(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095080
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】冷媒を含む組成物、その使用、並びにそれを有する冷凍機及びその冷凍機の運転方法
(51)【国際特許分類】
C09K 5/04 20060101AFI20240703BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
C09K5/04 E
F25B1/00 396Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212091
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板野 充司
(72)【発明者】
【氏名】仲上 翼
(72)【発明者】
【氏名】小松 雄三
(57)【要約】
【課題】新規な低GWP混合冷媒を提供する。
【解決手段】冷媒を含む組成物であって、前記冷媒が、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))及びジフルオロメタン(R32)を、合計で冷媒全体に対して99.5質量%以上含み:HFO-1132(E)及びR32の合計に対して、HFO-1132(E)を63.0質量%~68.3質量%含む;HFO-1132(E)及びR32の合計に対して、HFO-1132(E)を70.5質量%~76.5質量%含む;又はHFO-1132(E)及びR32の合計に対して、HFO-1132(E)を81.6質量%~83.7質量%含む、組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を含む組成物であって、
前記冷媒が、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))及びジフルオロメタン(R32)を、合計で冷媒全体に対して99.5質量%以上含み:
HFO-1132(E)及びR32の合計に対して、HFO-1132(E)を63.0質量%~68.3質量%含む;
HFO-1132(E)及びR32の合計に対して、HFO-1132(E)を70.5質量%~76.5質量%含む;又は
HFO-1132(E)及びR32の合計に対して、HFO-1132(E)を81.6質量%~83.7質量%含む、
組成物。
【請求項2】
前記冷媒が、さらに、メチルアミン、アセチレン、HFO-1141、HFO-1123、HFC-143a、HFC-134a、HFO-1132a、Z-HFO-1132、HFO-1243zf、HFC-245cb、HCFC-1122、HCFC-124、CFC-1113、及び3,3,3-トリフルオロプロピンからなる群より選択される少なくとも一種を、合計で冷媒全体に対して0.5質量%以下含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
さらに、組成物全体に対して0.1質量%以下の水を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
R12、R22、R134a、R404A、R407A、R407C、R407F、R407H、R410A、R413A、R417A、R422A、R422B、R422C、R422D、R423A、R424A、R426A、R427A、R430A、R434A、R437A、R438A、R448A、R449A、R449B、R449C、R452A、R452B、R454A、R454B、R454C、R455A、R465A、R474A,R479A、R502、R507、R513A、R1234yf又はR1234zeの代替冷媒として用いられる、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の組成物を用いて冷凍サイクルを運転する工程を含む冷凍方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の組成物を作動流体として含む、冷凍機。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の組成物の、冷凍機における作動流体としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷媒を含む組成物、その使用、並びにそれを有する冷凍機及びその冷凍機の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
R410Aに代替可能な熱サイクル用作動媒体として、トリフルオロエチレン(HFO-1123)と1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132)とを含む熱サイクル用作動媒体が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、新規な低GWP混合冷媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
項1.
冷媒を含む組成物であって、
前記冷媒が、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))及びジフルオロメタン(R32)を、合計で冷媒全体に対して99.5質量%以上含み:
HFO-1132(E)及びR32の合計に対して、HFO-1132(E)を63.0質量%~68.3質量%含む;
HFO-1132(E)及びR32の合計に対して、HFO-1132(E)を70.5質量%~76.5質量%含む;又は
HFO-1132(E)及びR32の合計に対して、HFO-1132(E)を81.6質量%~83.7質量%含む、
組成物。
項2.
前記冷媒が、さらに、メチルアミン、アセチレン、HFO-1141、HFO-1123、HFC-143a、HFC-134a、HFO-1132a、Z-HFO-1132、HFO-1243zf、HFC-245cb、HCFC-1122、HCFC-124、CFC-1113、及び3,3,3-トリフルオロプロピンからなる群より選択される少なくとも一種を、合計で冷媒全体に対して0.5質量%以下含む、項1に記載の組成物。
項3.
さらに、組成物全体に対して0.1質量%以下の水を含む、項1又は2に記載の組成物。項4.
