(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095062
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/514 20060101AFI20240703BHJP
A61F 13/532 20060101ALI20240703BHJP
A61F 13/535 20060101ALI20240703BHJP
A61F 13/539 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A61F13/514 400
A61F13/532 200
A61F13/535 200
A61F13/539
A61F13/514 213
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212064
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000110044
【氏名又は名称】株式会社リブドゥコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】福元 淳生
(72)【発明者】
【氏名】吉田 龍永
(72)【発明者】
【氏名】鍵尾 幸司
(72)【発明者】
【氏名】久次米 逸平
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA07
3B200BA15
3B200DA15
3B200DA25
3B200DB05
3B200DD07
3B200DD09
3B200EA08
(57)【要約】
【課題】厚さ方向に貫通する貫通孔を有する吸水層を備えた吸収性物品において、バックシート外面のデザイン性を高め、かつ、蒸れを抑制できる吸収性物品を提供する。
【解決手段】吸収性物品は、透液性のトップシートと、前記トップシートの外面側に配置された不透液性のバックシートと、前記トップシートとバックシートとの間に配置された吸収体とを備え、前記吸収体が吸水層を有し、前記吸水層が厚さ方向に貫通する貫通孔を有し、前記バックシートは、印刷部を有するデザイン領域と、印刷部を有しない非デザイン領域とを有し、前記バックシートの総面積に対する前記デザイン領域の面積率が15%~98%であり、前記バックシートは、吸収性物品の厚さ方向において、前記吸水層の貫通孔と重なる領域には印刷部が形成されていないことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性のトップシートと、前記トップシートの外面側に配置された不透液性のバックシートと、前記トップシートとバックシートとの間に配置された吸収体とを備え、
前記吸収体が吸水層を有し、前記吸水層が厚さ方向に貫通する貫通孔を有し、
前記バックシートは、印刷部を有するデザイン領域と、印刷部を有しない非デザイン領域とを有し、
前記バックシートの総面積に対する前記デザイン領域の面積率が15%~98%であり、
前記バックシートは、吸収性物品の厚さ方向において、前記吸水層の貫通孔と重なる領域には印刷部が形成されていないことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記バックシートの非デザイン領域の透湿度が2500g/(m2・24h)~6500g/(m2・24h)である請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記貫通孔が、前記吸収性物品の長手方向に延びるように形成されており、
前記貫通孔が形成されている部分の吸水層の長手方向の長さを100%としたとき、前記貫通孔の長手方向の長さが35%~65%である請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記貫通孔が、前記吸水層の幅方向中央に1つ設けられており、
前記吸水層の長手方向の中央部の幅を100%としたとき、前記貫通孔の幅が6%~30%である請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸水層の貫通孔と重なる領域に設けられた非デザイン領域は、
前記貫通孔の幅を100%としたとき、この貫通孔と重なる部分の非デザイン領域の幅が100%~300%である請求項4に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体を有する吸収性物品に関し、特に吸収体の吸水層が厚さ方向に貫通する貫通孔を有する吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、失禁パッドなどの吸収性物品には、吸収性物品のデザイン性の向上や、吸収性物品の種類(サイズ、容量等)を容易に区別できるように、バックシートに文字、図形、記号またはこれらの組合せからなるデザインが印刷されている。
