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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095067
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】油中油型化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/891 20060101AFI20240703BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20240703BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240703BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20240703BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20240703BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20240703BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20240703BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240703BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A61K8/891
A61K8/06
A61K8/73
A61K8/31
A61K8/19
A61Q1/00
A61Q1/04
A61K8/81
A61K8/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212073
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】冨田 希子
(72)【発明者】
【氏名】山本 瑞希
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB172
4C083AB231
4C083AB232
4C083AC011
4C083AC021
4C083AC022
4C083AC241
4C083AC251
4C083AC661
4C083AD021
4C083AD022
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD241
4C083AD242
4C083BB11
4C083BB25
4C083CC02
4C083CC13
4C083DD31
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】色もち(化粧もち)が良好で、なおかつ、耐移り性(二次付着レス効果)を更に向上させた油中油型化粧料を提供する。
【解決手段】(A)非揮発性炭化水素油:5~80質量%;(B)メチルフェニルポリシロキサン:1~70質量%;(C)デキストリン脂肪酸エステル:0.1~10質量%、及び、(D)アミノ酸または金属石鹸で表面処理した色材を含有し、(A)非揮発性炭化水素油と(B)メチルフェニルポリシロキサンは、それらの配合比(質量比)が、(A)/((A)+(B))=0.4~0.8であることを特徴とする油中油型化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)非揮発性炭化水素油:5~80質量%;
(B)メチルフェニルポリシロキサン:1~70質量%;
(C)デキストリン脂肪酸エステル:0.1~10質量%;及び、
(D)アミノ酸または金属石鹸で表面処理した色材、
を含有し、
(A)非揮発性炭化水素油と(B)メチルフェニルポリシロキサンは、それらの配合比(質量比)が、(A)/{(A)+(B)}=0.4~0.8であることを特徴とする、油中油型化粧料。
【請求項2】
前記(D)色材が、N-アシルアミノ酸を含む処理剤で表面処理した色材である、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
N-アシルアミノ酸が、N-ステアロイルグルタミン酸である、請求項2に記載の化粧料。
【請求項4】
前記(D)色材が、金属石鹸を含む処理剤で表面処理した色材である、請求項1に記載の化粧料。
【請求項5】
金属石鹸が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、リシノール酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、ミリスチン酸アルミニウム、ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム、ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウム、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、パルミトイルサルコシンナトリウム、及びパルミトイルサルコシンマグネシウムからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項4に記載の化粧料。
