(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095100
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】再生吸水性樹脂の製造方法および当該製造方法における製造条件の判定方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/00 20220101AFI20240703BHJP
B29B 17/02 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B09B3/00
B29B17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212138
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(71)【出願人】
【識別番号】504182314
【氏名又は名称】トータルケア・システム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 一司
(72)【発明者】
【氏名】小林 信弘
(72)【発明者】
【氏名】松井 大祐
(72)【発明者】
【氏名】山田 陽三
(72)【発明者】
【氏名】安村 宜之
【テーマコード(参考)】
4D004
4F401
【Fターム(参考)】
4D004AA06
4D004AB01
4D004AB10
4D004BA07
4D004CA35
4D004CA48
4D004CC03
4D004CC12
4D004CC15
4D004DA10
4F401AA17
4F401AC20
4F401BA13
4F401BB20
4F401EA10
4F401EA23
4F401EA46
4F401EA64
4F401FA07Z
(57)【要約】
【課題】使用済の吸収性物品に含まれる吸水性樹脂の吸水性能を十分に回復し、かつ、再生吸水性樹脂の製造に要するコストが過剰に増大することを防止すること。
【解決手段】使用済の吸水性樹脂を多価金属塩で処理する脱水工程(1)と、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂の分散液を、そのpHが-1.0~3.0となるように酸性物質で処理する酸処理工程(2)と、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂を水で洗浄する水洗浄工程(3)と、前記水で洗浄された吸水性樹脂をアルカリ金属塩で中和する中和工程(4)と、前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂を乾燥させる乾燥工程(5)と、を含む、再生吸水性樹脂の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済の吸収性物品に含まれる吸水性樹脂から、再生吸水性樹脂を製造する方法であって、
前記吸水性樹脂は、部分中和されたカルボキシル基を有する重合体を含み、
前記吸水性樹脂を多価金属塩で処理する脱水工程(1)と、
前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂を酸性物質で処理する酸処理工程(2)と、
前記酸性物質で処理された吸水性樹脂を水で洗浄する水洗浄工程(3)と、
前記水で洗浄された吸水性樹脂をアルカリ金属塩で中和する中和工程(4)と、
前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂を乾燥させ、再生吸水性樹脂を得る乾燥工程(5)と、を含み、
前記酸処理工程(2)において、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂の分散液に対して、前記分散液のpHが-1.0~3.0となるように前記酸性物質を添加する工程を含む、再生吸水性樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記水洗浄工程(3)において、
前記酸処理工程(2)で得られる前記酸性物質で処理された吸水性樹脂の抽出液導電率E0に対する、前記水洗浄工程(3)で得られる前記水で洗浄された吸水性樹脂の抽出液導電率E1の割合(E1/E0)が0.40未満となるように、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂を水で洗浄する工程を含む、請求項1に記載の再生吸水性樹脂の製造方法。
(ここで、前記酸処理工程(2)または前記水洗浄工程(3)において、吸水性樹脂が分散液中に存在する状態で得られる場合、吸水性樹脂の抽出液導電率は、以下の(i)~(iii)に示す工程からなる方法にて測定される;
(i)前記酸処理工程(2)または前記水洗浄工程(3)で得られた吸水性樹脂の分散液に対して、100メッシュの金網を用いてろ過し、1分間放置する操作を行い、ろ過後の吸水性樹脂を得る工程。
(ii)ビーカーに、工程(i)で得られたろ過後の吸水性樹脂と、前記ろ過後の吸水性樹脂の重量の4倍の重量の脱イオン水を加え、25℃の温度にて、スターラーで20分間撹拌して、抽出液を得る工程。
(iii)工程(ii)で得られた抽出液の導電率を、導電率計を用いて測定する工程。
また、前記酸処理工程(2)または前記水洗浄工程(3)において、吸水性樹脂が分散液から取り出された状態で得られる場合、吸水性樹脂の抽出液導電率は、以下の(iv)および(v)に示す工程からなる方法にて測定される;
(iv)ビーカーに、前記酸処理工程(2)または前記水洗浄工程(3)で得られた吸水性樹脂と、前記吸水性樹脂の重量の4倍の重量の脱イオン水を加え、25℃の温度にて、スターラーで20分間撹拌して、抽出液を得る工程。
(v)工程(iv)で得られた抽出液煮の導電率を、導電率計を用いて測定する工程。)
【請求項3】
前記脱水工程(1)において、
前記多価金属塩が、アルカリ土類金属の塩である、請求項1または2に記載の再生吸水性樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記酸処理工程(2)において、
前記酸性物質が、有機酸および無機酸からなる群から選択される1種以上の酸である、請求項1~3の何れか1項に記載の再生吸水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
使用済の吸収性物品に含まれる吸水性樹脂から、再生吸水性樹脂を製造する方法における製造条件の判定方法であって、
前記吸水性樹脂は、部分中和されたカルボキシル基を有する重合体を含み、
前記吸水性樹脂を多価金属塩で処理する脱水工程(1)と、
前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂を酸性物質で処理する酸処理工程(2)と、
前記酸性物質で処理された吸水性樹脂を水で洗浄する水洗浄工程(3)と、
前記水で洗浄された吸水性樹脂をアルカリ金属塩で中和する中和工程(4)と、
前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂を乾燥させ、再生吸水性樹脂を得る乾燥工程(5)と、を含む再生吸水性樹脂を製造する方法において、
前記酸処理工程(2)の終点を、前記酸処理工程(2)中における、前記酸性物質が添加された、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂の分散液のpHにより判定することを含む、再生吸水性樹脂を製造する方法における製造条件の判定方法。
【請求項6】
前記水洗浄工程(3)の終点を、前記酸処理工程(2)で得られる前記酸性物質で処理された吸水性樹脂の抽出液導電率E0に対する、前記水洗浄工程(3)で得られる前記水で洗浄された吸水性樹脂の抽出液導電率E1の割合(E1/E0)により判定することをさらに含む、請求項5に記載の製造条件の判定方法。
(ここで、前記酸処理工程(2)または前記水洗浄工程(3)において、吸水性樹脂が分散液中に存在する状態で得られる場合、吸水性樹脂の抽出液導電率は、以下の(i)~(iii)に示す工程からなる方法にて測定される;
(i)前記酸処理工程(2)または前記水洗浄工程(3)で得られた吸水性樹脂の分散液に対して、100メッシュの金網を用いてろ過し、1分間放置する操作を行い、ろ過後の吸水性樹脂を得る工程。
(ii)ビーカーに、工程(i)で得られたろ過後の吸水性樹脂と、前記ろ過後の吸水性樹脂の重量の4倍の重量の脱イオン水を加え、25℃の温度にて、スターラーで20分間撹拌して、抽出液を得る工程。
(iii)工程(ii)で得られた抽出液の導電率を、導電率計を用いて測定する工程。
また、前記酸処理工程(2)または前記水洗浄工程(3)において、吸水性樹脂が分散液から取り出された状態で得られる場合、吸水性樹脂の抽出液導電率は、以下の(iv)および(v)に示す工程からなる方法にて測定される;
(iv)ビーカーに、前記酸処理工程(2)または前記水洗浄工程(3)で得られた吸水性樹脂と、前記吸水性樹脂の重量の4倍の重量の脱イオン水を加え、25℃の温度にて、スターラーで20分間撹拌して、抽出液を得る工程。
(v)工程(iv)で得られた抽出液煮の導電率を、導電率計を用いて測定する工程。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生吸水性樹脂の製造方法および当該製造方法における製造条件の判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、吸収性物品には、吸水性樹脂だけでなく、屎尿等の吸収を助ける目的で多量のパルプ成分も使用されている。現在、使用後の吸収性物品は、その殆どが焼却処理されている。しかしながら、資源保護や環境保護の観点からは、使用済の吸収性物品に含まれるパルプ成分および吸水性樹脂を分離回収して、再生パルプ成分および再生吸水性樹脂を製造し、これらを再利用することが望ましい。
【0003】
使用済の吸収性物品からパルプ成分および吸水性ポリマーを分離回収する既存の方法としては、例えば、特許文献1に記載された、使用済の吸収性物品(衛生用品)を離解して水に分散させる工程と、吸収性物品に含まれるパルプ成分(繊維)および吸水性ポリマー(吸水性樹脂)を分離回収する工程とを含む方法が知られている。
【0004】
一方、特許文献1に記載の使用済の吸収性物品に含まれる吸水性樹脂は、吸水性能が低下している。よって、上記吸水性樹脂を再生吸水性樹脂として再利用するためには、当該吸水性樹脂を、その吸収性能を回復して再生する必要がある。
【0005】
上記吸水性樹脂を再生し、再生吸水性樹脂を製造する従来の方法として、例えば、以下に示す方法を挙げることができる。
・使用済の吸収性物品から得られる吸水性樹脂の分散液に対して、遷移金属塩単独または遷移金属塩とアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩との混合物を添加する脱水処理工程、酸処理工程およびアルカリ処理工程を、この順で実施する方法(特許文献2)。
・使用済の吸収性物品から得られる吸水性樹脂に対して、当該吸水性樹脂のpHを変化させる操作、温度を変化させる操作及び親水性有機溶剤に接触させる操作から選択される、吸収した被吸収液を排出する環境に置く操作を実施する方法(特許文献3)。
・使用済の吸収性物品から得られる吸水性樹脂を多価金属塩水溶液で処理する工程、および、当該多価金属塩水溶液で処理された吸水性樹脂をアルカリ金属塩水溶液で処理する工程を含む方法(特許文献4)。
・使用済の吸収性物品から得られる吸水性樹脂を酸により不活性化する工程、当該酸により不活性化された吸水性樹脂に対してアルカリ金属イオン供給源を添加して、湿潤状態における高吸水性リサイクルポリマーを形成する工程、および、当該湿潤状態における高吸水性リサイクルポリマーを乾燥する工程を含む方法(特許文献5)。
【0006】
上に挙げた方法のうち、特に特許文献2に記載の方法は、特許文献1等に記載の既存の方法で運用されているシステムを流用できる可能性があり、早期の実用化が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-150976号公報
【特許文献2】特開2003-225645号公報
【特許文献3】特開2003-326161号公報
【特許文献4】特開2013-198862号公報
【特許文献5】特開2019-135046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的に、再生吸水性樹脂の原料となる回収された使用済の吸収性物品から得られる吸水性樹脂は、吸収性物品毎に、屎尿等の吸収液体の含有量および/または吸水性樹脂の含有量等が異なっている。また、特許文献2に記載の方法においては、持ち込まれる上記使用済の吸収性物品をそのまま上記脱水工程に供する場合があり、その場合、処理するロットごとに当該使用済の吸収性物品における吸水性樹脂の含有量が多い場合と少ない場合があり安定していない。よって、上述の従来の方法において、上記酸処理工程で使用する酸等の使用する剤の必要な添加量などの製造条件を決定することは困難となっている。従って、上述の従来の方法には、上記剤の添加量が必要量に満たない場合に、上記吸水性樹脂の吸水性能の回復が不十分となり、得られる再生吸水性樹脂の吸水性能が低下するおそれがあるとの問題が存在する。また、上述の従来の方法には、上記剤の添加量が必要量に対して過剰な場合、コストが必要以上に増大すると共に、再生吸水性樹脂の吸水性能が低下する恐れがある、との問題も存在する。
【0009】