【0003】
ここで、吸収性物品のバックシートには、吸収した体液等を漏らさないために不透液性シートが使用されているが、吸収した体液等から発生した蒸気を外部に逃がすことができるように、透湿性を有する不透液性シートが使用されている。このような透湿性を有するシートでは、印刷面積を大きくすると透湿度が低下する傾向がある。そこで、バックシートの透湿度の低下を抑制しつつ、印刷面積を大きくする技術が検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、液不透過性で且つ透湿性のバックシートに、文字、図形又は記号等を表す印刷部が形成されており、該印刷部における印刷ドットの線数が1インチ当たり60~100で且つ印刷ドットの網点濃度が30~80%であり、バックシートの面積に対する該印刷部の見掛けの面積の割合が18%以上である吸収性物品が提案されている(特許文献1(請求項1)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
吸収性物品が有する吸収体は、体液等の吸収速度を高めるために、吸収体の吸水層に厚さ方向に貫通孔が形成されている場合がある。この場合、吸水層の貫通孔が体液の通り道となるため、貫通孔に体液が集中する。よって、貫通孔付近のバックシートを通過する蒸気量が増加する傾向がある。また、吸収性物品では、吸収体に吸収された体液等からも蒸気が発生するが、吸収体の着用者側の面から発生した蒸気は、吸水層の貫通孔を通り、バックシート側へ移行し、バックシートを透過して排気される。そのため、吸水層に形成された貫通孔が蒸気の通り道となるため、バックシートの貫通孔付近では透過する蒸気の量が増加する傾向がある。しかしながら、従来の吸収性物品では、このような貫通孔を有する吸水層を備えた吸収性物品について、蒸気の通り道までは考慮されていなかった。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、厚さ方向に貫通する貫通孔を有する吸水層を備えた吸収性物品において、バックシート外面のデザイン性を高め、かつ、蒸れを抑制できる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の吸収性物品は、透液性のトップシートと、前記トップシートの外面側に配置された不透液性のバックシートと、前記トップシートとバックシートとの間に配置された吸収体とを備え、前記吸収体が吸水層を有し、前記吸水層が厚さ方向に貫通する貫通孔を有し、前記バックシートは、印刷部を有するデザイン領域と、印刷部を有しない非デザイン領域とを有し、前記バックシートの総面積に対する前記デザイン領域の面積率が15%~98%であり、前記バックシートは、吸収性物品の厚さ方向において、前記吸水層の貫通孔と重なる領域には印刷部が形成されていないことを特徴とする。
【0009】
吸水層に貫通孔が形成された吸収性物品では、体液が吸水層の貫通孔を通る際に発生した蒸気や、吸収体の着用者側の面から発生し吸水層の貫通孔を通過した蒸気が、バックシート外へ排気される。そのため、バックシートについて、吸水層の貫通孔と重なる領域に印刷部を形成しないことで、この領域の透湿度が向上する。よって、体液が吸水層の貫通孔を通る際に発生した蒸気や吸収体の着用者側の面から発生した蒸気が、吸水層の貫通孔を通ってバックシート外へ排気されやすくなり、蒸れが一層抑制できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、厚さ方向に貫通する貫通孔を有する吸水層を備えた吸収性物品であって、バックシート外面のデザイン性が高く、かつ、蒸れを抑制できる吸収性物品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の吸収性物品の一例をトップシート側から見た平面図。
【
図2】
図1の吸収性物品のA-A線の模式的断面図。
【
図3】
図1の吸収性物品をバックシート側から見た平面図。
【
図4】バックシートに形成された印刷部の一例を示す平面図。
【
図5】バックシートに形成された印刷部の他の例を示す平面図。
【
