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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095077
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】毛髪処理剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/55 20060101AFI20240703BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20240703BHJP
   A61Q 5/08 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A61K8/55
A61Q5/10
A61Q5/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212088
(22)【出願日】2022-12-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年4月22日に、毛髪処理剤が記載されたパンフレットの納品を依頼することにより配布
(71)【出願人】
【識別番号】000108672
【氏名又は名称】タカラベルモント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 健太郎
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB012
4C083AB082
4C083AB312
4C083AB412
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC082
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC352
4C083AC442
4C083AC472
4C083AC552
4C083AC782
4C083AC892
4C083AC901
4C083AC902
4C083AD042
4C083AD642
4C083BB13
4C083CC35
4C083CC36
4C083DD06
4C083DD31
4C083EE07
4C083EE26
4C083EE27
(57)【要約】      (修正有)
【課題】毛髪の損傷部分(親水性部分)における酸化染料の浸透が過剰になることを抑制して、所望の色調を有する(すなわち、髪全体において色調のムラのない)染毛処理、または脱色処理を行うことができる毛髪処理剤を提供することを目的とする。
【解決手段】毛髪処理剤は、成分(A)として、炭素数が12~17であるアルキル基を2つ以上有し、エチレンオキシドの平均付加モル数が8以下であり、25℃において液状またはクリーム状であるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸を含有し、成分(B)として、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸、及びポリオキシエチレンベヘニルエーテルリン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A)として、炭素数が12~17であるアルキル基を2つ以上有し、エチレンオキシドの平均付加モル数が8以下であり、25℃において液状またはクリーム状であるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸を含有し、
成分(B)として、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸、及びポリオキシエチレンベヘニルエーテルリン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する
ことを特徴とする染毛用または脱色用の毛髪処理剤。
【請求項2】
前記成分(A)のエチレンオキシドの平均付加モル数が4以下であることを特徴とする請求項1に記載の染毛用または脱色用の毛髪処理剤。
【請求項3】
液状油を更に含有し、
前記毛髪処理剤の全体に対する前記液状油の含有量が1質量%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の染毛用または脱色用の毛髪処理剤。
【請求項4】
前記成分(A)を0.1質量%以上含有するとともに、前記成分(B)を0.1質量%以上含有し、前記成分(A)と前記成分(B)の含有量の合計が2質量%以上であり、
