(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095101
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】泡吐出器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/34 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
B65D47/34 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212139
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】先曽 洋一
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AB01
3E084AB10
3E084BA02
3E084CB02
3E084DB12
3E084EA03
3E084FA09
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084GB11
3E084GB17
3E084KA05
3E084KB05
3E084LB02
3E084LC01
3E084LC06
3E084LD22
3E084LD26
(57)【要約】
【課題】部材の成形条件が理想状態から外れても十分な泡の形成を行うことができる、新たな泡吐出器を提供する。
【解決手段】本開示の泡吐出器100は、ベースキャップ1と、2つのポンプと、圧送された内容液及び空気を合流させる合流空間Gを形成するとともに、混合した内容液及び空気を発泡させる発泡部材を保持するジェットリング13と、発泡した内容液を外部へ吐出させるノズルヘッド14とを備え、内容液用ポンプ2は、小径筒体4aと中空ピストン5と中空ステム7とを備え、空気用ポンプ3は、大径筒体4bとエアーピストン10とを備え、エアーピストン10には、開孔10dとシールリング10fとが設けられ、ノズルヘッド14の押下によりジェットリング13の筒状部の下部がシールリング10fに摺動しつつ当接して大径筒体4b内からの空気の漏出を抑制し、大径筒体4bの内周面には段部4fが形成されることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口部に装着されるベースキャップと、該ベースキャップにより容器本体の口部に垂下保持され内容液と空気とをそれぞれ個別に吸引、加圧、圧送する2つのポンプと、該ポンプから圧送された内容液及び空気を合流させる合流空間を形成するとともに、混合した内容液及び空気を発泡させる発泡部材を保持するジェットリングと、該ジェットリングに装着されるとともに発泡した内容液を内部通路を通して外部へ吐出させるノズルヘッドとを備える泡吐出器であって、
内容液の吸引、加圧、圧送に供するポンプは、容器本体内の内容液を流入させる吸引口を底部に備える小径筒体と、該小径筒体の内周面に当接し前記小径筒体の底部へ向けた摺動により前記小径筒体内の内容液を加圧、圧送する中空ピストンと、該中空ピストンに連結するとともに圧送された内容液を通す内側通路を有する中空ステムとを備え、
空気の吸引、加圧、圧送に供するポンプは、前記小径筒体に連結される底部を有する大径筒体と、該大径筒体の内周面に当接し前記大径筒体の底部へ向けた摺動により前記大径筒体内の空気を加圧、圧送して第一通気路に送るエアーピストンとを備え、該エアーピストンには、前記中空ステムを径方向外側から取り囲んで前記中空ステムとの相互間に空気を通す前記第一通気路を形成する筒状ガイドと、前記大径筒体内に空気を導入する開孔と、該開孔の径方向外側から上方に延びるシールリングとが設けられ、
前記ジェットリングは、前記中空ステムを上方及び径方向外側から取り囲んで前記中空ステムとの相互間に前記合流空間につながる第二通気路を形成する筒状部を備え、前記ノズルヘッドの押下により前記筒状部の下部が前記シールリングに摺動しつつ当接して前記大径筒体内からの空気の漏出を抑制し、
前記大径筒体の内周面には、下方に向かって径方向内側に突出する段部が形成されている、泡吐出器。
