(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095072
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】重量物の搬入または搬出方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/14 20060101AFI20240703BHJP
B66C 7/06 20060101ALN20240703BHJP
【FI】
E04G21/14
B66C7/06
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212082
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】523001946
【氏名又は名称】株式会社秀興組
(74)【代理人】
【識別番号】100101708
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 信宏
(72)【発明者】
【氏名】横山 栄治
【テーマコード(参考)】
2E174
3F202
【Fターム(参考)】
2E174CA03
2E174CA09
2E174CA16
3F202AA02
3F202CA02
3F202CB01
(57)【要約】
【課題】建物周囲や屋上で作業スペースが確保できない場合、既存設備の多い工場等の室内における場合等に、重量物を所定の箇所に低コストで容易に搬入または搬出できる方法を提供する。
【解決手段】重量物8の搬入開始場所2に対し、建物1の側壁に沿って第一の足場3と、第一の足場3の頂上部から搬入終了場所7の上部域まで達する第二の足場4とを組み立て、第一の足場3の頂上部から搬入終了位置7の上部域まで達する第二の足場4の組立囲い枠の上部に沿ってアームレール部材5を設け、アームレール部材5にレール部分を水平方向に移動可能で吊荷の荷揚げ及び荷下ろしのできるウインチ6を設け、ウインチ6により搬入開始場所2に用意された重量物8を荷揚げし、ウインチ6を搬入終了場所7となる第二の足場4の上部域まで水平移動して、重量物8を搬入終了場所7に荷下ろしする作業により、または全く逆の作業により、重量物の搬入または搬出を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設現場で使用されている足場用資材を用いて、重量物の搬入開始若しくは搬出開始となる所定場所から建物の屋上若しくは室内の所定高さまで達する第一の足場を組み立て、
当該第一の足場の頂上部から重量物の搬入終了場所の上部域まで連結する第二の足場を延伸して組み立てるとともに、
前記第一の足場の頂上部から重量物の搬入終了場所の上部域まで達する第二の足場の組立囲い枠の上部に沿ってアームレール部材を設け、
当該アームレール部材のレール部分に水平方向に移動可能であって吊荷の荷揚げ及び荷下ろしのできるウインチを設けるとともに、
当該ウインチを前記第一の足場の頂上部に移動して搬入開始場所に用意された重量物を吊荷として第一の足場の頂上部まで荷揚げし、その後前記第二の足場の重量物設置個所の上部域まで水平移動してから、重量物を搬入終了場所に荷下ろしするか、
若しくは前記ウインチを第二の足場の重量物の搬出開始場所の上部まで移動して搬出開始場所に用意された重量物を吊荷として荷揚げし、その後第一の足場の頂上部まで水平移動してから、重量物を搬出終了場所に荷下ろしするようにして行うことを特徴とする重量物の搬入または搬出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルの屋上に設置される空調機用の室外機や高圧受電設備であるキュービクル等の重量物を設置すべき場所へ搬入または回収場所へ搬出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、重量物として、例えばビルの屋上に設置される空調機用の室外機は、ビルの周囲の空きスペースに通常のクレーンを配置し、クレーンにより搬入または搬出するのが一般的な作業であり、新築ビルの工事においては、タワークレーンや工事用仮設リフトを組み立てて荷揚げ作業を行うようにしている。
【0003】