本発明の一実施形態は、上述の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、使用済の吸収性物品中に含まれる吸水性樹脂含有量が不明な場合でも、再生吸水性樹脂の製造方法における処理で使用する添加剤(前記の酸等)の量を決定し、から、その結果として吸水性能が十分に回復し、吸水性能に優れる再生吸水性樹脂を効率よく製造し得る再生吸水性樹脂の製造方法および当該製造方法における製造条件の判定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究の結果、特許文献2に記載の方法における上記酸処理工程において、上記分散液のpHが特定の範囲となるように上記酸の添加量を調節することにより、上記酸処理工程で使用する酸の使用量についての上述の問題を解決することができることを見出し、本発明に想到した。
【0011】
すなわち、本発明の一形態は、使用済の吸収性物品に含まれる吸水性樹脂から、再生吸水性樹脂を製造する方法であって、前記吸水性樹脂は、部分中和されたカルボキシル基を有する重合体を含み、前記吸水性樹脂を多価金属塩で処理する脱水工程(1)と、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂を酸性物質で処理する酸処理工程(2)と、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂を水で洗浄する水洗浄工程(3)と、前記水で洗浄された吸水性樹脂をアルカリ金属塩で中和する中和工程(4)と、前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂を乾燥させ、再生吸水性樹脂を得る乾燥工程(5)と、を含み、前記酸処理工程(2)において、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂の分散液に対して、前記分散液のpHが-1.0~3.0となるように前記酸性物質を添加する、再生吸水性樹脂の製造方法である。
【0012】
また、本発明の別の一形態は、使用済の吸収性物品に含まれる吸水性樹脂から、再生吸水性樹脂を製造する方法における製造条件の判定方法であって、前記吸水性樹脂は、部分中和されたカルボキシル基を有する重合体を含み、前記吸水性樹脂を多価金属塩で処理する脱水工程(1)と、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂を酸性物質で処理する酸処理工程(2)と、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂を水で洗浄する水洗浄工程(3)と、前記水で洗浄された吸水性樹脂をアルカリ金属塩で中和する中和工程(4)と、前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂を乾燥させ、再生吸水性樹脂を得る乾燥工程(5)と、を含む再生吸水性樹脂を製造する方法において、前記酸処理工程(2)の終点を、前記酸処理工程(2)中における、前記酸性物質が添加された、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂の分散液のpHにより判定することを含む、再生吸水性樹脂を製造する方法における製造条件の判定方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、使用済の吸収性物品中に含まれる吸水性樹脂の含有量が不明な場合でも、再生処理で使用する添加剤(前記の酸等)の量を決定し、その結果として吸水性能が十分に回復しており、吸水性能に優れる再生吸水性樹脂を製造することができ、かつ、再生吸水性樹脂の製造に要するコストが過剰に増大することを防止できるとの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る再生吸水性樹脂の製造方法の一例を構成する各工程の態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に関して以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態に関しても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0016】
〔1.用語の定義〕
[1-1.吸水性樹脂]
本明細書において「吸水性樹脂」とは、NWSP 241.0.R2(15)により規定される水膨潤性(CRC)が5g/g以上であり、かつ、NWSP 270.0.R2(15)により規定される水可溶成分(Ext)が70重量%以下である高分子ゲル化剤をいう。
【0017】
なお、「NWSP」は「Non-Woven Standard Procedures-Edition 2015」を表す。NWSPは、EDANA(European Disposables And Nonwovens Association、欧州不織布工業会)とINDA(Association of the Nonwoven Fabrics Industry、北米不織布工業会)とが、不織布及びその製品の評価法を米国および欧州で統一して共同で発行したものであり、吸水性樹脂の標準的な測定法を示すものである。特に断りのない限り、本明細書ではNWSPに準拠して、吸水性樹脂の物性を測定する。
【0018】
本明細書において「吸水性樹脂」とは、全量(100重量%)が当該吸水性樹脂のみである態様に限定されず、添加剤などを含んでいる吸水性樹脂組成物であってもよい。また、本明細書において「吸水性樹脂」とは、使用済の吸収性物品に含まれている態様の吸水性樹脂だけでなく、本発明の一実施形態に係る再生吸水性樹脂の製造方法を構成する各工程に供される吸水性樹脂、すなわち、再生吸水性樹脂の製造方法における中間体を含んでも良く、当該製造方法にて得られる再生吸水性樹脂を含んでも良い。また、前記中間体である吸水性樹脂は、その内部に水が取り込まれた含水ゲルの状態となり得る。よって、前記吸水性樹脂は、含水ゲルの状態である吸水性樹脂を含んでも良い。前記吸水性樹脂は、部分中和されたカルボキシル基を有する重合体を含む。
【0019】
[1-2.使用済の吸収性物品]
本明細書において「吸収性物品」とは、吸水性樹脂を構成材料として含み、吸液性を備える物品を意味する。前記「吸収性物品」は、吸水性樹脂以外の構成材料として、一般に、パルプ、不織布・プラスチック等を含む。前記吸収性物品は、特に限定されず、例えば、紙おむつ、失禁パッド、生理用ナプキン等の衛生材料を挙げることができる。
【0020】
本明細書において「使用済の吸収性物品」とは、液体を吸収した状態の吸収性物品を意味する。前記液体としては、特に限定されず、例えば、屎尿、血液、汗等の体液、生理食塩水等を挙げることができる。
【0021】
本明細書において、後述する破砕工程により破砕された使用済の吸収性物品もまた、「使用済の吸収性物品」に包含される。
【0022】
[1-3.その他]
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上、Y以下」を意味する。
【0023】
本明細書において、「~酸(塩)」は「~酸及び/又はその塩」を意味する。「(メタ)アクリル」は「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。「ポリ・・・系吸水性樹脂」とは、繰り返し単位として「・・・」に記載された単量体(モノマー)を主成分とする吸水性樹脂を意味する。具体的には、総単量体(架橋剤を除く)に対する「・・・」に記載された単量体のモル比率が、好ましくは50~100モル%、より好ましくは70~100モル%、さらに好ましくは90~100モル%、特に好ましくは実質100モル%の吸水性樹脂を意味する。
【0024】
本明細書においては、体積の単位「リットル」を「l」又は「L」と表記する場合がある。
【0025】
〔2.再生吸水性樹脂の製造方法〕
本発明の一実施形態に係る再生吸水性樹脂の製造方法は、使用済の吸収性物品に含まれる吸水性樹脂から、再生吸水性樹脂を製造する方法であって、前記吸水性樹脂は、部分中和されたカルボキシル基を有する重合体を含み、前記吸水性樹脂を多価金属塩で処理する脱水工程(1)と、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂を酸性物質で処理する酸処理工程(2)と、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂を水で洗浄する水洗浄工程(3)と、前記水で洗浄された吸水性樹脂をアルカリ金属塩で中和する中和工程(4)と、前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂を乾燥させ、再生吸水性樹脂を得る乾燥工程(5)と、を含み、前記酸処理工程(2)において、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂の分散液に対して、前記分散液のpHが-1.0~3.0となるように前記酸性物質を添加する。
【0026】
以下、前記再生吸水性樹脂の製造方法を構成する各工程について詳述する。なお、以下の説明において、本発明の一実施形態に係る再生吸水性樹脂の製造方法の一例を構成する各工程の態様を示す模式図である
図1を適宜参照する。
【0027】
また、各工程の反応については、回分(バッチ)の反応として実施してもいいし、反応に必要な時間が確保できるのであれば連続的に反応させても良い。
【0028】
[2-1.脱水工程]
本発明の一実施形態における脱水工程(1)は、使用済の吸収性物品に含まれる吸水性樹脂を多価金属塩で処理する工程である。ここで、「多価金属塩で処理」とは、多価金属塩を添加して、前記使用済の吸収性物品に含まれる吸水性樹脂に吸収された液体の少なくとも一部を排出(脱水)させることを意味する。
【0029】
前記脱水工程(1)に供される吸水性樹脂は、使用済の吸収性物品から予め分離された吸水性樹脂であっても良く、使用済の吸収性物品に含まれている態様の吸水性樹脂であっても良い。使用済の吸収性物品に含まれている態様の吸水性樹脂を前記脱水工程(1)に供するとは、使用済の吸収性物品、または後述の破砕工程により破砕された使用済の吸収性物品をそのまま前記脱水工程(1)に供することを意味する。その場合、その後、前記多価金属塩で処理された使用済の吸収性物品から吸水性樹脂を分離することにより、多価金属塩で処理された吸水性樹脂を得ることができる。また、使用済の吸収性物品から予め分離された吸水性樹脂は、例えば、後述の破砕工程および/または分離工程によって得られた吸水性樹脂であり得る。
【0030】
前述の使用済の吸収性物品から吸水性樹脂を分離する方法は、特に限定されず、既知の方法を使用することができる。上記既知の方法として、例えば、以下に示す破砕工程および/または分離工程を含む方法を挙げることができる。
【0031】
前記破砕工程は、使用済の吸収性物品を破砕する工程である。前述の破砕は、撹拌、切断、裁断、破砕等の物理的な力で行われる。前述の破砕は、使用済の吸収性物品を水中(水溶液中)に浸漬した状態で行われてもよい。また、後述する分離工程で吸水性樹脂の分離を容易にするため、前述の破砕は、前記使用済の吸収性物品を撹拌しながら当該吸収性物品を破砕してもよい。
【0032】
前記分離工程は、破砕された使用済の吸収性物品を、吸水性樹脂を含む各構成材料に分離して、少なくとも当該吸水性樹脂を回収する工程である。前記分離工程において、前記吸水性樹脂以外の各構成材料を回収してもよい。なお、前記分離工程にて回収される吸水性樹脂は、含水ゲルの状態の吸水性樹脂である。
【0033】
前述の各構成材料を分離させる方法としては、特に限定されず、例えば、スクリーンを使用して各構成材料を分離し回収する方法、水中に分散した状態の前記破砕した吸収性物品から、各々の構成材料の比重の違いを利用して、各構成材料を分離し回収する方法が挙げられる。また、例えば、前記破砕工程として水中で吸収性物品を破砕して、水中に分散した状態の前記の破砕した吸収性物品を調製すると同時に、前記分離工程を実施することも可能である。
【0034】
前記使用済の吸収性物品は、前記脱水工程(1)または当該脱水工程(1)の前に前記破砕工程を実施する場合の当該破砕工程の前に、洗浄および/または殺菌されていてもよい。前述の洗浄および/または殺菌は、高温高圧下の環境下に置くことにより、前記使用済の吸収性物品に含まれる有害菌を死滅させても良く、あるいは、薬剤を用いて当該有害菌を死滅させても良い。薬剤を使用する場合、その薬剤は所望の清浄さを得られる限り特に限定されない。前記薬剤としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウムおよび二酸化塩素等の消毒薬を溶かした水溶液、並びに、オゾン水、並びに、電解水(酸性電解水)等を例示することができる。ここで、前記薬剤を使用して洗浄および/または殺菌を実施した場合、前記吸水性樹脂と前記薬剤とを含む溶液(分散液)を得ることができる。また、特に、オゾン水を使用して、前述の洗浄および/または殺菌を実施する場合は、前述の洗浄および/または殺菌を酸性条件下で実施することが好ましい。さらに、前述の洗浄および/または殺菌において、撹拌翼を有する槽内で実施すること、および/または、前記溶液を対流させたりして、前記吸収性物品と前記薬剤とを効率良く混合することが好ましい。
【0035】
前述の洗浄および/または殺菌の後は、前記液体から、例えば、ろ過操作等の公知の方法により、洗浄および/または殺菌された吸収性物品を分離する。分離された吸収性物品は、前記脱水工程(1)または当該脱水工程(1)の前に前記破砕工程を実施する場合の当該破砕工程に供することができる。