R12、R22、R134a、R404A、R407A、R407C、R407F、R407H、R410A、R413A、R417A、R422A、R422B、R422C、R422D、R423A、R424A、R426A、R427A、R430A、R434A、R437A、R438A、R448A、R449A、R449B、R449C、R452A、R452B、R454A、R454B、R454C、R455A、R465A、R474A,R479A、R502、R507、R513A、R1234yf又はR1234zeの代替冷媒として用いられる、項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
項5.
項1~3のいずれか1項に記載の組成物を用いて冷凍サイクルを運転する工程を含む冷凍方法。
項6.
項1~3のいずれか1項に記載の組成物を作動流体として含む、冷凍機。
項7.
項1~3のいずれか1項に記載の組成物の、冷凍機における作動流体としての使用。
【発明の効果】
【0006】
本開示の冷媒は、低GWPである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、以下に説明する各種の混合冷媒が、上記特性を有することを見出した。
【0008】
本開示は、かかる知見に基づきさらに研究を重ねた結果完成されたものである。本開示は、以下の実施形態を含む。
<用語の定義>
本明細書において用語「冷媒」には、ISO817(国際標準化機構)で定められた、冷媒の種類を表すRで始まる冷媒番号(ASHRAE番号)が付された化合物が少なくとも含まれ、さらに冷媒番号が未だ付されていないとしても、それらと同等の冷媒としての特性を有するものが含まれる。冷媒は、化合物の構造の面で、「フルオロカーボン系化合物」と「非フルオロカーボン系化合物」とに大別される。「フルオロカーボン系化合物」には、クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)及びハイドロフルオロカーボン(HFC)が含まれる。
【0009】
本明細書において、用語「冷媒を含む組成物」には、(1)冷媒そのもの(冷媒の混合物を含む)と、(2)その他の成分をさらに含み、少なくとも冷凍機油と混合することにより冷凍機用作動流体を得るために用いることのできる組成物と、(3)冷凍機油を含有する冷凍機用作動流体とが少なくとも含まれる。本明細書においては、これら三態様のうち、(2)の組成物のことを、冷媒そのもの(冷媒の混合物を含む)と区別して「冷媒組成物」と表記する。また、(3)の冷凍機用作動流体のことを「冷媒組成物」と区別して「冷凍機油含有作動流体」と表記する。
【0010】
本明細書において、用語「代替」は、第一の冷媒を第二の冷媒で「代替」するという文脈で用いられる場合、第一の類型として、第一の冷媒を使用して運転するために設計された機器において、必要に応じてわずかな部品(冷凍機油、ガスケット、パッキン、膨張弁、ドライヤその他の部品のうち少なくとも一種)の変更及び機器調整のみを経るだけで、第二の冷媒を使用して、最適条件下で運転することができることを意味する。すなわち、この類型は、同一の機器を、冷媒を「代替」して運転することを指す。この類型の「代替」の態様としては、第二の冷媒への置き換えの際に必要とされる変更乃至調整の度合いが小さい順に、「ドロップイン(drop in)代替」、「ニアリー・ドロップイン(nealy drop in)代替」及び「レトロフィット(retrofit)」があり得る。
【0011】
第二の類型として、第二の冷媒を用いて運転するために設計された機器を、第一の冷媒の既存用途と同一の用途のために、第二の冷媒を搭載して用いることも、用語「代替」に含まれる。この類型は、同一の用途を、冷媒を「代替」して提供することを指す。
【0012】
本明細書において用語「冷凍機」とは、物あるいは空間の熱を奪い去ることにより、周囲の外気よりも低い温度にし、かつこの低温を維持する装置全般のことをいう。言い換えれば、冷凍機は温度の低い方から高い方へ熱を移動させるために、外部からエネルギーを得て仕事を行いエネルギー変換する変換装置のことをいう。
【0013】
本明細書において冷媒が「毒性区分A」であるとは、米国ANSI/ASHRAE34-2019規格に従い混合冷媒の許容濃度(Occupational Exposure Limits(OEL))が、400ppm以上であることを意味する。また、「毒性区分B」であるとは、米国ANSI/ASHRAE34-2019規格に従い混合冷媒の許容濃度が、400ppm未満であることを意味する。
【0014】