【請求項2】
前記筒状部の下部には、前記筒状ガイドの上部に対して当接して前記第一通気路と前記第二通気路とを連結させる第1シール壁と、該第1シール壁の径方向外側に設けられ前記ノズルヘッドの押下により前記シールリングとの間でシール形成する第2シール壁とが設けられている、請求項1に記載の泡吐出器。
【請求項3】
前記エアーピストンのシール部の上端部には、径方向外側に膨らむ突部が設けられている、請求項1又は2に記載の泡吐出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内容液と空気との混合物を泡状に吐出させる泡吐出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シャンプー、ボディソープ、ハンドソープ、洗顔料等を充填した容器では、内容液の泡立て動作を省略して簡便な使用を図る観点から、容器内の内容液を直接泡状にして吐出することができる泡吐出器を装備したものが多用されている。
【0003】
かかるディスペンサーは、容器の口部に保持されるベースキャップに、内容液を吸引、加圧、圧送を行うピストンと、空気の吸引、加圧、圧送を行うエアーピストンをそれぞれ同心に配置した単一のシリンダーが取り付けられている。そして、ノズルヘッドを押圧して各ポンプ内のピストンを駆動させることで、内容液と空気をそれぞれ各シリンダー内に吸引するとともに加圧、圧送し、ポンプの出側における合流空間にて内容液と空気を相互に混合させつつメッシュ等の発泡部材を通過させることによって、内容液を泡状にして吐出させる仕組みになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、特許文献1に記載の逆止弁に代えて、ノズルヘッドの押下によってジェットリングの筒状部の下部がエアーピストンに設けたシールリングに摺動しつつ当接して大径筒体内からの空気の漏出を抑制するように構成し、部品点数を削減した容器用吐出具も提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015- 67354号公報
【特許文献2】特開2019-119480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献2に示す泡吐出器において、各部材の成形条件等に起因してジェットリングの筒状部とエアーピストンに設けたシールリングとの摺動抵抗が想定よりも大きくなると、エアーピストンが大径筒体内をスムーズに下方に摺動して大径筒体内の空気を圧縮する一方、ジェットリングの筒状部とエアーピストンのシールリングとの間のシールが不完全な状態となり、大径筒体内で圧縮された空気が大径筒体内から外部に漏れ出てしまう場合があった。このような場合、必要な空気が合流空間に供給されず泡の形成が十分に行われない可能性があったため、この点において改善の余地があった。
【0007】
本開示は、このような問題点を解決することを課題とするものであり、その目的は、部材の成形条件が理想状態から外れても十分な泡の形成を行うことができる、新たな泡吐出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本開示の泡吐出器は、
[1]
容器本体の口部に装着されるベースキャップと、該ベースキャップにより容器本体の口部に垂下保持され内容液と空気とをそれぞれ個別に吸引、加圧、圧送する2つのポンプと、該ポンプから圧送された内容液及び空気を合流させる合流空間を形成するとともに、混合した内容液及び空気を発泡させる発泡部材を保持するジェットリングと、該ジェットリングに装着されるとともに発泡した内容液を内部通路を通して外部へ吐出させるノズルヘッドとを備える泡吐出器であって、
内容液の吸引、加圧、圧送に供するポンプは、容器本体内の内容液を流入させる吸引口を底部に備える小径筒体と、該小径筒体の内周面に当接し前記小径筒体の底部へ向けた摺動により前記小径筒体内の内容液を加圧、圧送する中空ピストンと、該中空ピストンに連結するとともに圧送された内容液を通す内側通路を有する中空ステムとを備え、