【0036】
前記吸水性樹脂は、部分中和されたカルボキシル基を有する重合体を含む。前記重合体は、特に限定されず、例えば、橋かけポリ(メタ)アクリル酸塩系重合体、イソブチレン/マレイン酸塩系共重合体、デンプン/ポリアクリル酸塩系共重合体、ポリビニルアルコール(PVA)/ポリアクリル酸塩系共重合体、デンプン/ポリアクリロニトリル共重合体(加水分解してニトリル基をカルボン酸塩にしている)、橋かけカルボキシルメチルセルロース(セルロースにカルボキシルメチル基を結合させたもの)等を挙げることができる。前記吸水性樹脂は、橋かけ構造を有する三次元架橋体であり得る。前記吸水性樹脂は、好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーの三次元架橋体である。
【0037】
前記吸水性樹脂は、カルボキシル基(-C(=O)OH)および中和されたカルボキシル基(-C(=O)O-とA+からなる基、A+:カチオン)を備える。ここで、前記A+:カチオンは、1価のカチオンであり、例えば、ナトリウムイオン(Na+)等のアルカリ金属イオンである。よって、前記吸水性樹脂は、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属塩で部分的に中和されたカルボキシル基を備える重合体であり得る。
【0038】
使用済の吸収性物品に含まれる吸水性樹脂(以下、「使用済の吸水性樹脂」と称する)は、液体(屎尿等)を吸収して膨潤状態となっている。ここで、「使用済の吸水性樹脂」は、脱水工程(1)に供される吸水性樹脂である。膨潤状態の吸水性樹脂は、解離したA
+が生じる浸透圧と解離したカルボキシル基(C(=O)O
-)の静電反発により液体(屎尿等)を吸収し、保持している。前記浸透圧は、吸水性樹脂内部のイオン濃度[A
+、C(=O)O-]が、吸水性樹脂の外部に存在する前記液体のイオン濃度より高いために、吸水性樹脂の内部と外部の濃度差を解消する方向に作用する。言い換えると、前記浸透圧は、外部の液体が吸水性樹脂の内部に入り込む、すなわち吸水性樹脂が外部の液体を吸収し、保持するように作用する。一方、前記静電反発は、吸水して膨潤状態となった吸水性樹脂内部において、解離したカルボキシル基同士が反発して、当該解離したカルボキシル基間の距離を広げる方向に作用する。よって、前記解離したカルボキシル基間に隙間が発生し、その隙間に外部の液体が入り込む。また、同時に、当該解離したカルボキシル基と外部の液体を構成する分子(例えば、水分子)との間に静電引力が生じ、当該外部の液体を構成する分子が当該隙間にトラップされる。従って、前記静電反発は、吸水性樹脂が、外部の液体を吸収し、保持するように作用する。その結果、当該液体は、前記「使用済の吸水性樹脂」に吸収されており、かつ、保持されている。ここで、膨潤状態の吸水性樹脂が、多価金属イオンと接触する場合、
図1の「脱水工程」の前後の構造式に示すように、複数の解離したカルボキシ基同士の間が、多価金属イオン(例えば、Ca
2+)を介してイオン架橋される。前記イオン架橋することにより、膨潤状態の吸水性樹脂は収縮し、その結果、当該膨潤状態の吸水性樹脂が吸収していた液体は放出される。従って、「使用済の吸水性樹脂」は、前記多価金属塩で処理される際に、多価金属イオンと接触し、その結果、吸収している液体を放出して脱水される。以下、前述の膨潤状態の吸水性樹脂が吸収していた液体を放出させる操作を、「脱水操作」と称する。
【0039】
前記脱水操作において、前記多価金属塩で処理、すなわち多価金属塩を添加する方法としては、例えば、使用済吸収性物品または使用済吸水性樹脂と、多価金属塩を含有する水溶液とを接触させる方法を挙げることができる。具体的には、使用済吸収性物品または使用済吸水性樹脂を、多価金属塩を含有する水溶液に浸漬する方法を挙げることができる。また、使用済吸収性物品または使用済吸水性樹脂を、攪拌下にて、多価金属化合物を含む水溶液と接触させることが好ましい。
【0040】
前記多価金属塩としては、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩等が使用できる。
【0041】
前記アルカリ土類金属塩としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の水溶性の塩が使用できる。これらから1種を選択し使用しても良いし、2種以上を併用してもよい。好ましいアルカリ土類金属塩の例示物質としては、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム等が挙げられ、中でも塩化カルシウムがより好ましい。
【0042】
前記遷移金属塩としては、鉄、コバルト、ニッケル、銅等の水溶性の塩が挙げられる。前記遷移金属塩としては、吸水性ポリマーに取り込まれるものであれば、無機酸塩、有機酸塩、錯体等を問わず用いられる。そのうち、費用や入手容易性等の点から、前記遷移金属塩としては、無機酸塩または有機酸塩が好ましい。前記無機酸塩としては、例えば、塩化鉄、硫酸鉄、燐酸鉄、硝酸鉄等の鉄塩;塩化コバルト、硫酸コバルト、燐酸コバルト、硝酸コバルト等のコバルト塩;塩化ニッケル、硫酸ニッケル等のニッケル塩;塩化銅、硫酸銅等の銅塩などが挙げられる。前記有機酸塩類としては、例えば、乳酸鉄、酢酸コバルト、ステアリン酸コバルト、酢酸ニッケル、酢酸銅等が挙げられる。
【0043】
前記多価金属塩の使用量は、前記脱水操作後、すなわち前記多価金属塩で処理された後の吸水性樹脂の収縮状態から決定すればよい。ここで、使用済の吸収性物品に多価金属塩を添加する場合は、前記多価金属塩で処理された後の吸水性樹脂とは、多価金属塩を添加した後の当該使用済の吸収性物品に含まれる吸水性樹脂である。また、使用済の吸水性樹脂に多価金属塩を添加する場合は、前記多価金属塩で処理された後の吸水性樹脂とは、多価金属塩を添加した後の当該吸水性樹脂である。前記多価金属塩の使用量の決定方法は、例えば、使用済の吸収性物品または使用済の吸水性樹脂に対して一定量の多価金属塩を使用して前記脱水操作を行った後、前記多価金属塩で処理された後の吸水性樹脂の一部を取り出して、その収縮状況を目視で確認して判断すればよい。前記多価金属塩で処理された後の吸水性樹脂の収縮が不十分な場合は、前記多価金属塩で処理された後の吸水性樹脂に対して、多価金属塩を追加添加して、再度脱水操作を行うことにより、十分に脱水させる。ただし、多価金属塩の量が過剰すぎると、余分の多価金属イオンが使用済の吸水性樹脂に取り込まれないまま処理液中に残るので、多価金属塩の浪費につながり、処理費用を増大させる。
【0044】
前記多価金属塩による処理における処理時間は、多価金属イオンが使用済の吸水性樹脂に取り込まれるのに十分な時間であれば特に限定されず、好ましくは5分~3時間、より好ましくは5分~2時間、さらに好ましくは5分~1時間である。前記多価金属塩による処理における処理時間が短すぎると、使用済の吸水性樹脂の脱水性が不十分となり、内部に液体成分が多く残ってしまう。前記多価金属塩による処理における処理時間が長すぎると、使用済の吸水性樹脂に取り込まれる多価金属イオンの量は飽和するので、その値を超える処理時間は経済的に好ましくない。前記多価金属塩による処理における処理時間は、使用済の吸収性物品または使用済の吸水性樹脂に対して多価金属塩の添加を開始した時点から、後述の多価金属塩で処理された吸水性樹脂を取り出す操作を行うまでの時間を意味する。
【0045】
前記多価金属塩による処理における反応温度は、多価金属イオンが使用済の吸水性樹脂に取り込まれる温度であれば特に限定されない。前記多価金属塩による処理における反応温度は、好ましくは5~80℃、より好ましくは10~70℃、さらに好ましくは15~60℃である。前記反応温度は、前記多価金属塩と、前記使用済の吸収性物品または使用済の吸水性樹脂とを含む混合物、例えば水溶液の温度を意味する。
【0046】
前記多価金属塩で処理された後の吸水性樹脂は、水等の液体を含む分散液(以下、「脱水工程(1)における分散液」と称する)中に存在する状態となる。前記脱水工程(1)にて得られる前記多価金属塩で処理された後の吸水性樹脂は、脱水工程(1)における分散液中に存在したままの状態でもあり得る。また、前記脱水工程(1)にて得られる前記多価金属塩で処理された後の吸水性樹脂は、前記脱水工程(1)における分散液から取り出された状態であり得る。ここで、使用済の吸収性物品に対して、前記脱水操作を行った場合には、前記多価金属塩で処理された後の吸水性樹脂を取り出す操作としては、例えば、前述の分離操作または破砕操作と分離操作を使用することができる。また、使用済の吸水性樹脂に対して、前記脱水操作を行った場合には、前記多価金属塩で処理された後の吸水性樹脂を取り出す操作としては、例えば、ろ過操作等の公知の方法を使用することができる。
【0047】
[2-2.酸処理工程]
本発明の一実施形態における酸処理工程(2)は、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂を酸性物質で処理する工程である。ここで、前記「酸性物質で処理する」とは、通常、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂の分散液(水等の分散溶媒を含む)に対して、前記酸性物質を添加することを意味する。
【0048】
前記酸処理工程(2)において、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂の分散液(以下、「酸処理工程(2)における分散液」とも称する)を調製した後、当該酸処理工程(2)における分散液に対して酸性物質を添加することにより、前記酸処理工程(2)における分散液中の前記吸水性樹脂を、前記酸性物質と接触させ、当該酸性物質で処理してもよい。前記酸処理工程(2)における分散液の調製は、分散溶媒に前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂に添加することによって行われ得る。また、前記酸処理工程(2)における分散液の調製と前記酸性物質の添加を同時に行うことにより、前記酸処理工程(2)における分散液中の前記吸水性樹脂を、前記酸性物質と接触させ、当該酸性物質で処理してもよい。前記酸処理工程(2)における分散液の調製と前記酸性物質の添加を同時に行うとは、当該酸性物質を含む溶液に前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂を添加して、前記酸処理工程(2)における分散液を調製すると共に、当該酸処理工程(2)における分散液中の前記吸水性樹脂と前記酸性物質とを接触させることを意味する。前記分散溶媒および/または前記酸性物質を含む溶液における溶媒は、前記酸処理工程(2)における分散液を調製することができる溶媒であれば特に限定されず、例えば、水を使用することができる。
【0049】
なお、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂が、前記脱水工程(1)における分散液中に存在したままの状態である場合、当該脱水工程(1)における分散液に対して、前記酸性物質を添加することにより、前記脱水工程(1)における分散液中の前記吸水性樹脂を、前記酸性物質と接触させ、当該酸性物質で処理してもよい。
【0050】
前記酸処理工程(2)においては、前記酸性物質を含む溶液を攪拌させながら、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂を添加することで、当該酸性物質と当該多価金属塩で処理された吸水性樹脂とを接触させることがより好ましい。
【0051】
前記酸処理工程(2)において、
図1の「酸処理工程」の前後の構造式に示すように、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂を酸性物質で処理することにより、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂中の解離したカルボキシル基(C(=O)O
-)と、前記多価金属イオン(例えば、Ca
2+)との結合を解離させる。その結果、前記多価金属イオンが当該多価金属塩で処理された吸水性樹脂から離脱し、遊離酸状態のカルボキシル基(C(=O)OH)を有する吸水性樹脂が得られる。
【0052】
前記酸性物質としては、特に限定されず、例えば、無機酸および/または有機酸が使用できる。
【0053】
前記無機酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸等が挙げられる。前記有機酸としては、酸基、例えば、カルボキシル基、スルホ基等を有する有機物が挙げられる。前記酸性物質としては、前述の無機酸と有機酸の中から1種選択した酸性物質を使用してもよいし、2種以上選択した酸性物質の混合物を使用してもよい。前記酸性物質として、無機酸と有機酸を併用してもよい。具体的な前記有機酸としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、シュウ酸、グルコン酸、ペンタン酸、ブタン酸、プロピオン酸、グリコール酸、酢酸、蟻酸、スルホン酸等が挙げられる。前記スルホン酸としては、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等が挙げられる。
【0054】
前記酸性物質は、当該酸性物質を添加した後の前記分散液(以下、「反応液」とも称する)のpHが-1.0~3.0、好ましくは0~2.8、より好ましくは0.5~2.5となるように、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂に添加される。ここで、前記反応液のpHは、前記酸性物質の添加量を調節することによって制御することができる。よって、前記酸処理工程(2)においては、前記反応液のpHが前述の好ましい範囲内となるような量の前記酸性物質を、前記酸処理工程(2)における分散液に対して添加することが好ましい。