前記成分(A)と前記成分(B)との質量比が、成分(A):成分(B)=1:19~19:1であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の染毛用または脱色用の毛髪処理剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染色処理や脱色処理等の毛髪の処理において使用する毛髪処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
2剤型の酸化染毛剤は、酸化染料及びアンモニア等のアルカリ剤を含有する第一剤と、酸化剤を含有する第二剤とから構成され、第一剤はアルカリ性に、第二剤は酸性に、それぞれ調整されており、第一剤と第二剤とが混合して使用される。
【0003】
そして、第一剤と第二剤とを混合すると、アルカリ性に調整された第一剤が、第二剤の酸化剤、例えば過酸化水素を活性化させ、この混合物を毛髪に塗布すると、第一剤のアルカリ剤が毛髪のキューティクルを開き、第一剤及び第二剤の双方の薬剤が毛髪内に浸透する。薬剤が浸透した毛髪内では、活性化した第二剤の酸化剤により、第一剤に含まれる酸化染料の酸化重合が進行して色素が形成され、当該色素による毛髪の発色が進行する。また、染料を含まない毛髪処理剤は、上述の機構により、脱色剤として作用する。
【0004】
ここで、これらの反応を促進して、毛髪に対する酸化染料の浸透性を向上させるための染毛用第一剤が提案されている。より具体的には、例えば、トルエン-2,5-ジアミンと2,4-ジアミノフェノキシエタノールと、リン酸ジアルキル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸とを含有する酸化染毛用第一剤が提案されている。そして、このような構成により、毛髪における青色の濃染性を高めることができると記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、界面活性剤と、炭素原子数8~30の脂肪族アルコールのリン酸ジエステルと、ピバリン酸イソデシルとを含有する酸化染毛用第一剤が提案されている。そして、このような構成により、白髪に対しても、より濃く染色することができると記載されている。(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6940942号公報
【特許文献2】特許第6615547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1~2に記載の染毛剤においては、毛髪の損傷部分(親水性部分)における酸化染料の浸透が過剰になるため、所望の色調を有する(すなわち、髪全体において色調のムラのない)染毛処理、または脱色処理を行うことが困難であるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、毛髪の損傷部分(親水性部分)における酸化染料の浸透が過剰になることを抑制して、所望の色調を有する(すなわち、髪全体において色調のムラのない)染毛処理、または脱色処理を行うことができる毛髪処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の毛髪処理剤は、成分(A)として、炭素数が12~17であるアルキル基を2つ以上有し、エチレンオキシドの平均付加モル数が8以下であり、25℃において液状またはクリーム状であるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸を含有し、成分(B)として、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸、及びポリオキシエチレンベヘニルエーテルリン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、毛髪の損傷部分(親水性部分)における酸化染料の浸透が過剰になることを抑制することができるため、所望の色調を有する(すなわち、髪全体において色調のムラのない)染毛処理、または脱色処理を行うことが可能な毛髪処理剤を提供することができる。
【0011】
また、毛髪全体に対する酸化染料の浸透を促進させて、染毛処理による染色力(または、脱色処理による脱色力)を向上することが可能な毛髪処理剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において、適宜、変更して適用することができる。
【0013】
本発明の毛髪処理剤は、染毛用または脱色用の毛髪処理剤である。より具体的には、例えば、2剤型の酸化染毛剤において、酸化染料及びアルカリ剤を含有する第一剤として使用されるものであり、炭素数が12~17であるアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸を含有する。
【0014】
<炭素数が12~17であるアルキル基を2つ以上有するポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸>
