(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095081
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】画像形成装置及び画像形成装置の階調補正方法
(51)【国際特許分類】
H04N 1/407 20060101AFI20240703BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240703BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240703BHJP
B41J 2/525 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
H04N1/407 780
G03G21/00 510
G03G15/00 303
B41J2/525
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212092
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】永山 勝浩
【テーマコード(参考)】
2C262
2H270
5C077
【Fターム(参考)】
2C262AA02
2C262AA04
2C262AA24
2C262BB03
2C262BB06
2C262BB27
2C262BC01
2C262EA04
2C262EA13
2C262FA13
2C262GA02
2H270LA14
2H270LA20
2H270LB01
2H270LD08
2H270MA06
2H270MB11
2H270MB25
2H270MB28
2H270MB29
2H270MB32
2H270MB36
2H270MB41
2H270MB43
2H270MF13
2H270RB03
2H270RC08
2H270RC09
2H270RC18
2H270ZC03
2H270ZC08
5C077MM27
5C077NN08
5C077PP15
5C077PP47
5C077PQ20
5C077PQ23
(57)【要約】
【課題】階調を補正する処理に際して、出力可能な階調値から出力に用いる階調値を適切に選択する技術を提供すること。
【解決手段】制御部と、記憶部と、画像形成部と、画像読取部とを備え、前記記憶部は、第1階調数の種類の階調値の中から、前記第1階調数よりも少ない第2階調数の種類の階調値の選択に用いる情報を複数記憶し、前記制御部は、前記複数の情報から選択した情報を用いて、テストパターン画像を、前記画像形成部を介して記録媒体に形成し、前記画像読取部による、前記テストパターン画像の読み取り結果に基づき、出力階調値を補正する場合の補正量を算出し、前記補正量の絶対値が所定の閾値以下となる情報を、階調補正処理において参照する情報として設定する画像形成装置。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部と、記憶部と、画像形成部と、画像読取部とを備え、
前記記憶部は、第1階調数の種類の階調値の中から、前記第1階調数よりも少ない第2階調数の種類の階調値の選択に用いる情報を複数記憶し、
前記制御部は、
前記複数の情報から選択した情報を用いて、テストパターン画像を、前記画像形成部を介して記録媒体に形成し、
前記画像読取部による、前記テストパターン画像の読み取り結果に基づき、出力階調値を補正する場合の補正量を算出し、
前記補正量の絶対値が所定の閾値以下となる情報を、階調補正処理において参照する情報として設定する
画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成部は、1つのドットを表現するために用いられる複数個の画素のサブマトリクスを形成し、当該サブマトリクスを組み合わせたマトリクスを形成し、当該マトリクスに対する画素の埋め方に応じて、前記第1階調数の種類の階調を表現し、
前記情報は、前記第2階調数の階調値に対応する前記第1階調数の階調値を算出するために用いられる関数のパラメータを含む、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、設定した前記情報により選択される階調値を用いた場合における、前記テストパターン画像の読み取り結果に基づき、前記出力階調値を補正する処理を実行する、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記補正量が前記所定の閾値を超える場合、前記記憶部から前記情報を選択し、選択した前記情報により選択される階調値を用いて前記テストパターン画像を前記記録媒体に形成し、前記画像読取部を読み取ることにより、補正量を算出する、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、目標濃度値と、読み取った濃度値との差異に基づき、前記複数の情報から1の情報を選択する、請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記記憶部は、複数の目標濃度値のパターンを記憶し、
前記制御部は、
前記画像読取部を介して、前記記録媒体に形成された前記テストパターン画像の濃度を取得し、
取得した濃度と、前記複数の目標濃度値のパターンのうち、1のパターンに含まれる目標濃度値とを比較し、当該1のパターンに含まれる目標濃度値と同じ濃度が得られるように、前記出力階調値を補正する処理を実行する、
請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
第1階調数の種類の階調値の中から、前記第1階調数よりも少ない第2階調数の種類の階調値の選択に用いる情報を複数記憶し、
前記複数の情報から選択した情報を用いて、テストパターン画像を記録媒体に形成し、
前記テストパターン画像の読み取り結果に基づき、出力階調値を補正する場合の補正量を算出し、
前記補正量の絶対値が所定の閾値以下となる情報を、階調補正処理において参照する情報として設定する、
画像形成装置の階調補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、所望の画質が得られるように、所定の色空間(例えば、CMYK色空間)を構成する各色の階調ごとに、制御パラメータの設定値が予め設定されている。一方、画質は、環境(温度や湿度等)の変化や装置の経年劣化等の影響を受けて変化し易い。従って、所望の画質を維持させるためには、定期的にキャリブレーション及びプロセスコントロール等を行うことにより、制御パラメータの設定値を補正する等の必要があった。
【0003】
画像形成装置の画質を維持させるための技術として、例えば、記録媒体上に形成したキャリブレーション用画像を読み取ることで得られたキャリブレーション用画像情報と、読み取られた原稿の原稿画像情報とから、目標とする画像出力特性を変更して補正用データを作成する技術、およびキャリブレーション機能で階調性の変化を、LUT(ルックアップテーブル)を微調整して合わせこむ技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、試験データに対応した画像がスキャナ部により読み取られ、その読取結果に基づき、入力データのいくつかの階調値に関して、プリンタ出力部に与えるべき適正な階調値に基づいて予備階調補正曲線を作成し、この予備階調補正曲線と、予め記憶させられている複数種類の曲線パターンとのパターンマッチングを行い、最も適合する曲線パターンを詳細な階調補正曲線として設定する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、複数のテストパターンを形成し、テストパターンに階調処理を行ってパラメータ毎に転写材上の異なる領域に形成し、形成されたテストパターンを転写材上に画像形成し、形成された転写材上の画像を読み取りデジタル画像データに変換し、読み取った値に基づいて階調処理パラメータを補正し、複数組の画像形成される転写材上のテストパターン領域に対応した設定値中からその領域に対応する設定値を選択し、その選択された設定値を用いて階調処理する技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-272772号公報
【特許文献2】特開平7-162682号公報
【特許文献3】特開2002-335401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、例えば、階調を補正する処理に際して、出力可能な階調値から出力に用いる階調値を適切に選択する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本開示の画像形成装置は、制御部と、記憶部と、画像形成部と、画像読取部とを備え、前記記憶部は、第1階調数の種類の階調値の中から、前記第1階調数よりも少ない第2階調数の種類の階調値の選択に用いる情報を複数記憶し、前記制御部は、前記複数の情報から選択した情報を用いて、テストパターン画像を、前記画像形成部を介して記録媒体に形成し、前記画像読取部による、前記テストパターン画像の読み取り結果に基づき、出力階調値を補正する場合の補正量を算出し、前記補正量の絶対値が所定の閾値以下となる情報を、階調補正処理において参照する情報として設定することを特徴とする。
【0007】
また、本開示の画像形成装置の階調補正方法は、第1階調数の種類の階調値の中から、前記第1階調数よりも少ない第2階調数の種類の階調値の選択に用いる情報を複数記憶し、前記複数の情報から選択した情報を用いて、テストパターン画像を記録媒体に形成し、前記テストパターン画像の読み取り結果に基づき、出力階調値を補正する場合の補正量を算出し、前記補正量の絶対値が所定の閾値以下となる情報を、階調補正処理において参照する情報として設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、例えば、階調を補正する処理に際して、出力可能な階調値から出力に用いる階調値を適切に選択する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態における画像形成装置の外観を示す図である。