【0055】
前記反応液のpHが小さいことは、当該反応液中に存在するプロトン(H+)の濃度が大きいことを意味する。ここで、前述の解離の反応は、(COOX)n+nH+⇔nCOOH+Xn+(式中:Xは多価金属を意味し、nは、当該多価金属の価数を表す)の反応式で表される可逆反応である。前記反応液のpHが小さい場合、前記反応式における平衡が右側、すなわち解離側に偏り、前記反応液中に存在する遊離酸状態のカルボキシル基(-COOH)の量が多くなる。なお、前記解離の反応式における平衡は、言い換えると、カルボキシル基と多価金属イオンとの結合の平衡である。
【0056】
前記遊離酸状態のカルボキシル基は、後述の中和工程により、特定の中和率にて中和される。中和されたカルボキシル基は、屎尿等の液体を吸収する機能を有する。一方、多価金属イオンと結合してイオン架橋された状態のカルボキシル基は、前記中和工程を経た場合であっても、前記液体を吸収する機能が減少してしまう。よって、前述の結合の解離が不十分である場合、後述の乾燥工程にて得られる再生吸水性樹脂の吸水性能の回復が不十分となり、当該再生吸水性樹脂の吸水性能が低下する。
【0057】
前記反応液のpHが、前述の範囲の上限値以下である場合、カルボキシル基と多価金属イオンとの結合の平衡が大きく解離側に偏るため、前述の結合の解離が十分に進行していることを意味する。よって、前記反応液のpHが、前述の範囲の上限値以下であることにより、前記再生吸水性樹脂における吸水性能(例えば、CRC)の回復が十分であり、当該再生吸水性樹脂の吸水性能を向上させることができる。また、前記反応液のpHが前述の範囲の下限値以上であることは、必要以上の酸性物質を使用することによるコストの過剰な増大を防止することができ、経済的に好ましい。
【0058】
前記反応液のpHの測定方法は、特に限定されず、例えば、市販のpH試験紙および/または市販のpHメーター等を使用して測定することができる。ここで、例えば、後述する〔3.再生吸水性樹脂を製造する方法における製造条件の判定方法〕の欄に記載された方法によって、前記反応液のpHが所定の範囲になるように、前記酸性物質は前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂に添加される。
【0059】
前記酸性物質による処理における反応温度は、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂のカルボキシル基と、多価金属イオンとの結合を解離できる温度であれば特に限定されない。前記酸性物質による処理における反応温度は、好ましくは5~80℃、より好ましくは10~70℃、さらに好ましくは15~60℃である。前記酸性物質による処理における反応温度は、酸処理工程(2)における分散液の、酸性物質を添加する直前および添加後の温度(もしくは、酸性物質を添加する直前から酸処理工程の終了時までの間の温度)を意味する。
【0060】
前記酸処理工程(2)にて得られる前記酸性物質で処理された吸水性樹脂は、前記酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液中に存在したままの状態であり得る。また、前記酸処理工程(2)にて得られる前記酸性物質で処理された吸水性樹脂は、前記酸性物質による処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液から取り出された状態であり得る。ここで、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂を取り出す操作としては、特に限定されず、例えば、ろ過操作等の公知の方法を使用することができる。前記ろ過操作の具体例としては、例えば、前記酸性物質により処理が終了した後の酸処理工程(2)における分散液を100メッシュの金網を用いてろ過し、1分間放置する操作を挙げることができる。
【0061】
[2-3.水洗浄工程]
本発明の一実施形態における水洗浄工程(3)は、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂を水で洗浄して、水で洗浄された吸水性樹脂を得る工程である。
【0062】
前記水洗浄工程(3)において、前記酸処理工程(2)で得られる前記酸性物質で処理された吸水性樹脂の抽出液導電率E0に対する、前記水洗浄工程(3)で得られる前記水で洗浄された吸水性樹脂の抽出液導電率E1の割合(E1/E0)が0.40未満となるように、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂を水で洗浄することが好ましい。その場合、前記水洗浄工程(3)を実施する前に、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂の抽出液導電率E0を、後述の方法により、予め測定する必要がある。前記抽出液導電率E0は、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂に残留する前記多価金属イオンの量を表すパラメータである。
【0063】
前記水洗浄工程(2)は、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂を水で洗浄することにより、当該前記酸性物質で処理された吸水性樹脂の表面、当該吸水性樹脂の内部および/または当該吸水性樹脂の粒子間における隙間に存在する多価金属イオンを洗い流す工程である。
【0064】
前記再生吸水性樹脂に、前記多価金属イオンが多く残留している場合、当該再生吸水性樹脂の吸水性能(例えば、無加圧下吸水倍率(CRC)および/または吸水速度等)が低下する恐れがある。なお、吸水速度は、例えば、vortexの値にて表わされる。よって、前記水洗浄工程を実施することにより、前記再生吸水性樹脂に残留する前記多価金属イオンを除去するか、あるいは、その含有量を低減することができる。その結果、再生吸水性樹脂の吸水性能(例えば、無加圧下吸水倍率(CRC)および/または吸水速度等)を向上させることができる。
【0065】
ここで、前記再生吸水性樹脂に残留する前記多価金属イオンの量は、前記水で洗浄された吸水性樹脂に残留する前記多価金属イオンの量により決定される。また、吸水性樹脂に残留する前記多価金属イオンの量は、後述の方法にて測定される、前記水で洗浄された吸水性樹脂の抽出液導電率E1と相関性を有する。
【0066】
前記酸性物質で処理された吸水性樹脂の抽出液導電率E0または前記水で洗浄された吸水性樹脂の抽出液導電率E1は、前記酸処理工程(2)または前記水洗浄工程(3)において、吸水性樹脂が分散液中に存在する状態で得られる場合、以下の(i)~(iii)に示す工程からなる方法にて測定される;
(i)前記酸処理工程(2)または前記水洗浄工程(3)で得られた吸水性樹脂の分散液に対して、100メッシュの金網を用いてろ過し、1分間放置する操作を行い、ろ過後の吸水性樹脂を得る工程。
【0067】
(ii)ビーカーに、工程(i)で得られたろ過後の吸水性樹脂と、前記ろ過後の吸水性樹脂の重量の4倍の重量の脱イオン水を加え、25℃の温度にて、スターラーで20分間撹拌して、抽出液を得る工程。
【0068】
(iii)工程(ii)で得られた抽出液の導電率を、導電率計を用いて測定する工程。
【0069】
また、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂の抽出液導電率E0または前記水で洗浄された吸水性樹脂の抽出液導電率E1は、前記酸処理工程(2)または前記水洗浄工程(3)において、吸水性樹脂が分散液から取り出された状態で得られる場合、以下の(iv)および(v)に示す工程からなる方法にて測定される;
(iv)ビーカーに、前記酸処理工程(2)または前記水洗浄工程(3)で得られた吸水性樹脂と、前記吸水性樹脂の重量の4倍の重量の脱イオン水を加え、25℃の温度にて、スターラーで20分間撹拌して、抽出液を得る工程。
【0070】
(v)工程(iv)で得られた抽出液の導電率を、導電率計を用いて測定する工程。
【0071】
前記酸性物質で処理された吸水性樹脂の抽出液導電率E0を測定する際に、前記工程(ii)および前記工程(iv)の前記抽出液を得る操作は、後述の洗浄操作にも該当する。そのため、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂の抽出液導電率E0を測定した後の前記抽出液から、後述の水で洗浄された吸水性樹脂を取り出す操作を行うことにより得られる吸水性樹脂を、前記水で洗浄された吸水性樹脂とすることもできる。
【0072】
前記水洗浄工程(3)において、前記抽出液導電率E0に対する、前記抽出液導電率E1の割合(E1/E0)が、好ましくは、0.40未満、より好ましくは、0.35以下、さらに好ましくは、0.30以下となるように、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂を水で洗浄する。
【0073】
前記割合(E1/E0)が前述の範囲内であることは、前記水洗浄工程(3)において、多量の前記多価金属イオンが除去されたことを意味する。よって、前記水で洗浄された吸水性樹脂に残留する前記多価金属イオンの量が好適に減少しており、その結果、再生吸水性樹脂の吸水性能(例えば、無加圧下吸水倍率(CRC)および/または吸水速度等)をより好適に向上させることができる。
【0074】
また、前記抽出液導電率E0の上限値は、50mS/cm以下であることが好ましく、40mS/cm以下であることがより好ましく、30mS/cm以下であることがさらに好ましい。さらに、前記抽出液導電率E0の下限値は、通常、10mS/cm以上である。
【0075】
前記割合(E1/E0)が前述の範囲内であり、かつ、前記抽出液導電率E0が前述の範囲内である場合、前記抽出液導電率E1がより小さい値であることを意味する。よって、その場合には、前記水で洗浄された吸水性樹脂に残留する前記多価金属イオンの量がより好適に減少している。その結果、再生吸水性樹脂の吸水性能(例えば、無加圧下吸水倍率(CRC)および/または吸水速度等)がさらに好適に向上する。
【0076】
前記水洗浄工程(3)における、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂を水で洗浄する操作(以下、「洗浄操作」と称する)は、特に限定をされず、公知の方法を使用することができる。前記洗浄操作としては、例えば、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂を、水中に浸漬して撹拌する操作、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂に対して、水の噴射またはシャワーなどを用いてかけ洗いを行う操作等を挙げることができる。また、前記洗浄操作は繰り返し行っても良い。前記洗浄操作を繰り返し行うことにより、洗浄効果が高くなり、より多量の前記多価金属イオンを前記酸性物質で処理された吸水性樹脂から除去することができる。
【0077】
前記洗浄操作に使用する水(洗浄水)の種類としては、脱イオン水、水道水、蒸留水などが使用できる。この後に、前記抽出液導電率E1の測定を行う場合、残存する多価金属イオン量を導電率測定で判定するため、洗浄水としてはイオンを含まない水を使用することがより好ましい。ここで、イオンを含まない水とは、前記割合(E1/E0)にほとんど影響を与えない程度に、イオンの含有量が少ない水であることを意味する。ここで、水におけるイオンの含有量と、当該水の導電率は相関している。よって、水の導電率が特定の値以下の小さい値であることは、当該水が前述の前記割合(E1/E0)にほとんど影響を与えない程度に、イオンの含有量が少ない水であることを意味する。具体的には、前記洗浄水における導電率は、5mS/cm以下であることが好ましく、3mS/cm以下であることがより好ましい。
【0078】
洗浄操作時の温度としては、室温から100℃までの高温を適用することができる。ここで、洗浄操作時の温度とは、前記洗浄水の温度を意味する。また、前記洗浄操作において、洗浄水として高温のスチームを使用することもできる。前記洗浄操作時の温度は、好ましくは5~80℃、より好ましくは10~60℃、さらに好ましくは15~40℃である。洗浄操作において、高温の洗浄水または高温のスチームを使用する場合には、洗浄効果だけでなく殺菌効果も期待できる。
【0079】
前記洗浄操作後の吸水性樹脂は、前記洗浄水を含む分散液(以下、「水洗浄工程(3)における分散液」と称する)中に存在する状態となる。前記水洗浄工程(3)において、水洗浄工程(3)における分散液から水(洗浄水)を除去する操作を行うことにより、水で洗浄された吸水性樹脂を取り出すことができる。この際、前記多価金属塩が、除去された水と共に除去される。前記水洗浄工程(3)における分散液から水(洗浄水)を除去する操作としては、特に限定されない。前記水で洗浄された吸水性樹脂に残留する前記多価金属イオンの量を減少させるとの観点からは、前記水洗浄工程(3)における分散液から水を可能な限り除去すること、言い換えると、前記水で洗浄された吸水性樹脂中の含水率を可能な限り低下させることが好ましい。前記水を除去する操作としては、例えば、慣用の固液分離手段、例えば、ろ過操作、遠心分離等を適用することができる。前記水を除去する操作の具体例としては、例えば、前記水洗浄工程(3)における分散液を100メッシュの金網を用いてろ過し、1分間放置する操作を挙げることができる。