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸は、リン酸の水素原子の少なくとも1つが置換基により置換されたリン酸エステルである。本発明の毛髪処理剤は、炭素数が12~17であるアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸(すなわち、ポリオキシエチレンアルキル基に含まれるアルキル基の炭素数が12~17であるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸)を成分(A)として含有している。
【0015】
また、この成分(A)は、炭素数が12~17であるアルキル基を2つ以上有し、各アルキル基に結合したエチレンオキシド(酸化エチレン)の平均付加モル数(エチレンオキシドの繰り返し数)が8以下であり、25℃において液状またはペースト状である。
【0016】
そして、25℃において液状またはペースト状である成分(A)を使用することにより、毛髪の非損傷部分における酸化染料の浸透性が向上するため、毛髪全体において均一な染色性を確保することが可能になる。
【0017】
なお、ここでいう「液状」とは、25℃において、流動性があり、一定の形状を有していない状態(例えば、充填された容器によって形状が変化する状態、または、その容器を傾けると形状が変化する状態)のことをいう。なお、後述の液状油における「液状」についても、同様の状態のことをいう。
【0018】
また、ここでいう「ペースト状」とは、液体に、固体(粉体)を練り込ませ(または混ぜ込み)、糊状にした状態のことをいい、より具体的には、薬さじ、スプーン、及びスパーテルなどを用いて、塗り広げた場合に割れ目が発生することなく、容易に切り分けることが可能であり、さらに全体として、再度、まとめることができる状態のことをいう。
【0019】
なお、ここで言う「ペースト状」には、上述の「液状」よりも固体の分散状態が不十分であり、固体が溶け切っておらず、表面に浮き出た状態も含まれる。
【0020】
また、25℃において、「ペースト状」の場合は、流動性を有するが、上述の「液状」の場合よりも流動性が低く、「液状」の場合に比し、一定の形状を保ちやすい性質がある。
【0021】
また、成分(A)の置換基としては、少なくともポリオキシエチレンアルキル基が含まれるが、これ以外の置換基が含まれていてもよい。また、成分(A)のアルキル基は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよい。
【0022】
また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸は、対イオンと塩を構成していてもよい。対イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオンや、マグネシウムイオン、カルシウムイオンなどのアルカリ土類金属イオン等が挙げられる。
【0023】
この成分(A)としては、例えば、ジ(C12~15)パレス-2リン酸(アルキル基の数:2、アルキル基の炭素数:12~15、エチレンオキシドの平均付加モル数:2)、ジ(C12~15)パレス-4リン酸(アルキル基の数:2、アルキル基の炭素数:12~15、エチレンオキシドの平均付加モル数:4)、ジ(C12~15)パレス-6リン酸(アルキル基の数:2、アルキル基の炭素数:12~15、エチレンオキシドの平均付加モル数:6)、ジ(C12~15)パレス-8リン酸(アルキル基の数:2、アルキル基の炭素数:12~15、エチレンオキシドの平均付加モル数:8)、トリ(C12~15)パレス-2リン酸(アルキル基の数:3、アルキル基の炭素数:12~15、エチレンオキシドの平均付加モル数:2)、トリ(C12~15)パレス-8リン酸(アルキル基の数:3、アルキル基の炭素数:12~15、エチレンオキシドの平均付加モル数:8)、トリラウレス-4リン酸Na(アルキル基の数:3、アルキル基の炭素数:12、エチレンオキシドの平均付加モル数:4)、及びトリセテス-5リン酸(アルキル基の数:3、アルキル基の炭素数:17、エチレンオキシドの平均付加モル数:5)等が挙げられる。
【0024】
そして、このような成分(A)を含有することにより、毛髪の損傷部分(親水性部分)における酸化染料の浸透が過剰になることを抑制することができるため、所望の色調を有する(すなわち、髪全体において色調のムラのない)染毛処理、または脱色処理を行うことが可能になる。
【0025】
また、毛髪の損傷部分(親水性部分)における酸化染料の過剰な浸透を効果的に抑制するとの観点から、成分(A)におけるエチレンオキシドの平均付加モル数(ポリオキシエチレンの繰り返し数)が4以下であることが好ましい。
【0026】