【請求項6】
前記(A)非揮発性炭化水素油が、水添ポリイソブテン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、流動パラフィン、水添ポリデセンから選択される、請求項1に記載の化粧料。
【請求項7】
前記(A)非揮発性炭化水素油が、平均分子量が1000~2650の水添ポリイソブテンである、請求項6に記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油中油型化粧料に関する。より詳細には、化粧もち(色もち)が良好で、耐移り性(二次付着レス効果)に極めて優れる唇用液状化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
口紅等のメーキャップ化粧料は、食器や衣類と接触した際に、接触物に色移り(二次付着)する場合がある。二次付着は、接触物に化粧の色が付いてしまうのみならず、化粧崩れの原因にもなる。特に、口紅は、唇が食器に触れる機会が多いため二次付着しやすい。そこで、二次付着による色移りが抑制されたいわゆる二次付着レス効果を有する化粧料が開発されている。
【0003】
特許文献1には、(a)非揮発性炭化水素油分、(b)メチルフェニルポリシロキサン、及び(c)デキストリン脂肪酸エステルを各々所定量配合し、(a)非揮発性炭化水素油分と(b)メチルフェニルポリシロキサンの配合比(質量比)を特定範囲内にした液状の油中油型化粧料が記載されている。
【0004】
特許文献1の化粧料では、(a)非揮発性炭化水素系油分と(b)メチルフェニルポリシロキサンとが互いに相溶しにくいところ、(c)デキストリン脂肪酸エステルを更に配合することにより、安定な油中油型化粧料となっている。一方、当該化粧料を唇に塗布したり、塗布した唇をこすり合わせると、メチルフェニルポリシロキサン(「しみ出し油分」または「コート油分」という)が表層にしみ出して分離し、それが非揮発性炭化水素系油分(「密着油分」という)を覆うため、耐移り性を有し、かつ良好なつやを与える。また、上記の(a)と(b)の両方に相溶するイソドデカンのような揮発性炭化水素を配合することで、塗布後の耐移り性、安定性を維持したまま、塗布時ののびを良くすることができる。
【0005】
しかしながら、密着油分とコート油分とが接触しているため、色材の一部が密着油分からコート油分に移行することは避けられない。従って、密着油分中の色材が減少することにより色が薄くなることがあり、コート油分に移行した色材が接触物に移ること(二次付着)も完全に防止することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4766720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した技術の現状に鑑みて、色もち(化粧もち)が良好で、なおかつ、耐移り性(二次付着レス効果)を更に向上させた油中油型化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、化粧料に配合する色材表面を特定の表面処理剤で処理することにより、色材が密着油分からコート油分に移行することを抑制し、色もち及び耐移り性(二次付着レス効果)を更に高めることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、
(A)非揮発性炭化水素油:5~80質量%;
(B)メチルフェニルポリシロキサン:1~70質量%;
(C)デキストリン脂肪酸エステル:0.1~10質量%;及び、
(D)アミノ酸または金属石鹸で表面処理した色材、を含有し、
(A)非揮発性炭化水素油と(B)メチルフェニルポリシロキサンは、それらの配合比(質量比)が、(A)/((A)+(B))=0.4~0.8であることを特徴とする、油中油型化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の油中油型化粧料は、特定の表面処理を施した色材を用いることにより、色材のコート油分への移行が抑制され、化粧持ち及び二次付着レス効果(耐移り性)に極めて優れた化粧料となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の油中油型化粧料(以下、単に「化粧料」ともいう)は、(A)非揮発性炭化水素油;(B)メチルフェニルポリシロキサン;(C)デキストリン脂肪酸エステル、及び、(D)アミノ酸または金属石鹸で表面処理した色材を必須成分として含有する。
【0012】
(A)非揮発性炭化水素油
本発明で用いられる非揮発性炭化水素油(「成分A」または「密着油分」ともいう)は、化粧料に配合可能な非揮発性の液状油から選択できる。非揮発性炭化水素油(A成分)としては、25℃で(B)メチルフェニルポリシロキサンと混合した時に分離するものであるのが好ましい。
【0013】