【
図2】第1実施形態における画像形成装置の機能構成を示す図である。
【
図3】第1実施形態における画像形成部の詳細な構成を示す図である。
【
図4】第1実施形態におけるテストパターン画像の例を示す図である。
【
図5】第1実施形態における目標値情報のデータ構成の例を示す図である。
【
図6】第1実施形態における基準ガンマ情報のデータ構成の例を示す図である。
【
図7】第1実施形態におけるディザ階調値情報のデータ構成の例を示す図である。
【
図8】第1実施形態における階調補正情報のデータ構成の例を示す図である。
【
図9】第1実施形態における取得濃度値情報のデータ構成の例を示す図である。
【
図10】第1実施形態における取得トナー量情報のデータ構成の例を示す図である。
【
図11】第1実施形態における主な処理の流れを示すフロー図である。
【
図12】第1実施形態における第1プロセスコントロール処理の流れを示すフロー図である。
【
図13】第1実施形態における第2プロセスコントロール処理の流れを示すフロー図である。
【
図14】第1実施形態における動作例を示す図である。
【
図15】第1実施形態における動作例を示す図である。
【
図16】第1実施形態における動作例を示す図である。
【
図17】第1実施形態における動作例を示す図である。
【
図19】第2実施形態における目標濃度値のパターンの例を示す図である。
【
図20】ディザ処理におけるマトリクスの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本開示を実施するための一実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本開示を説明するための一例であり、特許請求の範囲に記載した発明の技術的範囲が、以下の記載に限定されるものではない。
【0011】
[1.第1実施形態]
パソコン等のデジタル機器において、フルカラーは一般的に、16777216色とされている。これをR/G/Bの各チャンネルの階調数で表現すると、R/G/Bの各チャンネルの階調数は、各色、256階調(8bit)となり、R/G/Bの各チャンネルの階調値の組み合わせにより、フルカラーの各色が再現される。そのため、プリンタ等の画像形成装置は、他の装置から、入力される色(入力デバイスカラー)の情報として、R/G/B各色256階調で示された色の情報が入力される。
【0012】
また、画像形成装置の入力デバイスカラーがR/G/B各色256階調で示された色の情報が入力されることから、画像形成装置が出力する色(出力デバイスカラー)も、C/M/Y各色256階調で表現されることが一般的となっている。これは、プリント処理速度の高速化や必要とされるメモリの削減等を理由とするものである。なお、KはUCR(Under color removal)処理等で生成されるため、C/M/Y同様に256階調で表現される。なお、本実施形態では、画像形成装置が出力する色の階調値を、出力階調値と記載する。
【0013】
ここで、電子写真方式の画像形成装置の画像処理には、階調性を持たせる為に、擬似階調表現を行うための処理として、中間調処理が採用されている。中間調処理の代表的な処理として、ディザ処理がある。ディザ処理は、出力階調値に応じて、隣接する複数の画素から構成されたマトリクスの所定の位置に、画素を書き込む(トナーやインクを乗せるようにする)ことで、当該マトリクスに濃淡差を持たせて、階調を再現する処理である。隣接する複数の画素から構成されたマトリクスは、出力される1つのドットと対応する。すなわち、ディザ処理は、複数個の画素を、1つのドットに対応するマトリクスとして形成し、マトリクスの中で画素を1つずつ埋めることで階調表現を行う方法である。
【0014】
図20は、141.4LPI(600dpi/1bit、LPIはLine Par Inchの略)の画素構成を示す図である。この場合、
図20(a)に示すように、1ドットを18画素で構成し、これを1つのマトリクスとすることができる。なお、
図20(a)に示した数字は、画素を埋める際の順番を示す。一般的な画像形成装置では、画素を埋めるか否かの何れかしか選択できず、1つの画素に対する情報量は、1bitしかない。そのため、18画素で構成された1つのマトリクスは、
図20(a)に示した順番による画素の埋め方は19通りであり、19階調しか再現できない。
【0015】
そこで、再現可能な階調数を拡張させるため、
図20(a)に示したマトリクスをサブマトリクスとし、
図20(b)に示すように、例えば、36個(6×6)のサブマトリクスを組み合わせて1つのマトリクスを構成する。マトリクスには、648画素(1マトリクスあたり18画素×36サブマトリクス)が含まれるため、画素の埋め方は649通りとなる。これにより、1マトリクスにより再現できる階調数は649階調となる。本実施形態では、ディザ処理により再現可能な階調の階調値を、ディザ階調値という。
【0016】
なお、ディザ処理は、再現されるディザスクリーンに応じてマトリクスの構成が変化するので、構成されるマトリクスに応じて、再現できる階調数が変化する。
【0017】
このように、
図20(b)に示したマトリクスが構成されてディザ処理が行われる場合、当該ディザ処理により、画像形成装置が再現可能な階調数(ディザ階調数)は649階調となる。一方、既に説明したように、出力デバイスカラーの階調数は256階調である。そのため、出力可能な649階調(第1階調数)の階調値から、出力に用いる256階調(第2階調数)の階調値を選択する必要がある。つまり、649階調を256階調にするため、393階調を間引く必要がある。
【0018】
階調を間引く方法には、例えば、以下の方法がある。
(1)出力する階調数に応じて出力可能な階調を均等に間引く方法
出力する階調数に応じて出力可能な階調を均等に間引く方法は、画像形成装置10が再現可能な階調であるディザ階調値から、単純比例計算により、使用しないディザ階調値を間引く方法である。例えば、出力階調値が色成分毎に8bit(256階調)で表され、ディザ階調値が9bit(512階調)で表される場合、ディザ処理による階調数を1/512階調ずつ間引き、256階調を再現する。この場合、ディザ階調値から、1、3、5、・・・511(奇数の階調値)が間引かれる。この結果、0、1、2・・・、255の出力階調値に対して、0、2、4、・・・、510のディザ階調値が割り当てられる。
(2)出力画像の階調性が理想カーブとなるようにランダムに階調を間引く方法
出力画像の階調性が理想カーブとなるようにランダムに階調を間引く方法は、濃度レベルに応じて、ディザ処理による階調から間引きする階調の刻みを変更する方法である。出力画像の階調性が理想カーブとなるようにランダムに階調を間引く処理は、リニアリティー調整とも呼ばれる。リニアリティー調整においては、出力階調値と、出力に用いるディザ階調値との関係の特性が規定され、その特性に応じて、出力可能なディザ階調値から出力に用いるディザ階調値が選択され、選択されなかったディザ階調値は間引かれる。なお、特性を示す値(パラメータ)は、基準ガンマとも呼ばれる。すなわち、画像形成装置10は、予め、複数の基準ガンマを設けている。
【0019】
なお、上述の(1)又は(2)の何れかの方法が選択された場合であっても、出力可能なディザ階調値から間引かれたディザ階調値は、出力時には使用できない。
【0020】
また、一般的には、画像形成装置は、リニアリティー調整により選択された256階調をベースに、キャリブレーションやプロセスコントロール(中間調プロコン)を行う。これにより、画像形成装置は、出力階調値と、補正後の出力階調値とを対応付けた階調補正テーブル(LUT、ルックアップテーブル)を変更して、出力する階調性の微調整(階調補正)を行う。
【0021】
しかしながら、画像形成装置の特性が、当該画像形成装置のエンジン特性として固有設定されていると、大きな環境変化が起きた場合に適切に対応できず、適切なキャリブレーションやプロセスコントロールができなくなる場合がある。具体的には、画像形成装置の特性が固定設定となることで、当該画像形成装置が出力可能なディザ階調値から間引きされるディザ階調値が固定となる。このような状態で、環境(温度や湿度等)の変化や装置の経年劣化等の影響で階調変化した場合に階調補正した場合、本来間引きがされなければ再現可能な階調(濃度)であっても、間引きによって再現出来ない階調(濃度)が生じる。そして、本来再現する階調が再現できないことにより、出力される画像の階調ギャップ(濃度ギャップ)が発生するという問題が生じる。
【0022】
例えば、ディザ階調値が0から511までの512階調である場合、出力階調値が0以上50以下までは、ディザ階調値を4階調ずつ変化させて、出力階調値が51以上は、残りのディザ階調値を均等で変化させる。この場合、低濃度(出力階調値が50以下)の部分では、ディザ階調値として、1、2、3、5、6、7、……は用いられない。このような状態で、環境変化等により、LUT(例えば、256階調のLUT)に対して大きな階調補正をすると、低濃度部の階調変化が大きくなり、階調ギャップが生じてしまう。ここで、512階調のディザ階調に対して、LUTが512階調であればこのような問題は発生しない。しかし、出力階調値の種類が、ディザ階調値の種類よりも小さい場合、出力に用いるディザ階調が適切に選択されないと、階調ギャップが生じてしまう。このように、出力可能なディザ階調数(bit数)よりも少ないLUTの階調数(bit数)で階調補正を行う場合、適切に、出力に用いるディザ階調を選択する必要がある。