上記したような通常のクレーンを配置できる場所がないため、クレーン作業が全く行えない現場もあり、既設のビルの屋上に室外機等を搬入するには、常設エレベータにより行わざる得ない場合もあった。この場合、常設エレベータでは、貨物とりわけ室外機等の重量物を搬送することができないため、従来は物品を分解して最上階まで上げるなど、人的作業として長時間を要し、台数が多い場合には、かなり煩雑で困難な作業となっていた。室外機の修理、交換などのため、屋上から室外機を撤去搬出する場合にも、全く逆の作業を行うことになり、同様に困難な作業となっていたものである。
【0004】
そこで、上記した事態を回避するために、別途設置された荷揚げ装置を使用するようにしており、例えば、ビルの壁面に沿って設置した伸縮梯子を使用して構成されたものを使用する場合(特許文献1)や、より安定して安全に荷揚げできる組立式屋上用簡易クレーンを使用したりする場合(特許文献2、3)など、各種の荷揚げ装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-1870353号
【特許文献2】特開2017-153996号
【特許文献3】特許第5881381号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1乃至3に開示された荷揚げ装置により、室外機等の重量物の搬入又は搬出作業を行うには、専用に構成された伸縮梯子部材とこれをさらに支持する補助支柱などの部材や、複数の動滑車や定滑車などを要し、組立式の簡易クレーンにおいても専用機としての構成部材を必要とするため、ビルの高さがある程度高い場合や、ビルの立地場所やビルの形状が特殊な場合には、特注の荷揚げ装置として構成する部材の数量も多くなり、製造コストもかなり掛かることになり、搬入・搬出作業全体に要する費用コストが高くなるという問題があった。
【0007】
また、これらの荷揚げ装置をビルの屋上やビルの周囲に設置するには、通常のクレーンを配置するほどではなくても、一定のスペースが必要であり、ビルの建てこんだエリアや、ビル自体の形状が特殊な場合などでは、適切なスペースを確保できず、荷揚げ装置そのものを設置して使用することができない現場も多いという問題があった。
【0008】
また、いったん室外機等をビルの屋上に設置した後、一定期間経過してから、修理、交換などのため、室外機等を撤去搬出する場合には、新築ビル工事に際して設置されていたタワークレーンや工事用リフトも既に解体されており、ビル周囲に新たなビルが建設されるとか、屋上に広告塔や貯水タンクなどの障害物となる施設が設置されていることが多く、上記した荷揚げ装置を改めて配置するスペースが無くなり、使用することができないという事態が生じていた。さらに、
図3に示すように、ビルが隣接した屋上に複数の室外機が相互に近接して増設されていて、その中の一部を交換するといった場合には、隣接したビル側との間に全くスペースがなく、室外機周囲にもスペースがないという状況の下に、上記した貯水タンクなどの障害となり得る施設が設置されていると、なおさら、室外機の撤去搬出交換作業が困難になるという事態も生じていた。
【0009】
さらに、倉庫や工場などの高さのある建物屋内において、電気設備や室外機相当の重量物を室内における何層か形成された段差のあるフロアに荷揚げする場合や荷下ろしする場合には、屋内に既設設備が多く存在するため、これらを避けながら若しくは解体する等の準備措置を取らざるを得ず、上記した従来の荷揚げ装置を設置して対応することがより困難になり、全く対応できないという問題も生じていた。
【0010】
そこで、本発明は、建物の屋上や工場内に設置する重量物を搬入又は搬出するに際して、上記した専用的に設計された構成部材を用いて組み立てるために製造コストがかかる荷揚げ装置を使用することなく、より低コストで実施でき、しかも、建物の周囲に充分なスペースが確保できない場合、屋上における作業スペースが確保できない場合、既存設備の多い工場や倉庫等の室内における場合等においても、容易に実施することができる重量物の搬入または搬出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明は、次のように構成した。すなわち、本発明に係る重量物の搬入または搬出方法は、建設現場で使用されている足場用資材を用いて、重量物の搬入開始若しくは搬出開始となる所定場所から建物の屋上若しくは室内の所定高さまで達する第一の足場を組み立て、
当該第一の足場の頂上部から重量物の搬入終了場所の上部域まで連結する第二の足場を延伸して組み立てるとともに、
前記第一の足場の頂上部から重量物搬入終了場所の上部域まで達する第二の足場の組立囲い枠の上部に沿ってアームレール部材を設け、