また、同様に、毛髪の損傷部分(親水性部分)における酸化染料の浸透を効果的に抑制するとの観点から、毛髪処理剤の全体に対する成分(A)の含有量は、0.1~10質量%が好ましい。
【0027】
<脂肪酸部分の炭素鎖が直鎖状であるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸>
また、本発明の毛髪処理剤は、エーテル結合部位「-O-」に結合する脂肪酸部分の炭素鎖が直鎖状であるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸を成分(B)として含有している。そして、本発明においては、この成分(B)として、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸(10E.O.)、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸(10E.O.)、及びポリオキシエチレンベヘニルエーテルリン酸(10E.O.)が使用される。また、これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
なお、括弧内の「E.O.」はエチレンオキシドの意味であり、「E.O.」の前の数値は、エチレンオキシドの平均付加モル数を意味している。
【0029】
そして、このような成分(B)を含有することにより、毛髪全体に対する酸化染料の浸透を促進させて、染毛処理による染色力(または、脱色処理による脱色力)を向上させることが可能になる。
【0030】
また、染毛処理や脱色処理による仕上がり感(染色性、又は脱色性)を長期にわたって十分に向上させるとの観点から、毛髪処理剤の全体に対する成分(B)の含有量は、0.1~10質量%が好ましい。
【0031】
また、染毛処理や脱色処理による仕上がり感(染色性、又は脱色性)を確実に向上させるとの観点から、上述のごとく、成分(A)を0.1質量%以上含有するとともに、成分(B)を0.1質量%以上含有し、かつ成分(A)と成分(B)の含有量の合計が2質量%以上であるとともに、成分(A)と成分(B)との質量比が、成分(A):成分(B)=1:19~19:1であることが好ましい。
【0032】
(液状油)
また、本発明の毛髪処理剤は、毛髪に対して良好な感触とツヤを与えるとの観点から、液状の油性成分(液状油)を含有してもよい。この液状油としては、例えば、パルミチン酸エチルヘキシル、エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、流動パラフィン、スクワラン、マカダミアナッツ油、アーモンド油、テトラステアリン酸ペンタエリスリチル、オクチルドデカノール、及びオレイルアルコール等が挙げられる。
【0033】
ここで、本発明の毛髪処理剤の剤型としては、例えば、クリーム状が挙げられるが、本発明の毛髪処理剤が液状油を含有する場合、毛髪処理剤の全体に対する液状油の含有量は1質量%以下が好ましい。液状油の含有量が1質量%以下であれば、クリーム状の毛髪処理剤の粘度低下を抑制することができるため、毛髪処理剤の保存安定性を維持することが可能になる。
【0034】
(アルカリ剤)
アルカリ剤は、無機アルカリ剤及び有機アルカリ剤を用いることができる。無機アルカリ剤としては、例えば、アンモニア;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウムなどの炭酸塩;炭酸グアニジンなどのグアニジウム塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの炭酸水素塩;酒石酸カリウムナトリウムなどの酒石酸塩;クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウムなどのクエン酸塩;リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウムなどのリン酸塩;ピロリン酸ナトリウムなどのピロリン酸塩;ケイ酸ナトリウムなどのケイ酸塩;メタケイ酸ナトリウムなどのメタケイ酸塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウムなどの酢酸塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機アルカリ塩類が挙げられる。また、有機アルカリ剤としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノブタノール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールなどの有機アミン類が挙げられる。
【0035】
(酸化染料)