【0023】
そこで、本実施形態の画像形成装置は、階調を補正する処理に際して、出力可能なディザ階調値から出力に用いるディザ階調値を適切に選択することで、適切なキャリブレーションやプロセスコントロールを実現する方法の一例について説明する。
【0024】
[1.1 機能構成]
本実施形態では、本開示の画像形成装置を、カラー複合機といった画像形成装置10に適用する場合について説明する。複合機は、例えば、コピー機能、スキャン機能、プリント機能、ファクス機能等を有する情報処理装置であり、MFP(Multi-Function Printer/Peripheral)とも呼ばれる。
【0025】
図1は、画像形成装置10の外観を示す図である。
図2は、画像形成装置10の機能構成を示す図である。
図1及び
図2に示されるように、画像形成装置10は、画像読取部1、給紙部2、画像形成部3、排紙部4、付着量センサ5、記憶部6、操作パネル7、制御部8を備えて構成される。
【0026】
画像読取部1は、原稿台に載置された原稿の画像を光学的に読み取ることにより、画像データを生成する。画像読取部1は、CCD(Charge Coupled Device)やCIS(Contact Image Sensor)等のイメージセンサによって画像を電気信号に変換し、電気信号を量子化及び符号化するスキャナ装置により構成されてもよい。また、画像読取部1は、画像の読み取りを、後述する画像形成部3による画像の形成に並行して行うことが可能である。なお、画像読取部1は、自動原稿送り機構を備えていてもよい。
【0027】
給紙部2は、収容された用紙(記録媒体)を、画像形成部3へ1枚ずつ供給する。なお、給紙部2に収容される用紙には、普通紙や印画紙等の紙材のシートに限らず、OHP(Overhead projector)フィルム等の樹脂材のシート、更にはその他の種々の材料から形成されたシートが含まれてもよい。また、給紙部2には、給紙カセットにより構成されてもよいし、手差しトレイにより構成されてもよい。また、給紙部2は、給紙カセットや手差しトレイを複数備えて構成されてもよい。
【0028】
画像形成部3は、画像データに基づき電子写真方式の画像形成処理を行うことにより、給紙部2から繰り出される用紙への画像印刷を行う。画像形成部3は、例えば、電子写真方式を利用したレーザプリンタ等の印刷装置により構成されてもよい。なお、画像データは、画像読取部1で生成されたものに限らず、外部の情報処理装置からネットワーク等を介して得られたものであってもよい。
【0029】
図3は、画像形成部3の詳細な構成を示す図である。
図3に示されるように、画像形成部3は、4つの主プロセス部31、露光部32、中間転写ベルト33、二次転写ローラ34、及び定着部35を備えて構成される。
【0030】
本実施形態の画像形成装置10では、使用する色空間としてCMYK空間が採用されていることとする。したがって、4つの主プロセス部31は、CMYK空間を構成する4色(シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック)のトナー像をそれぞれ形成する。なお、使用する色空間に応じて、主プロセス部31の設置数が変更されてもよい。例えば、画像形成装置10がモノクロの画像形成装置である場合、主プロセス部31は1つとなる。また、露光部32は、後述する感光体ドラム311にレーザ照射を行う。露光部32は、例えば、半導体レーザ(LD、Laser Diode)により構成されてもよい。
【0031】
主プロセス部31の各々は、感光体ドラム311、帯電部312、現像部313、一次転写ローラ314、及びクリーニング部315を備えて構成される。
【0032】
感光体ドラム311は、静電潜像担持体である。帯電部312は、感光体ドラム311を、その周面の電位が所定電位となるように帯電させる。帯電された感光体ドラム311の周面には、露光部32からのレーザ照射により、画像データに応じた静電潜像が形成される。
【0033】
現像部313は、現像ローラにバイアス(現像バイアス)を印加することにより、現像ローラの周面に付着しているトナー(現像剤)を感光体ドラム311の周面へ移動させる。これにより、静電潜像が顕像化されてトナー像が形成される。このトナー像は、感光体ドラム311の回転より、中間転写ベルト33への転写(一次転写)が実行される位置(一次転写位置)まで搬送される。
【0034】
一次転写ローラ314は、感光体ドラム311との間を通る中間転写ベルト33に、感光体ドラム311に担持されているトナー像を転写する。具体的には、一次転写ローラ314は、自身にバイアスが印加されることにより、トナー像を構成しているトナーに静電気力を生じさせ、その静電気力を利用してトナー像を中間転写ベルト33へ移動させる。
【0035】
画像データに基づいて4つの主プロセス部31によりそれぞれ形成される4色のトナー像は、互いにずれることがないように、中間転写ベルト33の同じ領域に転写される。これにより、4色のトナー像が重なり合い、中間転写ベルト33には、フルカラーのトナー像が形成される。このフルカラーのトナー像は、中間転写ベルト33の周回により、用紙への転写(二次転写)が実行される位置まで搬送される。なお、
図3では、用紙が符号Pで示されている。
【0036】
クリーニング部315は、一次転写後に感光体ドラム311の周面に残留したトナー及びその他の付着物(埃など)を除去する。これにより、次の画像形成処理の準備が行われる。
【0037】
二次転写ローラ34は、給紙部2から繰り出された用紙に、中間転写ベルト33に担持されているフルカラーのトナー像を転写する。具体的には、二次転写ローラ34は、自身にバイアスが印加されることにより、トナー像を構成しているトナーに静電気力を生じさせ、その静電気力を利用してトナー像を用紙へ移動させる。
【0038】
定着部35は、加熱ローラ351と、これに圧接された加圧ローラ352とを有する。トナー像が転写された用紙は、加熱ローラ351と加圧ローラ352との間に通されることにより、トナー像に対して適度な熱と圧力とが加えられる。これにより、用紙にトナー像が固着される。その後、用紙は、排紙部4は搬送される。
【0039】
排紙部4は、複数の排紙トレイ41により構成される。そして、排紙部4は、トナー像の定着が完了した用紙を、制御部8による制御に応じて、複数の排紙トレイ41のうち、何れか1つの排紙トレイ41へ選択的に排出する。
【0040】
付着量センサ5は、4つの主プロセス部31が有する感光体ドラム311にそれぞれ対応させて4つ設けられており、対応する感光体ドラム311のトナー付着量を読み取る(測定する)。具体的には、付着量センサ5の各々は、対応する感光体ドラム311に形成されたトナー像が一次転写位置まで搬送される過程でそのトナー像と対向する位置に、配置されている。
【0041】
記憶部6には、印刷に用いられる画像データや、画像形成装置の各部(画像形成部3等)の制御に用いられる制御パラメータ(現像バイアス等)の設定値が記憶される。記憶部6は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、半導体メモリであるSSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置により構成されてもよい。
【0042】
記憶部6は、キャリブレーション用テストパターン画像データ60と、プロセスコントロール用テストパターン画像データ61と、補正量閾値68とを記憶する。また、記憶部6は、記憶領域として、目標値情報記憶領域62と、基準ガンマ情報記憶領域63と、ディザ階調値情報記憶領域64と、階調補正情報記憶領域65と、取得濃度値情報記憶領域66と、取得トナー付着量情報記憶領域67とを確保する。
【0043】
キャリブレーション用テストパターン画像データ60は、キャリブレーション処理時に用いられるテストパターン画像の画像データである。キャリブレーション用テストパターン画像データ60は、例えば、CMYK空間を構成する4色(シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック)の色毎に、その色の階調を段階的に表すための複数のパッチ像が描かれた画像のデータである。なお、パッチ像の階調を、目標階調ともいう。キャリブレーション用テストパターン画像データ60に基づく画像は、1ページ分の画像のデータであってもよい。そのため、キャリブレーション用テストパターン画像データ60に基づく画像が印刷されたページを、キャリブレーションページともいう。
【0044】
図4は、キャリブレーション用テストパターン画像データ60によって示される画像P100の例を示す図である。例えば、色の濃淡(出力デバイスカラー)が256階調で表される場合、
図4に示すように、テストパターン画像には、色毎に、濃淡を16階調ずつ段階的に変化させたパッチ像が含まれる。
【0045】
プロセスコントロール用テストパターン画像データ61は、プロセスコントロール処理時に用いられるテストパターン画像の画像データである。プロセスコントロール用テストパターン画像データ61は、キャリブレーション用テストパターン画像データ60と同様に、4色の階調を色毎に分けて段階的に表すための複数のパッチ像が描かれた画像のデータである。
【0046】
なお、キャリブレーション用テストパターン画像データ60とプロセスコントロール用テストパターン画像データ61とは同じデータであってもよいし、描かれるパッチ像が互いに異なる画像データであってもよい。すなわち、キャリブレーション用テストパターン画像データ60とプロセスコントロール用テストパターン画像データ61とでは、パッチ像の階調の変化量が互いに異なっていてもよい。なお、キャリブレーション用テストパターン画像データ60とプロセスコントロール用テストパターン画像データ61とが記憶される代わりに、共通の1つのテストパターン画像の画像データが記憶されてもよい。この場合、キャリブレーション処理及びプロセスコントロール処理には、共通のテストパターン画像が用いられる。