本発明において、混合冷媒の許容濃度(Occupational Exposure Limits (OEL))は、特に断りのない限り、中心組成で評価した値を指す。ただし、各冷媒のOELは以下の通りとして算出する。
HFO-1132(E):350ppm
R32:1000ppm
HFO-1132a:500ppm
R124:1000ppm
【0015】
混合冷媒の中心組成におけるOELは、以下の式により算出する。
【0016】
【数1】
ただし、a
nは、各冷媒化合物のOELを、mf
nは、各冷媒化合物のモル分率を、それぞれ示す。
【0017】
本明細書において記載される圧力は、断りの無い場合は、単位を絶対圧とするものである。
【0018】
1.冷媒
本開示の冷媒は、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))及びジフルオロメタン(R32)を、合計で冷媒全体に対して99.5質量%以上含む。
【0019】
本開示の冷媒は、下記(a)~(c)のいずれかであってもよい。
(a)HFO-1132(E)及びR32の合計に対して、HFO-1132(E)を63.0質量%~68.3質量%含む;
(b)HFO-1132(E)及びR32の合計に対して、HFO-1132(E)を70.5質量%~76.5質量%含む;又は
(c)HFO-1132(E)及びR32の合計に対して、HFO-1132(E)を81.6質量%~83.7質量%含む。
【0020】
本開示の冷媒は、低GWP混合冷媒である。
【0021】
本開示の冷媒は、HFO-1132(E)及びR32の合計に対して、HFO-1132(E)を63.0質量%~68.3質量%含むとき、GWP250以下、ASHRAE毒性区分A、かつ、対R410A冷凍能力比108%以上となる。
【0022】
本開示の冷媒は、HFO-1132(E)及びR32の合計に対して、HFO-1132(E)を70.5質量%~76.5%含むとき、GWP200以下、ASHRAE毒性区分A、かつ凝縮グライドがR410Aと同じ0.12Kであるか、又は0.12K以下となる。
【0023】
本開示の冷媒は、HFO-1132(E)及びR32の合計に対して、HFO-1132(E)を81.6質量%~83.7質量%含むとき、GWP125以下、かつASHRAE毒性区分Aとなる。
【0024】
本開示の冷媒は、上記の特性や効果を損なわない範囲内で、HFO-1132(E)及びR32に加えて、さらに追加的な冷媒を含有していてもよい。この点で、ある態様においては、本開示の冷媒が、HFO-1132(E)及びR32の合計を、冷媒全体に対して99.75質量%以上含むことが好ましく、99.9質量%以上含むことがより好ましく、99.999質量%含むことがさらに好ましく、99.9999質量%以上含むことが最も好ましい。本開示の冷媒は、HFO-1132(E)及びR32のみから実質的になるものであってもよく、この場合、本開示の冷媒は、HFO-1132(E)及びR32、並びに不可避的不純物のみからなるものであってもよい。本開示の冷媒は、HFO-1132(E)及びR32のみからなるものであってもよい。
【0025】
追加的な冷媒としては、特に限定されず、幅広く選択できる。混合冷媒は、追加的な冷媒として、一種を単独で含んでいてもよいし、二種以上を含んでいてもよい。
【0026】
追加的な冷媒としては、メチルアミン、アセチレン、HFO-1141、HFO-1123、HFC-143a、HFC-134a、HFO-1132a、Z-HFO-1132、HFO-1243zf、HFC-245cb、HCFC-1122、HCFC-124、CFC-1113、3,3,3-トリフルオロプロピン等が挙げられる。
【0027】
2. 冷媒組成物
本開示の冷媒組成物は、本開示の冷媒を少なくとも含み、本開示の冷媒と同じ用途のために使用することができる。また、本開示の冷媒組成物は、さらに少なくとも冷凍機油と混合することにより冷凍機用作動流体を得るために用いることができる。
本開示の冷媒組成物は、本開示の冷媒に加え、さらに少なくとも一種のその他の成分を含有する。本開示の冷媒組成物は、必要に応じて、以下のその他の成分のうち少なくとも一種を含有していてもよい。上述の通り、本開示の冷媒組成物を、冷凍機における作動流体として使用するに際しては、通常、少なくとも冷凍機油と混合して用いられる。したがって、本開示の冷媒組成物は、好ましくは冷凍機油を実質的に含まない。具体的には、本開示の冷媒組成物は、冷媒組成物全体に対する冷凍機油の含有量が好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下である。
【0028】
2.1 水