酸化染料を構成する染料中間体としては、例えば、p-フェニレンジアミン、p-トルイレンジアミン、N-メチル-p-フェニレンジアミン、N,N-ジメチル-p-フェニレンジアミン、N,N-ジエチル-2-メチル-p-フェニレンジアミン、N-エチル-N-(ヒドロキシエチル)-p-フェニレンジアミン、クロル-p-フェニレンジアミン、2-(2’-ヒドロキシエチルアミノ)-5-アミノトルエン、N,N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-p-フェニレンジアミン、メトキシ-p-フェニレンジアミン、2,6-ジクロル-p-フェニレンジアミン、2-クロル-6-ブロム-p-フェニレンジアミン、2-クロル-6-メチル-p-フェニレンジアミン、6-メトキシ-3-メチル-p-フェニレンジアミン、2,5-ジアミノアニソール、N-(2-ヒドロキシプロピル)-p-フェニレンジアミン、N-2-メトキシエチル-p-フェニレンジアミンなどの、1種又は2種以上の-NH基、-NHR基及び/又は-NR基(Rは、炭素数1~4のアルキル基又はヒドロキシアルキル基)を有するp-フェニレンジアミン類;2,5-ジアミノピリジン誘導体;p-アミノフェノール、2-メチル-4-アミノフェノール、3-メチル-4-アミノフェノール、2-クロロ-4-アミノフェノール、3-クロロ-4-アミノフェノール、2,6-ジメチル-4-アミノフェノール、3,5-ジメチル-4-アミノフェノール、2,3-ジメチル-4-アミノフェノール、2,5-ジメチル-4-アミノフェノール、2,4-ジアミノフェノール、5-アミノサリチル酸などのp-アミノフェノール類及びo-アミノフェノール類;o-フェニレンジアミン類が挙げられる。
【0036】
また、酸化染料を構成するカップラーとしては、例えば、α-ナフトール、o-クレゾール、m-クレゾール、2,6-ジメチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、3,4-ジメチルフェノール、3,5-ジメチルフェノール、ベンズカテキン、ピロガロール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、5-アミノ-2-メチルフェノール、5-(2’-ヒドロキシエチルアミノ)-4-メトキシ-2-メチルフェノール、ヒドロキノン、2,4-ジアミノアニソール、m-トルイレンジアミン、4-アミノフェノール、レゾルシン、レゾルシンモノメチルエーテル、m-フェニレンジアミン、1-フェニル-3-メチル-5-ピラゾロン、1-フェニル-3-アミノ-5-ピラゾロン、1-フェニル-3,5-ジケトピラゾリジン、1-メチル-7-ジメチルアミノ-4-ヒドロキシ-2-キノロン、m-アミノフェノール、4-クロロレゾルシン、2-メチルレゾルシン、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、2,6-ジアミノピリジン、3,5-ジアミノトリフロロメチルベンゼン、2,4-ジアミノフロロベンゼン、3,5-ジアミノフロロベンゼン、2,4-ジアミノ-6-ヒドロキシピリミジン、2,4,6-トリアミノピリミジン、2-アミノ-4,6-ジヒドロキシピリミジン、4-アミノ-2,6-ジヒドロキシピリミジン、4,6-ジアミノ-2-ヒドロキシピリミジンが挙げられる。
【0037】
(溶媒)
また、本発明の毛髪処理剤において使用される溶媒(分散媒)は特に限定されず、例えば、水(精製水等)が使用されるが、必要に応じて、エタノール、イソプロパノール等の有機溶媒を、人体に接触しても無害な濃度で、水に含有させてもよい。
【0038】
なお、本発明の毛髪処理剤の態様は、溶液に限定されず、必要に応じて添加する成分が懸濁ないし乳化されているものであってもよい。
【0039】
(pH調整剤)
また、本発明の毛髪処理剤は、pH調整剤を含有してもよい。このpH調整剤は、特に限定されず、通常、毛髪化粧料に用いられるものであればよい。例えば、ピロリン酸ナトリウム、乳酸、リン酸、炭酸グアニジン、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、セスキ炭酸塩、アルギニン、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、モノエタノールアミン、アンモニア、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、水酸化ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三ナトリウム、及び、リン酸水素二アンモニウムなどが挙げられる。そして、本発明の毛髪処理剤は、これらのpH調整剤により、pHを8.0~11.5に設定することができる。
【0040】
(その他の成分)