【0047】
目標値情報記憶領域62は、階調補正(画質調整)における目標となる濃度値やトナー付着量の情報を含む情報(目標値情報)を記憶する。目標値情報は、例えば、
図5に示すように、パッチ像の階調値(目標階調。例えば、「C=16、M=0、Y=0、K=0」)と、その階調を目標階調としたときの目標濃度値(例えば、「6.25%」)と、その階調を目標階調としたときのトナー目標付着量(例えば、「0.05」)と、そのときの制御パラメータ(現像バイアス等)の設定値とを含む。
【0048】
目標濃度値は、キャリブレーション処理の実行時に用いられる値である。目標トナー付着量は、プロセスコントロール処理の実行時に用いられる値であり、単位は、例えば、mg/cm2である。
【0049】
目標値情報は、CMYK空間を構成する4色(シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック)の各々の階調毎に予め記憶される。この場合、出力階調値と、目標濃度値と、制御パラメータとは、予め目標値情報に含まれる。
【0050】
基準ガンマ情報記憶領域63は、リニアリティー調整における理想カーブの形状を規定する情報である基準ガンマ情報を記憶する。すなわち、基準ガンマ情報は、出力可能な階調数(第1階調数)の種類のディザ階調値の中から、出力に用いる階調数(第2階調数)のディザ階調値の選択がされるときに用いられる情報である。
【0051】
基準ガンマ情報は、例えば、
図6(a)に示すように、基準ガンマ情報を識別する基準ガンマID(例えば、「1」)と、理想カーブの形状を規定する形状パラメータが含まれる。すなわち、形状パラメータが、基準ガンマに対応する。本実施形態では、基準ガンマ情報記憶領域63は、形状パラメータが互いに異なる基準ガンマ情報を複数記憶する。
【0052】
ここで、理想カーブは、例えば、以下の関数で表されてもよい。
【数1】
ここで、xは出力階調値、yはディザ階調値、Xは出力階調値の最大値、Yはディザ階調値の最大値である。また、γは、理想カーブの形状を規定するパラメータである。上記の関数のxに、出力階調値がとり得る値(例えば、0から255)を順に代入されることで、代入した出力階調値に対応するディザ階調値が求められる。このようにして求められたディザ階調値は、出力に用いられるディザ階調値として選択される。一方、出力に用いられるディザ階調値として選択されなかったディザ階調値は、出力に用いられるディザ階調値からは間引かれる。本実施形態では、形状パラメータに、上記の式におけるγの値を示すガンマ値(例えば、「2.2」)が含まれる。
【0053】
また、理想カーブは、出力階調値の中央値におけるディザ階調値を基準として、点対称の形状であってもよい。この場合、理想カーブはS字の形状となる。このように、点対称の形状である理想カーブを、対象性を有する理想カーブともいう。対象性を有する理想カーブは、例えば、以下の関数で表されてもよい。
【数2】
本実施形態では、形状パラメータに、理想カーブを対象性を有する理想カーブとするか否かを示す対称(例えば、「Yes」)が含まれる。
【0054】
例えば、
図6(a)の基準ガンマ情報D100は、IDが5の基準ガンマ情報であって、理想カーブのガンマ値が2.2で、理想カーブが対象性を有することを示す。この場合の理想カーブは、
図6(b)のグラフG100により示される形状となる。なお、
図6(b)の点線は補助線である。
【0055】
なお、
図6(c)は、対象性を有さない理想カーブの例を示す。
図6(c)のグラフG101は、ガンマ値が1.0である場合の理想カーブである。同様にして、
図6(c)のグラフG102、グラフG103、グラフG104は、それぞれ、ガンマ値が1.5である場合、ガンマ値が2.2である場合、ガンマ値が1/2.2である場合の理想カーブである。また、
図6(d)のグラフG105は、対象性を有し、ガンマ値が1/2.2である場合の理想カーブである。なお、
図6(d)の点線は補助線である。
【0056】
このように、形状パラメータにより、理想カーブの形状が決まる。また、理想カーブを示す関数に、出力階調値が代入されることで、当該出力階調値に対応するディザ階調値が求められ、出力階調値の何れにも対応しないディザ階調値は、出力に用いられること無く、間引かれることとなる。そのため、形状パラメータを、間引き条件ともいう。特に、1よりも大きいガンマ値を形状パラメータに含む基準ガンマ情報が複数記憶されることにより、例えば、ハイライト部分(出力階調値が小さい部分)において、出力に用いるディザ階調値のバリエーションを多くすることができる。
【0057】
ディザ階調値情報記憶領域64は、色成分毎に選択された基準ガンマ情報を特定する情報や、当該基準ガンマ情報を用いた場合に選択されるディザ階調値の情報(ディザ階調値情報)を記憶する。ディザ階調値情報は、
図7に示すように、色成分(例えば、「C」)と、当該色成分に対して選択された基準ガンマID(例えば、「1」)と、出力階調値(例えば、「0」)と、当該出力階調値に対応するディザ階調値(例えば、「0」)とを含む。出力階調値に対応するディザ階調値は、基準ガンマIDにより識別される基準ガンマ情報に含まれる形状パラメータにより表される理想カーブの関数に、出力階調値を代入することにより求められる値である。
【0058】
階調補正情報記憶領域65は、出力階調値と、当該出力階調値を補正した補正後の出力階調値との対応を示す情報(階調補正情報)を記憶する。すなわち、階調補正情報は、出力する階調性の補正量を示す情報である。階調補正情報は、
図8に示すように、色成分(例えば、「C」)と、出力階調値(例えば、「0」)と、補正後出力階調値(例えば、「0」)を含む。階調補正情報は、一般的に、LUT(ルックアップテーブル、Lookup Table)、中間調LUT、中間補正LUT等と呼ばれるテーブルを構成する各要素に対応する情報である。つまり、階調補正情報により、LUTを構成することができる。本実施形態では、階調補正情報により、CMYK各色の階調値である出力階調値に対して、CMYK各色の補正後の階調値である補正ご出力階調値が対応付けられる。すなわち、階調補正情報は、CMYK各色の階調性を補正するLUTを構成する。階調補正情報は、予め、記憶されているものとする。なお、予め記憶される階調補正情報は、画像形成装置10の特性に応じて、出力階調値と補正後の出力階調値とを対応付けた情報であってもよいし、出力階調値と補正後の出力階調値とを同じ値にした情報であってもよい。
【0059】
取得濃度値情報記憶領域66は、キャリブレーション処理の実行時に取得されるパッチ像毎の濃度値を示す情報(取得濃度値情報)を記憶する。取得濃度値情報は、
図9に示すように、パッチ像の階調値(例えば、「C=16、M=0、Y=0、K=0」)と、当該階調値のパッチ像を読み取ることで得られる当該パッチ像の濃度値(例えば、「6.00%」)とを含む。
【0060】
取得トナー付着量情報記憶領域67は、プロセスコントロール処理の実行時に取得されるパッチ像(トナー像)毎のトナー付着量を示す情報(取得トナー付着量情報)を記憶する。取得トナー付着量情報は、
図10に示すように、トナー像の階調値(例えば、「C=16、M=0、Y=0、K=0」)と、当該階調値のトナー像を読み取ることで得られる当該トナー像のトナー付着量(例えば、「0.05」)とを含む。トナー付着量の単位は、例えば、mg/cm
2である。
【0061】
補正量閾値68は、階調補正情報を補正する場合における補正量に対する閾値を示す情報である。補正量閾値68は、例えば、「10」といった整数値であってもよい。補正量閾値68は、予め記憶されてもよいし、ユーザにより設定可能であってもよい。
【0062】
操作パネル7は、各種情報の表示及びユーザによる操作指示を受け付ける。操作パネル7は、例えば、タッチパネルにより構成され、画像形成装置10とユーザとの間のユーザインタフェースとして機能する。
【0063】
例えば、操作パネル7は、ユーザに対して動作状況等の情報を与える表示部としての機能と、ユーザからの操作指示が入力される操作入力部としての機能とを有する。
【0064】
表示部としての機能は、例えば、表示部70により実現される。表示部70は、例えば、LCD(Liquid crystal display)、有機EL(electro-luminescence)ディスプレイ、マイクロLED(Light Emitting Diode)ディスプレイ等の表示装置により構成されてもよい。
【0065】
また、操作入力部としての機能は、操作部72により実現される。操作部72は、タッチセンサ等の入力装置により構成される。タッチセンサにおいて接触(タッチ)による入力を検出する方式は、例えば、抵抗膜方式、赤外線方式、電磁誘導方式、静電容量方式といった、一般的な検出方式であればよい。
【0066】
表示部70と操作部72とが一体に形成されることで、タッチパネルが実現される。なお、画像形成装置10には、操作部72として、キースイッチ(ハードキー)等の入力装置が備えられてもよい。
【0067】
制御部8は、画像形成装置10の全体を制御するための機能部である。制御部8は、記憶部6に記憶された各種プログラム、画像データ、設定値等の情報を読み出して所定の処理を実行することにより、画像形成装置10の各部を制御する。制御部8は、例えば、1又は複数の演算装置(CPU(Central Processing Unit))等により構成されてもよいし、上述した機能のうち、複数の機能を有するSoC(System on a Chip)として構成されてもよい。
【0068】
[1.2 処理の流れ]
[1.2.1 処理の概要]