【0080】
[2-4.中和工程]
本発明の一実施形態における中和工程(4)は、前記の水で洗浄された吸水性樹脂をアルカリ金属塩で中和する工程である。
【0081】
前記中和工程(4)は、前記の水で洗浄された吸水性樹脂に対して、アルカリ金属塩を添加する工程である。前記中和工程(4)において、
図1の「中和工程」の前後の構造式に示すように、前記水で洗浄された吸水性樹脂における一部の遊離酸状態のカルボキシル基が、前記アルカリ金属塩に由来するアルカリ金属イオンにより中和される。より詳細には、前記一部の遊離酸状態のカルボキシル基におけるプロトンが前記アルカリ金属イオンにより置換される。前述のとおり、アルカリ金属イオンにより中和されたカルボキシル基は、液体(屎尿等)を吸収する機能を備える。よって、前記中和工程(4)において、前記遊離酸状態のカルボキシル基の一部が中和されることにより、前記水で洗浄された吸水性樹脂の吸水性能を回復することができる。
【0082】
前記アルカリ金属塩としては、特に限定されず、例えば、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩等を挙げることができる。前記アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムの群から少なくとも1つ選択され得る。前記アルカリ金属塩は、1種類であっても良く、複数の種類のアルカリ金属塩の混合物であっても良い。前記アルカリ金属塩を添加する方法としては、アルカリ金属塩と水と混和して調製されるアルカリ金属塩の水溶液としてアルカリ金属塩を添加する方法であっても良く、単体として粉末状または顆粒状のアルカリ金属塩を添加する方法であっても良い。乾燥工程(5)における乾燥に必要なエネルギーを節約するとの観点から、前記の水で洗浄された吸水性樹脂に対して前記アルカリ金属塩を単体で添加する方が好ましい。
【0083】
アルカリ金属塩の添加量は、前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂のpHが4.5~8.0の範囲におさまるように調整すればよい。ここで、前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂のpHは、当該アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂における、全カルボキシル基の数に対する中和されたカルボキシル基の数の割合(中和率)を表す。前記中和率が、十分に高い、具体的には、70%程度である場合に、前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂から得られる再生吸水性樹脂は、十分な吸水性能を備えることが知られている。前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂のpHが4.5以上であることにより、当該アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂における中和率が70%程度となり、その結果、十分な吸水性能を備える再生吸水性樹脂を得ることができる。
【0084】
一方、得られる再生吸水性樹脂は、人体への悪影響を防止するとの観点から、強アルカリ性となることを回避することが望ましい。前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂のpHが8.0以下であることにより、得られる再生吸水性樹脂が強アルカリ性となることを回避することができる。
【0085】
前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂のpHの測定方法は、特に限定されず、例えば、市販のpH試験紙および/または市販のpHメーター等を使用して測定することができる。
【0086】
前記アルカリ金属塩による中和における処理時間は、前記水で洗浄された吸水性樹脂において、一部の遊離酸状態のカルボキシル基が当該アルカリ金属イオンにより中和されるために十分な時間であれば特に限定されない。前記アルカリ金属塩による中和における処理時間は、好ましくは5分~2時間、より好ましくは10分~1時間、さらに好ましくは15分~45分間である。前記アルカリ金属塩による中和における処理時間が短すぎる場合、前記中和が不十分となり、得られる再生吸水性樹脂の吸水性能が低下するおそれがある。前記アルカリ金属塩による中和における処理時間が長すぎる場合、前記アルカリ金属塩を必要以上に使用することとなり、経済的に好ましくない。前記アルカリ金属塩による中和における処理時間とは、前記水で洗浄された吸水性樹脂に対して、前記アルカリ金属塩の添加を開始した時点から、後述の乾燥工程における、前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂を供し、当該乾燥工程を開始するまでの時間を意味する。
【0087】
前記アルカリ金属塩による中和における反応温度は、前記水で洗浄された吸水性樹脂において、一部の遊離酸状態のカルボキシル基が当該アルカリ金属イオンにより中和されるために十分な温度であれば特に限定されない。前記アルカリ金属塩による中和における反応温度は、好ましくは5~90℃、より好ましくは10~80℃、さらに好ましくは15~70℃である。なお、アルカリ金属塩は、水溶液または粉末の形態として添加することができ、その結果、中和物は、分散液、ゲル状含水物、もしくは吸水性樹脂の状態で得られる。前記アルカリ金属塩による中和における反応温度は、当該分散液、ゲル状含水物、もしくは吸水性樹脂の温度を意味する。
【0088】
なお、水洗浄工程(3)と中和工程(4)の間に、吸水性樹脂水分散液(例えば、前記水洗浄工程(3)における分散液および/または前記中和工程(4)に供される前記水で洗浄された吸水性樹脂を含有する分散液、等)の固形分濃度増加を図るための濃縮工程を含んでいても良い。濃縮方法については特に限定されない。前記濃縮方法としては、例えば、ウエッジワイヤースクリーンのように通水が可能な固液分離機構を用い、前記吸水性樹脂水分散液の濃度増加が行えるものが好ましい。この濃縮工程を行うことで、中和工程(4)および/または乾燥工程(5)における処理効率および/または乾燥効率を向上させることが可能となる。
【0089】
[2-5.乾燥工程]
本発明の一実施形態における乾燥工程(5)は、前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂を乾燥させ、再生吸水性樹脂を得る工程である。
【0090】
前記乾燥工程(5)は、前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂を所望する含水率まで乾燥させて乾燥重合体である再生吸水性樹脂を得る工程である。前記含水率は、吸水性樹脂1gを180℃で3時間加熱する乾燥操作を行った際の重量変化から求められる。具体的には、以下の式(1)にて表される。
含水率[重量%]=[1-{(乾燥操作後の吸水性樹脂の重量[g])/(乾燥操作前の吸水性樹脂の重量[g])}]×100 (1)
前記再生吸水性樹脂の含水率は、好ましくは5~30重量%、より好ましくは7~25重量%、更に好ましくは10~25重量%である。
【0091】
前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂を乾燥させる方法は、特に限定されず、例えば、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、流動層乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、ドラムドライヤー乾燥等が挙げられる。
【0092】
前記乾燥工程(5)における乾燥温度は、得られる再生吸水性樹脂の色調および/または乾燥効率の観点から、好ましくは120~250℃、より好ましくは150~200℃である。
【0093】
ここで、例えば、熱風乾燥を採用して前記乾燥工程(5)を実施する場合には、前記乾燥温度は、前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂に対して吹き付ける熱風の温度を意味する。また、上に挙げた乾燥させる方法のうち、熱風乾燥以外の方法を採用する場合には、前記乾燥温度は、加熱装置内部雰囲気の温度を意味する。
【0094】
前記乾燥工程(5)における乾燥時間は、20分~180分であることが好ましく、25分~120分であることがより好ましく、30分~60分であることがさらに好ましい。前述の好ましい範囲内の乾燥温度にて、前述の好ましい乾燥時間かけて、前記中和された吸水性樹脂を乾燥させることにより、前述の好ましい範囲内の含水率を備える再生吸水性樹脂を好適に得ることができる。
【0095】
〔3.再生吸水性樹脂を製造する方法における製造条件の判定方法〕
本発明の一実施形態に係る再生吸水性樹脂を製造する方法における製造条件の判定方法は、使用済の吸収性物品に含まれる吸水性樹脂から、再生吸水性樹脂を製造する方法における製造条件の判定方法であって、前記吸水性樹脂は、部分中和されたカルボキシル基を有する重合体を含み、前記吸水性樹脂を多価金属塩で処理する脱水工程(1)と、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂を酸性物質で処理する酸処理工程(2)と、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂を水で洗浄する水洗浄工程(3)と、前記水で洗浄された吸水性樹脂をアルカリ金属塩で中和する中和工程(4)と、前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂を乾燥させ、再生吸水性樹脂を得る乾燥工程(5)と、を含む再生吸水性樹脂を製造する方法において、前記酸処理工程(2)の終点を、前記酸処理工程(2)中における、前記酸性物質が添加された、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂の分散液のpHにより判定することを含む。
【0096】
前記再生吸水性樹脂を製造する方法における製造条件の判定方法における、「脱水工程(1)」、「酸処理工程(2)」、「水洗浄工程(3)」、「中和工程(4)」および「乾燥工程(5)」の各工程については、上に示した、本発明の一実施形態に係る再生吸水性樹脂の製造方法における各工程に関する事項を援用することができる。
【0097】
前記酸処理工程(2)の終点を、前記酸処理工程(2)中における、前記酸性物質が添加された、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂の分散液のpHにより判定することは、具体的には、以下に示す方法にて実施することができる。なお、ここで、前記酸処理工程(2)中における、前記酸性物質が添加された、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂の分散液とは、後述の方法において、前記酸処理工程(2)の開始時点から前記酸性物質が徐々に添加されていく途中の分散液であり得る。また、前記酸処理工程(2)中における、前記酸性物質が添加された、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂の分散液とは、前述の酸性物質が徐々に添加されていく途中の分散液以外に、該酸性物質の添加が一旦終了した後、適宜酸性物質が追加された分散液(例えば、分散液が目的のpH範囲に入らなければ、追加で酸性物質を添加した分散液)でもあり得る。
【0098】
即ち、前記酸処理工程(2)において調製された前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂の分散液に対して、pHを測定しながら、前記酸性物質を徐々に添加する。その後、前記pHが目標の値に到達した時点で、前記酸性物質の添加を一旦終了し、その後酸処理を実施する期間中、pHが目標範囲に収まるよう適宜酸性物質を追加する。なお、前記pHの測定方法は、特に限定されず、例えば、市販のpH試験紙および/または市販のpHメーター等を使用することができる。また、前記酸処理工程(2)の終点とは、前記酸性物質の添加が全て終了する時点を意味する。
【0099】
よって、前記酸処理工程(2)の終点を、前記酸性物質を添加する際の前記分散液のpHにより判定することとは、前記分散液のpHが目標の値となるように、前記酸性物質の添加量を判定することを意味する。ここで、前記酸性物質の添加量は、前記再生吸水性樹脂を製造する方法における製造条件に該当する。
【0100】
従って、前記の製造条件の判定方法を適用することで、前記再生吸水性樹脂を製造する方法における前記酸処理工程(2)において、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂の分散液に対して、前記分散液のpHが目標の値となるように前記酸性物質を添加することができる。
【0101】
前記pHの目標の値は、-1.0~3.0、好ましくは0~2.8、より好ましくは0.5~2.5(0.6~2.3、もしくは0.8~2.0)である。
【0102】
それゆえに、前述の〔2.再生吸水性樹脂の製造方法〕の[2-2.酸処理工程]の欄に記載のとおり、前記再生吸水性樹脂を製造する方法における製造条件の判定方法を適用することによって、得られる再生吸水性樹脂の吸水性能を向上させることができ、かつ、必要以上の酸性物質を使用することによるコストの過剰な増大を防止することができる。