空気の吸引、加圧、圧送に供するポンプは、前記小径筒体に連結される底部を有する大径筒体と、該大径筒体の内周面に当接し前記大径筒体の底部へ向けた摺動により前記大径筒体内の空気を加圧、圧送して第一通気路に送るエアーピストンとを備え、該エアーピストンには、前記中空ステムを径方向外側から取り囲んで前記中空ステムとの相互間に空気を通す前記第一通気路を形成する筒状ガイドと、前記大径筒体内に空気を導入する開孔と、該開孔の径方向外側から上方に延びるシールリングとが設けられ、
前記ジェットリングは、前記中空ステムを上方及び径方向外側から取り囲んで前記中空ステムとの相互間に前記合流空間につながる第二通気路を形成する筒状部を備え、前記ノズルヘッドの押下により前記筒状部の下部が前記シールリングに摺動しつつ当接して前記大径筒体内からの空気の漏出を抑制し、
前記大径筒体の内周面には、下方に向かって径方向内側に突出する段部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本開示の泡吐出器は、
[2]
上記[1]に記載の構成において、前記筒状部の下部には、前記筒状ガイドの上部に対して当接して前記第一通気路と前記第二通気路とを連結させる第1シール壁と、該第1シール壁の径方向外側に設けられ前記ノズルヘッドの押下により前記シールリングとの間でシール形成する第2シール壁とが設けられていることが好ましい。
【0010】
また、本開示の泡吐出器は、
[3]
上記[1]又は[2]に記載の構成において、前記エアーピストンのシール部の上端部には、径方向外側に膨らむ突部が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、部材の成形条件が理想状態から外れても十分な泡の形成を行うことができる、新たな泡吐出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示に従う泡吐出器の一実施形態を、容器本体の口部に装着した状態で示す正面断面図である。
【
図3】
図1の状態からノズルヘッドを押し始めた状態を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面(
図1から
図4)を参照して、本開示である泡吐出器100の一実施形態を詳細に説明する。
図1は、本開示に従う泡吐出器100の一実施形態を、容器本体Cの口部に装着した状態で示す断面図である。本実施形態において、泡吐出器100は、容器本体Cの口部に装着されるベースキャップ1と、ベースキャップ1により容器本体Cの口部に垂下保持され内容液と空気とをそれぞれ個別に吸引、加圧、圧送する内容液用ポンプ2及び空気用ポンプ3と、ポンプから圧送された内容液及び空気を合流させる合流空間Gを形成するとともに、混合した内容液及び空気を発泡させるメッシュリング12を保持するジェットリング13と、ジェットリング13に装着されるとともに発泡した内容液を内部通路14aを通して外部へ吐出させるノズルヘッド14とを備えている。
【0014】
なお、本明細書、特許請求の範囲、及び図面においては、上下方向は、
図1に示すように泡吐出器100を容器本体Cに装着し正立姿勢とした状態における上方、下方を意味するものとする。また、径方向外側とは、
図1における泡吐出器100の中心軸線Oを通り中心軸線Oに垂直な直線に沿って中心軸線Oから離れる方向であり、径方向内側とは、当該直線に沿って中心軸線Oに向かう方向を意味するものとする。
【0015】
図1において、符号1は、容器本体Cの口部に装着されるベースキャップである。ベースキャップ1は、天面壁1aの縁部より垂下される外壁1bを有していて、外壁1bの内側に設けた雌ねじ部を容器本体Cの口部に設けた雄ねじ部にねじ係合させることで着脱自在に装着される。なお、ベースキャップ1を容器本体Cに装着するには、アンダーカット等、他の既知の構成を用いることも可能である。また、天面壁1aの中央には上方へ向けて起立する中空頸部1cを設けている。中空頸部1cには、その内周面に上下方向に延びるリブ1eが設けられている。更に、中空頸部1c内側には、天面壁1aを貫いて容器の内側に通じる貫通孔1fが形成されている。
【0016】