制御部8は、通常の印刷処理に加えて、印刷物において所望の画質が得られるように階調補正処理(画質調整処理)を行う。階調補正処理とは、例えば、本来の出力階調値を、実際の出力に適した出力階調値に補正する処理である。本実施形態では、制御部8は、階調補正処理として、キャリブレーション処理とプロセスコントロール処理とを実行する。
【0069】
制御部8は、キャリブレーション処理として、キャリブレーション用テストパターン画像データ60の画像を出力し、その画像を画像読取部1にて読み取り、各色の目標階調毎に、実際に読み取られた濃度値が目標濃度値となるように、階調補正情報を補正する。
【0070】
また、制御部8は、階調補正された状態を維持するために、キャリブレーション後に、補正された階調補正情報を用いて、プロセスコントロール用テストパターン画像を感光体ドラム311上に形成して、付着量センサ5でトナー付着量を検出する。制御部8は、検出したトナー付着量を、付着させるべきトナーの目標付着量として記憶する。
【0071】
さらに、制御部8は、プロセスコントロール処理として、各色の目標階調毎に、実際のトナー付着量が、キャリブレーション処理にて記憶した目標付着量となるように、階調補正情報を補正する。
【0072】
[1.2.2 処理の詳細]
図11から
図13を参照して、制御部8が実行する制御の流れを示すフロー図である。
図11から
図13に示した処理は、ユーザにより、印刷を実行させる操作又はキャリブレーションを実行させる操作が行われたときに実行される。なお、
図11から
図13に示した処理は、主プロセス部31毎(画像形成装置10が出力する色毎)に実行する。
【0073】
はじめに、制御部8は、キャリブレーションを行うか否かを判定する(ステップS100)。例えば、制御部8は、ユーザにより、操作パネル7からキャリブレーションを実行するための操作が入力された場合に、キャリブレーションを行うと判定する。
【0074】
制御部8は、キャリブレーションを行わない場合は、通常の印刷処理を実行する(ステップS100;No→ステップS102)。例えば、制御部8は、画像読取部1を介して原稿を読み取ることで、当該原稿の画像データを入力し、当該画像データにより示される画像を、画像形成部3を制御し、用紙に形成することで出力する。このとき、制御部8は、入力した画像データによって示される各画素の階調値を出力階調値に変換し、階調補正情報を用いて、当該出力階調値を補正する。さらに、制御部8は、補正後の出力階調値に対応するディザ階調値を、ディザ階調値情報を参照して特定する。そして、制御部8は、画像形成部3を制御することで、特定したディザ階調値に対応する階調表現により画素毎の濃淡を再現し、画像を出力する。なお、通常の印刷処理が実行されるときの画像形成装置10の動作モードを、通常モードと呼んでもよい。
【0075】
一方、制御部8は、キャリブレーションを行う場合、後述するステップS104からステップS118までの処理であるキャリブレーション処理を実行する。なお、キャリブレーション処理が実行されるときの画像形成装置10の動作モードを、キャリブレーションモードと呼んでもよい。この場合、制御部8は、画像形成装置10の動作モードを、通常モードから、キャリブレーションモードに変更する。
【0076】
制御部8は、キャリブレーションを行う場合、画像形成部3を制御することで、キャリブレーション用テストパターン画像データ60の画像を用紙に形成(出力)する(ステップS100;Yes→ステップS104)。ここで、制御部8は、ディザ階調値情報に記憶された基準ガンマIDを読み出すことで、現在設定している基準ガンマ情報(間引き条件)を取得する。また、制御部8は、取得した基準ガンマ情報の形状パラメータを用いて、出力階調値に対するディザ階調値を算出する。すなわち、制御部8は、出力に用いるディザ階調値を選択する。制御部8は、キャリブレーション用テストパターン画像データ60の画像を、当該画像の階調値(出力階調値)に対応するディザ階調値を用いて、出力する。つまり、制御部8は、キャリブレーション用テストパターン画像データ60の画像の階調値を、階調補正情報を用いて補正すること無く、当該画像を出力する。これにより、制御部8は、キャリブレーション実行時における画像形成装置10のエンジン状態(基準ガンマ)により選択されるディザ階調値を用いて、キャリブレーション用の画像データ(キャリブレーションページ)を出力することができる。
【0077】
つづいて、制御部8は、ステップS104において出力した、キャリブレーション用テストパターン画像データ60の画像が出力された用紙を、画像読取部1を介して読み込むことで、当該用紙に出力されたパッチ像の濃度を読み取る(ステップS106)。これにより、制御部8は、キャリブレーション実行時において参照される基準ガンマ情報にて出力されたキャリブレーションページのパッチ像の濃度を測定することができる。なお、制御部8は、ステップS106の処理を実行する前に、操作パネル7に、ステップS104において出力した原稿を画像読取部1にセットすることをユーザに促すためのメッセージを表示してもよい。また、制御部8は、読み取ったパッチ像の階調値と、読み取ったパッチ像の濃度値とを対応させた取得濃度値情報を、取得濃度値情報記憶領域66に記憶する。
【0078】
つづいて、制御部8は、ステップS106において読み取った濃度値と、読み取ったパッチ像に対応する目標濃度値と比較する(ステップS108)。例えば、制御部8は、ステップS106において記憶した取得濃度値情報に含まれる濃度値と、目標濃度値とを、パッチ像の階調値毎に比較する。これにより、制御部8は、階調値毎に、目標濃度値と実際に読み取られた濃度値との差分を取得することができる。
【0079】
つづいて、制御部8は、目標濃度値として規定された濃度と同じ濃度が得られるように階調補正情報を補正した場合の出力階調値、すなわち、出力階調値の補正量(階調性の補正量)を算出する(ステップS110)。
【0080】
ここでは、制御部8は、一般的な方法で、LUTを作成する処理を実行すればよい。例えば、制御部8は、ステップS108における比較結果から、パッチ像の階調値を出力階調値とした場合に、当該パッチ像を目標濃度値の濃度で出力するための補正後の出力階調値を求める。さらに、制御部8は、パッチ像には現れない階調値を出力階調値とした場合の補正後の出力階調値を、補間等をすることにより求める。これにより、制御部8は、全ての出力階調値に対して、目標濃度値の濃度と近い濃度の色を出力するための補正後の出力階調値を求めることができる。なお、本実施形態では、出力階調値と補正後の出力階調値との差分を、補正量という。
【0081】
つづいて、制御部8は、ステップS110において算出した補正量の絶対値が、補正量閾値68として記憶された閾値以下であるか否かを判定する(ステップS112)。例えば、制御部8は、CMYK空間を構成する4色(シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック)の色毎に出力階調値の補正量を算出し、全ての色の補正量の絶対値が、補正量閾値68として記憶された閾値以下であれば、補正量の絶対値が閾値以下であると判定する。
【0082】
制御部8は、補正量の絶対値が、補正量閾値68として記憶された閾値以下であれば、ステップS104の処理において用いた基準ガンマ情報を、出力に用いる基準ガンマ情報として記憶する(ステップS112;Yes→ステップS114)。つまり、制御部8は、ディザ階調値の間引き条件を決定する。例えば、制御部8は、キャリブレーション用テストパターン画像データ60の画像を出力した時点において使用した基準ガンマ情報の基準ガンマIDを、ディザ階調値情報に記憶する。また、制御部8は、階調補正処理において参照する基準ガンマ情報を設定することができる。これにより、制御部8は、補正量が規定以下となる基準ガンマ情報を選択することができる。
【0083】
なお、制御部8は、上述した処理に加えて、出力に用いる基準ガンマ情報の形状パラメータを用いて出力階調値に対するディザ階調値を算出し、算出したディザ階調値を出力階調値と対応付けて、ディザ階調値情報に記憶してもよい。このようにすることで、通常の印刷処理において、出力階調値に対応するディザ階調値を容易に取得することができる。
【0084】
一方、制御部8は、補正量の絶対値が、補正量閾値68として記憶された閾値を超える場合、他の基準ガンマ情報を選択し(ステップS112;No→ステップS116)、ステップS104に戻る。他の基準ガンマ情報は、現在設定されている基準ガンマ情報以外の基準ガンマ情報であって、未選択の基準ガンマ情報である。
【0085】
なお、制御部8は、ステップS116の処理の後にステップS104の処理を実行する場合、ステップS116において選択した基準ガンマ情報の形状パラメータを用いて、出力階調値に対するディザ階調値を算出する。また、制御部8は、算出したディザ階調値を用いて、キャリブレーション用テストパターン画像データ60に基づく画像(キャリブレーションページ)を出力する。これにより、制御部8は、ステップS116において選択した基準ガンマ情報により選択されるディザ階調値を用いた場合における、キャリブレーション用テストパターン画像データ60の画像を形成し、濃度を読み取り、補正量を算出することができる。また、制御部8は、補正量が、補正量閾値68として記憶された閾値以下となるまで、使用する基準ガンマ情報を変更しながら、ステップS104からステップS110までの処理を繰り返し実行することができる。なお、CMYK空間を構成する4色のうち、補正量の絶対値が補正量閾値68として記憶された閾値以下である色については、制御部8は、使用する基準ガンマ情報を変更しなくてもよい。このようにして、制御部8は、それぞれの基準ガンマ情報を用いて出力されたキャリブレーションページのパッチ像の濃度を測定し、階調性の補正量を算出し、補正量が規定以下となる基準ガンマ情報を選択することができる。
【0086】
