブラケットの剛性が更に向上する。

【0013】

また、前記凹型半筒部の基端部に水抜孔を有するように構成することが望ましい。

【0014】

（作用）箱部の画成により、凹型半筒部の剛性が更に向上した結果、結露などによる箱部内部の水を排出する水抜孔を凹型半筒部に形成しても剛性低下が生じにくくなる。

【0015】

前記凹型半筒部の基端部が、前記ランプボディの傾斜曲面に一体形成され、前記水抜孔が、前記傾斜曲面の最下部に連続するよう形成されることが望ましい。

【0016】

（作用）凹型半筒部の基端部の水抜孔をランプボディの傾斜曲面の最下部に連続形成することで、ブラケットの剛性を損なうことなく排出性の高い水滴孔が形成される。

【発明の効果】

【0017】

車両用灯具によれば、ブラケットの本体部を半筒部から構成することにより、曲げ応力に対する高い剛性が本体部に備わるため、本体部を薄肉化しても曲げに対する高い剛性を得られ、補強リブを設けなくても、曲げに対する十分な剛性をブラケットに得られるため、ランプボディを介して車両用灯具の更なる軽量化を実現出来る。

【0018】

車両用灯具によれば、ブラケットに生じる曲げ応力をランプボディのシール部でも受けることにより、シール部と半筒部の双方でブラケットの剛性を実現出来るため、薄肉化によるブラケットの軽量化がなされつつ剛性が更に向上し、ランプボディ及び車両用灯具の更なる軽量化を実現出来る。

【0019】

車両用灯具によれば、箱部によってブラケットの剛性が更に向上するため、薄肉化によるブラケットの軽量化かつ剛性向上が実現され、ランプボディ及び車両用灯具の更なる軽量化を実現出来る。

【0020】

車両用灯具によれば、箱部内側で生じる水滴の水抜孔を形成してもブラケットに十分な剛性を備えることが出来るため、ランプボディ及び車両用灯具の更なる軽量化を実現出来る。

【0021】

車両用灯具によれば、剛性を損なうことなく排出性の高い水滴孔を有するブラケットが形成され、ランプボディ及び車両用灯具の更なる軽量化を実現出来る。

【図面の簡単な説明】

【0022】

【図1】実施形態に係る車両用灯具の正面図（ブラケット５の詳細形態は省略）。

【図2】図１の車両用灯具のブラケットを右斜め前方から見た斜視図。

【図3】図１のブラケットを右斜め後方から見た斜視図。

【図4】（ａ）図１のブラケットの背面図。（ｂ）ブラケットの本体部をＩ－Ｉの位置で水平に切断した端面図

【図5】（ａ）図１のブラケットの平面図。（ｂ）ブラケットの本体部をＩＩ－ＩＩの位置で垂直に切断した端面図。（ｃ）ブラケットの本体部をＩＩＩ－ＩＩＩの位置で垂直に切断した端面図。

【図6】（ａ）ブラケットの変形例を示す斜視図。（ｂ）図６（ａ）のブラケット本体部を水平に切断した端面図。

【発明を実施するための形態】

【0023】

以下、本発明の車両用灯具の好適な実施形態を図１から図６に基づいて説明する。各図においては、車両用灯具の各方向を（前：後：左：右：上：下）として説明する。

【0024】

図１は、本発明の好適な実施形態に係る車両用灯具１の正面図を示す。図１の車両用灯具１は、ランプボディ２と、前面カバー４と、を備える。ランプボディ２は、前後方向に沿った垂直断面において、上下に伸びる背面壁及び前後に伸びる底面壁を備えた容器形状を有し、その前端に開口部を有する。ランプボディ２の前端開口部には、図３、図５（ｂ）（ｃ）の符号３に示すような、後方に凹む溝状のシール部３が全周に設けられる。前面カバー４は、透光性を有する樹脂やガラス等で形成される。前面カバー４は、封止用の弾性部材（図示せず）を介してシール部３に前方から係合され、ランプボディ２の内側に密封された灯室Ｓを画成する。