図6】バックシートに形成された印刷部の他の例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の吸収性物品は、透液性のトップシートと、前記トップシートの外面側に配置された不透液性のバックシートと、前記トップシートとバックシートとの間に配置された吸収体とを備え、前記吸収体が吸水層を有し、前記吸水層が厚さ方向に貫通する貫通孔を有している。また、前記バックシートは、印刷部を有するデザイン領域と、印刷部を有しない非デザイン領域とを有し、前記バックシートの総面積に対する前記デザイン領域の面積率が15%~98%である。そして、前記バックシートは、吸収性物品の厚さ方向において、前記吸水層の貫通孔と重なる領域には印刷部が形成されていないことを特徴とする。本明細書において、肌面側とは、吸収性物品を装着した際に、着用者の肌と面する側を意味する。また、吸収性物品を装着した際に、外側に面する側を外面側とする。
【0013】
(トップシート)
前記トップシートは、吸収性物品の最も着用者側に配置されるものであり、着用者の体液を速やかに捕捉して吸収体へと移動させる。前記トップシートは、透液性のシート材料、例えば、親水性繊維により形成された不織布が使用できる。トップシートとして利用される不織布は、例えば、ポイントボンド不織布、エアスルー不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布であり、これらの不織布を形成する親水性繊維としては通常、セルロースやレーヨン、コットン等が用いられる。なお、トップシートとして、表面を界面活性剤により親水化処理した疎水性繊維(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド)にて形成された透液性の不織布が用いられてもよい。
【0014】
(サイドシート)
前記トップシートは、幅方向の両側縁にサイドシートが付設されていてもよい。前記サイドシートは、立体ギャザーを形成するものであり、体液等の横漏れを防ぐことができる。前記サイドシートには、吸収性物品の幅方向内方端に起立用弾性部材が設けられる。吸収性物品の使用時には、起立用弾性部材の収縮力によりサイドシートの内方端が着用者の肌に向かって立ち上がり、これにより体液等の排泄物の横漏れが防止される。
【0015】
前記サイドシートに使用される不透液性シートとしては、例えば、疎水性繊維(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド)にて形成された撥水性または不透液性の不織布(例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、SMS(スパンボンド・メルトブロー・スパンボンド)不織布)や、撥水性または不透液性のプラスチックフィルムが利用される。
【0016】
(バックシート)
前記バックシートは、吸収性物品の最も外面側に配置されるものであり、体液等が外部に漏れ出すことを防止する。バックシートに使用される不透液性シートとしては、例えば、疎水性繊維(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン)にて形成された撥水性または不透液性の不織布(例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、SMS(スパンボンド・メルトブロー・スパンボンド)不織布)や、撥水性または不透液性のプラスチックフィルムが利用され、不透液性シートに到達した体液が、吸収性物品の外側にしみ出すのを防止する。また、バックシートは、蒸れを防止して着用者の快適性を向上するという観点から、透湿性(通気性)を有するシートが使用される。
【0017】
前記バックシートは、内側シートと、前記内側シートの外面側に配置された外側シートとを有することが好ましい。前記内側シートおよび外側シートは、いずれも通気性を有する。
【0018】
前記内側シートには、不透液性シートが使用される。前記不透液性シートは、疎水性の不織布、プラスチックフィルムが挙げられる。前記疎水性の不織布としては、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル、ポリアミド等の疎水性繊維から形成された不織布が挙げられる。前記プラスチックフィルムとしては、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル、ポリアミド等の樹脂から形成されたフィルムが挙げられる。
【0019】
前記外側シートとしては、不織布、織布、編布が挙げられる。前記不織布としては、セルロース、レーヨン、コットン等の親水性繊維から形成された不織布;ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル、ポリアミド等の疎水性繊維から形成された不織布等が挙げられる。
【0020】
前記外側シートは、単層でもよいし、多層でもよい。前記バックシートの構造としては、単層の内側シート(不透液シート)と単層の外側シートからなる2層構造、単層の内側シートと2層の外側シートからなる3層構造等が挙げられる。前記バックシートとしては、単層の内側シートが透湿性を有する不透液性シートであり、単層の外側シートが不織布である2層構造が好ましい。