本明細書における「分離する」及び「相溶する」は、次のように定義される。
「分離する」:「A成分」と「B成分」を、(A):(B)=1:3(質量比)で90℃に加温し、攪拌混合し、次いで静置し、混合物の温度がが25℃になったときに、境界が均一に2層に分離している状態を「分離する」とし、半透明な状態または境界がなく透明な状態を「分離しない」とした。
「相溶する」:「A成分」と「B成分」を、(A):(B)=1:3(質量比)で90℃に加温し、攪拌混合し、境界を目視で確認できず透明な状態、すなわち「分離していない状態」となる場合を「相溶する」とした。
【0014】
非揮発性炭化水素油(A成分)の具体例としては、水添ポリイソブテン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、流動パラフィン、スクワラン、水添ポリデセン等が挙げられる。これらのうち、水添ポリイソブテンが好ましく、中でも、数平均分子量が1000~2650の水添ポリイソブテン(粘度が5,000~30,000mPa・s程度のもの)が特に好ましい。なお、本発明における粘度は、25℃において、ローター名称H6、10rpmにてB型粘度計TVB-10H(東機産業株式会社製)で測定した値とする。
【0015】
本発明の化粧料における非揮発性炭化水素油(A成分)の配合量は、5~80質量%であり、好ましくは10~70質量%、より好ましくは20~60質量%である。非揮発性炭化水素油の配合量が少なすぎると、しっとりさに欠ける場合があり、配合量が多すぎると、のびが重くなり、べたつきが増し、耐移り性及び発色が悪くなる傾向がある。
【0016】
(B)メチルフェニルポリシロキサン
メチルフェニルポリシロキサン(「B成分」または「コート油分」ともいう)は、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)のメチル基の一部がフェニル基に置換された構造を有し、化粧料に配合可能なものから選択される。前記の(A)非揮発性炭化水素油と相溶しにくいもの、例えば、25℃で非揮発性炭化水素油(A成分)と混合したときに分離するフェニル変性シリコーンが好ましい。
【0017】
メチルフェニルポリシロキサン(B成分)の具体例としては、ジフェニルジメチコン、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、フェニルトリメチコン等が挙げられる。これらの中で、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコンが好ましい。これらの中で、ジフェニルジメチコン、特に、粘度が200~1000cSt、好ましくは300~500cStのものが好ましく用いられる。
【0018】
本発明の化粧料におけるメチルフェニルポリシロキサン(B成分)の配合量は、1~70質量%であり、好ましくは5~60質量%であり、より好ましくは10~50質量%である。メチルフェニルポリシロキサン(B成分)の配合量が少なすぎると、耐移り性が悪くなる傾向となり、多すぎると、つやは増すが、経時で剥がれやすくなる。
【0019】
本発明の化粧料においては、(A)非揮発性炭化水素油と(B)メチルフェニルポリシロキサンは、それらの配合量比(質量比)を、(A)/{(A)+(B)}=0.4~0.8とすることが必要である。この配合量比、(A){(A)+(B)}が0.8を超えると、化粧料塗布時ののびが重くなり、べたつきが増し、耐移り性及び発色が悪くなる傾向がある。逆に、配合量比が0.4未満になると、ツヤは増すが、しっとりさに欠ける傾向となる。
【0020】
(C)デキストリン脂肪酸エステル
デキストリン脂肪酸エステル(「C成分」ともいう)は、デキストリンと高級脂肪酸のエステルで、高級脂肪酸が炭素数C12~C22の脂肪酸から選択されるものである。高級脂肪酸として、炭素数C12~C22の脂肪酸を含んでいれば、炭素数C6~10の脂肪酸を一部に含んでいてもよい。
【0021】
デキストリン脂肪酸エステル(C成分)の具体例としては、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリンが挙げられる。市販品として、商品名レオパール(Rheopearl)KL、レオパールKL2、レオパールTT、レオパールTT2、レオパールMKL2等(いずれも千葉製粉社製)などを用いることができる。
【0022】
本発明の化粧料におけるデキストリン脂肪酸エステル(C成分)の配合量は、0.1~10質量%であり、好ましくは0.5~8質量%であり、より好ましくは1~5質量%である。デキストリン脂肪酸エステルの配合量が0.1質量%未満であると、安定性が悪くなり、10質量%を超えて配合すると、べたつきを感じるようになる。
【0023】
(D)色材
本発明の化粧料に配合される「色材」(「D成分」ともいう)は、アミノ酸または金属石鹸を含む処理剤で表面処理された色材を含む。
【0024】
アミノ酸を含む処理剤は、少なくとも1種のアミノ酸またはその誘導体を含む表面処理剤である。
「アミノ酸」は、特に限定されないが、アスパラギン酸、グルタミン酸、及びリシンから選択するのが好ましく、中でもグルタミン酸が特に好ましい。