【0025】

図１に示す画成された灯室Ｓ内には、前方（紙面手前方向）に前照灯光を照射する、ハイビーム用のランプユニットＨｉおよびロービーム用のランプユニットＬｏが収容されている。ハイビーム用のランプユニットＨｉおよびロービーム用のランプユニットＬｏは、光源からの出射光を車両前方に照射して、ハイビーム配光／ロービーム配光を形成するよう構成された光学ユニットである。各ランプユニット（Ｈｉ，Ｌｏ）には、従来周知の構成、例えば反射型、プロジェクタ型などのランプユニットが用いられており、その種類は問わない。

【0026】

図１に示すようにランプボディ２の上端部には、図２から図５に示す複数のブラケット５が一体に形成されている。図１ではブラケット５の詳細な形態を省略しているが、図２は、ブラケット５を図１のランプボディ２の斜め前方側からみた斜視図で、図３は、ブラケット５を図１のランプボディ２の右斜め後方から見た斜視図である。

【0027】

図２及び３に示す通り、ブラケット５は、本体部６と、取付部７から構成される。本体部６は、ランプボディ２に連結した状態で一体に形成され、上方に延出する。取付部７は、本体部６の先端６ａから斜め後方かつ上方に屈曲した状態で本体部６に一体化される。取付部７は、取付孔７ａを介して図示しない車体へ係合固定される。

【0028】

図４（ａ）は、ブラケット５の背面図、図４（ｂ）は、図４（ａ）を本体部６の切断線Ｉ－Ｉの位置で切断した端面図である。図２，図３，図４（ａ）に示す本体部６は、図４（ｂ）の端面図に示すような横断面半筒形状の複数の半筒部から構成されている。本実施形態においては、本体部６は、前方に向けて凸となる凸型半筒部９と、その左右になめらかに連続するよう一体成形された、前方に対して凹となる一対の凹型半筒部８ａ、８ｂから構成される。本体部６は、凹型半筒部８ａ―凸型半筒部９－凹型半筒部８ｂの順に、凹凸の半筒部が交互に形成される連続半筒部として構成されることにより、図４（ｂ）に示すような波形形状に形成される。

【0029】

また、図３に示すように、凹型半筒部８ａ、８ｂ、凸型半筒部９のそれぞれの最下部である基端部８ａ３，８ｂ３、９ｂは、いずれもランプボディ２の曲面２ａに一体形成されている。

【0030】

このように、ランプボディ２に一体化される部位であるブラケット５の本体部６を１以上の半筒部から構成することで、ブラケットは、平板状に形成された従来の本体部に比べて大きな断面二次モーメントを備えるようになり、曲げに対する高い剛性を有するようになる。平板状に形成された従来の本体部は、曲げ剛性強化のためにリブを設置する必要があったり、本体部の板厚を厚くする必要があった。しかし、本実施形態の本体部は、リブを設けず、板厚が薄くても波形形状を有することで、曲げに対する十分な剛性を備えるため、カーボンニュートラルの観点から求められるブラケット及びランプボディの軽量化に寄与し得る構成となっている。尚、本体部６を形成する複数の半筒部は、凹凸の半筒部が交互に繰り返す構成であれば、本実施例のように３つに限られず、２つでも４つ以上でも構わない。

【0031】

また、図３に示すブラケット５の本体部６の基端部８ａ３，８ｂ３、９ｂは、平面よりも断面二次モーメントの大きな曲面２ａにおいてランプボディ２に一体化されているため、ランプボディ２の平面に一体化されるよりも更に高い剛性を有している。

【0032】

また、図２及び図３に示す通り、本体部６の凹型半筒部８ａの前端部８ａ１，８ａ２、凹型半筒部８ｂの前端部８ｂ１，８ｂ２は、シール部３の後端部３ａに一体に形成されている。凸型半筒部９の前端部９ａもまた、凹型半筒部の前端部８ａ２，８ｂ１から前方に突出形成されるため、シール部３の後端部３ａに一体に形成されている。

【0033】

図１に示す通り、ランプボディ２は、シール部３に前面カバー４を固定されている。図２に示す通り、ブラケット５の本体部６の凹型半筒部８ａ、８ｂ及び凸型半筒部９が、ランプボディ２のシール部３に一体に形成された場合、ブラケット５に生じる曲げ応力は、ブラケット５のみならずシール部３を介してランプボディ２にも作用する。本実施形態の車両用灯具１によれば、ブラケット５に生じる曲げ応力をランプボディ２のシール部３でも受けることにより、ランプボディ２の一部であるシール部３と、波形の半筒部を有する本体部６の双方でブラケット５の剛性を実現出来るため、薄肉化によるブラケット５の軽量化がなされつつ剛性が更に向上し、ランプボディ２及び車両用灯具１の更なる軽量化を実現出来る。