【0021】
(吸収体)
前記吸収体は、前記トップシートおよび前記バックシートの間に配置される。前記吸収体は、体液を吸収し、保持するための吸水層を有する。前記吸収体は、尿等の排泄物を吸収できる吸収性材料を含むものであれば特に限定されない。前記トップシートと前記吸収体との間、および/または、前記バックシートと前記吸収体との間には、台紙や不織布を配置してもよい。
【0022】
前記吸収体としては、吸水層のみから構成された吸収体や、吸水層を紙シート(例えば、ティッシュペーパー、薄葉紙)や液透過性不織布シート等のシート部材で挟んだり、包んだりした吸収体が挙げられる。前記吸収体が有する吸水層は1層でもよいし、2層以上の多層でもよいが、1層が好ましい。なお、吸水層が多層である場合、これらの全ての吸水層を貫通する貫通孔が形成される。
【0023】
前記吸水層は、吸収性材料から構成される。前記吸収性材料としては、例えば、粉砕したパルプ繊維、セルロース繊維等の親水性繊維;ポリアクリル酸系、ポリアスパラギン酸系、セルロース系、デンプン・アクリロニトリル系等の吸水性樹脂等が挙げられる。前記吸収性材料は、尿等の吸収速度を高める点から、親水性繊維を含むことが好ましい。また、吸収容量を高める点からは、吸収性材料は吸水性樹脂を含むことが好ましい。吸収性材料は、例えば、親水性繊維の集合体に吸水性樹脂を混合または散布したものを用いることが好ましい。
【0024】
また、吸水層は吸収性材料のみから形成してもよいし、他の材料を含有してもよい。他の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維や、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、ポリアミド繊維等の熱融着性繊維が挙げられる。これらの熱融着性繊維は、尿等の体液との親和性を高めるために、界面活性剤等により親水化処理がされていてもよい。
【0025】
前記吸水層は、厚さ方向に貫通する貫通孔を有している。前記吸水層が貫通孔を有することで、着用者から排出された体液は吸水層の肌面側の平面だけでなく、貫通孔内の側面からも吸収されるため、吸収速度がより向上する。前記貫通孔の平面視形状、個数は特に限定されず、吸水層の吸収容量や寸法に応じて適宜調整すればよい。前記貫通孔の平面視形状は、長方形状、角丸長方形状が好ましい。
【0026】
前記貫通孔は、前記吸収性物品の長手方向に延びるように形成されていることが好ましい。この場合、前記貫通孔が形成されている部分の吸水層の長手方向の長さを100%としたとき、前記貫通孔の長手方向の長さは35%以上が好ましく、より好ましくは40%以上であり、65%以下が好ましく、より好ましくは60%以下である。前記貫通孔の長手方向の長さが35%以上であれば体液が排尿口から吸水層の前後方向により効率よく拡散し、60%以下であれば体液の拡散速度を高めつつ、おむつの前後方向の端部からのモレを抑制できる。前記貫通孔の長手方向の長さは200mm以上が好ましく、より好ましくは220mm以上であり、400mm以下が好ましく、より好ましくは350mm以下である。
【0027】
また、前記貫通孔は、吸水層の長手方向の中央を跨ぐように形成されていることが好ましい。前記貫通孔は、前記吸水層の前後方向に対する相対位置として、貫通孔が形成される部分の吸水層の長手方向の一方端を0%、他方端を100%としたとき、前記貫通孔の前端部が15%~35%の範囲(より好ましくは20%~30%の範囲)に位置し、前記貫通孔の後端部が65%~85%の範囲(より好ましくは70%~80%の範囲)に位置することが好ましい。
【0028】
前記貫通孔は、前記吸水層の幅方向中央に1つ設けられていることが好ましい。この場合、前記吸水層の長手方向の中央部の幅を100%としたとき、前記貫通孔の幅(幅方向の長さ)は、6%以上が好ましく、より好ましくは8%以上であり、30%以下が好ましく、より好ましくは20%以下である。前記貫通孔の幅が6%以上であれば体液が排尿口から吸水層の前後方向により効率よく拡散し、30%以下であれば多量の体液に対しても、股部の吸水層で吸収することが可能であり、あふれ漏れを防ぐことができる。前記貫通孔の幅は10mm以上が好ましく、より好ましくは12mm以上であり、40mm以下が好ましく、より好ましくは38mm以下である。
【0029】
前記吸収体は、2層以上でもよいが、1層が好ましい。前記吸収体を2層以上とする場合、前記貫通孔は、各吸収体が有する全ての吸水層を貫通するように形成することが好ましい。
【0030】
(非デザイン領域、デザイン領域)