当該アームレール部材に、レール部分を水平方向に移動可能であって吊荷の荷揚げ及び荷下ろしのできるウインチを設けるとともに、
当該ウインチを前記第一の足場の頂上部に移動して搬入開始場所に用意された重量物を吊荷として第一の足場の頂上部まで荷揚げし、その後、前記第二の足場の重量物搬入終了場所の上部域まで水平移動してから、重量物を搬入終了場所に荷下ろしするか、
若しくは前記ウインチを第二の足場の重量物設置個所の上部まで移動して搬出開始位置に用意された重量物を吊荷として荷揚げし、その後、第一の足場の頂上部まで水平移動してから、重量物を搬出終了場所に荷下ろしするようにして搬入又は搬出を行うようにすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る重量物の搬入または搬出方法によれば、従来の建設現場で一般的に使用されている足場資材を用いて重量物の搬入、搬送を行う作業用囲い枠となる第一及び第二の足場を組み立てるとともに、第二の足場の組立囲い枠の上部に沿ってアームレール部材を取り付け、このアームレール部材にウインチを設けることで作業準備ができるので、従来の専用機として構成されていた荷揚げ装置による場合に比べ、殆どの使用部材が既存の資材で構成でき、作業全体に要する設備コストを大幅に低減することができる。
【0013】
また、本来のクレーンが入れない場所やクレーンの作業半径の届かない場所であって、上記した従来の荷揚げ装置を設置しようとしても、これらを設置するのに最低限必要とされる空きスペースがない現場であっても、既存に使用されている足場組立の資材により作業囲い枠を組み立てるので、組み立て資材の種類も豊富であり、現場の特徴に応じて選択して実施でき、その組み立て工法も既に習熟されていることから、従来装置では困難な現場でも容易に組み立て作業を行うことができ、さらに、足場組み立ての熟練者が行えば、作業全体に要する時間も大幅に短縮することができる。
【0014】
また、重量物の搬入終了位置や搬出開始位置に至る第二の足場を組み立てるエリアに、既設の設備が障害物として存在していても、足場資材の選択により、これを避けるようにして第二の足場を、見た目にはさらに第三、第四の足場として延伸して組立を行うことができるので、特に、搬出対象が複数の重量物から一つを搬出するような場合や、障害物となり得る既存設備の多い工場や倉庫等の室内においても容易に組み立て作業準備を行うことができ、重量物の搬入または搬出作業をスムースに実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明により重量物をビルの屋上に搬入する場合を示す説明図である。
【
図2】本発明により重量物を屋内の段差のあるフロアに搬入する場合を示す説明図である。
【
図3】従来問題となっていたビルの屋上に複数の室外機が設置された状態を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明を実施することにより、重量物8をビル1の屋上の所定箇所に搬入する場合を示す説明図であり、同図に示すように、重量物8の搬入開始場所2に対して、ビル1の側壁に沿って第一の足場3が組み立てられている。第一の足場3を、ビル1の屋上を越えるまで組み立てると、第一の足場3の頂上部から搬入終了場所7の上部域まで達する第二の足場4が連結され延伸して組み立てられている。
【0018】
第一の足場3及び第二の足場4の組み立て作業は、緊結部付の支柱・布材・腕木材・ブラケット、ねじ管式ジャッキ型ベース金具、壁つなぎ、足場用斜材や大筋かいなどの基本部材を用い、くさび緊結式足場の組み立てによって行われるので、手早く容易に行うことができる。かかる足場工法を採用しているのは、組み立て部材がユニット化されており、ハンマー1本で組み立てができ、設置や解体が比較的容易に行え、耐久性も高いという特徴があり、コストパフォーマンスにも優れているためである。
【0019】
また、第一の足場3の頂上部から搬入終了位置7の上部域まで達する第二の足場4の組立囲い枠の上部に沿ってアームレール部材5が設けられ、このアームレール部材5には、レール部分を水平方向に移動可能であって吊荷の荷揚げ及び荷下ろしのできるウインチ6が設けられている。本発明を実施するについては、このアームレール部材5とウインチ6を別途用意することが必要となるが、これらの部材も既存のものを使用することができ、特別に設計製作されるものではないので、作業囲い枠の組み立てに要する部材費を含めた全体の設備コストを低コストに抑えることができる。