【0034】

図２に示すように、特に左側の凹型半筒部８ａ（右側では８ｂ）、シール部３及びランプボディ２の曲面２ａからなる領域は、箱部１２，１２を画成することにより、他の領域よりも強い剛性を有する。箱部１２，１２の底面（ランプボディ２の曲面２ａの一部）には、車体への取付用のボス部１１、１１が設けられている。

【0035】

また、図５（ｃ）、図２及び図３に示すように、凹型半筒部８ａ，８ｂの基端部８ａ３，８ｂ３には、箱部１２，１２の内側から外側に貫通する水抜孔１０，１０が設けられている。水抜孔１０，１０は、箱部１２，１２から灯室Ｓの外側に貫通するように形成され、箱部１２，１２の内側に発生した結露などによる水をランプボディ２の外部、即ち灯室Ｓの外側へ排出する。

【0036】

図５（ｂ）に示す凹型半筒部８ａ、８ｂは、箱部１２，１２を構成することによって剛性を強化されているため、水抜孔１０，１０を形成されても剛性の低下を生じにくくなる。従って、ブラケット５は、水抜孔１０，１０を設けられても十分な剛性を備えることが出来る。

【0037】

また、図５（ｃ）の符号Ｋの拡大部（破線で囲まれた部分の拡大部）に示すように、箱部１２，１２の底面（曲面２ａ）には、ボス部１１の再下端部１１ａの近傍から、凹型半筒部８ａ，８ｂの基端部８ａ３，８ｂ３まで緩やかに下降する傾斜曲面１２ａが設けられている。傾斜曲面１２ａは、箱部１２，１２の最下部に位置する水抜孔１０，１０に連続するように形成される。その結果、箱部１２，１２の内側に発生した結露などによる水は、下降する傾斜曲面１２ａを介して箱部１２，１２の外側への排出を促進される。

【0038】

また、図６（ａ）は、図１から図５に示すブラケット５の変形例であるブラケット５’を示す図で有り、図６（ｂ）は、ブラケット５’を水平方向に切断した端面図を示すものである。ブラケット５’は、本体部６’の形態を除き、図１から図５に示すブラケット５と共通する構成を有する。ブラケット５’の取付部７は、本体部６’の先端６ａ’から斜め後方かつ上方に屈曲した状態で本体部６’に一体化される。

【0039】

図６（ａ）及び図６（ｂ）に示す本体部６’は、前方に向けて凸となる凸型半筒部１３ａ、１３ｂと、前方に向けて凹となる凹型半筒部１４が、凹凸を繰り返した連続半筒部から構成される。本体部６’は、図６（ｂ）に示すように、クランク形状の横断面形状を有する。凸型半筒部１３ａ，１３ｂは、一対ずつの板状部１３ａ２，１３ｂ２と、湾曲部１３ａ３，１３ｂ３によって構成され、凹型半筒部１４は、板状部１４ａ及び板状部１３ａ２，１３ｂ２及び湾曲部１４ｂによって構成される。本体部６’は、一部に湾曲部を有するクランク形状を有することで大きな断面二次モーメントを有し、高い剛性を備える。また、凸型半筒部１３ａ、１３ｂの前端部１３ａ１，１３ｂ１が、シール部３に一体に形成されることで、本体部６’もまた、本体部６と同様に更に高い剛性を有する。

【符号の説明】

【0040】

１ 車両用灯具
２ ランプボディ
２ａ ランプボディの曲面
３ シール部
４ 前面カバー
５、５’ ブラケット
６、６’ 本体部
７ 取付部
８ａ，８ｂ 凹型半筒部
８ａ１，８ａ２，８ｂ１，８ｂ２ 前端部
８ａ３，８ｂ３ 基端部
９ 凸型半筒部
９ａ 前端部
９ｂ 基端部
１０ 水抜孔
１２ａ 傾斜曲面
１３ａ，１３ｂ 凸型半筒部
１３ａ１，１３ｂ１ 前端部
１４ 凹型半筒部１４
１３ａ３，１３ｂ３、１４ｂ 湾曲部

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】