前記バックシートには、文字、図形又は記号等を表す印刷部が形成されている。なお、前記バックシートが1層構造である場合、前記バックシートの外面側に印刷部が形成される。また、前記バックシートが、単層の内側シート(透湿性を有する不透液シート)と単層の外側シート(不織布)とからなる2層構造の場合、内側シートの外面側に印刷部が形成される。
【0031】
そして、前記バックシートは、印刷部を有するデザイン領域と、印刷部を有しない非デザイン領域とを有している。前記非デザイン領域とは、長手方向の長さが少なくとも100mm、幅方向の長さが少なくとも15mmの平面視が矩形状の領域内に、印刷部が形成されていない領域である。また、非デザイン領域以外の部分がデザイン領域となる。例えば、印刷部が形成されていない部分であっても、この非印刷部の長手方向長さが100mm未満、または、幅方向の長さが15mm未満であれば、この部分はデザイン領域となる。前記非デザイン領域は、長手方向の長さが100mm以上、かつ、幅方向の長さが15mm以上であればよく、平面視形状や個数は特に限定されない。
【0032】
前記バックシートの総面積に対する前記デザイン領域の面積率は15%以上が好ましく、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上であり、98%以下が好ましく、より好ましくは90%以下、さらに好ましくは80%以下である。前記デザイン領域の面積率が15%以上であれば、吸収性物品の概観のデザイン性が向上し、また、吸収性物品の種類の識別性も向上する。また、前記デザイン領域の面積率が98%以下であれば、バックシートの透湿度が向上し、吸収性物品着用時の蒸れを抑制できる。
【0033】
前記印刷部を形成する方法は特に限定されず、従来公知の方法を採用すればよい。印刷部を形成する方法としては、フレキソ印刷、グラビア印刷等が挙げられる。前記印刷部の印刷態様としては、ベタ印刷、網点印刷のいずれでもよい。なお、網点印刷とする場合、ドットは吸収性物品の長手方向および幅方向に対してそれぞれ等間隔に配列されていることが好ましい。この場合、1インチ間に配置されるドットの数(線数)は、100超が好ましく、500以下が好ましく、より好ましくは300以下である。印刷態様がベタ印刷または線数が100超の網点印刷であれば、印刷が明確となり、吸収性物品の外観がより向上する。
【0034】
前記印刷部の形成に使用されるインクは、乾燥後に耐水性を有するものであれば特に限定されず、従来公知のインクを使用すればよい。前記インクとしては、例えば、着色材、樹脂、および、溶剤を含有するものが挙げられる。
【0035】
前記バックシートは、吸収性物品の厚さ方向において、少なくとも前記吸水層の貫通孔と重なる領域には印刷部が形成されていない。つまり、前記バックシートは、前記吸水層の貫通孔と重なる領域が非デザイン領域である。体液吸収時には、吸水層に形成された貫通孔は体液の通り道となるため、貫通孔に体液が集中し、貫通孔付近のバックシートを通過する蒸気量が増加する傾向がある。また、体液吸収後は、吸水層に形成された貫通孔が蒸気の通り道となるため、貫通孔付近ではバックシートを透過する蒸気の量が増加する傾向がある。そのため、前記吸水層の貫通孔と重なる領域に印刷部を形成しないことで、吸収性物品内部の蒸気がバックシートから抜けやすくなり、蒸れを抑制できる。なお、吸収性物品の厚さ方向において、前記吸水層の貫通孔と重なる領域に設けられた非デザイン領域を、「貫通孔用非デザイン領域」と称する場合がある。
【0036】
前記バックシートの非デザイン領域の透湿度は、2500g/(m2・24h)以上が好ましく、より好ましくは3000g/(m2・24h)以上であり、6500g/(m2・24h)以下が好ましく、より好ましくは5500g/(m2・24h)以下である。非デザイン領域の透湿度が2500g/(m2・24h)以上であればオムツ内の蒸気を効率よく透湿することができ、蒸れをより抑制でき、6500g/(m2・24h)以下であれば過度な透湿により、寝具や衣服が湿ることが抑制できる。
【0037】
前記バックシートは、吸収性物品の厚さ方向において、前記吸水層の貫通孔と重なる領域には印刷部が形成されておらず、非デザイン領域であるが、この貫通孔と重なる貫通孔用非デザイン領域の面積は、前記貫通孔の面積と同一でもよく、前記貫通孔の面積よりも大きいことが好ましい。
【0038】
前記貫通孔の幅を100%としたとき、この貫通孔と重なる部分の貫通孔用非デザイン領域の幅は100%以上が好ましく、より好ましくは120%以上、さらに好ましくは130%以上であり、300%以下が好ましく、より好ましくは280%以下、さらに好ましくは260%以下である。貫通孔用非デザイン領域の幅が上記範囲内であればオムツ内の蒸気を効率よく透湿することができ、蒸れをより抑制できる。なお、前記貫通孔の幅方向中央部と、この貫通孔と重なる貫通孔用非デザイン領域の幅方向中央部は一致していることが好ましい。