本開示の冷媒組成物は微量の水を含んでもよい。冷媒組成物における含水割合は、冷媒組成物全体に対して、0.1質量%以下とすることが好ましく、0.05質量%以下とすることがより好ましく、0.01質量%以下とすることがさらに好ましい。冷媒組成物が微量の水分を含むことにより、冷媒中に含まれ得る不飽和のフルオロカーボン系化合物の分子内二重結合が安定化され、また、不飽和のフルオロカーボン系化合物の酸化も起こりにくくなるため、冷媒組成物の安定性が向上する。
【0029】
2.2 トレーサー
トレーサーは、本開示の冷媒組成物が希釈、汚染、その他何らかの変更があった場合、その変更を追跡できるように検出可能な濃度で本開示の冷媒組成物に添加される。
【0030】
本開示の冷媒組成物は、トレーサーとして、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0031】
トレーサーとしては、特に限定されず、一般に用いられるトレーサーの中から適宜選択することができる。
【0032】
トレーサーとしては、例えば、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、フルオロカーボン、重水素化炭化水素、重水素化ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、フルオロエーテル、臭素化化合物、ヨウ素化化合物、アルコール、アルデヒド、ケトン、亜酸化窒素(N2O)等が挙げられる。トレーサーとしては、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、フルオロカーボン及びフルオロエーテルが特に好ましい。
【0033】
トレーサーとしては、以下の化合物が好ましい。
FC-14(テトラフルオロメタン、CF4)
HCC-40(クロロメタン、CH3Cl)
HFC-23(トリフルオロメタン、CHF3)
HFC-41(フルオロメタン、CH3F)
HFC-125(ペンタフルオロエタン、CF3CHF2)
HFC-134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン、CF3CH2F)
HFC-134(1,1,2,2-テトラフルオロエタン、CHF2CHF2)
HFC-143(1,1,2-トリフルオロエタン、CHF2CH2F)
HFC-152(1,2-ジフルオロエタン、CH2FCH2F)
HFC-161(フルオロエタン、CH3CH2F)
HFC-245fa(1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、CF3CH2CHF2)
HFC-236fa(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、CF3CH2CF3)
HFC-236ea(1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン、CF3CHFCHF2)
HFC-227ea(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、CF3CHFCF3)
HCFC-22(クロロジフルオロメタン、CHClF2)
HCFC-31(クロロフルオロメタン、CH2ClF)
HFE-125(トリフルオロメチル-ジフルオロメチルエーテル、CF3OCHF2)
HFE-134a(トリフルオロメチル-フルオロメチルエーテル、CF3OCH2F)
HFE-143a(トリフルオロメチル-メチルエーテル、CF3OCH3)
HFE-227ea(トリフルオロメチル-テトラフルオロエチルエーテル、CF3OCHFCF3)
HFE-236fa(トリフルオロメチル-トリフルオロエチルエーテル、CF3OCH2CF3)
【0034】
本開示の冷媒組成物は、トレーサーを合計で、冷媒組成物全体に対して、約10重量百万分率(ppm)以上含んでいてもよい。また、本開示の冷媒組成物は、トレーサーを合計で、冷媒組成物全体に対して、約1000ppm以下含んでいてもよい。本開示の冷媒組成物は、トレーサーを合計で、冷媒組成物全体に対して、好ましくは約30ppm以上、より好ましくは約50ppm以上含んでいてもよい。本開示の冷媒組成物は、トレーサーを合計で、冷媒組成物全体に対して、好ましくは約500ppm以下含んでいてもよく、約300ppm以下含んでいてもよい。
【0035】
2.3 紫外線蛍光染料
本開示の冷媒組成物は、紫外線蛍光染料として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0036】