符号2、3は、ベースキャップ1によって容器本体Cの口部に垂下保持され内容液と空気とをそれぞれ個別に吸引、加圧、圧送する2つのポンプである。内容液用ポンプ2及び空気用ポンプ3は、小径筒体4aと、小径筒体4aの上部に一体連結する底部を有する大径筒体4bとが同軸に直列状に配置された形態をなす、単一のシリンダー4によって形成されている。シリンダー4の上方には径方向外側に延在するフランジ4gが設けられていて、容器本体Cに垂下保持されるにあたっては、このフランジ4gの下面側にパッキンPAを設け、容器本体Cの口部との間でパッキンPAを挟み込むようにしている。
【0017】
ここで、内容液用ポンプ2は、小径筒体4aの底部において、容器本体C内の内容液を流入させる吸引口4cを有している。また吸引口4cの縁部には、容器本体Cの底部に向けて延在する吸引パイプpを嵌合保持するための嵌合筒4dを設けている。また小径筒体4a内には、小径筒体4aの内周面に当接するとともにその軸線に沿って摺動可能に設けられた中空ピストン5が配され、中空ピストン5の下部にシール部が設けられている。中空ピストン5の内側に形成される内部通路t1には、ポペット6が配される。ここで中空ピストン5の上部は内面が縮径する縮径部5aを形成している。また、ポペット6は、その下端に吸引口4cの開閉を行う弁部6aを有し、その上端に内部通路t1の出口の開閉を行う弁部6bを有している。そして、中空ピストン5の外側には、中空ステム7を配している。中空ステム7は、中空ピストン5を取り囲む下部筒状壁7aと、下部筒状壁7aの上部にて一体的に連結する中間フランジ7bと、中間フランジ7bから起立してベースキャップ1の貫通孔1fから突出する上部筒状壁7cとを備えている。上部筒状壁7cの内側には、内部通路t1に連通する内側通路t2が形成される。また、ポペット6の下部と中空ピストン5の下部との間には、スプリング8が配されている。これにより、中空ピストン5及び中空ステム7はスライド可能に弾性支持される。また、上部筒状壁7cの外周面には、
図2に示すように上下方向に延びる複数のリブ7c1が設けられている。
【0018】
上述した中間フランジ7bは、
図2に示すように、上部筒状壁7cの外周面から径方向外側に突出している。また中間フランジ7bには、その上面から起立する中間環状壁7dが設けられている。これにより、上部筒状壁7cの外周面と、中間フランジ7bと、中間環状壁7dとで、上向き開放となる凹部空間S1が区画形成される。
【0019】
そして、
図1に示すように上部筒状壁7cの上部には、径方向内側に向かって延在するとともにその内側端部を上向きに延在させた内向きフランジ7gが設けられている。また、内向きフランジ7gの上方には、内向きフランジ7gの内側端部を弁座とするボール弁Bが配置されている。ボール弁Bは、ジェットリング13に設けられたカバー部13gによって上方に抜け出さないように構成されている。ここで、カバー部13gは、径方向中央に内容液を通す中央開口13g1を有している。
【0020】
また、
図1に示すように空気用ポンプ3は、大径筒体4bの内周面に当接するとともにその軸線に沿って摺動可能に設けられたエアーピストン10を備えている。エアーピストン10の径方向内側には、中空ステム7を取り囲む筒状ガイド10aが設けられていて、
図2に示すように中空ステム7の外周面と筒状ガイド10aの内周面との相互間に形成される隙間は、空気を通すとともに凹部空間S1の上方に位置する第一通気路A1となっている。なお、初期姿勢において、筒状ガイド10aの下端部は、中間フランジ7b及び中間環状壁7dの少なくとも一方に当接するように構成されている。また、後述するように中空ステム7は、エアーピストン10に対して僅かにスライド可能となっていて、筒状ガイド10aの下端部が中間フランジ7b又は中間環状壁7dに当接、離隔することで、第一通気路A1を開閉する弁として機能する。また、筒状ガイド10aから径方向外側に延在して大径筒体4bとの相互間に空気を加圧するための空間を形成する隔壁10cには、大径筒体4b内に空気を導入する開孔10dが設けられている。また、開孔10dの径方向外側には、上方に延びるシールリング10fが設けられている。シールリング10fは、ノズルヘッド14の押下によりジェットリング13の筒状部(下部筒部13a)の下部に形成された第2シール壁13fに摺動しつつ当接することによってシールを形成し、大径筒体4b内からの空気の漏出を抑制する。また、筒状ガイド10aは、ジェットリング13の筒状部(下部筒部13a)の下部に形成された第1シール壁13eに摺動しつつ当接することによってシールを形成し、第一通気路A1と第二通気路A2とを連結させる。