【0103】
本発明の一実施形態に係る再生吸水性樹脂を製造する方法における製造条件の判定方法は、前記水洗浄工程(3)の終点を、前記酸処理工程(2)で得られる前記酸性物質で処理された吸水性樹脂の抽出液導電率E0に対する、前記水洗浄工程(3)で得られる前記水で洗浄された吸水性樹脂の抽出液導電率E1の割合(E1/E0)により判定することをさらに含むことが好ましい。
【0104】
前記水洗浄工程(3)の終点を、前記割合(E1/E0)により判定することは、具体的には、以下に示す方法にて実施することができる。なお、前記判定において、水で洗浄された吸水性樹脂の抽出液導電率E1は、前記水洗浄工程(3)を実施した後に得られる水で洗浄された吸水性樹脂の抽出液導電率だけでなく、前記水洗浄工程(3)の途中における水で洗浄された吸水性樹脂の抽出液導電率も包含する。また、前記水洗浄工程(3)の終点は、前記水で洗浄された吸水性樹脂を取り出す操作を行う前の、水による洗浄が終了する時点を意味する。
【0105】
前記水洗浄工程(3)を実施する前に、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂の抽出液導電率E0を予め測定する。続いて、特定の条件下にて、前記洗浄操作を行った結果得られる洗浄された吸水性樹脂の抽出液導電率E1を測定する。その後、E1/E0の割合が目標の値に達しているかを確認する。前記E1/E0の割合が目標の値に達している場合、その時点を前記水洗浄工程(3)の終点とする。一方、E1/E0の割合が目標の値に達していない場合には、特定の条件下にて、前記洗浄操作を、E1/E0の割合が目標の値に達するまで繰り返すか、または、洗浄水量を増加させる。
【0106】
よって、前記水洗浄工程(3)の終点を、前記割合(E1/E0)により判定することとは、前記割合(E1/E0)が目標の値となるように、前記洗浄操作における条件(例えば、洗浄操作を行う回数、使用する水の種類、使用する水の量、洗浄操作時の温度等)を判定することを意味する。ここで、前記洗浄操作における条件は、前記再生吸水性樹脂を製造する方法における製造条件に該当する。
【0107】
従って、前記水洗浄工程(3)の終点を、前記割合(E1/E0)により判定することを適用することにより、前記水洗浄工程(3)において、前記酸処理工程(2)で得られる前記酸性物質で処理された吸水性樹脂の抽出液導電率E0に対する、前記水洗浄工程(3)で得られる前記水で洗浄された吸水性樹脂の抽出液導電率E1の割合(E1/E0)が目標の値となるように、前記洗浄操作を行うことができる。
【0108】
前記割合(E1/E0)の目標の値は、好ましくは、0.40未満、より好ましくは、0.35以下、さらに好ましくは、0.30以下(0.25以下、0.20以下、もしくは0.15以下)である。前記割合(E1/E0)の目標の値の下限値は、洗浄水の使用量を抑えることができ、コスト的に有利になるとの観点から、0.05、0.08、もしくは0.10であることが好ましい。
【0109】
それゆえに、前述の〔2.再生吸水性樹脂の製造方法〕の[2-3.水洗浄工程]の欄に記載のとおり、前記前記水洗浄工程(3)の終点を、前記割合(E1/E0)により判定することを適用することによって、得られる再生吸水性樹脂の吸水性能(例えば、無加圧下吸水倍率(CRC)および/または吸水速度等)をより好適に向上させることができる。
【0110】
なお、前記抽出液導電率E0と前記抽出液導電率E1は、前述の〔2.再生吸水性樹脂の製造方法〕の[2-3.水洗浄工程]の欄に記載の方法にて測定される。
【0111】
本発明の一実施形態は、以下の[1]~[6]に示す発明を含み得る。
【0112】
[1]使用済の吸収性物品に含まれる吸水性樹脂から、再生吸水性樹脂を製造する方法であって、
前記吸水性樹脂は、部分中和されたカルボキシル基を有する重合体を含み、
前記吸水性樹脂を多価金属塩で処理する脱水工程(1)と、
前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂を酸性物質で処理する酸処理工程(2)と、
前記酸性物質で処理された吸水性樹脂を水で洗浄する水洗浄工程(3)と、
前記水で洗浄された吸水性樹脂をアルカリ金属塩で中和する中和工程(4)と、
前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂を乾燥させ、再生吸水性樹脂を得る乾燥工程(5)と、を含み、
前記酸処理工程(2)において、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂の分散液に対して、前記分散液のpHが-1.0~3.0となるように前記酸性物質を添加する、再生吸水性樹脂の製造方法。
【0113】
[2]前記水洗浄工程(3)において、
前記酸処理工程(2)で得られる前記酸性物質で処理された吸水性樹脂の抽出液導電率E0に対する、前記水洗浄工程(3)で得られる前記水で洗浄された吸水性樹脂の抽出液導電率E1の割合(E1/E0)が0.40未満となるように、前記酸性物質で処理された吸水性樹脂を水で洗浄する、[1]に記載の再生吸水性樹脂の製造方法。
【0114】
(ここで、前記酸処理工程(2)または前記水洗浄工程(3)において、吸水性樹脂が分散液中に存在する状態で得られる場合、吸水性樹脂の抽出液導電率は、以下の(i)~(iii)に示す工程からなる方法にて測定される;
(i)前記酸処理工程(2)または前記水洗浄工程(3)で得られた吸水性樹脂の分散液に対して、100メッシュの金網を用いてろ過し、1分間放置する操作を行い、ろ過後の吸水性樹脂を得る工程。
【0115】
(ii)ビーカーに、工程(i)で得られたろ過後の吸水性樹脂と、前記ろ過後の吸水性樹脂の重量の4倍の重量の脱イオン水を加え、25℃の温度にて、スターラーで20分間撹拌して、抽出液を得る工程。
【0116】
(iii)工程(ii)で得られた抽出液の導電率を、導電率計を用いて測定する工程。
また、前記酸処理工程(2)または前記水洗浄工程(3)において、吸水性樹脂が分散液から取り出された状態で得られる場合、吸水性樹脂の抽出液導電率は、以下の(iv)および(v)に示す工程からなる方法にて測定される;
(iv)ビーカーに、前記酸処理工程(2)または前記水洗浄工程(3)で得られた吸水性樹脂と、前記吸水性樹脂の重量の4倍の重量の脱イオン水を加え、25℃の温度にて、スターラーで20分間撹拌して、抽出液を得る工程。
【0117】
(v)工程(iv)で得られた抽出液煮の導電率を、導電率計を用いて測定する工程。)
[3]前記脱水工程(1)において、
前記多価金属塩が、アルカリ土類金属の塩である、[1]または[2]に記載の再生吸水性樹脂の製造方法。
【0118】
[4]前記酸処理工程(2)において、
前記酸性物質が、有機酸および無機酸からなる群から1種以上選択される、[1]~[3]の何れか1つに記載の再生吸水性樹脂の製造方法。
【0119】
[5]使用済の吸収性物品に含まれる吸水性樹脂から、再生吸水性樹脂を製造する方法における製造条件の判定方法であって、
前記吸水性樹脂は、部分中和されたカルボキシル基を有する重合体を含み、
前記吸水性樹脂を多価金属塩で処理する脱水工程(1)と、
前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂を酸性物質で処理する酸処理工程(2)と、
前記酸性物質で処理された吸水性樹脂を水で洗浄する水洗浄工程(3)と、
前記水で洗浄された吸水性樹脂をアルカリ金属塩で中和する中和工程(4)と、
前記アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂を乾燥させ、再生吸水性樹脂を得る乾燥工程(5)と、を含む再生吸水性樹脂を製造する方法において、
前記酸処理工程(2)の終点を、前記酸処理工程(2)中における、前記酸性物質が添加された、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂の分散液のpHにより判定することを含む、再生吸水性樹脂を製造する方法における製造条件の判定方法。
【0120】
[6]前記水洗浄工程(3)の終点を、前記酸処理工程(2)で得られる前記酸性物質で処理された吸水性樹脂の抽出液導電率E0に対する、前記水洗浄工程(3)で得られる前記水で洗浄された吸水性樹脂の抽出液導電率E1の割合(E1/E0)により判定することをさらに含む、[5]に記載の製造条件の判定方法。
【0121】
(ここで、前記酸処理工程(2)または前記水洗浄工程(3)において、吸水性樹脂が分散液中に存在する状態で得られる場合、吸水性樹脂の抽出液導電率は、以下の(i)~(iii)に示す工程からなる方法にて測定される;
(i)前記酸処理工程(2)または前記水洗浄工程(3)で得られた吸水性樹脂の分散液に対して、100メッシュの金網を用いてろ過し、1分間放置する操作を行い、ろ過後の吸水性樹脂を得る工程。
【0122】
(ii)ビーカーに、工程(i)で得られたろ過後の吸水性樹脂と、前記ろ過後の吸水性樹脂の重量の4倍の重量の脱イオン水を加え、25℃の温度にて、スターラーで20分間撹拌して、抽出液を得る工程。
【0123】
(iii)工程(ii)で得られた抽出液の導電率を、導電率計を用いて測定する工程。
また、前記酸処理工程(2)または前記水洗浄工程(3)において、吸水性樹脂が分散液から取り出された状態で得られる場合、吸水性樹脂の抽出液導電率は、以下の(iv)および(v)に示す工程からなる方法にて測定される;
(iv)ビーカーに、前記酸処理工程(2)または前記水洗浄工程(3)で得られた吸水性樹脂と、前記吸水性樹脂の重量の4倍の重量の脱イオン水を加え、25℃の温度にて、スターラーで20分間撹拌して、抽出液を得る工程。
【0124】
(v)工程(iv)で得られた抽出液煮の導電率を、導電率計を用いて測定する工程。)
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0125】
<評価方法>
後述の実施例1~10、比較例1~3および参考例1にて得られた再生吸水性樹脂の吸水性能を、以下に示す方法にて評価した。
【0126】
[無加圧下吸水倍率(CRC)]
本発明の吸水性樹脂の「CRC」はCentrifuge Retention Capacityの略称であり、吸水性樹脂の0.90質量%食塩水に対する無加圧下で30分の吸収倍率を示す。具体的には、以下に示す測定方法を用いて、吸水性樹脂の「CRC」を測定した。
【0127】
吸水性樹脂0.200gを不織布製(南国パルプ工業(株)製、商品名:ヒートロンペーパー、型式:GSP-22)の袋(85mm×60mm)に均一に入れてヒートシールした後、室温で大過剰(通常500ml程度)の0.90質量%塩化ナトリウム水溶液中に浸漬した。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン社製、遠心機:型式H-122)を用いてedana ABSORBENCY II 441.1-99に記載の遠心力(250G)で3分間水切りを行った後、袋の質量W1(g)を測定した。また、同様の操作を、吸水性樹脂を用いずに行い、その時の袋の質量W0(g)を測定した。そして、これらW1、W0から、下に示す式(2)に従って遠心分離機保持容量(CRC)(g/g)を算出した。
CRC(g/g)=[{W1(g)-W0(g)}/{吸水性樹脂の質量(g)}]-1 (2)
[吸水速度]
0.90重量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)1000重量部に食品添加物である食用青色1号0.02重量部を添加し、液温を22℃に調整した。その生理食塩水50mlを100mlビーカーに計り取り、長さ40mm、太さ(円筒の長さ方向に垂直な断面の直径)8mmの円筒型攪拌子を用いて600rpmで攪拌する中に、試料2.0gを投入し、当該試料(吸水性樹脂)のVortex(吸水速度:秒)を測定した。前記Vortex(吸水速度)の測定の終点は、JIS K 7224-1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験方法 解説」に記載されている基準に準じ、試料(吸水性樹脂粒子や吸水性樹脂粒子組成物など)が生理食塩水を吸液してスターラーチップを試験液で覆うまでの時間(Vortex)を吸水速度(秒)として測定した。
【0128】
<製造例1:多価金属塩で処理された吸水性樹脂の製造>
大王製紙株式会社製の大人用紙おむつ「アテント」に、生理食塩水150gを加えて吸水性樹脂を膨潤させ、一晩放置して、模擬的に使用済紙おむつを作成した。
【0129】
容積10Lの容器内に、0.5重量%塩化カルシウム水溶液5000gを加えた。次に、前記使用済紙おむつをハサミで5cm角となるように裁断した。続いて、裁断された前記使用済紙おむつを、前記容器内に加えて分散液(1)を調製し、当該分散液(1)を30分間、攪拌速度:500rpm、温度:25℃の条件下にて、撹拌して、裁断された紙おむつを液中に分散させた(使用済紙おむつ中の吸水性樹脂の脱水工程)。
【0130】
前記撹拌して裁断された紙おむつを液中に分散させた後、分散液(1)中に存在する前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂が脱水されていることを確認した。具体的には、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂が、裁断された前記使用済紙おむつに含まれる吸水性樹脂と比較して収縮していることを目視で確認した。
【0131】
