(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095069
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】振動板の製造方法、振動板、および電気音響変換器
(51)【国際特許分類】
H04R 31/00 20060101AFI20240703BHJP
D21H 17/41 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
H04R31/00 A
D21H17/41
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212078
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】平岡 英敏
【テーマコード(参考)】
4L055
5D016
【Fターム(参考)】
4L055AA08
4L055AA11
4L055AF04
4L055AF15
4L055AF27
4L055AF33
4L055AF35
4L055AG56
4L055AH10
4L055AH16
4L055AH23
4L055BB03
4L055BD10
4L055EA30
4L055FA11
4L055FA19
4L055FA30
4L055GA01
5D016CA05
5D016CA06
5D016EA03
5D016EC02
5D016JA01
(57)【要約】
【課題】含浸工程無しに高撥水の振動板を製造する。
【解決手段】パルプ110を叩解した後のパルプスラリーがアニオンを呈する場合は、カチオンフッ素ポリマー111を添加してフッ素ポリマーをパルプ110に内添定着させ、パルプスラリーを抄紙し、成型する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプを叩解した後のパルプスラリーがアニオンを呈する場合は、カチオンフッ素ポリマーを添加してフッ素ポリマーを前記パルプに内添定着させ、
前記パルプスラリーを抄紙し、成型する
振動板の製造方法。
【請求項2】
パルプを叩解した後のパルプスラリーがカチオンを呈する場合は、アニオンフッ素ポリマーを添加してフッ素ポリマーを前記パルプに内添定着させ、
前記パルプスラリーを抄紙し、成型する
振動板の製造方法。
【請求項3】
パルプを叩解した後のパルプスラリーにカチオン定着剤を添加した後、アニオンフッ素ポリマーを添加してフッ素ポリマーを前記パルプに内添定着させる
請求項2に記載の振動板の製造方法。
【請求項4】
アニオンフッ素ポリマー添加後、またはカチオンフッ素ポリマーの添加前に、前記パルプスラリーに紙力増強剤を添加する
請求項1または2に記載の振動板の製造方法。
【請求項5】
長繊維パルプ、硬質樹脂がコーティングされたリサイクル綿繊維及びリサイクル化学繊維、ガラス繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、液晶ポリマー繊維の少なくとも一つを加える
請求項1または2に記載の振動板の製造方法。
【請求項6】
前記パルプスラリーを抄紙し、成型した後の前記振動板に撥水剤の含浸を行わない
請求項1または2に記載の振動板の製造方法。
【請求項7】
前記パルプスラリーにサイズ剤を添加する
請求項1または2に記載の振動板の製造方法。
【請求項8】
前記カチオンフッ素ポリマーは、炭素数1以上、6以下のパーフルオロアルキル末端を備える
請求項1に記載の振動板の製造方法。
【請求項9】
前記アニオンフッ素ポリマーは、炭素数1以上、6以下のパーフルオロアルキル末端を備える
請求項2に記載の振動板の製造方法。
【請求項10】
前記カチオンフッ素ポリマーは、窒素含有カチオン性基を持つアクリル樹脂である
請求項8に記載の振動板の製造方法。
【請求項11】
前記アニオンフッ素ポリマーは、アニオン性基を持つアクリル樹脂である
請求項9に記載の振動板の製造方法。
【請求項12】
炭素数1以上、6以下のパーフルオロアルキル末端を有するアクリル樹脂が内添定着されたパルプを備える
振動板。
【請求項13】
炭素数1以上、6以下のパーフルオロアルキル末端を有するアクリル樹脂が内添定着されたパルプを抄紙して得られる振動板を備える