【0020】
上記のように、第一の足場3及び第二の足場4が組み立てられると、搬入作業を行う準備が完了する。搬入作業は、同図に示すように、ウインチ6をアームレール部材5に沿って第一の足場3の頂上部に移動し、搬入開始場所2に用意された重量物8を吊荷として第一の足場3の頂上部まで荷揚げし、その後、ウインチ6を搬入終了場所7となる第二の足場4の上部域まで水平移動してから、重量物8を搬入終了場所7に荷下ろしすることで、搬入作業が完了する。
【0021】
上記とは逆に、屋上に設置された重量物8の撤去搬出作業は、上記と同様に第一の足場3及び第二の足場4を組み立て、搬入時の搬入終了場所7を搬出開始位置として、ウインチ6を第二の足場4の搬出開始位置の上部まで移動し、搬出開始位置に用意された重量物8を吊荷として荷揚げし、その後、第一の足場3の頂上部まで水平移動してから、搬入時の搬入開始場所2を搬出終了場所として荷下ろしすることにより、搬出作業が完了する。
【0022】
このように、本発明に係る重量物の搬入または搬出方法によれば、既存に使用されている足場組立の資材により作業囲い枠を組み立てるので、組み立て資材の種類も豊富であり、現場の特徴に応じて資材を選択して実施でき、その組み立て工法も既に習熟されていることから、従来装置では困難な現場でも容易に重量物の搬入または搬出作業を行うことができるようになる。また、上記したように、殆どの使用部材が既存の資材で構成でき、作業全体に要する設備コストを大幅に低減することができる。さらに、作業囲い枠となる足場の組み立て作業を熟練者が行えば、作業全体に要する時間も大幅に短縮することもできる。
【0023】
図2は、本発明を実施することにより、工場や倉庫、学校の体育館など、高さのある室内空間が形成されている建物内で重量物を段差のあるフロアまで搬入する場合、若しくは搬出する場合を説明する説明図であり、
図1と全く同様の手順で作業を行うことができることを示し、
図1を同符号のものは同じものを示す。
【0024】
同図に示すように、重量物8の搬入開始場所2に対して、工場等の建物10内にある段差フロア11の側壁に沿って、段差フロア11の頂部を越えるまで第一の足場3が組み立てられ、第一の足場3の頂上部から搬入終了場所7の上部域まで達する第二の足場4が連結され延伸して組み立てられている。重量物8の搬入または搬出作業は、
図1に示す実施例と全く同様に行うことができる。特に、障害物となり得る既存設備の多い工場や倉庫等の建物10の室内で当該作業を行う場合には、第一の足場3及び第二の足場4を組み立てる際の足場資材の選択により、障害物を避けるようにして、第二の足場を見た目にはさらに第三、第四の足場として延伸して組立を行うことができるので、従来装置を使用しても行うことができない障害物の多い現場において、容易に重量物の搬入、搬出作業を実施することができるようになる。
【0025】
さらに、本発明の方法によれば、
図3に示す屋上に複数の室外機20が相互に近接して増設されていて、室外機20相互の周囲にスペースがなく、さらに貯水タンクなどの障害物となる施設が設置されているという状況の下に、室外機20の一部を撤去して交換するといった場合においても、容易に重量物の搬入、搬出作業を実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明に係る重量物の搬入または搬出方法は、重量物の搬入開始場所と搬入終了場所に対して既存の足場用資材を用いて作業用囲い枠を形成することでき、ウインチを移動させるアームレール部材を現場の状況を考慮して作業用囲い枠にうまく設置できれば、従来の装置では困難であった現場であっても、重量物の搬入または搬出作業を可能にすることができるので、実施範囲の広い汎用性の高い方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 ビル
2 搬入開始場所(搬出終了場所)
3 第一の足場
4 第二の足場
5 アームレール部材
6 ウインチ
7 搬入終了場所(搬出開始場所)
8 重量物
10 建物(工場)
20 室外機
【手続補正書】
【提出日】2024-06-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
【特許文献1】特開2003-118999号
【特許文献2】特許第5881381号
【特許文献3】特許第6203104号