【0021】
本実施形態では、第2シール壁13fの径方向内側面に通過リブ13f1が周方向に間欠的に配置されている。この構成によって、
図2に示すノズルヘッド14を押し下げる前の状態において、第2シール壁13fとシールリング10fが当接しているものの、通過リブ13f1同士の間の空間、及び開孔10dを通じて大径筒体4b内に空気を導入可能である。
【0022】
そして、
図1に示すように中空ステム7の上方には、混合した内容液及び空気を、その内側に設けた発泡部材(メッシュリング12)により発泡させて内部通路14aを通して外部へ吐出させるノズルヘッド14が設けられている。本実施形態のノズルヘッド14は、ジェットリング13を介してメッシュリング12を保持するようにしている。
【0023】
本実施形態のメッシュリング12は、リング状となる本体部の一端部にメッシュ12aが取り付けられたものである。また、本実施形態では総計2個のメッシュリング12を、それぞれのメッシュ12aが外側を向くように(メッシュ12aを設けていない側が合わせ目となるように)してジェットリング13に取り付けている。
【0024】
また、
図1に示すようにジェットリング13は、中空ステム7の上部筒状壁7cを取り囲む筒状部(下部筒部13a)を有している。筒状部(下部筒部13a)の下端部には、筒状ガイド10aの上端部を取り囲む第1シール壁13eが設けられており、上部筒状壁7cと下部筒部13aの相互間には、第一通気路A1に通じる第二通気路A2が形成される。第二通気路A2は、中空ステム7(上部筒状壁7c)と、中空ステム7を上方及び径方向外側から取り囲む筒状部(下部筒部13a)との間に形成され、第一通気路A1から圧送された空気を後述する合流空間G内に供給する(
図1参照)。またジェットリング13は、下部筒部13aに連結するとともに中空ステム7の上方を覆い、メッシュリング12を下方から支持する拡径部13bを有している。カバー部13gと内向きフランジ7gとの間には、内側通路t2からの内容液と、第二通気路A2から流入する空気との合流空間Gが形成される。更に拡径部13bの上方には、メッシュリング12を取り囲んで保持する上部筒部13cが設けられている。
【0025】
そして
図1に示すようにノズルヘッド14は、内容液を流動させる内部通路14aが形成されたノズルヘッド本体部14bと、ノズルヘッド14を押し下げた際にベースキャップ1の中空頸部1cの径方向外側に位置するヘッドリング14cとを備えている。
【0026】
ノズルヘッド本体部14bには、その内面に、上部筒部13cを嵌合保持する内部筒状壁14dと、ジェットリング13に装着されたメッシュリング12の上方への抜け出しを阻止するリブ14eとが設けられている。更にノズルヘッド本体部14bの外縁には、ヘッドリング14cの上部を取り囲む縁壁14gが設けられている。
【0027】
なお、ベースキャップ1の天面壁1aとヘッドリング14cとの間には、図示しないが、ノズルヘッド14の不用意な押し下げを阻止するストッパーを設けてもよい。ストッパーは、例えば平面視で略C字状をなすものであり、中空頸部1cの側方から着脱自在に装着することができる。
【0028】
このように構成される泡吐出器100において、図示しないストッパーを取り外してノズルヘッド14を押し込むと、ジェットリング13及びジェットリング13につながる中空ステム7が、
図2に示す寸法Lの分、エアーピストン10に対して僅かに下方にスライドする。換言するとエアーピストン10のスライドは、中空ステム7のスライドよりも寸法Lの分だけ遅れて始まることになる。本来であれば、エアーピストン10の下方へのスライドが始まるときに、
図2に示す第2シール壁13fとシールリング10fとが