【0039】
前記貫通孔が吸収体の幅方向中央部に1つ設けられている場合、吸収性物品の幅方向において、吸水層の幅方向中央部から貫通孔の外端までの距離(D1)と、吸水層の幅方向中央部から貫通孔用非デザイン領域の外端までの距離(D2)との差(D2-D1)は、0mm超が好ましく、より好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは2mm以上、特に好ましくは5mm以上である。前記差(D2-D1)が0mm超であれば貫通孔付近のバックシートの透湿性がより向上し、蒸れを一層抑制できる。なお、前記差(D2-D1)の上限は特に限定されないが、30mm程度が好ましい。貫通孔用非デザイン領域が大きくなりすぎると、この部分のデザイン性が低下するおそれがある。
【0040】
前記貫通孔の長手方向の長さを100%としたとき、この貫通孔と重なる貫通孔用非デザイン領域の長手方向の長さは100%以上が好ましく、より好ましくは120%以上、さらに好ましくは130%以上である。貫通孔用非デザイン領域の長手方向の長さが上記範囲内であれば透湿性がより向上できる。なお、前記貫通孔用非デザイン領域の長手方向の長さは、100mm以上が好ましく、より好ましくは150mm以上であり、バックシートの長手方向全体にわたって連続していることが最も好ましい。貫通孔用非デザイン領域がバックシートの長手方向全体にわたって連続していれば、蒸気がバックシートから一層抜けやすくなり、蒸れをより抑制できる。
【0041】
(吸収性物品)
本発明の吸収性物品としては、失禁パッド、使い捨ておむつ、使い捨ておむつ本体に取り付けて使用する使い捨て補助パッドなどが挙げられる。
【0042】
前記吸収性物品が、失禁パッドまたは使い捨て補助パッドである場合、例えば、透液性のトップシートと不透液性のバックシートとの間に、吸水層を有する吸収体が配置される。失禁パッドまたは使い捨て補助パッドの形状としては、砂時計型、ひょうたん型、長方形、楕円形などが挙げられる。また、必要に応じて、前記透液性のトップシートの幅方向両側に不透液性のサイドシートが設けられていてもよい。サイドシートは、トップシートの幅方向両側の上面に接合され、接合点より幅方向内方のサイドシートは、吸収体の両側縁に沿って一対の立ち上がりフラップを形成する。
【0043】
前記吸収性物品が使い捨ておむつである場合、使い捨ておむつとしては、例えば、後背部または前腹部の左右に一対の止着部材が設けられ、当該止着部材により着用時にパンツ型に形成するテープ型使い捨ておむつ;前腹部と後背部とが接合されることによりウエスト開口部と一対の脚開口部とが形成されたパンツ型使い捨ておむつ等が挙げられる。
【0044】
前記使い捨ておむつには、両側縁部に沿って、立ち上がりフラップが設けられていることが好ましい。立ち上がりフラップを設けることにより、体液の横漏れを防ぐことができる。立ち上がりフラップは、トップシートの幅方向両側に設けられたサイドシートの内方端が立ち上げられて、形成されてもよい。前記立ち上がりフラップおよびサイドシートは、撥水性であることが好ましい。
【実施例0045】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0046】
吸収性物品の実施態様の一例について、使い捨て補助パッドを例に挙げ、
図1~
図3を参照して説明する。なお、図では、矢印xを幅方向とし、矢印yを前後方向(長手方向)と定義付ける。また、矢印x,yにより形成される面上の方向を、平面方向と定義付ける。また、矢印x,yにより形成される面に対して垂直方向が上下方向zを表す。
【0047】
図1は、吸収性物品(使い捨て補助パッド)をトップシート側から見た平面図を表す。
図2は、
図1の吸収性物品のA-A線の模式的断面図を表す。
図3は、
図1の吸収性物品をバックシート側から見た平面図を表す。吸収性物品1は、液透過性のトップシート2と、不透液性のバックシート3と、これらの間に配置された吸収体4とを有している。
【0048】
前記トップシート2の幅方向xの両側縁には、吸収性物品1の前後方向yに延在するサイドシート5が接合している。サイドシート5は、液不透過性のプラスチックフィルムや撥水性不織布等により構成される。サイドシート5には、吸収性物品1の幅方向内方端に起立用弾性部材6が設けられている。吸収性物品1の使用時には、起立用弾性部材6の収縮力によりサイドシート5の内方端が着用者の肌に向かって立ち上がり、これにより体液の横漏れが防止される。
【0049】
前記吸収体4は、単層であり、1層の吸水層から構成されている。つまり、吸収体4が吸水層である。前記吸収体(吸水層)4は、幅方向中央部に1つの貫通孔4aを有している。前記貫通孔4aは、平面視形状が角丸長方形状であり、吸収性物品の長手方向に延びるように形成されており、吸収体(吸水層)4の長手方向の中央を跨ぐように形成されている。