紫外線蛍光染料としては、特に限定されず、一般に用いられる紫外線蛍光染料の中から適宜選択することができる。
【0037】
紫外線蛍光染料としては、例えば、ナフタルイミド、クマリン、アントラセン、フェナントレン、キサンテン、チオキサンテン、ナフトキサンテン及びフルオレセイン、並びにこれらの誘導体が挙げられる。紫外線蛍光染料としては、ナフタルイミド及びクマリンのいずれか又は両方が特に好ましい。
【0038】
2.4 安定剤
本開示の冷媒組成物は、安定剤として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0039】
安定剤としては、特に限定されず、一般に用いられる安定剤の中から適宜選択することができる。
【0040】
安定剤としては、例えば、ニトロ化合物、エーテル類及びアミン類等が挙げられる。
【0041】
ニトロ化合物としては、例えば、ニトロメタン及びニトロエタン等の脂肪族ニトロ化合物、並びにニトロベンゼン及びニトロスチレン等の芳香族ニトロ化合物等が挙げられる。
【0042】
エーテル類としては、例えば、1,4-ジオキサン等が挙げられる。
【0043】
アミン類としては、例えば、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルアミン、ジフェニルアミン等が挙げられる。
【0044】
その他にも、ブチルヒドロキシキシレン、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0045】
安定剤の含有割合は、冷媒全体に対して、0.01質量%以上とすることが好ましく、0.05質量%以上とすることがより好ましい。安定剤の含有割合は、冷媒全体に対して、5質量%以下とすることが好ましく、2質量%以下とすることがより好ましい。
【0046】
2.5 重合禁止剤
本開示の冷媒組成物は、重合禁止剤として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0047】
重合禁止剤としては、特に限定されず、一般に用いられる重合禁止剤の中から適宜選択することができる。
【0048】
重合禁止剤としては、例えば、4-メトキシ-1-ナフトール、ヒドロキノン、ヒドロキノンメチルエーテル、ジメチル-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0049】
重合禁止剤の含有割合は、冷媒全体に対して、0.01質量%以上とすることが好ましく、0.05質量%以上とすることがより好ましい。重合禁止剤の含有割合は、冷媒全体に対して、5質量%以下とすることが好ましく、2質量%以下とすることがより好ましい。
【0050】
3. 冷凍機油含有作動流体
本開示の冷凍機油含有作動流体は、本開示の冷媒又は冷媒組成物と、冷凍機油とを少なくとも含み、冷凍機における作動流体として用いられる。具体的には、本開示の冷凍機油含有作動流体は、冷凍機の圧縮機において使用される冷凍機油と、冷媒又は冷媒組成物とが互いに混じり合うことにより得られる。冷凍機油含有作動流体には冷凍機油は一般に10質量%以上含まれる。冷凍機油含有作動流体には冷凍機油は一般に50質量%以下含まれる。
【0051】
3.1 冷凍機油
本開示の組成物は、冷凍機油として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0052】
冷凍機油としては、特に限定されず、一般に用いられる冷凍機油の中から適宜選択することができる。その際には、必要に応じて、前記混合物との相溶性(miscibility)及び前記混合物の安定性等を向上する作用等の点でより優れている冷凍機油を適宜選択することができる。
【0053】
冷凍機油の基油としては、例えば、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリオールエステル(POE)及びポリビニルエーテル(PVE)からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
【0054】
冷凍機油は、基油に加えて、さらに添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、酸化防止剤、極圧剤、酸捕捉剤、酸素捕捉剤、銅不活性化剤、防錆剤、油性剤及び消泡剤からなる群より選択される少なくとも一種であってもよい。
【0055】
冷凍機油として、40℃における動粘度が5cSt以上であるものが、潤滑の点で好ましい。
また、冷凍機油として、40℃における動粘度が400cSt以下であるものが、潤滑の点で好ましい。