「アミノ酸の誘導体」は、好ましくは、N-アシルアミノ酸又はその塩である。「N-アシルアミノ酸又はその塩」とは、アミノ酸のアミノ基にアシル基、好ましくは、炭素数12~20の飽和脂肪酸が縮合した化合物又はその塩である。「アミノ酸」としては、グルタミン酸、アスパラギン酸、プロリン、サルコシン等が好ましい。「アシル基」としては、ステアロイル基、ラウロイル基、パルミトイル基、ココイル基等を挙げることができる。「塩」は、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などから選択できるが、ナトリウム塩が好ましい。N-アシルアミノ酸塩の具体例として、N-ステアロイルグルタミン酸2ナトリウム、N-ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム、パルミトイルサルコシンNa、パルミトイルグルタミン酸Mg等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
アミノ酸を含む処理剤は、「アミノ酸またはその誘導体」に加えて、他の処理剤を少なくとも1種含むものであってもよい。「他の処理剤」としては、「金属水酸化物」、「脂質」及び「エステル」から選択するのが好ましい。「金属水酸化物」としては、水酸化アルミニウム等が例示される、「脂質」としては、「パルミチン酸」等の高級脂肪酸、「エステル」としては、炭素数8~12の一価又は二価の脂肪酸と炭素数12~20の飽和脂肪族アルコールとのエステルが例示される。前記脂肪酸及び脂肪族アルコールのアルキル鎖は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。「エステル」として、特に、セバシン酸イソステアリルが好ましく用いられる。
【0026】
「アミノ酸を含む処理剤」として、例えば、N-ステアロイルグルタミン酸2ナトリウムと水酸化アルミニウムとを含む表面処理剤、N-ステアロイルグルタミン酸2ナトリウム、セバシン酸イソステアリル、及び水酸化アルミニウムを含む表面処理剤、N-ラウロイルグルタミン酸ナトリウムとリシンとを含む表面処理剤、パルミトイルプロリン、パルミトイルサルコシンNa、パルミトイルグルタミン酸Mg,及びパルミチン酸を含む表面処理剤等が挙げられる。中でも、N-ステアロイルグルタミン酸2NaまたはN-ラウロイルグルタミン酸リシンNaを含む処理剤で表面処理された色材を用いるのが好ましい。
【0027】
金属石鹸を含む処理剤は、少なくとも1種の金属石鹸を含む表面処理剤である。
「金属石鹸」は、飽和もしくは不飽和高級脂肪酸の金属(但し、アルカリ金属以外)の塩である。特に限定されるものではないが、金属石鹸を構成する高級脂肪酸としては、炭素数8~24、特に12~18の飽和及び/または不飽和高級脂肪酸、例えば、ステアリン酸、イソステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸等が挙げられる。金属石鹸を構成する金属としては、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、又は亜鉛等の塩が好ましい。
【0028】
本発明における色材(D成分)の表面処理剤として好ましく用いられる金属石鹸の具体例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、リシノール酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、ミリスチン酸アルミニウム、ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム、ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウム、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、パルミトイルサルコシンナトリウム、及びパルミトイルサルコシンマグネシウム等が挙げられる。
【0029】
金属石鹸による表面処理は、予め生成した金属石鹸で表面処理する方法によって施してもよい。例えば、金属石鹸をイソパラフィン、イソプロピルアルコールなどの揮発性溶媒に溶解し、基体粉末と混合した後、揮発性溶媒を揮散させることによって表面処理することができる。また単に基体粉末と金属石鹸とを混合するだけでも表面処理することが可能である。あるいは、金属石鹸を構成する高級脂肪酸(例えば、ステアリン酸)と、金属(例えば、アルミニウム)の水酸化物とで複合処理する方法で表面処理してもよい。表面処理方法としては、溶媒を使用する湿式法、気相法、メカノケミカル法等を用いることができ、特に限定されない。
【0030】