制御部8は、ステップS114の処理のあと、ステップS114において記憶した基準ガンマ情報を用いて用紙に形成されるキャリブレーション用テストパターン画像データ60の画像の読み取り結果に基づき、階調補正情報を更新する(ステップS118)。制御部8は、ステップS106からステップS110において説明した処理と同じ処理を行うことで、階調補正情報を更新してもよい。これにより、制御部8は、出力階調値が目標濃度値として規定された濃度と同じ濃度が得られるように、階調補正情報を補正することができる。このとき、ステップS114において設定した基準ガンマ情報が、ステップS104において参照されることとなる。なお、制御部8は、ステップS110において、補正後の出力階調値の値を算出しているため、ステップS110において算出した補正後の出力階調値を、補正前の出力階調値と対応付けて、階調補正情報として記憶してもよい。これにより、いわゆるLUTが更新される。
【0087】
このようにして、制御部8は、ステップS104からステップS118を実行することで、階調補正処理のうちのキャリブレーション処理を実行することができる。引き続き、制御部8は、階調補正処理のうちのプロセスコントロール処理を実行する。プロセスコントロール処理は、キャリブレーション処理の後に実行される第1プロセスコントロール処理と、通常の印刷処理の中で自動的に実行する第2プロセスコントロール処理との2つがある。
【0088】
第1プロセスコントロール処理は、キャリブレーション処理の実行後の状態における、新しい目標トナー付着量を記憶する処理である。第2プロセスコントロール処理は、第1プロセスコントロール処理において記憶された目標トナー付着量を維持していくために、出力階調値に対する補正後の出力階調値の関係を更新する処理である。制御部8は、これらの処理を実行することで、補正量が規定以下となる基準ガンマ情報を選択した以降の階調補正では、選択した基準ガンマ情報をベースにして、階調補正情報(LUT)を微調整することができる。
【0089】
制御部8は、ステップS118の処理のあと、第1プロセスコントロール処理を実行する(ステップS120)。
【0090】
図12は、第1プロセスコントロール処理の流れを示すフロー図である。はじめに、制御部8は、
図11のステップS118において記憶した階調補正情報を用いて、すなわち、キャリブレーション処理において算出したLUTが反映された状態で、プロセスコントロール用テストパターン画像データ61の画像を、感光体ドラム311に形成する(ステップS160)。これにより、感光体ドラム311に、パッチのトナー像が形成される。
【0091】
つづいて、制御部8は、付着量センサ5を用いて、感光体ドラム311に形成されたトナー像に付着したトナー付着量を読み取る(ステップS162)。また、制御部8は、目標トナー付着量を更新する(ステップS164)。例えば、制御部8は、読み取ったトナー像の階調値を特定し、当該トナー像に付着したトナー付着量を、当該階調値に対する目標トナー付着量として、目標値情報に記憶する。これにより、プロセスコントロール用の新しい目標トナー付着量が記憶される。
【0092】
図11に戻り、制御部8は、第2プロセスコントロール処理が必要であるか否かを判定し、第2プロセスコントロール処理が必要であると判定したとき、第2プロセスコントロール処理を実行する(ステップS122;Yes→ステップS124)。一例として、制御部8は、通常印刷の実行枚数をカウントすると共にカウント数が所定枚数に到達したか否かを判断し、通常印刷の実行枚数と所定枚数とが一致したとき、第2プロセスコントロール処理を実行する。なお、第2プロセスコントロール処理は、キャリブレーション処理より高い頻度で繰り返し実行される。一方、制御部8は、第2プロセスコントロール処理が必要ではないと判定した場合は、ステップS124の処理を省略する(ステップS112;No)。
【0093】
図13は、第2プロセスコントロール処理の流れを示すフロー図である。はじめに、制御部8は、
図11のステップS118において記憶した階調補正情報を用いて、プロセスコントロール用テストパターン画像データ61の画像を、感光体ドラム311に形成する(ステップS180)。ステップS180の処理は、
図12のステップS160の処理と同様である。
【0094】
つづいて、制御部8は、付着量センサ5を用いて、感光体ドラム311に形成されたトナー像に付着したトナー付着量を読み取る(ステップS182)。また、制御部8は、読み取ったトナー像の階調値と、読み取ったトナー像のトナー付着量とを対応させた取得トナー付着量情報を、取得トナー付着量情報記憶領域67に記憶する。
【0095】
つづいて、制御部8は、ステップS182において読み取ったトナー付着量と、読み取ったトナー像に対応する目標トナー付着量と比較する(ステップS184)。これにより、制御部8は、目標トナー付着量と読み取ったトナー付着量との差分を取得できる。例えば、制御部8は、ステップS182において記憶した取得トナー付着量情報に含まれるトナー付着値と、目標トナー付着量とを、階調値毎に比較する。
【0096】
つづいて、制御部8は、ステップS184における比較の結果に基づき、目標トナー付着量と同じトナー付着量が得られるように、出力階調値に対する新しい補正後の出力階調値を算出する(ステップS186)。ステップS186における処理は、
図11のステップS110と同様の処理である。すなわち、一般的な方法で、LUTを作成する処理を実行すればよい。
【0097】
また、制御部8は、ステップS186において算出した、出力階調値に対応する新しい補正後の出力階調値を、階調補正情報に記憶することで、階調補正情報を更新する(ステップS188)。
【0098】
以上が、制御部8が実行する、画像形成装置10の各機能部に対する制御フローである。制御部8は、上述したキャリブレーション処理及びプロセスコントロール処理を、CMYK空間を構成する4色のそれぞれの色に対して、すなわち、主プロセス部31毎に行う。そのため、画像形成装置10が出力する色毎(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)に、設定される基準ガンマ情報が異なってもよいし、階調補正情報が異なってもよい。
【0099】
[1.3 動作例]
図14から
図17を参照して、本実施形態の動作例を説明する。
図14は、出力に用いるディザ階調値を選択する処理の例を示す図である。なお、以下に説明する動作例では、出力階調値は、0から255までの8bitで表される値であり、ディザ階調値は、10bitで表すことが可能な値のうち、0から765までの値であるとする。また、
図14(a)は、出力階調値が255の場合におけるディザ階調値を765とした場合における理想カーブを示した図である。すなわち、出力階調値は0から255までの何れかの値を取り(256階調)、ディザ階調値は0から765の何れかの値を取る(766階調)。
【0100】
図14(a)には、3つの理想カーブが描かれている。グラフG110は、形状パラメータのガンマ値が「1.0」で、対称が「No」である理想カーブである。グラフG112は、形状パラメータのガンマ値が1.0以上の値であり、対称が「Yes」である理想カーブである。グラフG114は、形状パラメータのガンマ値が、グラフG112よりも大きく、対称が「Yes」である理想カーブである。
【0101】
図14(b)は、
図14(a)の領域E110を拡大した図である。
図14(b)のグラフG120は、
図14(a)のグラフG110に対応する。
図14(b)のグラフG122は、
図14(a)のグラフG112に対応する。
図14(b)のグラフG124は、
図14(a)のグラフG114に対応する。
【0102】
ここで、グラフG120では、出力階調値が1増える毎に、ディザ階調値は、3増加している(例えば、P3とP5との間、P5とP6との間)。一方、グラフG122では、出力階調値が1増える毎に、ディザ階調値は、4増加している(例えば、P2とP5との間、P5とP7との間)。グラフG124では、出力階調値が1増える毎に、ディザ階調値は、7増加している(例えば、P1とP4との間、P4とP7との間)。このように、ガンマ値により、ディザ階調値の変化の度合いが異なる。このため、
図14(b)に示した中間調付近の範囲においては、グラフG124は、グラフG122と比べて、出力に用いられないディザ階調値(間引かれるディザ階調値)が多くなる。同様に、グラフG122は、グラフG120と比べて、出力に用いられないディザ階調値(間引かれるディザ階調値)が多くなる。なお、
図14(a)から明らかなように、グラフG122やグラフG124では、出力階調値が小さい低濃度域や、出力階調値が大きい高濃度域では、グラフG120と比べて、間引かれるディザ階調は少ない。このように、理想カーブの形状により、出力に用いられるディザ階調値の間隔が狭い領域と広い領域とが現れる場合がある。
【0103】
図15は、階調補正情報(LUT)に記憶された出力階調値と補正後の出力階調値との関係の例をグラフで示した図である。
図15のグラフG130は、出力階調値と補正後の出力階調値が一致しており、出力階調値が補正されずに画像が出力される場合を示す。
図15のグラフG132は、出力階調値に対する補正後の出力階調値を大きく変化させ、いわゆる、階調を立たせる方向に補正して出力する場合を示す。グラフG132に示すように出力階調値が変化される場合、出力階調値が小さい明るい画素はより明るく出力され、出力階調値が大きい暗い画素は、より暗く出力される。
【0104】
図16(a)は、
図15の領域E130を拡大した図である。グラフG140は、
図15のグラフG130と対応し、グラフG142は、
図15のグラフG132と対応する。また、
図16(b)は、
図15の領域E132を拡大した図である。グラフG150は、
図15のグラフG130と対応し、グラフG152は、
図15のグラフG132と対応する。
【0105】