電気音響変換機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、各種音響機器に使用される振動板の製造方法、振動板、および振動板を備えた電気音響変換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1、2に記載されるように、フッ素樹脂を抄紙前のパルプスラリーに添加し、硫酸バンドでフッ素樹脂をパルプに定着させることで、抄紙後の振動板に撥水性を持たせる技術が存在している。また、抄紙後の振動板にフッ素樹脂を含んだ溶剤を含浸させ、振動板に撥水性を持たせる技術も存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3036198号公報
【特許文献2】特許第3084925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1のフッ素樹脂は、イオン性基を持たず、水中でパルプに引き寄せられないため、脱水後パルプに定着される量はごく微量で、抄紙後の撥水効果がほとんど得られないことが判明している。
【0005】
また、抄紙後の振動板にフッ素樹脂を含浸させる方法では、含浸後の振動板自体の重量が増加して音質に影響を与えることになる。また、含浸時に用いられる溶剤が環境に与える影響も懸念される。
【0006】
そこで本開示は、この問題を解決したもので、抄紙後の振動板にフッ素樹脂を含浸させることなく効果的に撥水効果を発揮させることのできる振動板の製造方法、振動板、および振動板を備えた電気音響変換器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一つである振動板の製造方法は、パルプを叩解した後のパルプスラリーがアニオンを呈する場合は、カチオンフッ素ポリマーを添加してフッ素ポリマーを前記パルプに内添定着させ、前記パルプスラリーを抄紙し、成型する。
【0008】
また、本開示の一つである振動板の製造方法は、パルプを叩解した後のパルプスラリーがカチオンを呈する場合は、アニオンフッ素ポリマーを添加してフッ素ポリマーを前記パルプに内添定着させ、前記パルプスラリーを抄紙し、成型する。
【0009】
本開示の他の一つである振動板は、炭素数1以上、6以下のパーフルオロアルキル末端を有するアクリル樹脂が内添定着されたパルプを備える。
【0010】
本開示の他の一つである電気音響変換機器は、炭素数1以上、6以下のパーフルオロアルキル末端を有するアクリル樹脂が内添定着されたパルプを抄紙して得られる振動板を備える。
【発明の効果】
【0011】
スラリー中のパルプ表面のイオン極性に応じたイオン性基を持つフッ素ポリマーをパルプに定着させることにより、抄紙後の振動板にフッ素樹脂を含浸させることなくフッ素に基づく所望の撥水性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】抄紙工法による振動板の製造工程を示すプロセスチャートである。
【
図2】スラリー中において表面がアニオン優位になっているパルプを模式的に示す図である。
【
図3】スラリー中において表面がカチオン優位になっているパルプを模式的に示す図である。
【
図4】カチオンフッ素ポリマーを添加してフッ素ポリマーが内添定着したパルプからなる振動板を示す断面図である。
【
図5】アニオンフッ素ポリマーを添加してフッ素ポリマーが内添定着したパルプからなる振動板を示す断面図である。
【
図6】電気音響変換器の一つであるスピーカー装置120の断面図である。
【
図7】振動板を備えたスピーカー装置が取り付けられた移動体の一つである自動車の断面図である。
【
図8】振動板を備えたスピーカー装置の別利用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示に係る振動板の製造方法、振動板、および電気音響変換器の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本開示を説明するために一例を挙示するものであり、本開示を限定する主旨ではない。例えば、以下の実施の形態において示される形状、構造、材料、構成要素、相対的位置関係、接続状態、数値、数式、方法における各段階の内容、各段階の順序などは、一例であり、以下に記載されていない内容を含む場合がある。また、平行、直交などの幾何学的な表現を用いる場合があるが、これらの表現は、数学的な厳密さを示すものではなく、実質的に許容される誤差、ずれなどが含まれる。また、同時、同一などの表現も、実質的に許容される範囲を含んでいる。