本発明の毛髪処理剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を配合することができる。例えば、油性成分(例えば、スフィンゴ脂質、セラミド類、コレステロール誘導体、フィトステロール誘導体、リン脂質、パーフルオロポリエーテル等)、植物油(例えば、オリーブ油、シア脂、マカデミアナッツ油等)、ロウ類(例えば、ホホバ種子油、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ等)、炭化水素(例えば、ワセリン、イソドデカン、イソヘキサデカン等)、高級脂肪酸(例えば、ミリスチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、分岐脂肪酸(C(炭素数)14-28)、ヒドロキシステアリン酸等)、アルコール類(例えば、セトステアリルアルコール、セタノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、水添ナタネ油アルコール、コレステロール、シトステロール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、1,2-ヘキサンジオール等)、糖及びその誘導体類(例えば、ブドウ糖、ショ糖、D-ソルビトール、マルトース、トレハロース、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド、グリセリルグルコシド等)、アミノ酸及びその誘導体類(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、セリン、メチオニン、トリメチルグリシン、ポリアスパラギン酸ナトリウム、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、N-ラウロイル-L-リジン等)、PPT及びタンパク類(例えば、加水分解シルク、加水分解コムギ、加水分解ダイズ、加水分解コラーゲン、加水分解ケラチン、シリル化加水分解シルク、シリル化加水分解コムギ、カチオン化加水分解シルク、カチオン化加水分解コラーゲン、ケラチン等)、天然高分子類(例えば、アルギン酸塩、マンナン、アラビアゴム、タマリンドガム、キトサン、カラギーナン、ムチン、セラック、ヒアルロン酸塩、カチオン化ヒアルロン酸、キサンタンガム、デキストリン、ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化セルロース、グァーガム、カチオン化グァーガム、ハチミツ等)、合成高分子(例えば、アニオン性高分子、カチオン性高分子、非イオン性高分子、両性高分子、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル等)、他のアニオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等)、カチオン性界面活性剤(例えば、アルキルアミン塩、脂肪酸アミドアミン塩等)、両性界面活性剤(例えば、グリシン型両性界面活性剤、アミノプロピオン酸型両性界面活性剤、アミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンセチルエーテルおよびポリオキシエチレンラウリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルグルコシド、新油型モノステアリン酸グリセリル等)、染料(例えば、タール色素、天然色素等)、植物エキス類(例えば、カミツレエキス、コンフリーエキス、セージエキス、ローズマリーエキス、カキタンニン、チャ乾留液、銅クロロフィリンナトリウム等)、ビタミン類(例えば、L-アスコルビン酸、DL-α-トコフェロール、D-パンテノール、天然ビタミンE等)、紫外線吸収剤(例えば、パラアミノ安息香酸、サリチル酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、フェルラ酸等)、防腐剤(例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、サリチル酸、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラベン、フェノキシエタノール等)、酸化防止剤(例えば、亜硫酸水素ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン等)、金属封鎖剤(例えば、エデト酸塩、ポリリン酸ナトリウム、フィチン酸等)、その他無機化合物(例えば、酸化チタン、銀、白金、塩化鉄、酸化鉄、臭素酸ナトリウム、過酸化水素等)、その他有機化合物(例えば、尿素、ヒドロキシエチル尿素、dl-ピロリドンカルボン酸ナトリウム、グルコン酸銅等)、溶剤(例えば、ベンジルアルコール等)、噴射剤(例えば、LPG(液化石油ガス)、DME(ジメチルエーテル)窒素ガス、炭酸ガス等)、及び香料等の公知の化粧品各成分を配合することができる。
【0041】