【0056】
本開示の冷凍機油含有作動流体は、必要に応じて、さらに少なくとも一種の添加剤を含んでもよい。添加剤としては例えば以下の相溶化剤等が挙げられる。
【0057】
3.2 相溶化剤
本開示の冷凍機油含有作動流体は、相溶化剤として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0058】
相溶化剤としては、特に限定されず、一般に用いられる相溶化剤の中から適宜選択することができる。
【0059】
相溶化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレングリコールエーテル、アミド、ニトリル、ケトン、クロロカーボン、エステル、ラクトン、アリールエーテル、フルオロエーテルおよび1,1,1-トリフルオロアルカン等が挙げられる。相溶化剤としては、ポリオキシアルキレングリコールエーテルが特に好ましい。
【0060】
本開示の冷媒、冷媒組成物、及び冷凍機油含有作動流体は、R12、R22、R134a、R404A、R407A、R407C、R407F、R407H、R410A、R413A、R417A、R422A、R422B、R422C、R422D、R423A、R424A、R426A、R427A、R430A、R434A、R437A、R438A、R448A、R449A、R449B、R449C、R452A、R452B、R454A、R454B、R454C、R455A、R465A、R474A,R479A、R502、R507、R513A、R1234yf又はR1234zeの代替冷媒として用いることができる。
【0061】
4.冷凍機の運転方法
本開示の冷凍機の運転方法は、本開示の冷媒を用いて冷凍機を運転する方法である。
【0062】
具体的には、本開示の冷凍機の運転方法は、本開示の冷媒を冷凍機において循環させる工程を含む。
【0063】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例0064】
以下に、実施例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本開示は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0065】
HFO-1132(E)及びR32、並びにHFO-1132a及びR124を、これらの総和を基準として、表1及び2にそれぞれ示した質量%で混合した混合冷媒を調製した。
【0066】
これらの各混合冷媒について、表1~3に示す通り、各種物性を評価した。
【0067】
GWP、COP、冷凍能力、及び凝縮グライド
HFO-1132(E)のGWPは1とし、R32、並びにHFO-1132a及びR124のGWPは、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)第4次報告書の値に基づいて、混合冷媒のGWPを評価した。また、混合冷媒のCOP、冷凍能力、及び凝縮グライドは、National Institute of Science and Technology(NIST)Reference Fluid Thermodynamic and Transport Properties Database(Refprop 10.0)を使い、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル理論計算を実施することにより求めた。なお、HFO-1132(E)の物性データについては実測値により求めた。
蒸発温度 5℃
凝縮温度 45℃
過熱温度 5K
過冷却温度 5K
圧縮機効率 70%
【0068】
以下の表中、「COP比」及び「冷凍能力比」とは、R410Aに対する割合(%)を示す。
【0069】
許容濃度
混合冷媒の許容濃度(Occupational Exposure Limits (OEL))は、中心組成で評価した値を指す。ただし、各冷媒のOELは以下の通りとして算出する。
HFO-1132(E):350ppm
R32:1000ppm
HFO-1132a:500ppm
R124:1000ppm
【0070】
混合冷媒の中心組成におけるOELは、以下の式により算出する。
【0071】
【数2】
ただし、a
nは、各冷媒化合物のOELを、mf
nは、各冷媒化合物のモル分率を、それぞれ示す。
【0072】
毒性区分
冷媒が「毒性区分A」であるとは、米国ANSI/ASHRAE34-2019規格に従い混合冷媒の許容濃度(Occupational Exposure Limits(OEL))が、400ppm以上であることを意味する。また、「毒性区分B」であるとは、米国ANSI/ASHRAE34-2019規格に従い混合冷媒の許容濃度が、400ppm未満であることを意味する。