【0014】
また、図面は、本開示を説明するために適宜強調、省略、または比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状、位置関係、および比率とは異なる。また、図中に示す場合があるX軸、Y軸、Z軸は、図の説明のために任意に設定した直交座標を示している。つまりZ軸は、鉛直方向に沿う軸とは限らず、X軸、Y軸は、水平面内に存在するとは限らない。
【0015】
また、以下では複数の発明を一つの実施の形態として包括的に説明する場合がある。また、以下に記載する内容の一部は、本開示に関する任意の構成要素として説明している。
【0016】
図1は、抄紙工法による振動板100の製造工程を示すプロセスチャートである。
図2は、スラリー中において表面がアニオン優位になっているパルプ110を模式的に示す図である。
図3は、スラリー中において表面がカチオン優位になっているパルプ110を模式的に示す図である。
【0017】
振動板100の材料として木材由来のパルプ110であるクラフトパルプを水の入ったビータ内に投入する(材料投入工程:S101)。次に、材料投入工程(S101)において投入されたパルプ110を所望の状態になるまで細かく叩解する(叩解工程:S102)。本実施の形態の場合、機械的叩解のみ行っている。機械的叩解のみを採用しているため、環境に負荷がかかるような薬剤などの使用を抑制することができる。
【0018】
なお、叩解前後の少なくとも一方において、長繊維パルプ、硬質樹脂がコーティングされたリサイクル綿繊維及びリサイクル化学繊維、ガラス繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、液晶ポリマー繊維の少なくとも一つを木材由来のパルプ110に加えても構わない。長繊維パルプ、化学繊維などを加えることにより振動板100の硬質化を実現することができる。長繊維パルプの具体例としては、アバカパルプ、雁皮、ミツマタ、楮(こうぞ)、バガス、竹など非木材パルプを例示することができる。リサイクル化学繊維とは、例えば空調機の室外機に備えられる防音材を1~10mm程度の長さで粉砕し、異物を取り除いた繊維であり、一部にはフェノール樹脂など硬質な樹脂でコーティングされた綿繊維及び化学繊維が存在する。
【0019】
次に、叩解工程(S102)によって得られたパルプスラリーが、
図2に示すように、アニオンを呈する場合、つまり、スラリー内のパルプ110表面のOH基がアニオン優位である場合(S103、アニオン)、第一混合工程としてカチオンフッ素ポリマー111(
図4参照)をパルプスラリーに添加する(S104)。本実施の形態の場合、カチオンフッ素ポリマー111は、炭素数1以上、6以下のパーフルオロアルキル末端を備える。また、カチオンフッ素ポリマー111は、窒素含有カチオン性基を持つアクリル樹脂である。
【0020】
なお、このスラリー内のパルプ110表面のOH基がアニオン優位である場合(S103、アニオン)に、アニオンフッ素ポリマーを添加することもできる。その場合は、後で硫酸アルミニウム、アミン系カチオン樹脂、アミド系カチオン樹脂などカチオン系定着剤などを添加することで、アニオンフッ素ポリマーを定着させる。
【0021】
一方、硫酸アルミニウム、アミン系カチオン樹脂、アミド系カチオン樹脂などカチオン系定着剤をフッ素ポリマーよりも先に添加することにより、パルプスラリーがカチオンを呈する場合、つまり、
図3に示すように、スラリー内のパルプ110表面のOH基に定着剤などが付着することによりカチオン優位となる場合(S103、カチオン)、第一混合工程としてアニオンフッ素ポリマー112(
図5参照)をパルプスラリーに添加する(S105)。本実施の形態の場合、アニオンフッ素ポリマー112は、炭素数1以上、6以下のパーフルオロアルキル末端を備える。また、アニオンフッ素ポリマー112は、アニオン性基を持つアクリル樹脂である。
【0022】
次に、紙力増強剤を混合する(第二混合工程:S106)。紙力増強剤としては、ポリアクリルアミド系かポリアミドエピクロルヒドリン系の紙力増強剤を例示することができる。紙力増強剤を添加することにより、抄紙後の振動板100に樹脂を含浸させることなく硬質の振動板100を製造することができる。
【0023】