ここで、出力階調値を補正しない場合や、補正後の出力階調値の変化が小さい場合は、
図16(a)のグラフG140や
図16(b)のグラフG150に示すように、補正後の出力階調値は1ずつ変化する場合が多い(例えば、P11とP12との間、P14とP15との間)。
【0106】
一方、補正後の出力階調値の変化が大きい場合、補正後の出力階調値は、
図16(a)のグラフG142に示すように、複数の出力階調値に対して同じ値となる場合もあるが、
図16(b)のグラフG152に示すように、1又は複数個飛ばされる場合もある。例えば、
図16(b)のグラフG152は、補正後の出力階調値は、1つ飛ばしとなっている(例えば、P11とP13との間、P13とP15との間)。この場合、隣接する階調差が大きくなる。
【0107】
ここで、出力に用いるディザ階調値が適切に選択されていない場合、補正後の出力階調値が大きく変化する部分において、本来ディザ処理により再現可能な階調であっても、再現できない階調が生じることとなる。これにより、いわゆる、階調ギャップが発生してしまう。すなわち、出力階調値の階調差が1の色同士において、補正後の出力階調値において色の差が大きくなり、さらに、補正後の出力階調値に対応するディザ階調値が適切でない場合、ディザ階調値の差が更に大きくなる。この結果、出力階調値の階調差が1の色同士であっても、ディザ処理により再現される色が大きく異なってしまい、出力時には大きな色の差として現れてしまう。例えば、大きい環境変化が生じた場合において、局所的にハイライト部分の階調補正量が多くなると、当該部分の階調補正情報(LUT)の補正後の出力階調値が階段状となる。そして、階段状となった出力階調値の差(段差)が大きい部分の色が、適切に選択されていないディザ階調値を用いて再現されることにより、出力される画像のハイライト部分に階調ギャップとして再現され、出力される画像に不具合が生じる結果となる。
【0108】
このような問題に対して、本実施形態の画像形成装置10は、キャリブレーション処理において、階調補正処理を行う前に、予め、階調補正処理を行う場合における補正量の絶対値が、補正量閾値68が示す値以下となる基準ガンマ情報を選択する。これは、目標濃度値と近い濃度を出力することが可能な基準ガンマ情報を選択することに対応する。この結果、画像形成装置10は、ディザ階調を選択するとき、目標濃度値と近い濃度を出力することが可能なディザ階調値を選択することができ、ディザ処理により、再現出来ない階調(濃度)が生じることを低減させることができる。すなわち、画像形成装置10は、適切な基準ガンマ情報を選択することで適切なディザ階調値が選択できる。また、本実施形態の画像形成装置10は、適切な基準ガンマ情報が選択された状態で階調補正処理を行うことで、階調ギャップをできるだけ生じさせないようにすることができる。
【0109】
図17は、操作パネル7に表示される画面の画面例を示す図である。
図17(a)は、キャリブレーションを実行するか否かをユーザに問い合わせる画面W170の画面例を示す図である。画面W170は、
図11のステップS100において表示される。ユーザは、キャリブレーションを行うことを指示するボタンB170又はキャリブレーションを行わないことを指示するボタンB172から、所望のボタンを選択することができる。例えば、ユーザは、画像形成装置10を通常使用している中で、環境変動若しくは経時変化等によって出力画像の画質及び色味変化を感じた場合に、操作パネル7よりキャリブレーションを実行する指示を行うことができる。また、画像形成装置10は、ユーザにより、ボタンB170が選択された場合、キャリブレーションの処理を開始する。例えば、画像形成装置10は、テストパターン画像を印刷する。
【0110】
図17(b)は、テストパターンが印刷された用紙を、画像読取部1(スキャナ)にセットすることを促す画面W180の画面例を示す図である。画面W180は、
図11のステップS104の処理が実行された後に表示される。ユーザは、テストパターンが印刷された用紙を画像読取部1にセットした後、ボタンB180を選択することで、画像形成装置10にテストパターン画像を読み取らせることができる。
【0111】
図17(c)は、使用する基準ガンマ情報(間引き条件)を変えて、再度テストパターン画像を印刷することを示す画面W190の画面例を示す図である。画面W190は、
図11のステップS116において表示される。ユーザは、ボタンB190を選択することで、画像形成装置10から、使用する基準ガンマ情報を変えた上で、再度テストパターン画像を印刷させることができる。印刷後、
図17(b)に示す画面W180が表示される。
【0112】
なお、上述した説明以外の方法であっても、画像形成装置10が、キャリブレーション処理及びプロセスコントロール処理を適切に実行できれば、適宜変更を加えてもよい。例えば、制御部8は、
図11のステップS116において、目標濃度値と、読み取った濃度値との差異に基づき、基準ガンマ情報記憶領域63に記憶された基準ガンマ情報の中から、1の基準ガンマ情報を選択してもよい。例えば、目標濃度値に比べて、読み取った濃度値が低濃度の部分(ハイライト部分)において低い場合、低濃度の部分におけるディザ階調値を大きくして、濃度を高くする必要がある。このような場合、制御部8は、
図11のステップS116において、選択している基準ガンマ情報に記憶されているガンマ値よりも大きいガンマ値が記憶された基準ガンマ情報を選択してもよい。ガンマ値が大きい場合、低濃度の部分において、理想カーブが上側に移動するため、ディザ階調値が大きくなり、マトリクス内の画素のうち埋められる画素が多くなる結果、濃度値が高くなる。同様にして、目標濃度値に比べて、読み取った濃度値が低濃度の部分(ハイライト部分)において高い場合は、制御部8は、選択している基準ガンマ情報に記憶されているガンマ値よりも小さいガンマ値が記憶された基準ガンマ情報を選択してもよい。このように、制御部8は、目標濃度値と、読み取った濃度値との差異に基づき、基準ガンマ情報を選択することにより、処理を簡略化したり、高速化したりすることができる。
【0113】
また、制御部8は、
図12のステップS162及び
図13のステップS182において、感光体ドラム311上のトナー付着量を読み取ることとして説明したが、制御部8は、感光体ドラム311上のトナー像の濃度を読み取ってもよい。この場合、
図12のステップS164において、制御部8は、読み取ったトナー像の濃度に基づき、プロセスコントロール処理の実行時において目標とする濃度値を記憶する。また、制御部8は、
図13のステップS184からステップS188において、当該プロセスコントロール処理の実行時において目標となる濃度値が示す濃度と同じ濃度が得られるように、階調補正情報を更新する。
【0114】
また、理想カーブの形状は、
図6(b)から
図6(d)までに示した形状でなくてもよい。例えば、
図18(a)に示すように、出力階調値が低い領域(低濃度域、例えば、出力値が50以下の領域)と、他の領域とで、ディザ階調値の変化の度合いを異ならせてもよい。
図18(a)の例では、出力階調値が50以下の領域におけるディザ階調値の変化量を小さくし、出力階調値が51以上の領域は、残りのディザ階調値を、均等の割合で変化させるようにしてもよい。また、
図18(b)に示すように、理想カーブは、低濃度域と高濃度域は直線的とし、中間調の領域はS字カーブを描く形状であってもよい。この場合、
図18(a)や
図18(b)に示した理想カーブの形状を規定する情報である基準ガンマ情報が基準ガンマ情報記憶領域63に記憶されていればよい。
【0115】
このように、本実施形態では、基準ガンマ情報を用いて出力されたキャリブレーションページのパッチ像の濃度を測定して階調性を補正する画像形成装置において、予め複数の基準ガンマ情報を設けておき、それぞれの基準ガンマ情報を用いて出力されたキャリブレーションページを測定して、階調性の補正量を算出する。具体的には、画像形成装置は、キャリブレーション処理において、ディザ階調値から出力に使用するディザ階調値を選択するために用いる複数の基準ガンマ情報(間引き条件)を用いて出力したキャリブレーションページを測定することで、階調性の補正量を算出する。そして、画像形成装置は、補正量が規定以下となる基準ガンマ情報を選択することで、基準ガンマ情報を適切に選択することができる。この結果、本実施形態によれば、本来、間引きされるディザ階調値が固定であるところ、キャリブレーション時に、出力に用いられるディザ階調値として、適切なディザ階調値を選択することができる。これは、リニアリティー調整において、予め調整レベルの異なる(例えば、ハイライト部分)を複数設けておき、適切なリニアリティー調整の設定を選択することに対応する。そして、そのリニアリティー調整は、キャリブレーション処理が実行されるときに行われ、その都度、適切なリニアリティー調整の設定が選択される。このようにして、本実施形態の画像形成装置は、大きな環境変化等があった場合であっても、適切に基準ガンマ情報を選択し、出力に用いるディザ階調値を適切に選択することができる。
【0116】
また、本実施形態では、適切な基準ガンマ情報が選択された状態で、キャリブレーション処理やプロセスコントロール処理といった階調補正処理が行われる。例えば、画像形成装置は、プロセスコントロール処理では、適切に選択された基準ガンマ情報をベースにして、LUT(階調補正情報)を微調整する。これにより、本実施形態の画像形成装置は、大きな環境変化等があった場合であっても、LUT(階調補正情報)の補正量を少なくすることができ、階調ギャップの発生を軽減することができる。
【0117】
[2.第2実施形態]
第2実施形態は、第1実施形態に説明した処理に加えて、複数の目標濃度値(階調性)のうち、ユーザにより選択された目標濃度値に基づき、階調補正処理を行う実施形態である。
【0118】
図19は、階調値に対する目標濃度値のパターンを記憶したテーブルである。