次に、前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂と、前記紙おむつのその他の構成材料との間の比重の違いを利用して、前記容器の底部から前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂を分離回収した。回収した前記多価金属塩で処理された吸水性樹脂を、多価金属塩で処理された吸水性樹脂(1)とする。得られた多価金属塩で処理された吸水性樹脂(1)の含水率は85.5質量%であった。
【0132】
<再生吸水性樹脂の製造>
[実施例1]
製造例1で得られた多価金属塩で処理された吸水性樹脂(1)50.0gと脱イオン水300.0gを、pHメーター(HORIBA社製 LAQUA D-71)を備え付けた反応容器に加え、分散液(2)を得た。分散液(2)中の吸水性樹脂の含有割合は、2.1重量%:[{50×(1-0.855)}g/350.0g×100]である。
【0133】
分散液(2)に対して、攪拌速度:500rpm、分散液(2)の温度:25℃の条件下にて撹拌しながら、6M塩酸水溶液を徐々に加え、pHメーターの数値が1.43を示したところで6M塩酸水溶液の添加を中止した。添加した6M塩酸水溶液の量は13.3gであった。
【0134】
その後、上と同一の条件下にて、15分間撹拌を続けた。撹拌を行っている間、pHメーター数値は1.45±0.05の範囲内であった。その後、内容物(6M塩酸水溶液添加後の分散液(2))を、100メッシュステンレス金網を用いてろ過し、金網上の残渣物(酸性物質で処理された吸水性樹脂(1))を得た(ろ過操作)。以上の方法にて、酸処理工程およびろ過操作を実施した。
【0135】
続いて、酸性物質で処理された吸水性樹脂(1)を前記反応容器に戻し、新たに脱イオン水237gを加えて分散液(3)を得た。前記分散液(3)に対して、攪拌速度:500rpm、の温度:25℃の条件下にて、5分間撹拌を行った。その後、内容物(攪拌後の分散液(3))を、100メッシュステンレス金網を用いてろ過し、金網上の残渣物(水で洗浄された吸水性樹脂(1))を得た(ろ過操作)。以上の方法にて、水洗浄工程およびろ過操作を実施した。
【0136】
続いて、水で洗浄された吸水性樹脂(1)を、別の容器に入れ、当該水で洗浄された吸水性樹脂(1)をスパチュラで撹拌しながら、そこに炭酸ナトリウムの粉末2.95gを温度25℃の条件下にて徐々に添加し、さらに2分間撹拌を続けた。前記炭酸ナトリウムの粉末の添加が終了した後、20分間、放置した。その結果、アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂(1)を得た。前記炭酸ナトリウムの粉末の添加が開始された時点から前記放置が終了する前の時間(中和における処理時間)は、約23分であった。
【0137】
続いて、得られたアルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂(1)を、ステンレス製バットの底面上に広げ、当該ステンレス製バットを、熱風の温度を180℃に設定した熱風循環オーブン内に入れた。その後、前記熱風循環オーブン内にて、アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂(1)を60分間かけて乾燥させた。その結果、再生吸水性樹脂(1)を得た。再生吸水性樹脂(1)のCRCは48.1(g/g)であった。
【0138】
[実施例2]
分散液(2)に対する6M塩酸水溶液の添加を、前記pHメーターの数値が2.14を示したところまで実施し、撹拌中のpH範囲が2.15±0.05であったこと以外は、実施例1と同一の方法を行い、再生吸水性樹脂(2)を得た。実施例2における前記6M塩酸水溶液の添加量は、10.6gであった。再生吸水性樹脂(2)のCRCは47.6(g/g)であった。
【0139】
[実施例3]
分散液(2)に対する6M塩酸水溶液の添加を、前記pHメーターの数値が2.38を示したところまで実施し、撹拌中のpH範囲が2.40±0.05であったこと以外は、実施例1と同一の方法を行い、再生吸水性樹脂(3)を得た。実施例3における前記6M塩酸水溶液の添加量は、10.0gであった。再生吸水性樹脂(3)のCRCは47.5(g/g)であった。
【0140】
[実施例4]
分散液(2)に対する6M塩酸水溶液の添加を、前記pHメーターの数値が0.53を示したところまで実施し、撹拌中のpH範囲が0.55±0.05であったこと以外は、実施例1と同一の方法を行い、再生吸水性樹脂(4)を得た。実施例4における前記6M塩酸水溶液の添加量は、39.8gであった。再生吸水性樹脂(4)のCRCは44.3(g/g)であった。
【0141】
[実施例5]
分散液(2)に対する6M塩酸水溶液の添加を、前記pHメーターの数値が2.86を示したところまで実施し、撹拌中のpH範囲が2.85±0.05であったこと以外は、実施例1と同一の方法を行い、再生吸水性樹脂(5)を得た。実施例5における前記6M塩酸水溶液の添加量は、9.3gであった。再生吸水性樹脂(5)のCRCは39.7(g/g)であった。
【0142】
[比較例1]
分散液(2)に対する6M塩酸水溶液の添加を、前記pHメーターの数値が3.25を示し、撹拌中のpH範囲が3.25±0.05であったところまで実施したこと以外は、実施例1と同一の方法を行い、比較用再生吸水性樹脂(1)を得た。比較例1における前記6M塩酸水溶液の添加量は、8.0gであった。比較用再生吸水性樹脂(1)のCRCは18.4(g/g)であった。
【0143】
[比較例2]
分散液(2)に対する6M塩酸水溶液の添加を、前記pHメーターの数値が3.52を示し、撹拌中のpH範囲が3.50±0.05であったところまで実施したこと以外は、実施例1と同一の方法を行い、比較用再生吸水性樹脂(2)を得た。比較例2における前記6M塩酸水溶液の添加量は、6.6gであった。比較用再生吸水性樹脂(2)のCRCは6.9(g/g)であった。
【0144】
[参考例1]
分散液(2)に対する6M塩酸水溶液の添加を、前記pHメーターの数値が1.44を示し、撹拌中のpH範囲が1.45±0.05であったところまで実施した以外は、実施例1と同一の方法にて、脱水工程および酸処理工程を実施し、100メッシュステンレス金網を用いてろ過し(ろ過操作)、参考用の酸性物質で処理された吸水性樹脂を得た。参考例1における前記6M塩酸水溶液の添加量は、13.1gであった。
【0145】
得られた参考用の酸性物質で処理された吸水性樹脂の内20.0gをビ-カ-に入れ、脱イオン水80.0gを加えて、室温(25℃)にて、15分間撹拌を行って、導電率測定用の抽出液(1)を得た。前記導電率測定用の抽出液(1)の導電率をHORIBA社製電気伝導率系ES-51で測定したところ、その値は、10.2mS/cmであった。この導電率を、参考用の酸性物質で処理された吸水性樹脂の抽出液導電率E0とした。
【0146】
得られた参考用の酸性物質で処理され、ろ過された吸水性樹脂に対して水洗浄工程を行うことなく、当該参考用の酸性物質で処理された吸水性樹脂の内40.0gを別の容器に入れ、当該参考用の酸性物質で処理された吸水性樹脂をスパチュラで撹拌しながら、そこに炭酸ナトリウムの粉末1.70gを温度25℃の条件下にて徐々に添加し、さらに2分間撹拌を続けた。前記炭酸ナトリウムの粉末の添加が終了した後、20分間放置した。その結果、参考用のアルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂を得た。即ち、前記参考用のアルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂は、酸性物質で処理された吸水性樹脂に対して水洗浄工程を行なっていない参考用の吸水性樹脂である。なお、前記炭酸ナトリウムの粉末の添加が開始された時点から前記放置が終了する前の時間(中和における処理時間)は約23分であった。
【0147】
続いて、得られた参考用のアルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂を、実施例1の乾燥工程と同一の方法にて乾燥させた。その結果、参考用の再生吸水性樹脂を得た。参考用の再生吸水性樹脂のCRCは46.1(g/g)、vortex(吸水速度)は、163(秒)であった。
【0148】
[実施例6]
分散液(2)に対する6M塩酸水溶液の添加を、前記pHメーターの数値が1.38を示し、撹拌中のpH範囲が1.40±0.05であったところまで実施した以外は、実施例1と同一の方法にて、脱水工程および酸処理工程を実施し、酸性物質で処理された吸水性樹脂(2)を得た。実施例6における前記6M塩酸水溶液の添加量は、13.3gであった。
【0149】
酸性物質で処理された吸水性樹脂(2)の抽出液E0を、参考例1と同一の方法にて測定したところ、その値は、10.2mS/cmであった。この導電率を、酸性物質で処理された吸水性樹脂(2)の抽出液導電率E0とした。
【0150】
続いて、酸性物質で処理された吸水性樹脂(2)に対して、脱イオン水の使用量を21.5gに変更した以外は、実施例1と同一の方法にて、水洗浄工程およびろ過操作を実施し、水で洗浄された吸水性樹脂(2)を得た。
【0151】
得られた水で洗浄された吸水性樹脂(2)の内20.0gをビ-カ-に入れ、脱イオン水80.0gを加えて15分間撹拌を行って、導電率測定用の抽出液(6)を得た。前記導電率測定用の抽出液(6)の導電率を参考例1と同一の方法にて測定したところ、その値は、6.7mS/cmであった。この導電率を、水で処理された吸水性樹脂(2)の抽出液導電率E1とする。
【0152】
よって、酸性物質で処理された吸水性樹脂(2)の抽出液導電率(参考用の酸性物質で処理された吸水性樹脂の抽出液導電率)E0に対する水で処理された吸水性樹脂(2)の抽出液導電率E1の割合(E1/E0)は、6.7/10.2≒0.66となる。
【0153】
得られた水で処理された吸水性樹脂(2)の内40.0gを別の容器に入れ、当該水で処理された吸水性樹脂(2)をスパチュラで撹拌しながら、そこに炭酸ナトリウムの粉末1.70gを温度25℃の条件下にて徐々に添加した。前記炭酸ナトリウムの粉末の添加が終了した後、20分間放置した。その結果、アルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂(2)を得た。前記炭酸ナトリウムの粉末の添加が開始された時点から前記放置が終了する前の時間(中和における処理時間)は、約23分であった。
【0154】
続いて、得られたアルカリ金属塩で中和された吸水性樹脂(2)を、実施例1の乾燥工程と同一の方法にて乾燥させた。その結果、再生吸水性樹脂(6)を得た。再生吸水性樹脂(6)のCRCは46.2(g/g)、vortex(吸水速度)は、124(秒)であった。
【0155】
[実施例7]
分散液(2)に対する6M塩酸水溶液の添加を、前記pHメーターの数値が1.40を示し、撹拌中のpH範囲が1.40±0.05であったところまで実施した以外は、実施例1と同一の方法にて、脱水工程および酸処理工程を実施し、酸性物質で処理された吸水性樹脂(3)を得た。実施例7における前記6M塩酸水溶液の添加量は、13.3gであった。
【0156】
酸性物質で処理された吸水性樹脂(3)の抽出液E0を、参考例1と同一の方法にて測定したところ、その値は、10.2mS/cmであった。この導電率を、酸性物質で処理された吸水性樹脂(3)の抽出液導電率E0とした。
【0157】
得られた酸性物質で処理された吸水性樹脂(3)に対して、脱イオン水の使用量を70.0gに変更した以外は、実施例1と同一の方法にて、水洗浄工程を実施し、水で洗浄された吸水性樹脂(3)を得た。
【0158】
得られた水で洗浄された吸水性樹脂(3)の内20.0gを用いて、実施例6と同一の方法によって、導電率測定用の抽出液(3)を得た。前記導電率測定用の抽出液(3)の導電率を参考例1と同一の方法にて測定したところ、その値は、3.5mS/cmであった。この導電率を、水で処理された吸水性樹脂(3)の抽出液導電率E1とする。
【0159】
よって、酸性物質で処理された吸水性樹脂(3)の抽出液導電率(参考用の酸性物質で処理された吸水性樹脂の抽出液導電率)E0に対する水で処理された吸水性樹脂(3)の抽出液導電率E1の割合(E1/E0)は、3.5/10.2≒0.34となる。
【0160】
さらに、得られた水で洗浄された吸水性樹脂(3)の内40.0gを用いて、実施例6と同一の方法によって、再生吸水性樹脂(7)を得た。再生吸水性樹脂(7)のCRCは47.2(g/g)、vortex(吸水速度)は、71(秒)であった。
【0161】
[実施例8]
分散液(2)に対する6M塩酸水溶液の添加を、前記pHメーターの数値が1.41を示し、撹拌中のpH範囲が1.40±0.05であったところまで実施した以外は、実施例1と同一の方法にて、脱水工程および酸処理工程を実施し、酸性物質で処理された吸水性樹脂(4)を得た。実施例8における前記6M塩酸水溶液の添加量は、13.1gであった。
【0162】
酸性物質で処理された吸水性樹脂(4)の抽出液E0を、参考例1と同一の方法にて測定したところ、その値は、10.2mS/cmであった。この導電率を、酸性物質で処理された吸水性樹脂(4)の抽出液導電率E0とした。
【0163】
得られた酸性物質で処理された吸水性樹脂(4)に対して、脱イオン水の使用量を120.0gに変更した以外は、実施例1と同一の方法にて、水洗浄工程を実施し、水で洗浄された吸水性樹脂(4)を得た。
【0164】
得られた水で洗浄された吸水性樹脂(4)の内20.0gを用いて、実施例6と同一の方法によって、導電率測定用の抽出液(4)を得た。前記導電率測定用の抽出液(4)の導電率を参考例1と同一の方法にて測定したところ、その値は、2.9mS/cmであった。この導電率を、水で処理された吸水性樹脂(4)の抽出液導電率E1とする。