図3及び
図4に示すように当接してシールを形成し、大径筒体4b内の空気が開孔10d経由で漏出しないはずである。しかし、各部材の成形条件等に起因して第2シール壁13fとシールリング10fとの間の摺動抵抗がエアーピストン10のシール部10gと大径筒体4bの内面との間の摺動抵抗よりも大きくなった場合、第2シール壁13fとシールリング10fとのシールが完全ではない状態でエアーピストン10が大径筒体4b内で下降し始めることがあった。この場合、第2シール壁13fとシールリング10fとのシールが完全ではない状態で大径筒体4b内の空気が圧縮されるため、大径筒体4b内の空気は、開孔10d経由で大径筒体4b内から漏出してしまい、大径筒体4b内の圧力が十分に上がらず合流空間Gへの空気の圧送が不十分になることがあった。
【0029】
本実施形態では、大径筒体4bの内周面には、下方に向かって径方向内側に突出する段部4fが形成されている(
図2及び
図4参照)。すなわち、大径筒体4bの内周面は、この段部4fを境に上部よりも下部の方が径方向内側に突出している。なお、
図2及び
図4において、大径筒体4bの壁面の厚みと比べて段部4fを水平方向に意図的に大きく描いている。段部4fは、図示するように下方に向かって径方向内側に傾斜するように構成してもよいし、径方向内側に水平方向に突出させてもよい。段部4fは、この構成によって、第2シール壁13fとシールリング10fとの間の摺動抵抗がエアーピストン10のシール部10gと大径筒体4bの内面との間の摺動抵抗よりも大きく、第2シール壁13fとシールリング10fとのシールが完全ではない状態でエアーピストン10が大径筒体4b内で下降し始めた場合であっても、エアーピストン10のシール部10gの上端部が上述の大径筒体4bの内周面の段部4fに係合し、シール部10gの下降が一時的に停止する。これによって、第2シール壁13fとシールリング10fとの間の摺動抵抗が大きい場合であっても、更にノズルヘッド14を押し込んで第2シール壁13fとシールリング10fとのシールが完全なものとなった後に、シール部10gの上端部と大径筒体4bの段部4fとの係合が外れて大径筒体4b内の空気の圧縮が再開される。従って、第2シール壁13fとシールリング10fとのシールが完全ではない状態で大径筒体4b内の空気が圧縮されることにより、大径筒体4b内の空気が開孔10d経由で大径筒体4b内から外部に漏出してしまうという不具合を抑制することができる。
【0030】
なお、エアーピストン10のシール部10gの少なくとも上端部には、
図2及び
図4に示すように、径方向外側に膨らむ突部10g1を設けることが好ましい。この構成によって、突部10g1の下部を大径筒体4bの内周面に形成された段部4fと一時的により確実に係合させることができる。
【0031】
ノズルヘッド14の押下により
図3及び
図4に示すように筒状ガイド10aの下端部が中間フランジ7bから離隔して、エアーピストン10の内側と第一通気路A1とが連通する。更に、ノズルヘッド14が押し込まれると、エアーピストン10の移動により、エアーピストン10の内側の加圧された空気が第一通気路A1から第二通気路A2に導入されて合流空間Gに向かって流れる。
【0032】
一方、小径筒体4aでは、ノズルヘッド14の押下により中空ステム7及び中空ピストン5が下方に移動すると、ポペット6の弁部6aが小径筒体4aの内面に当接して吸引口4cが閉じて小径筒体4a内が加圧され、更なるノズルヘッド14の押し込みにより中空ピストン5における内部通路t1の出口からポペット6の弁部6bが離隔して、内部通路t1内に存在する内容液が、中空ステム7の内側通路t2内に圧送される。そして、内側通路t2内の内圧によってボール弁Bが内向きフランジ7gから上方に離隔して弁が開放されるため、圧送された内容液は、合流空間Gへ流れる。
【0033】
そして、合流空間Gにて気液混合状態となった内容液は、メッシュリング12を通って泡状となり、ノズルヘッド14の内部通路14aを通って外部へ吐出される。
【0034】
ノズルヘッド14を押し切った後、押し込みにかかる力を取り除くと、スプリング8の反発力で中空ピストン5、中空ステム7は初期姿勢へと復帰する。