なお、第一混合工程、第二混合工程と記載しているが、これらの文言は、混合の順番を定めたものではなく、混合する添加物の種類の違いを示すものである。また、プロセスチャートに記載される順番も、これに限定されるものではなく、第一混合工程、第二混合工程を逆や同時に実行しても構わない。なお、紙力増強剤は、カチオンフッ素ポリマー111のパルプ110への定着を阻害する場合があるため、カチオンフッ素ポリマー111の混合後に紙力増強剤を混合することが好ましい。
【0024】
次に、混合工程によって混合されたスラリーを抄紙工法により所定形状の金型とその上に配置された金網の上に抄き上げて、下方から吸引して水分のみを排出し、
図4、
図5に示すような振動板100としての形状に成型する(抄紙工程:S107)。この際、木材由来のパルプ110は、パルプ110長が比較的短く、パルプ110の径が比較的細いため、抄紙の際の分散性が高く均質性が高く地合いのよい振動板100を製造することができる。なお、木材由来のパルプ110に長繊維パルプ、化学繊維などを混合する場合でも、木材由来のパルプ110が他の種類のパルプ110の隙間を埋めるため、振動板100の均質性を高めることができる。
【0025】
次に、抄紙工程(S107)によって形成された振動板100に含まれる水分を加熱、および加圧により蒸発させて乾燥させる(乾燥工程:S108)。アバカパルプなどの長繊維パルプは、木材由来のパルプ110に比べてパルプ長が比較的長く、パルプ径が比較的細いため、繊維同士の絡まりが強く、振動板100の硬質化を図ることができ、振動板100を備えた電気音響変換器の高音質化に寄与することが可能となる。
【0026】
なお、上記パルプスラリーを抄紙し、成型して得られた振動板100には、撥水剤の含浸を実行しなくても、パルプ110表面のOH基に接続されたカチオンフッ素ポリマー111(
図4参照)、またはパルプ110表面のOH基に接続されたカチオンを介して接続されたアニオンフッ素ポリマー112(
図5参照)が所望の撥水性能を実現する。これにより、撥水剤の含浸による振動板100の重量増加を排除し、軽量な振動板100を提供することができる。
【0027】
上記の振動板100の製造方法により製造された振動板100は、炭素数1以上、6以下のパーフルオロアルキル末端を有するアクリル樹脂が内添定着されたパルプ110が主原料となっている。これにより、複雑に絡み合うパルプ110の表面に多くのフッ素が配置され、高い撥水性能を発揮することが可能となる。つまり、上記実施の形態で得られる振動板100は、フッ素樹脂を抄紙前のパルプスラリーに添加して成型された振動板よりも高い撥水性能を発揮することができる。炭素数1以上、6以下のパーフルオロアルキル末端を有するアクリル樹脂を用いることで環境負荷を低減することができ、また、環境に負荷がかかるような薬剤などの使用の抑制、または排除をしつつ、硬質、軽量、高弾性率を実現でき、高い音響性能を発揮することが可能となる。
【0028】
なお、本実施の形態の場合、振動板100としていわゆるコーン型の振動板100を例示するが、振動板100の形状は、限定されるものではなく、平面視において矩形、楕円形などでも構わない。また、振動板100の形状は、立体形状ではなく、平板形状でも構わない。
【0029】
図6は、電気音響変換器の一つであるスピーカー装置120の断面図である。
図6に示すように、スピーカー装置120は、振動板100と、磁気回路124と、磁気回路124、および振動板100を保持するフレームと、振動板100に連結され磁気回路124が有する磁気ギャップに配置されるボイスコイル131と、を備えている。
【0030】
本実施の形態の場合、スピーカー装置120が備える磁気回路124は、着磁されたマグネット121を上部プレート122およびヨーク123により挟み込んで内磁型の磁気回路124を構成している。
【0031】
磁気回路124のヨーク123は、フレーム126に結合されている。フレーム126の周縁部127には、振動板100の外周縁とフレーム126とを接続する環状のエッジ128が接着されている。振動板100の中心部は、ボイスコイル体129の一端と結合される。ボイスコイル体129の他端は、磁気回路124の磁気ギャップ125にはまり込むように配置されている。なお本実施の形態の場合、ボイスコイル体129として、ボイスコイル131とボイスコイル131が巻き付けられるボビン132とを備えたものを例示したが、ボビン132を備えないボイスコイル体129でもかまわない。