【0165】
よって、酸性物質で処理された吸水性樹脂(4)の抽出液導電率(参考用の酸性物質で処理された吸水性樹脂の抽出液導電率)E0に対する水で処理された吸水性樹脂(4)の抽出液導電率E1の割合(E1/E0)は、2.9/10.2≒0.28となる。
【0166】
さらに、得られた水で洗浄された吸水性樹脂(4)の内40.0gを用いて、実施例5と同一の方法によって、再生吸水性樹脂(8)を得た。再生吸水性樹脂(8)のCRCは47.1(g/g)、vortex(吸水速度)は、59(秒)であった。
【0167】
[実施例9]
分散液(2)に対する6M塩酸水溶液の添加を、前記pHメーターの数値が1.44を示し、撹拌中のpH範囲が1.45±0.05であったところまで実施した以外は、実施例1と同一の方法にて、脱水工程および酸処理工程を実施し、酸性物質で処理された吸水性樹脂(5)を得た。実施例9における前記6M塩酸水溶液の添加量は、13.0gであった。
【0168】
酸性物質で処理された吸水性樹脂(5)の抽出液E0を、参考例1と同一の方法にて測定したところ、その値は、10.2mS/cmであった。この導電率を、酸性物質で処理された吸水性樹脂(5)の抽出液導電率E0とした。
【0169】
得られた酸性物質で処理された吸水性樹脂(5)に対して、脱イオン水の使用量を260.0gに変更した以外は、実施例1と同一の方法にて、水洗浄工程を実施し、水で洗浄された吸水性樹脂(5)を得た。
【0170】
得られた水で洗浄された吸水性樹脂(5)の内20.0gを用いて、実施例5と同一の方法によって、導電率測定用の抽出液(5)を得た。前記導電率測定用の抽出液(5)の導電率を参考例1と同一の方法にて測定したところ、その値は、2.3mS/cmであった。この導電率を、水で処理された吸水性樹脂(5)の抽出液導電率E1とする。
【0171】
よって、酸性物質で処理された吸水性樹脂(5)の抽出液導電率(参考用の酸性物質で処理された吸水性樹脂の抽出液導電率)E0に対する水で処理された吸水性樹脂(5)の抽出液導電率E1の割合(E1/E0)は、2.3/10.2≒0.23となる。
【0172】
さらに、得られた水で洗浄された吸水性樹脂(5)の内40.0gを用いて、実施例5と同一の方法によって、再生吸水性樹脂(9)を得た。再生吸水性樹脂(9)のCRCは47.5(g/g)、vortex(吸水速度)は、52(秒)であった。
【0173】
[実施例10]
分散液(2)に対する6M塩酸水溶液の添加を、前記pHメーターの数値が1.42を示し、撹拌中のpH範囲が1.40±0.05であったところまで実施した以外は、実施例1と同一の方法にて、脱水工程および酸処理工程を実施し、酸性物質で処理された吸水性樹脂(6)を得た。実施例10における前記6M塩酸水溶液の添加量は、12.8gであった。
【0174】
酸性物質で処理された吸水性樹脂(6)の抽出液E0を、参考例1と同一の方法にて測定したところ、その値は、10.2mS/cmであった。この導電率を、酸性物質で処理された吸水性樹脂(6)の抽出液導電率E0とした。
【0175】
得られた酸性物質で処理された吸水性樹脂(6)に対して、脱イオン水の使用量を550.0gに変更した以外は、実施例1と同一の方法にて、水洗浄工程を実施し、水で洗浄された吸水性樹脂(6)を得た。
【0176】
得られた水で洗浄された吸水性樹脂(6)の内20.0gを用いて、実施例5と同一の方法によって、導電率測定用の抽出液(6)を得た。前記導電率測定用の抽出液(6)の導電率を参考例1と同一の方法にて測定したところ、その値は、1.9mS/cmであった。この導電率を、水で処理された吸水性樹脂(6)の抽出液導電率E1とする。
【0177】
よって、酸性物質で処理された吸水性樹脂(6)の抽出液導電率(参考用の酸性物質で処理された吸水性樹脂の抽出液導電率)E0に対する水で処理された吸水性樹脂(6)の抽出液導電率E1の割合(E1/E0)は、1.9/10.2≒0.19となる。
【0178】
さらに、得られた水で洗浄された吸水性樹脂(6)の内40.0gを用いて、実施例6と同一の方法によって、再生吸水性樹脂(10)を得た。再生吸水性樹脂(10)のCRCは47.6(g/g)、vortex(吸水速度)は、50(秒)であった。
【0179】
[実施例11]
分散液(2)に対する6M塩酸水溶液の添加を、前記pHメーターの数値が1.39を示し、撹拌中のpH範囲が1.40±0.05であったところまで実施した以外は、実施例1と同一の方法にて、脱水工程および酸処理工程を実施し、酸性物質で処理された吸水性樹脂(7)を得た。実施例11における前記6M塩酸水溶液の添加量は、12.8gであった。
【0180】
酸性物質で処理された吸水性樹脂(7)の抽出液E0を、参考例1と同一の方法にて測定したところ、その値は、10.2mS/cmであった。この導電率を、酸性物質で処理された吸水性樹脂(7)の抽出液導電率E0とした。
【0181】
得られた酸性物質で処理された吸水性樹脂(7)に対して、脱イオン水の使用量を1150gに変更した以外は、実施例1と同一の方法にて、水洗浄工程を実施し、水で洗浄された吸水性樹脂(7)を得た。
【0182】
得られた水で洗浄された吸水性樹脂(7)の内20.0gを用いて、実施例6と同一の方法によって、導電率測定用の抽出液(7)を得た。前記導電率測定用の抽出液(7)の導電率を参考例1と同一の方法にて測定したところ、その値は、1.5mS/cmであった。この導電率を、水で処理された吸水性樹脂(7)の抽出液導電率E1とする。
【0183】
よって、酸性物質で処理された吸水性樹脂(7)の抽出液導電率(参考用の酸性物質で処理された吸水性樹脂の抽出液導電率)E0に対する水で処理された吸水性樹脂(7)の抽出液導電率E1の割合(E1/E0)は、1.5/10.2≒0.15となる。
【0184】
さらに、得られた水で洗浄された吸水性樹脂(7)の内40.0gを用いて、実施例5と同一の方法によって、再生吸水性樹脂(11)を得た。再生吸水性樹脂(11)のCRCは47.3(g/g)、vortex(吸水速度)は、50(秒)であった。
【0185】
[結果]
実施例1~5と比較例1、2について、製造条件を以下の表1に示す。また、¥得られた再生吸水性樹脂(1)~(5)と比較用再生吸水性樹脂(1)、(2)の吸水性能であるCRCを評価した結果も、以下の表1に示す。
【表1】
表1に示すとおり、実施例1~5は、塩酸水溶液の添加終了時、および酸処理工程中における分散液のpHが、-1.0~3.0の範囲内である。言い換えると、実施例1~5における製造方法は、酸処理工程において、多価金属塩で処理された吸水性樹脂の分散液に対して、前記分散液のpHが-1.0~3.0となるように酸性物質を添加しているとの特徴(以下、「特徴A」と称する)を備える。よって、実施例1~5における製造方法は、本発明の一実施形態に係る再生吸水性樹脂の製造方法に該当する。一方、比較例1および2における製造方法は、特徴Aを備えておらず、本発明の一実施形態に係る再生吸水性樹脂の製造方法に該当しない。また、実施例1~5で製造された再生吸水性樹脂(1)~(5)は、比較例1および2で製造された比較用再生吸水性樹脂(1)および(2)よりも、CRCが高い。
【0186】
以上のことから、本発明の一実施形態に係る再生吸水性樹脂の製造方法は、特徴Aを備えることにより、使用済の吸収性物品に含まれる吸水性樹脂の吸水性能を十分に回復するとの本願発明の課題を解決できることが理解できる。また、本発明の一実施形態に係る再生吸水性樹脂の製造方法が、再生吸水性樹脂の製造に要するコストが過剰に増大することを防止するとの本願発明の課題を解決できることも理解できる。
【0187】
参考例1と実施例6~11について、製造条件を以下の表2に示す。また、得られた参考用の再生吸水性樹脂と再生吸水性樹脂(6)~(11)の吸水性能であるCRCおよびvortex(吸水速度)を評価した結果も、以下の表2に示す。なお、参考例において、水洗浄工程は実施していない。よって、表2の参考例の欄において、水の使用量、水洗浄工程にて得られる水で処理された吸水性樹脂の抽出液導電率:「E1」および「E1/E0」の値は、「-」と記載している。
【表2】
表2に示すとおり、参考例1と実施例6~11においては、酸処理工程にて同様の量の酸性物質を添加している。また、参考例1では水洗浄工程を実施していない一方、実施例6~11では水洗浄工程を実施している。さらに、参考例1にて得られた参考用の再生吸水性樹脂と比較して、実施例6~11にて得られた再生吸水性樹脂(6)~(11)は、CRCの値が増加しており、vortexの値が著しく小さくなっている。ここで、vortexの値が著しく小さくなっていることは、吸水速度が向上していることを意味する。なお、実施例6~11における製造方法は、本発明の一実施形態に係る再生吸水性樹脂の製造方法に該当する。
【0188】
<酸処理工程、水洗浄工程、中和工程を連続で処理した再生吸水性樹脂の製造>
[実施例12]
製造例1と同一の操作を行うことにより多価金属塩で処理された吸水性樹脂(1)、すなわち脱水工程後の吸水性樹脂ゲルを得た。得られた多価金属塩で処理された吸水性樹脂(1)1000gと脱イオン水1300gとを混合して、固形分濃度6.3重量%の分散液(4)を作成した。分散液(4)は、脱水工程後の吸水性樹脂ゲルの水分散液である。
【0189】
pHメーターとスターラーを備え、かつ、連続処理を可能とするために原料供給口と当該原料供給口と反対側の位置に排出口を備える反応処理機に対して、分散液(4)を43.0g/分の供給速度にて供給すると同時に、1.1重量%塩酸を95.1g/分の供給速度にて供給することにより、酸反応を実施した。その結果、前記反応処理機内にて、酸反応工程後の吸水性樹脂ゲルの分散液である、分散液(5)が得られた。原料である分散液(4)と1.1重量%塩酸を前記反応処理機の供給口より当該反応処理機内に供給することを開始してから10分後、pHメーターの数値が1.21を示しているのを確認した。その後、前記反応処理機における前記排出口から、分散液(5)を20分間連続的に抜き出した。この抜き出した分散液(5)をサンプリングし、その抽出液導電率E0を測定した。その測定の結果得られた抽出液導電率E0の値は、11.1mS/cmであった。続いて、抜き出された分散液(5)を43.0g/分の供給速度にて水洗浄槽に連続的に供給し、同時に洗浄水として脱イオン水を380g/分の供給速度にて連続的に供給した。このことにより、分散液(5)に含まれる酸反応工程後の吸水性樹脂ゲルに対して、連続的に洗浄を行い、水洗浄物を得た。その得られた水洗浄物に対して20分間100メッシュステンレス金網を用いたろ過および捕集の操作を行うことにより、洗浄工程後の吸水性樹脂ゲル(12)を得た。なお、この分散液(5)を前記反応処理機から抜き出す間の20分間、前記pHメーターの数値は1.20±0.10の範囲内に収まっていた。また、洗浄工程後の吸水性樹脂ゲル(12)の抽出液導電率E1は3.3であり、E1/E0は0.30であった。得られた洗浄工程後の吸水性樹脂ゲル(12)の固形分濃度を測定したところ10.1重量%であった。ここで、固形分濃度(重量%)=100―含水率(重量%)である。
【0190】
この洗浄工程後の吸水性樹脂ゲル(12)を170g/分の供給速度にて連続的にミートチョッパーに供給すると同時に、炭酸ナトリウム粉末を8.8g/分の供給速度にて連続的に当該ミートチョッパーに供給した。続いて、前記ミートチョッパー内にて、洗浄工程後の吸水性樹脂ゲル(12)と前記炭酸ナトリウム粉末とを混錬し、洗浄工程後の吸水性樹脂ゲル(12)に対する中和反応を行い、中和工程後の吸水性樹脂ゲル(12)を得た。
【0191】
得られた中和工程後の吸水性樹脂ゲル(12)をステンレス製バットに広げ、180℃に設定した熱風循環オーブン中で60分間乾燥させ、乾燥工程後の吸水性樹脂(12)を得た。乾燥工程後の吸水性樹脂(12)を、再生吸水性樹脂(12)とした。
【0192】
再生吸水性樹脂(12)のCRCは48.5(g/g)、Vortex(吸水速度)は62(秒)であった。
【0193】
このように、本発明の再生吸水性樹脂を構成する各工程について、その反応を連続的に実施した場合においても回文反応の際と同様に吸水性能に優れた再生吸水性樹脂が得られることが分かった。
【0194】
以上のことから、本願発明の一実施形態に係る再生吸水性樹脂の製造方法は、水洗浄工程を含むことによって、得られる再生吸水性樹脂の吸水性能、特に吸水速度を向上させることができることが理解できる。
【0195】
加えて、実施例7~12では、E1/E0の値が0.40未満となるように、水洗浄工程を実施している一方、実施例6では、水洗浄工程におけるE1/E0の値は0.40を超えている。そして、実施例6にて得られ再生吸水性樹脂(6)と比較して、実施例7~12にて得られた再生吸水性樹脂(7)~(12)は、CRCの値が僅かに大きく、かつ、vortex(吸水速度)の値が小さい。
【0196】
以上のことから、本願発明の一実施形態に係る再生吸水性樹脂の製造方法において、E1/E0の値が0.40未満となるように酸性物質で処理された吸水性樹脂を水で洗浄して水洗浄工程を実施することにより、得られる再生吸水性樹脂の吸水性能、特に吸水速度をより大きく向上させることができることが理解できる。
本発明の一実施形態によれば、使用済の吸収性物品に含まれる吸水性樹脂から、吸水性能が十分に回復しており、吸水性能に優れる再生吸水性樹脂を製造することができ、かつ、再生吸水性樹脂の製造に要するコストが過剰に増大することを防止できる。よって、本発明の一実施形態は、使用済の吸収性物品から吸水性能が十分に回復した吸水性樹脂を再生することに利用することができる。