「色材」(D成分)の基材となるのは、粉末状の色材であれば特に限定されない。例えば、無機白色顔料(二酸化チタン、酸化亜鉛)、無機赤色顔料(酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄)、無機褐色顔料(γ-酸化鉄)、無機黄色顔料(黄酸化鉄、黄土)、無機黒色顔料(黒酸化鉄、カーボン、低次酸化チタン)、無機紫色顔料(マンゴバイオレット、コバルトバイオレット)、無機緑色顔料(酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト)、無機青色顔料(群青、紺青)、パール顔料(酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、着色酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔)、金属粉末顔料(アルミニウムパウダー、カッパーパウダー)、有機顔料(赤色202号、赤色205号、赤色220号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色40号、青色404号)、ジルコニウム、バリウム、アルミニウムのレーキ顔料(赤色3号、赤色104号、赤色227号、赤色401号、橙色205号、黄色4号、黄色20号、緑色3号、青色1号)、天然色素(クロロフィル、カルチノイド系(β-カロチン)、カルサミン、コチニール、カルコン、クルクミン、ベタニン、フラボノール、フラボン、アントシアニジン、アントラキノン、ナフトキノン)、機能性顔料(窒化ホウ素、フォトクロミック顔料、合成フッ素金雲母、鉄含有合成フッ素金雲母、微粒子複合粉体(ハイブリッドファインパウダー))等が挙げられる。
【0031】
本発明の化粧料の色材(D成分)は、アミノ酸を含む処理剤で表面処理された色材の1種または2種以上からなるものであってもよく、金属石鹸を含む処理剤で表面処理された色材の1種または2種以上からなるものでもよい。あるいは、アミノ酸を含む処理剤で表面処理された色材と金属石鹸を含む処理剤で表面処理された色材を組み合わせて配合してもよい。また、アミノ酸または金属石鹸を含まない処理剤で表面処理された色材及び未処理の色材を更に含んでいてもよい。
【0032】
本発明の化粧料における色材(D成分)の配合量は、化粧料全量に対して0.1~10質量%であり、好ましくは1~8質量%、より好ましくは2~7質量%である。なお、アミノ酸または金属石鹸を含む処理剤で表面処理された色材が、化粧料に配合された色材(A成分)の全量に対して50質量%(質量比)以上を占めるのが好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
【0033】
本発明の化粧料には、上記のA~D成分に加えて、油中油型化粧料、例えば口紅等のメーキャップ化粧料に通常用いられる他の任意成分を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。他の任意成分としては、限定されないが、油剤(A~C成分以外)、粉体(D成分以外)、高分子化合物、保湿剤、香料、酸化防止剤、防腐剤、美容成分等が挙げられる。
【0034】
上記のA~C成分以外の油剤として、(E)揮発性炭化水素油を配合するのが好ましい。揮発性炭化水素油(「E成分」ともいう)は、(A)非揮発性炭化水素油および(B)メチルフェニルポリシロキサンのいずれにも相溶するものが好ましい。例えば、8~16の炭素原子を有する揮発性炭化水素油、より詳細には、分枝状のC8~C16アルカン類、分枝状のC8~C16エステル類及びそれらの混合物から選択される。特に、C8~C16イソパラフィン(例えば、イソドデカン、イソヘキサデカン)、ネオペンタン酸イソヘキシル及びそれらの混合物が好ましく、さらに好ましくは、イソドデカンである。
【0035】
(E)揮発性炭化水素油を配合することにより、塗布時ののびに優れたものとなる。揮発性炭化水素油(E成分)を配合する場合の好ましい配合量は、0.1~50質量%であり、より好ましくは1~30質量%である。
【0036】
また、(F)半固形油またはマイクロクリスタリンワックス(「F成分」ともいう)を配合すると、化粧料を塗布した後のべたつきが少なくなるので好ましい。
半固形油とは、具体的には、25℃における硬度が0.1~10Nである半固形状の油分を指す。本明細書における硬度は、レオテック社製レオメーターで、感圧軸5φ、針入速度2cm/min、針入度3mmで測定した値である。本発明では、融点が30~52℃の半固形油を用いるのが好ましい。
【0037】
半固形油は、通常化粧品に使用されるものであればよく、例えば、ワセリン、ラノリン、シア脂,部分水添ヤシ油などの植物油脂、部分水添ホホバ油、テトラ(ベヘン酸/安息香酸エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、マカデミアナッツ油ポリグリセリル6エステルズベヘネート等が用いられる。
半固形油を配合する場合の配合量は、好ましくは3~30質量%、より好ましくは6~20質量%である。
マイクロクリスタリンワックスを配合する場合の配合量は、好ましくは0.5~6質量%、より好ましくは、1~4質量%である。
【0038】
本発明の化粧料には、ワックスを配合することはできるが、多量に配合するとツヤを損なうため、配合する場合の配合量は5質量%以下であることが望ましい。同様に、皮膜剤の多量配合はごわつき感を生じさせるため、皮膜剤は配合しないか、配合する場合でも5質量%以下とすることが望ましい。