【0073】
【0074】
【0075】
表1及び表2より、本開示の冷媒は、HFO-1132(E)及びR32の合計に対して、HFO-1132(E)を63.0質量%~68.3質量%含むとき、GWP250以下、ASHRAE毒性区分A、かつ、対R410A冷凍能力比108%以上となることが判る。
【0076】
表1及び表2より、本開示の冷媒は、HFO-1132(E)及びR32の合計に対して、HFO-1132(E)を70.5質量%~76.5%含むとき、GWP200以下、ASHRAE毒性区分A、かつ凝縮グライドがR410Aと同じ0.12Kであるか、又は0.12K以下となることが判る。
【0077】
表1及び表2より、本開示の冷媒は、HFO-1132(E)及びR32の合計に対して、HFO-1132(E)を81.6質量%~83.7質量%含むとき、GWP125以下、かつASHRAE毒性区分Aとなることが判る。
【0078】
さらに、本開示の冷媒は、以下の条件の安定性試験において、表3に示す通り、所定割合の水分を含んでいる場合、固形物の生成が抑制されることが判る。
【0079】
<試料の調整>
表3に示すHFO-1132(E)及びR32を含む組成物に対して所定量の水を添加することで、HFO-1132(E)及びR32を含む組成物に対する水の含有量が10、100、1000、2000質量ppmとなるように調節した。このように水の含有量を上記のように調節したHFO-1132(E)及びR32を含む組成物を容器に密閉し、容器内に酸素を吹き込むことで、HFO-1132(E)及びR32を含む組成物に対する酸素の割合をHFO-1132(E)及びR32を含む組成物を基準として表3に示す通りとなるように調節した。以上のようにして、水分量及び酸素量が所定の割合で調節された表3に示す各フルオロエチレン組成物を得た。
【0080】
前記で使用したHFO-1132(E)及びR32を含む組成物に水を添加しなかったこと、あるいは酸素を添加しなかったこと以外は前記例と同様の方法で、水を含まず、酸素量が所定の割合で調節された表3に示す各組成物を得た。
【0081】
<評価方法>
(HFO-1132(E)及びR32を含む組成物の安定性試験)
上記実施例及び比較例で得られた組成物の各々について、以下のように安定性試験を行った。片側を溶封済みのガラス製チューブ(ID8mmΦ×OD12mmΦ×L300mm)に、組成物をHFO-1132(E)の含有量が0.01molとなるように加えた。チューブは溶封により密閉状態とした。このチューブを150℃の雰囲気下の恒温槽内に静置させ、この状態で1週間保持した。その後、恒温槽からチューブを取り出して冷却し、外観を確認するとともにチューブ内のガス中の酸分(酸成分)の分析を行うことで、組成物の安定性を評価した。
【0082】
組成物の安定性試験において、ガス中の酸分の分析は次のような方法で行った。上記冷却後のチューブを、液体窒素を用いて、チューブ内に滞留するガスを完全に凝固させた。その後、チューブを開封し、徐々に解凍してガスをテドラーバッグに回収した。このテドラーバッグに純水5gを注入し、回収ガスとよく接触させながら酸分を純水に抽出するようにした。抽出液をイオンクロマトグラフィーにて検出して、フッ化物イオン(F-)の含有量(質量ppm)を測定した。
【0083】
【0084】
以上の結果より、冷媒組成物が微量の水分を含むことにより、冷媒組成物の安定性が向上することが判る。
前記冷媒が、さらに、メチルアミン、アセチレン、HFO-1141、HFO-1123、HFC-143a、HFC-134a、HFO-1132a、Z-HFO-1132、HFO-1243zf、HFC-245cb、HCFC-1122、HCFC-124、CFC-1113、及び3,3,3-トリフルオロプロピンからなる群より選択される少なくとも一種を、合計で冷媒全体に対して0.5質量%以下含む、請求項1に記載の組成物。
R12、R22、R134a、R404A、R407A、R407C、R407F、R407H、R410A、R413A、R417A、R422A、R422B、R422C、R422D、R423A、R424A、R426A、R427A、R430A、R434A、R437A、R438A、R448A、R449A、R449B、R449C、R452A、R452B、R454A、R454B、R454C、R455A、R465A、R474A,R479A、R502、R507、R513A、R1234yf又はR1234zeの代替冷媒として用いられる、請求項1又は2に記載の組成物。