【0035】
この復帰過程において、ポペット6は中空ピストン5の上方へのスライドに合わせて移動して小径筒体4aの吸引口4cが開き、また、ボール弁Bが内向きフランジ7gに着座することによって小径筒体4a内が負圧となって、吸引口4cから小径筒体4a内に容器本体C内の内容液が吸引される。
【0036】
一方、大径筒体4bでは、中空ピストン5及び中空ステム7と比べてエアーピストン10の上方へのスライドが遅れて始まるため、第一通気路A1は、筒状ガイド10aの下端部が中間フランジ7bに当接して閉じた状態となる。また、中空ステム7に連動してジェットリング13がエアーピストン10よりも先に上方に移動するため、第2シール壁13fとシールリング10fとのシールが再び解除される。このため、エアーピストン10が上方へスライドを開始すると、エアーピストン10の内側(大径筒体4b内における隔壁10cの下方の領域)は負圧となるため、ヘッドリング14cと内部筒状壁14dとの相互間、ベースキャップ1の中空頸部1cの内側、第2シール壁13fとシールリング10fとの隙間、及び開孔10dを通じてエアーピストン10の内側に空気が流入する。また、大径筒体4bの上部には、
図1に示すように横孔4eが設けられていて、ベースキャップ1の中空頸部1cの内側を通った空気は、横孔4eを通して容器本体C内にも流入する。これにより、内容液が容器本体C内から吐出されても、容器本体C内が負圧状態のままになることはない。なお、図示しないが、ヘッドリング14cの上部外壁に開孔を設けて空気用ポンプ3内に空気を取り込む構造としてもよい。
【0037】
このようにしてノズルヘッド14の押し込みと初期姿勢への復帰を繰り返し行うことで、容器本体C内の内容液を泡状にして連続的に吐出させることができる。
【0038】
以上述べたように、本実施形態は、容器本体Cの口部に装着されるベースキャップ1と、ベースキャップ1により容器本体Cの口部に垂下保持され内容液と空気とをそれぞれ個別に吸引、加圧、圧送する2つのポンプと、ポンプから圧送された内容液及び空気を合流させる合流空間Gを形成するとともに、混合した内容液及び空気を発泡させる発泡部材(メッシュリング12)を保持するジェットリング13と、ジェットリング13に装着されるとともに発泡した内容液を内部通路14aを通して外部へ吐出させるノズルヘッド14とを備える泡吐出器100であって、内容液の吸引、加圧、圧送に供するポンプ(内容液用ポンプ2)は、容器本体C内の内容液を流入させる吸引口4cを底部に備える小径筒体4aと、小径筒体4aの内周面に当接し小径筒体4aの底部へ向けた摺動により小径筒体4a内の内容液を加圧、圧送する中空ピストン5と、中空ピストン5に連結するとともに圧送された内容液を通す内側通路t2を有する中空ステム7とを備え、空気の吸引、加圧、圧送に供するポンプ(空気用ポンプ3)は、小径筒体4aに連結される底部を有する大径筒体4bと、大径筒体4bの内周面に当接し大径筒体4bの底部へ向けた摺動により大径筒体4b内の空気を加圧、圧送して第一通気路A1に空気を送るエアーピストン10とを備え、エアーピストン10には、中空ステム7を取り囲んで中空ステム7との相互間に空気を通す第一通気路A1を形成する筒状ガイド10aと、大径筒体4b内に空気を導入する開孔10dと、開孔10dの径方向外側から上方に延びるシールリング10fとが設けられ、ジェットリング13は、中空ステム7を上方及び径方向外側から取り囲んで中空ステム7との相互間に合流空間Gにつながる第二通気路A2を形成する筒状部(下部筒部13a)を備え、ノズルヘッド14の押下により筒状部の下部がシールリング10fに摺動しつつ当接して大径筒体4b内からの空気の漏出を抑制し、大径筒体4bの内周面には、下方に向かって径方向内側に突出する段部4fが形成されるように構成した。このような構成の採用によって、第2シール壁13fとシールリング10fとの間の摺動抵抗がエアーピストン10のシール部10gと大径筒体4bの内面との間の摺動抵抗よりも大きく、第2シール壁13fとシールリング10fとのシールが完全ではない状態でエアーピストン10が大径筒体4b内で下降し始めた場合であっても、エアーピストン10のシール部10gの上端部が大径筒体4bの内周面の段部4fに係合し、シール部10gの下降が一時的に停止する。