また、本発明の毛髪処理剤の剤型は、例えば、クリーム状が挙げられる。第一剤である本発明の毛髪処理剤がクリーム状であると、酸化剤を含有する第二剤との混合が容易になるため好ましい。また、長期にわたって良好な保存安定性が可能になる。さらに、塗布時に垂れ落ちしにくく、毛髪への付着性やなじみに優れ、毛髪のコンディショニング効果に優れるとともに、良好な染色性、又は脱色性を得ることが可能になる。
【0042】
なお、ここで言う「クリーム状」とは、吐出口が5~7mmφのチューブ状容器に本発明の毛髪処理剤を充填し、25℃の条件のもと、本発明の毛髪処理剤を吐出したときに1時間以上吐出した状態を保つ状態のことをいう。
【0043】
(第二剤)
本発明の毛髪処理剤(第一剤)と混合される第二剤としては、特に限定されず、主剤である酸化剤を含有するものであればよい。
【0044】
酸化剤としては、例えば、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、アルカリ金属の臭素酸塩、アルカリ金属の過酸塩(例えば、過臭素酸塩、過硫酸塩、過ホウ酸塩)などが挙げられる。なお、酸化剤の含有量は、特に限定されず、例えば、第二剤の全体に対して、0.5~12.0質量%であってもよく、1.0~6.0質量%であってもよい。
【0045】
また、本発明の毛髪処理剤(アルカリ剤を含有する第一剤)と酸化剤を含有する第二剤とを混合して使用する場合、第一剤と第二剤の質量比は、例えば、第一剤:第二剤=1:1~1:3の範囲とすることができる。
【実施例0046】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを発明の範囲から除外するものではない。
【0047】
(実施例1~30及び比較例1~10)
<毛髪処理剤(第一剤)の製造>
水(精製水)と各原料を配合して、表1~5に示す組成(質量%)を有する実施例1~30及び比較例1~10の毛髪処理剤(第一剤)を製造した。なお、各毛髪処理剤(第一剤)はクリーム状であった。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
【表5】
【0053】
なお、表2の比較例1~6における「成分(A)以外のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸」におけるアルキル基の数、アルキル基の炭素数、及びエチレンオキサイドの平均付加モル数は、以下の通りである。
【0054】
・ジ(C12~15)パレス-10リン酸(アルキル基の数:2、アルキル基の炭素数:12~15、エチレンオキシドの平均付加モル数:10)
・ジPOE(10)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム(アルキル基の数:2、アルキル基の炭素数:12、エチレンオキシドの平均付加モル数:10)
・(C12~15)パレス-3リン酸(アルキル基の数:1、アルキル基の炭素数:12~15、エチレンオキシドの平均付加モル数:3)
・(C12~15)パレス-6リン酸(アルキル基の数:1、アルキル基の炭素数:12~15、エチレンオキシドの平均付加モル数:6)
・ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(2E.O)(アルキル基の数:1、アルキル基の炭素数:12、エチレンオキシドの平均付加モル数:2)
・ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸(4E.O)(アルキル基の数:1、アルキル基の炭素数:18、エチレンオキシドの平均付加モル数:4)
【0055】
<酸化剤を含有する第二剤の製造>
水(精製水)と各原料を配合して、表6に示す組成(質量%)を有する第二剤を製造した。
【0056】
【表6】
【0057】
<サンプル用の毛髪の準備>
長さ30cmの直毛の毛髪からなる毛束(5g)を用い、化学的処理として市販のヘアカラーを用いて、2回の染色処理を行い、さらに市販のパーマ液で、パーマネントウェーブ処理を行った。その後、処理を行った毛髪を、50℃に保ったポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム水溶液(5質量%)に一晩浸漬させ、十分に水洗したものをサンプル毛髪とした。
【0058】
<染毛処理>
次に、準備した毛髪に対して、下記(A)~(E)の染色処理を行った。
【0059】
(A)まず、サンプル用の毛髪5gに対して、実施例及び比較例の各毛髪処理剤(第一剤)と上述の第二剤を用意し、質量比で第一剤:第二剤=1:1の比率(どちらも10gの使用)により、毛髪処理剤(第一剤)と第二剤とを混合して、染毛剤を調製した。
【0060】
(B)次に、調製した染毛剤を毛髪全体に均一に塗布し、25分放置した。
【0061】