【0039】
本発明の化粧料に配合される保湿剤としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコール等の多価アルコール系保湿剤が挙げられる。
【0040】
色材(D成分)以外の粉体として、(G)無水ケイ酸(シリカ)を挙げることができる。無水ケイ酸(G成分)を配合することにより、塗布時のツヤが更に良好になる。
【0041】
無水ケイ酸(G成分)としては、平均一次粒子径が1~50nmの超微粒子無水ケイ酸が好ましく、例えばアエロジル200、300、R972、R974、RY200等(日本アエロジル社製)が挙げられる。本発明に用いる無水ケイ酸は、親水性のものでもシリル化などの疎水化処理したものでもよい。
無水ケイ酸(G成分)を配合する場合の好ましい配合量は、10質量%以下であり、より好ましくは0.1~5質量%である。
【0042】
上記以外の粉体として、球状粉末及び板状粉末等が含まれる。
球状粉末としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、オルガノポリシロキサンエラストマー、ポリスチレン、ポリアミド樹脂(ナイロン)、ポリエチレン、スチレンとアクリル酸の共重合体、ベンゾグアナミン樹脂、ポリ四フッ化エチレン、シリコーン樹脂等の球状樹脂粉末が挙げられる。
【0043】
板状粉末としては、例えば、マイカ、合成マイカ、タルク、セリサイト、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウムマグネシウム、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、窒化ホウ素等の無機粉体、N-アシルリジン等の有機粉体、微粒子酸化チタン被覆マイカチタン、微粒子酸化亜鉛被覆マイカチタン、硫酸バリウム被覆マイカチタン等の複合粉体等が挙げられる。
本発明の化粧料における粉体(D成分及びG成分以外)の配合量は、化粧料全量に対して30質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以下である。
【0044】
本発明の化粧料は、油中油型化粧料に汎用されている方法を用いて製造される。例えば、(A)非揮発性炭化水素(密着油分)を含む相の成分を攪拌分散した後、(B)メチルフェニルポリシロキサン(コート油分)を含む相を加えて攪拌分散することにより製造できる。
【0045】
本発明の油中油型化粧料は、口紅、リップグロス、下地用のリップベース、口紅オーバーコート、リップクリームなどに応用することができる。特に、口紅等のメーキャップ化粧料とした場合には、メーキャップとしての発色効果と色もち、耐移り性、リップグロスのようなつやを併せ持つことができるので好適である。
【実施例0046】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。配合量については特記しない限り質量%を示す。
【0047】
下記の表1に掲げた処方で、油中油型化粧料を常法に従って調製した。表1の各例の化粧料の特性を、以下の方法で測定、評価した。
【0048】
<試験方法及び評価基準>
10名の専門パネルによる実使用性試験を行った。使用性項目は、二次付着レス効果、色もち効果であり、それぞれの評価項目について、下記の評価点基準に基づいて5段階官能評価(スコア)した。そのスコア平均値により、下記評価基準で判定した。
色もち効果の評価は、塗布時または塗布直後の評価と、塗布後数時間経過したときにおける評価とを比較した結果である。
【0049】
化粧料の塗布方法は、本発明の化粧料を唇に塗布した後、唇の上下をこすり合わせ5秒ほど圧力を加える方法にて行った。耐移り性の評価はカップへの移りのなさを評価し、その他の項目は、専門パネルによる目視により判定した。
【0050】
(スコア)
5点:非常に優れている。
4点:優れている。
3点:普通。
2点:劣る。
1点:非常に劣る。
【0051】
(評価基準)
A:評価値(平均値)4.0以上5.0点以下
B:評価値(平均値)3.0以上4.0点未満
C:評価値(平均値)2.0以上3.0点未満
D:評価値(平均値)1.0以上2.0点未満
【0052】
さらに、一部の例については、二次付着レス効果及び色もち効果を定量的に表すために以下の測定を実施した。
直径2.5cmの円盤状の人工皮革に各化粧料5mgを塗布し、塗布面を内側にして人工皮革を折り曲げ、指で挟んで10回揉み、5分間放置した。その後、前記塗布領域に濾紙を載せ、その上に重さ100g(直径4cm)の錘を載せて10秒間放置した。上記の処理をする前の濾紙と処理後の濾紙の色差(ΔE)を測色計で測定した。得られたΔEの値を表1に併せて示す。
【0053】
表1の結果から明らかなように、アミノ酸または金属石鹸を含む処理剤で表面処理した色材を用いた実施例1~4は、二次付着レス効果及び色もち効果において、シリコーンで表面処理した色材を配合した比較例1より優れていた。また、実施例1及び2と比較例1とでは、色差の値が2倍以上相違することから、本発明によって得られる効果は当業者が予測できる範囲を超えた顕著な効果であると言える。
【0054】
【表1】