【0050】
前記バックシート3は、透湿性を有する不透液シートからなる内側シート3aと、不織布からなる外側シート3bから構成されている。そして、内側シート3aの外面側に複数の印刷部7が形成されている。そして、
図3に示すように、吸収性物品の厚さ方向において、前記吸収体(吸水層)4の貫通孔4aと重なる領域には、前記印刷部7が形成されておらず、非デザイン領域となっている。
【0051】
また、
図3に示すように、吸収体(吸水層)4の貫通孔4aの幅W1に対して、この貫通孔4と重なる領域に形成された非デザイン領域の幅W2が大きくなっている。さらにこの貫通孔4と重なる領域に形成された非デザイン領域は、バックシートの長手方向の全長にわたって連続的に形成されている。
【0052】
次に、印刷部を形成していないバックシート、および、このバックシートに種々のデザイン(
図4~
図6)となるように、網点印刷(線数100超、300以下)により印刷部を形成したものについて、透湿度を測定した。
図4~
図6は、印刷部7と印刷部が形成されていない部分8を有するデザインである。
【0053】
(透湿度の測定)
透湿度の測定には、
図7、8に示した測定器具10を用いた。
図7は測定器具10の平面図を示す。
図8は、
図7の測定器具10のB-B線断面図を示す。
測定器具10は、カップ11、ゴムガスケット12、固定部材13およびボルト14から構成されている。前記カップ11は、開口(直径0.062m)の周囲にフランジ部11aを有している。前記カップ11の開口の周囲には、ゴムガスケット12が配置され、このゴムガスケット12上に固定部材13が配置されている。前記ゴムガスケット12の平面視形状は、円形状であり、外径が前記カップ11の開口の直径よりも大きく、かつ、中心に前記カップ11の開口と同じ直径の開口が形成されている。前記固定部材13の平面視形状は、円形状であり、外径が前記フランジ部11aの外径と略同一であり、中心に前記カップ11の開口と同じ直径の開口が形成されている。前記フランジ部11aには、ボルト14を固定するためのねじ穴11bが6ヵ所設けられている。前記固定部材13には、前記フランジ部11aのねじ穴11bに対応する位置に、ボルト14を通すための貫通孔が設けられている。
【0054】
試験では、まず前記カップ11の内部に水15を100ml注入し、カップ11の開口を塞ぐように試験材料20(直径76.2mm)を配置し、試験材料の外周縁上にゴムガスケット12を配置した。この試験材料20およびゴムガスケット12を固定部材13で抑えて、ボルト14により固定部材13を固定した。全てのボルト14を締め付けた後、測定器具10、水15および試験材料20の総質量(α1)(g)を、電子天秤(A&D製、GX-6002A)を用いて測定した。
次に、水15および試験材料20がセットされた測定器具10を、内部温度が38℃に設定された恒温槽に設置し、恒温槽内で24時間静置した。なお、測定器具10を恒温槽に設置する際には、試験材料20が水で濡れていないことを確認した。恒温槽は、槽内の空気が外気と置換されるものを使用した。恒温槽で24時間静置した後、水15および試験材料20がセットされた測定器具10を取り出し、24時間経過後の総質量(α2)(g)を測定した。
各総質量(α1、α2)、カップ11の開口面積から、下記式により、24時間当たりの水蒸気透過率を算出した。試験は、各試験材料を3枚測定し、平均値を求めた。
透過率(g/(m2・24h))=(α1-α2)/(0.031×0.031×π)
【0055】
各バックシートの透湿度の測定結果を表1に示した。
【0056】
【0057】
表1に示したように、バックシートに印刷部を形成すると、透湿度が低下することが確認された。したがって、貫通孔を有する吸水層を備えた吸収性物品において、前記バックシートについて、前記吸水層の貫通孔と重なる領域に印刷部を形成しないことで、貫通孔付近の透湿性を高めることができ、蒸れを一層抑制できると考えられる。また、吸水層の貫通孔と重なる領域に印刷部を形成しないことで蒸れを抑制できるため、吸水層の貫通孔と重ならない領域には印刷部を形成でき、吸収性物品のデザイン性を高めることができる。
本発明の吸収性物品は、例えば、人体から排出される体液を吸収するために用いられる吸収性物品に好適に使用でき、特に失禁パッド、使い捨ておむつ等として好適に利用できる。
1:吸収性物品、2:トップシート、3:バックシート、4:吸収体(吸水層)、5:サイドシート、6:起立用弾性部材、7:印刷部、10:測定器具、11:カップ、12:ゴムガスケット、13:固定部材、14:ボルト、15:水、20:試験材料