これによって、第2シール壁13fとシールリング10fとの間の摺動抵抗が大きい場合であっても、更にノズルヘッド14を押し込んで第2シール壁13fとシールリング10fとのシールが完全なものとなった後に、シール部10gの上端部と大径筒体4bの段部4fとの係合が外れて大径筒体4b内の空気の圧縮が再開される。従って、第2シール壁13fとシールリング10fとのシールが完全ではない状態で大径筒体4b内の空気が圧縮されることにより、大径筒体4b内の空気が開孔10d経由で大径筒体4b内から外部に漏出してしまうという不具合を抑制することができる。従って、部材の成形条件が理想状態から外れて第2シール壁13fとシールリング10fとの間の摺動抵抗が大きくなってしまった場合でも十分な泡の形成を行うことができる。
【0039】
また本実施形態では、筒状部(下部筒部13a)の下部には、筒状ガイド10aの上部に対して当接して第一通気路A1と第二通気路A2とを連結させる第1シール壁13eと、第1シール壁13eの径方向外側に設けられノズルヘッド14の押下によりシールリング10fに摺動しシール形成する第2シール壁13fとが設けられるように構成した。このような構成の採用によって、第1シール壁13eにより第一通気路A1と第二通気路A2との連結を確実なものとした上で、第2シール壁13fとシールリング10fとを摺動させてシール形成することができるので、ノズルヘッド14の押下により大径筒体4b内の空気を確実に合流空間Gまで圧送するとともに、適時に開孔10dの開閉を行わせることができる。
【0040】
また本実施形態では、エアーピストン10のシール部10gの上端部には、径方向外側に膨らむ突部10g1が設けられるように構成した。このような構成の採用によって、ノズルヘッド14を押下した際に、突部10g1の下部が大径筒体4bの内周面に形成された段部4fと一時的により確実に係合し、第2シール壁13fとシールリング10fとのシールをより完全なものとすることができる。
【0041】
本開示を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【0042】
例えば、本実施形態において、エアーピストン10のシール部10gの上端部に径方向外側に膨らむ突部10g1を設けるように構成したが、この態様には限定されず、突部10g1を設けない構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本開示によれば、部材の成形条件が理想状態から外れても十分な泡の形成を行うことができる、新たな泡吐出器100を提供することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 ベースキャップ
1a 天面壁
1b 外壁
1c 中空頸部
1e リブ
1f 貫通孔
2 内容液用ポンプ(ポンプ)
3 空気用ポンプ(ポンプ)
4 シリンダー
4a 小径筒体
4b 大径筒体
4c 吸引口
4d 嵌合筒
4e 横孔
4f 段部
4g フランジ
5 中空ピストン
5a 縮径部
6 ポペット
6a 弁部
6b 弁部
7 中空ステム
7a 下部筒状壁
7b 中間フランジ
7c 上部筒状壁
7c1 リブ
7d 中間環状壁
7g 内向きフランジ
8 スプリング
10 エアーピストン
10a 筒状ガイド
10c 隔壁
10d 開孔
10f シールリング
10g シール部
10g1 突部
12 メッシュリング(発泡部材)
12a メッシュ
13 ジェットリング
13a 下部筒部(筒状部)
13b 拡径部
13c 上部筒部
13e 第1シール壁
13f 第2シール壁
13f1 通過リブ
13g カバー部
13g1 中央開口
14 ノズルヘッド
14a 内部通路
14b ノズルヘッド本体部
14c ヘッドリング
14d 内部筒状壁
14e リブ
14g 縁壁
100 泡吐出器
A1 第一通気路
A2 第二通気路
B ボール弁
C 容器本体
G 合流空間
O 中心軸線
p 吸引パイプ
PA パッキン
S1 凹部空間
t1 内部通路
t2 内側通路