図19に示したテーブルは、記憶部6に予め記憶される。
図19は、目標濃度値のパターンとして、パターン1からパターン3までの3つのパターンが記憶されている。それぞれのパターンには、階調値毎に対応する目標濃度値が対応付けられている。しかし、目標濃度値は、パターン毎に異なっている。例えば、パターン1は、階調値が増える割合と同じ割合で、目標濃度値が大きくなるパターンである。パターン2は、中間調の濃度が高くいパターンである。パターン3は、中間調の濃度が、パターン2に比べて更に高いパターンである。なお、目標濃度値のパターンは、上述した3パターン以外のパターンが記憶されてもよいし、パターンの数は2であってもよいし、4以上であってもよい。
【0119】
また、制御部8は、
図11に示した処理を実行する前に、操作パネル7を介して、ユーザに対して、
図19に示した目標濃度値のパターンから、1のパターンを選択させる。この場合、制御部8は、
図11のステップS108において、
図11のステップS106において読み取った濃度の濃度値と、ユーザによって選択された目標濃度値とを比較する。これにより、制御部8は、
図11のステップS106において取得した濃度値と、複数の目標濃度値のパターンのうちユーザにより選択された1のパターンに含まれる目標濃度値(階調性)とを比較する。また、制御部8は、
図11のステップS110からステップS114及びステップS116の処理を実行することで、ユーザによって選択された階調性に応じて、出力に用いるディザ階調値を選択する。また、制御部8は、
図11のステップS118移行の処理を実行することで、選択した出力に用いるディザ階調値を用いて、階調補正処理を実行する。このようにして、制御部8は、ユーザにより選択された1の目標濃度値のパターンに含まれる目標濃度値と同じ濃度が得られるように、出力に用いるディザ階調値を適切に選択し、出力階調値を補正することができる。
【0120】
このように、本実施形態によれば、階調ギャップの発生を軽減させるとともに、複数の階調性から、ユーザにより選択された階調性を再現させることができる。ユーザは、複数の階調性から、所望の階調性を選択し、適切な出力を得ることができる。
【0121】
[3.第3実施形態]
第3実施形態は、第1実施形態におけるプロセスコントロール処理において、中間転写ベルト33に転写されたパッチ像を対象として、付着量センサ5にトナー付着量を読み取らせる実施形態である。
【0122】
すなわち、本実施形態では、制御部8は、
図12のステップS160及び
図13のステップS180において、像担持体である感光体ドラム311にパッチ像を形成する。このパッチ像は、中間転写ベルト33に転写される。そこで、制御部8は、
図12のステップS162及び
図13のステップS182において、付着量センサ5を介して、像担持体である中間転写ベルト33に転写されたトナー付着量を読み取る。
【0123】
ここで、本実施形態では、第1実施形態と異なり、感光体ドラム311に形成されたトナー像に付着したトナー付着量が読み取られるのではなく、中間転写ベルト33に転写されたトナー像のトナー付着量が読み取られる。したがって、付着量センサ5は、中間転写ベルト33に対して設けられる。この場合、付着量センサ5は、中間転写ベルト33に対して1つ設けられればよく、第1実施形態と異なり、CMYKの各色に対応する感光体ドラム311毎に備えられる必要がない。
【0124】
なお、中間転写ベルト33に転写されたトナー像のトナー付着量を1つの付着量センサ5によって読み取るため、例えば、トナー像のトナー付着量は、C、M、Y、Kの順に順番に読み取られる必要がある。そのため、トナー像のトナー付着量の読み取りには、感光体ドラム311に形成されたトナー像に付着したトナー付着量を読み取る場合と比べて、時間がかかる場合がある。なお、例えば、中間転写ベルト33に対して設けられる付着量センサ5を複数設けることで、トナー付着量の読み取りにかかる時間を改善可能である。
【0125】
また、感光体ドラム311に形成されたトナー像を用紙に転写する場合、感光体ドラム311から中間転写ベルト33への一次転写と、中間転写ベルト33から用紙への二次転写とが行われる。一般的に、それぞれの転写において、トナー像を100%転写させることは難しく、一定量の転写効率の低下が生じる。ここで、中間転写ベルト33に転写されたトナー像のトナー付着量を1つの付着量センサ5によって読み取ることで、第1転写の転写効率を加味して、LUTの補正を行うことが可能となる。
【0126】
このようにして、本実施形態の画像形成装置は、プロセスコントロール処理において、像担持体である中間転写ベルトに転写されたトナー付着量を測定する。これにより、本実施形態の画像形成装置は、トナー付着量を測定する付着量センサの数を削減したり、第1転写の転写効率を加味して、階調補正情報(LUT)の補正を行ったりすることが可能となる。
【0127】
[4.変形例]
本開示は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。すなわち、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施の形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【0128】
また、上述した説明では、本開示の画像形成装置をカラー複合機に適用した例を説明したが、その各部の構成や制御方法は、カラー複合機に限らず、カラー複写機やカラープリンタ等、種々の画像形成装置に適用することができる。また、本開示の画像形成装置は、カラー画像を対象とした画像形成装置に限らず、モノクロの画像を対象とした画像形成装置にも適用したり、変形したりすることができる。
【0129】
また、上述した実施形態は、説明の都合上、それぞれ別に説明している部分があるが、技術的に可能な範囲で組み合わせて実行してもよいことは勿論である。例えば、第2実施形態と第3実施形態とが組み合わされてもよい。この場合、ユーザによる目標濃度の選択が可能で、中間転写ベルトに転写されたパッチ像を対象として、トナー付着量を測定する画像形成装置が構成される。
【0130】
また、実施形態において各装置で動作するプログラムは、上述した実施形態の機能を実現するように、CPU等を制御するプログラム(コンピュータを機能させるプログラム)である。そして、これら装置で取り扱われる情報は、その処理時に一時的に一時記憶装置(例えば、RAM)に蓄積され、その後、各種ROM(Read Only Memory)やHDD等の記憶装置に格納され、必要に応じてCPUによって読み出し、修正・書き込みが行なわれる。
【0131】
ここで、プログラムを格納する記録媒体としては、半導体媒体(例えば、ROMや、不揮発性のメモリカード等)、光記録媒体・光磁気記録媒体(例えば、DVD(Digital Versatile Disc)、MO(Magneto Optical Disc)、MD(Mini Disc)、CD(Compact Disc)、BD (Blu-ray(登録商標) Disc) 等)、磁気記録媒体(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスク等)等の何れであってもよい。また、ロードしたプログラムを実行することにより、上述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムの指示に基づき、オペレーティングシステムあるいは他のアプリケーションプログラム等と共同して処理することにより、本開示の機能が実現される場合もある。
【0132】
また、市場に流通させる場合には、可搬型の記録媒体にプログラムを格納して流通させたり、インターネット等のネットワークを介して接続されたサーバコンピュータに転送したりすることができる。この場合、サーバコンピュータの記憶装置も本開示に含まれるのは勿論である。
【0133】
また、上述した実施形態に用いた装置の各機能ブロック、または諸特徴は、電気回路、例えば、集積回路あるいは複数の集積回路で実装または実行され得る。本明細書で述べられた機能を実行するように設計された電気回路は、汎用用途プロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、またはその他のプログラマブル論理デバイス、ディスクリートゲート又はトランジスタロジック、ディスクリートハードウェア部品、またはこれらを組み合わせたものを含んでよい。汎用用途プロセッサは、マイクロプロセッサでもよいし、従来型のプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、またはステートマシンであってもよい。前述した電気回路は、デジタル回路で構成されていてもよいし、アナログ回路で構成されていてもよい。また、半導体技術の進歩により現在の集積回路に代替する集積回路化の技術が出現した場合、本開示の一以上の態様は当該技術による新たな集積回路を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0134】
10 画像形成装置
1 画像読取部
2 給紙部
3 画像形成部
4 排紙部
5 付着量センサ
6 記憶部
60 キャリブレーション用テストパターン画像データ
61 プロセスコントロール用テストパターン画像データ
62 目標値情報記憶領域
63 基準ガンマ情報記憶領域
64 ディザ階調値情報記憶領域
65 階調補正情報記憶領域
66 取得濃度値情報記憶領域
67 取得トナー付着量情報記憶領域
68 補正量閾値
7 操作パネル
70 表示部
72 操作部
8 制御部
31 主プロセス部
32 露光部
33 中間転写ベルト
34 二次転写ローラ
35 定着部
41 排紙トレイ
311 感光体ドラム
312 帯電部
313 現像部
314 一次転写ローラ
315 クリーニング部
351 加熱ローラ
352 加圧ローラ