(C)そして、25分の染毛処理後、毛髪を洗い流し、シャンプーとトリートメントを行い、その後、ドライヤーを用いて毛髪を乾燥させた。
【0062】
(D)さらに、(A)の手順で調製した染毛剤を、毛髪の下半分に均一に塗布して、25分放置し、毛髪に毛髪損傷部を形成した。
【0063】
(E)そして、25分の染毛処理後、毛髪全体を洗い流し、シャンプーとトリートメントを行い、その後、ドライヤーを用いて毛髪を乾燥させた。
【0064】
<毛髪の損傷部分に対する酸化染料の浸透性評価>
上述の染毛処理を行った毛髪の損傷部分に対して、実施例及び比較例の各毛髪処理剤(第一剤)を含有する上述の染毛剤における酸化染料の浸透性について、官能評価を行った。具体的には、以下の評価基準に基づいて、専門パネラー10名による評価を行った。
【0065】
毛髪の損傷部分の発色と非損傷部分の発色が近く、発色の均一性が高い:◎
毛髪の損傷部分の発色が非損傷部分の発色よりも深いが、十分に発色の均一性が高い:〇
毛髪の損傷部分の発色が非損傷部分の発色よりも深く、発色の均一性が低い:△
毛髪の損傷部分の発色が非損傷部分の発色よりも著しく深く、発色の均一性が非常に低い:×
【0066】
なお、ここでいう「毛髪の損傷部分」とは、染色を繰り返すことにより、毛髪においてダメージを受けた部分のことをいう。
【0067】
<染色性評価>
上述の染色処理を行った毛髪に対して、実施例及び比較例の各毛髪処理剤(第一剤)を含有する上述の染毛剤が、染色処理の仕上がり感に及ぼす効果について、官能評価を行った。具体的には、以下の評価基準に基づいて、専門パネラー10名による評価を行った。
【0068】
毛髪全体が深く色付き、染色力が非常にある:◎
毛髪全体がやや深く色付き、染色力がある:〇
毛髪全体がやや浅く色付き、染色力がややない:△
毛髪全体が浅く色付き、染色力がない:×
【0069】
なお、上述の浸透性評価及び染色性評価において、専門パネラー10名が、「◎」、「〇」、「△」、及び「×」から選択した最も多い評価基準を最終評価とした。また、「◎」は特に優れていると評価し、「○」は優れていると評価した。また、「△」と「×」は不十分であると評価した。以上の結果を表1~表5に示す。
【0070】
<クリーム状の毛髪処理剤(第一剤)の保存安定性>
実施例及び比較例の各毛髪処理剤(第一剤)をアルミチューブ(吐出口が5~7mmφのチューブ状容器)に充填し、40℃で6ヶ月保存した。そして、6ヶ月保存後の第一剤の形状について、第二剤と等量混合した際の粘性および塗布操作性に基づいて、保存安定性を評価した。具体的には、以下の評価基準に基づいて評価を行った。以上の結果を表1~5に示す。
【0071】
粘性の変化が少なく、塗布操作性に優れる:◎
粘性の変化はあるが、塗布操作性に問題はない:〇
粘性が低下または上昇し、塗布操作性に問題あり:△
粘性が著しく変化し、塗布し難い:×
【0072】
表1,3~5に示すように、成分(A)を含有する実施例1~30の毛髪処理剤(第一剤)を使用した染毛剤は、毛髪の損傷部分における酸化染料の浸透が過剰になることを抑制することができ、特に、エチレンオキシドの平均付加モル数(ポリオキシエチレンの繰り返し数)が4以下である成分(A)を含有する実施例1,2,5,7においては、毛髪の損傷部分における酸化染料の過剰な浸透を効果的に抑制することができるため、所望の色調を有する(すなわち、髪全体において色調のムラのない)染毛処理を行うことができることが分かる。
【0073】
また、成分(B)を含有する実施例1~30の毛髪処理剤(第一剤)を使用した染毛剤は、毛髪全体に対する酸化染料の浸透を促進させて、染毛処理による染色力を向上することができることが分かる。
【0074】
また、毛髪処理剤(第一剤)の全体に対する液状油の含有量が1質量%以下である実施例1~30の毛髪処理剤(第一剤)においては、クリーム状の毛髪処理剤(第一剤)の粘度低下を抑制することができるため、クリーム状の毛髪処理剤(第一剤)の保存安定性を向上させることができることが分かる。
【0075】
一方、表2,表5に示すように、成分(A)を含有していない比較例1~6,9の毛髪処理剤(第一剤)を使用した染毛剤は、毛髪の損傷部分における酸化染料の浸透が過剰になることを抑制することができないため、所望の色調を有する(すなわち、髪全体において色調のムラのない)染毛処理を行うことができないことが分かる。
【0076】
また、表3,表5に示すように、成分(B)を含有していない比較例7~8,10の毛髪処理剤(第一剤)を使用した染毛剤は、毛髪全体に対する酸化染料の浸透を促進させることができず、染毛処理による染色力を向上することができないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上説明したように、本発明は、染色処理や脱色処理等の毛髪の処理において使用する毛髪処理剤として、特に有用である。