【0032】
なお、内磁型の磁気回路124を有するスピーカー装置120について説明したが、これに限定されず、外磁型の磁気回路を有するスピーカー装置120に振動板100を適用してもよい。
【0033】
上記スピーカー装置120によれば、良好な特性や良好な音質のスピーカー装置120を実現することができる。特に、上記製造方法により製造された振動板100は、含浸工程を含むことなく軽量、高剛性であるため、スピーカー装置120の特性においては、高域限周波数の向上を実現することができる。
【0034】
また、スピーカー装置120の音質においては、振動板100の軽量性、剛性の向上から、高忠実再生が可能で明瞭度の高い音質を実現することができる。
【0035】
図7は、振動板100を備えたスピーカー装置120が取り付けられた移動体の一つである自動車140の断面図である。自動車140は、振動板100を備えたスピーカー装置120をリアトレイの他、フロントパネル、ピラー、ドアなどに備えている。スピーカー装置120は、カーナビゲーションやカーオーディオの一部として使用される。自動車140は、駆動手段141を備え、スピーカー装置120を収容する筐体として機能する車体142とともにスピーカー装置120を移動させる。
【0036】
振動板100を備えたスピーカー装置120は、自動車140から雨や泥などの水分が流れてきた場合でも、振動板100の高撥水性能によって水の付着を抑制し、振動板100に水が染みこむことを抑制できる。従って、スピーカー装置120の高い音響性能を維持することが可能となる。
【0037】
なお、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本開示の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本開示の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本開示に含まれる。
【0038】
例えば、振動板100の製造方法において、パルプスラリーに製造結果物である振動板100の液体浸透性を調整するサイズ剤を添加しても構わない。
【0039】
また、振動板100を備えたスピーカー装置120は、
図8に示すような電子機器に備えられても構わない。
図8は、振動板100を備えたスピーカー装置120の別利用例を示す図である。振動板100を備えたスピーカー装置120を備える電子機器の一つとしてオーディオ用のミニコンポシステム150を例示し説明する。
【0040】
ミニコンポシステム150は、二つのエンクロージャー151にスピーカー装置120がそれぞれ二つ組込まれている。また、ミニコンポシステム150は、スピーカー装置120に入力する電気信号の増幅回路を含むアンプ152と、アンプ152に入力されるソースを出力するチューナー153や、CDプレーヤー154を備えている。オーディオ用のミニコンポシステムであるミニコンポシステム150は、チューナー153やCDプレーヤー154から入力される音楽信号などをアンプ152により増幅し、増幅された信号に基づきスピーカー装置120から音が放出される。なお、電子機器としては、ミニコンポシステム150の他、自動車用のオーディオシステムや持ち運び可能なポータブルオーディオ機器、液晶テレビや有機ELディスプレイテレビ等の映像機器、携帯電話等の情報通信機器、コンピュータ関連機器等を例示することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本開示にかかる振動板100、振動板100を備えたスピーカー装置120、マイクロフォンなどの電気音響変換器に利用可能である。
【符号の説明】
【0042】
100 振動板
110 パルプ
111 カチオンフッ素ポリマー
112 アニオンフッ素ポリマー
120 スピーカー装置
121 マグネット
122 上部プレート
123 ヨーク
124 磁気回路
125 磁気ギャップ
126 フレーム
127 周縁部
128 エッジ
129 ボイスコイル体
131 ボイスコイル
132 ボビン
140 自動車
141 駆動手段
142 車体
150 ミニコンポシステム
151 エンクロージャー
152 アンプ
153 チューナー
154 CDプレーヤー